資料2-4-2 外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム報告

~日本人と外国人が共に生きる社会に向けたアクション~

令和元年6月17日

1.検討の背景と経緯

○ 近年、我が国に在留する外国人が増加していることに併せて、この10年で、小学校、中学校、高等学校等における日本語指導が必要な児童生徒数(平成28年:4.4万人(1.8万人増))及びそれ以外の国内の日本語学習者数(平成29年:24万人(7.6万人増))は大幅に増加している。

○ さらに、深刻な人手不足を踏まえ、入管法等が改正され、新たな在留資格「特定技能」が平成31年4月より創設されたところである。

○ こうした社会変化の中で、政府としては、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日本人と外国人が安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とし、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(平成30年12月外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)を策定したところである。

○ この総合的対応策には、外国人が教育・就労・生活の場でコミュニケーションできる環境を整備するための、日本語教育・外国人児童生徒等に向けた教育として現時点で可能な種々の施策が盛り込まれており、まずはこの総合的対応策を確実に実施していくことが重要である。

○ また、新たな時代における共生社会を実現するためには、外国人の子供の教育、日本語教育、外国人留学生の国内就職促進等に係る課題を現場目線で深掘りし、俯瞰した上で、将来にわたって新たな時代における共生社会を実現するために必要な施策を充実させていくことが必要である。

○ このため、外国人受入れに係る文部科学省の組織体制を強化するとともに、関係省庁との連携を強化し、スピード感を持って施策の具体化を進めていくことが重要であるとの認識の下、省内に浮島文部科学副大臣を座長とする「外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム」を設置し、平成31年1月から8回にわたって、有識者からの意見聴取や現地視察等を行いつつ検討を行った。

2.基本的な考え方

(1)外国人との共生を進める意義

○ 外国人の受入れ・共生は、我が国に豊かさをもたらすものであり、外国人が日本人とともに今後の日本社会を作り上げていく大切な社会の一員であることを認識し、日本人と外国人がともに尊重し合い、さまざまな課題に対して協働していくことのできる環境を構築することが重要である。

○ 例えば、外国人は産業の担い手となるだけでなく、少子高齢化が進む日本社会における日本文化・地域活動の担い手となることも期待される。また、彼らを通じて我が国に多様な価値観・文化がもたらされることは、日本人がグローバル社会で暮らしていく上でも役立つものと考えられる。またさらには、日本の情報を世界に発信する上でも、日本を知る外国人の貢献が期待される。

○ 一方、世界に目を向ければ、外国人受入れに伴って、望ましい形での共生が実現できず生じた社会的な分断は大きな課題となっている。我が国において在留外国人が増加している現状を踏まえれば、日本社会において同様の課題が発生しないよう十分な対策を積極的に講じていくことが重要である。

(2)外国人との共生に向けた取組の方向性

○ 外国人との共生の実現のためには、外国人の子供たちが、行政の狭間に取り残されることのないよう教育機会を確保し、地域社会で生活していくための日本語や社会習慣を身に付けるとともに、日本文化への理解を養うため、学校におけるきめ細かな指導体制を充実していくことがまず必要である。

○ その上で、外国につながる子供たちの母語・母文化などの継承に配慮するとともに、本人の希望と能力に応じて、高等学校や専門学校・大学等への進学、就職など、日本社会へのスムースな移行を実現できる環境を整備していく必要がある。

○ 併せて、在留外国人の年齢、語学力、文化的背景、就労形態が多様であることに留意し、一人一人の実態に応じた多様な日本語教育を始めとする学習機会が提供されるように努めることも重要である。

○ このような共生社会実現のために、文部科学省の組織体制の強化を図りつつ、外国人共生に関わる国・地方を含む行政機関が緊密に連携して施策を講じることが必要である。

3.新たに取り組むべき施策

※<>内の数字は、関連する「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」施策番号

1.外国人児童生徒等への教育の充実

<現状認識と課題>

○ 日本語指導が必要な児童生徒の増加、多様化に対応するため、文部科学省では、「特別の教育課程」の編成・実施を可能とする制度改正、日本語指導に必要な教員定数の義務標準法の規定に基づく着実な改善、教員研修の実施、指導・支援体制の構築を図る地方公共団体の取組への支援等に取り組んできた。

