参考2 我が国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画

平成18年3月30日決定
平成23年6月3日改訂
「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議

我が国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画

1.序

 2002年12月の国連総会において、2005年から2014年までの10年間を「国連持続可能な開発のための教育の10年」とすることが決議されました。(以下、持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)を「ESD」と表記します。)
 これを受けて、政府は、2005年12月、「国連持続可能な開発のための教育の10年」に係る施策の実施について、関係行政機関相互間の緊密な連携を図り、総合的かつ効果的な推進を図るため、「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議(以下「連絡会議」)を内閣に設置しました。
 連絡会議では、2006年3月に各方面から寄せられた意見等にも十分に配慮しつつ検討を進め、我が国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」に関する実施計画を定めました。
 その後の世界の状況を見ると、人口が増加する一方で、地球温暖化は進行し、穀物生産量は伸び悩み、深刻な水のストレス(制約)を受ける人口は増え、生物の多様性は失われています。また、国内では少子高齢化が進む中で、「格差社会」、「無縁社会」といった言葉が広く話題に上っています。持続可能な世界の実現、健康で文化的な生活を保障し、人と人のつながり、人と自然のつながりを大切にする地域づくり、それらの基礎となる教育の重要性は、国際的にも、国内的にも一層高まってきています。2009年にドイツで開催されたESD世界会議で取りまとめられたボン宣言にも、より強力な政治的コミットメントと断固たる行動が求められている、と記述されました。
 この度、有識者から成る「国連持続可能な開発のための教育の10年」円卓会議を開催して意見交換も行いながら2009年までの前半5年の評価を行い、それを基に実施計画の改訂を行いました。改訂のポイントは以下のとおりです。

  • 前半5年の取組について追記。
  • ESDの普及促進をさらに加速させ、ESDの「見える化」、「つながる化」を推進。
  • 新しい学習指導要領に基づいたESDの実践、ESDの推進拠点としてのユネスコスクールの活用など、学校教育を活用してESDを推進。
  • 新しい公共の概念との関係を明記。
  • 2014年の最終年の先も見据えたESDの更なる促進。

 政府としては、関係省庁が連携してこの改訂した実施計画に掲げられた諸施策を着実に実施することにより、ESDの更なる積極的な推進を図り、もって、あらゆる人々が、質の高い教育の恩恵を享受し、また、持続可能な将来と社会の変革のために求められる価値観、行動、及びライフスタイルを学び、各主体が持続可能な社会づくりに参加する世界を実現することを期するものです。
 なお、2011年3月11日に発生した東日本大震災及びそれに起因する原子力発電所事故、電力不足の状況等は、我が国におけるESDの実施のあり方にも大きな影響を及ぼすものです。
 例えば、今次の大震災は、自然災害への万全な備えが、持続可能な発展のために絶対的な必要条件であることに改めて気づかせ、これまで以上に、自然への理解を深めること、自然との共生のあり方について真剣に考えることが必要だと思い知らせました。また、東日本大震災及びそれに起因する原子力発電所事故、電力不足の状況等に直面することにより、多くの人がエネルギーの供給と利用のあり方を含む「持続可能な社会」像を考え直さなければならないと感じています。さらに、我が国は被災地を中心として復旧にとどまらない、新しい地域づくり、社会づくりを日本全体で構想していくこととなりますが、「持続可能な社会」はその際の柱となる考え方の一つとなると思われます。
 他方で、現下の状況を見ると、大震災による被害から安心した日常生活を取り戻すのにも、まだしばらく時間がかかる状況にあります。大震災等の経験を基にした教訓や復興についての考え方をまとめ、それをESD実施計画に反映させるには、もう少し時間を要します。
 このため、大震災や原子力発電所事故等の経験を基にした教訓や復興についての考え方をESDの推進にどう生かしていくかについては、被災地の安定等を待って改めて議論し、それを踏まえて再度実施計画を改訂することとします。

2.基本的考え方

(1)経緯

 ESDは、教育及び持続可能な開発に関するそれぞれの世界的な取組に由来しています。教育については、1948年の世界人権宣言において「すべて人は、教育を受ける権利を有する」とされ、1990年の「万人のための教育世界宣言」以降、初等教育の普遍化、教育の場における男女格差の是正、識字率の改善などを目標とした「万人のための教育」(Education for All(EFA))の実現に向け世界的に取り組まれています。
 一方、持続可能な開発については、1987年、ブルントラント・ノルウェー首相(当時)を委員長とする「環境と開発に関する世界委員会」が公表した報告書「われら共有の未来(Our Common Future)」の中心的な考え方として、「将来の世代のニーズを満たしつつ、現在の世代のニーズも満足させるような開発」という「持続可能な開発」の概念が取り上げられました。その後、1992年に開催された国連環境開発会議(地球サミット)においては、持続可能な開発についての国際的な取組に関する行動計画である「アジェンダ21」が採択され、この「アジェンダ21」の第36章「教育、人々の認識、訓練の推進」の中で持続可能な開発のための教育の重要性とその取組の指針が盛り込まれました。
 このような教育と持続可能な開発に関する取組が世界的に行われる中で、ESDの概念についての議論が深められ、国連持続可能な開発委員会において国連教育科学文化機関(以下「ユネスコ」)が中心となり、持続可能な開発のための教育のあり方について検討が進められました。
 2002年に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)の実施計画(以下「持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画」)を交渉する過程で、我が国は、国内のNPOから提言を受け、「持続可能な開発のための教育の10年」(以下「ESDの10年」)を提案し、各国政府や国際機関の賛同を得て持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画に盛り込まれることとなりました。このことを踏まえ、我が国より、2002年の第57回国連総会に、2005年からの10年間をESDの10年とする旨の決議案を提出し、満場一致で採択されました。我が国は、2003年の第58回国連総会、2004年の第59回国連総会においてもESDの10年を推進するための決議案を提出し、それぞれ採択されました。これらの国連決議に基づき、ESDの10年の推進機関として指名されたユネスコにより国際実施計画が策定され、2005年9月に承認されました。
 2008年には我が国でESD国際フォーラムが開催されました。ESDの10年の中間年である2009年には、ドイツ(ボン)においてESD世界会議が開催され、「ボン宣言」が取りまとめられました。「ボン宣言」ではESDの意義、これまでの進捗状況に言及するとともに、政策レベル、実践レベルでの行動の呼びかけ、ユネスコへの要請について言及されました。2010年の国連総会では、ユネスコから前半5年間の取組報告がなされています。
 2014年にはユネスコと我が国の共催により、我が国で「国連ESDの10年」最終年会合(以下、「最終年会合」)が開催されます。

