ここからサイトの主なメニューです
著作権分科会 法制問題小委員会(第3回)議事録

1 日時  平成17年4月28日(木曜日) 9時33分〜12時42分

2 場所  経済産業省別館11階 1111会議室

3 出席者
  (委員)
    石井,市川,大渕,小泉,里中,茶園,土肥,苗村,中山,浜野,前田,松田,村上,森田,山地,山本の各委員、野村分科会長
  (文化庁)
    加茂川次長、辰野長官官房審議官、吉川著作権課長、池原国際課長
ほか関係者
  (ヒアリング出席者)
   
【資料1ー1関連】 常世田(著作権分科会委員)、糸賀(慶應義塾大学教授)
【資料1−2関連】 江波戸(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課社会参加推進室長)
【資料1−3関連】 清水(独立行政法人メディア教育開発センター理事長)、尾崎(独立行政法人メディア教育開発センター研究開発部教授)
【資料2−2関連】 菅原(社団法人日本音楽著作権協会常任理事)、椎名(社団法人日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員)、生野(社団法人日本レコード協会専務理事)、上野(社団法人音楽制作者連盟常務理事)
【資料2−3関連】 野方(社団法人日本音楽著作権協会映像部映像一課長)、児玉(社団法人日本映像ソフト協会専務理事・事務局長)、竹内(日本放送協会マルチメディア局業務主幹)
【資料2−4関連】 亀井(社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長)、光主(社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会運営委員会委員長)、大森(社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会運営委員会副委員長)、河野(社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会副委員長)
【資料2−5関連】 中根(社団法人日本記録メディア工業会著作権委員会委員長)、石塚(社団法人日本記録メディア工業会著作権委員会委員)、岩田(社団法人日本記録メディア工業会著作権委員会委員)
の各説明者

4 議事次第
 開会
 議事
(1) 権利制限の見直し[2]
1 図書館関係の権利制限について
2 障害者福祉関係の権利制限について
3 学校教育関係の権利制限について
(2) 私的録音録画補償金の見直し[1]
(3) その他
 閉会

5 配布資料
 
1. 権利制限の見直し
資料1ー1   図書館関係の権利制限について(常世田著作権分科会委員作成資料)
資料1ー2   障害者福祉関係の権利制限について(厚生労働省作成資料)
資料1−3   学校教育関係の権利制限について(清水氏作成資料)

2. 私的録音録画補償金の見直し
資料2ー1   私的録音録画補償金の見直しについて(加藤委員提出資料)
資料2−2   私的録音録画補償金の見直しについて(社団法人日本音楽著作権協会等関係権利者7団体作成資料)
資料2−3   私的録音録画補償金の見直しについて(デジタル私的録画問題に関する権利者会議作成資料)
資料2−4   私的録音録画補償金の見直しについて(社団法人電子情報技術産業協会作成資料)(PDF:478KB)
資料2−5   私的録音録画補償金の見直しについて(社団法人日本記録メディア工業会作成資料)

参考資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第2回)議事録
(※第2回議事録へリンク)
参考資料2   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定
参考資料3   私的録音録画補償金制度の概要について
参考資料4   私的録音録画補償金関係条文

6 議事内容
 

(中山主査) 時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会」の第3回を開催いたします。本日は御多忙中、御出席賜りましてありがとうございます。
 いつもと同じですけれども、議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、すでに傍聴者の方には御入場していただいているところでございます。その点につき、特段の異議はございませんでしょうか。

〔異議なしの声あり〕

 ありがとうございました。それでは本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をしていただくということにしたいと思います。なお、事務局の方に異動がございましたので、御紹介をお願いいたします。

(吉川著作権課長) それでは、4月1日付で事務局に人事異動がございましたので、紹介いたします。新たに文化庁長官官房審議官に就任をいたしました辰野裕一でございます。

(辰野長官官房審議官) 辰野でございます。よろしくお願いいたします。

(吉川著作権課長) なお、前任の森口は文部科学省の大臣官房審議官・研究開発局担当に転出しております。以上でございます。

(中山主査) なお、今回初めて御出席の方もおられますので、課長の方から御紹介をお願いいたします。

(吉川著作権課長) 今回、新たに委員にお願いを申し上げました。初めて御出席でございますので、御紹介申し上げます。市川委員でいらっしゃいます。

(市川委員) 東京地裁の市川でございます。1回目と2回目は出張などの関係で欠席させていただきました。申し訳ありませんでした。どうぞよろしくお願いいたします。

(中山主査) ありがとうございました。それでは議事に入ります。まず事務局から、配布資料の確認をお願いいたします。

(山口著作権調査官) 本日の配布資料については、議事次第を記載した1枚物がございまして、その下半分が資料の一覧となっております。
 念のため確認してまいりますと、内訳は、資料1−1から1−3までの3点が、「権利制限の見直し」に係る、それぞれ図書館、障害者福祉、学校教育関係の、各説明者による作成資料です。なお、1−1及び1−2については、前回に比べ表現を分かりやすく修正した部分が若干ございますが、内容的には変更はございません。
 また、資料2−1から2−5までの5点は、「私的録音録画補償金の見直し」に係る資料です。2−1は本日御欠席の加藤委員からあらかじめ提出のあった御意見でございます。資料2−2は録音、資料2−3は録画に係る、いずれも権利者側の、資料2−4は機器、資料2−5は媒体に係る、いずれも製造業者側の、それぞれ各説明者による作成資料となっております。
 このほか参考資料としまして、1番目に、これは既にホームページに掲載しておりますが、前回の本小委員会の議事録、2として本小委員会の審議予定、3及び4として私的録音録画補償金の制度概要及び関係条文となっております。
 資料の数、大変多うございまして恐縮ですが、以上、お手元を御確認いただければ幸いでございます。

(中山主査) よろしいでございましょうか。本日も3時間の長丁場になりますので、初めに議事の段取りにつきまして、説明しておきたいと思います。
 まず前回は、権利制限の見直しについての議論を開始しましたが、議論が白熱した関係で図書館関係及び障害者福祉関係に対しましては、各説明者からのヒアリングの後に意見交換の時間を必ずしも十分とることができませんでした。
 そこで、事務局から各委員に事前にお知らせいたしましたとおり、本日の冒頭、前回の各説明者にも再度参加していただきまして、改めて15分程度の時間をとりたいと思います。ぜひ活発な御議論をお願いいたします。
 次に議題(1)3といたしまして、学校教育関係の権利制限について5分程度簡潔な説明を頂戴した上、25分程度の質疑応答及び意見交換を行いたいと思います。そこで1度休憩を挟みまして、後半は(2)の私的録音録画補償金の見直しについての議論に入りたいと思います。初めに権利者側及び製造業者側から各20分程度で御提案の内容についての御説明を頂戴し、その後、残りの1時間程度を質疑応答及び意見交換に充てたいと思っております。
 なお、資料は各委員に事前に送付しておりますので、説明者の方は要点や行間の部分を中心に説明を願いたいと思います。
 それではまず図書館関係の権利制限についてですけれども、本日の著作権分科会の委員であり、日本図書館協会の理事であります常世田委員と、平成13年著作権分科会情報小委員会の下に置かれた図書館等における著作物等の利用に関するワーキンググループのメンバーでいらっしゃいました慶應義塾大学の糸賀教授にお越しいただいておりますので、適宜御発言をお願いしたいと思います。
 資料1−1につきましては、前回御説明いただき、質疑応答もさせていただいておりますので、本日は早速15分程度の意見交換をしたいと思います。
 それでは図書館関係の権利制限につきまして、御意見のある方は積極的にお願いをいたします。どうぞ、お願いいたします。どうぞ、小泉委員。

(小泉委員) 意見というよりも確認になるのかもしれませんが、今日頂戴をしました資料の最後の方ですね。9ページになるでしょうか。これは前回、私、質問をさせていただきまして、議事録をいただいた時に訂正されていたのですが、今日配られた議事録の21ページで「インターネット等」という点ですが、これはファックスのことをお考えなのか、ネットで世界に発信することなのかとお伺いして、これはメールのことですというふうにしていただいて、御訂正いただけるというお話だったのですが、これメールだとしますと、そもそも公衆送信に当たりませんので、著作権の問題はあまり生じないと思うのですね。ただ、インターネットになると全然話が違ってきますので、趣旨をもう1度確認したいと思います。

(常世田著作権分科会委員) これにつきましては、基本的にはファイルを図書館の間で送信をするというふうに御理解いただければいいと思います。現実に大学等で今行われているのは、FTPといいましてファイル転送がかなりの数に上っておりますけれども、公共図書館間でも、そのようなことになるというふうに、あくまでも図書館の間でコンテンツを送信するというふうに御理解いただければというふうに思いますが。

(糸賀慶應義塾大学教授) 今の御指摘は、それはそもそも公衆送信に当たらないのではないかということでしょうか。

(小泉委員) 前回、メールのことをお考えだというふうに御確認いただいたはずですが、今回なお「インターネット等」とお書きになっておられる趣旨をおたずねしております。

(糸賀慶應義塾大学教授) 趣旨は変わっておりません。それから公衆送信に当たるのではないかということは、これは利用者の求めに応じてその都度、仮に同じものであっても違う利用者から求められれば、それを送信する。それが今、公衆送信に当たるのではないかということです。

(小泉委員) いずれにしましても、この辺りは明確にしていただきたいと思います。

(中山主査) 他に御意見、御質問ございましたら。どうぞ、山地委員。

(山地委員) かっこB)のインターネット上の情報を図書館でプリントアウトすることについて質問なのですけれども、記述によると黙示の許諾が成立していると考えられるので、現行でも可能ではないかという御意見が書いてあるのですが、にも関わらず著作権法を改正してくれとおっしゃっているので、そうかというのが1点。
 それからもう1点は、もしもこれ許諾がないとできないのだとすると、この問題は図書館に限らず、一般企業その他でも同じような問題になるのではないかと思うのですけれども、そのことについてどうお考えでしょうか。つまり、図書館だけ手を打ってくれという内容なのか、もっと広く考えてインターネット上の情報の取扱いについて何か著作権法上手を打てということをおっしゃっているのか、その2点を御質問いたします。

(常世田著作権分科会委員) 1点目についてでございますけれども、法的に若干不明確な状態にあるというふうに考えておりますので、やはり法的に明確な位置づけにして安心をして現場としては行為を行いたいというふうに考えております。
 それから2つ目の点につきましては、やはり31条等に見えますように、図書館というのはやはり文化を振興するためにそういう権利制限を与えられてきたということが歴史的にもあるわけでございますので、今回についてはやはり図書館だけと私たちは考えております。

(中山主査) その場合はおっしゃるように半分以下というような制限はなく、全部という意味ですか。

(常世田著作権分科会委員) 現行では半分以下というのが法的に妥当かどうか分かりませんが、一部分というような条件は当然そのまま当てはまるというふうに考えております。

(中山主査) どうぞ、山地委員。

(山地委員) 今のお答えに関連して、次の3つ目の質問ですけれども、図書館に限定して現在の図書館関係の条項、31条でしたか、それを手直しするということは、インターネット上の情報は図書館が保有する資料ないし図書に準ずるものだという、そういうお考えなのでしょうか。

(糸賀慶應義塾大学教授) 基本的にはそうでありません。御承知のように、著作権法31条で図書館資料に関しては利用者の求めに応じて複製をとることができます。ですが、インターネット上の情報といいますか、ネット上にある情報を図書館資料と同列に扱うことは、やはり難しいと思います。
 具体的に申し上げますと、インターネット上の情報はサイト側で自由に随時改変ができる。図書館資料はいったん図書館の蔵書になっておりますので、外部からの力によってその図書館資料の中身を書き改めるということはあり得ないわけです。しかしながらインターネット上の情報は改変がありえますので、これを図書館資料と同列に扱うことはできません。
 ですけれども、図書館という組織あるいは機関が持っている社会的性質を考えると、インターネットのプリントアウトに関しては、図書館においては他の情報提供と並んで同じように検索できたり提供できるべきだろう。そういう意味で、図書館でインターネットのプリントアウトが権利制限されて自由に行えるようにするべきである。けれども、図書館資料と同列に扱うことはできないので、31条を改正するのが妥当かどうかであるとか法的な条文の書きぶりまで細かい検討はしておりませんけれども、違う位置づけでできるようにさせていただきたいという要望になります。

(中山主査) 他に御意見あるいは御質問がございましたら。はい、どうぞ。

(常世田著作権分科会委員) 今の点についてちょっと補足させていただきたいのですけれども、アメリカ等ではフェアユースで自由にインターネット上の情報をプリントアウトするということができておりますので、そういう意味での文化振興という意味ですとか、産業振興という意味ですとか、いろいろな意味でそういうプリントアウトが自由にできる国とできない国があるといいます。もし日本がそのままでいくとすると、文化政策とか産業政策上で差がついてしまうという問題もあるのではないかな、と思っております。

(山地委員) 回答の意味は分かりましたけれども、ちょっと私、違和感を感じているのですが、つまりインターネット上の情報について、図書館においてのみ合法であると明文化するということに対して、それは従来の図書館にある蔵書をどうするかというのを今まで議論してきたのをちょっと一歩踏み越えるということと、もう1点懸念があるのは、それをやりますと、では図書館以外でやるインターネット上の情報のプリントアウトについては、非合法であるのかと。だから、特別手を打って図書館では合法化したのだなということになる。つまり、そういうある意味の反対解釈のようなことが起こり得るかもしれないと思って懸念を感じますが。

(常世田著作権分科会委員) 私どもは図書館関係の代理者という立場で、図書館における現状の現場での問題を申し上げておりますので、他の部分については決して図書館と同じような理由で自由になるということについて反対するつもりはございません。
 ただ、例えばサイト上にはっきりこれは複製を禁ずると意思表示をしたものについて、そういうものをプリントアウトさせないということをきちんと行えるのは、やはり司書というような専門職がいたりする図書館で管理することによって可能になるのではないか。公民館ですとか博物館ですとか、そういうところではその事務が行われないのではないかという点はあるのではないかな、と思っております。

(中山主査) 山地委員の御意見は、今はよく分からない状態なのではっきりして欲しいと、こういう趣旨ですか。

(山地委員) ええ、そういうことですね。我々もいろいろ議論はしていまして、多分ほとんどのケースに国の許諾が働くであろうと思っています。働かないとすると、ホームページの先頭ページでもって、明文で「ディスプレーで表示する以外のいかなる手段をもっても複製を禁ずる」というふうな表示があるケースがたまにあるのです、レアケースですけれども。その場合には黙示の許諾は働かないだろうと。しかしながら、そういう記述が一切ない場合においては、通常は黙示の許諾が働くというふうに解釈されるのが通常であろうというふうな見解が多いと認識していますので、そういう意味で通常は違法行為ではないというふうに考えています。そのことに対して新たな議論を生じてしまうのではないか、という懸念です。

(中山主査) 他に何か御質問、御意見ございましたら。よろしいでしょうか。
 それではどうもありがとうございました。引き続きまして、障害者福祉関係の権利制限についての意見交換を行いたいと思います。本日も厚生労働省より、社会援護局障害保健福祉部企画課社会参加推進室の江波戸室長にお越しをいただいておりますので、適宜御発言をお願いしたいと思います。メインテーブルの方にお願いいたします。
 資料の1から2につきましては、前回御説明をいただき、質疑応答もさせていただいておりますので、本日は早速15分程度の意見交換に移りたいと思います。それではこの問題につきまして御意見ございましたら、お願いいたします。

