特別支援教育について

福島県

団体名(受託自治体名) 福島県

1 概要

1 平成23年度事業の概要

 当県においては、「第6次福島県総合教育計画」に施策として「障がいのある子どもたちが『地域で共に学び、共に生きる教育』を推進します」を掲げ、県重点事業として「特別支援教育総合推進事業」を位置づけた。
 当県では、東日本大震災及び原子力発電所の事故の影響により、多くの幼児児童生徒が県内外に避難しており、各学校等で支援を必要とする幼児児童生徒への対応に苦慮したり、地域によっては支援体制整備が難しい状況になったりした。そのため、市町村や幼稚園、小・中学校、高等学校等の課題やニーズに合わせた支援が必要であり、幼児児童生徒一人一人への指導支援を充実させることが重要である。
 そこで、本事業では、当県における基本理念である「地域で共に学び、共に生きる教育」を具現化するために、市町村教育委員会と連携協力のもと、医療、保健、福祉、労働等の関係機関とのより一層の連携を図りながら、市町村における支援体制の整備とその機能充実、幼稚園、小・中学校、高等学校等における特別支援教育の充実を目指し、特別支援教育の体制整備を推進した。
 事業推進に当たっては、県内の市町村全域を「特別支援教育総合推進地域」とし、県内7教育事務所へ配置した特別支援教育専門指導主事(以下:専門指導主事)が地域における特別支援教育の実情やニーズをもとに、地域における支援体制整備のコーディネートや就学相談へのアドバイス、各学校等の特別支援教育充実に向けた指導・助言等を養護教育センターや地域の特別支援学校と連携して、地域の支援体制の整備・充実に取り組んだ。

1 市町村における支援体制整備

 障がい福祉課と連携協力して、積極的に支援体制整備に取組む市町村に対して重点的に支援し、特別支援連携協議会や地域自立支援協議会子ども部会等の教育、医療、保健、福祉等の関係機関が連携したネットワークの構築とその機能充実に向けて取組んだ。また、「相談支援ファイル」等の作成・活用、就学指導・就学相談の充実等、市町村における相談体制整備に向けた取組みを支援した。

  • 教育と保健福祉部局が連携協力した支援体制整備
  • 地域自立支援協議会子ども部会等の設置支援
  • 特別支援教育コーディネーター研修会や特別支援教育支援員研修会等の実施
  • 地域における特別支援教育の理解啓発を図るセミナー等の開催
  • 相談支援ファイル等の作成・活用への支援
2 幼稚園、小・中学校、高等学校等における特別支援教育の充実

 幼稚園、小・中学校、高等学校等が抱える課題やニーズをとらえ、各市町村教育委員会と連携して、各教育事務所、県養護教育センターと連携協力しながら、具体的な指導場面において助言を行い、校内支援体制の整備と指導支援の充実に取り組んだ。

  • 特別な支援を必要としている幼児児童生徒への指導支援の充実
  • 通常の学級における授業の在り方
  • 個別の教育支援計画等の作成・活用への支援
  • ケース会等における助言や支援
  • 研修会の実施や講師派遣による支援
  • 特別支援学級や通級指導教室における指導や運営の在り方
  • 特別支援学校のセンター的機能を活用した支援

2 平成23年度事業の成果

1 市町村における支援体制整備

(1)市町村における教育委員会と保健福祉部局が連携協働した支援体制整備・充実に向けた取組み
 特別支援教育課と障がい福祉課が連携協力して、支援体制整備を目指す市町村を重点的に支援し、教育事務所、保健福祉事務所等と連携を図りながら双方の事業を効果的に活用して、市町村の支援体制整備を進めた。
 市町村で事業を展開する際、各教育事務所の専門指導主事が市町村の実情や要望をもとに、具体的な計画を立てて支援体制の整備・充実に向けた取組みを支援した。
 具体的には、5町村共同設置の地域自立支援協議会子ども部会において、各町村教育委員会と保健福祉部局が連携を図り、相談支援ファイルの作成や合同研修会の開催等に取り組むことで特別支援教育の理解が深まり、地域における支援体制整備が進められている。また、新たに地域自立支援協議会子ども部会が設置された市では、教育委員会担当者が地域自立支援協議会子ども部会に参加して連携を図るとともに、教職員研修や地域住民への啓発セミナーを実施して支援体制整備に取り組んでいる。
 平成23年度末において、支援体制が整備された市町村は、59市町村中36市町村となっている。

