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著作権分科会 法制問題小委員会(第4回)議事録

1 日時  平成17年5月27日(金曜日) 14時3分〜16時47分

2 場所  経済産業省別館11階 1111会議室

3 出席者
(委員)  
  石井,市川,大渕,里中,末吉,茶園,土肥,苗村,中村,中山,浜野,前田,村上,森田,山地,山本の各委員
(文化庁)  
  加茂川次長、吉川著作権課長、池原国際課長、ほか関係者


4 議事次第
 開会
 議事
(1) 権利制限の見直し[3]
1 特許審査手続きに係る権利制限について
2 薬事行政に係る権利制限について
3 図書館関係の権利制限について
4 障害者福祉関係の権利制限について
5 学校教育関係の権利制限について
(2) 各ワーキングチームからの中間報告
1 デジタル対応ワーキングチーム
2 契約・利用ワーキングチーム
3 司法救済ワーキングチーム
(3) その他
 閉会

5 配付資料
 
1. 権利制限の見直し
資料1−1   複写分野における集中管理の全体像(PDF:33KB)
資料1−2   「権利制限の見直し」に対する法制問題小委員会各委員提出意見(論点別整理)
資料1−3   「権利制限の見直し」に対する法制問題小委員会各委員提出意見(各委員からの個票)

2. 各ワーキングチームからの中間報告
資料2−1   デジタル対応ワーキングチームからの中間報告
資料2−2   契約・利用ワーキングチームからの中間報告
資料2−3   司法救済ワーキングチームからの中間報告

参考資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第3回)議事録
(※第3回議事録へリンク)
参考資料2   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会各ワーキングチーム名簿
(※名簿へリンク)
参考資料3   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定

6 議事内容
  (中山主査) まだ若干の委員の方がお見えになっておりませんけれども、議事が詰まっておりますので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第4回目を開催いたします。本日は御多忙中御出席いただきまして、ありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開につきまして、いつもと同じでございますけれども、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、すでに傍聴者の方々には入場していただいているところでございますけれども、特に異議はございませんでしょうか。
 よろしゅうございますね。はい、ありがとうございます。それでは本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をしていただきたいと思います。
 それでは議事に入りますけれども、まず事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

(山口著作権調査官) 本日の配付資料につきましては、議事次第を記載した1枚物がございまして、その下半分が資料一覧となっております。
 内訳は資料の1−1から1−3までの3点が「権利制限の見直し」に係るもので、1−1は前々回において事務局の宿題となっておりました、複写分野における集中管理の全体に係る説明用資料でして、後で事務局から説明させていただきたいと存じます。1−2及び1−3につきましては、効率的な議論に資するようにということで、事前に各委員より御提出いただいております御意見の方を事務局にて整理した資料でございます。また、資料2−1から2−3までの3点につきましては、本日後半に予定しております各ワーキングチームからの中間報告用のレジュメ資料でございます。
 このほか参考資料1としては、これは既にホームページに掲載済みですが、前回の本小委員会の議事録、2としては各ワーキングチームのメンバー表、3として本小委員会の審議予定となっております。
 なお、この他机上にはこちらの赤い色のファイルになりますが、これは前回までの各要望者等により提出されました権利制限の見直しに係る詳しい説明資料を便宜のため綴じたものでございますので、本日も適宜御参照ください。
 資料は以上でございますので、お手元を御確認いただければ幸いです。

(中山主査) それでは、本日も3時間の長丁場になりますので、初めに議事の段取りについて確認をしておきたいと思います。本小委員会では、前々回及び前回において権利制限の見直しにつきまして、各関係省庁や有識者の方々にお越しいただきましてヒアリングを行い、それに踏まえて意見の交換をしてまいりました。そこで今回は時間的な制約等も厳しい中、扱うべき議題や論点も多いために、効率的な議論に資するように各委員から権利制限の各論点につきまして意見を頂戴しております。その取りまとめたものを事前に各委員にお送りをしておりますけれども、全体の回答状況を事務局からまず簡単に説明をしていただいた上で、議題(1)1から5のそれぞれにつきまして、各20分程度自由討議を行いたいと思います。事務局が中間まとめ案を作成するに先立ちまして、権利制限の見直しを議題とするのは今回が最後ということになりますので、各委員におきましては積極的な御意見を賜りたいと思います。
 なお、時間等の関係から、本日は便宜上、4の障害者福祉関係の権利制限までの議論を終えた後でいったん休憩をとり、後半は5の学校教育関係の権利制限から再開いたしまして、次に(2)の議題、各ワーキングチームからの中間報告に移りまして、各ワーキングチームにおける検討状況について各座長より簡潔に御報告を頂戴し、残りの時間で簡単な質疑を行いたいと思います。
 なお、本日は権利制限の見直しについての意見交換に入る前に、前々回の議論において石井委員と山地委員から御指摘がございました複写分野における集中管理の全体像について、事務局の方で資料ができたとのことでございますので、簡単に事務局から説明をお願いいたします。

(川瀬著作物流通推進室長) それではお手元の資料の1−1を御覧いただけますでしょうか。「複写分野における集中管理の全体像について」、御説明をさせていただきます。
 まずこの表でございますけれども、横軸の左側が内部利用の複写、それから右側が外部に提供するための複写ということでして、縦軸の上段が国内の権利者の管理、それから下段が国外の権利者の管理ということです。その表の中で、複写権を管理している団体がどのような関係になっているか、ということを表しています。
 まずこの分野で実際に活動しておりますのは、この3団体でございます。色の濃いものと色が、塗っていないものがありますけれども、それは下のところを御覧いただきますと、色の濃いものにつきましては、これは著作権等管理事業法の規制対象ということで管理事業法に基づく登録を受けて活動している団体で、基本的には一任型で管理をしています。
 それから白抜きのところは、これは非一任型ということで、管理事業法の規制対象外で利用の都度、使用料の額を権利者と協議の上決めるということです。
 まず社団法人日本複写権センターですが、この要件は基本的にはいわゆる内部利用のための国内権利者の複写について権利を管理しております。だいたい国内での出版物の約30パーセント程度を管理しているというふうに言われています。
 それから次に株式会社日本著作出版権管理システムですが、ここは医学系、理工系の出版物を中心にしまして、国内の権利者でありますが外部提供のための複写について権利を管理しています。
 それからその下の有限責任中間法人学術著作権協会というところは、まず国内ですが、国内については外部提供のための複写を中心に権利を管理している。それから国外については、その右に書いてますようにCCC管理著作物、これは注1を御覧いただきますと、米国の複写権の管理団体であるCopyright Clearance Centerのことを言いますが、ここと管理契約を結びまして、そのCCCが管理している著作物の日本における権利行使について委託を受けて学術著作権協会が行っているということです。したがって国外の権利者というのは、米国の出版物でして、ヨーロッパ等の出版物については基本的には含まれていないということのようです。
 そこで、まず日本複写権センターですが、3ページを見ていただきますと、日本複写権センターにどのように権利が預けられているかといいますと、その下から2段目のところがいわゆるこの社団法人、社員なのですが、著作者団体連合、出版者著作権協議会、新聞著作権協議会、学術著作権協会が社員でして、その団体に著作者が所属の団体を通じて預けるか、それとも出版社を通じて預けるか。新聞社の場合には直接預ける。それから学術論文、特に学協会経由ですので、これは著作者が学協会に著作権を預けて、それを通じて学術著作権協会から複写権センターに預けるというようになっております。
 それで1枚目の表に戻っていただきますと、学術著作権協会については外部提供について管理しているのですけれども、要するに学術著作権協会経由で複写権センターに預けられているのは、内部利用のための複写の権限。それから外部提供については学術著作権協会自らが行使をしている、ということになるわけです。
 なお、2ページを見ていただくと、それぞれの団体における管理状況について書いてありますので、御参照ください。以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございました。ただいまの説明につきまして御質問がございましたら、お願いいたします。
 一番下にCCCがありますけれども、ヨーロッパとかアメリカ以外のものを利用する場合には、個別的に交渉をして許諾を得なければならないということですね。

(川瀬著作物流通推進室長) はい。このCCC以外の団体は、例えばヨーロッパにもありますが、そことの管理協定というのは成立しておりませんので、今まさしく主査御指摘のとおりでございます。
 ただ、私どもが聞いているのは、CCCにヨーロッパの出版社が直接権利を預けているというケースがあるようでして、このCCCと学術著作権協会との管理契約の中で、それが含まれているかどうかということは確認していませんが、仮に含まれているとすれば、CCCとの契約を通じてヨーロッパの一部の出版物も複写できるということになります。

(中山主査) 何か他に。はい、どうぞ、茶園委員。

(茶園委員) もしお分かりであれば教えていただきたいのですけれども、特許関係の問題や薬事法関係の問題に関して、複写権センターの利用によって権利制限を設ける必要性がなくなるかどうかということについての質問です。例えば特許の審査において必要な文献あるいは雑誌、薬事行政において複製することが必要な文献あるいは雑誌の、どれくらいのものがこの複写権センターに、あるいは学術著作権協会においてカバーされているか。あまりカバーされていないというように聞くことがあるのですけれども、お分かりであればお教えいただきたいと思います。

(川瀬著作物流通推進室長) 詳しい数字は持ちあわせておりません。ただ、複写権センターは基本的に内部利用ですので、例えば製薬会社が外部の医療機関に提供するという場合には基本的には扱っていないわけです。そしてこの日本著作出版権管理システムは、この団体は非一任型ですが、基本的には外部利用を取り扱いしておりますので一部の製薬会社等とは管理契約を結んで、使用料を徴収しているということは聞いております。しかし、具体的なパーセンテージまでは私ども把握しておりません。

(中山主査) 他に御質問ございましたら。はい、どうぞ、石井先生。

(石井委員) 現行のシステムに関する質問ではないのですが、実は今、アメリカの例えばNIHのような、要するに公的な研究資金を適用している団体を中心にして、いわゆるオープンアクセスの問題が非常に盛んにいわれるようになってきておりまして、公の資金の力によってでき上がって研究成果というのは基本的に無料でアクセスできるようにすべきだという議論があるわけですが、多分まだ日本にはこの波は直接は及んでおらず、したがって複写権センターの活動にも今のところは特に問題は起きてないのだろうとは思うのですが、例えばこのCCCなんかに、そのいわゆるオープンアクセス論というのは何かすでに具体的なインパクトを、影響を与え始めているのかどうか、もし御存じだったら伺わせていただきたいと思います。

(川瀬著作物流通推進室長) 誠に申し訳ないですけれども、その件については承知しておりません。

(中山主査) よろしいでしょうか。他に御質問がございましたら。
 それでは先に進んでよろしゅうございましょうか。今日は議事が非常に沢山ございますので、権利制限の各論点に入りたいと思います。
 本日は各委員から権利制限の各論点に対する意見を提出していただいておりますので、全体の回答状況を事務局から簡単に説明をしていただいた上で、(1)の1から5のそれぞれにつきまして討論を行いたいと思います。
 なお、御提出いただきました御意見の中の「政令等への委任」と「自由記載」の欄に御記入いただいたものにつきましては、時間の都合もございますので、各論点の議論の中で適宜織り込んで御発言を頂戴できればと思います。
 それでは事務局から、全体の回答の状況について説明をお願いいたします。