(2)持続可能な開発のための教育とは

(イ)持続可能な開発、持続可能な開発のための教育

 持続可能な開発とは、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような社会づくりのことを意味しています。このため、すべての人が健康で文化的な生活を営むための取組が必要であり、貧困を克服し、保健衛生を確保し、質の高い教育を確保することなどが必須です。これらの取組は、性別、人種等により差別されず、公平に向上するよう取り組まなければなりません。また、これらの取組を資源の有限性、環境容量の制約、自然の回復力などを意識した節度あるものとし、将来世代へと持続する社会づくりとしなければなりません。さらに、戦争や紛争は、難民を生み、環境を破壊するため、平和への取組が必要です。
 以上を踏まえると、世代間の公平、地域間の公平、男女間の平等、社会的寛容、貧困削減、環境の保全と回復、天然資源の保全、公正で平和な社会などが持続可能性の基礎となっており、環境の保全、経済の開発、社会の発展(以下を含め、「社会」を文化の面も含めた広い意味で使います。)を調和の下に進めていくことが持続可能な開発です。
 このような持続可能な開発は、私たち一人ひとりが、日常生活や経済活動の場で、意識し、行動しなければ実現しません。まず、私たち一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革することが必要であり、そのための教育がESDです。そして、このためには、すべての人に対して識字教育を確保し、質の高い基礎教育を確保することが前提となります。
 なお、持続可能な開発の「開発」(development)については、「発展」、「社会の構築」などと言われることもありますが、この実施計画においては、いずれも同じ主旨として捉えた上で、「開発」という言葉を使うこととします。また、持続可能な開発のための教育の「教育」については、学校等の公的教育のみならず社会教育、文化活動、企業内研修、地域活動などあらゆる教育や学びの場を含みます。
※日本ユネスコ国内委員会では、ESDの趣旨を適切に表現するとともに、教育現場への普及を図るために、ESDを「持続可能な発展のための教育」と訳し、「持続発展教育」と略称することを提言しています。

(ロ)ESDの目標

 ESDの目標は、すべての人が質の高い教育の恩恵を享受し、また、持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれ、環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような行動の変革をもたらすことであり、その結果として持続可能な社会への変革を実現することです。

(ハ)取り組むべき分野

 取り組むべき分野は、それぞれの国の状況や事情により異なってきます。開発途上国では、引き続き貧困撲滅が最優先課題であり、持続的成長、個々人の生活水準と福祉の向上(保健衛生、基礎教育、人権、難民問題等への取組)及び人間の安全保障の実現等が緊急の課題です。また、こうした諸問題の解決の大きな背景をなす、文化等への理解、国内や地域の平和と安全の確保、ガバナンス等の改善も必要です。先進国においては、環境保全、人権や平和等の社会的な課題、貧困等の経済的課題について、グローバルな視野を持ちつつ取り組んでいくことが必要です。これらの中でも優先的な課題として、資源の過剰利用の抑制や環境保全等が挙げられます。ユネスコが策定したESDの10年後半戦略にもあるとおり、気候変動や生物多様性などの分野に焦点化を図ることもESDの普及に当たり有効と考えられます。また、世界の社会経済は、生産・消費等を通じて相互に結びついており、各地域や国、関係機関がお互いの課題について理解し、協調して取り組むことが必要です。

(3)我が国の実施計画

(イ)我が国の実施計画の位置づけ、内容

 ESDは、我が国の提案により、世界的に取り組まれることとなったため、政府は、この実施計画に基づき国内外における施策を推進し、国内及び世界の取組をリードしていきます。また、各地域で各主体が連携して、適切な役割を担うことができるよう実施の指針を明らかにするとともに、各主体に期待する事項を示します。
 具体的には、政府は、この実施計画の3.ESD実施の指針に示す内容に基づき施策を推進します。また、多様な主体による取組についても、この指針に基づいて行われるよう周知していきます。具体的な施策については、4.ESDの推進方策において、政府が自ら主体として実施する措置を示すとともに、各主体が連携して適切な役割分担の下に進めていけるよう各主体に期待する役割を明らかにし、その上で、各主体の取組を促進・支援するための施策を示します。さらに、国際協力の進め方について示し、世界においてリーダーシップを発揮するための具体的な取組を示します。

(ロ)最終年までの目標

 ESDの積極的な推進により、一人ひとりが、世界の状況や将来の世代と、現在の社会や自分との関係を見つめ、自らが生きる社会を持続可能な社会とすべく、その社会づくりに参画するようになることを目指します。
 特に現在、我が国では、農村部の過疎化や里山の荒廃、商店街の衰退、さらには「格差社会」や「無縁社会」といった諸問題が深刻化しており、これまでの生活様式や社会・経済活動を見直さなければならなくなっています。これらの様々な問題を解決するためには、社会を構成する個々人が、人と人、人と社会、人と自然とのつながりを大切にしながら、各地域において、環境保全や健康福祉、地域活性化・まちづくり、途上国に貢献する活動などのESD活動が実践されることで、これらの活動に参画しながらつながりを取り戻しつつ、持続可能な社会を築く力を育み、個々人がいわば「未来を築く担い手」となることを目指します。
 また、教育機関、NPO(以下も含め、公益法人等、非営利でかつ公益を目的とする組織を含む広義のNPOを意味します。)、事業者、行政等が、それぞれの活動に、持続可能な社会づくりのための行動を織り込むことを目指します。
 さらに、各地域において様々な主体が連携しつつ、地域の文化、産業、自然、歴史等を踏まえた、持続可能な地域づくりを行うことを目指します。
 これらの各主体による取組を促進するため、ESD活動の「見える化」、「つながる化」を推進していきます。現在、国内の各地域において、様々な主体が連携しながら、里山を保全・活性化する取組や、環境を軸としたまちづくり活動などを実践しています。そこで、こうした取組・活動の中から、ESDの理念に合致するものを掘り起こし、ESD活動の一つとして捉え直すとともに、社会的にあまり認知されていないESD活動を多くの人の目に触れるよう発信する「見える化」を図ります。これにより、各地域における持続可能な地域づくり活動への人々の直接的・間接的な参画を促進します。
 また、活動実践者同士を連携させるとともに、実践者と支援者を橋渡しする「ESDのネットワーク」を形成し、「つながる化」を図ります。これにより、活動の中で生じる課題や悩みなどの共有・解消をも促進します。加えて、地域ごとの活動活性化のみならず社会全体へのESDの普及促進及び活性化に努めるとともに、持続可能な地域づくりの担い手育成につなげていきます。さらには、こうした「見える化」、「つながる化」によって、世界に誇れる我が国のESDの優良事例の蓄積を図ります。
 これらの取組を通じて、日本社会が持続可能な社会に近づき、また各主体が、世界の中の一員として、地域、国、国際レベルで行動し、必要な役割を担うようになることを目指します。
 2014年に我が国で開催される最終年会合では、我が国の取組を世界に向けて発信すると同時に、2014年以降も、国連等の枠組の下で行われるESDの理念と合致する取組も視野に入れた形でESDが世界中で継続的かつ自発的に取り組まれるものとなるよう、「ESDの10年」の先を見据えた更なるESD推進のためのメッセージを我が国から世界に向けて発信することが重要です。そのために、「新しい公共」の概念にもあるように、国民、企業などの事業体、そして政府が協働することによってESDを我が国全体で盛り上げていかなければなりません。

