産学連携による実践型人材育成事業-サービス・イノベーション人材育成(平成19年度選定プロジェクト)-の最終評価について

「サービス・イノベーション人材育成推進委員会」所見 

平成23年3月
サービス・イノベーション人材育成推進委員会

1 最終評価について
 「産学連携による実践型人材育成事業-サービス・イノベーション人材育成-」は平成19年度より事業期間3年間として開始された事業で、平成19年度に6件、平成20年度に7件のプロジェクトを選定した。なお、平成19年度選定の6件は、表1に挙げた各プロジェクトの特色に着目し、本事業全体のバランスを考慮して選定を行った。

 この度の最終評価では、平成19年度に選定された6プロジェクト(大学院5件、大学学部1件)について、プロジェクトの申請書に記載された計画・目標の達成状況の検証を行うこととし、検証の観点としていくつかの評価項目を設け、書面及び現地調査による評価を行った。

 書面評価では、各大学から計画・目標の達成状況について報告を求め、現地調査において、報告を受けた達成状況の事実確認と、教員30名、学生32名、連携企業等職員16名からのヒアリングを行った。

 6プロジェクトの取組概要及び最終評価結果は別添のとおりである。各大学の達成状況には差が見られたものの、全体としては申請書の計画・目標について真摯に取組がなされ、2に挙げるような成果があったことは高く評価できる。

 また、同時に、今後、大学がサービス・イノベーション人材育成に取り組んでいくにあたっての課題も明らかとなった。本評価結果を、プロジェクトに取り組んだ大学のみならず、広くサービス・イノベーションに関する取組を行う大学が参考としていただくよう、今後の課題及び期待を3に示す。
 
【表1】

プロジェクトの特色

大学名

日本の高齢社会を意識した医療・福祉サービス

東北大学

数理・統計・情報科学の融合

筑波大学

社会的サービス価値を創出する文理融合

東京工業大学

人類学的方法論

京都大学

ミドル・マネージャーに焦点を当てたケース教材の開発

西武文理大学

サービス・マネジメント

明治大学

2 本事業の成果
 最終評価の結果、本事業の実施により、主に次のような成果が認められた。なお、事業成果報告書及び教材を文部科学省ホームページに掲載している。

本事業のおける成果
産学連携による実践型人材育成事業-サービス・イノベーション人材育成-における成果

(1)サービス・イノベーションに関する人材を育成するための教育カリキュラムが構築された
 育成すべき人材像に沿って、サービス・イノベーションに関する科目が計37科目新規に開発・開設され、既存の科目と組み合わせて体系的なカリキュラムを構築し、正規の教育課程に配置された。特に2大学では、サービス・イノベーションに関するコースが設置され事業期間終了後も引き続き履修者の募集を行っている。新規開発科目には、カウンセリングの手法を取り入れた科目や、価値創造できる人材の育成を目指した科目など、これまでにない新たな知見が取り入れられた。
 平成21年度末までに本事業により新規に開発された科目を延べ825名が受講し、新規に設置されたコースを39名が修了した。

(2)サービス・イノベーションに関する教材が開発された
 サービス・イノベーション人材育成に関して、他大学で汎用的に利用可能なテキスト3件、ケース138件、データベース5件などの教材が開発された
 また、開発された教材が適切に活用されるよう、教員の能力開発に力を入れたプロジェクトも見られた。

(3)サービス・イノベーションに関して、産業界や地方公共団体と連携した実践的な教育が実施された
 5つの大学でサービス産業から大学への外部講師派遣及びサービス産業へのインターンシップが実施されるとともに、1つの大学で短期留学プログラムによる海外研究者との交流などの取組が実施され、学生が実際のサービスの現場と関わる機会が多く取り入れられた。
 また、産学連携のワークショップや海外の大学・研究機関とのシンポジウムなども行われ、産学の活発な意見交換により、サービス・イノベーション人材育成に関する産学双方の意識の高まりが認められた。