○ 一方で、外国人の子供の数が着実に増加する中では、その受け入れや日本語指導を担う人員の確保は重要な課題であり、全国的な研修機会を確保し、体系的に日本語指導等を実践できる体制を構築するとともに、障害を持つ外国人の子供への対応を含め、学校におけるきめ細かな指導体制を更に充実していく必要がある。

○ また、外国人の子供については、就学義務が課されておらず、あくまで本人・保護者の希望に基づいて公立学校や外国人学校への入学が行われるため学齢簿による在籍管理が課されていない。このため、地域によって就学実態の把握の状況が多様であり、そうした中で不就学状態にある外国人の子供の存在も懸念される。全国的な外国人の子供の就学実態の把握を進め、全ての外国人の子供に教育機会が確保されるよう取り組んでいく必要がある。

○ さらに、外国人の子供が母語・母文化を学ぶ機会に配慮するとともに、日本人・外国人の子供への基礎的学力の定着や異文化理解・多文化共生の考え方に基づく教育を充実し、外国人と地域との相互理解を進めるための環境整備に努めていくことも重要である。

<取組の方向性>

(1)学校におけるきめ細かな指導体制の更なる充実

文部科学省においては、公立学校における日本語指導が必要な外国人児童生徒等の教育環境整備を進めてきたところであるが、引き続き公立学校における教員・支援員等の充実を進めつつ、教員の資質能力の向上、障害を持つ子供を含むきめ細かな指導体制の更なる充実を図る。

【学校における教員・支援員等の充実】 <61,62>

○ 日本語指導に必要な教員定数の義務標準法の規定に基づく改善を着実に推進する(令和8年度には日本語能力に課題のある児童生徒18人に対して1人の教員が基礎定数として措置されるよう毎年度計画的に教員1人当たりの児童生徒数の改善を図る)。また、「帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業」を通じた日本語補助指導者や母語支援員等の配置の充実と人員の確保に努める。

○ 外国人の子供の公立学校への就学に対するハードルを下げるためにも、幼児教育施設、公民館等を活用し、幼児や保護者に対する入学後の学校生活への円滑な適応につなげるための日本語指導、就学ガイダンス、就学相談等の取組を充実する。

○ 多文化共生社会の実現に向け、散在地域においてもきめ細かな指導を行うための多言語化に対応した翻訳システムや外国人児童生徒等にとっても利用しやすい教材の活用、遠隔教育の充実等、ICTを活用した支援体制を整備する。
※学校向けの多言語翻訳システム例:VoiceBiz(ボイスビズ)
音声翻訳11言語、テキスト翻訳30言語

○ また、多言語教材等の提供を行う情報サイトを充実することで、学校現場等における外国人児童生徒等への対応が円滑に行われるよう支援する。

<具体的取組>

・日本語指導に必要な教員定数の義務標準法の規定に基づく着実な改善
・帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業(日本語指導、母語による支援、就学前教育、ICT活用等)
・多言語での就学案内のための方策について、就学ガイドブックの多言語化や、外国人のための就園ガイド(仮称)の作成を含め、その在り方について検討
・外国人児童生徒への日本語指導の充実に向け、遠隔教育の活用を図る。
・関係省庁と連携し、幼児教育施設における外国人の子供の受け入れにあたっての配慮事項を周知する

【全国的な研修機会の確保による教員等の資質能力の向上】 <63>

○ 教育委員会や大学等における養成・研修に資する「モデル・プログラム」の開発・普及を進めることで、日本語初期指導、中期・後期指導、JSLカリキュラムによる指導等の系統的な日本語指導を実践するための体制を整備し、日本語指導等を担う中核的教師の養成を進める。
(注)JSLカリキュラム:日本語の力が不十分なため日常の学習活動についていけない児童生徒が授業に参加するための、日本語で学ぶ力を育成することを目的としたモデル・カリキュラム。