(ハ)我が国におけるESD

 世代間の公平、地域間の公平、男女間の平等、社会的寛容、貧困削減、環境の保全と回復、天然資源の保全、公正で平和な社会など、ESDにおいて取り組むべき課題は多岐にわたります。ESDで目指すべきは、個々人が、単にこれらについての知識を網羅的に得ることだけではなく、「地球的視野で考え、様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組み(think globally, act locally)、持続可能な社会づくりの担い手となる」よう個々人を育成し、意識と行動を変革することです。
 そのためには、人格の発達や、自律心、判断力、責任感などの人間性を育むという観点、個々人が他人との関係性、社会との関係性、自然環境との関係性の中で生きており、「関わり」、「つながり」を尊重できる個人を育むという観点の2つの観点が必要です。このような視点を踏まえた上で、公共に主体的に関わり、持続可能な社会づくりに参画する個人を育むことを目指します。それは、未来の社会を描き、その実現に向けた取組を実行できる人づくりということも言えます。
 そして、このような個々人の取組がつながり合うことにより、持続可能な地域づくり、国づくり、世界づくりとして発展することが可能となります。そのためには、個人が参画する地域づくりを社会の仕組みとしても確立していく必要があります。
 ESDの概念は新しいものですが、その取組すべてが新しいというものではありません。学校では、各教科や総合的な学習の時間等を通じて「生きる力」を育むこと、地域活動では「市民参画のまちづくり」などとして取り組まれています。これらをESDの観点から捉え直すことによってもESDの実践が可能となります。
 2008年3月(幼稚園教育要領及び小学校・中学校学習指導要領)、2009年3月(高等学校学習指導要領)に公示された新しい学習指導要領等には、持続可能な社会の構築の観点が盛り込まれています。教育基本法とこの新しい学習指導要領等に基づいた教育を実施することにより、ESDの考え方に沿った教育を行うことができます。
 また、経済・社会・文化・生活など、様々な分野における多様な担い手が対等・平等に意見交換し、政府だけでは解決できない諸課題を「協働の力」で解決するための道筋を見出していく会議体として、2009年3月に「社会的責任に関する円卓会議」が設立されました。円卓会議は、2010年5月に「私たちの社会的責任」宣言を発表しましたが、その中では「私たちは、今、子育て支援などの身近な問題から地域コミュニティーの充実促進や地域経済の再生、雇用の確保、社会的格差の是正、そして、より大きな地球温暖化の防止など、様々な課題に直面しています。これらはいずれも、政府主導ではもちろん、それぞれの担い手の単独の取り組みでも、問題解決に必ずしも十分な成果を上げることができないものばかりです。関係するすべての担い手が、ともに支えあい、適材適所で役割分担を担って参画することが我が国の発展には不可欠です。また、こうした取り組みが、ムダなコストを生むことなく、課題を解決する本当の力、広い意味での『社会の資本』を形成し、将来世代にも責任の持てる持続可能な経済社会の創造に寄与すると考えます。」と述べ、「私たちは、本円卓会議を通じ、それぞれの組織の社会的責任を果たしながら、安全・安心で持続可能な経済社会を実現していきます。」と宣言しています。
 円卓会議の下には「人を育む基盤の整備ワーキンググループ」が設けられ、持続可能な社会の実現を支える主体を育むための基盤を整備していくための課題について検討が行われています。
 さらに、「新しい公共」推進会議では、官だけでなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、身近な分野において、共助の精神で活動する「新しい公共」の推進について、多様な担い手が集って検討が行われています。
 このように、現代社会の諸課題を解決するためには、政府だけでなく多様な主体の行動が必要であり、それらの取組がつながっていくこと、担い手を育む教育を充実させていくことが重要であるとの認識が広がってきています。

(ニ)我が国が優先的に取り組むべき課題

 環境、経済、社会面の多岐にわたる課題の中で、我が国を含む先進国に何よりもまず求められるのは、社会経済システムに環境配慮を織り込んでいくことです。具体的には、大量生産・大量消費・大量廃棄に基礎を置く生活スタイルや産業構造を転換し持続可能な消費・生産パターンを定着させることや生物多様性を確保することなどです。
また、人権や文化等に対する配慮を織り込んでいくことも大切です。
 しかしながら、個々人の暮らしや地域の課題は、環境、経済、社会がそれぞれ縦割りで存在するものではないことから、総合的、重層的なものであるはずです。環境の保全から始めた取組も、人権や福祉等の課題の解決等への発展につながっていくよう取り組むことが望まれます。例えば、地域の自然資源の活用を促進する取組により、地域経済の向上と環境保全が図られるだけでなく、この取組に地域の多様な主体が参加することにより、地域コミュニティの関係性が向上し、地域で顔の見える関係が構築される結果、地域福祉の向上にもつながります。
 一方、国際的な視点からは、世界規模で持続可能な開発を図る上で不可欠な開発途上国の直面する諸問題に対する理解の強化と開発途上国の諸主体との連携及び協力の強化によるミレニアム開発目標の達成や初等教育の完全普及や教育における男女の平等などを目指す万人のための教育(EFA)の達成が、先進国として求められる点です。
 先進国における消費・生産活動を始めとする社会経済活動と、開発途上国における持続可能な開発に関わる貧困等の諸問題は、相互に密接につながっており、これらについても統合的に扱っていくことが重要です。
 このため、政府としては、我が国のESDについて、先進国が取り組むべき環境保全を中心とした課題を入り口として、環境、経済、社会の統合的な発展について取り組みつつ、開発途上国を含む世界規模の持続可能な開発につながる諸課題を視野に入れた取組を進めていくこととします。
 また、我が国の提案に基づき2010年に国連で決議された「国連生物多様性の10年」に係る取組と連携を図ることも重要です。
 これらの取組を促進するために、モデルプロジェクトの実施や、ESDの取組の「見える化」、「つながる化」を推進して、ネットワークの構築を図るとともに、ESDの国内の優良事例を蓄積し、国際社会に積極的に発信していきます。「新しい公共」の概念にもあるように、国民、企業などの事業体、そして政府が協働することによって我が国全体にESDの考えや実践が十分に浸透するよう取り組んでいくこととします。

3.ESD実施の指針

(1)地域づくりへと発展する取組

 ESDの取組においては、学習者が多様な課題を実感し、自らの問題として捉え、解決に向け実践することが必要です。そのため、教育を受ける個人に近い地域において、地域の特性に応じた実施方法を開発し、発展させることが重要です。ESDの実践を通じて、各地域の特性に応じた取組方法が明らかになってきます。
 各地域では、地域特性に応じた教育や各種の地域課題を解決するための活動等が実践されています。また、地域教育力の再生のための取組も、各地で始められています。さらに、地域の伝統的な文化を大切にしたり、地域の知恵や経験に学ぶような取組も、地域の関係性を保ち、向上させるものとして有効です。
 これらの活動について、ESDの取組として捉え直すと、既に多くの活動がESDの観点を踏まえて実践されているものがあり、また、必要な見直しを行うことにより、ESDの取組として捉えることが可能となります。これらの既存の活動において、将来世代や国内外の他の地域とのつながりを大切にするなどのESDの原則や価値観を重視し、持続可能な地域づくりへの取組へと発展するようにすることが大切です。
 地域づくりへの参画は、大人ばかりではなく、子どもの参画という視点も大切です。
子どもの参画を進めることにより、大人の参画も促され、活動の現場が活性化するという面もあります。
 また、これらの取組の中で、高齢者、障害者、外国人等の社会参画に障壁がある人たちへの配慮も必要となります。

