発達障害者プログラマーの育成と就労に繋げる支援とメンターの育成
- 学習活動の分類:
- 対象学年:
その他
- 教材タイプ:
ビジュアル言語
- 使用ツール:
(福井大学、ミテネインターネット㈱、福井工業高専で)開発したクラウド型教材
- 実施主体:
国立大学法人福井大学
- 実施都道府県:
福井県
- 事業区分:
総務省事業
- 情報提供者:
管理者
- 実施場所:
その他
- コスト・環境:
ノートPCおよびデスクトップPC1人1台(各校教室)、各校設置PCはLANあるいはWi-Fiで接続。福井大学より持ち込んだPCのみ、ポケットWi-Fiで接続

概要
我々は発達障害児者プログラマーを育成できるメンターの育成、論理的思考能力を養うための視覚デザインによるクラウド型プログラミング教材開発、発達障害児者の特性を考慮し、興味を持ち根気強く取り組める課題提供、プロジェクションマッピングを用いたプログラム動作確認によりコミュニケーションを促す場の提供などの実証に取り組んだ。
発達障害児者は社会性の問題を抱えコミュニケーションに苦手意識があるものの、プログラミングやIT分野で活躍できる才能がある。個々人の特性を理解し適切な学習支援を行っていくことが重要である。我々は下記(1)と(2)の教材開発と実証を進めた。
(1)発達障害児者の理解と支援・プログラミング教室を継続的に実施できるメンター育成
下記の1.と2.のような人材をメンターとして募集し、発達障害・プログラミング教育・就労支援など専門家15名から各30分の講義を受講した。また、講義内容はe-Learningでメンター登録者にWeb配信し、時間と場所を問わず普及化と持続化を可能とした。
1.発達障害支援のスキルがある人:放課後等デイサービス、日中一時支援などのスタッフ、および、発達障害支援を実践している教育系の卒研生・大学院生など⇒プログラミング指導のスキルを身につけることにより、支援の幅が広がり持続的な活動が期待できる。
2.プログラミングスキルがある人:福祉工学の研究に従事している工学系の卒研生・大学院生、高専の卒研生・研究科生など⇒障害者雇用を促進し共生社会を実現するためには、未来のITリーダに発達障害の特性や支援方法を学んでもらうことは重要である。
(2)発達障害を考慮したプログラミング教材設計と教室開催
SPELL(英国自閉症協会提唱)の法則に基づきクラウド型プログラミング教材開発と、カリキュラムを作成した。受講者の進捗ログはサーバーで管理し支援にも活用できる。
・Structure:簡単で明瞭な枠組みの設定 ⇒ 視覚化・構造化された教材開発
・Positive:ポジティブに関わる(ほめる) ⇒ 成功したら褒める
・Emphasis:共感(理解) ⇒ 失敗しても励ます
・Low arousal:刺激過多だと混乱するため低刺激なものに。ユニバーサルデザインも考慮
⇒ 見やすく落ち着いて作業のできる画面レイアウトを用意
・Links:きずな(地域、メンターや保護者や学生、仲間とのつながり、協力)
⇒メンターや受講者同士のコミュニケーションを促す場を提供
プログラミングの課題は「迷路脱出」である。主人公のキャラクターが迷路内でスタートからゴールに至る道筋を計画するといった明確な目標を与えた。キャラクターの進行方向や歩数を考えながら、繰り返しの適用など「気づき」をもたらす工夫をした。ステージが進むにつれ「迷路が複雑」になり、「制御構造:繰り返し・条件分岐(敵とたたかう、アイテムを拾う)など」を組み合わせる必要があり、解決手段を発見できるように工夫した。
これまで汎用的なプログラミング教材をうまく使いこなせなかった児童生徒も楽しそうに課題に取り組むことができた。「気づき」により自信が生まれ、それをきっかけに友人とコミュニケーションをとるなど成長もみられた。今後もより一層の普及化と発展に努める。