(江波戸社会参加推進室長) 先般、御議論いただいた際に、山地委員の方から御指摘のあった点で、私どもの方からお答えができなかったものがございまして、その件につきまして対応させていただこうと思います。
 各要望に対しまして権利者団体との話し合いの進捗状況なり、またその権利者の方々の再度の感触につきましてどうかという御質問をいただいたところであります。団体の方にその様子を聞きました。
 まず1番目の録音図書の公衆送信の件でございますが、これにつきまして日本文藝家協会さんにずっと相談を続けてまいりまして一定の御理解をいただいているところ、というふうに聞いておりまして、具体的には、まず同協会との間で一括許諾システムを構築して、そして実施してみてはいかがかということで、この一括許諾システムによります配信は動き始めたところであります。それでもなお問題が残るのであれば、法改正による権利制限もやむを得ないのではないか、とのお考えを示していただいているというふうに聞いております。
 その問題の部分でございますけれども、一括許諾によりまして、現在すでに製作されております図書のうちの約16.8パーセントが配信できるようになりましたけれども、その他のものにつきましてはなかなか著者の方々の住所調査の行き詰まりでありますとか、外国作品の調査の困難性から提供ができない状態にあるという、そういう状況にございます。
 それから、2番目の映像著作物に手話や字幕をつけて複製をする。それをまた公衆送信をするということでございますが、これは資料にも書かせていただきましたように、現在一括許諾により製作をしているところでございますが、これ以上の内容を詰めるような具体的な話はしていないということでありまして、権利者の方の具体的な懸念というのは把握をしていないということでありました。
 それから3番目の翻案権の話、それから4番目の第三者が点字、録音等の形式で複製する件でございますが、これにつきましては要望元であります障害者放送協議会、ここが大きなところでのお話ということで、例えば協議会主催のシンポジウムでございますとか、担当委員会、ここで日本文藝家協会さんの担当者の方や放送事業者の方々との協議、意見交換を行ってきておりますけれども、特に個別的に問題を特定して話し合う形式はとってこなかったということでありまして、権利者の方々のまだ具体的な懸念等は把握できていないと、こんな状況でございました。前回報告できませんでしたので、報告をさせていただきます。以上です。

(中山主査) 御意見や御質問がございましたら。はい、どうぞ。

(山地委員) 前回の私の質問に答えていただきまして、大変ありがとうございます。概略は分かったのですが、ちょっと補足の意味もこめて追加質問させていただきますと、私が懸念していたのは何点かあるのですが、まず大筋は理解できます。こういうことで権利制限をするというのは、大変理解できるところであります。ただあえて懸念をいうと、例えば聴覚障害者のためにリアルタイムで文字のようにするとか、同一性の問題だとか、あるいは誤り、間違いですね、真実と違うような変換をしてしまったというようなことに対するトラブルないし権利者側の懸念、そういうものはないのかというようなことであるとか、それから身障者向けというのは非常によく分かるのですが、健常者も享受することができるケースがいろいろあると思うのですね。手話なんか私、分かりませんけれども、例えば録音物であれば、健常者であってもそれを聞くことがイフェクティブなわけであります。そういうことに対して何か権利者側から懸念がないのかな、というようなことを感じていたのですが、例えばその辺いかがでしょうか。

(江波戸社会参加推進室長) 一番最初の同一性の問題でございますが、リアルタイムにつきましてはすでに実施をさせていただいているところと承知しておりまして、今の段階で山地委員の御指摘のトラブルというのは、私ども聞いておりませんので、まずはうまくいっているのではないかというふうに、かように思っておるところでございます。
 そして、これはちょっと話は違いますけれども、難聴の方々に要約筆記という形である意味通訳をする場面がございまして、昔は手書きであったわけでございますけれども、最近はパソコンを使って要約筆記をするという方法もございます。私はその場面に立ち会ったことがございますけれども、パソコンの場合、要約筆記というよりは、私が今しゃべっている言葉をそのままキーで打ち込むということで、それを4人ないし5人くらいで交代でやりますので、私の申したことがそのまま画面に出たものが食い違うということは、一定の勉強、訓練をすれば、まず間違いがない、そのくらいのレベルには達するものだと思いますので、リアルタイムについてはあまり御心配がないのかな、というような気がしておるところでございます。
 それから身障者の方々だけでなく、また健常の方々も享受できるのではないかという御指摘でございますけれども、確かにそのようなケースは考えられるところかもしれません。
 それで1番目に要望させていただいております録音図書の公衆送信でございますけれども、これは視覚障害の方々に限ってアクセスできるようにすると。ある意味契約をしてパスワードを渡してということでございますから、このシステムに関しては健常の方々がアクセスするということはないと考えておりますが、一般的な録音図書の場合には、山地委員御指摘の健常者でもお使いになる可能性というのはあろうかと思います。
 私ども、障害者サイドの仕事をさせてもらっておりますので、障害者の方々の情報保障という点でお願いをしているところでございますが、現実的には難病の方々、またはお年をめして例えばページをめくれない方々などが録音図書が有効であるということは、私どもの方でも聞いておるところでございまして、それはそれでまた課題であるというふうには考えております。

(中山主査) 他に御意見、御質問はございますか。

(前田委員) 私も基本的な趣旨は非常によく理解できるのでございますが、個別に拝見していきますと、例えば2番目の御提案に関しては、かなりの量については一括許諾契約がすでに締結されているということなのですが、正規の承認のために高額な著作権料の支払いが必要であることが改正の提案理由として挙げられているという状況だと思うのですけれども、この問題については権利者側が任意理解を示して、それで一定の条件の下で供給するということが多分一番好ましい事態ではないかと思います。もし一括許諾契約が締結されていて、ただそこで要求される著作権料が非常に高額に過ぎて運用が難しいということであれば、具体的にどれくらいの著作権料の負担が生じていて、支払いが困難な状況になっているかどうかという、その実態について教えていただきたいと思います。
 それから先ほど3番目、4番目等のについて、まだ権利者側と具体的な協議があまり進んでいないということであれば、まず具体的な協議を進めていただくことも必要なのではないかなという気がいたします。
 それから単純な質問としては3番目の、これは前回お尋ねするべきだったのかもしれませんが、3番目の御提案が何を具体的に求めておられるのかが、ちょっと私、理解しづらくて、現在の条文で申しますと、37条の2に基づく聴覚障害者のための自動公衆送信の規定があって、この場合は要約することが可能であるというのが43条の第3項で規定されていると思うのですが、改正とし求めておられるのはどういう御趣旨なのかが、ちょっと分かりにくかったわけです。

(江波戸社会参加推進室長) まず最初に、「高額な著作権料」と書かせていただきました。その支払いが必要ということで、具体例でございますけれども、例えば文藝家協会さん、それから脚色家協会さん等、権利6団体の方へそれぞれ年間230万といった金額。それから、例えば放送事業者、NHKさんなどへの支払いは番組で30分当たりで5000円、複製にかかる経費が1時間当たり3万3000円。それとあと映画製作者連盟さんへの話になりますと、それぞれ300円ですか。それから、例えばオリンピックになりますとUSドルで5600ドルとか、こんな例がありまして、まずこれは事実の羅列だけでありまして、委員御指摘のそれが高額と書きましたけれども、どのくらいの負担になっているかという点は、ちょっと今なかなか申し上げられない。こういう金額があるということだけで、御理解を賜りたいと思います。
 それから翻案権の方の3番目のお話でございますけれども、これは現在もっぱら聴覚障害者を対象とした字幕についてリアルタイムと、こうなっておりますけれども、リアルタイムに留まらない複製、公衆送信を認めていただきたいということであります。その時には知的障害の方々、または発達障害の方々などが理解をしやすいように、その翻案の対象を広げてほしいということでございます。

(前田委員) 3番目の御提案は、翻案できるようにしていただきたいという趣旨のところに重点があるのではなくて、現在リアルタイムでしか認められていない部分をリアルタイムでなくできるようにすること、それに伴って翻案もできるということという、そういう御提案なのでしょうか。

(江波戸社会参加推進室長) ある意味、2番の字幕、手話の公衆送信にかぶるところもございます。これはいわゆる字幕で聴覚の方々のためにということでありますけれども、3番目につきましては字幕をつける時に知的障害の方々、または発達障害の方々のために字幕をつける際の翻案を、というふうに御理解を賜りたいと思います。

(中山主査) 金額が多いか少ないかということは別として、これはボランティアベースでやっている場合が多いのですか。例えば営利にはならないのですよね。

(江波戸社会参加推進室長) 現在、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターというのがございまして、ここが契約をし、またはビデオカセット等を作成しているという実態にございまして、それは営利ではなくて、社会福祉法に基づきます社会福祉事業ということで実施をさせていただいておるところでございます。

(中山主査) 聴覚障害者から金を取ることは難しいでしょうから、結局は税金ということでしょうか。

(江波戸社会参加推進室長) 作成に際しまして、国の助成は出ております。それから、また都道府県との契約によりまして、都道府県の財源を活用しているというような、公のお金が入った形で作られているというのが多い、というふうにお考えいただければと思います。

(中山主査) 他に御意見、御質問ございましたら。どうぞ、山本委員。

(山本委員) この今の著作権料の支払いのところの考え方なのですが、健常者であればテレビ放送を無料で受信できるというのと同じ条件を障害者の方に与えるという目的からいうと、著作権使用料をとるということは、そこにゲタをはかせることになるので、これは金額が多いか少ないかというような議論があるのかもしれませんけれども、基本的には無料にして同じ文化を共有できるような状態にするということが、基本的には必要なのではないのかなという。この点については、そういうふうに思います。

(中山主査) はい、他に。どうぞ、松田委員。

(松田委員) 私も健常者と情報を入手するためにイコールな状態に置くということについては、著作権法で盛り込んでいいのではないかなと基本的に考えております。著作権法はそういう要請を受け入れていいのではないかなと、私は考えています。ただ、その立法する段階において、健常者以上に情報を提供するような複製物が起きないかどうかということを検証して、そこをきちんと対処できるかどうか。ここに私はかかっているというふうに考えております。

(中山主査) 他に御意見、ございませんでしょうか。もしよろしければ、この点はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、学校教育関係の権利制限につきまして、御説明を伺いたいと思います。本日は独立行政法人メディア教育開発センターより、清水理事長と尾崎教授にお越しをいただいております。清水理事長は現在、文化庁著作権学ぼうプロジェクト協力者会議座長でありまして、平成15年度に著作権教育小委員会主査でもいらっしゃいました。
 それでは御説明をお願いいたします。

(清水メディア教育開発センター理事長) 清水でございます。本日はどうもありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。本日は教育に関係いたしまして、3点の御要望をさせていただきたいと思います。
 最初は、eラーニングを実施する際の公衆送信についてでございます。御承知のように、ITを活用した教育の推進ということに関しましては、国の重点施策となっているところでございます。特にITを活用した遠隔教育につきましては、学習者が時間や場所の制約を受けずに有効な教育方法で学習できる、あるいは資格を取れるということから、e-Japan重点計画においても一層の推進が求められております。
 文部科学省におきましてもeラーニングの推進を行っておりまして、ITを活用した遠隔教育の推進に関連しまして、インターネットの授業ということが通常の通学制の大学では60単位まで可能になっておりますし、通信制の大学設置基準によりますと、すべての授業をインターネットで行うことが可能、というふうに制度的にはなっているところでございます。
 ちなみにアメリカにおきましては、公立大学の約90パーセントの大学がeラーニングを実施しておりまして、300万人以上の学生が単位取得のためにeラーニングを使用しております。また、隣の韓国におきましても、非常にeラーニングによる単位を取るということが急速に進んでいるところでございます。
 現在の著作権法によりますと、著作物の公衆送信を遠隔教育に関連した授業で行うことにつきましては、授業を直接受けている者があり、かつ、同時中継する場合に限定されています。したがいまして、それ以外の場合は、権利者の許諾を得ることが必要になっているわけでございますけれども、利用をお願いしてもなかなか回答がない。何回もお願いし、いや、結局それはいいよというような場合が多々出ているところでございます。したがいまして、既存の著作物の利用というものに非常に難しい面がある、ということでございます。このことが日本のeラーニングが非常に遅れてしまった理由である、ということを指摘される方もいらっしゃるわけでございます。
 ということで、今回はこのeラーニングに関する受講者に対しまして、著作物の自動公衆送信を認めていただきたいとお願いするのが、第1点の要望事項でございます。ただ、無制限にお願いするということでは今回の御要望はないわけでありまして、いくつかの条件を考えた上でございます。
 即ち、ID、パスワード等を利用しまして受講者を限定します。そのため、受講者数も普通の教室で行っているのと同様な数ということになろうかと思います。
 それから、自動公衆送信を禁止する旨の表示のある著作物は対象外にする。あるいは権利者側の意向にもよるわけでございますけれども、有償のものは対象外にさせていただきたいというところでございます。また、期間も永久にということではなくて、1学期を考えますと6か月など、そういう限定をするというようなことでございます。したがいまして、権利者の利益に対する影響は、大幅に軽減されるというふうに考えているところでございます。よろしくお願い申し上げます。
 2番目は、授業で使用しました著作物の教育機関での共用についてのお願いでございます。現在、ITを活用しました教育によって、分かりやすい授業をするということで学力向上につなげるということが進められているところでございます。イギリスは非常に長く力を入れてきまして、実際にITを活用した授業によって、非常に学力が向上するという具体的なデータを政府が出しているところでございます。
 しかし、現在の著作権法によりますと、あるクラスの授業のために複製した著作物というのは、原則としてその授業以外には使用していけないということになっているところでございます。したがいまして、学内で隣の先生が使うとか、そういったことができないということですけれども、やはり教育の情報化を推進することによって、わが国の子どもの学力向上につなげたいということから、この点につきまして緩和していただきたいというのが要望でございます。
 ただ、今お願いしております教育機関内での共用につきましては、授業で使用するために必要な限度という歯止めがなくなってしまうというような懸念があると思われます。したがいまして、今回の要望は著作物を複製して頒布するとか、そういったことをお願いするということではなくて、35条1項で複製された著作物を学内で教員や生徒が見ることができるようにしていただきたい、ということでございます。したがいまして、これによって権利者の利益が損なわれることはあまりないと考えているところでございます。
 3番目は、無線による構内LANの公衆送信の除外についてでございます。今、無線LANは急速に技術的に進歩しまして、安くなってきております。今、e-Japan重点計画とかミレニアムプロジェクトとしまして今年度末、即ち来年の3月末までにすべての教室でインターネットで学習できる、指導できるという環境を目指しているところでございます。
 しかし、16年3月末の文部科学省の調査によりますと、構内LANの整備が37.6パーセントと非常に少ないということで、達成が非常に難しい状況にあります。ここで早急に各普通教室で学習できる、インターネットを使って学習できる環境をという場合に、やはり無線LANは半分以下の値段ですし、あるいはすべての教室にコンピュータを置くということでなくて、使うところに移動しながら使うということで考えますと、無線LANが認められますと、今後かなり予算面で楽になってくるということがあります。
 昔は無線というと構内に限定するのは難しかったわけですけれども、現在は有線のLANと同様に領域を限定することができるようになっていることから考えますと、無線も有線とまったく同じという状況かと思います。したがいまして、この無線LANによる構内LANの公衆送信をできるようにお願い申し上げたいと、以上3点でございます。
 なお、このIT活用に関します文部科学省の担当課がありますけれども、今回のこの要望につきましては、非常にIT活用教育の推進に関係するということで大変な関心をお持ちでございまして、ぜひ実現していただきたいといわれているところでございます。よろしくお願い申し上げます。

(中山主査) ありがとうございました。それでは学校教育関係の権利制限につきまして、御質問あるいは御意見があれば頂戴したいと思います。はい、どうぞ、前田委員。

(前田委員) まず質問でございますが、3番の無線による構内LANの公衆送信からの除外については、これは教育現場だけのことではなくて、一般的に無線による構内LANの公衆送信からの除外の御提案という御趣旨でしょうか。もし仮にそうだとすると、従来同一構内を公衆送信から除外するというのは、それを権利の対象から外すということではなくて、演奏権であるとか、上映権であるとか、他の権利対象になるので、それとの重なりを調整するために同一構内を公衆送信から除外するという趣旨であったかと思うのですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) 要望としては一応教育関係ということではございますが、この部分につきましては学校現場だけではない、他のところでも共通的な課題だと考えておりまして、ことの性質から見ると、有線と無線の違いがほとんどないという観点からは、教育だけではなくて一般的に、つまり現行2条1項7号の2の公衆送信の定義そのものを見直しいただけたら、というふうに考えております。
 それから、仮に公衆送信でなくなると、当然ながら上映とか演奏とか、そちらの方の権利が働くわけでございますが、こと学校関係でございますと非営利無料ということで、通常38条の1項が適用になると考えております。