(山口著作権調査官) まず今回事前に各委員から御意見を頂戴した趣旨でございますが、ひとわたりのヒアリング等を終えたところで、権利制限の見直しの各論点すべてを再度視野に入れて、全般的な検討を更に進めますために、時間的な制約等も厳しい中、扱うべき議論、論点も多うございますので、効率的な議論に資するようにということで事前に頂戴した次第でございます。別の言い方で申せば、各論点ごとに対する法改正の賛否を単純に多数決をとったという趣旨ではございませんでして、次々回に予定の中間まとめ案の作成に向けまして、全体的な傾向ですとか、各論点に対する具体的な留意点、問題点を洗い出して、効率的に引き続き検討を行っていくためのものということでございます。
 したがって、御覧いただいてもお気づきのことと存じますが、まるがついているものでしても、様々なコメントを頂戴しておりまして、実質的に留保条件を勘案した時には、定義次第では三角ないしはばつとも捉え得るような、あるいはまた、逆も然りというようないろいろな御意見がございますので、一つの参考資料ではございますが、例えば単純にまるが多いから直ちに法改正を行うべきという趣旨では必ずしもないという点をお含みいただきたいと思います。
 今回委員に御意見を伺った際の記載要領も一緒にお配りしておりまして、そこにもありますとおり、もとより一義的な回答が困難な場合があることを承知しておりますところですが、さきに申したような趣旨から、コメントを適宜補足していただきつつも、あえてお願いさせていただいたということでございます。
 なお、そこで各委員にお願いした際の定義としては、まるは「重要性、緊急性などにかんがみ、優先して法改正を行うべきであると考える」、ばつは「今後更に慎重な検討を行う必要があり、法改正は時期尚早であると考える」、三角は「どちらとも言えない」ということで、留保コメントをされる際の例などというものも、例えばということでつけさせていただいたところでございます。
 一部の委員からは、諸事情により、必ずしも御意見をすべて提出していただいておりませんが、19名からいただいておるところでございます。
 全体的な趣旨はそういうことでございますが、次に各論についてごく簡単にですが申させていただきます。資料1−2の初めの3ページが、いわば論点の一覧表をかねておりますので、そこを御覧いただくのが便宜かと存じます。
 まず、1の特許手続の関係でございますが、1−Dについては、ばつないしは三角も相対的には多少多うございますが、全体的にはまるが多く、特に1−AとCについては、単純にまるばつ三角に着目した場合の言い方ですが、ばつはなく、1−Bについても、現行で読めるという意味合いにおいてのばつを、お一人頂戴しているのみという状況でございます。
 次に、2の薬事行政の論点でございますが、これは2−AとBについては、これもばつはお一方もとりあえずいらっしゃらなかったところですが、2−Cについては対照的に、「三角ないしばつ」と「まる」とに仮に分けました場合、両者が完全に拮抗しているという状況でございました。
 次に、3の図書館関係でございます。3は3−A、C、Dについてはまるが多かったのとは対照的に、3−BとFについては、今回の全論点を通じましてもまるの数が少なく、かつばつが多いという傾向も若干見受けられるような状況でございました。
 次に、4の障害者福祉関係でございますが、ここはすべての項目を通じましてまるが比較的多いという傾向がございます。ただし、一方では、著作権法42条の、さきの特許や薬事関係に係る権利制限のものとは異なりまして、いずれもばつがないという項目はないと、そういう状況です。
 5番の学校教育関係でございますが、ここは全体を通じまして、今までの1の特許から始まり4の障害者福祉までの4つの柱に比べまして、顕著といえるほどの傾向というのはあまり見られないのですが、全般的に三角ばつも比較的多いという傾向を示しているようでございました。
 次に、「政令等委任」という欄を別途設けさせていただいたところです。資料1−2ですと御回答は41ページにまとめてございまして、6名の委員から御意見を頂戴しております。個別具体的あるいは技術的事項等については、そういった方向での検討もあり得べしという御意見などを頂戴しております。
 最後に繰り返しになりますが、全体的な大きな傾向をつかむ意味で、便宜上まるばつ三角に着目しつつ、今簡単に申しましたが、まるが多い項目につきましても、コメント欄で御指摘いただいている各論においては、なお論ずべき課題も少なくないものと存じておりますので、引き続き具体的な検討をよろしくお願い申し上げたい次第でございます。以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございます。私の経験からしましても、この審議会は他の審議会と比べて実質的にかなり真面目な議論をしていると思いますけれども、それでもなおかつ時間が足りないものですから、この質問に対する答え、これを全部この会議でやったのでは、もう何日かかっても終わらないところ、かなりきれいに各委員の御意見を見ることができるようになりましたので、これでかなりの時間の節約になると思います。
 このアンケートを元にこれから議論を頂戴したいと思いますけれども、最初に特許審査手続にかかる権利制限につきまして、御意見のある方はお願いいたします。どうぞ、大渕委員。

(大渕委員) 時間の関係もございますので要点だけにここでは絞りたいと思います。先程もありましたとおり、1−Aと1−Cはまるが大半ですので触れません、1−Dについては、この資料の1−2でいいますと8のところで私の意見を述べさせていただいておりますが、この点は重要な点だと思いますので、若干付け加えさせていただきます。第2回の委員会で申し上げたところなのですが、先行技術文献の提出による情報提供というのは特許法の中でも非常に重要な制度でありまして、特許法施行規則13条の2に明確な法的基盤もございまして、要するに拒絶理由を含む特許の付与を決して許さないという、非常に高度な公益的要請に基づいており、かつ制度としても非常に明確なものとなっております。
 われわれは知的財産法の研究者として、特許権法と著作権法には当然日々接しているのですが、この中には特許法関係はあまりなじみがない方もおられるのかもしれませんので御説明させていただきますと、1つありそうな疑問としては、いわゆる書誌情報で、ある雑誌の何巻何号何項というような情報提供をすれば、それを受けた特許庁の側で自ら図書室から調べてくればいいのではないか、それで足りるのではないかというお考えがあるかもしれないという点があります。しかし、ここで主に問題になっておりますのはいわゆる非特許文献というもので、特に最近問題となっておりますビジネスパテント等でありますと、実際そういう文献の中には、企業のパンフレットなどの非常に入手が困難なものも多数含まれておりますので、それを何月何日付のどこどこ社のパンフレットというふうに情報提供されても、多分特許庁としては非常に入手が困難で、入手を待っていると手続が著しく遅延し、場合によってはただ入手できないために内容を確認することができずに、本来拒絶すべきものに対して特許権、独占権が付与されてしまうということにもなりかねません。このように、いろいろな意味でこれは非常に重要な点でございますので、そこを御勘案していただいて、もちろんこれによって文献に関する権利の行使が若干狭められるという面もあろうかとは思いますが、著作権法と並んでもう1つの知的財産法の柱であります特許法というものの存立の基盤に関わるという点を十分認識して御判断いただければと思う次第であります。
 それから、1−Bの一時的な電子複製という点につきましては、概ねまるであり、あとは現行法でそのように読めるからいいのではないかというだけの違いです。この点はもう現行法でそのように読めるかどうかという検討をした上で、現行法で読めるからいらないという結論になる場合でありましたら、非常にオフィシャルな形でその点が明確になっておりますと、実際上は法律で明確化したのと同様の意味があろうかと思います。ですから、明確化のために条文を作るという判断か、あるいはそうしない場合であったら、それはしなくても現行法で十分読めるのだということを明確にオフィシャルな形で出していただければ、特許の実務において、関係者にとっても非常によいメッセージになるのではないかと思っております。
 あと1点、長くなって恐縮なのですが、これは特許審査と薬事の両方に通ずる話なのですが、私は1ページのところで「行政手続のために必要と認められる場合」ということで括れるという一案もあろうということで書かさせていただいています。今後申請などの行政手続関係で同じように学術文献等を添付しなければいけないという場合があり得ますので、今後そういうものを1個1個条項に書いていくのがいいのかということもありますので、この点は中身というよりは技術論なのですが、先程の政令の活用とも似てきますけれども、こういう包括的な条文を置いて、あとはそれで読み込むか、ないしは明確化が必要であれば政令に落とすというような工夫もしていただければというふうに思っております。長くなりましたが、以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございました。他に御意見はございましたら。どうぞ、村上委員。

(村上委員) 私はここにばつがつけてあるので、その趣旨だけ釈明させてもらおうと思って発言させてもらいます。
 それで今、大渕委員から言われたところは確かに例外的には問題、必要な場合もあるというのはあると思います。ただ、この特許権のうちで1−Dの利害関係人に無効とか何とかの主張をするために自由にコピーを認めるということを認めた場合には、まず利害関係人というのはかなり広い範囲になる可能性があるので、これは重要なものを何でもそう主張すればコピーが自由に広い範囲にとれることになるのではないかというのが、1つの私の考えていることです。
 もう1つが利害関係って実際にはライセンスを受けている者とか、結局は特許に利害を持つ経済的にはわりと資力のある企業とかが出てくる話になると思いますので、その場合にビジネス活動の一環としてやればいいのであって、対価なしで自由にコピーをとるというのは、著作権の保護、著作権者の保護が十分ではないのではないかという、そういう気がしたものでただちに広い範囲の利害関係人にこれを認めて大丈夫かなという、そういう趣旨でございます。

(中山主査) この利害関係人というのは、村上委員だとどの範囲をお考えですか。

(村上委員) こう書いてあると、ある特許を自分が無効だと主張する可能性があると思ったりなんだりする人間、すべてこれに入ることになりかねない表現。ある意味で、特許の申請に絡んでそれを認めるかどうかというのは公共性の観点から尊重されるべき行政行為ですから、それに絡むものは私は当然認めていいと思います。ただ、さすがに利害関係人がそういう可能性のあるすべての文献についてコピーとれるというのは、直接的な関連性というのは乏しいのではないかという、そこの関連性は薄いのではないかという、そんな感じはしています。

(中山主査) これは特許庁への提出ですから、出願人本人の場合もあるでしょうし、異議申し立てとか無効審判請求人からの場合もあります。一般的な利害関係ある人が全部ということだとかなり広いのですけれども。大渕先生、何かその点。

(大渕委員) 先程もっと説明した方が分かりやすかったのかもしれないのですが、利害関係人等の利益のためにというふうに見えるかもしれないのですが、むしろ公益的なものだと御理解いただければと思います。つまり、制度の立て方としては、本来的にはこういう文献は特許庁の審査官の方で全部自分で集めて、拒絶理由になるものがあったら拒絶理由として提示するというのが本来の建前ではあるのですが、それではとても審査官の負担が重すぎて、世界中にある何百何億という文献を全部見ることはできませんので、むしろそれを助けるために公衆審査としてこういうものがありますよという情報提供をしてもらって、特許庁の審査官の仕事を助けるという、そういう公益的な面を中心にできた制度であります。制度の趣旨としては利害関係人等の情報提供する人の利益を助けるための制度ではなくて、特許庁の審査官の仕事を助けるという公益的なものだということを御理解いただければと思っております。

(村上委員) 特に議論するつもりもないのですけれども、私が申し上げているのは、公益上無効な特許が存在するのはおかしい、公益性が大事だということが分かるわけです。ただ、世の中実際にそういう特許が出てて、しかもそれに対して利害関係とか、その特許を無効で潰しておこうとか何とかと考えるのは、やはり結局は経済的利益を持って、ライセンスを受けている者が当事者になるわけなので、そういう意味ではビジネス活動をやっている資力のある事業者が出てくる場合に、それで著作権者の方を気にしないでかなり広く自由にコピーして本当に大丈夫かなという懸念であります。

(中山主査) コピーを認めないために文書の提出ができない場合、特許庁の審査に時間がかかってしまう、あるいは事実上入手不可能という場合には特許になってしまう。その利益と一部コピーされたことによる著作権者の不利益との比較で、一部コピーされる著作権者の利益の方を重んずると、こういう御趣旨ですか。

(村上委員) ですから、そこは私も特許法の専門家でないのでよく分からないのですが、ただ今の現行制度の下で、本当に今、委員から言われたような、資料が入手できないとか、それで本当に無効の特許がどんどん成立するとか、もしくはそれを潰しにかけるような場合に、その文献が複製ができないとか、そういう事例というのは、いったいどのくらいあるのかなという。それは私の方も厳密には分かりませんので、その必要性が本当にどのくらいあるのかなという気はいたします。かなりのところは現行法制でも現実に機能していることではないかという気がしています。

(中山主査) 他に御意見ございましたら。この点はよろしゅうございますか。
 それでは時間の都合もありますので、引き続きまして薬事行政にかかる権利制限について、御意見のある方はお願いいたします。はい、どうぞ、山地委員。

(山地委員) 従来何度か議論があったのですけれども、1つ気になることは、製薬企業による薬事法に基づく情報提供という議論が中心になってきたと思うのですね。しかしながら、それが大変重要なのは確かなのですけれども、それだけではありませんで、お医者さんであるとか、薬剤師であるとか、治療法の選択や医薬品、薬の選択のために適正な情報を集める。そういうことのための情報提供、情報収集して提供するということが求められているわけであります。ですから製薬企業による情報提供ということだけではないということを、ぜひ記憶に留めていただきたいと思います。

(中山主査) これは各医者が自分の必要な論文をコピーする場合とか、そういう場合ですね。

(山地委員) ええ。

(中山主査) 分かりました。その点も含めて御意見がございましたら。では、どうぞ、村上委員。

(村上委員) これも私はさらに検討した方がいいのではないかという意見をつけたのですが、2−Aとか2−Bは私、よく分かるのです。これは必要だろうなというのは分かります。ただ、2−Cなんかになると、やはり公益性の観点から尊重されるべき行政行為との関連性がいまいち乏しいのではないかというのが、A、Bと比べた場合のCの位置づけになろうかと思います。それから製薬企業の話なので、やはり資力のある事業者によるビジネス活動の一環になるので、それをまったく対価なしで利用できるというのは著作権の保護が十分でない可能性はあるので、せめていわゆる裁定による報酬請求権とか、そういう程度の保護をすべきではないかという、そういう趣旨で、私はさらに検討すべきではないかと書いたわけです。
 競争法でも、こういう議論は出てきます。ただ、こういう議論が恐ろしいのは、議論をやってきますと、これは別に薬だけの話ではないわけです。世の中には危険なものというのは山ほどあるのであって、それこそ取扱注意とか爆発しますという品物というのはいくらでもあるので、それをいちいちその品物が危険だから、そういう意味でコピーして情報を取扱業者、販売業者に自由に伝達するべきだという議論をしていくと、非常に多くの品物までコピーがどんどんできる、注意喚起のために注意していきますよという、そういう議論につながるのではないかなということで、少しじっくり検討した方がいいのではないかという方にまるつけたのです。

