特別支援教育について

島根県

団体名(受託自治体名) 島根県

1 概要

1 平成23年度事業の概要

1.関係部局等の連携した総合的な推進のための取組

 教育、医療、保健、福祉、労働の関係部局、関係機関の担当者で構成する連携協議会について、県教育委員会内に「しまね特別支援連携協議会」を、各教育事務所(県内5事務所)内に「広域特別支援連携協議会」を設置した。連携強化のもと、県全体の特別支援教育の総合的な推進と充実のための方策について協議を行った。

2.特別支援教育グランドモデル地域の取組

 益田市及び海士町を指定し、「相談支援ファイル」の作成を通して、関係部局が連携した乳幼児期から成人期までの一貫した支援体制の在り方について検討を行った。

3.支援体制の整備

 相談支援の充実を図るため、各教育事務所内に、専門家チームを設置するとともに巡回相談員を委嘱し、保育所、幼稚園、小・中学校、高等学校、特別支援学校に在籍するすべての障がいのある幼児児童生徒やその保護者、所属所に対して相談支援を行った。

4.市町村教育委員会への提言

校(園)内委員会の設置、実態把握、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成及び活用、専門家チーム・巡回相談員・特別支援学校との連携、学生支援員の活用について、幼稚園、小・中学校へ指導するよう周知を行った。また、市町村における特別支援連携協議会や相談支援チームについてもその設置を促した。

5.高等学校におけるすべての障がいのある生徒に対する校内支援体制の整備

 校内委員会の設置、実態把握、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成及び活用、専門家チーム・巡回相談員・特別支援学校との連携について、各高等学校へ指導を行った。

6.特別支援学校における特別支援教育の推進

 センター的機能の一層の充実、校内委員会の設置、実態把握、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画の作成及活用について、各特別支援学校へ指導を行った。

7.私立保育所、幼稚園、中学校、高等学校における特別支援教育の推進

 校(園)内委員会の設置、実態把握、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成及び活用、専門家チーム・巡回相談員・特別支援学校との連携、学生支援員の活用について、私立学校等の主管課である県総務部総務課と連携し、私立保育所、幼稚園、中学校、高等学校に周知を行った。

8.特別支援教育に関する研修の実施

 高等学校における特別支援教育の推進を図ることが喫緊の課題と捉え、各高等学校及び特別支援学校の特別支援教育コーディネーターに対して、「高等学校特別支援教育推進研修」を行い、障がいのある生徒等の適切な支援の実施や特別支援学校と連携した取組についての研修を行った。
 また、各教育事務所ごとに「広域特別支援連携協議会研修会」を実施し、小・中学校の通級指導教室担当教員に対して、専門性の向上を図るための研修を実施した。この研修の参加者について、通級指導教室を担当する教員に限らず、受講を希望する者も参加できるようにし、今後の通級指導教室担当教員の育成を考慮しながら実施した。

9.理解・啓発

 早期からの相談支援についての周知を図るため、「特別支援学校の教育相談」を紹介したリーフ レットを作成し、市町村保育所事務主管課を通して、保育所に在籍する全幼児の保護者に配布した。

2 平成23年度事業の成果

1.関係部局等の連携した総合的な推進のための取組

 教育、医療、保健、福祉、労働の関係部局、関係機関との連携の重要性を再確認するとともに、障がいのある幼児児童生徒のライフステージごとの各部局や機関の役割についてやそれぞれの取組についての理解が図られた。今後、さらに連携を強化した取組や研修会の共同実施等の方策について検討を進めていき、県全体での推進について共通理解が図られた。

2.特別支援教育グランドモデル地域の取組

 益田市では相談支援ファイル、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の統一様式が完成し、一貫した支援に向けた取組の整備が図られた。海士町においては、母子手帳と相談支援ファイルとの関連について検討を行っており、来年度完成を目指す。
 この相談支援ファイルについては、現在、県内19市町村のうち、5市町が作成済み、3市町が作成中、5市町が作成を予定をしている状況であり、このグランドモデル地域での取組が他市町村に拡がってきている。

※平成23年5月1日現在は県内21市町村であったが、合併により現在は19市町村となった。

3.支援体制の整備

 専門家チーム及び巡回相談員の相談支援の状況として、県全体で、保育所1件、小学校36件、中学校20件、高等学校12件、計69件の相談件数であった。この相談支援により、適切な支援の在り方について所属所に助言できたとともに、本人や保護者に対する就学についての情報提供もでき本人や保護者との合意のもとの適切な就学指導へのつなぎとして意味あるものであった。

4.市町村教育委員会への提言

 県内幼稚園、小・中学校の状況については、次の表のとおりである。

[単位:%]

項目 幼稚園 小学校 中学校
校(園)内委員会の設置  91.5(+7.8) 100.0(+1.6) 100.0(+0.0)
実態把握の実施  98.9(+2.0)  94.0(+1.8)  92.2(-5.8)
コーディネーターの指名  97.9(-1.1) 100.0(±0.0) 100.0(±0.0)
個別の教育支援計画の作成  30.9(-0.7)  66.1(+6.5)  62.7(+4.9)
個別の指導計画の作成  48.9(+5.0)  84.1(+1.2)  86.3(-1.0)
巡回相談の活用  88.3(+3.6)  84.5(+4.9)  77.5(-1.9)
専門家チームの活用  76.6(+3.1)  63.5(-1.4)  74.5(+8.8)