3 今後の課題及び期待
 一方で、本委員会としては、全体的な課題及び今後の期待として以下の(1)~(3)を指摘したい。

(1) 教育研究及び情報発信の継続・充実
 大学によっては事業期間終了後、予算等の諸事情により、教育プログラムの開発や継続が困難になったケースが見受けられた。
 その一方で、本事業による取組の成果を生かして、事業終了後は研究主体の取組にシフトしたり、他の関連事業に取り組んだりする大学もあった。
 本事業への取組によって、全ての大学で一定の成果が認められたが、今後それらの成果を途切れさせてしまうのではなく、何らかの形で大学の教育・研究活動に生かしていくと共に、インターネット等を通じた情報発信や産学の交流を積極的に行うことにより、広く大学及び産業界のサービス・イノベーション人材育成にフィードバックしていくことが必要である。

(2)大学間の連携による学問体系の構築
 本事業において、各プロジェクトで様々な取組が行われたが、開発されたデータベースが教育に十分生かし切れなかったと思われる例や、教育プログラムは構築されたものの、教材が他大学では利用し難い状況になっている例も見られた。本事業で開発・蓄積された成果については、個々の大学内のみで完結してしまうのではなく、今後、大学相互に活用がなされ、我が国のサービス・イノベーション全体を俯瞰できるような学問体系の構築に取り組んでいくことが重要である。
 なお、本事業では、全プロジェクト選定校による「情報交換会」が平成20年度から、毎年4回程度開催されており、各プロジェクトの取組状況についての情報共有やサービス・イノベーションの在り方についての議論等がなされている。今後、我が国のサービス・イノベーション人材育成の発展のためには、この「情報交換会」のような活動が活発に行われることが重要である。

(3)人材育成の効果の検証
 現地調査のヒアリングでは、一部の企業から大学に対して、サービスに関する研究者の育成を求める意見や、教育プログラムがサービス産業の即戦力育成には結びつかないことについての意見が出されていることについて確認ができた。その一方で、学生、卒業生・修了生からは、各プロジェクトに対して概ね高い評価が得られており、インターンシップの受入れ等により連携した企業からも、本プロジェクトの意義を高く評価していることが確認できた。各大学では、今後も連携企業等との意見交換を継続していくことにより、教育プログラムを改善・発展させていくことが必要である。


取組概要及び最終評価結果


1 総合評価結果 

総合評価

件数

当初の計画を超えた取組が行われ、所期の目的以上の成果があがった

1件

当初の計画と同等の取組が行われ、所期の目的が達成された

4件

当初の計画以下の取組であるが、一部で所期の目的と同等又はそれ以上の成果もみられる

1件

総じて当初の計画以下の取組で、所期の目的を達成していない

0件

6件

2 総合評価内訳
(1)当初の計画を超えた取組が行われ、所期の目的以上の成果があがった 

大学名

プロジェクト名

東京工業大学

社会的サービス価値のデザイン・イノベーター育成プログラム

(2)当初の計画と同等の取組が行われ、所期の目的が達成された 

大学名

プロジェクト名

東北大学

サービス・イノベーション・マネージャーの育成 -サービス・セクターの生産性管理のための人材育成-

筑波大学

顧客志向ビジネス・イノベーションのためのサービス科学に基づく高度専門職業人育成プログラムの開発

京都大学

「サービス価値創造マネジメント」教育プログラムの開発

西武文理大学

高付加価値を生む、シミュレーション・マインドを持ったミドル・マネージャー育成プログラムの構築 -サービス・マネジメント100(3段階ケース・メソッド)の開発と運用-

(3)当初の計画以下の取組であるが、一部で所期の目的と同等又はそれ以上の成果もみられる

大学名

プロジェクト名

明治大学

サービス・イノベーションの真髄を把握し、活用する人材育成プロジェクト

(4)総じて当初の計画以下の取組で、所期の目的を達成していない

(該当なし)

各大学のプロジェクト別取組概要及び最終評価結果

お問合せ先

高等教育局専門教育課

人文・社会科学教育係

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-- 登録:平成23年07月 --