(中山主査) 石井委員、どうぞ。

(石井委員) ど素人の質問で見当違いを申し上げたらお許しいただきたいのですが、こういう議論というのはオール・オア・ナッシングで認めるか認めないかという形でいくのか、例えば緊急やむを得ざる場合に何とやらとか、そういう例外の道を開けるとか、あるいは当事者がどうしても探しても見つからない。著作権者は亡くなったとか、そういうやむを得ざる事由がある時は何とやらとか、何かそういう形で処理するということは実務上難しいものなのですか。

(中山主査) 可能性はあるかもしれませんけれども、この場合は医者が治療を判断する場合ですので、自分で探してきて自分でライセンスを結んで、一部コピーをするというのは、多分時間的に不可能だと思いますし、中間的な話とすれば、コピーはいい、しかし対価は払えという、そういう中間的な解決の可能性はあると思いますけれども。

(石井委員) いろいろなケースがあって、お医者さんがこれがいいかどうかということで個人的におやりになるという場合ももちろん問題があるでしょう。しかし、製薬会社がやるという場合もある。それから医療機具屋さんがどうするだとかというような問題もある。というようなことで、ケースがいろいろあり得るので、それをどういうふうに権利者との関係で個別に合理的な結果になるように考える必要があるのではないか。やっぱり学術雑誌を発行している学協会の立場から見ますと、これはやはり、こうだからこうですよという一律にまるばつでやられるのは、何かちょっと抵抗感があるのかなと感じます。現状で申しますと、そういう問題というのはやはりあるのではないかなという感じがします。理科系の学協会というのは、やっぱり相当これには敏感ですし、そこのところは何かもうちょっときめ細かく議論できないのかどうか、これが素人の質問でございます。

(中山主査) はい、茶園委員、どうぞ。

(茶園委員) 今おっしゃられたことはそのとおりだと思いますし、先程村上委員がおっしゃられましたように、広く危険物一般についての必要な人への情報提供というのを一般的に考えますと、いろいろときめ細かく考えていかなければいけないと思います。しかしながら、製薬、医薬品は明確にダイレクトに健康、安全に関わるものであり、しかもこれに関しては薬事法の根拠があるように思えます。医薬品の情報提供に関しましては、例えばある程度の時間的な余裕があって、当事者がまずきちんと許諾を得るように頑張ってみる、それでも合理的な期間内にできなかった場合に何とかする、いったことができればいいのですけれども、この医薬品の領域においては、恐らくそのような方法は適当ではないと思います。やはり緊急に情報提供し、副作用なりが発生しないように、できる限り迅速に未然に防止するという必要性がある。ですから危険物一般について考える際にはいろいろきめ細かく考えられるとは思うのですけれども、医薬品に関しては、程度の差といわれればそうなのですけれども、やはり他のものとはかなり違いが見出せるのではないかというように思います。
 それと著作権者の利益のこともおっしゃいまして、私も2−Cに関しましては慎重に考えなければいけないのではないかと思います。前にそのような意見を述べさせていただいたのですけれども、ただ、実際に著作家者に対価を支払うとした場合のコストを考えますと、利用者が著作権者に対して支払われる対価と比べてみて、著作権者がすぐ直ちに分かって、その連絡先もすぐ分かって、直ちに対価を支払うことができるということがあれば、コストもあまりかからないのでしょうけれども、そうでない場合は費用倒れになってしまう可能性が高いでしょう。もしそういうような状況になりそうであるのであれば、そしてこれも条件なのですけれども、著作権者に著しい悪影響を及ぼさないということであれば、その場合には2−Cに関しましても無償ということにするということを考える必要があるのではないか、というように思います。以上です。

(中山主査) はい、ありがとうございました。では土肥委員、どうぞ。

(土肥委員) この2の部分ですけれども、おっしゃられておられるような、そういう医療的な極めて公益性の高い、そういう部分について、これを考慮して権利制限を設ける。それは1つあるのだろうと思います。そういう場合について、そういう公共性の高いところの部分について、区切って特別な場合として権利を制限する。これは十分納得できるところなのですけれども、同時に考えておかなくてはならないことは、そういう場合であっても著作権者の利益を不当に害しないかどうか、ここは必要なところになるわけであります。
 AとかB、これは確かに国に配付するわけでありますので、その影響というのは、つまり広く多数の利害関係人に配付する、こういう場合ではなくて、この「国等」の「等」はちょっと意味があるのだろうと思うのですけれども、少なくとも国、そういう医療行政機関に、そういう縛られた範囲に配付する、頒布するという場合であれば、恐らくこれは通常の利用を妨げないし、著作権者の利益も不当に害さないだろうと、こういうふうに思っております。そういう意味ではAとBはおっしゃるとおりではないかなと思っております。
 しかしCは、これは非常に広範囲にまたがる関係、つまり医療関係者全般に頒布すると、こういうことであります、必要な情報を提供するために。確かにおっしゃるように、国民生命、健康を守るためにこういうことは必要だとは思うのですけれども、そういう必要なものは本来は医療行政機関が国の行政目的を実現する関係で複製し頒布する。こういうことになるのではないかと思いますので、ここは恐らく慎重に考えていただかなければいけない。つまり、著作権者の利益を不当に害さないかどうか。これはベルヌ条約にきちんと書いてあるところでありますので、われわれここのところはきちんと考えるべきであろうというふうに思っております。以上です。

(中山主査) はい、どうぞ苗村委員。

(苗村委員) 今の最後の、土肥委員の最後におっしゃったことと関連しますが、最初事務局から御説明いただいた資料1−1の2ページ目に、日本複写権センター、それから学術著作権協会、それからJCLSの使用料金単価が書いてありますが、多分今議論になっている対象物の大半が医学系ということで、このJAACCあるいはJCLSの管理している著作物なのではないかと思います。それ以外にももちろんあるとは思います。
 その両者が管理しているものであれば、実質上、それを許諾権の対象にしているということはなくて、有償で配付を認めているのだと思いますが、その金額はこの表にはあるとおりで、恐らくこの金額が実態かなりの金額になっていて、それぞれの団体が管理し、権利者に払われているだろうと思います。その実態をやはり調べていただく必要があると思うのですが。その状況が分からないままで、これを無償にするというのはかなり著作権者の正当な利益を害される恐れがある。そのことについては十分な検討をする必要があるのではないかと思います。
 それから最後にちょっと一言お詫びなのですが、私、実は今回お答えができなかったのは、1つは私自身の個人的にいろいろ立て込んでいたこともありますが、もう1つは質問の形が緊急に検討すべきか、否かという形だったので、特に無償にすべきか、有償にすべきかということが選択肢に明示されていなかったことと、現状の情報が十分不明確なので、私はやはり早急に検討すべきだと思うのですが。
 ただ、実態を見ないで直ちに無償の権利制限にするというのは、あまりにも現実的ではないというのが私の意見です。以上です。

(中山主査) はい、大渕委員。

(大渕委員) 私は今、話題になっております2−Cに三角をつけましたのは、この点が要件と効果の相関関係にかかってくると申しますか、どの程度のものを対象にするかという範囲によって議論がかなり変わってくると思っているからです。この2−Cの質問の立て方が、表題的なもので出しておられるから仕方がないと思うのですが、かなり広い形なので、その関係もあってなかなか議論しにくいということで三角としているのであって、その明確化を待った上で意見を述べたいということであります。
 ただ、本当に国民の健康被害等に直結するようなリスクがある場合であれば、それが高ければ高いほど、いちいち許諾をとったりすることなく、むしろ情報提供するのは企業の務めだというように、公益の目的だということになりますと、その辺りの幅というか、どの程度のものを対象にしているかというところがもう少し明確になれば、それに応じた議論ができるので、もう少しここの議論も収束してくるのではないかという気がいたします。それから、コストの点もやはり対象が広いか、狭いかでかなり変わってきます。このような次第で意見として三角となっておりますので、その趣旨だけここで明らかにさせていただければと思います。

(中山主査) 先程村上委員のおっしゃったような危険なものとか、そういうものへ広げてしまうとものすごく広がってしまうと思うのです。今、ここで議論されているのは、薬事法上提供する義務があるということが書いてあって、義務を履行しようと思ったら侵害になる可能性があるという、そこの範囲だと思うのですね。
 したがって、もしこれがないとすれば、製薬業界としてはスイスのこの論文がありますよということを医者に教えて、医者は自分で、自分のリスクでコピーする、交渉するということになるという、こういう話ではないかと思うのですけれども。どうぞ。

(村上委員) 中山先生が言われている、緊急の医者がやるような場合というのは、これは誰も特にそれに問題があるとは思わないので、当然コピー、緊急の重要な事態はいいという感じになると思うのです。
 ただ、質問は、ここの2−Cの質問ですから、適正な使用、資料に必要な情報を、しかも関連する研究論文等を医療関係者に配付することについてですから、この表現はやはりかなり広いものまで含むような話になるので、やはり先程も大渕委員が言われたように、ある程度限定をつけるか何かして、この2−Cの質問をつくらないと、広すぎるのではないかなという気はいたします。

(中山主査) 他に、森田委員、どうぞ。

(森田委員) ここでの議論のあり方というか、どういう形で議論するかということについて、私自身必ずしもよく理解できていないのでお伺いしたいのですが、普通の法律論の場合には、ある場合に一定の結論を認めるのがいいかどうかということを考える時には、ある基準ないし要件を立てて、そのような基準を立てるのが適切かということを議論した上で、それに当てはまるかどうかという形で議論がなされるのだと思います。法律にもそういう基準に当たるものを定めて、また政令等に任する場合にもそれに当たる手続が具体的にどれに当たるかというのを指定するというような方法がとられるように思います。どういう基準でわれわれはこの問題を判断するのかというのは法律論ですから、まずその基準を議論して、次いで、その基準に当てはまるかどうかというのは事実認識の問題ですから、これについてはいろいろ情報を得て要件が充足されているかどうかを議論していく。
 これが普通の法律論だと思いますけれども、著作権法を対象とするここでの議論というのはそれとはやや異なって、こういう場合に認めるべきかどうかという結論それ自体が是か、否かということを議論するということなのでしょうか。今日は多数決ではないというお話しですけれども、最終的にはこういう場合に権利制限を認めるという結論を認めるかどうかのみを議論すればよいのでしょうか。それを法律に定める場合にも、特許審査手続や薬事行政の場合にはいいとか、あるいは法律には抽象的に公益のために必要な場合とでも定めておいて、政令には具体的な結論を書いておくということになるのでしょうか。なぜそうなったのかというのは、要するに諸般の事情を総合考慮してよいという結論をここで得たからということになるわけでありますから、それは結論についての賛否を問うことになるわけです。この場合では、どちらのタイプの議論が求められているかというのが私のお伺いしたいところですが、先程からの議論を伺っておりますと、それぞれの委員の方が権利制限を認めてよいのではないかと言われる時には、例えば一定の文書の提出が法律上の義務になっているからとか、あるいは緊急やむを得ない場合に当たるとか、要件ないしファクターを挙げておられるように思いますけれども、そういう要件を前提とするならば権利制限を認めてよいという、要件論と結びついた形で意見集約を図っていくのか、最終的にはこの2−Cの場合はいいですか、悪いですかという結論それ自体についての賛否を問う形で意見集約を図っていくのか、これはこの審議会のあり方の問題だと思いますけれども、この辺りの議論の進め方の見通しというのを教えていただきますと、私もそれに沿った形で議論ができると思います。私自身は著作権法の専門家ではありませんので、その辺りを教えていただければと思います。

(中山主査) 恐らく一般的な基準として、まずベルヌ条約がある。あの条約に違反することはできない。あとは他の権利制限条項がいっぱいありますから、それとの並びで公益性と著作権者の利益等バランスを図るという、そういう前提でやってきたような気がしますけれども。
 はい、どうぞ、石井委員。

(石井委員) 何て言ったらいいのですかね。誰も公益を無視して権利者を保護しろなんて多分考えないと思うのですね。問題は公益という概念を一般的な概念としてバーンとぶつけてしまうのか、それとも、つまり例えばこの医薬品の危険性について、情報提供しないことが公益に反するのだというようなふうに一般的に考えてしまうのか、あるいは対価を払うことは当然権利者を保護するということを前提にしながら、これこれこういう場合には、例えば著作権者がなかなか見つからないとか何とかといういろいろな場合に、それは公益に反するのだというふうに言うのかで、議論の立て方がかなり違うと思うのです。今、森田委員がおっしゃったのは、結局そういう趣旨ではないかと思うのですよね。そこを私、伺っているわけなのです。
 例えばここのところで医療関係者に頒布するという時に、これは恐らく2次コピーになる可能性がものすごく高いわけです。この薬は副作用があるということを仮に行政が認定して、それで医療関係者に注意を喚起しようという時には、すでにその前にコピーをして、その手続が行われているわけですね。そこはいいでしょう。だけど、それを厚生労働省が病院に対して、あるいは医師会に対して注意を喚起する時にコピーをして、その書類につける。
 あるいは先程主査がおっしゃったように、これこれこういう論文をコピーしなさいという教唆をするという。あえて教唆と言いますけれども、そういうこと自体が私は少し気になるのです。
 ですからどういう行為が具体的に公益に反するのかという形で、それはどういうふうに法律に書くのか、政令に書くのか、それはいろいろ議論の余地があると思うのですけれども、何かいきなり公益というものをポンとぶつけてしまって権利制限は当然である、あるいは適当であるという議論の立て方していいのだろうかという、素人の感想でございます。