○ 日本語指導など外国人の子供への指導を行う教員や日本語指導補助者の確保・資質向上について、学校内外の多様な担い手から能力ある人材を柔軟に確保することが重要であることに留意しつつ、幼児教育段階を含め、有効な方策について検討を行う。

○ 各地方公共団体が実施する研修への指導者派遣等を行う仕組みを構築する等により、外国人児童生徒の指導に関する研修の機会を充実する。

<具体的取組>

・「外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・研修モデルプログラム」の開発・普及を着実に実施する
・外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議を新たに立上げ、日本語指導補助者などに求められる資質の在り方、その有効な人材確保の方策に関しても検討を行う予定
・これまでの取組や現場のニーズを踏まえた上で、幼児教育段階における指導上の留意事項等の整理や幼児教育に係る教育指導者養成研修の在り方を検討する
・日本語指導アドバイザーを文部科学省から直接委嘱し、自治体の研修開催に当たる講師派遣を開始予定
・独立行政法人教職員支援機構において、外国人児童生徒等の支援に関するセミナーを新たに開設する
・都道府県教育委員会等に対して、教職員研修に関する提言等をまとめた事務連絡を通じて、研修における外国人児童生徒等の支援の扱いについて周知

【中学生・高校生の進学・キャリア支援の充実等】 <64>

○ 外国人の子供の高校への進学状況、中退率、進路状況等について実態の把握を進める。その上で、中学校・高等学校において将来を見通した進路指導が提供されるよう、日本語指導の充実、キャリア教育等の包括的な支援を進める。

○ 公立高等学校入試における帰国・外国人生徒等への特別な配慮(ルビ、辞書の持ち込み、特別入学枠の設置等)について、地域の実情に応じて充実が図られるように促す。また、外国人学校を卒業した者も、その意欲と能力に応じて公立学校での教育機会が得られるよう、高校入学資格の考え方について周知を行う。
※日本にある外国人学校中等部は中学校ではないため、これを卒業したことをもって、高等学校入学資格を有するものではない。しかしながら、中学校卒業程度認定試験を受験し合格した上で、高等学校の入学者選抜試験を受験することができる。
なお、当該生徒の保護者が日本国籍を有しない場合には、そもそも、その保護者に就学義務は課されていないため、そのような事情を考慮し、校長の判断により、各高等学校において、中学校卒業者と同等以上の学力があると認められた者についても、当該高等学校の入学者選抜試験を受験することができる。

○ 義務教育を修了した外国人について、その能力・意欲に応じて日本社会への定着が円滑に行われるよう、進学・就職にあたって必要な在留資格の取得要件の明確化について、法務省と共に検討を行う。

<具体的取組>

・「帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業」の実施(中高生キャリア支援)
・高校入試における特別な配慮等の取組推進に向けた周知を行う
・法務省と協議を行い、在留資格の取得要件の明確化を検討する

【障害のある外国人の子供に係る支援の充実】 <新規>

○ 母国の言語、教育制度や文化的背景に留意し、障害のある外国人の子供の就学先の決定が適切に行われるよう、地方公共団体への周知を行うとともに、就学先の相談に当たって多言語化に対応した翻訳システムの活用を推進する。

○ 特別支援学校等においても、日本語指導補助者や母語支援員等の配置に努めるほか、特別支援教育、日本語指導の担当教師が相互に連携するとともに、それぞれ外国人の子供に係る支援や、特別支援教育についても学ぶことのできる研修の機会等の充実を図る 。

○ 発達障害の可能性のある外国人の児童生徒に対する学校における合理的配慮の提供について実践研究を行い、その成果を普及する。また、子育てや就学に関する相談窓口等について外国人の保護者も対象に分かりやすく積極的な情報発信に努める。