(中山主査) 他に、はい、どうぞ。

(山地委員) 1番について、3点御質問いたします。eラーニングはこれから非常に重要になるので、この種の検討は大変重要だというふうに思っていますが、まず第1点目は、本件は権利制限した結果、無償にしてくれという要望なのでしょうかと。つまり、許諾権だけの問題にしているのか、そうでないのかということです。
 それから2点目は、公衆送信権と送信可能化権だけについて書いてあるのですけれども、複製権はいらないのでしょうか。つまり、前回か前々回でしたかの著作権法改正の時はこれ議論しまして、従来は先生だけが複製できるということだったのですが、コンピュータの時代になると、生徒も自ら複製するということがやはり必要だということで、生徒、受講する人が複製するということを認めたわけです。同様に、これはeラーニングになっても受講生側に当然パソコンのほかにプリンターもあることが想定されますので、複製したいという要望が出てくるのではないでしょうか。それが第2点目です。
 第3点目は、そういうことを考えると、なかなか無償も難しいかもしれないので、逆にかっこ4)のその他のところなのですが、有償の著作物は対象外にしたり、期間を6か月に限定したりすると、いろいろ教育実施上は不便が出ると思いますので、逆に対価を払うから、その代わりこういうものも認めてくれという考え方もあろうかと思うのですが、そういう議論、検討はされたのでしょうか。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) まず、1点目の無償の件でございますが、ここでは権利者サイドが権利制限での利用対象にするのはやめてほしいとか、あるいは有償のもの、有償とは何かということについてはもっと議論していかないといけないとは思うのですが、権利者サイドから見て影響が大きいようなものについては対象外とするということを考えています。対象外となる著作物については、できれば権利者側に統一的な窓口等をお作りいただいて包括許諾とか、どこかの特定の団体にある程度権利を集約していただいて、そちらの方と契約すればいいとか、そういう形をとらせていただけたらと考えております。
 ですから、すべからく全部を無償で使いたいという、もちろんそうさせていただければいいのですが、そうすると権利者サイドに影響が大きいと考えておりまして、権利者サイドに影響の大きいものにつきましては統一的な窓口をお作りいただいて、包括的な契約を結べたらというふうに考えております。ただ、その包括的な窓口云々という話は、まだ具体には権利者サイドと話してはおりません。
 それから公衆送信だけでよいのかという、自動公衆送信だけでよいのかという御質問でございますが、一応生徒側、受信者側の端末に複製されたり、必要な部分はプリントアウトするということは学習の過程で必要だと思います。ただ、そこまで書き込むべきだったかもしれないのですが、複製については30条や35条1項もありますので、現時点では公衆送信ができませんが、仮に公衆送信できるようになった場合、受信者側の複製は、それが授業に必要な過程であれば現行の規定でも大丈夫ではないかというふうに考えて、要望に含めておりません。仮に、もしそこのところが現行の規定では読めないということであれば誠に申し訳ないのですが、その点についても要望させていただけたらというふうに考えております。
 それから3点目は。

(山地委員) 3点目は有償の著作物は除外したり、期間を6か月に制限するというのは非常に不便で困るのではないか。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) まさに困りますが、そうはいっても最初に申し上げましたように、やはり単に利用者の立場だけで、あれもやりたいこれもやりたいということは必ずしも適切でないだろう。権利者の立場も考え、利益を損なわないような形で、ある意味では権利者の方々に理解していただけるような形で一歩でもeラーニングが進むように要望させていただきたいということで、今回若干不便はあるのですが、絞って要望させていただいております。

(山地委員) 例えば報酬請求権化の議論はなさらなかったのでしょうか。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) 報酬請求権化ということについては、まだきちんと議論いたしておりませんので、今回はそういう形での要望はさせていただいておりません。報酬請求権化といっても、例えば38条5項のような補償金制度をやったとしても、実際に補償金の額をいくらにするかということで合意がとれなければ、実際はそこの部分が機能しないということになりますので、そうすると指定団体制度まで持っていくのかとか、そういう形になると、かなりこれは権利者の方々とも含めて議論してからでないと、そういう形の要望は難しいかなと。構想としては確かにあり得る考えではあるのですが、現時点ではそこまで議論しておりませんので、こういう要望にさせていただいております。

(中山主査) 他に、はい、苗村委員。

(苗村委員) 3つの提案、いずれも私は個人的にはやっていただいた方がいいなという感じがしますのと、それから今最後にお答えがあったことと関連して、学校教育、特に非営利の学校教育機関に関して報酬請求権を入れるというのは今、いわば時期尚早だなという意味で、大体この提案が現実的かなと思うのですが、2点確認のための質問をさせていただきたいのですが、ちょっと直前の山地委員の御質問と重なるところがあります。
 1番目の点で2ページ目のその他のところに、有償の著作物も対象外とする云々という可能性を書いておられますが、典型的なケースとして新聞記事ですが、新聞記事は有償か無償かというのは判断がしにくいですが、インターネット上に載っている一般の総合紙の記事などは、多くの場合、例えば1月の間は無料で読めるけれども、その後は契約をしなければ読めないというパターンが多いわけですが、それを無償で読める段階でコピーをして教材として利用した後、当然これは記事1つが1つの著作物ですから、単なる引用ではないわけですが、それを例えば半年の間残しておくというと、解釈は難しいですが、いわば無償から有償に変わるようなことになってしまって、その時に急に削除するというのは、教育目的からすれば非常に不都合なことですので、何らかの整理がいるだろう。
 基本的な理念は、この最初に書いてある著作者等の権利を不当に害さないというのが条件なのだろうと思いますので、いずれにしてもこの点は継続して何らかの形で現実的対処をお考えいただきたいというのが気持ちなのです。多分、御検討いただいた上で、あり得ると書いておられるのかなと思いながら読みました。
 それから2点目の授業で使用した著作物の教育機関内での共用ですが、これも現実的な問題で、実際に小学校、中学校等でも1つの教室で先生が作られたものを他の教室では使えないということは、確かにいろいろな意味で不都合ですから、多分入れるべきだと思うのですが、これは35条1項の但書を素直に読みますと、その複製の部数、内容等に照らして著作権者の利益を不当に害することとなる場合はこの限りでないと書いてある。そこで1つの、例えば30人のクラスの生徒に配るためにコピーをしたものを、その段階では十分この条件の但書に該当しないからということでよかったものを、サーバーに乗せた段階で同じ学年のすべてのクラスで使うことになるということから、運用が結構難しいなと思うのですが、この辺りはどのようにお考えか、もしお聞かせいただければと思います。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) まず1点目の有償の件でございますが、確かに何が有償で何が無償かというのは難しく、先生がおっしゃられたように、当初無償であったものが有償になるというケースもあるでしょうし、逆のケースもあるかもしれません。著作物単位で見ると同じものであっても、有償と無償が併存しているということもあり得ると思いますので、そこの部分の具体的な線引きにつきましては、明確にこうしたいという提案まではできておりません。その点につきましては、権利者の方々と少し具体的にお話をさせていただいて、どの辺であればというのが出てくれば、それをできるだけ線は明確にすべきだとは思うのですが、現段階では申し訳ないのですが、明確なこういう基準で考えておりますとは申し上げられない状況でございます。
 それから2点目の共用の件ですが、35条1項は確かに利益を害する場合はこの限りでないというふうになっているのですが、それ以外に現在著作権法では49条に目的外使用という規定があります。して、こちらの方の解釈の問題もあるかもしれませんが、ある先生が授業で使ったものを、他のクラスとか、あるいは生徒が自発的に学内で見ることができるようにさせていただきたいという要望をさせていただいています。当該クラスで使うために複製したものを他のクラスで提供、提示するために他の先生に渡す、つまり譲渡する、あるいはサーバーに乗せるということにつきましては、例えばその授業のためにサーバーに乗せるというのは現行でも読めるかもしれませんが、乗せたものを他の生徒も見れるようにそのまま置いておくということになると、現行の目的外使用ということで違法というふうに解される可能性もあると考えておりまして、そういうことができるようにしていただきたいという要望です。
 ですから、実際に条文をどう直すべきかという、そこまでのちょっと具体の提案になっていなくて、やりたいことだけを書いていて申し訳ないのですが、そういう目的外使用との絡みもあって、こういう書き方にしております。

(清水メディア教育開発センター理事長) いろいろありがとうございます。山地委員とか苗村委員からのお話で、運用に関してお話がございました。今、要望させていただいておりますけれども、運用の段階では著作権法を厳守するということを守りつつ、教育で実践していきたいというふうに考えておりますので、私ども、これから教育関係者の協議会といいますか。関係者にお集まりいただいて、どのように運用していけばいいかということを協議させていただきたい。そして、また教育をしていきたいというふうに考えております。
 例えば、公衆送信させていただきますけれども、そこの段階で必ずこういうコメントは上につけてくださいとか、普通のものではないのだ、こういう条件でお許しいただいているのだということをユーザーが、学生ですけれども、分かるような、周知するとか、これは法律の問題ではなくて、運用で我々で考えて周知徹底させていただきたいと考えております。

(中山主査) 他に、どうぞ、松田委員。

(松田委員) 最初の第1番目の要望について質問したいと思うのですが、これは35条2項を、サーバー内にコースをあらかじめ蓄積した場合にはということで広げてもらいたいと、こういう文章として読めるのですが、それでよろしいですよね。それで主体は、まずここで書いてある教育機関、そしてこのサーバーから情報を取得できるのはコースを受ける学生に限定されると、こういうことですよね。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) まず、後ろの方の答えですが、コースを受ける学生限定でございます。当然ながらIDパスワードでしっかり管理するという前提になろうかと思います。
 それから、現行の35条2項との関係でございますが、今回要望させていただいておりますのは対象とする著作物を絞るという形での提案にさせていただいておりますので、現行の35条2項はすでにそういうものを活用して同時中継、例えばエル・ネットとか、そういう形で活用されておりますので、そこの部分の対象著作物を絞っても構いませんという趣旨ではございません。虫がいいとお思いになるかもしれませんが、現行35条の2項はそのままで、こういうことのできる規定もお作りいただきたいという要望にさせていただいております。

(松田委員) そうなると結局コース、それからコースに参加している学生、生徒の限定というのは非常に難しくなると思います。例えば放送大学でこのシステムを使って、受講生についてはコースに参加しているから、このサーバーにアクセスしていいよというふうになってしまった場合に、現行eラーニングを企業としてやっている方々とそう変わらない仕事になってくることになりませんでしょうか。権利者との調整だけではなくて、現行のeラーニングの企業との関係の調整もぜひお考え願いたいと思います。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) 御指摘は検討したいと思います。ただ、それと当然ながら今回要望させていただいておりますのも、現行35条1項及び2項と同様に、但書ということで権利者の利益を不当に害する云々というのは当然必要だと考えておりますので、送信先の数があまりにも多い場合という時がどこまでできるのかと。
 例えば、これは現在の35条1項でも、極端に対象者が多くなると読めるかどうかという議論はあろうかと思いますので、その辺は当然考えないといけないと思っております。具体的にどうする、どの程度までかというものは難しいかとは思うのですが、先生の御意見の趣旨を踏まえてきちんと対応できるように考えていきたいと考えております。

(中山主査) はい、どうぞ、山本委員。

(山本委員) 2番目の御提案のところについての意見及び質問なのですが、これは今までであれば特定の授業で使った教材を他のクラスでも使えるように、それによって教材がどんどんどんどん高度化していって質のいい、非常に高い教育的な効果のある教材ができ上がっていくというのはすごくよく分かるのですが、小さな小学校みたいなレベルで考えますと、そういうふうにでき上がった教材を他のクラスでも使い回しするというのは、著作権者に対する影響も小さいですし、極めてよさそうに見えるのですが、中にはマンモス大学のようなところもありますし、そこで例えばすべての学生が勉強するような、例えば英語の教材のようなものをこういう形で作っていった場合には、何万人もの学生がこうやって作った教材を無償で利用できるということになって、その場合には極めて著作権者に対する影響というのは大きいのではないのかな。そういう問題をはらんでいるのではないのかなというふうに、ここを読ませていただいて感じたのですが、その点についてはいかがでしょうか。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) 確かに大規模な学校で使われると権利者の利益を不当に害すると考えられるようなケースも想定はし得ると思うのですが、ちょっと繰り返しになって恐縮ですが、条文上はある意味では抽象的にはなりますが、そういう権利者の利益を不当に害する場合は駄目ということは、当然ながら必要だと考えております。運用という観点ではそれをどう考えるかというのは難しいと思いますので、実際仮にそういうことが可能、今回の要望が可能ということになるようであれば、ガイドライン等について権利者側と話していかないといけないとは考えております。

(中山主査) これは現行法でも35条は大学での授業で複製して困るというのは、判例がないから分かりませんけれども、限定されているのではないかと思うのですね。我々は、違う人の教科書をコピーして全部渡すということは普通やっていませんし、ロースクールの教材を作る時も非常にそこは苦労してやっています。権利者を害することはできないという、あの歯止めの規定は従来と変わらないので、多分そこで何とかしようというのが尾崎さんの御主張だと思うのですけれども。ですから放送大学なんかで何万部とやるのは、授業に使うとはいえ、多分現行法でも違法ではないかと思います。

(山本委員) 現行法上はできないというのはよく分かるのですが、今御提案のあるところでは使い回しが他のクラスでもできるということですし、それから今の35条での対象になっているのは学校、その他の教育機関ということで、放送大学が入っているのかどうかは知りませんが、大きな大学ですね。それも、これの対象になるのではないのか。私はよく存じ上げないのですけれども、そういうふうに懸念を持つのですが。

(森田委員) 同じ点の疑問ですけれども、今御提案になっている内容というのは但書は動かさない、つまり、但書は現行法と同じように制約としてかぶってくることが前提となっていると理解してよろしいのでしょうか。しかし、サーバーに乗せるということは利用者の範囲が広がるということなので、利用者の範囲は広がるけれども、広がったら但書に制約にかかるということだとすると広げることの意味があまりなくなってくると考えると、広げるということは但書の方も緩やかになることを想定しているということになるのでしょうか。例えば、従来の但書の解釈で、50人くらいのクラスだったらよいということだとすと、クラスが2つに増えて100人になるとサーバーに乗せることはできたけれどもそれは但書の制約にかかって結局は駄目だということなのか。この辺りの対象をはっきりさせないと、議論がしにくいというのが1点です。
 それからもう1つは、学校その他の教育機関の授業というように、その主体で限定するというのですけれども、これは法科大学院でもありますけれども、民間の業者が、授業の進め方そのものをいわばマニュアル化し、それを教師に提供して教材をサーバーに乗っけるというようなことがありますが、このような場合には、授業というのは教師が全部手作りで作るのではなくて、授業そのものの内容がある部分がアウトソーシング化されるわけです。そこで、授業の教材作りの支援という形で料金を取ってサービスを提供するというような商売がいろいろと成り立つと思うのですけれども、そうなってきますと、主体で限定するといっても、アウトソーシングはしてはいけないということにはならなくて、アウトソーシングする場合でもあくまでも主体は教育機関であって、ただ実際上は授業の支援という形で民間の業者が行っているということがあり得るということになると、そこの歯止めというのも実際どこで制限するのかというのは難しい問題になるのではないかと思います。この問題も、結局は全部但書のところが厳格にかぶってくるということであれば押さえられるのですけれども、そうなってくるとあまり広げることの意味がなくなってくるわけで、全体として提案をどういうふうに受け止めていいのか、まだ十分理解できていないところでございます。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) 但書自身は当然ながら権利者の利益を大きく害するようなことは駄目ということで、条文は各項同じような意味合いで書かれているとは思うのですが、同じ文言であっても、例えば対象者数が通常であれば1項の場合は数十人かもしれませんが、2項の場合は同時中継のための公衆送信を認めておりますので、公衆送信と言い得るためには特定多数ということになり、受講する生徒の数というのはかなりの数になってくることもありえると思うのですが、それでも同一の但書となっています。
 ですから、同じ文言であっても利用形態によってある程度対象となる人数は変わってき得るとは思うのですが、そうはいっても歯止めがないかというものではないと思います。ただ、その辺はもっと詰めていかないといけないのかなと思っております。
 それから教材作り等について、例えば民間へのアウトソーシングということは当然あり得ると思うのですが、それについては今回の要望に関しては特別にどうこうというものでもないと思います。現行の他のものでもないとはいえないと思いますので、その点については必要であれば今後研究していきたいと考えています。

