持続可能な開発のための教育(ESD)に関するベルリン宣言

持続可能な開発のための教育(ESD)に関するベルリン宣言(仮訳)  

                      
2021年5月19日 持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議採択

 

前文

1. ドイツ連邦教育研究省とアドバイザリーパートナーであるドイツ・ユネスコ国内委員会の協力の下、ユネスコの主催によって2021年5月17日から19日までオンラインで開催された持続可能な開発のための教育に関するユネスコ世界会議に政府、国際機関、政府間組織、非政府組織、市民社会、ユース、学術界、産業界、及び教育と学習に関わるあらゆる領域から参加した我々参加者は、本宣言を採択する。
2. 我々は、世界が直面している劇的で相互に関連する諸課題、とりわけ、地球上の生命を脅かす気候危機、生物多様性の大量喪失、公害、世界的感染症、極度の貧困及び不平等、武力紛争、並びにその他の環境・社会・経済的危機に対応するため、緊急行動が必要であることを確信している。こうした課題の緊急性は新型コロナウイルス感染症の世界的大流行によって増幅しており、我々が互いや自然との間のより公正かつ包摂的で思いやりのある平和的な関係に基づく持続可能な開発に向けた道に進めるために、根本的な変容が必要であると考える。
3. 我々は、教育は、ものの考え方や世界観に好ましい変化をもたらす強力な手段であり、開発の軌道が地球を犠牲にして経済成長のみを志向するものではなく、地球システムの限界の範囲内でのあらゆる者のウェルビーイングを志向するものであることを保証しながら、経済、社会及び環境の持続可能な開発のあらゆる側面の融合を支えることができると確信している。
4. 我々は、SDG4.7に根差し、17のSDGs全ての達成を可能にする持続可能な開発のための教育(ESD)は、全ての人に持続可能な開発への変化の担い手になるための知識、技能、価値及び態度をもたらす、必要とされる変容の礎であると確信している。ESDは、学習者が、批判的思考や協調・課題解決能力、複雑さやリスクへの対応力、レジリエンスの強化、体系的かつ創造的に思考する力といった認知的能力及び非認知的能力を培うことを可能にし、市民として責任ある行動を取る力を与え、SDG4―教育2030に定められた質の高い教育を受ける権利を実現させる。我々は、ESDは、自然の他、人権、民主主義、法の支配、不差別、公正及びジェンダー平等の尊重に基づき、これらを推進しなければならないと考える。さらに、ESDは、異文化理解、文化多様性、平和と非暴力の文化、包摂性、責任ある行動的なグローバル市民の概念を推進すべきである。
5. 我々は、政策、学習環境の変革、教育者の能力開発、ユースのエンパワーメント、地域レベルでの活動といった領域においてESDに関する行動を動員するための次の10年の指針となる文書として、新たな「ESD for 2030」の枠組み及びその実施のためのロードマップを歓迎する。