(中山主査) 教唆というのは違います。つまり、書誌的事項には著作権がありません。書誌的事項、誰がどの論文にこういうタイトルの本を書いたという、そういう書誌的な事項には著作権はありませんので、それを提供すること自体は、これは著作権法上まったく問題ない。もしコピーできないとすれば、書誌的事項だけを提供することになってしまいますよという、こういう話をしただけで、教唆とかそういう話ではないのですけれども。

(石井委員) この論文をコピーしなさいって。

(中山主査) いや、そうではなくて、それは医者が自分のリスクで、あるいは自分の責任で権利処理をしなさいという、そういう意味になるわけですね。書誌的事項は図書館に行ってカードを見ればみんな書いてあることですから、それ自体は問題ないのですが。
 どうぞ、課長。

(吉川著作権課長) これはまるばつないし三角で見たとしても、コメントをお読みしても、かなり意見の分かれるところだと思います。ですから今まで出たような意見をまとめるような形で、もう1度この場で文言について議論していただいたらどうかと思います。
 全体的な評価としては、明確にこれを推進、このまま無償でOKであるということでは少しまずいのではないかという意見がかなり強かったということではないかと思います。
 御指摘の中には、もう少しコストの面を明確にしないと、仮に有償にするとしてもコストがかかりすぎたらばからしいと、そういうようなこともあるかもしれません。有償論も考えてみたこともありますが、確かにコストの方がかかるような気もいたします。こういった問題を含めてまとめてはいかがかと思います。

(中山主査) この点は何か他に御意見ございましたら。
 それでは次の図書館に移りたいと思います。図書館関係の権利制限につきまして、御意見を頂戴したいと思います。
 これはばつの方もおられた項目もありますけれども、いかがでしょうか。
 それではもし後で時間が少し残りましたら、また御意見を頂戴することがあるかもしれませんけれども、次の論点に移りたいと思います。次は障害者福祉関係の権利制限につきまして、何か御意見ございましたらお願いいたします。
 どうぞ、山本委員。

(山本委員) 私は4−Aと4−Bについては、一部ばつにしております。なぜばつにするかといいますと、公衆送信という形での提供を認めるところまでの必要性があるのかというところに疑問を持っております。当然、障害者に対して、健常者と同じような情報の入手の機会を与えるということは必要なのですが、健常者であっても公衆送信で当然に利用できるわけではありませんので、障害者に対しては権利制限で当然に公衆送信ができるというところまでは、当然にはいかないのだろうなという趣旨で、公衆送信に関連するところはばつをつけさせていただいております。

(中山主査) はい、この点についていかがでしょうか。これは私が答えることではないのかもしれませんけれども、多分趣旨は健常者は歩いて図書館にいけるけれども、歩いてもいけない人もいるということではないかと。ですから、歩いていくことの代替手段としての公衆送信ではないかと思うのですけれども、その点は課長、いかがでしょう。

(吉川著作権課長) 一般論で、確かにあまり広げてしまうと山本委員が御指摘のような問題があるかと思います。しかし、どうやらこの4−Aで、今考えられていることは、録音図書を作ることができる点字図書館で作ったものを、わざわざ郵送等で貸し出さないで、管理されたアクセスコードを渡しながら、家にいてもその録音が聞けるようにするという、比較的ささやかな要望なのではないかと思います。もちろんわざわざ送ったりするよりも利用が進むということですが、限定された範囲内での利用と受け取って良いようにも思います。そういう提案であれば、山本委員のあまり広げるという辺りの御懸念は、この件に関しては拭えるかなと、こんなふうに考えております。

(中山主査) よろしいでしょうか。これは障害者だけが聞けるような特殊な装置というか、番号か分かりませんけれども、それは当然つけるわけですね。

(吉川著作権課長) はい、利用については十分管理されると承知しております。

(大渕委員) 今、吉川課長から御説明のあった点は非常に重要な点ではないかと思いまして、私も4−Aについてはどこかでそういう御説明をお聞きしましたので、そういう管理された状態であればこれはまるということであります。あと4−B以下で三角をつけさせていただいているのは、今の提案自体もさることながら、そういう外的条件についての御説明があまりなかったため、判断しかねて三角にしておりますので、今御説明になったような何か有益な情報等がありましたら提供していただければ、そういう情報を待って検討しますので、もちろんお分かりになる範囲で結構ですから、よろしくお願いいたします。

(中山主査) 手話は健常者にあまり関係ないと思うのですけれども、問題は恐らく字幕の方だろうと思いますけれども、これは現在のやっている字幕も確か特殊な装置が要るのではなかったでしょう。誰でも見られるというわけではないですね。

(吉川著作権課長) 今は放送に関してそういう特別な規定はございますけれども、これはまさに他の健常者がこれを利用するということはまず考えられないという利用形態だと、限定されていると思います。ただ、例えば4−Bとか、大渕委員が御指摘のように、例えば簡単にいえばDVD等に字幕をつけてあげるということであれば、もちろん大半の健常者にはそれは必要ではないのではないかとは思いますけれども、それを健常者の方にも見られてしまうという可能性はあるとは思います。

(中山主査) 確認としては、4−Aの方は健常者が見られないような装置があるけれども、Bの方は事実上見ないだろうと、こういう話ですか。

(吉川著作権課長) そうだと思います。

(中山主査) 他に御意見ございませんでしょうか。

(前田委員) 4−Bに関して、私はばつにさせていただいたのですが、例えば映画を聴覚障害者向けの貸出しの用に供する施設において、DVD作品等を1つは通常の価格で購入して、それに字幕をつけて貸すというのは理解できるのですけれども、まったく自由に複製できる、1本分も買わなくても複製できるということだと、少しバランスを欠くのではないかなという気がいたしました。
 そういう意味で、専ら聴覚障害者向けの貸出しの用に供するために複製できるということを認める前提としては、本来1本分は購入している、正規の対価を払っているということは最低限必要だろうと思います。

(中山主査) これは少し課長に確認したいのですけれども、これは映画を複製して字幕をつけるということですか。それとも今前田委員がおっしゃったように、買ってきて字幕を入れるということですか。

(吉川著作権課長) 字幕の部分だけでの権利制限が妥当とされているものと思います。

(中山主査) そうでしょうね。映画自体まで複製を認めて、そこに字幕を入れるということまで認めているのではないと思うのですけれども、仮に認めるとした場合ですね。映画はおっしゃったように自分で買いなさい、そこに字幕を入れなさいということだと思いますけれども。

(前田委員) そういう趣旨であれば、私としては理解できます。

(中山主査) ただ、それを確認したいのですけれども、それでよろしいですね。

(吉川著作権課長) 念を押すことにいたしますが、そういう意味に受け取るしかないと思います。

(中山主査) 音まで複製してしまう権利を与えるということだと、前田委員がおっしゃるように少しおかしいと思いますけれども、その辺が技術的にどうなのか、私にはよく分かりませんけれども。

(吉川著作権課長) ただ、商業的にそのようなサービスが行われて、そして市場の中でこういうものが提供されて、福祉施設等で購入するというような、そういう利用の仕方というのがいいのかもしれないという問題はあります。権利制限をしてしまって、いわば市場による解決の道を狭めるということでいいのかという問題は残るかもしれないと思います。

(中山主査) 1本買って字幕を入れて、それを貸す時の貸与権は普通のビデオと同じということになるのでしょうか。字幕を入れてもいいというだけの話なのでしょうか。

(吉川著作権課長) 中途半端な気もしますが、ここはそういうことなのだと受け取っております。

(中山主査) その点、他に何か御意見ございましたら。どうぞ、茶園委員。

(茶園委員) すみません。少し前に戻っていただいて図書館の件なのですけれども、どなたも御発言なかったので、私も分からず、自分の意見がまだないので、これから検討される場合は含めて検討いただきたいと思っていることなのですけれども、現行著作権法においては、図書館に関しては31条で、図書館だけのために特別な規定が設けられているわけですけれども、この規定を見ると、図書館については基本的に、図書館で所蔵されている有体の書籍等をそこで複製等ができるということが定められていて、利用者はそこの図書館に実際に行って、そこで複製を依頼するとかというイメージで認識できるものと思います。これに対して、権利制限の要望を説明された時は、図書館というのは、情報社会の進展に従って、情報発信基地みたいに機能がどんどん拡大しているといいますか、進展しているということの文脈で説明されたと思うのですね。
 ですから、例えばインターネットで情報をとった場合にどうするかという問題が出されたのですが、恐らくこのような問題について図書館というものを著作権法でどう取り扱うかということは、31条が前提とする図書館とはかなり違う図書館像というのを考えるべきなのか、あるいは考えるべきだとしたらどういうものかということを検討することが必要となると思うのです。そうでないと、この類の要望にどのように対応することが適当であるのかは決められないと思います。
 ですから、この図書館に関係しては現行の法律を若干修正するとか、拡大するとか、そのようなことに止まる問題はいいのですけれども、それ以上のことをしようと思えば、著作権法で図書館というのをどう取り扱うかということ自体を根本的に考える必要があるのではないか、というふうに思います。
 私、分からないところは、恐らくばつなり三角を書かせていただいたと思います。以上です。

(中山主査) もう少し、どういう図書館像をお考えか、お願いします。

(茶園委員) 今言いましたように、31条のように有体物、本を所蔵している図書館に行ってその本を見るとか、その本をコピーするとかということに止まらずに、図書館という場所に行けば、そこで何かインターネットで得られるものが、実はインターネットで得られる情報というのはどこからでも得られるのに、図書館に行ったらそこであるいは他の場所ではできないようなことができるとか、図書館というものをそのようにするのか、そういうような機能を持たせるべきなのか、何かそこら辺が私にはよく分かりません。恐らく今の31条みたいに、図書館が持っている有体物だけを何かすればいいというのは、あるいは時代に合っていないということなのかもしれませんけれども、じゃあどう考えるのだというのが私自身よく分かりませんで、恐らくそういうところを考えないと、要望されているものすべてについてどう対応するのかというのが分からないのではないかな、というふうに思っています。

(中山主査) はい。図書館も例えば将来デジタル化してしまって、机も椅子もない、外部からのアクセスで答えるとか、そういうイメージも入れて考えるべきであると、こういう話とも違うわけですね。

(茶園委員) もしそうなら、図書館という名前がついていたら、他ではできないようなことができるということにするとすると、なぜできるのかというのが説明できないといけないと思うのですけれども、図書館という名前がついているところの場所だからというのでは、恐らく説明にはならないように思います。今の31条のように図書館というところで所蔵されている書籍について利用するということでしたら分かるのですけれども、それを超えるものをなぜできるということにするならば、恐らく31条が前提とするような図書館とはちょっと違うようなことになるのではないかな、というふうに思っています。
 このようなことを言いながら申し訳ありませんが、私はまだ分かっていませんので、恐らくそういうことを考える必要があるのではないかなと思っています。

(中山主査) はい、ありがとうございました。はい、どうぞ、浜野委員。

(浜野委員) 今、国会図書館でインターネット上で公開されたものを全部、アーカイブ化しようか、やめようかと議論が始まってますけれども、ですから国会図書館に行くと、もし理想的にいうと、これまでに発表されたものを全部遡って検索できる可能性もあるのですね。それはそれなのですけれども、悪意とか非常に犯罪を引き起こしたり、原子爆弾の作り方なんて、それを削除されたものまで残るわけですよね。アーカイブプロジェクトというので、似たことは誰でも今アクセスはできますけれども、そういったものを公共の場でコピーしたいと言ったらそれを許すのかということもあって、それで私、三角つけたのですけれども、情報の質が担保されていない、非常に悪意とか危ない情報までも印刷をさせてあげる意味があるのかなというのは、少し疑問に残りました。

(中山主査) それは恐らく著作権法の問題ではなくて、図書館が複製を認めないと言ったものは駄目で、現に国会図書館も柵があって、一定の人しか見られないところに発禁本が所蔵されています。ポルノ等ですが、それは複製もできません。図書館が複製を認めない本につき、複製を請求した事件で、判例も複製を認めなかった例があります。複製をするか否かは図書館側の判断であり、それをコピーしなければならないという義務は図書館には生じません。

(浜野委員) 本の場合は、わりとそれを検証しやすいのですけれども、こういったデータだと図書館員が全部そこまでできるでしょうか。ああ、そうか。それはその判断です。分かりました。