(中山主査) 他に、はい、どうぞ。

(苗村委員) 先ほど私が質問といいますか、コメントしたことの続きで、むしろこの案の方が現実的ではないかということを申し上げたかったのですが、先ほど1つのクラスが数十人で、それを全校に広げると何万人にもなるというような極端な話もありましたが、客に例えば外国語の授業等で実際にディスカッションを含めた授業をやるのに10人くらいのクラスを作る、ということもあるわけです。現行法を素直に解釈すると、クラスを担当する先生が作った教材の中に、例えば外国の新聞記事を入れてあった。それを他のクラスで、やはり10人の学生のために使おうとしてもできないということになってしまうので、仮に、私のおりましたところは比較的マイナーな外国語を沢山扱うものですから、そのクラスが3つある。そこでも利用できて、全部合わせても30人だというような場合が現実にはありますので、まさに部数、それから対応に照らして、著作権者の利益を不当に害さないという、その条件をかぶせた上で他のクラスでも利用できるようにする。
 当然のことながら、最初から400人のクラスでは最初から利用できませんから、他のクラスというのもあり得ないという感じで、多分現実的な解決策かなと思います。あとは確かに運用でガイドラインを作っていただくのがいいのではないかと思います。以上です。

(中山主査) 他にいかがですか。はい、どうぞ。

(浜野委員) 先ほどの松田先生と森田先生の質問に尽きているのですけれども、簡単な確認ですけれども、1の2で教育機関の定義はなされているのですが、今株式会社形式の学校が増えていますけれども、これは排除されると考えていいのですかということと、もう1点はeラーニングとか遠隔教育というのはアメリカとか、先ほど清水先生がおっしゃったように欧米で進んでいるので、日本にサービスを限定した海外の機関がいっぱいあって、学校法人格を持っていなくて日本人だけのサービスをやっているのですが、そういったものもこれから排除されると考えていいのでしょうか。

(中山主査) 最初の問題は、構造改革特区で12条2項で規定する学校設立会社の設置する学校を含むと書いてありますので、これは問題なく入る。その点は条文上明らかになっております。

(尾崎メディア教育開発センター研究開発部教授) 2点目の件ですが、ちょっとそこまでは申し訳ございません。具体には検討はしていなかったのですが、外国の何らかの機関が、外国にサーバーを置いて外国から日本に送信しているというケースについては、日本の著作権法が適用になるかどうかというものもあろうかと思うのですが、それについてはちょっと何ともお答えできません。
 日本にサーバーを置いて、日本で日本人向けに外国の機関がこういうことを行うということであれば、当然ながら現行の35条の学校その他の教育機関、営利目的として設置されたものを除くに該当するのであれば適用になる、というふうに考えております。答えになっていないかもしれませんが。

(中山主査) よろしゅうございましょうか。まだ議題も盛り沢山でございますので、学校教育に関しましてはこのくらいにしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは1つ目の議題でございます権利制限の見直しにつきましては、本日はこのくらいにしたいと思います。なお、権利制限の見直しにつきましては、次回引き続き全体についてもう1度議論をしていただくという予定でおります。本日は議題(2)の私的録音録画制度の見直しについて入る前に、長丁場でございますので、ここで一時休憩をとりたいと思います。遅れておりますので、10時55分には再開をしたいと思います。定刻にはぜひ御着席をお願いしたいと思います。では55分までお休みにしたいと思います。

〔休憩〕

(中山主査) それでは時間でございますので、再開をしたいと思います。それでは残りの時間を使いまして、次の議題である「私的録音録画補償金の見直し」についての議論に入りたいと思います。
 本日は社団法人私的録音補償金管理協会、社団法人私的録画補償金管理協会、社団法人電子情報技術産業協会、社団法人日本記録メディア工業会から御推薦いただきました方々に御出席をお願いしております。
 なお、メイン席にお座りの説明者4名のほか、幅広い観点から御意見を伺いたいので、随行者として後ろに座っておられる方々につきましても、適宜御発言をお願いしたいと存じます。
 なお、私的録音録画補償金制度の概要説明資料につきましては、あらかじめ各委員にお送りしてございますので、制度自体についての概要説明は割愛させていただきまして、各説明者から論点を中心に説明を頂戴していきたいと思っております。
 議事の流れといたしましては、初めに権利者側及び製造業者側から各々20分程度で簡潔に御説明を頂戴した上で、60分程度の質疑応答及び意見交換の時間をとりたいと思っております。
 なお、本日御欠席の加藤委員より資料2−1のとおり御意見を頂戴しておりますので、意見交換に際しては御参考にしていただければと思います。
 それではまず権利者側から、「私的録音録画補償金の見直し」について御説明を頂戴したいと思います。本日は社団法人日本音楽著作権協会等、関係権利者7団体から、社団法人日本音楽著作権協会の菅原常任理事と、デジタル私的録音問題に関する権利者会議から、社団法人日本音楽著作権協会の野方映像部映像一課長にお越しいただいております。
 それでは、説明をお願いをいたします。

(菅原日本音楽著作権協会常任理事) 菅原でございます。本日はこの発言の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。説明に当たりまして、まず委員の先生方にはぜひ平成4年、この補償金制度が制定された際の目的というものを改めて御確認いただければと存じます。
 そもそも著作権制度上無断複製は許されないということが基本的な考え方だろうと思います。その上で、零細なものと予想される私的複製、これについては権利制限を施すということであったろうと思います。その後、デジタルコピーというものが可能になったことによりまして、そこから生じます著作者等への被害の救済、それから個人での複製というところの利便性、そこのバランスを保つ。即ち、これはWIPOの各条約でいいますスリーステップテスト、一般規定されております。特にその中での通常の利用を妨げるということになる、許諾を介した利用に対する無許諾での利用の競合的介入ということに対応するために、この制度が定められたものというふうに理解をしております。
 このことを踏まえまして、現状を見てまいりますと、技術の発展というのは平成4年から見ましても、格段の進歩をしているところでございます。それに比しまして、録音につきましては平成10年以降、録画につきましては平成12年以降、新たな対象の機器媒体の指定というものはなされておりません。
 その結果、権利者の利益というものを一定限度で回復すべき補償金制度というものが、現在適正に機能しているというにはほど遠いものであろう、というふうに思っております。いわば制度の空洞化というような状況にございまして、知的財産推進計画で政府が示した創造のサイクル、これをもう断ち切るようなことでもあり、知的財産立国実現の障害ともなるものではないかということで、権利者としてその危機感は極めて大きいものがございます。
 このような現状の改善というものを喫緊の課題としながら、並行してやはり補償金制度のより望ましいあり方について議論し、適正な是正をするということについては、権利者といたしましてもまったくそのように考えているところでございます。
 本日提出いたしました資料、お手元では資料の2−2というものでございますけれども、あと2−3というものもございますけれども、これにつきましては平成17年1月24日に本小委員会で示されました3つの観点、即ちハードディスク内蔵型録音機等についての政令による追加指定、あるいは2番目といたしまして汎用機等についての制度の検討、3番目いたしまして現行の政令による個別指定という方式に関する検討というものに沿ってまとめたものでございます。
 それではまず、特に録音に関しまして資料2−2に基づきまして御説明させていただきます。
 まず資料の1ページ目、1というところでまとめておりますのは、ハードディスク内蔵型録音機器についての意見でございます。この機器の急激な普及ということにつきましては、添付しております資料の第3号にその状況を示しております。
 また、やはり添付の資料1号に掲げておりますけれども、これらの製品というのは明らかに音楽を録音し、もっぱら鑑賞するというための製品でございます。
 さらに添付資料の2号にございますように、メーカー側のいろいろなテレビや雑誌の広告あるいはカタログ、これらのようなものを見ましても、やはり音楽を楽しむというためのキャッチコピーによって販売、頒布されているものでございます。これはやはりメーカー側の意図としても間違いのないところではないか、というふうに思っております。
 このことにつきまして、録音以外にも利用できるというような意見があるということは聞いております。が、現実的にそれらの機器を一般の人がどのように使うのかというようなことを、いわば見ようとしていないのかというふうに思うようなところでございます。
 ちなみにこれらの製品についての補償金という点では、先駆的な立場がございますフランスでは、やはりこの議論がされた時に、これら権利者、製造者、消費者同席の法定の委員会だそうでございますけれども、やはりメーカー側、最もこの分野で販売数を伸ばしているメーカーが、例えば、静止画が保存できたりゲームができるというようなことで、録音専用機ではないというような見解を述べたそうでございますけれども、委員会そのものからは一笑に付されたということを聞いております。
 これらの録音機につきましては、内蔵した大容量の記録媒体に圧縮した音楽を大量に複製して使うことができるというものでございます。MDのように記録媒体を入れ換えるという必要はございません。製品によってはMDの1300枚分、1万3000曲も録音できるというものもすでに販売されているところでございます。
 そして、この内蔵されているということでございますけれども、記録媒体というものはやはり記録媒体であって、その媒体に録音するための機器というものとはやはり別のものとしてハードウェア情報も区別できるものでございます。現行法下におきましても、機器、記録媒体、それぞれ政令で指定することに何ら問題ないものと考えております。
 また、これらの製品、録音機につきましては、爆発的に今普及をしてきております。一刻も早く政令指定の必要があろうと考えておりますが、もしこのまま放置するようなことになりますと、補償金制度の趣旨に反し、この制度自体を瓦解させることにもなりかねないというふうに考えております。
 デジタル技術の発展の速度は大変急速でございます。したがって、指定すべきものについてはやはり迅速に指定していただく。そして、もし他の検討すべき事項があるとすれば、それは並行してやはり検討していくべきものというふうに考えているところでございます。
 次に2番目の課題に関しまして、資料2−2の2ページにございます汎用機器媒体についての説明でございます。
 今、汎用機器のほとんどのものは録音の機能を備えております。そして実際、利用者もその利用をしているということであろうかと思います。
 さらには最近の状況といたしまして、パソコンのハードディスクに1度録音し、それをさらに先ほど申し上げましたハードディスク内蔵型録音機に複製するということが一般化してきているというふうに思います。
 一番最後のページにございます参考資料で少しこのことを図として示しております。左側はパソコンというところがございます。権利者から許諾を得た、例えば配信事業、それからの購入したもの、これがパソコンにダウンロードされる場合があるわけですが、これらのファイルについては権利者の許諾の範囲であるということがいえようかと思います。
 しかし、その他のソースからのものについては、すべて私的複製ということがいえようかと思います。その図では左側の赤く塗ってあるところでございます。そして昨今の動きといたしまして、そこからそのすべての音楽をさらに複製する。これがハードディスク内蔵型録音機であるわけでございます。このような形の私的複製が重なって行われているということが実態であろうと思います。
 また、媒体の面から考えますと、これは添付資料の5でございますが、その実態調査結果にもございますように、データ用のCD−R/RWに音楽を録音する消費者が圧倒的に多いということでございます。録音用CD−R/RWに録音する消費者は13.9パーセントにすぎない。また、録音用CD−R/RWはMDに音楽を録音するという場合には、当然その消費者の方は補償金をお支払いいただいているということでございますけれども、それ以外の汎用機、汎用記録媒体に録音するということになりますと、現実的にはそこの補償金の負担がないということでの不公平な状況も生じているという、看過できない状況にあろうかと思います。
 このようなことから、権利者といたしますと汎用機、記録媒体につきましても、ぜひ法改正の御検討をいただきまして、補償金支払いの対象ということを御検討いただきたいとお願いするものでございます。
 3番目に3点目の観点につきまして、政令指定の方式に関するところでございますけれども、やはりこれだけ急速な技術革新という時代で、先ほども申しましたが、録音については平成10年以降新たな補償金対象の機器、記録媒体が指定されていないという現状は、やはり制度が適正に運用されているとは言い難いことではないか、というふうに思っております。
 このことにつきましては、やはり本来の制度の目的を生かすべく、例えば個別の機器媒体の指定というようなことだけではなくて、新たに登場する製品が迅速にその補償金の対象になるか、ならないかということが、消費者にも権利者にも明らかに分かるような方式の導入というものをぜひ検討していただきたいと、強く望むところでございます。
 最後に技術的保護手段あるいは課金の技術が発達したことにより、補償金制度は不要であるというような意見があることにつきまして、理想的な状態としてそうなればよいということにつきましては、権利者側にとってもまったく異論のないところでございます。
 しかし、現状というものを見てまいりますと、100パーセントそのような私的複製をコントロールして、1回ずつ課金ができるというような実際上の仕組みというものは存在しておりません。
 このことにつきまして、例えば携帯電話の例によって同様ということで主張されることもございますけれども、これも先ほどの参考資料にございますように、携帯電話においてコピーをしない、できないというふうにしているのは、これはやはり電話の通信会社あるいは電話機のメーカー、あるいはそこで関わります配信事業者、権利者、これらが一体になって初めてそのようなスキームというものを作り上げたものでございます。残念ながら、現状のパソコン等汎用機を用いたネットワーク環境におきましては、このような状況にはなっておりません。
 先ほども申しましたように、権利者としてもそのような理想的なものについては異論があるわけではございません。ただ、将来にもし実現するかもしれないということだけで、現状補償金がもし不要だというような議論があるとすれば、それはやはりまったく誤りであるとしか言いようがございません。
 秩序ある私的複製の環境ということは、繰り返しになりますが、権利者としても強く思っているところでございます。このようなことから、この補償金の制度につきまして、やはり現状で必要なもの、極めて喫緊なもの、それについては速やかに指定をしていただきたいし、さらに現実に即した制度についての御議論もぜひいただきたいし、その上で、もし将来的、技術的なものもさらに発展して、権利者にとりましても消費者にとりましても合理性があるものというものが出てくるのであれば、それはやはり消費者の方、製造の方、権利者で十分に話し合いながら進めていくこと、これが必要であろうというふうに重ねて申し上げたいと思います。
 この後、録画の関係につきまして説明させていただきます。