我々の約束

6. 我々は、各々の責務及び責任の範囲内において、必要性、能力、利用可能なリソース、及び国家的優先課題を考慮しながら、以下を約束する。
a) 我々の教育システムのあらゆる段階において、ESDが環境及び気候行動をカリキュラムの中核要素として備えたその基本要素であることを保証する一方、持続可能な開発のあらゆる側面の相互関連性を認識するESDに対する全体的な視点を維持する。
b) 全ての個人が持続可能な開発のための生涯学習の機会を得られるように、幼児教育から高等教育及び技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)を含む成人教育まで、あらゆる段階の教育訓練並びにノンフォーマル教育及びインフォーマル教育にESDを組み込む。
c) 認知的能力、社会性と情動の学習、個人及び社会的側面の変容に向けた行動能力に共に重点を置きながらESDを実施し、持続可能な開発、平等及び人権尊重に向けた個人の行動変容、並びに経済・社会のシステムレベルでの根本的な構造改革・文化変容を推進し、また、これらの変化をもたらすために必要となる政治的行動を促進する。
d) ESDの力を生かして社会を再設計し、とりわけ科学知識へのアクセスやデータ共有を奨励することにより、研究や根拠に基づく政策、民主的な意思決定及び土着の知識の認識を促進することで、地球のみならず人々のウェルビーイングの尊重を中心に据えた持続可能な変革型経済を推進し、将来の地球規模の危機へのレジリエンスと備えを強化する。
e) 学校が参加及び能動的市民性、公正及びジェンダー平等、健康、自然との繋がりや自然環境の尊重、エネルギー効率及び持続可能な消費のための生きた実験室となる時、また学習が実験的、行動志向的で地域及び文化的に適応している場合に、学習者及び学校コミュニティは民主的参加を通じて持続可能な開発に有意義に参加するようになることを認識して機関包摂型アプローチを推進し、学習者が生き方を学び、学んだように生きることができるようにする。
f) 小島嶼開発途上国では気候変動や自然災害への脆弱性が増大していることから、ESDの実施において特別な注意が必要であるため、気候変動を小島嶼開発途上国にとって特に重要なESDの優先領域として認識する。
g) また、ESD推進のための教師の重要な役割を認識して全ての教育段階において教師及びその他の教育人材の能力開発に投資し、必要な教育変容に向けて教育セクター全体でのアプローチが行われるよう保証する。
h) 新技術、デジタル技術及び「グリーン」技術の可能性を生かし、技術へのアクセス、その開発及び利用が、リスクと利益の適切な評価を伴い、責任のある、安全、公正、包摂的な形で、批判的思考及び持続可能性原則に基づいて行われることを保証すると共に、ESDのためのオープン教育資源、オープンサイエンス及び手頃なeラーニング設備を推進する。
i) 学習や市民参加の機会を作り、個人及び社会の変容の共同の作り手としてESDに参加するための資質・能力やツールを提供することにより、持続可能な開発への変化の担い手としての力を若者に与える。
j) 状況に即し、緊急時教育にESDを組み込んだ革新的ESD政策を推進することにより、包摂的アプローチを通じて、障害を持つ人や避難民並びに紛争や危機及び自然災害による影響を受けた人々を含む、社会から取り残された人々を優先する。
k) 知識や技能へのアクセスにおいてジェンダー平等及び不差別を重視し、持続可能性の課題及び潜在的解決策のより深く総体的な理解を可能にするESDにおけるジェンダー主流化を確実なものとする。
l) 貧困、特に極度の貧困に立ち向かうためにESDを結集し、技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)及び能力開発を含め、学習者に対し持続可能な生活に対する個人及び社会の要求を満たすための適切な資質・能力を付与して、人間の尊厳及び人間らしく暮らす権利を保証する。
m) 教育省庁と持続可能な開発に影響を与える他の全ての省庁が連携して、統治のあらゆるレベルにおいてESDに関する多部門・多分野間の協力を強化し、教育省庁及び環境省庁の協力強化を核に非政府組織、学術界、産業界、ユースなど、他の全ての関連ステークホルダー・グループとの協力も強化して、政府全体でのアプローチを確保する。
n) 世界、地域及び国レベルにおいて、教育、環境、気候、持続可能な経済及びその他の関連開発課題のさらなる調整を支援し、様々なステークホルダー・グループ間のネットワークを強化することで、各取組が相互支援的かつ補完的となるようにし、ESDの構造的な主流化を支援する。
o) コロナ禍において、またそれ以降も、十分なリソースを割り当ててESDに対する国内及び国際的な資金供給を守り、また全ての社会をより公正で持続可能なものとするに当たっての教育の力を強化するようなやり方で開発途上国における質の高い教育やユースのエンパワーメントを推進するに当たり、国際開発協力が果たす役割を重視する。
p) ESDの実施が継続的に改善され、誰一人取り残されないようにするのに役立つことを確実にするために、ESDの進捗をSDGsの全体的なモニタリング及び特に目標4.7に照らしてモニタリングし、ESDに関する評価体系を導入し、ESDの進捗を評価する方法に関する研究を強化する。
 

今後の取組

7. 我々は、ユネスコが、国連におけるESDの主導機関として、加盟各国と協力し、特にユニツイン/ユネスコチェア、ユネスコスクール及びユネスコ指定サイトを含むそのネットワークを動員して、実施の進捗の定期的な見直しを確実に行いながら、本宣言の実施を支援することを求める。
8. 我々は、2021年国連生物多様性条約締約国会議(COP15)や2021年国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)及びそれ以降の重要なマイルストーンを見据えて、本宣言及びその各規定を、関連する世界、地域、国内及びローカルのプロセスを通じて前進させることを約束する。
9. 人々や地球のための変容学習は、我々及び将来の世代の生存のために不可欠である。今こそ、我々の地球のために学び行動する時である。
 

お問合せ先

国際統括官付