<具体的取組>

・平成31年3月に地方自治体宛の通知において、障害のある外国人の子供の就学先の決定に関して周知済み。引き続き、説明会等において周知を継続する。
・「帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業」(日本語指導、母語による支援、ICT活用)
・独立行政法人特別支援教育総合研究所が実施する特別支援教育の担当教師向けの研修において、外国人の子供に係る支援に関する講義を実施する
・自治体において実施する特別支援教育に関する研修に日本語指導の担当教師が参加できるよう周知するとともに、独立行政法人特別支援教育総合研究所が実施する特別支援教育に関するインターネットによる講義配信の活用を周知する
・独立行政法人教職員支援機構が実施する「外国人児童生徒に対する日本語指導指導者養成研修」において、特別支援教育に関する講義を実施予定
・「発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援事業」において、外国人児童生徒を対象とした研究を実施する(令和元年度2件採択)

(2)地域との連携・協働を通じた教育機会の確保と共生

外国人の子供の就学実態を把握し教育の機会を確保するとともに、外国人学校、NPO等の地域における多様な外国人の子供の受け皿と、教育委員会や学校の連携を促進し、共生社会の実現を図る。また、夜間中学において生徒の約8割を外国人が占めている現状を踏まえ、義務教育未修了者や入学希望既卒者である外国人の教育機会を確保するため、夜間中学の設置促進や教育活動の充実を図る。

【就学状況の把握及び就学促進】 <65,66>

○ 義務教育諸学校への多言語による就学案内を徹底するとともに、学齢相当の外国人の子供の就学状況の把握を進め、就学状況の把握に係る課題の整理や好事例の収集を行う。

○ 地域の実情に応じて、外国人学校、NPO等の多様な主体が外国人の子供の学びの受け皿となっていることを踏まえ、これらが地方公共団体と連携し、就学状況の円滑な把握や就学促進に資する取組への支援を充実する。

○ さらに、就学に関する情報提供を市区町村の教育委員会が住民基本台帳担当部署等と連携して行う等、地方公共団体の関係部局や関係機関による一体的な取組を促進する。

○ 地域において外国人の子供の教育の受け皿となっているブラジル人学校等の外国人学校について、地域との連携・協働に向け、実態把握を進める。

<具体的取組>

・多言語での就学案内を促進するため、就学ガイドブックの多言語化について検討する
・就学状況の全国調査を実施(5月調査発出)。同結果を踏まえ、外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議においても議論し、更なる就学促進策を検討予定
・学校内外の切れ目ない就学促進が可能となるよう、「定住外国人の子供の就学促進業」(学校外の支援)の運用について検討
・外国人学校をより的確に把握するため、既存の調査項目の改善・充実

【夜間中学の設置促進・教育活動の充実】 <52>

○ 夜間中学について、全ての都道府県に少なくとも一校が設置されるよう、また、人口規模や都市機能に鑑み、全ての政令指定都市において夜間中学が設置されるよう、新設準備に伴うニーズの把握や設置に向けた取組を支援するとともに、自治体向けの研修会の開催や広報活動の充実を図る。

○ 夜間中学における日本語指導を含む教育活動の充実を図る。このため、教員の日本語指導の資質向上に引き続き取り組むとともに、教員に加えて日本語教師・日本語指導補助者等の専門人材の配置を促進し、「チームとしての学校」を推進することによる学校の指導・事務体制の効果的な強化・充実や、地域の日本語教室等との連携を進める。

<具体的取組>

・全ての都道府県への設置目標に加え、全ての政令指定都市への設置目標を新たに設定
・「夜間中学における就学機会の提供推進」事業をはじめとした関連事業により、夜間中学の設置促進や効果的な広報活動の実施、教育活動の充実等を推進
・教育機会確保法附則第3項に基づき、夜間中学の設置推進・充実等に係る有識者会議を開催し、必要な措置を検討