(2)教育の場、実施主体

 ESDは、政府や地方公共団体だけが実施するものではなく、個々人の意識に影響を与えるあらゆる場で実施されることが重要です。
 このため、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学等の学校教育の場、公民館や博物館等の社会教育の場、さらには職業訓練校等のような公的機関にとどまらず、地域コミュニティ、NPO、事業者、マスメディアなど、あらゆる主体が実施主体となることが重要です。
 特に学校教育にESDを浸透させることは重要です。児童生徒の学習の成果や、その実践、発信等を通じて、学校教育から家庭、地域、行政や企業など、全国へESDを浸透させることが可能になります。
 学校教育の場においては、ユネスコ憲章に示されたユネスコの理想を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校であるユネスコスクールをESDの推進拠点として位置づけ、その加盟校増加を促進するとともに、ユネスコスクール間のネットワークの強化、活動の充実を図り、地域に根ざした優良事例の開発やその成果を世界に向けて発信します。

(3)教育の内容

 環境教育や開発教育を始め平和、人権等のESDの対象となる課題について、学校では、既に生活科、社会科、理科、技術・家庭科等の各教科や道徳、総合的な学習の時間等において取り扱われており、また、社会教育施設や地域活動等においても、扱われてきました。また、学校、社会教育施設、NPO活動、企業内研修等において、環境教育、国際理解、人権教育、消費者教育、キャリア教育、食育等を実施している指導者は、すでに各分野の教育の技能を有しています。
 しかしながら、ESDでは、これら個別の取組のみではなく、様々な分野をつなげて総合的に扱っていくことが必要です。そのためには、各分野を専門領域とする者が互いに学び合い、各分野を理解し、連携を図ることも大切です。
 幼稚園及び小中高等学校においては、各教科や総合的な学習の時間等学校教育活動全体を通じて、ESDに関して学習することが重要になります。こうした考え方を受け、2008年3月の幼稚園教育要領及び小学校・中学校学習指導要領、2009年3月の高校の学習指導要領には、持続可能な社会の構築の観点が盛り込まれました。
 特に総合的な学習の時間では、各教科等で学んだことをいかして、自ら調べたり、考えをまとめ発表したりするなど、ESDに関する学習を一層深めることが可能です。このような学習を通じて、地域づくりに参画する態度を育成することが大切です。
 さらに、社会教育や地域活動においても、個別の課題のみならず他の分野とつなげ、関わり合うことにより、ESDへと発展させることが可能となります。すなわち、ESDにおいては、様々な課題の取組をベースにしつつ、個別の分野にとどまらず、環境、経済、社会の各側面から学際的かつ総合的に扱うことが重要です。
 ユネスコスクールでは学校教育だけでなく、社会教育や地域活動とも連携してESDを実践していきます。
 我が国では少子高齢化に伴う人口減少時代、すなわち、労働力減少時代に突入しています。そのような中、多くの外国人が我が国に入国しています。我が国の社会の活性化を維持する上で、こうした外国人の社会への参画が必要となっており、このための日本語教育も必要です。

(4)学び方・教え方

 学び方・教え方については、「関心の喚起→理解の深化→参加する態度や問題解決能力の育成」を通じて「具体的な行動」を促すという一連の流れの中に位置づけることが大切です。これらの過程では、単に知識の伝達にとどまらず体験、体感を重視して、探求や実践を重視する参加型アプローチとすることが大切です。また、活動の場で学習者の自発的な行動を上手に引き出す「ファシリテート」の働きを重視することも大切です。
 これらのアプローチを通じて、学習者の参加する態度や問題解決能力を育み、参加する機会の提供にも努めることが必要です。
 このような学び方、教え方を実践するためには、参加体験型の学習方法や合意形成の手法を活用することが効果的です。高校や大学等の中等教育、高等教育においては、仕事や活動の現場で、必要な知識や技能を習得させるオンザジョブ・トレーニング(on-the-job training) により、具体的な実践を通じて学ぶという方法も効果的です。
 教育や学習の現場では、学ぶ側の意見を取り込みつつ、進めることが大切です。教育や学習の対象者すべてに一斉に同じ方法をとるのではなく、可能な限り一対一の対話を重視して行うよう努めることが大切です。

(5)育みたい力

 ESDにおいては、問題や現象の背景の理解、多面的かつ総合的なものの見方を重視した体系的な思考力(システムズ シンキング(systems thinking))を育むこと、批判力を重視した代替案の思考力(クリティカル シンキング(critical thinking))を育むこと、データや情報を分析する能力、コミュニケーション能力、リーダーシップの向上を重視することが大切です。
 また、人間の尊重、多様性の尊重、非排他性、機会均等、環境の尊重といった持続可能な開発に関する価値観を培うことも重要です。
 このような技能や価値観を培い、市民として参加する態度や技能を育むことが大切です。なお、小中高等学校の総合的な学習の時間は、体験を通じて学校等で学んだ知識の定着、思考力、判断力、表現力、問題解決能力の育成、調べ方やまとめ方、発表の仕方などを身につけさせることを目指して行われており、ESDにおいて重視すべき点と重なるため、その充実が必要です。

(6)多様な主体の連携、協働

 国全体としてESDを推進する際に、各主体の自発的な取組を連携させることが重要であり、同分野内、異分野間、地域間、中央と地方の間の連携と国際的な連携の強化が必要です。この際、異なる主体間をつなぐコーディネート能力、多様な主体のそれぞれの特徴と地域の資源や状況を踏まえて活動や組織を構築するプロデュース能力を持つ人材や組織が必要となります。
 各地域においては、大学や教育委員会その他の教育関係組織、社会福祉協議会や地域のNPO等が、教育現場と地域の人材や施設、活動の場をつなげることが期待されます。
 地域には、ボランティアセンター、NPOの支援センター、公民館等の教育や地域活動の支援組織があり、これらの組織において、コーディネートやプロデュースする機能を担うことが期待されます。学校教育においては、教員がコーディネート能力やファシリテーション技能を持つようになることも必要です。また、これらの能力向上の研修が、教育研修機関や教員養成機関などのカリキュラムに組み込まれることも期待されます。

(7)評価

 ESDの取組を広め、効果的なものとさせるため、ESDを実践する主体は、企画し、実践し、様々なステークホルダーの意見を伺いながら評価し、それを次の活動の改善にいかすという過程を重視して行うことが大切です。
 また、ESDの概念をより分かりやすく提示するためにも、ESDを評価するためのチェックリストを作成し、これを指針としてESDの取組を進めることなども有効です。

4.ESDの推進方策

 政府は、関連する施策に持続可能な開発及びESDを可能な限り織り込むとともに、ESDがあらゆる場所で多様な主体により取り組まれることとなるよう、下記について実施又は促進することにより、国内実施をリードする役割を担います。これらの実施及び促進のため、具体的には、別表に掲げる施策を実施します(別表については、毎年見直します。)。別表の具体的施策については、各個別の施策のみでESDの目的が達成されるものではなく、各主体の活動において別表の各施策を活用し、ESDへと発展させることが期待されます。