(中山主査) 結果的に出てしまうということは、それはあり得るかもしれませんけれども、ちょっとそれは著作権法ではなかなか扱いにくい問題だと思います。現に大学なんかでも寄贈したものが、これは公開しないでほしいという条件で寄贈しているものもありますし、それはコピーを認めておりませんし、それは図書館の自由だと思います。
 他に何か図書館と今の次のものでも結構でございますけれども、図書館と障害者の問題、どちらでも結構でございますけれども。はい、どうぞ。

(森田委員) 先程の茶園委員の問題提起は、やはり先程と同じように31条を改正する場合も問題を整理していくとどうなるかという、その議論をする中でおのずと出てくる議論ではないかと思います。この3に並んでいるものは、私が見たところ、種々雑多なものが入っていて、図書館というキーワードで括っているけれども、果たしてこれは図書館の問題なのかどうかということが怪しいものも入っていますので、これらを統一的に説明できるかというと、そうではないのではないかという感触を持っています。
 この中で図書館像という面では、3−Aの他の図書館から借りた場合というのが先程の茶園委員のお話に若干関わるかと思いますけれども、これは私のイメージですと、図書館が相互貸借するような場合には全体を1個の図書館として見るというようなイメージに近いかと思います。この場合には、どこかに1冊あれば足りるということになってくるとすると、従来とは違って、各図書館で1冊ずつないとできなかったサービスが、どこかに1冊あればいいということになるということですので、前回も議論があったと思いますが、これは本来であればそれぞれの図書館で購入すべきところを全体で1冊購入すれば済むわけですから、その分だけ図書館の予算が少なくなった部分をこういう形でカバーできる。ある意味では文教政策において図書館に割り振られるべき予算が不足した部分を権利制限で補おうという文化振興策であろうかと思いますが、現状にかんがみますと、そういう政策もあり得べしということで私はまるをつけました。この問題も、そういう整理になるのかどうかということについても議論をすべきであって、こうした整理をしていく中で、どういう意味でこれがいいのか、悪いのかということをはっきりさせることが重要ではないかと思います。

(中山主査) はい、前田委員、どうぞ。

(前田委員) 今の3−Aにつきましては、前回か前々回か、やはり複数の図書館が共同して1冊しか購入しないようになるかもしれないけれども、それはどうなのかという議論があったかと思います。
 私としては、それはよくないのではないか。つまり、権利者に犠牲を強いるよりは、それは図書館の予算を拡大するということで解決すべき問題なのかなと、私は思います。
 しかし、入手困難な書籍もいっぱいあるわけでして、入手困難な書籍について相互貸借で利用できるようにする、31条の利用もできるようにするということは賛成で、ただこの3−Aを認めることによって複数の図書館が共同して1冊しか購入しないというような事態を招く恐れがあるとすれば、それについては何らかの手当てが必要で、入手困難な書籍に限るというような限定をすることが必要なのではないかと思います。

(中山主査) 他にそのことにつきまして何か、どうぞ、土肥委員。

(土肥委員) 図書館で今議論があるところでございますけれども、確かに前田委員おっしゃるように、1冊が動くということになると、1冊しか買わなくてどんどん複製がされるということになるのだろうと思うのですが、しかし利用者がそこに行けば複製できるわけです。だから、利用者がそこに行って複製を受けることは現行法上もちろんできる。それが例えば距離を異にした例えば大学等の図書館に置いて、その大学間の図書館サービスで本が移ってきて、それを図書館が複製しては駄目なのだけれども、それを本人が借りて、例えば30条の私的使用でコピーすることもできますよね。
 そうすると、ではなぜ図書館ができないのかという、そこの説明が少し分からないのですよね。ですから私としては、それは今おっしゃっておられるようなところは賛成であるという意味でまるをつけているところなのです。

(中山主査) これは、確かにいろいろな要素があって、ある地域では図書館の連合が相談して、相互貸借を大いに進めて、なるべく本の種類をその地域全体で増やそうということをやっているところがあると聞いてますけれども、そうすると確かにそれは少しは売り上げが減るという可能性もあるかもしれません。しかし、逆に過疎地にいる人は、これをやらないとわざわざ東京まで新幹線でやってくるとか、そういう可能性もあるとか、いろいろな要素があり得ると思いますね。
 はい、どうぞ。

(苗村委員) 今の主査がおっしゃったことと関連して、多分これは結論を出す前に、やはり少し実態調査といいますか、特に量的なものが要ると思うのですが。31条の対象となる図書館の数がどのくらい変化してきているのか。比較的大幅に増えたのではないかと思うのですが。もしそうだとした時に、過疎地など比較的周りに人の少ないところに通常の公共図書館を作るのは非常に効率が悪いので、狭い建物で少数の資料を置いておいて、あとは遠隔から取り寄せて住民にサービスするというのはある種の合理性がありますし、その時によそから借りてその図書館、例えばその都市の中心から借りてきた図書をコピーができないと。見てもらった上で、また町の中へ行って複製をしてくださいというのは、確かに不合理である。
 それはそれでいいのですが、逆に何らかの理由で図書館の数がむしろ頭打ち、あるいは減る傾向にあって、従来沢山の本を置いておいたところがスペースを少なくし、むしろ電子的なプリントメカニズム機構だけを置いておいて、図書を収蔵しないということになってくると、これは多分いろいろな意味で著作権者の側から見て大きな不利益を被る恐れがある。そこら辺の実態を少し調べないと、これを認めることが本当によりよい方向なのかどうなのか、ちょっと分からないような気がするのですが。
 多分質問するよりも、多分これは議論する前に図書館協会側からちょっとデータを出してもらった方がいいのではないかという感じがしました。以上です。

(中山主査) はい、ありがとうございます。他に御意見ございましたら。はい、どうぞ、石井先生。

(石井委員) 素人がしばしば口出しして申し訳ないのですが、私、今たまたま学術情報に関する審議会の仕事をやっているものですから、そこでの議論のやりとりと比べてみますと、どうも問題の立て方の位相が違うというのか、何といったらいいのでしょうか。学術情報、ことに理科系ですと、もうどんどんデジタル化、ジャーナルなんかデジタル化しているわけですね。片方で、それからもう欧米においては有名な大会社が有力大学の図書館のあれをデジタル化して、それで検索エンジンで情報を探り出して、研究者が、あるいはそういった研究機関が、そしてダウンロードできるようにするという、そういう商売をしているのです。商売というか、その事業を開始している、まだでき上がっているわけではないですけれども、そっちの方向へ向かって大きく動き出している。
 ですから図書館というのは大学の学術情報に関する限り、有体物というのはほとんどなくなっていく傾向がある。そういう現状の中で、いったいこの委員会は、どう舵を切るのか。これからこの小委員会が図書館というものをどういう種類の図書館を想定してやっていくのかということが、非常に大きなことではないのか。 そうしないと、どうもこっちではこうだけれども、こっちではこうだという、常に問題が複雑化されて、議論がばらけてしまう可能性があるなという感想を持ったのですけれども。

(中山主査) 理系はそういう傾向がもちろんあると思いますけれども、仮にそうなった場合には、31条に関係なく自分でどこかのデータベースにアクセスして取るということになれば、31条は関係なくなるというだけの話で、31条はそれはおっしゃるとおりどんどん減っていくかもしれませんけれども、今なおかつそういう要請が結構あるということなので、それをどうしようかという話だと思うのですけれども。

(吉川著作権課長) 図書館としてももちろんデータベースの利用契約はしていて、そういったデジタル情報に関しては、図書館に来てくれればサービスができる。しかし、それについて他館に融通しようという考えは、契約で縛られているのでないと思います。
 しかし、図書館資料に関しては相互貸借をしているということもあり、ここで松田委員がお書きのように、私も最初、相互貸借でA館からB館に来た。B館の窓口に来た私が借り受けて、自分でコピーをとればいいではないかと思ったのでございますけれども、図書館界のルールでは、他館からの資料は貸し出してはならないというのは大原則だということでございまして、そうするとまさに中山主査が御指摘のような、無意味な手間をかけさせるということになるので、不合理だと考えられます。これもデジタル時代にしてはささやかな要望なのではないかなと見たわけでございます。
 この要望は、公共図書館の間の相互貸借を主として念頭に置いているのではないか、と思われます。

(中山主査) 現に大学でも、理科系は知りませんけれども、法学部なんかでは相互貸借をやってますので、あれをコピーはしてはいけないということになると、将来はデジタル化すれば別ですけれども、研究に困ることも起きるのではないかと思うのですけれども。ですから、それをどうするかという議論なわけで、これ自体が意味がなくなってしまうのは相当先の話ではないかという気はしますけれども。
 他に何か御意見ございましたら。よろしいでしょうか。
 それではどうしましょうか。御協力を得て、予定より早く進んでおりますけれども、後もありますので次の1項目だけ、休憩を挟まずにやりたいと思います。5の学校教育ですけれども、学校教育関係における権利制限につきまして、御意見がございましたらお願いいたします。
 こちらはいろいろ問題があろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。はい、どうぞ、土肥委員。

(土肥委員) 5のところでございますけれども、A、B、Cですかね。3つ質問事項があるわけです。5−Bというのは、こういう教育資源の、あるいは教育教材、あるいはプログラムの保全共有化ということだと思いますけれども、サーバーに蓄積をさせることで1人の教員の作った教育資源が他の教員に共有化される。こういういいものが積み重ねられていい教育手法が実現される。そういう趣旨だろうと思って、私はこれは重要なことではないか、必要なことではないかということで賛成をしたということです。
 それから5−Cは、これは有線LANをもう認めて条文上規定されておりますこれは本来の趣旨からすれば恐らく少しずれているはずなのですけれども、結果としてこれ、有線でOKで、なぜ無線は駄目なのかというところが説明しがたいわけで、確かにそのとおりではないかと思いますので、賛成をしておるということでございます。
 ただ5−Aなのですけれども、5−Aというのは非常に広がりのある行為でございまして、同時性というような要件はここにはないわけですね。授業を受けるものに対しては非常に広く、そしてまた学校その他の教育機関ということで非常に広いことになりますので、このままでは少し心配があるという意味でございます。もしこういうものが絞り込まれるということを考えた場合には、また別途検討ができるのではないかと思うのですけれども、ここで示されているようなものであれば、極めていわゆるベルヌ条約の権利者の利益を不当に害する恐れがあり得るのではないかと、こういう認識を持っております。以上でございます。

(中山主査) 他に御意見ございましたら。はい、どうぞ。

(浜野委員) 先程5−Bのサーバーに蓄積するというのは、先生が自作された教材だけを限定しているのですか。私は何か先生たちが利用される他の人が作った著作物をためるというふうにも少し読めたので、少し疑問に感じたのですけれども、これは。

(吉川著作権課長) このBは学校の授業で使うために権利制限規定に基づいて複製をした、他人の著作物を含めてサーバーに載せておくということですので、他人の著作物が一部含まれる可能性があるわけでございます。他人の著作物の複製物がかなり長い期間使われる恐れがあるわけでございますけれども、提案されている清水先生は、蓄積については一定の限界を設けて、長期間に及ぶ利用は避けることもお考えになっているということを付け加えておられました。

(中山主査) よろしいでしょうか。他に何かございましたら。はい、森田委員。

(森田委員) 前回も申し上げて、表にも書いたことなのですけれども、そうしますとこの35条の但書のような制限というのは、従前と同じように適用されるということなのかどうかということが分からなくて、例えば小学校で1学年30人くらいのクラスがあったとして、今まではその30人が対象であったのが今後は1学年みんな共有して使うということが可能になってくる。あるいは、学年を越えて共有するとなれば、そこはさらに人数は増えてくるわけですが、それで人数が増えて但書に引っかかったら駄目ですよということなのか、それともそれはそういう形で共有することになればおのずと利用者の範囲が広がるので、当然そこで想定されているような範囲においては、従来の但書よりは緩やかに解釈しますよということが含意されていないと、緩めたことの意味はないではないか、だとすれば、改正をする場合には当然但書が緩やかに解釈されることが含意されているという理解でいくのか。前回質問した時のお答えも、そこは何か当然に含意されているというふうに受け止めてられておられるように、私はお答えを理解したのですけれども、これはどうなのかというのが前提として確認されないと、最後までそれぞれにとって好都合なように理解していて、結局最後ははっきりしないまま解釈に委ねるということになり、実際上運用は恣意的になされるということになり黙認される範囲が広がったということになるのではないかと思います。したがって、この点はどちらなのかということをはっきりしていただく必要があるのではないかと思います。

(吉川著作権課長) これは例えばBのところでも市川委員がお書きのように、利益が不当に害されることがないということの場合をより明確にする必要があるのではないかと考えられます。提案者の先生方も、もしAとかBとか権利制限を広げる場合には、これは無限に広がってしまわないように限定をつけるということの必要性は認識されているところです。自分たちでもガイドラインを作るというようなことは当然だと思っているとおっしゃっていたので、そういう面では権利者の利益とのバランス上、現在の但書が有効に機能するように何らかの歯止めが、設けられることが望ましいと思うところであります。