(野方日本音楽著作権協会映像部映像一課長) それでは配布資料の資料2−3と、参考資料の4で法律の条文をつけていただいておりますので、こちらをお手元にお出しいただきまして、録画関係権利者団体として御説明をさせていただきます。
 資料の構成は、今御説明申し上げましたとおり同じ構成をとっておりまして、まず政令指定していただきたいと考えております製品につきまして、1ページ目に書かせていただいております。ハードディスク内蔵型録画機器等の政令による追加指定についてというものに沿って考えますと、録画の分野では資料の中ほど12に挙げさせていただいておりますものが、その対象になろうかと考えております。
 特に2につきましては、資料2−3につけております4ページ目の資料1号にございますように、上の赤い色のついた部分がその機器の出荷台数の推移を示しているものでございますが、非常に急速な勢いで伸びているということから、その指定が急がれるべきと考えているものでございます。
 同様の趣旨で同じ資料2−3の1に戻っていただいて、その1の終わりの方に掲げさせていただいておりますが、今年の末にも発売予定と聞いておりますHDDVDという製品につきましては、最近の報道でブルーレイディスクと規格を統一するかどうかということも出てはおりますけれども、こちらにつきましてはすでにある政令指定の要件を満たしているというふうに考えております。
 ただ、現在の政令指定の条文では、参考資料の4の4ページ目の著作権法施行令第1条、中ほどよりやや下の方にございますけれども、記録層の渦巻き状の溝がうねっておらず、かつ連続しているかいないかということが、政令指定に該当するかどうかの条件として書かれておりまして、この辺りのことはカタログにも載っていないことで大変分かりにくいことでございます。ですので、ここのところは本当に該当するのかどうかというところを技術の観点から検証していただき、指定していただきたいと考えているものでございます。
 続きまして補償金制度の見直しに関することですけれども、こちらはまた資料2−3にお戻りいただきまして、資料2号を御覧いただきたいと思います。5ページでございます。 現在のパソコンにつきましては、テレビチューナーを内蔵しているようなものが多く発売されておりまして、例えば「最大6時間遡って録画できます」とか、高度な機能を持ったものにつきましては、「6つのチャンネルを1週間分とりためることができます」というようなうたい文句で消費者に対して販売されているところでございます。機能的にはテレビに接続して使うだけの従来の録画専用製品とまったく変わらないばかりでなくて、使い勝手としてはそれを超えるようなものも出てきているという状況にございます。
 したがいまして、このような製品を補償金の対象にしないまま放置するということは、実際に補償金を支払っている消費者や、協力義務を負う製造業者と負わない製造業者の方との不公平感というものが、この補償金制度というものが周知されればされるほど広がっていくことになりまして、補償金制度自体も形骸化するということになりかねないと思っております。このような事態を避けるためにも、このような汎用機器及び記録媒体につきましては補償金支払いの対象とすべきと考えております。
 第3の政令指定制度の見直しについての考えにつきましては、先ほどの録音と同じでございます。次々と登場する技術が可能にする膨大な私的複製について、それが技術的保護手段によって管理されていたとしても、消費者の利益として一定の範囲における私的複製が許されているとすれば、それが速やかに制度でカバーできるような方式を強く望むところでございます。そのためにも、個々の技術を指定するのではなくて、例えばその技術が持つ機能や、その機能によってもたらされる結果が等しいのであれば、補償金の対象であると判断できるような、ある程度包括的かつ弾力性に富んだ制度に改めるべきであると考えております。
 最後に、先ほども触れたところでもありますが、技術的保護手段ですとか課金システムによって補償金が不要になるというような主張については、録画関係権利者団体としても非常に疑問に思っているところでございます。
 例えばデジタル放送でございますけれども、現在行われているものは1度だけ、1つだけコピーを作ることが許されるという仕組みになっています。いわゆるこれは世代管理と呼ばれているものです。アナログ放送が廃止されれば、すべての放送番組がこのような世代管理のコントロール下に置かれるということが予定されております。
 しかし、この時点でも、あくまでもコントロールされた範囲の中で私的複製ができる、ということが起こるだけでございまして、そこで課金が行われるようになるわけではないわけです。さらに申し上げれば、果たして公共放送ですとか民放ですとか、すべからく1回私的複製するごとに消費者の方に課金するようなシステムができ上がるということが、本当に誰にとっても望ましいものだろうかという視点もございます。
 このように放送の例1つとりましても、技術的保護手段や課金システムを用いて私的複製の問題が解決できるというような短絡的なものではないと思います。単に一方的に私的複製を禁止したり課金したりすればよいということではなく、音楽の録音や放送の録画などの使用実態や使用形態に応じて消費者や社会の理解の上に立ち、秩序のある私的複製の環境構築のために機能すべきであるものと考えております。
 以上、録音録画の観点から御説明をさせていただきましたけれども、委員の皆様におかれましては、芸術文化と技術との調和を基本に新たな技術開発の恩恵を受けつつ、芸術文化の発展に向けて権利保護とのバランスを図る補償金制度が果たしている重要な役割、そして補償金の対象とはなっていない膨大な私的複製が行われている、という現状を踏まえて論を尽くしていただければと考えております。以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございました。続きまして製造業者側から「私的録音録画補償金の見直し」につきまして、御説明を頂戴したいと思います。本日は社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会から亀井委員長と、社団法人日本記録メディア工業会著作権委員会から中根委員長にお越しをいただいております。
 では、説明をお願いいたします。

(亀井電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長) 本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。資料2−4を用いまして、電子情報技術産業協会の意見を述べさせていただきたく存じます。
 開けていただいて1ページ目でございますが、先ほど制度趣旨というお話がございましたけれども、30条2項で定められております本制度の趣旨というものをよく眺めてみますと、基本的には個々の私的複製に応じて複製者が相当の補償金を払うという、そこが根本かと存じております。
 この制度趣旨に立ち返りました時に、現状を見てみますと、制度をそのまま運用していくということについてさまざまな不合理があるというのが、私どもの認識でございます。もはや制度として限界が生じているということでございまして、そもそも論が必要な時期であるという認識をいたしております。
 本日申し上げたいことということで4点書かせていただいておりますけれども、これらにつきまして順次御紹介をさせていただきたく存じます。
 2ページ目でございますが、先ほど申しました30条2項の趣旨というのが、この絵の一番下にございます。権利者、特にこれは創作をされるもともとのクリエーター、それと利用者、複製利用等をされる方の向き合いの中でのシステムというものが、まず当初の思想である。制度上にはそこの間で直接的になにがしかの対価のやりとりであるとか、あるいは禁止であるとかということが難しいという前提の下に、上に点線で囲みました104条の2項以降にある徴収のシステムというものがこれに組み込まれたという制度かと存じております。
 こういったざっくりした制度の前提には、専用機器媒体を念頭に置いて、それでなければ立ち行かないシステムだったということが言えるかと存じます。当然、このシステムの中ではざっくりしておりますので、消費者の不公平感というもの、これは先ほど不公平だということでございますが、不公平すら感じないほどに認識されない程度でしかないという状況で運用されているという現状かと存じます。
 昨今はこれらを直接的に結びつけるような技術的な関係、技術的に結びつけることができるような状況になってきているということで、世の中が大きく変わっているという状況にあろうということでございます。
 3ページ目、4ページ目がそれぞれ録画録音についての技術的な状況を簡単に御紹介をさせていただいているものでございます。詳細は申しませんけれども、今の予定で2011年以降デジタル放送に完全に移行が仮にされるということでございますと、録画の関係では技術によってコピーをコントロールするという仕組みか施行されるということになってまいります。デジタル放送においては、現にその放送を暗号化し、その放送の暗号化された中に乗っておりますコピーコントロール信号によって機器が動作をするということを、メーカーに対する契約によって義務化するという形で担保している、ということでございます。
 こういう形でのコピーコントロールかかかるものにつきまして、先ほど課金があるかないかということ、それからここで1つコピーを取ることが認められているか、認められていないかというお話がございましたが、まさにここが私的複製としてどうあるべきかという点について疑義を生じているところではないか、というふうに考えております。利用者から見ますと二重の負担であるということも生じている。
 4ページ目、録音の方でございますが、録音につきましては音楽CDというものが1つございます。それに加えまして、最近ではインターネットを使った有料音楽配信というものも盛んになってきている。
 1つは、先ほど携帯というものがございましたし、パソコン等を介して携帯のプレーヤーに録音するということもございます。インターネットの配信サイトですと、課金のシステムとコピーのコントロール技術と組み合わせたサイトということになってきていますので、利用者から見ますと、ここもやはり二重に負担を強いられているかのようなことになってきているということでございます。
 もともとこういう形で、補償金という形で入りました背景には、こういった課金システムであるとか、コントロールが十分に立ち行かないということでございましたので、ここが変わっている現在はシステム自体を見直す時期に来ているということでございます。
 5ページ目、6ページ目は、音楽CDについての技術の例を挙げております。これらの技術はもうすでに開発が終わっているものでございまして、後はビジネスとしてこれを採用するか否かという、そういう産業判断、産業の判断の時期にあるというものでございます。特徴といたしましては、いずれもコンテンツを暗号化するということをベースにして、その後のコントロールを契約によって規制するというようなスタイルの技術というものに、今日現在ではこういった技術によってコピーを制限することができるというふうに、我々メーカーとしては考えております。
 7ページ目は、この10年の間に開発した技術の一覧でございまして、本日は詳しくは御紹介はいたしませんが、さまざまなメディア、さまざまなレコーダーにおいてさまざまな技術が採用されているという現状を御紹介させていただくものでございます。
 8ページ目でございますが、今般の御議論の中にハードディスク内蔵型音楽録音機器等というものが対象となっているということでございます。こういったハードウェアを眺めてみますと、これらが使っております媒体類、これは内蔵されるものであれ、可分媒体であれ、こういった媒体は下に書いておりますパソコンからカーナビゲーションシステム、カメラ、携帯、ボイスレコーダー、いずれのものにでも共有して使う媒体として存在をし、販売をされているものでございます。
 9ページ目でございますが、こういった汎用媒体を使った機器なわけでございますが、例えば商品Xは確かに音楽記録を訴求する商品として売られている。一方で商品Yは訴求ポイントとして音楽記録だけではなくて、写真が見られる、あるいはスライドショーができる、さまざま訴求をしていく。これがいろいろ訴求がついてきますと、最後はパソコンのような完全な汎用機になるということでございますが、この機器間の切り分けというものは、これは我々作るメーカー、それから消費者から見ましても、ハードウェア自体の切り分けというものは非常に難しくなっているというのが現状でございます。
 訴求点が違うというだけで例えば専用機であるといわれてみたり、訴求点が音楽でなければ、音楽だけでなければ汎用機であるといわれる。そういうこと自体がまずございますので、専用機を制度の対象とする補償金制度においては、非常にこれを適用することに無理が生じているという状況になろうかと思います。何をもって専用というかという程度の問題が出てきている。
 10ページでございますが、仮にこういった一連の汎用性ある機器・媒体を補償金制度の中に組み込んでいくということにいたしますと、法的にもかなり問題を生ずるのではないかというのが私どもの理解でございます。
 補償金制度で仮に事前、包括的に、一律的に取るというスキームのままだということでありますと、購入時にあらかじめその用途を特定できないような機器がございますので、それに対して幅広くかけるという補償金制度にそもそもなじんでこない、というふうに考えております。仮にそれを対象ということにいたしますと、そういった機器を使って実際に録音しない消費者に、録音をする消費者の分の補償金をも負担を求めるというような不平等、不合理性が生ずるということになろうかと思います。
 現在、補償金につきましては返還請求制度というものがございますけれども、実際に返還請求をいたします際に、将来にわたってデジタル録音を行わないということを消費者が証明しなくてはいけないという状況になっております。具体的に将来にわたってしないということについて、買ったばかりの機器を目の前についていかに約束ができるか、いかに証明できるかということでございますので、返還請求制度自体は名目のみの制度となってしまうということでございます。そうしますと、消費者の財産権の侵害という問題が大変にクローズーアップされるということでございます。
 仮にハードウェア内蔵型録音機器等を施行令にあるように、主として録音の用に供するというふうに仮に整理をされるということになりますと、蓋然性の観点から、この財産権侵害の問題ということはひょっとするとクリアをされるとおっしゃるのかもしれません。しかしながら、先ほど申しましたように、利用者から見た二重負担ということにつきましては、返還もできないわけでございますので、購入時点で一律に徴収するということの不合理さということについてきちんと説明ができないではないか、というふうに考えております。
 11ページでございますが、私どもといたしましては、こういった補償金制度で広く薄くかけるということではございませんで、先ほど急速な技術革新という御紹介がございました。技術を活用すれば、もっと皆が幸せになる世界というものができるというふうに信じております。利用者から見まして、例えば補償金を払って、なおかつ複製が制約されるということが果たしていいのかどうか。私的複製のあり方そのものに関わるような議論というものも、今必要であろうというふうに思っております。
 12ページ目は補償金と使用料の関係について、1つ考えさせる例というもので挙げております。仮にその利用者の二重負担というものを許さないということであれば、どちらが著作権者にとって有益であるかという議論も必要であろうと思います。補償金というのは購入時に1回だけ納めるというものでございます。使用料ということでは、ネットワークなりを使ってダウンロードのたびに使用料は取れる。どちらのビジネス、どちらの形が権利者にとっても有利か。そういう議論も必要かというふうに考えております。
 13ページ、まとめでございますが、こちらの委員会の先生方におかれましては、今の時代が補償金制度発足時、制度施行時の世の中から異なってきているという御認識をもちろんお持ちだろうと存じますので、ぜひ大所高所からのあるべき姿というものを御検討いただきたいと考えております。
 何が私的複製か。先ほどJASRAC(ジャスラック)さんの御説明にありました、許諾される複製と私的複製とどこが限界点であるのか、何が違うのか、。そういうことも含めて、そもそもあるべき論。、技術はどこまでそれを制約していいか。あるいは、補償金制度はいかにあるべきか。それらをセットにして、ぜひ社会のグランドデザインをお願いをしたいと存じております。
 先ほど、消費者の理解という御説明も権利者サイドからございましたので、ぜひ消費者の方とクリエーターの方の対話という中で、これらの問題をぜひ御検討いただければというふうに思っております。
 最後、付言という形ではございますが、これはかなり背景としてそのビジネス、産業の問題がその関わりを持っております。携帯につきましては、関わりのある関係者が話をしてスキームを作ったという御紹介がございました。まさに、それ以外の音楽ソースの扱い等につきましても関係者が議論をして、産業として何が妥当かということの議論ができないはずはないわけでございまして、それらについて産業政策の観点から早急に政府に関しても議論を促していただきたいと思うわけでございます。
 ありがとうございました。