(1) ESDの10年後半における重点的取組事項

 2014年までのESDの10年の後半では、我が国において、より一層ESDが認知され、ESDに取り組むための推進体制が確保されるよう、特に以下の取組を推進します。政府としては、関係省庁が実施計画に掲げられたESDに関する諸施策を着実に推進するほか、「国連持続可能な開発のための10年」関係省庁連絡会議や有識者から成る円卓会議等を随時開催します。これらを通じ、実施計画の取組状況の検証、関係省庁や多様な主体による意見交換及び必要な政策調整を行い、関係省庁がより一層緊密に連携して、総合的かつ効果的にESDを推進します。

(イ)普及啓発

 ESDは、教育現場を始め地域活動の場等においても、ほとんど認知されていません。ESDは、概念整理が引き続き進められていますが、2.基本的考え方(3)(ハ)で説明したように、個々人の意識と行動の変革を促し、それを具体的な持続可能な社会づくりへと発展させる取組です。ESDは全く新しい取組ではなく、既存の教育を発展させることにより実践が可能です。ESDについて、さらにわかりやすい説明を工夫し、あらゆる教育関係者や地域活動の実践者への理解が広まるように普及啓発を推進します。また、政府の取組のみでは、あらゆる現場へESDが広がることは不十分であることから、普及啓発については、マスコミや経済団体を含めた多様な主体との連携を一層進めます。
 また、ESDの理念や取組が分かりにくいとの指摘がある一方、実はESDの理念に合致していながら、いまだESDの一つとして認知されていない活動が既に国内各地で行われています。こういった隠れたESD活動を掘り起こし、改めてESDの一つとして捉え直すため、これらの活動を登録するデータベースを、関係省庁、関係団体の協力の下に構築し、ウェブサイトを用いて発信します。これにより、活動の「見える化」、ひいては「つながる化」を図り、ESDをより身近なものとして実感できるようにするとともに、人々の活動への直接的・間接的な参画を促進します。

(ロ)教育機関における取組

 ESDの10年における後半でも、教育機関の役割は、特に重要です。2008年7月に策定された教育振興基本計画にもあるとおり、地球規模での持続可能な社会の構築は、我が国の教育の在り方にとっても重要な理念の1つです。2008年3月(幼稚園教育要領及び小学校・中学校学習指導要領)、2009年3月(高等学校学習指導要領)に公示された新しい学習指導要領等に基づいたESDの実践、ESDの推進拠点としてのユネスコスクールの活用など、教育機関を活用することにより、国民全体へのESDの普及、推進を図ります。ESDの視点を取り入れた教育関係者への研修の機会を増大し、学校、社会教育施設、教育委員会など教育機関への一層のESDの浸透を図ります。
 ユネスコスクールについては、ESDの推進拠点として位置づけ、加盟校増加、ユネスコスクール間のネットワークの強化、活動の充実を図り、地域に根ざした優良事例の開発やその成果を世界に向けて発信し、世界各国におけるESDの普及、推進と連携の強化に寄与します。
 大学や大学院に対しては、各分野の専門家を育てる過程で、ESDに関連した教育を取り入れる取組を促進します。また、世界や我が国が持続可能な社会を構築するための調査研究を実施する機関としての役割、各地域における主要な取組主体の一つとしての役割等を果たすことができるよう取組を支援します。さらに、持続可能な社会に向けて社会経済システムを変革するリーダーを育成するために、産学官民連携により、高等教育機関におけるプログラムの開発・導入等を支援します。
 これらの取組に当たっては、インターネット放送など最新の情報通信技術(ICT)を活用することや、他方で国内外の現場での体験を通じて学習や研究をし、単位を得られるような仕組みを取り入れることも効果的です。

(ハ)地域における実践

 地域における実際の取組経験の共有を通じて、現場レベルでの連携・協力が進むとともに、他の地域にも同様な取組が広がります。例えば、国連大学においては、そのような地域における連携・協力を促進するための仕組みとして、地域の拠点づくりを提唱・推進しています。また、そのような地域特性に応じた様々な取組の中から新しい発想の地域づくりが始まり、持続可能な地域が形成されることが期待されます。
 このため、ESDの推進については、地域に立脚した取組を重視し、地域における先進的な取組に対する支援を行います。
 その一つとして、2.基本的考え方(3)(ロ)で前述したように、ESDの「見える化」、「つながる化」を図ります。これにより、地域ごとの活動活性化のみならず、社会全体へのESDの普及促進及び活性化に努めるとともに、持続可能な地域づくりの担い手育成につなげていきます。

(2)国内における具体的な推進方策

(イ)ビジョン構築、意見交換

 持続可能な開発に関連する様々な基本方針や計画に、持続可能な開発の観点が位置づけられることにより、様々な場で持続可能な開発に関連した教育や実践活動が促進されることが期待されます。環境基本計画、食料・農業・農村基本計画、森林・林業基本計画、エネルギー基本計画、社会資本整備重点計画、消費者基本計画等の関係する各種の計画等には、持続可能な開発の観点が盛り込まれています。今後、新たに策定される関連する計画等についても、可能な限り持続可能な開発の観点を盛り込むよう努めます。さらに、持続可能な開発に関する各種の計画等の内容を踏まえた持続可能な社会の姿を国民の衆知も集めながら検討し、国民にわかりやすく伝えるよう努めます。
 また、連絡会議の下に、学識経験者、教育関係者、NPO、企業等の関係者など、多様な主体から成る円卓会議を随時開催し、ESDの推進方策について幅広く意見交換を行います。

(ロ)協議による政策決定、関係者の主体性の促進

 政策決定において、あらゆる主体から幅広く意見を聴き、それを反映させることは、その政策をより質が高く、信頼されるものとするのに有効です。さらに、関係するあらゆる主体への情報提供により、各主体が持続可能な開発に対して自ら学び、考えを持つようになります。このため、持続可能な開発に係る政策については、可能な限り早い段階からの市民参加プロセスを始動させます。全ての市民が政策についての情報を得やすくするため、持続可能な開発に係る実践、調査や研究等については、可能な限りホームページ等に掲載して、アクセス性を向上させます。

(ハ)パートナーシップとネットワークの構築・運営

 この実施計画に掲げられたESDに係る諸施策については、連絡会議を随時開催し、関係省庁が緊密に連携して着実に実施します。
 また、学校、社会教育施設、NPO、事業者、行政等とのパートナーシップにより、ESDを様々な教育現場や地域活動の現場等に広めることが可能となります。このため、関係省庁は、様々な主体とのパートナーシップやネットワークの構築に留意しつつ、ESDに係る施策を実施します。
 地域におけるESDのコーディネートやプロデュースの手法について実践的に検討します。
 また、地域においてコーディネーター、プロデューサーやファシリテーターの役割を担いうる人材を育成します。さらに、人づくりのみならず、地域においてコーディネート等を推進するための仕組みを検討し、地域における組織づくりについても進めます。具体的には、地域におけるボランティアセンター、NPOの支援センター、社会教育施設等の拠点施設、あるいはNPO、事業者等の主体がESDのコーディネートやプロデュースの機能を担うための方策について検討します。その際には、地域における人材、場や機会、自然等を学校の教育へ活用するための手法についても検討します。
 加えて、2.基本的考え方(3)(ロ)で前述したように、ESDの「見える化」を行うことにより、取組の中で培われたコーディネートやプロデュースの手法の共有を促進するとともに、「ESDのネットワーク」の形成を促す「つながる化」を図ります。例えば、地方ブロックや全国レベルにおいて、ESD活動の実践者や支援者等が集い、取組事例や課題等を互いに学び合い、連携のきっかけを作るための場の形成を促進します。