(中山主査) よろしいでしょうか。

(森田委員) そうしますと、先程のどちらなのかといえば、多少広がるということなのですね。

(吉川著作権課長) 現実には多少広がるのではないかと思います。ただ、何かストッパーになるような要件を付加するとか、そういう工夫を考えた方がいいのではないか。もう少し具体的にどういうものが必要なのかというのは御議論いただいた方がいいと思うのですけれども、放っておけばなしくずし的に拡大されてしまうという、森田委員の御指摘のとおりになってしまう恐れがあるのではないでしょうか。

(土肥委員) すみません。2回お話をする予定はなかったのですけれども、今でも35条の規定の下で教育、授業の過程で必要な範囲で、この35条の認める範囲で他人の著作物を複製することができるわけですけれども、それは毎回毎回やっていかないといけないということを考えているわけですね、これは。だけど教育資源というものは、恐らくどんどんよくなった方がいいのではないかというふうに思っているのですね。だから、次のものがやる場合でも元からやってしまえば同じことになるのだと思うのですよ。
 つまり、複製されているその著作物をもう1度新しく教員がそこを複製をして、さらにやっていけば同じことになると思うのですけれども、それを毎回毎回初めからやる必要があるのか、あるいは教育資源を共有化してよりいいものに高めていくことができるような仕組みの方がいいのか、そういうことではないかと思うのですけれども、それは違いますか。

(森田委員) その目的はよく理解できますし、現に法科大学院でもそういうことはやっておりまして、それ自体は結構なのですけれども、その結果いろいろな著作物をためていってデータベース化すれば、ありとあらゆる法学文献はそこに入っていて、「その関連する授業の過程で」ということでは歯止めがなくなるのではないかと思います。やはりその目的外ということとは別の形で歯止めがないと困るのではないか。その歯止めはどういうふうにやりますかというのが私の申し上げているところです。
 前回の議論をお伺いしてますと、但書の解釈について、大学のような非常に大人数の授業でも従来もよかったのだと理解されている方もおられたように思いましたので、そこの解釈が従来から曖昧であって、ますますそこが曖昧になってくると、もう実際上は但書の制限はなくて、授業の過程ということであれば何でもいいということになってしまいはしないかということが危惧される、ということであります。

(土肥委員) 僕は、そういう歯止めがなくなるような事態を全然考えていなかったものですから。つまり、35条1項のこの但書というのはある、その前提の下での話ではないかな。そう理解をせざるを得ないのではないかと思うのですけれども。
 これが但書がないような形で、今森田委員がおっしゃるような形での、そういう事態は想定していない。それは逆に言えば、著作権者の利益を不当に害するような場合についてまで、特別な場合として著作権の制限を認めるということになる。それはベルヌ条約上絶対にできない話ですので、私はそういう理解をしております。

(中山主査) この問題は、この35条但書の条文は、もともとベルヌ条約から来た文言ですけれども、権利者の正当な利益を害さないという要件は、もともとが曖昧なところなので、確かに森田先生がおっしゃったように、これからどんどん広がってしまう可能性もありますけれども、仮にこれを入れた場合に、ではどういう歯止めをつければいいか。今の但書に何か付け加えてやればいいか。何を付け加えればいいかってなかなか難しい問題、部数でもなかなか制限できないでしょうし、難しい問題がありますけれども、一応そういう心配もあるわけで、大いに議論をしなければいけないとは思いますけれども。

(森田委員) 以前にも議論になったかと思いますけれども、こういうタイプの法律の解釈について、例えば小学校だったら1学年何人くらいまでであったらよいとか、大学の場合はどうなるかとか、そういう学校の種別や具体的な人数を含んだガイドラインがあると実効的だと思いますが、そういうものを文化庁として用意できるかどうか。そもそも著作権法については規制法ではないので解釈のガイドラインというのは考えにくいという御指摘もあったかと思います。
 しかし、例えば電子商取引については、経済産業省が準則というのを、これは中山先生が中心となってまとめておられまして、必ずしも当該省庁が所管している法律でなくても、あるいは他の省庁が所管しているものであってもそういう解釈を示した準則というものが現にあるわけですので、著作権法についても文化庁が解釈ガイドラインを示すということはありうることではないかと思います。そういう目安的なものをガイドラインで用意していけば、それぞれの学校教育機関ではそれに照らしてよいかどうかというのを判断できる。そういうものを用意できるのであれば、法律の規定自体はこのままであってもいいのだと思うのですけれども、その辺りの立法技術といいますか、実際の工夫としてどういう選択肢があるのかというレベルまで落とし込んで中身を詰めていくということにしないと、何か事実上黙認をしたという結論になってしまうのではないかと思います。

(中山主査) はい。いずれにしろ、その点は大いに留意をしていただきたいと思いますけれども、他に何か御意見ございましたら。はい、どうぞ。

(苗村委員) 意見を提出しないで発言するのは申し訳ないのですが、私はこの5の項目は3つとも積極的に、しかも緊急にやるべきだと思っております。その時に当然条件がありまして、先程の35条についている但書はそのまま残すことと、学校関係者が自らガイドラインを作るということが条件になると思います。
 と言いますのは、これは小学校から大学まで今、日本中の教育機関でこのeラーニング、あるいはそこまでいかないにしてもインターネット、ウェブを使った電子教材化、その利用といったことはどんどん進んでおりますので、従来型の紙による複製という使い方を前提とした35条約の適用というのが、ある意味ではかなり実態から外れてきている。しかも、それをかなり急激に急速に推進している立場の先生から、この前も提案があったと思いますので、これを後回しにするというのは実態と法律上の文言のずれを拡大してしまうので、結論はどうであれ、ともかく至急、緊急に検討すべき課題だと思います。
 先程ちょっと申し上げたように、これはまる三角ばつは賛成、反対というよりも、緊急に検討すべきというのがまるであれば、私は間違いなくまるだと思います。以上です。

(中山主査) はい、ありがとうございます。他に御意見ございましたら。
 あと、少し前に戻りますけれども、図書館のファックス、インターネットでの送付というのは、これはいかがでしょうか。比較的意見がコメントを頂戴した中では分かれておりましたけれども。28ページですね。

(吉川著作権課長) この提案はこう理解すべきだと思うのですが、ファクシミリ等を使って図書館間の移送をするということです。即ち、自宅にいる利用者に対して図書館から送ってあげるという意味ではないという説明だったと思うのです。同じようにインターネットを使用してと書いてあるので、ぎょっとしますけれども、どうやら図書館の間を送る時にメールの添付で送りますという意味です。そして御説明では、利用者にそのハードコピーを渡してあげて、そしてその後はファイルを消去するのだと。こういうような御説明であったので、ちょっとぎょっとするようなタイトルにはなっていますけれども、どうやらハードコピーにして、もので図書館間を送るか、ファクシミリ等を使うかという違いがあるだけです。ですから、これも比較的ささやかな提案なのではないかと思うのです。

(中山主査) この前の常世田さんのお話ですと、そういう話でした。しかし私もコメントに書いたのですけれども、図書館に行かなくても今はコピーを郵送してくれと言えば郵送してくれるわけですね。郵送はいいけれども、ファックスはいけないというのが今の解釈のようですね。特に外国からの依頼があって、理系の文献など困る場合がずいぶんあるという話も聞いているのですけれども。それは一応、図書館側の現在の要求というか、要望には入っていなかったわけですね。
 少なくとも図書館側のやりとりにファックスを使っていいかどうかと。ファックス、eメールを使っていいかどうか、これはいかがでしょうか。

(森田委員) 今の補足の内容は2つ要件があって、図書館間であるということと、送付した後消去して、その複製物は残さないという、2つの要件を満たす限りにおいてということでいいのか。その2つ目の要件である消去というのは事実上そうするというだけで、要件ではないとすると、そういう形で図書館間でやりとりしたものをため込んでいくと、事実上のアーカイブ化ができるという方向に進む可能性がありますけれども、そこは消去するということが要件となっているという理解でよろしいですか。

(吉川著作権課長) そうです。非常に条文の書き方としては非常に複雑になりそうですけれども、そういう要望の内容だと思います。

(中山主査) 仮にそれを入れるとすれば、プログラムのところなんかでも同じような条文がありますから、不可能ではないと思いますね。条文に書くことは可能だと思いますけれども。
 いずれにせよ郵送はいい、ファックスはいけないという。つまり、それは手元に残るからというのが一番大きな理由だとは思うのですけれども。はい、茶園委員、どうぞ。

(茶園委員) すみません。それでしたら私は誤解していたかもしれません。ではこれは、ファクシミリとか、あるいはインターネットで図書館間を送るということですか。

(中山主査) そうです。この要望はそうです。

(茶園委員) とすると、そもそも公衆送信ではないということなのでしょうか。

(吉川著作権課長) 公衆送信ではありません。

(茶園委員) では、そもそも権利制限をかける必要がないということになるのでしょうか。

(吉川著作権課長) ただ、受けた図書館でコピーを利用者に渡すということは複製ということになるわけですから。

(茶園委員) 複製権の制限をここでは問題にしているのですか。

(吉川著作権課長) そういう理解をしております。確かに少しトリックに引っかかるような感じなのですけれども、公衆送信ではないと思われます。ですから、あとハードコピーをAから送ってもらったB図書館から渡すという、そこで複製をとっているという、その点の権利制限かと思います。

(中山主査) 先程言った両方に物が残ってしまうというのが一番問題で、法的な詰めとしてはファックスというのはいったい誰が複製したのかとか、送った方が複製したか、受け取った方が複製したかとか、いろいろな難しい問題があるけれども、とにかくファックスで送って、送った方は消去する、保存しないということでどうでしょうかという、提案してはそういう提案です。

(茶園委員) それでしたらすみません、私は誤解をしておりました。

(中山主査) この3−Fの上の文章だけを見ると、これは一見するとユーザーが、われわれが図書館に要求をしてファックスで送ってくるというような、文章に読めますけれども、この前の図書館側の説明を聞いているとそうであるということです。

(土肥委員) すみません、では僕も訂正しておいてください。

(中山主査) 訂正ですか。

(土肥委員) すみません。28ページのところ、私もこれ公衆によって直接受信、公衆送信ではないのではないかというふうに書いておりまして、だから公衆送信ではないのだから問題ないのだろうと思ったのですけれども、複製の話のことなのですね。そのレベルの話であれば、物を送るのはセーフだけれども、ファックスでは駄目だというのは、それはやはりどうも理解しがたいことなので、そうするとそこはまるということに訂正させていただきます。

(中山主査) 分かりました。村上委員。

(村上委員) 私も同じなので、ここに要望の範囲が定かでないと書いたのはそういう意味なので、今の全部の条件が入っているのなら問題ないと思います。

(中山主査) 山地委員、どうぞ。

(山地委員) すみません。私も誤解してましたので、図書館間であれば認めてもよいと思います。ただ中山先生も書かれておりますように、相手が図書館ではなくてユーザーだと、利用者というケースも検討する価値はあるのではないかと思います。私のコメントはそれを想定して書いております。

(中山主査) はい、ありがとうございます。

(石井委員) 図書館間の相互貸借あるいは遠隔地貸借というのはもちろんあるわけですけれども、それに対する例外を認めるということですか。

(中山主査) これは、物の貸借ではなくて、図書館がコピーをして送るわけですから。

(石井委員) いや、ですけれども、相互貸借というのは1冊の本が物理的に移動するわけですね。ところが、これはコピーがもう1つできてしまうわけですね。ですからこれは、だから図書館相互で貸借してユーザーに便利なようにするという精神とは違う話ですね、これは。

(中山主査) そうです。話は違います。

(石井委員) 違います。それはどういう違いなのですか。つまり、どういう精神に基づく違いなのですか。

(中山主査) いや、ですから先程言いましたように、複製物が2つできてしまうという。現行法のままでもし認めますとね。

(石井委員) 1冊のものが動いていると非常に不便だから、本を買わなくてはならないというプレッシャーが図書館側に働くということはあり得るわけですね。コピーはそれをなくしてしまうわけですね。つまり、1冊の本があれば、どんどこどんどこコピーができる。A図書館、B図書館、E、F、G、ずっと沢山の図書館でこれをやったらコピーができてしまうわけですね。これは1冊を図書館で共有的に買うということで出版にプレッシャーをかける、圧迫するという議論よりも、もっとひどいことになりませんか。

(中山主査) いや、これは私の理解しているところでは、31条の範囲で図書館がコピーできるというのは3号で、他の図書館の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により云々の場合は複製物を作っておくことができるというのは31条にあるのです。

(石井委員) だから、さっきの話に戻るわけです。つまり、ファイルが残ってしまうというのをどうやって規制するのですかという。

(中山主査) そこのところの問題だけですね。今駄目だとよく言われているのは、自分のところにコピーが残るし、相手のところにもコピーが行く。結局、2部コピーが生ずる。それが31条の3号で読めないのではないか。だから、それを読めるようにしてほしいというのが、図書館側の要望。