(中根日本メディア工業会著作権委員会委員長) それでは続きまして製造者側、記録メディア工業会を代表しまして、私の方から御説明させていただきます。資料はお手元の資料2−5でございます。先ほどJEITAの方からも御説明がありましたように、基本的な姿勢は我々もJEITAさんと大きなずれはございません。ただ、私たちは記録メディアというある狭い分野の商品について、製品についての見解を述べさせていただきたいと思います。
 まず最初に当工業会の基本的な考え方として、3つ挙げさせていただきました。これはちょっと読まさせていただきます。
 矛盾が広がっている現行の私的録音録画補償金制度は、制度のあり方そのものから抜本的に見直していくべきではないか、というふうに考えております。
 それから抜本的な見直しなくして、現行制度の枠組みのまま運用面を変えて制度の拡大につながるような部分的な修正を行うことは反対という姿勢でございます。
 3番目は、これは当然のことでございますけれども、将来的には本制度を廃止し、時代に即した新たなシステムの構築を目指していくべきである、というふうに考えます。
 先ほど申し上げました矛盾につきましては、2のところで申し上げておりますが、現行制度の矛盾点として大きく2ページ目以降、6項目挙げさせていただいております。
 まずその1つ目は消費者除きの制度運用法と、ちょっと投げやりな表現におとりになられるかもしれませんが、その辺は御容赦ください。現在の法律では、消費者が支払うことになっている。その補償金について、現実は消費者補償金規定の改定や補償金の額に実質的な関係者協議に参加する機会は今までないわけです。それで積極的に消費者の意見を取り入れる実務機能を持たずに運用が図られている、ということに大きな矛盾を感じるわけでございます。
 その具体的な内容として1ページ目のところにグラフがございますけれども、補償金制度そのものの認知度の低さということ。これは3つのグラフがございまして、一番左側はSARAHさんの方で平成14年にやられた資料から使わせていただいております。それから右側2つは私どもの工業会でここ2年、DVDの私的録画補償金の調査をやった段階で、この制度の認知度ということで調べさせていただいた内容を添付しております。
 この中で見ると、「知っている」、理解しておりますといわれている方が7〜8パーセントしかいらっしゃらないという中で、「多少は知っている」という方が30パーセントくらいいらっしゃるわけでございますけれども、この辺についてはそういうものがただあるという程度の話のようでございます。
 それから2ページ目にまいりまして、補償金の徴収方法、その前に制度の理解を得るための権利者側の努力不足というふうに書いて、非常に言葉づかいが悪いけれども、これは権利者側が消費者に対して、ユーザーに対して、こういう制度があるのだよということがまるっきりやっていないというふうには、我々は認識しておりませんけれども、まだまだ先ほどの調査結果から見れば、このこと自体の理解度を得る努力が足らないのではないのですか、ということでございます。
 それから補償金徴収方法につきましては、ここに書いてございますような3つの観点がございますけれども、いずれにしましても今の3のところが一番申し上げたいことで、IT技術の進展した時代を迎えて、録音録画時点の徴収も現実に行われていることから考えると、このまま放っておけばますます矛盾が広がるということで、何らかの手直しが必要であるはずだというふうに思っております。
 それから大きな矛盾点の3番目、製造業者としての協力義務の限界ということで、ここに書かせていただいております。2ページ目の表につきましては、先ほどJEITAさんの方の説明等の資料と極めて酷似しておりますので省かせていただきますけれども、3ページ目の表をちょっと御覧いただきたいと思います。
 これは私どもメディア業界から見まして、MDで1つ例をとらせていただいております。実際にどういう形でどういう金額が上に上がっていくのですかという資料で、一番下ユーザー、それから小売店、加盟メーカー、それから我々工業会、補償金管理団体というお金の流れになるわけでございますけれども、この制度そのものの趣旨からいくと、消費者から取るのだということでございますと、ここにあります一番下にございますように、現在ですと4.4円、MD1枚当たり4.4円というのが実際にユーザーからいただくお金になるわけでございます。
 ところが、この右側に小売価格、ユーザー購入価格D表というものがございますけれども、現実的に今売られている金額100円としますと、この中には小売価格95円、それに消費税5円という構成に、総額表示ではこういう表示になるわけです。
 ところが、この95円の中に補償金の4.4円が入っておるわけですけれども、ユーザーはこれを御存じない。95円というものの中に4.4円が含まれるということを御存じないであろう、というふうに考えます。
 それからそれのもう1段上がりまして、ここへこれを売るために卸価格として65円、それに消費税3.25円かかるわけでございます。これも小売店の販売サイドの方には、この65円の中に補償金4.4円が入っているという認識がほとんどない。消費税については認識されていらっしゃいますけれども、入ってはいないという問題。こういうことからいきまして加盟メーカー、要するに私ども会員メーカーからの段階で、4.4円が我々が今代納しておるわけでございます。
 一番問題は、この4.4円が小売店、ユーザー、その方たちに御認識がないというのが今のレベルで、一番言いたいのはそれが補償金の認知度の低さから来ているのではないのかなという認識に立たなきゃいけないなと。
 4ページ目になりますけれども、今まで製造メーカーがこの補償金を全部、今ももちろん負担しておるわけですけれども、実質的にはコストとして吸収してきております。理屈上はコストじゃないのは分かっておりますけれども、現実の運用上はコストの中の管理項目にならざるを得ない。これだけ売価が下がってまいりますと、もうそういう形での吸収が現実のものでもできないレベルになってきている。
 それから3番目に、これが一番申し上げたいのですが、記録メディアメーカーはこの制度がスタートしたところから、録音用と録画用、それとデータ用というのは商品として明確に分けて売っております。そういう意味では我々、この補償金制度そのものはきちっと趣旨を理解した上で、こういう商品ラインアップを構成しているということを御理解いただきたいというふうに思います。
 あと、権利者への補償金の分配の透明性と公平性というのは、先ほどJEITAさんの方の御説明にあったとおりでございます。ユーザーがよく知らない中で、果たしてこれでいいのかなというふうに思います。
 5番目、重畳的な負担ということは、ここに書いてあるような内容が現実には存在するというふうに、我々は認識しております。
 6番目、補償金を支払わない一部の輸入業者の存在。これは我々からとったら非常に不公平感が伴います。
 最後に今後の権利保護と補償金の考え方として、3つ述べさせていただきます。
 メーカーとしては、利用者が録音されると同時に課金されるシステムに関する技術的問題を解決できるように、我々も最大限の努力を払いたいと思います。これまでもメーカー各社、機器と記録媒体の両面から著作権保護システムの開発に取り組んできたわけですから、その姿勢の継続をしていきたい。
 それから現行制度の導入時点とは技術的に明らかに進歩しておるわけですから、それを含めた観点から新しい権利者保護制度というのは考えてもいいのではないですか。
 3番目、特に消費者を入れた形の中で関係者協議を通じてロードマップを描いて、現在開発されているいろいろなシステムを構築していくべきだ、というふうに考えております。
 ちょっと文章の読み上げだけになったかもしれません。ひとつよろしくお願いいたします。

(中山主査) はい、ありがとうございました。それでは以上の権利者側及び製造業者側からの説明を踏まえまして、また本日御欠席の加藤委員の意見を参考にしながら、残りの時間について質疑応答したいと思います。その際、最初の30分程度は質疑応答を中心といたしまして、その後意見の交換ということに移りたいと思います。
 それでは御質問ある方がおられましたら、お願いいたします。どうぞ、小泉委員。

(小泉委員) 複数の報告者の方にまたがって、まとめてお聞きしてもよろしいですか。それでは1点目は菅原さんと野方さんに対する資料2と2−3に対する質問なのですが、ここで立法形式の点について触れてらっしゃいますが、これは具体的にはどういうことを改善としてお望みであるのか。
 つまり、例えば政令による指定をやめて、とりあえず課金して後で裁判所で片づけるというような制度をお望みなのかどうかということが、私の第1点の質問でございます。
 それから亀井さんの資料の2−4について、第2点目の質問をさせていただきます。かりに、私的録音が不可能な制度が2011年辺りを目処にある種の完成の域に達するとしても、問題はそれまでの3年間についてどういうふうに現状認識するかという点だと思います。資料では当面凍結すべきだというお話ですが、むしろ、2011年までは現行制度を続けてよい、という考えもあると思います。の話というのは凍結すると、ちょっと何かもう少し説明をしていただきたいなという気がしたりしましたので、資料の趣旨を補足的にお伺いしたいと思います。
 それから3点目は、中根さんに対する質問なのですが、資料でいいますと2ページ目の3のところですね。実態が分かっていないもので質問させていただきたいのですが、中間段階での協力を得ることが難しい場合というご意見ですが、具体的に取りはぐれが生じているという意味なのか、そういう強い意味ではないのかということです。先ほどの2−2の参考資料1のところで手がかりになると思いましたのは、媒体の出荷数と補償金の額というような対比が、数字がついていまして、単純で計算すると4.4に割り算するとなるのですが、これは何かずれが実際はあるのでしょうかということです。

(菅原日本音楽著作権協会常任理事) 最初の御質問でございます。例えばというような申し上げ方もしたのですけれども、確実にこれであればこういうふうに捕捉できるというところは、実はございません。ただ、現状の製品を個別に個々指定するということではなくて、何か機能的な部分で政令の指定の範囲が括られたとすれば、個々のものというよりはそういう機能を有する、結果としてそうなるものというようなところができるのではないだろうかというようなところで、その辺も含めて御検討いただければというふうに思っております。

(小泉委員) 政令指定方式は全部やめるというような意味では、必ずしもないと理解していいでしょうか。ありがとうございます。

(亀井電子情報技術産業協会著作権専門員会委員長) それでは御質問いただきました2点目の、2011年に凍結と書いてあるところの、そのこと自体とそれまでどうするかということでございますが、ここで凍結といっておりますのは今般の御議論のように、政令指定なりの形で対象を広げるということ自体の歪みを生ずるということでございますので、仮に今、対象と指定されて消費者が負担されているというものについては、それはその製品がある限り、それはそういう形で制御する。そうでない歪みを拡大する部分については、拡大という議論ではなくて、来るべき社会のことを考えるところにエネルギーを使ってはどうかという思いでございます。
 2011年というのは、1つはここにありますように、今の予定では地上波がすべてデジタルに変わるということで、家庭の中にある機器が録画の関係ではデジタルのものに統一されるということになります。
 一方で音についてじゃあどうかといった時に、機器は複合化していくという方向にありますから、同じ機器の中で音も扱い絵も扱いという世界に、今もなってきておりますし、そうなっていく。そうしますと、そこはやはり制度的に何か統一的な家庭の中での複製について扱う制度ということで考えていただく必要があろうかと思ってますので、1つがそこのターニングポイントが2011年だろうというふうに思っている、ということでございます。お答えになっているかどうか分かりませんが、すみません。

(小泉委員) 全部やめるわけではないということですね。

(亀井電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長) 違います。現状払っているものについてやめろということではございません。

(中根日本メディア工業会著作権委員会委員長) 次にメディア工業会への御質問内容でございますけれども、資料の中の3ページ目の中への御質問だと思いますが、この4.4円が発生して支払うのは、今メーカーが対象アイテムが出荷された実績に対してメーカーで算出して工業会に納め、工業会が全メーカーの分を集合しまして、それで管理者協会にお払いしている。したがいまして、今現在は小売店ないしはユーザーの方がこの4.4円、今年の例で申し上げますと、この4.4円というのは一切、ですから払った払わないとかという議論ではなくて、もう出荷した段階で我々の方で算出しております。

(中山主査) 他に、山地委員。

(山地委員) 外国の状況についてお伺い、質問したいのですけれども、資料2−2の資料4号と2−3の資料3号ですが、諸外国の例が書いてございまして、一見すると沢山国の名前が書いてある、多くの国がやっているなとも読めますけれども、世界200か国近い国があるわけですから、そういう意味ではやっていない国、あるいは批判的な国の方がはるかに多いという見方もできるわけであります。途上国はおいたとしても、先進国だけを考えたにしても、それにしてもというふうに思います。その辺を、ちょっと権利者サイドとしてはどのように解釈しておられるのでしょうか。

(野方日本音楽著作権協会映像部映像一課長) 補償金の制度に限らず、法制度そのものが各国でのいろいろな実態に応じてできてきていると理解しておりますので、やはり権利者としては自らの権利あるいは財産の保護ができるような主張を展開するものです。それはその国の実態に応じて展開するということが必要だ、と思っております。
 途上国を除くということであれば、権利者の感覚としては、機器あるいは媒体それぞれ指定されているものが違うというのはその国の法制度上であるとは思いますが、指定をしていく方向にあると認識しております。もちろん反対があるということも存じ上げてはおります。

(村上委員) 私は山地委員の質問をもうちょっと広くさせてもらおうと思っています。この問題は多分先進国に共通の課題だと思うのです。そこで先進国を見て、仮にアメリカとヨーロッパに分けて、それから現時点でどうなっているのかというのと、もう1つが5年、10年のタイムスパンで見た場合、態勢としてどういう動きがあるのかということについて権利者側と製造業者側、それぞれについてどうとらえているかというのを、とりあえず大雑把ですが、お聞きしたいというのが私の質問の内容になります。

(野方日本音楽著作権協会映像部映像一課長) 今御質問いただきましたように、大局的な意味で今ここですぐにお答えできるようなものを現在持ちあわせておりませんので、今の御発言に基づきましてきちんと調べていきたいと考えます。

(菅原日本音楽著作権協会常任理事) 1点、アメリカの場合とヨーロッパ等では法制度がやはり違うということがございまして、この補償金に対する考え方というものも異なっているだろう、というふうには思っております。詳細はさらに調査の上ということでございますけれどもけ、やはり先進国、特にITを含めた技術の進歩に応じまして、それぞれの国ではこういう補償をいかにすべきかと、権利者側から見るとそういう方向であることは間違いないと思います。

(亀井電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長) 私どもの理解しておりますところですと、ヨーロッパにおいては権利者側から御説明のあったように、何カ国かで汎用機器を含めた議論というものがございます。一方でアメリカにつきましては、制度上は録音についてあるということだけ、それから一部について、その中でも一部について対象として支払いが行われているという点がございます。
 どうしてアメリカとヨーロッパでそういう温度差があるかという点につきましては、1つにはコンテンツ産業の意向というものが働いているというのが、我々の理解でございます。アメリカではハリウッドなり、あるいはレコード業界もそうかとは思いますけれども、補償金という形での利益収受よりはビジネスによって、コンテンツビジネスによって利益を得る。その際に技術を使っていくのだというのが、彼らは非常にコンセプトとして明確に打ち出している。それがこの補償金制度に影を落としているというのが、私どもの理解でございます。

(中山主査) 他に、はい、どうぞ、浜野委員。

(浜野委員) 関連ですけれども海外は、私は映像のことしか知らないのですけれども、補償金制度があっても権利者に戻さないで政府がプールして、確かフランスは映画振興のお金に使われているのだと記憶しているのですね。ですから、こうやって書いていると、何か権利者に戻すように見えていますけれども、確かヨーロッパのほとんどの国はどれだけ権利者にフェアにシェアできるかというのが分からないから、政府がプールして運用資金に使われていたと思うのですね。ですから、まったく違う制度だと思ってもいいようなやり方でなっているのではないかと、一部の国だと思うのですけれども、そういうことではないのでしょうか。

(中山主査) はい、ではどうぞ。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) そこの問題は、今回この資料を作成する上で徴収分配のシステムについて調べました。フランスにおいて、政府がプールしているという事実はありません。権利者に分配されています。その一部が政府に留保されるという形はあっても、きちっと補償金の管理団体があり、それが著作者、レコード制作者、実演家等というカテゴリー別にきちんと分配されている現実があります。
 それとちょっとついでに発言の補足をいたしたいのですが。

(浜野委員) それは音楽ですよね。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) いや、録画についても分配されております。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) メーカーさんの主張されている制度の歪みなり、制度自体の持っている問題点とかということに関して、権利者側もまったく異論があるわけではないのですが、その制度の歪みというところで申し上げますと、資料の5というのをもう1度見ていただきたいのですが、これが2004年の6月30日から7月15日まで野村総研で実施した「デジタル私的録音機器ユーザーに対する実態調査」でございます。その冒頭の下側、「非政令指定機器によるデジタル録音の高まり」というのは、政令指定機器による録音が49パーセントに対して、パソコン等の非政令指定機器による録音が51パーセントということに、そういう実態にまでなっております。
 即ち、MD等の補償金が課せられた機器で録音している人と同じ数か、それ以上の方がパソコンを使って録音されている。そのこと自体が、まさに制度の歪みではないのでしょうかと思います。さまざまな技術的保護手段あるいは課金のシステムを使って、将来的に何らかの権利者とメーカー側が一緒になって1つのシステムを作っていくということはまったく異論がないのですが、先ほども菅原さんがおっしゃいましたように、しばらくまったく政令指定の機器が追加されていない現状で、パソコンによるさまざまの録音録画も一般化しているわけですよね。一方で、この私的録音録画補償金制度がある。これはまさに制度の歪み以外の何物でもない、というふうに思います。
 そこの時点でその未来につながる新たなシステムに向かう間、やはりこの現実をこのままで凍結しろという議論はまさに暴論ではないかというふうに思います。

(中山主査) 他に御質問がございましたら。はい、山本委員、どうぞ。

(山本委員) メディア工業会さんの資料2−5について、本質的な問題点ではないのですが、ちょっと気になりますので確認させてください。2点です。
 4ページのところに、メーカー側ではわざわざ録音用、録画用、データ用、別々に商品化して売られているということなのですが、前のページの表から見ますと、これはMDの場合のようですが、SARAH、SARVH、両方書いてあるということは録音録画では料金が4.4円で同じという扱いなのかなというふうに想像するのですが、そこでこの録音、録画、データ用、別々に売られている時に、用途別にされているということだけだと思うのですが、売値としては別々にされているのでしょうか、同じなのでしょうかというのが1点と、これもあまり大した問題ではないので恐縮なのですが、1ページ目の認知度の調査のところで、左の方から私的録音補償金制度の認知度として「知っている」という人は9.8パーセント、つまりこれは制度の存在自身を認識しているという人だと思うのですが、次のDVDディスクの私的録画補償金の認知状況で、「知っている」というのは6.8で「多少知っている」というふうなのがあるのですが、これはDVDディスクの購入者を対象に私的録画補償金の制度があるのを知っているのかどうかということを聞いたのか。それだとすると、イエスorノーで多少知っているというのはないのではないか。ここのところがちょっとよく分からないのですが。
 といいますのは、私自身も当然DVDディスクに、よく考えてみたら録画補償金がかけられているのは当たり前だとは思うのですが、今まで「ああ、そうだな」と思うような状態で「知っていた」という状態ではありませんので、これほどまでに認知度が高いのかなというのがちょっと疑問ですので。