(ニ)能力開発、人材育成

 政府で行われている様々な研修においてESDに関する講座の充実に努めます。
 学校教員の資質の向上のため、都道府県教育委員会等の指導主事等を対象に、研修を行い、受講した指導主事等がこれらの内容を踏まえた研修等を各地で行えるようにします。この研修においては、ESDの概念や指針についても取り扱うとともに、指導計画の作成、外部人材の活用の在り方等について研修を行うよう努めます。
 また、地域で活動しているリーダーに対し、ESDについて普及啓発し、ESDを実践できる指導者の確保に努めるとともに、ESDの実践を指導できる指導者情報等の提供を進めます。さらに、地域で環境等に関する活動を実践しているリーダーと教員が一緒に受講できる研修等を実施し、この中でもESDに関する内容を取り上げるよう努めます。
 企業内研修において、従業員が持続可能な開発に即した事業に関する研修を行うことが大切です。このため、企業内研修プログラム等事業者に対して参考となる情報の提供に努めます。
 なお、大学の教職課程において、ESDに関する内容を積極的に取り上げるとともに、実践的な指導方法が教授されるよう促します。
 以上のような取組を推進し、持続可能な社会づくりの担い手となる人材育成に努めます。また、育成された人材が活用されるよう教育現場を始め各方面への情報提供に努めます。さらに、こうした人材が活用される際には、必要な謝金等が支払われるよう、ESDを進める能力を活かすことが経済に組み込まれるよう努めます。
 さらに、人材のみならずNPO等の地域の主体の組織力の向上についても支援します。

(ホ)調査研究、プログラム開発

 ESDに関する調査研究を奨励します。また、新しい取組の実践や事例発表等を行います。これらの取組を通じて、既存のプログラムや教育の発展を促進するとともに、多くの教育者・指導者がESDについて理解し、実践できるように努めます。
 ESDのプログラムは、地域の実情に応じて地域に根ざしたものとすることが適切です。このため、地域の特性を踏まえた持続可能な地域づくりに関する調査研究を奨励し、モデル的な地域におけるプログラム開発等について支援します。その際、調査研究結果を地域の教育カリキュラムへ反映・活用することについても検討します。また、ESDの効果についてのデータ収集等に努めます。

(ヘ)情報通信技術(ICT)の活用

 ICTは、エネルギーや資源を節約しつつ、多くの人々に情報を発信でき、また、多くの地点における観測データ等の集約、処理及び分析にも便利であるため、その効果的な活用を推進します。
 また、インターネットは、調べ学習の活用や、ESDの資源や教材についての情報提供を行いやすいことから、ESDに係る情報を積極的に発信します。

(3)各主体に期待される取組

 ESDは、多様な主体が、それぞれの立場で取り組むことが重要です。各主体は以下のような取組や役割が期待されます。政府は、これらを促進するよう努めます。

(イ)個人、家庭

 2014年までの10年間の取組において、最も大きな目標は、個々人の意識と行動の変革です。そのためには、最も身近である日常生活における取組から始めることが重要です。近年、LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability)のように持続可能性の概念を包含したライフスタイルの提案や、フェアトレード商品のような持続可能性、公平性等の環境、経済、社会の観点を包含した商品の販売が広がりつつあり、これらの考え方を日常生活にいかした取組をますます広げることが大切です。また、生産と消費が同等に重視されるような社会づくり、政策づくりが求められます。さらに、日常生活の中で、人と自然のつながりを意識しながら、生物多様性の保全に寄与していくことも重要です。
 これらを踏まえて、以下のような取組や役割が期待されます。

  • 「スローライフ」や「LOHAS」の考え方が広まり日々の暮らしの中にいかされること。
  • グリーン購入やフェアトレード商品の購入に心がけること、カーボンフットプリント等の環境負荷表示を商品購入時の参考にすることや省エネ型の暮らしの実践、森林・木材資源の循環的利用などライフスタイルを転換すること。住居の新改築、改修の機会には、環境性能の向上や周囲の自然環境との調和に努めること。
  • 環境、経済、社会の全体に視野を広げ、生産と消費の関係や生物多様性等の横断的な観点を踏まえながら、消費者のライフスタイルの転換を促すような教育を推進すること。
  • 家庭、学校、保育所、地域等社会の様々な分野において国民運動として食育を推進し、健全な食生活を実践すること。
  • 各家庭において、自ら考えて行動する子どもの育成、他との関係性の中で、人、もの、環境を大切にする心、国内外の各地域との関係性について伝え合うこと。
  • 環境保全活動、社会福祉活動、国際交流活動、その他の地域の諸課題に関する活動などに参画すること、様々な政策決定過程に積極的に参画することにより、持続可能でよりよい地域づくり・社会づくりに参画すること。

(ロ)学校、教育委員会

 幼稚園から大学まで、教育活動の全体を通じて、発達段階に応じてESDに関する教育を実施することが期待されます。既に「生きる力」として取り組まれている教育活動は、ESDの取組と大きく重なります。ESDで重視している価値観については、例えば、環境や人権に関する文章を読み読解力を向上させる中で、同時にそれらの課題について知的理解を深めることが可能です。このように社会的課題を取り上げたり、体験活動を行うことにより、学ぶ側の意欲が向上することが期待されます。さらに、ESDでは総合的な学習の時間を効果的に利用することが重要です。例えば、教科横断的な教育活動を総合的な学習の時間で効果的につなぎ合わせることにより、「知の総合化」を実践することが可能になります。
 ESDの実践に当たって、学校全体の運営の中でESDを位置づけるには、これまでのカリキュラムや教育内容をESDの視点で捉え直して再構築することが考えられます。また、総合的な取組であるESDは、地域と連携するなど、外部の人材、場や機会等を有効に活用することにより、教職員に過度の負担を強いることなく質の高い教育を実践することも可能となります。これらを踏まえ、具体的には以下のような取組や役割が期待されます。

  • 小中高等学校においては、各教科や総合的な学習の時間、さらには生徒会活動やクラブ活動といった課外活動等における学校の教育活動全体を通じて進めること。
    さらに、学校評議会の活用、PTA活動等学校経営の中で総合的な取組を進めること。
  • 異なる学年や小中高等学校等の間の連携、地域社会等との連携にも配慮し、総合的な取組とするよう配慮すること。
  • 自然体験、農山漁村などにおける体験活動、職業体験その他多様な体験活動を促進すること。
  • 学習や生活の場としての学校施設を環境に配慮したものとすること。また、整備された学校施設を教育に活用すること。
  • 大学等の高等教育機関においては、各大学の特性に応じ持続可能な開発のための教育及び研究を行うこと。また、ESDの優れた教材やカリキュラムの開発に努めるとともに、それらの成果を教育の場で活用すること。高等教育機関の専門性をいかした地域社会との連携、大学間の連携による取組についても推進すること。
  • 地域や世界の持続可能な開発に関心を持つ学生・生徒がESDへの理解をさらに深め、具体的な活動へとつなげていけるよう、学内のボランティアセンターなど、学生の自主的な活動を支援する組織を活用して、情報提供や研修事業などの支援策を講じること。
  • 教育委員会等の教育関連部局においては、ESDの視点を取り入れた各種研修会の開催、参加促進、ESDやユネスコスクールの担当窓口の設置など、教育現場へのESDの浸透を図ります。