※( )内数値は前年度比

 特に、幼稚園での園内委員会の設置、小・中学校での個別の教育支援計画及び個別の指導計画の 作成、幼稚園での個別の指導計画の作成が進んだ。
 また、市町村における特別支援連携協議会またはそれにかわる会等の設置については、19町村の内、17市町村が設置しており、1市が設置予定である。相談支援チームについては、18市町村が設置をしており、1市が設置予定である。

5.高等学校におけるすべての障がいのある生徒に対する校内支援体制の整備

 県内高等学校の状況については、次の表のとおりである。

[単位:%]

項目 高等学校
校(園)内委員会の設置 100.0(+5.0)
実態把握の実施  90.0(+5.0)
コーディネーターの指名 100.0(±0.0)
個別の教育支援計画の作成  22.5(+7.5)
個別の指導計画の作成  25.0(+7.5)
巡回相談の活用  47.5(-10.0)
専門家チームの活用  42.5(-5.0)

※( )内数値は前年度比

 高等学校においては、全体的に数値が高くなっており、特に個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成が進んでいる。 この他に、特別支援教育の研修の受講についても、平成22年度44.3%であったのに対して、平成23年度は63.7%と大幅に増加し、高等学校における特別支援教育の意識が確実に高まっていると言える。

6.特別支援学校における特別支援教育の推進

 特別支援学校のセンター的機能については、特に保育所からの要請が多く、早期からの相談支援 へと取り組んだ。(詳細は別紙様式6-2報告書参照)学校紹介のリーフレットを作成し、市町村 や学校等に配布することで相談支援についての周知が図られた。
 また、校内委員会の設置、実態把握、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画の作成等の体制整備についてもさらに進んでおり、各特別支援学校とも適切な支援及び必要な指導の実施について努力がなされている。

7.私立保育所、幼稚園、中学校、高等学校における特別支援教育の推進

 私立保育所、幼稚園、中学校、高等学校について、校(園)内研修を開催するに当たり、県教育委員会の特別支援教育担当指導主事を講師として依頼するなど、私立学校等でも特別支援教育の意識が高まっている。

8.特別支援教育に関する研修の実施

 高等学校特別支援教育推進研修を実施したことで、高等学校の特別支援教育コーディネーターの役割についての理解を得ることができた。また、高等学校と特別支援学校の特別支援教育コーディネーターとの連携において、ネットワークの構築を図ることができ、今後、連携を図りながら高等学校における特別支援教育の推進及び充実に向かうための基盤ができた。

9.理解・啓発

 特別支援学校のセンター的機能の要請の状況から、さらに早期からの相談支援の充実の必要性を 感じ、「特別支援学校の教育相談」を紹介したリーフレットを作成し配布した。1月下旬に配布を行ったことから、今後、特別支援学校への相談が増加すると予測する。

3 平成20年度「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」以降の成果と課題(今後の取組予定等)

[成果]
 平成20年度は「発達障害早期総合支援モデル事業」、また、平成21年度は「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」、そして、平成22年度からは「特別支援教育総合推進事業」として、県内全体の特別支援教育の推進及び充実を図る取組を行ってきた。成果としては、1.早期からの支援の必要性についての意識の高揚、2.各学校等における支援体制の充実、3.特別支援教育の理解の浸透があげられる。

1.早期からの支援の必要についての意識の高揚

 就学前の早い段階からの障がいに対する気づき、その気づきに基づく支援の実施について、保育所や幼稚園の教職員等の特別支援教育の理解や支援の必要性の意識が高まり、相談支援体制の整備及び充実が進むとともに適切な支援の実施へとつながっている。また、このことは、保育所や幼稚園だけでなく、小・中学校や高等学校にも言え、子どもの発達段階によるそれぞれの学校での適切な支援と必要な指導の実施が進んでいる。

2.各学校等における支援体制の充実

 各学校等において、支援体制の整備と充実が図られている。校(園)内委員会の設置、実態把握の実施、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成も年を追うごとに進められてきており、各学校等の相談や支援の実施体制の整備及び充実が進んでいる。

3.特別支援教育の理解の浸透

 教職員等の特別支援教育や障がいの特性についての理解が進み、支援体制の整備及び充実が図られていく中で、各学校等の取組にあわせ、市町村教育委員会、県教育委員会の取組により、保護者等について特別支援教育の理解・啓発が図られている。徐々に理解が浸透している状況である。

[課題]
 成果として、上記1.から3.が進んでいる状況ではあるが、今後、これらをさらに進めていく必要がある。特に保育所や幼稚園の早期段階と高等学校の後期段階において、教職員等の特別支援教育や障がいについての理解と適切な支援や必要な指導の実践力等の資質の向上を図る必要がある。
 また、保育所や幼稚園での所(園)内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名を進め、さらに早期からの特別支援教育の取組を充実させるとともに、小・中学校、高等学校における特別支援教育の実践力を高めていく必要がある。特に保育所、幼稚園や小・中学校の通常の学級、高等学校に在籍する障がい等のある幼児児童生徒の個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成を進め、これを活用した適切な支援と必要な指導の実施を進めていく必要がある。
 課題としては、引き続き保護者等に対する特別支援教育や障がいについての理解・啓発を図るとともに、今後、本人・周囲の子ども、地域全体に対する理解・啓発をさらに進める必要があることがあげられる。

[今後の取組予定]
 平成24年度は、特別支援教育就学奨励費枠の「特別支援教育体制整備の推進」とし、継続して取り組む予定である。早期からの支援体制の充実や各学校等における支援体制の充実、理解・啓発等、教育・保健・医療・福祉との連携を強化した上で、県全体の特別支援教育の推進及び充実に取り組む。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成24年10月 --