日本ユネスコ国内委員会
文化活動小委員会
ユネスコ「世界の記憶」選考委員会
平成29年2月23日
ユネスコ「世界の記憶」国内公募における選考基準(解説)
この解説は、「ユネスコ『世界の記憶』国内公募における選考基準」の内容の理解を助けるために、ユネスコの「ユネスコ『世界の記憶』登録の手引」の中から例示等を抜粋するとともに説明を加えたものである。
1.基本要件
(3)以下の事項のうち一つ以上に関連して世界的重要性が示されていること。
1)時代
例:「ボアズキョイのヒッタイトの楔形文字の粘土板」トルコ
(ヒッタイト文明に関する唯一の現存記録)
「トゥール・レンス記録文書」カンボジア
(クメール・ルージュ支配下のカンボジアの政治犯収容所に由来する写真と文書)
2)場所
例:「ベルリンの壁の建設と崩壊および1990年の2プラス4条約」ドイツ
(冷戦を象徴するベルリンの壁に関する資料等)
「ナハル・エル・カルブの記念石碑」レバノン
(古代エジプトから現代に至るまでの軍隊が残したレバノンの川岸にある石碑)
3)人
例:「コンスタンティン・コレクション」トリニダード・トバゴ
(アフリカ系として初めて英国貴族院議員となったレアリー・コンスタンティンに関する記録)
「ニコラ・テスラの記録文書」セルビア
(多相系の発明により文明の発展に顕著な貢献を果たした科学者ニコラ・テスラに関する記録)
4)題材とテーマ
例:「カール・ベンツのガソリン自動車特許」ドイツ
(個人移動の端緒となったガソリン・エンジンによる自動車の特許)
「人権に関する記録遺産(1976-1983)」アルゼンチン
(コンドル作戦として知られる国家による人権や基本的自由の侵害に関する記録)
「トゥール・レンス記録文書」カンボジア
(クメール・ルージュ支配下のカンボジアの政治犯収容所に由来する写真と文書)
「ドミニカ共和国における人権のための抵抗と闘争の記録遺産(1930-1961)」
ドミニカ共和国
(ラファエル・トルヒーヨ政権下の非道行為と民主主義抵抗運動の記録)
5)形式及び様式
例:「古代ナシ族トンバ文字写本」中国
(特殊な紙と筆を用いた原始的書法による象形文字文献)
「山本作兵衛コレクション」日本
(実際に炭鉱で働いた経験を基に素朴派のスタイルで描かれた絵画と説明)
6)社会的・精神的・コミュニティ的な意義
例:コーランの彩飾写本、キリスト教の聖書、仏教経典
2.選考に当たって考慮する事項
(1)希少性
例:残存数が少ない「希少本」
(2)完全性
例:紙の記録の場合で一部のページが破損・脱落等していないこと。一連の資料群のうち一部が欠落していないこと。
国際統括官付