(ハ)地域コミュニティ

 地域コミュニティでは、地域の自然や文化等の特性を踏まえた里地・里山の保全・活性化、公害が発生した地域の再生などの活動が行われています。地域に立脚した取組の推進のためには、地域を構成している各種の地域コミュニティの役割はとても重要になってきます。地域における諸活動においてESDの視点を取り込み、老若男女様々な主体の参加を通じて、以下のような取組や役割が期待されます。

  • 子育て、まちづくり活動、お祭り、遊び場、スポーツクラブ、地域課題に対処するための活動など様々な活動を有効に活用すること。また、これらの取組において、教育機関、NPO、事業者等と連携すること。
  • 地域教育力の向上を踏まえ、子ども達が自由に遊び多様な活動を実践できる遊び場、学びの場などをつくること。
  • 学校教育において外部の力を活用することによる、質の高い教育の実践を支援すること。

(ニ)NPO

 自発的に、共通の課題に対する意識を持った者が集まり、活動を行っているNPOは、ESDの実施主体として最も期待される主体の一つです。NPOは、不特定かつ多数の者の利益、公益の増進が活動目的です。持続可能な開発は、ある特定の者にとっての利益の増進ではなく、社会全体が、環境、経済、社会の面から発展することです。そのため、持続可能な社会づくりは、NPO活動と合致しており、既にESDの観点から活動を行っている団体が数多くあります。また、今の活動をESDの観点で捉え直すことにより、比較的容易にESDの活動を実践できる可能性も高いと言えます。具体的には以下のような取組や役割が期待されます。

  • 環境保全、福祉の増進、まちづくり、食育など各NPOが持つ個別のテーマのみならず、異分野と関わり合いながら活動を行うこと。政策提言活動、普及啓発活動、体験活動等の活動の中にESDを取り入れ、持続可能な社会づくりを意識した活動を行うこと。
  • 各活動のテーマの専門性をいかしつつ、ESDに係る活動において、指導者としての役割を担うこと。
  • 多様な主体が連携した取組が促進されるよう、各地域においてプロデューサーやコーディネーターの役割を担い、学校教育、社会教育、企業内教育、地域活動等が連携したESDの取組を広げること。
  • ESDの指導者、コーディネーター、プロデューサーやファシリテーターの育成を行うこと。
  • ESDの推進手法について、実践例を踏まえて研究・調査し、普及すること。

(ホ)事業者、業界団体

 私たちが直面している地球温暖化問題、廃棄物・リサイクル問題、化学物質管理、公害対策など様々な環境問題を克服し、持続可能な開発を実現していくためには、環境と経済が統合的に向上する社会の構築に向けた取組が必要です。また、男女間の平等、従業員への配慮、障害者雇用、外国の工場等における児童労働の問題など事業活動における社会的側面の配慮が広がっています。これらは、企業の社会的責任の観点から、環境、経済、社会の三つの要素を基盤とした事業活動を展開するものですが、近年、社会からの期待が高まっており、これに対応した、事業者の自発的な取組が広がっています。
 持続可能な開発を意識した事業活動の実現のためには、関連する多くの主体における一人ひとりのESDに関する意識の向上が重要です。事業者や業界団体は、製品、サービスや情報の提供、消費者や取引先、従業員、地域とのつながり、国際的な展開など、多様なネットワークによりESDにおいても大きな役割が期待されます。
 これらを踏まえ、事業者や業界団体には、以下のような取組や役割が期待されます。

  • 環境、経済、社会の三つの要素を基盤として、国内外において持続可能な開発に合致し、さらには、それを強化する形や内容の事業活動を行うこと。
  • カーボンフットプリント等の環境負荷表示により情報を提供すること。
  • 企業内教育にESDを取り入れること。
  • 事業者・団体が持つ様々なネットワークを通じて、ESDのノウハウの拡大を図ること。
  • 学校、社会教育施設、NPO、地方公共団体など多様な主体と連携し、地域活動等に協力すること。
  • 専門性をいかして、学校教育、社会教育、地域活動等へ人材を提供すること。また、教育現場で活用できるESDに関するプログラム開発を行うこと。さらに、土地や施設を提供しESDに活用すること。

(ヘ)農林漁業者、関係団体

 農林漁業者等は、「(ホ)事業者、業界団体」に包含されますが、事業の現場が地域に根づいていること、事業活動が地域の自然環境の維持管理のために大きな役割を有していること、食という人間が生存する上で基本的な部分を扱っていることなどから、特に以下のような役割や取組が期待されます。

  • 生活体験、自然体験、職業体験など多面的な側面を重視した農山漁村における体験活動の場や機会を提供すること。
  • 事業活動そのものが、地域の自然環境の維持管理、地域経済や産業の振興など持続可能な地域づくりに資することを踏まえ、学校、NPO、行政等多様な主体との協働の中で、地域づくりの担い手の一つとして大きな役割を担うこと。

(ト)マスメディア

 マスメディアは、容易に知ることが難しい外国の暮らしや自然の状況を広く知らしめることや、先進的な取組を他の地域に紹介することなどESDに関する情報を広く伝えることが可能です。また、テレビやインターネット等の映像は、人の意識を変えたり、理解を促進するために効果的です。そのため、具体的には以下のような取組や役割が期待されます。

  • 新聞、テレビ、ラジオ等を活用し、地球規模の話題から地域に密着した話題まで、ESDに関する情報提供を継続的に行うこと。全国の推進事例の紹介や各地域での具体的な活動への参加情報等を提供すること。
  • イベントの開催、支援等により、ESDの普及の機会を提供すること。

(チ)教員養成・研修機関

 教員がESDに関する知識や技能を有していることにより、幼児、児童生徒への効果的なESDが可能となるため、教員養成・研修機関には以下のような取組や役割が期待されます。

  • 大学の教育学部等の教職課程において、ESDについて積極的に取り上げるとともに、実践的な指導方法を教授すること。
  • ESDに係る教員の指導力の向上、授業の改善や充実のための研修を行うこと。
    この際、指導計画の作成、外部との連携手法、探求性や実践性を重視した教授法等についても取り上げること。

(リ)公民館、図書館、青少年教育施設等の社会教育施設、ボランティアセンター、消費者センター、女性センター等の公的な拠点施設

 公民館は、地域の多様な主体が集まり、教育を通じた様々な交流の場ともなっています。また、地域の拠点としての性格も有しています。図書館については、関連する図書の貸し出しのみならず、地域の自然や文化に関する資料の蓄積があり、ESDの取組の中で、有効に活用していくべきものです。また、各地域にある青少年教育施設では、持続可能な社会づくりに、責任ある行動をもって参加できる青少年の育成を推進することが期待されます。
 また、ボランティアセンター、消費者センター、女性センター等の公的な拠点施設についても、ESDを実践するための場とすることができます。
 これらの施設には、以下のような取組や役割が期待されます。