【異文化理解や多文化共生の考え方に基づく教育の充実・地域との包摂促進】 <新規>

○ 母語・母文化の学習機会を尊重しつつ、放課後等においても地域住民等の参画を得ながら、日本社会の中で生活する上で必要となる日本語、日本文化への理解を得る機会を確保する。

○ 外国人集住地域における、日本人・外国人の子供への基礎的学力の定着や異文化理解・多文化共生の考え方に基づく教育の在り方について検討する。

○ 異文化理解・多文化共生の考え方に基づく教育等の拠点となる学校の形成を目指す。方策の一つとして、外国の学校との円滑な編入学・進学にも資する国際バカロレアの教育プログラムについて、日本の学校で、日本語と外国語双方を活用する形で普及を図り、日本人と外国人が共に学ぶ教育環境の充実を図る。

○ 異文化理解や多文化共生を意識した、持続可能な社会づくりの担い手を地域社会で育むため、ESD(持続可能な開発のための教育)の推進拠点であるユネスコスクール等を通じて、国内外のネットワークも活用した国際理解・文化多様性等に係る学習・教育活動を推進する。

<具体的取組>

・帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな支援事業の実施(母語・母文化支援の充実)
・異文化理解・多文化共生の視点も踏まえた地域学校協働活動の推進
・異文化理解・多文化共生に資する取組の実証研究
・異文化理解・多文化共生の考え方に基づく教育に資する教育プログラムの推進(国際バカロレア教育の推進、持続可能な開発のための教育の推進)

2.外国人に対する日本語教育の充実

(1)日本語教育機会の確保と質の向上

<現状認識と課題>

○ 外国人材受入れ・共生のための総合的対応策(平成30年12月)においては、新たな外国人の受入れを見据え、これまでにないレベルでの日本語教育の量的・質的な充実を進めていくことが示された。

○ まず、一定水準の日本語の学習機会が外国人に行き渡ることを目指し、地方公共団体の総合的な体制作りを全国的に進めている。また、日本語教室の設置が困難な地域に住む外国人のため、ICTを活用した日本語学習教材の開発・提供等を実施している。

○ さらに、日本語教育の質の向上に向けて、「言語のためのヨーロッパ共通参照枠(CEFR)」を参考にした日本語教育の標準や日本語能力の判定基準の検討・作成を行うとともに、日本語教師の資格制度に関する検討等を進めている。

○ なお、日本語教師には専門的な知識・技能が求められる一方で、日本語教師の職業としての社会的認知が低いことなどが、質の高い日本語教師を確保していく上で課題として指摘されている。

○ また、留学生が急増している法務省告示の日本語教育機関について、その教育の質を担保するための取組を早急に行うことも必要である。

○ 引き続き、総合的対応策の早期実行・展開を進めるとともに、その進捗状況を確認し、柔軟かつ機動的に施策の見直し・充実を図っていくことが重要である。

<取組の方向性>

地方公共団体が関係機関等と有機的に連携し,日本語教育環境を強化するため,国及び地方公共団体の総合的な体制づくり等,地域における日本語教育を推進する。また、日本語教育人材の質を向上するための研修・資格制度等の枠組み・支援策を整備し、安定的に人材が確保できる環境を実現する。

【生活者としての外国人に対する日本語教育の全国展開・学習機会の確保】 <48~51>

○ 未来を見据え、在留する外国人が生活する全ての地方公共団体が地域日本語教育の総合的な体制づくりを推進できるよう、地方公共団体等との意見交換を進めるとともに、その課題・ニーズを踏まえて、日本語教育の環境整備の改善・充実を図る。

○ また併せて、「やさしい日本語」など多文化共生や日本語教育に対する地域住民の理解を推進するための活動を促進することが重要である。

○ 日本語教室の設置が困難な地域に住む外国人のため、自主学習が可能なICTを活用した日本語学習教材の開発・提供を進めつつ、教材の更なる多言語化(14言語)に向けた検討を進める(総合的対応策では8言語を対象にしており、令和元年度中に6言語開発予定)。