(中根日本メディア工業会著作権委員会委員長) まず最初の御質問の件は、資料の3ページ目の表現で、SARAH、SARVHさんの両方を入れている。これはもちろんちょっと流れとして表現して、この4.4円そのものはMDについての例で、SARAHさんに行く方の分でございます。私どもの方の資料の表現上のミスでございます。したがいまして、先ほどの録音用、録画用の専用のやつを出してますよというのは、それぞれ値段が違います、録音と録画で。
 その次の御質問というか、御指摘の件でございますけれども、これはDVDの、パソコンを使ってDVDをお使いのユーザーに対するウェブ調査でございます。したがいまして、パソコンでDVDを使っているユーザーに限定されております。イエスorノーではないのかという御質問につきましては、我々ももう少し再検討しなければいけない部分があるかもしれませんが、一応この段階では「制度そのものを知っていますか、存在することを知っていますか」という質問に対して、はっきりと「知っている」とお答えになった方と、逆に我々が質問を作る過程で、「何となくあることを知っているよな」というユーザーもいるのではないのかなということでこの設問設定をしておりますので、その辺少し誤解はあるかもしれません。

(茶園委員) 2点お聞きしたいのですけれども、1点目はJEITAさんに、に対するものです。先ほど述べられた御意見は、2011年まで一応凍結して、それから廃止を検討してもらいたいという御趣旨だったと思います。2011年ということについて、私は技術のことはあまりよく分からないのですけれども、映像に関しては、おっしゃるように放送がデジタル化されることによって技術によるコントロールがかなり効いてきて、補償金制度よりも技術プラス契約のやり方の方がいいのではないかという主張は、ある程度理解できるのですけれども、録音に関しても、同様のことが言えるのでしょうか。現在、あまりコントロールがなされていないという状況が大きく変わり、技術プラス契約ができる程にコントロールを映像と同じように効かせることができるようになるのか、というのが1点です。
 もう1点は、権利者サイドの方に対するものです。ちょっと下世話なふうに思われたら申し訳ないのですけれども、現在、補償金制度というものが権利者、創作者に対してどういう意味があるかというのをお聞きしたいのです。例えばこの資料でしたら、録音の補償金については15年度で22億くらい、録画については14億くらいで、これが創作者に分配されていると思うのですけれども、言い方が難しいのですが、具体的に1人にどれくらい分配されているのか、ということです。
 優れた文化的創作をすれば、創作者は適正な報酬を得られるべきだと思うのですけれども、著作権に関る報酬の中で補償金というのがどれくらいの位置づけになっているのか。額でも、あるいは、収入全体の割合でも良いのですが、どの程度の位置づけのものかというのをお聞きしたい。それは制度をどうあるべきかというのも考える上でも必要だと思いますので、御存じであればお聞きしたいと思います。以上です。

(亀井電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長) それではいただきました御質問でございますが、録音がどうなるかということでございますが、録音につきましては、今すでにもうデジタルの状態で世の中に存在しております。どうしてコントロールができないかということをお考えいただくとよいかと思うのですが、放送は放送波に暗号をかけるという方向で、それを守るということをしていただきました。
 では、音楽はどうして暗号がかからないのか。そこの問題でございます。最後に付け足しで申しました絵のところは、絵としては実はCDの絵を描いてございます。音楽CDというもの自体を果たしてどうするか。これは産業論を含めてどうするかということがこの議論の背景にあるというのが、私どもの理解でございます。
 したがいまして、2011年までにそこの穴といってはいけませんけれども、そこをどうするかということに対して知恵を出せば、これは何事かなるだろうというふうに思っているという次第でございます。
 それからせっかく発言の機会をいただきましたので、先ほど暴論だというふうに批判を受けましたので、少し言い訳をさせていただきます。先ほど引き合いに出されました2−2の資料5というアンケートでございますが、御覧いただきますように、デジタル私的録音を行うユーザー中パソコンを使う人が56パーセントという数字でございます。したがいまして、パソコンを持っているけれどもデジタル私的録音を行わないユーザーというのが、このアンケートのこの数字の外にある。多分、ここにいらっしゃる先生方も、多分デジタル私的録音を行わないパソコンユーザーの皆さんではないかというふうに思われるわけでございます。
 それから補償金制度は店頭で払いますので、店頭で買うパソコンがすべて私的、つまり家庭に流れるかというと必ずしもそうではございません。ビジネスサイトで使われるものも流れますので、補償金の今の制度のように購入時点で払うということの不合理さというものは、そこにも表われるというふうに私どもは思っております。ありがとうございました。

(菅原日本音楽著作権協会常任理事) 御質問でございますけれども、なかなかちょっと単価というのが実は出にくいところがございます。といいますのは、録音録画それぞれ資料に記載しておりますまず各団体、それからそれに関わる権利者、それでそれは所属会員ということだけではなくて、例えば音楽の場合にJASRAC(ジャスラック)の非会員であってもJASRAC(ジャスラック)に対してそこの請求が来たものに対して、当然これはお支払いするということがあって、大変膨大な権利者というところになります。申し訳ございませんけれども、単価というのは少し分かりにくいということでございます。
 それから、これはあとそれぞれ管理を委託されております団体によっても異なることはあろうかと思いますけれども、例えばJASRAC(ジャスラック)が行っております分配というものは、私的録音なり録画なりの、特に録音ていうと分かりやすいのですが、元のソースとなったところの利用というものは報告がそれぞれ利用者から来るわけでございます。1番は録音、要するにCD等の販売に関すること、それから貸与に関すること、それから放送に関すること。このようなソースになるであろうデータ、それを元にいたしまして分配をするという方法をとっております。

(中山主査) 今の関連でちょっと私も関係者にお伺いしたいのですけれども、この制度の正当性というのは徴収の公平さと分配の公平さにあると思うのですけれども、分配の方の話ですが、SARAHは先ほどの記録メディア工業会の2ページに、著作権者と実演家とレコード制作者、多分JASRAC(ジャスラック)と芸団協とレコ協だと思いますけれども、一応はパーセンテージが書いてあるのですけれども、録画の方はいったいどういうところに行っているのかというのは、数字を見たことがないのですけれども、これはちょっと関係者の方がいたらお伺いしたいのですが。SARAHと同じような、こういうような表というのは公表しているのでしょうか。

(児玉日本映像ソフト協会専務理事・事務局長) SARAHの具体的なこういう分配等は承知しておりませんけれども、同じように分配の仕方については公表しております。

(中山主査) ただ、一番知りたいのは実際作ったクリエーターにどのくらい行っているのかなという点です。これはSARAHの方は一応これから、この下から下の方へ多分クリエーターとか、作曲家に行っていると思うのですけれども、録画の方はどうかなということです。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) 実演家の範囲での話なのですが、私的録画補償金というのは一応放送番組の録画されている放送番組の実態調査を行いまして、それの出演者を解明しまして、個人に分配をすでに始めております。

(中山主査) こういう表は公表していないのでしょうか、SARVHでは。例えばNHKに何パーセント行くとか、どこへ何パーセント行くというような。

(児玉日本映像ソフト協会専務理事・事務局長) 公表していますと今、私が、SARVHについてお答えしたわけです。

(中山主査) SARVHの方で、公表しているわけですね。

(児玉日本映像ソフト協会専務理事・事務局長) ええ。

(中山主査) 後でそれを見せていただければと思います。他に何か。

(里中委員) すみません。質問か、自分の疑問か、曖昧で申し訳ないのですけれども、私自身はこのデジタル機器が発達するのを目の当たりにしながら、権利者にとってとても素敵な時代がどんどん近づいてくるという実感を持っております。なぜならば、昔は勝手にコピーを取られても何も言えない、証拠もつかめなかったわけですが、デジタル放送のみならず音楽CDのコピーガードとか映像DVD、市販の中身の入っているDVDですね。それもコピーができないとか、同一パソコン上でなければ開けないとか、さまざまな技術が駆使されております。
 最初から話題になっておりましたハードディスク型の大容量音楽内蔵の持ち運びができるものなのですけれども、これも私自身は映像を取り込んだりするのに使っておりますけれども、確かに大容量で取り込めてみんなの権利が侵されるじゃないかと心配する気持ちはひしひしと伝わってはきたのですが、実際使ってみますと、以前の機器と違いまして、自分のパソコンからそこには取り込めるし聞けるわけですね。
 ところが、すみません、私、iPodしか使っていないので、他の機器がどうなっているかちょっとよく分からないのですけれども、iPodの場合、自分のパソコンに取り込んだ音楽を移すことはできる。というと、音楽を楽しむ環境を自分で作れるわけですね。
 大昔、私たちは演奏会場に行かないと音楽が聞けなかったわけです。レコードが出て、レコードプレーヤーを家庭に置いて、そこで聞かなければいけなかったわけです。それが持ち運び型のものができて、CDを持って歩くことができるようになった。時間があればもっと音楽を聞きたい。ビデオもそうだと思うのですよ。映画とかテレビ番組とか、もっと見たいのだけれども時間がない。ところがビデオの発達によって、自分が見たい時間に見られるようになった。ついでにコマーシャルも見るわけですから、放送を見てもらえるチャンスが増えたと思うのですね、テレビ局にとっては。音楽業界にとっても、音楽を聞いてもらうチャンスがどんどん増えてきたと思うのですよ。
 ところが人間は贅沢で、CDを持ち歩くのはやはり重くなる。こうやって大容量のものが出て、その前に小型のMDとか出ましたよね。ここまでは結構コピーが他の機器にできたのですけれども、いま盛んに売れている持ち運び型のいわゆるiPodみたいなものは、自分のパソコンに取り込んだ音楽を自分で楽しむためにあの中に入れて、音を出すことはできますけれども、よそ様のパソコンにコピーができない。だからこれは、いや、私の使い方が下手なせいかもしれませんが、私自身が自分のアトリエと自分の仕事場と2つパソコンを置いているのですけれども、その片方でしか出し入れができない。これはすごくいいのではないかなと。
 それで先ほど、アメリカでどうしてそういう小型ハードディスクの音楽、録音機器に制御がかかっていないかというと、アーティストたちが、結局みんなが持ち運んで音楽を外で楽しむ機会が増えると、人は音楽を沢山聞きたくなる。それによってレコード、レコードっていま言わないのかもしれませんけれども、売り上げが伸びて、アーティストたちがむしろ応援しているということを聞いたのですね。
 もしそうだとすれば、ガードできるところはガードできて、そしてここ、将来の理想的な姿が工業会さんの方からも出ていましたけれども、誰もが違法なコピーはできなくなって、私的に楽しむ以外できなくなって、一番の権利者にとって、あるいは業界の問題は、違法コピーされたものが販売されて経済的打撃を被ることだと思うのですよ。そういうことがどんどんできなくなってきた。個人が楽しむのは、その個人の時間のコントロールが個人でできるようになったわけですよね。
 ですからアメリカで、詳しい数字は分からないので、かえってこちらが質問したいのですけれども、アメリカでこういうハードディスク型のが出るようになって、かえって原盤といいますか。売り上げが伸びるようになったとは聞いたのですけれども、その辺の調査はどうなっているのかというのをお聞きしたいのと、あと私自身は自分の仕事の性質上、自分自身の描いた原稿を山ほどのメディアに取り込むわけですね。著作権料に当たるものを払っているわけですよ、自分で。何で自分で自分の作品に入れて、バックアップ取ってですね。あと最近は音楽もパソコン上で作曲できて、いろいろな楽器が再現できますので、やはりそういうのも取っておきます。もう私、倉庫といっていいくらい、おびただしいバックアップ分も含めるとメディアがあるわけです。全部自分の作品なのです。お金にしたらどれくらいになるか分かりませんが、私の記憶によると、1度もその権利補償金ですか。バックしてきたことはないのですね。
 他の漫画プロダクションとかにも聞いてみました。どこも皆、バックされた覚えがないわけですよ。ですから、非常に一部分の不透明なまま、この制度が来てしまったという不信感というのが著作権者の間には浸透しつつあると思うのですね。
 今後を見据えて、デジタル機器をより発展させて違法コピーができないようにして、その監視をきっちりやることによって業界も著作権者もみんな喜んで、そして消費者は気持ちよく使える。何か訳の分からないお金を払わずに、自分で正当に払うべきお金を払う。携帯で音楽配信を受けている人は、それでお金を払っているわけですよ。納得して払っているわけですよね。そしてコピーもガードできるという。こういうことは、もう2〜3年のうちにありとあらゆる分野で可能になると思っているのですが、すみません、長くなりまして。つい何か著作権者なのに何ももらっていないなというのがあったものですから。
 先ほど、ちょっとすみません、質問させていただいたアメリカでの噂、アーティストたちはハードディスクが出てきたことによって違法な、これまでのカセットテープとかCDとかMDとかのそういうコピーができなくなったことによって、消費者はかえって元のを買ってくれるようになった。私的に、本当に自分が外へ持ち出すため以外には使えないのだということで喜んでいるという声を聞いたのですけれども、本当なのでしょうか、どうなのでしょうか。どなたかお分かりになる方。

(菅原日本音楽著作権協会常任理事) ちょっと詳細がどうかということは承知しておりませんけれども、1つのビジネスのモデルとして、アメリカの御指摘の部分で、なぜ1つコンテンツが発展したかということなのですが、これはiPodという機材を買ったことに加えて、そこに向けたiTunesという配信サービスがございます。それが1曲99セントでしたですか。ということで、非常に手軽に買えるようになった。そのことによってそこの購入が増えた。
 対比されるこっち側にあるのが何かというと、ピア・トゥ・ピアを含めた違法な配信の状態があって、これはまったく還元されなかったわけですね。違法ですから。それに対して1つのビジネススキームの中でちゃんと収益が上げられるものとして、それが非常に増えたという観点からの喜びの声といいますか、ということであろうと思います。
 それと、ちなみに里中先生のお話しで残念なのですが、録音の場合に、それは音に関わる方の権利に対する補償ということでございまして、録音そのものの中では、例えば美術の著作物というのは対象にはなっていないので、お手元に入らないというのはそういうことかとは思います。

(里中委員) すみません。ですから、そこが例えばデータ用とか録画用とか、いろいろな生DVDとか生CDとか山ほど売ってますよね。何かそれにかかっているわけですよね、補償金というのが。

(菅原日本音楽著作権協会常任理事) 特定の媒体とかですね。

(里中委員) 特定の媒体の、いわゆる音楽用とか書いてあるやつですよね。もちろん私は音楽用のは少ししか使っておりませんけれども、変な話ですが、やはり音楽用だから音楽用のをきれいに入れたいといって祖母が、孫が歌った歌を録音して入れて記念にとっておく。そういうのもきっと御本人たちは補償金を払っているとは全然知らないわけですよね。そういうことが何かいっぱいあるのではないかと。
 DVDも画質のいいので、だからテレビ番組とか何かを録画するために録画用ので画質のいい、とにかくDVDにとれば画質はいいわけですけれども、そういうのにはじゃあ補償金はかかっていないわけですか、録画用、普通の録画用とかデータ用のには。

(野方日本音楽著作権協会映像部映像一課長) 補償金の加算されている録画用DVDとして売られているものと、そうでないDVDが市場にはありますので、その方がどちらを使ってらっしゃるのかということで、そこにこの関係権利者の著作物が録画されるのであれば、本当は録画用のものを使っていただくという制度だということだと思います。

(里中委員) すみませんでした。私、音楽用のCDとか、そういうのは結構目立つので分かるのですけれども、録画で補償金が入っていますというのはあまり見かけなかったものですから、失礼いたしました。