  • ESDの場や機会を提供すること。
  • 地域におけるESDの拠点の役割を担うこと。様々な主体をつなぎ、コーディネーターやプロデューサーの役割を担うこと。
  • ESDについて指導やコーディネート、プロデュースできる者の育成を行うこと。

(ヌ)地方公共団体

 地方公共団体は、地域の諸課題を地域の多様な主体とともに解決する役割を有しており、地域におけるESDの推進について大きな影響力を持っています。このため具体的には、以下のような取組や役割が期待されます。なお、これらの取組においては、住民、小中高等学校、地元大学、地元事業者等の参加の下に行うことが期待されます。

  • この実施計画の内容を踏まえて、地域の総合計画を始めとする各種の計画に持続可能な開発の考え方を織り込むこと。また、ローカルアジェンダを新たに策定又は改定して、持続可能な地域づくりに取り組むこと。これらの中にESDに関する実施計画についても位置づけること。
  • 市民の参画を促進させつつ地域づくりを実践すること。さらに市民が、持続可能な開発に関連する施策や地域づくりについて判断を行えるように積極的に情報提供を行うこと。
  • 地域の様々な主体に対してESDの機会の提供をすること。また、地域に根ざしたプログラム策定を促進すること。
  • ESDに関する施策の実施に際しては、教育委員会等の教育関連部局、企画部局、市民部局、環境部局、都市部局、農林水産部局、公営企業等が連携して取り組むこと。
  • 地域内の多様なESDの取組について情報を発信し、地域内の関係者の連携やネットワーク化を進めること。その際、既にESDの活動を行っている団体、ESDの価値観や原則に基づいた活動を行っている団体をいかした取組を行うこと。
  • 地域の中で教育関連機関、NPO、事業者等をつなぐコーディネーターの役割、地域の諸活動や地域の諸課題との関連性の中で、様々な主体を巻き込んで活動や事業を構築するプロデューサーの役割を担うこと。
  • 地域間の連携を促進すること。地方公共団体でつくる研究会や情報交換の場において、先進事例を共有すること。

(4)国際協力の推進

 我が国の提案によりESDが世界レベルで取り組まれることになった経緯を踏まえ、国際社会においてESDの取組が推進されるよう積極的に貢献します。国際社会は貧困や飢餓の撲滅を目指すMDGs や初等教育の完全普及や教育における男女の平等を目指すEFAを共通の目標として、これらの地球規模課題の解決を目指しているところです。これら地球規模課題の解決に取組む人材の育成ために、国際社会に広くESDを普及させることが重要です。各国の貧困を始めとした諸課題が解決され、平和で持続的な国際社会が構築されることは、我が国の安全の確保や発展にも資するものです。このため、我が国は、従来より、人間の安全保障及び持続可能な開発の考え方に沿ってODAを実施してきたところですが、教育を持続可能な開発の達成に重要な役割を果たすものとして位置づけ、関係省庁を始め多様なステークホルダーと連携し、ESDの普及促進を始めとして、教育分野の支援を強化し、先進国の一員として積極的な国際協力を推進します。

(イ)国連関連機関等との連携・協力

 ユネスコ、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連大学等において、ESDに関する取組が行われています。例えば、国連大学では、ESDに係る地域における連携・協力を促進するための仕組みとして、地域の拠点(RCE)づくりを提唱・推進しており、現在、国内6拠点を含む世界85拠点をRCEとして認定しています。我が国としても、これらの国連関連機関への拠出金などを通じ、ESDの地域拠点づくり、高等教育機関のネットワーク形成、セミナーの実施、調査・研究、教育プログラムの作成、専門家育成などのESD関連事業の実施を支援します。また、国連総会やユネスコ総会においてESDの10年の推進に貢献します。

(ロ)アジア地域を中心とした地域レベルの協力の推進

 日ASEAN協力、ASEAN+3、東アジア首脳会議(EAS)、アジア協力対話(ACD)、日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)等の枠組みを活用し、対話やワークショップの実施など、地域レベルの協力を推進することにより、教育プログラムの作成や各国のESD実施計画の策定に協力します。
 また、アジア地域でのESDの普及促進、取組事例の共有のため、モデルプロジェクトを実施します。

(ハ)開発途上国における人づくり等への支援

 ESDに資するプロジェクトの実施、専門家等の派遣、国内外の研修等を通じ、開発途上国において持続可能な開発を担う人材の育成に貢献します。また、国内において、開発途上国への支援を担う人材育成に努めます。その他のODA事業についても持続可能な開発の考え方に沿って実施しており、今後も引き続き実施します。

(ニ)各主体との連携、民間団体の取組の支援

 国際協力については、NPO、事業者等の民間団体の役割が大きくなってきています。このため、政府の国際協力については、民間団体と緊密に連携して進めます。特に、現地の事情に精通した民間団体等との連携を図りながら、現地のニーズを十分に把握し、効果的な実施に努めます。
 また、民間団体による取組の推進のため、民間団体に対する既存の支援策を引き続き活用するとともに、支援策の充実及び強化を図ります。さらに、地方公共団体についても、海外の姉妹都市などと、日頃から情報交換等に努めており、このようなチャンネルを活用したESDについての発信や相互の国際協力を推進するための支援を行います。

(ホ)国民の国際理解の増進

 個々人の国際理解の増進が、国際協力を推進する上で必須になることを踏まえ、国際理解教育等を推進し、地球的視野を持つ人づくりに努めます。

(ヘ)国際社会への情報発信

 我が国の国際協力の取組について、国際会議や地域レベルの会議等を活用し、国際社会に積極的に発信していきます。
 また、2014年までに我が国のESDの取組を集大成し、我が国において開催される最終年会合において、それを目に見える成果として発信します。

5.評価と見直し

(1)評価

 ESDの取組が広がり、各主体の意識や行動が変化し、我が国や世界が持続可能な社会に近づいていることについて、評価していく必要があります。この際、ESDを実施した結果の効果について、どのように評価していくのか検討する必要があり、評価方法については、教育学や社会学等の研究状況やユネスコにおける評価に関する検討の内容などを踏まえ検討します。この評価については、幅広い関係者の参加により進めます。

(2) 最終年会合までの目標と最終年会合以降の継続性

 2006年以降、毎年政府の取組状況について点検します。2010年には、この結果を踏まえた見直しを行いました。2010年以降は本実施計画に基づき、取組を強化していくとともに、最終年会合以降の我が国の取組について検討を行います。

(3)最終年における評価

 2014年には、ESDの10年の最終年を迎えますが、この「ESDの10年」を契機として、その後もESDの活動に継続して取り組むことが重要です。ESDの提唱国として我が国の取組を引き続き、国際社会に発信していくことが必要です。2014年末には、我が国でのESDの10年全体の評価と、以後の検討を行い、2015年以降も引き続きESDの推進に取り組んでいきます。

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国際統括官付