○ さらに、日本語教室空白地域の地方公共団体に対する教室開設のためのアドバイザー派遣等の支援を行うことにより、空白地域の解消を目指す。このために、先進的な実践事例(平成28~30年度実施)について、空白地域解消推進協議会を通じた情報発信等を行うことにより、今後取組を行う地域への波及を促進する。

<具体的取組>

・地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業(地方公共団体への補助)について、地方公共団体等との意見交換を行い、その課題・ニーズを踏まえた改善・充実
・自主学習が可能なICTを活用した日本語学習教材の開発・提供、更なる多言語化に向けた検討を進める
・「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業の改善・充実(実践事例について、空白地域解消推進協議会等を通じて周知)

【日本語教育全体の質の向上等】 <53~55>

○ 日本語能力の共通指標として求められている、一般的な日本語教育の標準(日本版CEFR)について、「言語のためのヨーロッパ共通参照枠(CEFR)」を参考として、日本版CEFRのうち共通参照レベルと能力記述の策定を行う。

○ 文化審議会国語分科会において取りまとめた「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」では、現職日本語教師の活動分野(生活者、就労者、留学生、児童生徒等)別研修の在り方が追加されており、これら研修の受講機会の充実を図る。

○ また、日本語教師が養成段階から初任、十分な経験を有する中堅へと、その能力と経験に応じてキャリアアップが可能となるよう体系的な研修等の制度について検討する。併せて、地域の日本語教育を推進するために、地方公共団体や企業、学校等の関係機関との連携の核となる日本語教育コーディネーターが一層活躍できるよう、研修等の充実を着実に図る。

○ 文化審議会国語分科会において、審議経過の概要として「日本語教師の日本語教育能力の判定に関する基本的な考え方」を平成31年3月に整理し、日本語教師の「資格」の制度設計に当たっての考え方(対象者の範囲、判定の仕組み、試験内容等)を示したところ。資格取得の要件等について更なる検討を進め、令和元年度中に結論を得る。

○ 専門性を有する日本語教師が魅力ある職業として社会的に認知されるよう、日本語教師の資格の創設について検討を行うとともに、社会的な認知向上に向けた情報発信等に取り組む。

<具体的取組>

・日本語教育の標準(日本版CEFR)について、共通参照レベルと能力記述を策定する
・日本語教育の人材養成及び現職者研修カリキュラムの開発事業の改善・充実(就労者等に対する日本語教師のための研修カリキュラムを一層普及、日本語教師のキャリアアップに資する体系的な研修等の充実)
・日本語教師の資格に関する検討を進め、令和元年度中に結論を得る

【日本語教育機関の質の向上】 <56~58>

○ 「法務省告示をもって定められた日本語教育機関の教育に係る定期点検及び客観的指標に関する協力者会議」の合意事項として、新たな抹消基準としての日本語能力に係る試験の合格率等について示したところ。法務省と連携しつつ、日本語教育機関の教育の質の向上に向けた取組を継続する。

【参考】協力者会議の合意事項のポイント
1.試験の合格率等を確認するレベルは、CEFR・A2レベルとする。
2.各機関におけるCEFRのA2レベル以上の試験の合格率等は、7割とする。
3.告示基準不適合の判断は、合格率等が7割を3年連続で下回った場合とする。
4.抹消の判断に至るまでに機関に対して指導を行う。抹消の判断を行う際には、合格率以外の活動状況等も踏まえ総合的な判断が必要。

※上記の合意事項に関し、日本語教育機関教育の質の管理に当たっては、外部機関による教育機関としての認証評価等の仕組みを利用する等、日本語能力に係る試験の合格率以外の可能性についても中長期的には検討課題であるという意見も示されたところ。文部科学省においては、今回の改正の運用状況も踏まえ、必要に応じて運用面等の見直しについて検討を行う。