(石井委員) だから、かなり今までの精神から踏み出すことになる。

(中山主査) いや、それは先程のは本の貸借はどんな本でも貸借できますけれども、これは絶版その他、それに準ずる理由による入手できないようなものを31条で書いてあるわけですね。この範囲での話なのです。ですから、さっきの物の貸与とは少し図書館がコピーできる範囲とは違うのではないかと思うのですけれども。31条3号の。

(石井委員) そうですか。

(前田委員) このファックスあるいはインターネットにより図書館間で送る場合として想定されているのは、31条3号に基づき他の図書館等の求めに応じて、絶版その他入手困難な図書の資料の複製物を提供する場合のこの提供の方法として、ファックス、インターネットあるいはメール添付で送ってもいいというふうにするということでしょうか。

(中山主査) 私はそういう理解をしてましたけれども。

(前田委員) そのような趣旨だとすれば、私はまったくそれは問題ないと理解します。

(中山主査) つまり3号で複製できるわけですから、3号以外のものは何でも複製できるという条文はないのですね。他の図書館の求めに応じて何でも複製できるという条文はない。

(前田委員) あるいは、先程の3−Aと連動して、つまりある図書館には所蔵していないのですけれども、他の図書館には所蔵しているもののコピーが欲しいと一般の利用者から求めがあった場合には、利用者はAの図書館に来たのですけれども、Bの図書館に要請して、Bの図書館からAの図書館にファックスで送って、Aの図書館から利用者にコピーが渡されるというケースは。

(中山主査) いや、仮に渡すとすれば、それは1号の規制がかかると思いますけれども。

(前田委員) なるほど。それを3−Aの要望と合わせて読むと、それも可能にしたいという御要望なのではなかったのでしょうか。

(中山主査) いや、私は当然そういうふうに理解していましたけれども、ちょっと図書館の方がおられないので、もしそうとすれば大変広い範囲になってしまいますね。

(前田委員) 私の意見としては、もし31条の3号の提供の手段としてファックスとインターネットとメールを用いることについては、まったく問題がないと思います。

(吉川著作権課長) 多分、中山主査がおっしゃっている範囲においては、コンセンサスがあると思うのですけれども、どうやら図書館の方は1号の方も含めて言っておられる可能性があります。

(中山主査) 1号ということは、1号のいう利用者に図書館も含めるということですか。

(吉川著作権課長) どうするのかがちょっと分かりませんけれども、はっきり要望の方に書いてないものですから、要望の趣旨として、中山主査がおっしゃったようなところに限定して言っているのかどうかというのは疑問があると、こういうふうに私は思っています。ですから、この場で整理して、この部分はいいだろうということであれば、その部分だけは拡大ということでいいと思うのです。

(中山主査) 分かりました。では、その点はちょっと確認をしてみてください。どうぞ、森田委員。

(森田委員) もしその場合が加わるのであれば、先程2つの要件を挙げられたわけですけれども、2つの要件というのは送った側と受け取った側で複製が残らないということですが、例えば利用者の求めが多いものについては、その所蔵している図書館は1か所でありますが、そこでデジタルの形で複製を作っておいてどんどん送る。利用者から求めがあるごとにいちいち複製を作るのは面倒なので1つ複製を作っておいて、あとは添付ファイルでどんどん送る。送った先はその都度消去するけれども、いつでも求めれば送ってくるということになりますと、これも実質的にはアーカイブ化と同じことになりそうです。もっとも、そういうやり方は駄目だというと、送る側の図書館では、利用者から求めがあるごとにいちいち元の複製を作っては廃棄し、作っては廃棄せよという要件を書くことになりますが、これは利用者が多い場合には何か非常にばかげたことを要求するようにも見えます。そのような要件を厳格に課するのは難しいとも考えられますが、そうなるとやはり歯止めはなくなって、その場合を含めると、実際上は要するに世の中のどこかの図書館に1冊あれば、あとはそこからデジタルで複製物を発信していくということになってしまうのではないでしょうか。最終的に利用者にはそのデジタルの複製物を渡さないけれども、窓口の図書館まではデジタルの形で複製物がどんどん送られていくということになるわけですね。

(中山主査) いずれにいたしましても、ちょっと図書館側の要望の内容を正確に聞いてみてください。それでは他に。はい、どうぞ。

(大渕委員) これは一番最後にお聞きした方がいいのかもしれないのですが、この案件についての今後の進め方は、どのようにお考えなのでしょうか。

(中山主査) それは課長の方からお願いします。

(吉川著作権課長) 今後のとり進め方ですか。次回は私的録音録画補償金の議論をいたしますけれども、その後に中間まとめに向けて原案を事務局の方でお出しして、それで意見をいただくことになります。ですからその原案づくりに向けてこういう論点もというのは、すでに紙でお出しいただいた分は、これは全部加味してできるだけ少数意見も含めて反映したいと思っておりますが、もしこれにさらに漏れているものがあれば、それまでに教えていただければと思っております。この場で言っていただくのが一番いいと思います。

(中山主査) よろしいでしょうか。他に権利制限の問題について、御意見ございましたら。
 それでは長丁場でございますので、ちょっとここで休憩を入れたいと思います。4時15分に再開をいたしますので、それまでに部屋にお戻りください。

〔休憩〕

(中山主査) 時間ですので再開したいと思います。さっきの図書館のファックスの件、確認いたしましたら、私が誤解しておりまして、改めてもう1度説明いたします。ユーザーがA図書館に行った。そしてA図書館にはそれがないがB図書館にあるという時に、A図書館からB図書館に複製を要求する。その複製できる範囲は1号ですから、通常2分の1以下、例外はありますが、2分の1以下。現在はその複製したものをAに郵送している。A図書館はそのコピーをユーザーに渡している。つまり、A図書館はユーザーの代理みたいな形でB図書館にコピーをお願いをしている。現在は郵送しているものをファックスに変える。
 ですから、先程私は郵送しているものをファックスに変えるだけだという点においてはそのとおりなのですけれども、1号に則ってB図書館が複製をしたものを郵送していると。そこが少し違いました。3号の話ではなくて、1号の話でした。
 したがって、もしどこをコピーしていいか分からないというような場合は、これは現物をA図書館に貸し出しますが、現在はユーザーはその本をA図書館ではコピーできないので、A図書館に返却してユーザーはA図書館にコピーを依頼することになります。そのコピーをB図書館に郵送し、それをユーザーに渡すということになります。こういうことです。お分かりいただけましたか。
 要するにファックスは、少し説明が違いましたけれども、現在郵送しているものをファックスに変えるというだけのことです。その点においてはあの説明は正しかったけれども、何号でのコピーかという点がちょっと違った、こういう話です。

(前田委員) そうしますとユーザーは最初Aの図書館に行き、Aの図書館になかったけれどもBの図書館にあるという時に、A図書館からB図書館に連絡が行って、今はB図書館からユーザーに郵送しているのでしょうか。

(中山主査) いやいや、A図書館に送る。

(前田委員) A図書館に送っている。そしてA図書館はそれをユーザーに渡しているということでしょうか。

(中山主査) 手渡しする。B図書館がコピーしたものを手渡しする。

(前田委員) それは、複製主体はB図書館であるという理解のもとで、それはB図書館が複製して、B図書館が利用者に提供していると。

(中山主査) Aを介して。

(前田委員) Aを介して、Aは使者であるという理解で実際にはA図書館で利用者に提供することができるが、今後はそれをファックスを利用して行いたいというのが図書館側からの御要望ということでしょうか。

(吉川著作権課長) 今は、Bが図書館資料についてコピーをとることができる。そのルールでやっているわけですけれども、そのコピーをとっている主体がBであるから現行法でできる。しかし、今度はBであると言えるのかどうなのか。ハードコピーをとるのは実はAがやっているような感じにも見えるので、その辺りの書き方を工夫する必要があると思います。

(中山主査) はい、よろしいでしょうか。ちょっと説明が混乱いたしまして、申し訳ございませんでした。
 それでは次に議題の(2)の「各ワーキングチームからの中間報告」に移りたいと思います。各ワーキングチームにおける検討状況につきまして、各座長より簡単に説明をお願いしたいと思います。その残りの時間で質疑応答をしたいと思います。
 それでは、まずデジタル対応ワーキングチームの茶園座長より、お願いをいたします。

(茶園委員) はい。では、デジタル対応ワーキングチームから中間報告をさせていただきます。資料の2−1というのを御覧ください。
 検討課題は大きく2つございまして、1つ目がデジタル化時代に対応した権利制限の見直しということで、いわゆる一時的固定というものについて検討をしております。そもそも何を一時的固定というかということについてはいろいろあるのですけれども、例えば時間的な短さから一時的というように言うかとか、あるいは電源を切れば消滅するから一時的固定だとか、あるいは利用者が固定をするものを将来に残さないという、最初からそういう意思を持っているという意味で一時的固定というか、いろいろあるのですけれども、具体的にはこの1.の(2)のあります123、デジタル機器利用時における機器内部での一時的固定、そして通信過程における一時的固定、そしてデジタル機器の保守・修理時における一時的固定の、具体的にこの3つのものについて検討をしております。
 今後の検討の方向といたしましては、3.にありますように、そもそも複製に当たるかどうかという、その複製概念の該当性が問題になるものもございますので、複製概念を検討していく。そして、この対象となる3つのいわゆる一時的固定について権利制限規定を設けるべきか否か、その必要性があるか否か。あるとした場合に、どのような要件を定めるべきか。あるいは、そもそもどのような点に着目すべきかという点を、現在検討を進めております。
 続いて2つ目の検討課題2は、技術的保護手段の規定の見直しということでして、現在著作権法で定めております技術的保護手段というのは、著作権等を侵害する行為の防止または抑止をする手段なのですけれども、それ以外の技術的な手段もあります。最近では、いわゆるコピープロテクションとアクセスコントロールと両方の性質を備えているものも出てきていて、実際に使われているという状況にありまして、そこで現在の著作権法の回避規制の対象たる技術的保護手段、そして規制される回避行為について現行のままでよろしいのかどうか。技術的保護手段を、あるいは現行ではなかなか含めることが難しいと思われるようなものを含めるように拡大すべきかどうか。また、現行法の120条の2で規定されております回避行為を拡大すべきかどうか。ここでは恐らく「専ら」という文言が問題となってくると思われるのですけれども、このような点について検討を進めております。以上です。

(中山主査) 申し遅れましたけれども、各ワーキンググループではなお一層議論、検討をしてもらいまして、次々回のこの委員会で報告をしてもらうことになっております。今日はあまり時間がございませんので、とりあえず3つのチームの報告を受けまして、その後で質疑応答に移りたいと思います。
 では続きまして、契約・利用ワーキングチームの土肥座長より、お願いいたします。

(土肥委員) それでは、契約・利用ワーキングチームからの中間報告を申し上げます。私を含めまして全部で7名のメンバーで、そこにございます資料の2−2、契約規定全般の見直し、この課題に取り組んでおるところでございます。
 具体的論点としましては6項目ございまして、上から申しますと、著作権法と契約法の関係。こうございますけれども、30条以下のいわゆる権利制限規定、この規定を契約によってオーバーライド、ひっくり返してしまうことができるのかどうか、この問題でございます。これは30条以下の様々な規定の趣旨・目的、同じではございませんし、こういう部分を検討しております。
 なお、この6項目について、現在2回検討したところと1度しか検討していないところで、そういう意味ではまだ緒についたところがございます。まさにこの(1)はまだ緒についたばかりのところでございまして、現在の状況について説明を受けた。そういうところでございます。
 それから(2)も同様でございまして、63条2項の許諾の話でございますけれども、著作物の利用許諾に関する問題でございますが、ここは著作権の問題なのか、あるいは契約の内容の問題なのか、その辺りのところから今入っておりまして、著作権法の問題ということになりますと権利侵害、差止請求、そういうようなことになっていく、そういう対象の部分と、契約の問題であるということになれば債務不履行の効果の問題として考えていく。そういうところをまだ検討し始めたと、こういうところでございます。つまり、これは1回しかまだここは議論しておりません。
 あとの(3)(4)(5)(6)、特にこの(3)(4)(5)は2度検討をしておりますので、かなり内容的には議論を始めたところでございます。
 例えば(5)のところの議論で申しますと、立法の経過からいたしますと、当初は61条2項のような規定ではなくて、契約上予想されない利用方法によって著作物を利用する権利というものは、譲渡したものに留保されたものと推定するというような、そもそもの立案者の考え方があったようでございますけれども、これが審議の経過の中で、結局予定されていたものすべてではなくて、要するにこの2つの61条2項の翻案権と2次的著作物に関する権利、その部分だけが残っておるわけでございますので、そういう例えば立法の経緯の説明としてはございます。
 そういたしますと、例えば(6)とかの問題、それからこの未知の利用方法にかかる契約についての問題にもつながっていくところでございますし、それからそもそも譲渡ということを今申し上げたと思いますけれども、こういう契約に関しましては欧米では書面による契約というものが一般的に行われている、ということのようでございます。御案内のように、我が国では不動産をしてでも意思によって、意思表示によって権利の移転があるとこういうことから、欧米では著作権の譲渡契約について書面化が求められておるけれども、わが国においてそういう必要性がないのかどうか、その検討になっております。
 しかし、他の法分野において意思表示によって権利の移転が行われるにも関わらず、何ゆえ著作権だけなのかと、こう言われますと、例えば欧米だけだというようなことになって、そういう比較法論になってしまうようなところもございますけれども、それとの関係で権利の譲渡のところでは一部譲渡の問題。一部譲渡というのはどこまで認められるのか、著作権法学会では例えば期間制限の問題についてはどうもおかしいのではないかというふうな紹介もございましたけれども、そういう一部譲渡の場合、どこまでできるのか。こういった問題は、ある意味つながっているところがございまして、それは最終的には対抗要件の問題にまでつながっていくということになるわけでございます。
 そういうことで(3)(4)(5)(6)というのは格別に、テーマとしては挙がっているのですけれども、相互密接につながって議論をせざるを得ない状況にあるというのが、恐らく各メンバーの現在までの認識状況ではないかと思います。検討内容としましては、今申し上げたように、外国法とか、あるいは特許との関係の議論、あるいは学説判例の分析、そういうような議論をやっております。
 今後の検討方向としましては、こういったもの、あと最終的には3回くらいになるのだろうと思いますけれども、議論をしてとりまとめるという方向にございます。説明として適当かどうか分かりませんけれども、一応以上ということにさせていただきます。