(2)市町村教育委員会主催による教職員等研修や地域住民への特別支援教育啓発セミナー等の開催
 各教育事務所の専門指導主事が各市町村教育委員会と連絡調整しながら、教職員対象の研修会や地域の理解啓発を図ったセミナーを開催した。また、教育事務所の専門指導主事がそれぞれの市町村の要望に応じて、特別支援教育コーディネーター研修、特別支援学級等の担当者研修、特別支援教育支援員研修等についてコーディネートして、専門指導主事が講義したり、県養護教育センターから指導主事を派遣したりして実施し、教職員の専門性や指導力の向上を目指した。市町村によっては、管理職研修会や教育委員会と保健福祉部局が連携した研修も実施された。

  • 教職員等研修の実施‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32市町村
    (管理職、特別支援教育コーディネーター、支援員等)
  • 理解啓発セミナー等の開催‥‥‥‥‥‥‥‥23市町村

(3)市町村における相談体制の整備
 支援体制整備を進めている市町村において教育委員会と保健福祉部局が連携して、「相談支援ファイル」等を作成している。市町村の状況に応じて、保護者等に配付して、就学時の引継ぎや関係機関との連携等に使い始めている。市町村において「相談支援ファイル」等の保護者や関係機関等への周知、活用の仕方等を検討している。今後、就学相談等への活用が図られるよう支援する必要がある。

  • 相談支援ファイルの作成‥‥‥‥‥‥‥‥‥32市町村
2 幼稚園、小・中学校、高等学校等における特別支援教育の充実

(1)幼稚園、小・中学校、高等学校のニーズに応じた支援体制の整備・充実
 各学校のニーズに応じて、児童生徒の指導支援の内容や方法の検討、ケース会への支援、教育課程への助言、校内研修会の開催などを行った。内容によって、教育事務所の専門指導主事や県養護教育センター指導主事が学校を訪問して支援した。ある地区では、幼稚園と小学校が連携したケース会を実施して、お互いの理解を図った取組みが行われた。授業などの具体的な場面をもとにした指導内容等の検討、ケース会による指導支援についての協議等をとおして、校内支援体制の整備が進められた。

(2)特別支援学級及び通級指導教室における指導の充実
 教育事務所が中心となり、県養護教育センター、地域の特別支援学校がチームとなり、連携協力を図りながら、特別支援学級や通級指導教室の課題やニーズに応じて、指導内容・方法の工夫、教育課程の改善等、指導支援の充実を目指した取組みを支援した。今後、地域において教育事務所、県養護教育センター、地域の特別支援学校がチームとして機能して支援することが求められる。

3 平成20年度「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」以降の成果と課題(今後の取組予定等)

 当県においては、平成17年度から特別支援教育推進のためのモデル地域を指定し、市町村の特別支援連携協議会の充実を図り、モデル地域を中心に市町村教育委員会主導のもとに、教育、医療、保健・福祉、労働等が連携した地域における支援体制整備を進めてきた。平成22年度からは、障がい福祉課と連携協力して、特別支援連携協議会や地域自立支援協議会子ども部会等の教育、医療、保健、福祉等の関係機関が連携したネットワークの構築とその機能充実に向けて取組んだ。

1 成果

○ 教育、医療、保健、福祉、労働等の関係機関が連携したネットワークとして、特別支援連携協議会や地域自立支援協議会子ども部会等が多くの市町村に設置され、一貫した支援体制整備に取り組んでいる。

○ 各地域で教育と保健福祉部局が連携した取組みが進められ、多くの市町村で「相談支援ファイル」等が作成された。

○ 各市町村教育委員会において特別支援教育の必要性が認識され、教職員等の専門性や指導力の向上、校内支援体制の整備を目指して特別支援教育コーディネーター研修会や特別支援教育支援員研修会等の各種研修会が実施されている。