<具体的取組>

・法務省と連携しつつ、日本語教育機関の質の向上に向けた取組を継続する

3.留学生の国内就職の促進・在籍管理の徹底

<現状認識と課題>

○  我が国の外国人留学生は修学を目的に来日して高度な知識・技能を身に付け、多様な活躍の機会を得ることが期待される。優秀な留学生受入れの更なる推進のためには、各大学等は、真に修学を目的とした者を選抜し、また、政府・大学等が一体となって留学生の在籍管理の徹底について対策を講じることが必要である。

○ 外国人留学生の就職者数は近年増加しているものの、大学・大学院を卒業・修了した外国人留学生のうち、日本国内で就職した外国人留学生の占める割合は4割弱にとどまっている。

○ 外国人留学生や高度外国人材における就職活動上の課題として、日本の就職活動の仕組みが分からない、日本語による適性試験や能力試験が難しい、日本語による書類の書き方が分からない等、大学等が支援することにより補える課題があるものの、外国人向けの求人が少ない、企業がどのような人材を求めているのか不明、入社後の仕事内容が不明確等の企業側の努力が求められる課題がある。

○ 職種や専門分野等を踏まえつつ、産学が連携し、共通理解に基づいた実用的な日本語能力の習得に向けた取組が必要となっている。

(1)留学生の国内就職の促進

<取組の方向性>

○ 大学が、企業等と連携し外国人留学生の我が国での就職を促進するプログラムを「留学生就職促進履修証明プログラム(仮称)」として文部科学省が認定する。このプログラムの中で、大学と企業等が連携し、例えば、アーリーステージインターンシップや就職後のフォローアップの実施、外国人留学生が我が国での就職に必要なスキルである「ビジネス日本語」等を在学中から身に付ける教育プログラムの策定等を進める。あわせて、このプログラムの前提として、業種や分野に着目した就職促進のコンソーシアムの取組モデルを開発する。これらの取組を通じて、外国人留学生の国内企業等への就職につなげる仕組みを全国展開する。

○ 中小・中堅企業等への留学生の就職にあたって、「特定活動」等の就労に係る在留資格への切り替えが確実に行われるようにするため、法務省、文部科学省と大学が、地域のコンソーシアム単位で、在留資格変更についての研修会(意見交換)を行う。

○ 大学等における就職率等の情報開示などの取組を集約し、効果的に発信するため、日本学生支援機構に特設サイトを開設し、大学等の情報を掲載する。

<具体的取組>

・「留学生就職促進履修証明プログラム(仮称)」を更に具体化・推進し、外国人留学生の国内就職の仕組みを全国展開する
・地域単位での関係機関による在留資格変更に関する研修会の実施
・日本学生支援機構特設サイトにて、大学等における外国人留学生の就職率等の情報を掲載する

(2)留学生の在籍管理の徹底

<取組の方向性>

○ 留学生の在籍管理状況の迅速・的確な把握と指導の強化を行う。また、指導の結果、在籍管理の適正を欠く大学等については、改善が認められるまでの間、原則留学生の受入れを認めない等の在留資格審査の厳格化を図る。併せて、在籍管理の適正を欠く大学等に対する私学助成の減額・不交付措置や大学名の公表等の制裁を強化する。

○ 専ら日本語教育を行う留学生別科について、日本語教育機関の告示基準に準じた基準を作成し、当該基準への適合性の確認を受けている留学生別科のみ留学生の受入れを認める仕組みを構築する。

○ 大学の非正規生等について、大学学部進学のための予備教育に受け入れる場合には、留学生別科に係る新基準によるものを除き、在留資格を認めない仕組みを構築する。

○ 専門学校についても、文部科学省、地方出入国在留管理局及び都道府県との情報共有等の連携の枠組により、在籍管理が不適切な専門学校が判明した場合には、大学等の場合と同様に、原則留学生の受入れを認めない仕組みを構築する。

<具体的取組>

・留学生の在籍管理状況の迅速・的確な把握と指導の強化
・在籍管理の適正を欠く大学等への在留資格審査の厳格化
・留学生別科について、日本語教育機関に関する法務省の告示基準に準じた基準策定及び適合性の確認

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