(中根日本メディア工業会著作権委員会委員長) メディア工業会の方から、ちょっとお話しします。ちょっと小さくて申し訳ございませんけれども、例えばこれはあるメーカーの品物ですと、for Videoと、要するに、ビデオ用と明確にうたってあって、もう一方で当然このVideo というところがDataと、for Dataという形にして店頭に出させていただいております。こちらのfor Videoとなっている方が当然補償金の支払い対象、メーカーとしてその出荷量に合わせて合意した金額をお払い、メーカーが一応立替払いをしているという形です。

(里中委員) じゃあ、やはりもともと認識していたのと同じです。申し上げたいのは、それはどなたもが皆、誰かの作品を入れるためにお買いになっているわけじゃないということを申し上げたかったのですね。自分で作った画像とか、自分でとったビデオとかを入れるためにも使うわけですから、だから矛盾があると。消費者の方もそれに気がついているということを、ちょっとお伝えしたかったのです。

(中山主査) 里中委員の御指摘は重要で、先ほど私が分配と並んで徴収の方の公平さも大事だと言ったのはそこのことなのですけれども、一応立派な条文があって、お金を返してもらえると規定されています。これSARAH、SARVHの方にお伺いしたいのですけれども、返した例というのは1件でもあるのでしょうか。どなたかおられます?あるいは御存じの方。

(菅原日本音楽著作権協会常任理事) ないですね。

(中山主査) 今までゼロ件ですね。

(野方日本音楽著作権協会映像部映像一課長) 電話の問い合わせは受けているようですが、その1枚1枚に加算されている額が非常にわずかな額であるというところで、そもそもその電話代だけで、その額を超えてしまうというようなところもあって、現実には返還まで至っていないという現状と聞いております。

(中山主査) 条文を作る時も、当然ないだろうという予測のもとに作ったと思いますけれども、実際問題としてもお金は返していない、事実はそういうことですね。

(中根日本メディア工業会著作権委員会委員長) 今の件のフォローですけれども、私どもメディアの方から見ますと、ハードの方はそれでも3桁になるのかなと思いますが、こちらが4円だ、5円だという金額でちょっと次元が違いますが、ユーザーから見れば、50円の切手払って、それを封筒に入れて、場合によったらもっと高いお金を払わないといけないということではまずやらない。私ども、クレームが直接来ます。そのクレームのお金すら、彼らはクレームつける時は全部メーカーの着払いで請求してくるくらいユーザーの目が、いい意味で肥えているわけですね。ですから、この制度というのはあったってもう完全に死文化しているというふうに理解しております。

(児玉日本映像ソフト協会専務理事・事務局長) 里中委員の御質問にお答えする意味で発言させていただきますが、1つは録画補償金の問題で、私どもビデオの権利者団体、日本映像ソフト協会でございますけれども、これはいろいろ今、矛盾点で御指摘がありました技術的保護手段の問題で、私どもはビデオのディスクの発売についての補償金の分配は受けておりません。ですから、もしかしたら今、里中先生の御質問は、私は何も受けてませんというのであれば、ビデオの件で御質問されたのかと思います。
 私どもは、あくまでもテレビ放映した分についてのみこの補償金制度を利用させていただいています。決してコンテンツの複製等についての禁止権の対価として補償金をもらおうということではなくて、あくまでも許諾権ということで、もっとこの補償金制度というものがあるのだからコンテンツが潤沢に流通をして、それでコンテンツ産業がもっと発展するようにという考えでこの補償金制度を利用させていただいているということも、御理解をしていただきたいと思います。

(山地委員) 徴収の不公平性という話が出ましたので関連して1つ補足させていただきますが、JEITAの意見にもありましたけれども、非常に大きな問題の1つに私的使用30条の対象にならないであろうと思われる一般企業の購入の問題があるのです。これは30条の適用を受けない、つまり恩恵がないにも関わらず補償金を取られているというのは非常に問題だというふうに認識しております。
 実は一部の弁護士さんの中には、企業であったとしてもごく少数で、1部とか2部で30条の対象になるのだという意見があるのは承知しておりますが、現実問題として現時点における日本の企業は、私も法務部を見ておりましたけれども、企業がやる以上30条の適用はないというふうに思っている企業がほとんどなのです。なるかもしれないという議論に乗って、リスクを背負って30条を期待してコピーするという企業はほとんどないと私は思っています。そういう意味でも矛盾が拡大されているので問題だ、ということを申し上げておきたいと思います。
 もう1つ、よろしいでしょうか。先ほどiPodの話が出ましたので、iPod関連で2点御質問したいのですが、1つは権利者サイドに対してなのですが、iPodとiTMSがあれだけ評判をよくしているのですが、日本になかなか本格上陸できない。それはなぜかというのはマスコミにいくつか話題になってまして、マスコミが言うには、現在のiTMSのDRM、フェアプレーが日本の権利者から見ると非常に緩いといいますか。緩いのでアクセプトできないということで、日本の権利者との話し合いが難航しているというふうに聞いているのですが、その辺についてもし開示できる情報があれば教えていただきたいというのが1点。
 それからもう1つ、JEITAさんになるのかもしれませんが、iPodないしはiTMSの技術的保護の内容が何か難しくてあまりよく理解できないのですけれども、ごく簡単にこんな感じということがもしお分かりの人がいれば教えていただきたいと思います。以上です。

(菅原日本音楽著作権協会常任理事) そこのiTunesという配信のサービスでございます。アメリカやヨーロッパで行われていて、日本にも一昨年くらいから来てて、JASRAC(ジャスラック)の方には相談に来ております。具体的な手続きについては基本的な話が済んでおりまして、あとちょっと実務的運用をどうしていくかということ。それから当初3月、4月といわれていたのですけれども、若干あちらの都合で延びているというふうに今、報告は聞いております。決して許諾の上での問題ということではないのではないか。これは著作者の方でございますけれども。

(亀井電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長) iPodを出されているアップルさんは、実は私どもの会員ではいらっしゃいませんので、よく分からないという。いろいろ報道されていることがございますけれども、もしあれであればぜひこの場で、それこそ対象に議論されるのであれば、どんな技術かということをお聞きいただけるのが一番よろしいのではないかというふうに思います。

(中山主査) 予定の時間が来てしまいましたけれども、意見交換もこれからと思っておりますので、もう少し延長させていただきまして、質問ではなくてもう意見交換でも結構でございますので、ぜひお願いいたします。

(上野音楽制作者連盟常務理事) 今日は総論で多分私的録音録画、これから家庭内におけるこういう行為がどんどん広がっていく中で、現状と未来の中のヒアリングかと思うのですが、先ほどからJEITAさんが平成11年度までの私的録音補償金制度は認めるよといいながら、目の前にある、じゃあMDと同じような行為、今まで自分のライブラリーからCDをMDレコーディングプレーヤーに入れてMDに抜いて、外にMDを持って出ていく。これに補償金がかかっている。同じように、自分の持っているパソコンにライブラリー化した音楽をiPodに抜いて外へ持っていく。これは補償金がかかっていない。私的録音補償金制度に行為としてはまったく同じ行為をしているにも関わらず、この問題が今論じられた時に、11年度以降の話のように今聞こえているのが僕はちょっとよく分からない。目の前の問題です。
 それと今のiTunesのミュージックストア、これはアップル社があくまでもiPodを売るための1つの戦略の中にバーチャルレコードショップをインターネット上に掲げた。日本はなぜ遅いか。先にレンタルもあり、皆さんがレコードの保有枚数が多い。そこで自分たちに先に抜けるものを持っているから、iPodが売れるからiTunesのミュージックストアを持ってこなくても大丈夫だという見解があります。
 それから録音と録画で話を一緒にされた時に、ネットワークの問題と先ほどのデータ用DVDもしくはCD−R、それから音楽用CD−R、データ用CD−R、この辺りを先生方にちゃんと整理をして御認識いただいてお話をとにかくしていただいた方がいいかと思います。先ほど聞いていると、多少混乱があるのではないか、誤解も起きているのではないか、というふうにお見受けしました。

(中山主査) すみません。御所属とお名前をお願いします。

(上野音楽制作者連盟理事) 私は音楽制作者連盟の上野といいますが、主にニューミュージック系のアーティストたちの権利者団体で、CPRAの副委員長をやっております。実演家の代表をしております。

(中山主査) はい。他に御意見等ございましたら。どうぞ、山地委員。

(山地委員) 今日の議論でもずいぶん出ましたけれども、本制度は誕生の時からいろいろ問題を抱えていて、それを承知の上でスタートしたというふうに理解しております。徴収の、集める時の不公平性とか分配の不公平性の問題、ないしは消費者の認識欠如の問題もありますし、一方、技術の進歩によってコピープロテクションとかコピーワンス、あるいはムーブ、そういったことになったにも関わらず、それが制度に少しも反映されていない。そういう問題を沢山抱えていますので、権利者の発言にもありましたように、中長期的にいえば廃止の方向、縮小、廃止の方向だというふうに思うんですよね。ただ、他に代替案がないので当面は何とかしてくれというのが権利者さんの意見だと思います。
 したがって、もしも拡大するような方向に行くのであれば、基本的な考え方の問題だとか、哲学だとか公平性の問題をどうするとか、そういう基本的な議論を含めて議論するべきだというふうに思っています。いきなりiPodも入れようじゃないかとか、汎用機器もすぐ入れようとか、そういう議論にいきなり行くのは問題が多いと思っております。

(中山主査) ありがとうございます。他に。なるべく委員の方を伺いたいと思います。もし他に御意見ありましたら。はい、どうぞ。

(土肥委員) 意見として申し上げますと、そもそも著作権法をどう理解するか。ここのところだろうと思います。つまり、著作権法がベルヌ条約とかTRIPSとか、そういう想定しておる著作権法を想定する場合、複製権は著作権者にある。これは、はっきりしたことであります。ここを変えてしまって、例えばアクセス権とかそういう話になってしまえばまた別なのだろうと思うのですけれども、この複製権を制限できるのはスリーステップテストである。そのスリーステップテストの中に1つあるのは、やはり著作権者の利益を不当に制限しない、こういう場合があるわけですね。現状、複製がどのように行われておるか。そういう実態が当然検討されなければならない。そうしないと、スリーステップテストの1つのこれを満たせないわけですから。
 したがって、そういうそもそもそこの議論がなされる必要があるのではないかと思っています。その上で、短期的にとりあえずといいますか、繕い的な問題として何かを考えるというのは、また別になされる必要があろうかと思います。以上です。

(中山主査) 他に御意見は。ごく簡単にお願いいたします。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) 今、山地委員から拡大という言葉があったのですが、一言だけ申し上げたいのですが、これは拡大ではなくて、これだけ私的録音の手段も方法もいろいろできてきていて、私的録音の事実が増えている中で、私的録音補償金の金額が下落しているという、この実態に合わせて、少なくとも一番私的録音が行われている状況を補わなければいけない補償金が、その実態の逆行をしているという現実を補完してくださいというお願いをしているのであって、これを拡大というふうに解釈するのは多少違っているのではないかと。それだけ一言。

(山地委員) 今の御意見に対してですが、ただ私の考えでは、汎用機器並びに汎用媒体を含めるということは政令レベルの改正では済まない問題であって、現行著作権法の改正まで対象にせざるを得ないというふうに考えております。そこまで含めて対象範囲を含めるのであれば、それは私は委員としては当然拡大であるというふうに解釈しております。

(中山主査) はい。他に御質問でも御意見でも結構でございますから。はい、どうそ。

(前田委員) 今、汎用機器、汎用媒体の問題とiPodに代表されるようなハードディスク内蔵型録画機器、録音機器とではやはり少し違いがあるのではないか、というふうに思います。
 今、山地委員から御指摘がありましたように、汎用機器の問題をどう考えるかは、これは制度全体の制度趣旨や、その他大所高所から制度全体を見直した上での議論を進めていく必要があるのではないかと思います。
 ただ、iPodに代表されるハードディスク内蔵型録音機器については、これはその機器の設計とか、あるいは売り方とか、それから現実の利用のされ方等を見ても、明らかに音楽を録音する、私的録音することに使われているだろうと思われます。私はネットワークウォークマンのユーザーですけれども、私はそのように使っているし、それが一般的な使い方であろうかと思いますので、それについては制度全体の見直し議論と切り離して議論することが可能なのではないかと思います。

(中山主査) はい、どうぞ、山本委員。

(山本委員) 今、前田委員がおっしゃったように、iPodのようなものについて今までの議論の延長で処理できる問題だと、私も思います。恐らくiPodの利用のほとんどは既存のCDとかの同じ音源のものが使われているのであろうと思われますので、従来の特定機器等と同じ扱いの話だろうと。
 ただ、今の技術状況がかなり変わってきて、そもそもこういうものに対して補償金制度を設けないといけないというような前提がかなり変わってきているのではないか、というふうにも思われます。というのは、何故30条で権利制限規定を設けているのかというのは、いろいろな私的複製についてもいろいろな状況状況があります。自分が学習するためにコピーするのだとか、タイムシフティング、プレスシフティングとか、いろいろな目的があるのですが、そういう目的の中にこの本来であればお金を支払うべきであるにも関わらず、単純にそれを対価を支払う手段がないから、つまり市場の失敗があるから権利制限規定、30条の権利制限規定に関わらせるという状況も考えられるわけです。
 そうすると、DRMが実用的になるのであれば、その前提となる市場の失敗がないという議論も発生してきます。というような議論もここで煮詰めていって、根本的に技術の発展に対応して、本当にそういう補償金制度を設けないといけないのかどうか。今、議論すべき時期に来ているのではないのかな。私はそういうふうに思いますので、山地委員の御提案のとおり、前田委員の御指摘はよく分かるのですが、改めてここで本質的な議論をやるということには賛成です。

(中山主査) はい、ありがとうございます。他に、どうぞ,浜野委員。

(浜野委員) ちょっと意見の前に、里中先生が聞かれた関連のデータがRIAAから出ています。そののデータによると、6パーセント、7パーセントずっとアメリカの音楽市場は縮小していたのですが、去年2.8パーセント、CDの売り上げが増えました。これはメディア学者の間では議論されていて、iPodみたいなもので音楽を聞く習慣が戻り、さらに新しい音楽を聴きたいと、CDまでも売り上げが伸びたという解釈になっています。先ほどもお話があったのですが、個々の機器だけを取りあげて議論するのではなく、レンタルショップとiPodの関係での私的録音録画の問題とか、インフラが全然海外とも違いますし、全体的なコンテキストのところから議論していただきたいと思います。

(中山主査) はい、ありがとうございました。他に、よろしゅうございましょうか。
 この問題は非常に難しくて、iPodあるいはそれに類似するようなものと、例えば従来課金されていたものとどう違うのか、同じとか不公平だとかいう問題ももちろんありますし、その背景には先ほどから議論されているような、もう極めて大きい補償金制度そのもの、あるいは30条、場合によっては30条の議論まであるわけで、なかなか今日ここで拙速はできませんし、また次回も議論する時間がございますので、今日はこの辺でよろしいでしょうか。あと何かどうしても御発言ございましたらお伺いしますけれども、よろしゅうございますか。
 司会の不手際で若干時間が延びてしまいましたけれども、本日の会議はこのくらいにしたいと思います。次回は前回と今回のヒアリングや意見交換を踏まえまして、権利制限の見直しにかかる論点につきまして、全体を改めてもう1度議論をしたいと思います。また、各ワーキングチームから中間報告をしていただく予定でおります。
 なお、最後に事務局から何か御連絡ございましたらお願いいたします。

(山口著作権調査官) 本日は長時間、お越しいただいた多くの説明者の方々も含めましてありがとうございました。4回目となります次回の法制小委の日程は正式には近日中にホームページに掲載いたしますが、参考資料2に書いてございますとおり、事務的には5月27日、金曜日になりますが、14時から17時まで、場所はこの場所と同じでございます。即ち、経済産業省別館11階の1111会議室を予定しておりますので、よろしく御承知おきください。

(中山主査) それでは本日は審議会としては異例の長丁場になりました。お疲れと思います。どうもありがとうございました。これをもちまして文化審議会著作権分科会の第3回法制問題小委員会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。



(文化庁長官官房著作権課)

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