○ 幼稚園、小・中学校、高等学校等において、特別支援教育の重要性が理解され、「個別の教育支援計画」等の作成率や校内研修の実施率が高まり、校内支援体制の整備と指導支援の充実に向けた取組みが進められている。

○ 地域の教育事務所が中心となって、県養護教育センターと地域の特別支援学校がチームとなって、連携協力して地域を支援する取組みを進めている。特に、各特別支援学校は教育事務所と連携協力し、センター的機能を発揮して特別支援学級や通級指導教室の支援を行っている。

2 課題

 当県では、東日本大震災及び原子力発電所の事故により甚大な被害を受け、多くの幼児児童生徒が県内外に避難しており、地域によっては支援体制整備が難しくなっている状況にある。その中で、事業推進をとおして、次のような現状と課題が見られる。

○ 多くの市町村に設置されている特別支援連携協議会や地域自立支援協議会子ども部会等において、一貫した相談支援体制の充実に向けた取組みが求められている。

○ 地域における支援体制が未整備な地域においては、関係機関が連携したネットワーク構築に向けた支援が必要である。

○ 多くの市町村で「相談支援ファイル」等が作成されてきたが、その活用が十分に進んでいない様子が見られる。そのため、市町村において「相談支援ファイル」等の周知を図るとともに、早期からの就学指導や継続的な就学相談、学校間の引継ぎなどでどのように活用していくか検討する必要がある。

○ 巡回相談の件数が昨年度より減っているが、今後、心のケアを含めて、各学校等において特別な支援を必要とする幼児児童生徒への指導支援が課題になると考えられる。

○ 特別支援学級及び通級指導教室、特別支援学校に在籍する児童生徒は増加傾向にある。そのため、教員の指導力の向上、校内支援体制の整備・充実をめざした取組みが必要である。

○ 各特別支援学校におけるセンター的機能がより充実するためには、各特別支援学校の特徴や組織を生かした地域支援の在り方について検討する必要がある。

○ 東日本大震災及び原子力発電所の事故により被災または避難している市町村に対して各市町村の課題やニーズに応じて、市町村における支援体制整備及び復興に向けた取組みを支援する必要がある。

3 今後の取組み

 当県では、総合推進地域を管轄する7つの教育事務所に特別支援教育担当の専門指導主事を各1名配置しており、その7名の専門指導主事が地域における特別支援教育充実のため、地域の課題やニーズを把握して、コンサルテ-ション機能を果たし、県養護教育センターや地域の特別支援学校と連携協働して、地域の課題やニーズに応じて、市町村の支援体制整備・充実に向けた支援に取り組んでいくこととする。特に課題として残されている「関係機関が連携したネットワークの構築」「相談支援ファイルの活用」「市町村における相談体制の整備・充実」「各学校等における校内支援体制の整備」について、各地域において戦略的、組織的に取り組んでいきたいと考える。
 各地域においては、保健福祉部局との連携協働のもと、市町村における相談機能の整備に向けた取組みを支援し、幼児児童生徒を支援するネットワークの構築を目指す。
 幼稚園、小・中学校、高等学校における特別支援教育の充実を目指すために、各学校が抱える課題やニーズをとらえ、市町村教育委員会と連携して、校内支援体制整備・充実に向けた取組みを支援する。また、ケース会議や学年・学校間の引継ぎ、指導支援の評価などを行うためのツールとして、「個別の教育支援計画」等の作成・活用を促すとともに、指導支援の充実を目指した取組みを支援する。特に、特別支援学級及び通級指導教室における指導支援の充実に向けて、教育事務所、県養護教育センター、地域の特別支援学校が連携協力を図り、特別支援学級や通級指導教室の課題やニーズに応じ、担当教員の指導力の向上を目指した働き掛けを積極的に進める。その中で、特別支援学校のセンター的機能を活かした指導支援に取り組み、地域の特別支援学級及び通級指導教室とのネットワークの構築を目指す。
 以上のような取組みを通して、各地域において東日本大震災からの復興を進めるとともに、本県が推進している「地域で共に学び、共に生きる教育」の実現を目指す。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成24年10月 --