(中山主査) はい、ありがとうございました。それでは引き続きまして、司法救済ワーキングチームの大渕座長より、お願いいたします。

(大渕委員) はい。それでは、司法救済ワーキングチームについての中間報告を申し上げたいと思います。
 このワーキングチームのテーマは、間接侵害と損害賠償・不当利得等の2つでございますが、以前報告させていただきましたとおり、まず資料2−3にございます間接侵害という問題を検討課題にしております。
 今まで第1回が2月28日、第2回が4月6日、第3回が5月12日というように合計3回、このワーキングチームを開くことができまして、そこでいろいろ検討したところを御報告いたします。
 まず問題の所在につきましては、間接侵害というのを説明しだすときりがないので、ここは御理解いただくことにいたしまして、まず、著作権侵害の主体性という方から見ていくというアプローチによりまして、より具体的には、(2)のいわゆる間接侵害者に対する差し止め請求の可否というものが実務には問題になってまいります。そして、それに関連いたしまして、(3)にありますとおり著作権侵害の教唆者・幇助者の取扱いという点がこの間接侵害関係で問題になりまして、これらの3つの点を軸にして検討を進めております。
 それでどういう内容を検討してきたかといいますと、まず2.にありますような判例の分析ということで、間接侵害に関係するような判例を幅広く検討しておりますが、カラオケリース関係、あるいはインターネット・サービスプロバイダー関係という新しいものまで含めまして、総合的に検討しております。
 それから次に3.にあります外国法関係で、前にも申し上げましたとおり、この間接侵害というのは実務的に重要なだけでなくて、理論的にも非常に難しく、著作権法を含む知的財産法全般に及びますし、また民法も視野に入れていかなければいけないという非常に難しい論点なのですが、こういう難しい問題を検討するには基礎研究が必要となり、主要法制でありますドイツ法、フランス法、アメリカ法、イギリス法、すべてを本格的に検討することが大前提となるわけであります。しかし、残念ながら先行研究が不足が顕著でありますので、この4法を民法まで視野に入れつつ検討するのは極めて大変なのですが、現在、早急に鋭意進めております。
 あと4.にあります特許法の規定との比較というのは、第4回の冒頭に扱う予定ですので、まだ本格的には検討しておりませんが、そういうようなものを含めまして、最終の目的といたしましては、5.にありますように今後の検討課題ということで、著作権法上の間接侵害規定の創設に関する検討ということを本格的に進めていく予定でございます。
 なお、参考資料2を御覧いただきますと、各ワーキングチーム名簿がありまして、その一番下に司法救済ワーキングチームがございますけれども、最初のメンバーとしては上野助教授と私と、山本弁護士、それから横山助教授というこの4人でスタートしていたのですが、やはり検討をすればするほど、この間接侵害関係も民法との関係が不可欠でありますし、それからもう1つの検討課題であります損害賠償・不当利得等というのは、これはもう当然のことながら民法と関係が強いということで、やはり知的財産法にも通じている民法の研究者に入っていただくことが不可欠だということで、この参考資料2の上から3段目ですが、上智大学の前田陽一教授に加わっていただきました。第4回から実際の検討に加わっていただくのですが、知財法と民法の双方からさらに深めた検討ができるのではないかと思っております。以上です。

(中山主査) はい、ありがとうございました。先程も申し上げたように、次々回の本委員会でワーキンググループの結論を報告していただいて、議論をしていただくということになっておりますけれども、またこれも十分な時間がとれないという可能性がございますので、各ワーキングチームの検討結果につきまして報告があった後、事務局から各委員に書面でまた御意見をお伺いするという予定でおりますので、あらかじめお含みおきいただければと思います。
 それでは各ワーキングチームの中間報告につきまして、本日あと時間の許す限り議論をしたいと思いますけれども、自由に御意見を頂戴できればと思います。何かございませんでしょうか。かなり大きな広範囲な問題を含んでいると思いますけれども、どうぞ今日は御自由に御発言いただければと思います。
 では、村上委員、どうぞ。

(村上委員) 先程聞いた著作権と契約法の関係の話の中で、特にオーバーライドの話なのですけれども、これは先程の私的複製の場合は著作権法上に私的複製できると書いてあるのを、契約で私的複製もできないような形の契約文言を作って入れた場合にはそれが有効かどうかという、そういう議論をするのだと思います。そしてそのためには強行法規であって、契約でもそれは破れないというような特別規定とか何とかを置くという、そういう議論の方向になるのでしょうか。

(土肥委員) おっしゃる30条以下、様々な規定が、権利制限規定があるわけでございまして、基本的にはすべて、権利制限規定のすべてについて契約によるオーバーライドは可能かどうか。つまり、法的には任意規定ということが前提になるわけでありましょうが、それぞれの規定の趣旨が、例えば今日も議論がございましたけれども、行政目的のためにとか、表現の自由のためにとか、あるいは市場の失敗があるような状況のところの話だとか、いろいろな要請がありまして、そういう基本的には1つ1つ見ていくことになるのですが、先程申しましたように、まだ1のところは1度しか、状況の説明しか受けていないという、そういうことで、具体的な議論の中身に例えばそれぞれの規定について立ち入って1つ1つ取り出して検討しているわけではまだありません。
 ありませんし、これはなかなか大きな問題でありまして、一応ここでは契約でということをいっておりますけれども、茶園委員のところの話では、技術的保護手段のところが取り上げられておりまして、こういうところで事実上やってしまうというようなことも起こってくるわけですね。ですから、こういうところにつきましては、むしろ茶園先生の方からお答えになった方がいいのだろうと思うのですが、今のところは1つ1つの、これからどういうふうになっていくか分かりませんが、そういう問題状況の説明があって、恐らく今後はそれぞれの、30条以下のそれぞれの規定を取り上げて、オーバーライドがどういう条件の下で可能になるのか、あるいはできないのかということを見ていくということになると思います。
 まだ、この辺は委員全体についての合意はないのですが、これは、結論が出るかどうかですね。結論が出るものと出ないものとあるような気がしております。ですから、恐らく我々としては検討してみて、問題状況としてこういうものがあるので法制小委の委員の方々に議論いただきたいというところに持ってくるような性質のテーマではないかなと。われわれの方でこうだというふうになかなか言いにくい、そういうテーマではないかと思ってますが。

(中山主査) 茶園委員、何か補足ございますか。

(茶園委員) すみません。この中間報告ではちょっと誤解を生じたことになったようで、今村上委員がおっしゃったことについては基本的に検討しておりません。というのは、デジタル対応ワーキングチームで検討しておりますのは、まず、技術的保護手段の多様化についての対応の必要性、妥当性という問題であり、2番の回避行為に関しましては、今著作権法が対象としている技術的保護手段で、専らそれの回避に当たるような機器等の販売等について刑事罰が科されているのですけれども、そういう「専ら」ということでよろしいのかどうかについて検討しておりまして、回避そのものの定義規定たる30条のところについては、デジタル対応ワーキングチームでは現在のところ検討しておりません。

(中山主査) これは想像を絶する難しい問題ではないかと思います。立法当初は恐らくこんなことは考えていなかったと思います。数年前の『ジュリスト』の座談会で加戸さんと話をしたことがあるのですけれども、私がこういう話をしたら、「違和感がある」と言われました。つまり、立法当時はそうだったと思うのですけれども、恐らく情報がデジタル化して、情報にカギをかけて取引できるという状態ができてきて、これは問題になったと思うのですね。
 したがって、そういう意味でこれは非常に新しい問題であるし、そういう意味では先程の茶園委員のところのアクセスコントロールがどうかということにも絡んできますし、恐らく世界的にも議論が始まったという段階ではないかと思います。ですから土肥委員長、極めて大変なのですけれども、できる限りやっていただければと思います。
 他に何か。はい、どうぞ。

(苗村委員) 先程御質問のあった契約による著作権法のオーバーライドについての追加の質問で恐縮ですが、御説明ではこれは30条をはじめとする権利制限規定を契約でオーバーライドできるかというお話があったと思うのですが、質問は例えばコンピュータプログラムに関するGPLという契約の形だとか、あるいはその延長でクリエーティブコモンズといったような活動があって、この場合には当事者間の契約に基づいて、さらにある種の同一性保持権も含めた、その先の2次的著作物に関する、利用に関するある種の制限を設けるといったような契約の形もあるわけで、それは権利制限のオーバーライドではなくて、著作権、著作者人格権のオーバーライドのような話になるわけですが、質問はそういうことも意図されているのか、あるいは純粋に権利制限のオーバーライドを意図されているのか、という質問です。

(土肥委員) 人格権の問題は考えておりません。別途、これについては御案内のように外に出して、斎藤前部会長ですかね、分科会長。分科会長の下で御議論があるように聞いておりまして、われわれのところは専ら30条以下の権利制限規定のところの問題だけで、ですからもう任意規定であることを条文上明記しているものについては、これは今でもそういう契約によってそれについて特約を結ぶことはできるわけですけれども、そういうものがないものがやはり中心になるのだろうと思っております。

(中山主査) 人格権はこれまたもっと難しい問題ですから、この予定表の中でも最後の備考のところに、今後の検討課題として残すということで、現に検討を先程斎藤先生の下で始めるということで、それも想像を絶する難しい問題ではないかと思います。
 他に何か御質問ございましたら。
 よろしいでしょうか。それではちょっと時間もありますので、前半の部分も含めてもし何か御発言ございましたら頂戴したいと思います。何かございましたら。
 よろしゅうございましょうか。あと15分ばかり時間がありますけれども。
 それでは、本日はこのくらいにしたいと思います。次回は「私的録音録画補償金の見直し」につきまして、前回御出席いただきました説明者の方々にも再度御出席をいただいて、第2回目の議論をしたいと思います。
 なお、その第2回目の議論に向けまして、後日、事務局から私的録音録画補償金の見直しについても、各委員に御意見を書面で頂戴する予定でおりますので、これまたいろいろお手数をおかけいたしますけれども、各委員におかれましては御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 なお、第6回になります次々回の本委員会におきましては、第5回目である次回までの議論を踏まえて、事務局に中間まとめ(案)を作成してもらうということにしております。
 最後に事務局から何か御連絡事項がございましたら、お願いいたします。

(山口著作権調査官) 本日も長時間ありがとうございました。第5回目となります次回の法制小委の日程は、正式には近日中にホームページに掲載いたしますが、参考資料2にございますとおり、6月30日木曜日になりますが、9時半から13時まで、場所はこの経済産業省別館の10階にあります、1020会議室にて行うことを事務的には予定しておりますので、御承知おきください。
 なお、この場をお借りして、いささか別件の趣旨のお知らせでございますが、本日も暑い中で窓を開けるなどしつつ対応しているところでございますが、政府全体で温暖化対策の取組を進めておりまして、6月1日からの4か月間、9月30日までということですが、「ノーネクタイ、ノー上着」という軽装を非常に励行しておりまして、本日のように他省庁の会議室をお借りして行われている会議のような例外的なケースも含めまして、外部の出席者の方にもあらかじめ周知の上、是非軽装の励行をということになっておりますので、本日も適宜上着を脱ぐなどしていただいているところですが、是非そういう趣旨で御参加いただければと思っております。いささか別件のお知らせで恐縮でございますが、一言ご連絡させていただきました。

(中山主査) はい。ありがとうございました。では次回は猛暑かもしれませんので、軽装でお願いいたします。
 それでは、これで文化審議会著作権分科会の第4回法制小委員会を終わりといたします。長時間ありがとうございました。


(文化庁長官官房著作権課)

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