地域とつながる学びが、生徒の進路観を充実させる

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沖縄県立美来工科高等学校

地域と社会につながる実践的な学びが、生徒の進路観を形づくる――先端ICTと地域連携で「使える力」を育む:沖縄県立美来工科高等学校

  • 取材・編集・撮影:株式会社シード・プランニング
  • 素材提供:沖縄県立美来工科高等学校

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沖縄県立美来工科高等学校では、情報系2学科を中心に、先端ICT機器と地域連携を軸とした教育を推進しています。コンピュータデザイン科では、地域施設や企業をクライアントとしたデザイン・動画制作に取り組み、「誰のために、何を伝えるのか」を問い続ける学びを実践しています。ITシステム科では、CiscoネットワーキングアカデミーやVR技術を活用し、学んだ知識を実装・運用までつなげる授業を展開しています。両学科に共通するのは、社会とつながる経験を通して、生徒が自らの将来像を主体的に考える力を育んでいる点です。

お話を伺った先生

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新屋敷 博史(しんやしき ひろふみ)先生

校長。2023年より同校に着任。2024年より「文部科学省DXハイスクール」の採択を受け、「ITシステム科」「コンピュータデザイン科」における学習活動の充実やデジタル人材の育成を推進している。

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武富 理紗(たけとみ りさ)先生 コンピュータデザイン科

コンピュータデザイン科教諭。2016年度に情報科の教員に採用されて10年。名護商工高校、美来工科高校の2校で専門教科情報科の指導に携わる。2022年度には県総合教育センターで動画制作を通じた情報デザイン教育の研究を1年間実施。現在はその経験をベースに、地域連携と情報デザインを融合させ、生徒の課題解決力を育む授業実践に取り組んでいる。

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島袋 敬太(しまぶくろ けいた)先生 ITシステム科

ITシステム科教諭。2024年より同校に着任。Ciscoネットワーキングアカデミー開講・指導に係るインストラクター資格を保持。VR機器やハイスペック PCを活用した課題研究にも意欲的に取り組んでいる。

授業資料

事例概要

実践している学校・学科

沖縄県立美来工科高等学校 コンピュータデザイン科、ITシステム科
 

利用しているデジタル教材・デジタル環境

iMac、Windows PC、ハイスペックノートPC、Adobe Premiere Pro、Illustrator、Photoshop、After Effects、Ciscoネットワーキングアカデミー(CCNA)、VRゴーグル、Microsoft 365、Teams、Forms、Google Workspace for Education 、1人1台端末(Windows/iPad)、電子黒板、3Dプリンタ、高性能デスクトップパソコン、レーザー加工機、3Dプリンタ、昇華プリンタ、熱プレス機、ガーメントプリンタ、Azure Kinect

どのような学びが可能になったか

プロ仕様の機材を用いた実践により、社会で求められる水準を意識した学びが可能になった。

・地域企業との協働を通じて、「誰のために、何をつくるのか」を考える力が育まれた。

・ICTを活用した協働作業により、意見共有やチームでの問題解決が活発化した。

支援や事前準備のポイント、工夫

学校として、協働的・実践的・体験的な学びを重視し、先端ICTを活用した学習環境の整備を進めてきた。ICTは目的ではなく、生徒の情報活用能力や創造的な問題解決力を育成するための手段として位置づけている。
・地域や産業界と連携した学びを安定的に行うため、学校と外部をつなぐコーディネーターを配置し、連携先との調整や授業実施に向けた準備を支える体制を構築した。
・コンピュータデザイン科、ITシステム科それぞれの専門性を生かしつつ、地域資源を活用した実践的な学習が行えるよう、学校全体で方針を共有している。

導入・活用の成果・今後の予定

コンピュータデザイン科では、地域施設や企業をクライアントとしたデザイン・動画制作を通して、「誰のために、何を伝えるのか」を考える力が育まれている。制作物が実際に公開される経験は、生徒の主体性や責任感を高めている。

ITシステム科では、Ciscoネットワーキングアカデミーを活用した学びを基盤に、ネットワーク構築やシステム開発を実社会で生かす実践が進んでいる。学園祭での番号札呼び出しシステムの構築・運用は、その成果の一例である。

・今後は、DXハイスクール事業等を活用し、理系・情報系大学への進学を見据えた学びの充実を図るとともに、将来的には地域の情報教育を担う人材の育成にもつなげていく。

地域と社会につながる学びを、学校全体で設計する

沖縄県立美来工科高校が重視しているのは、先端ICT機器を導入すること自体ではありません。協働的・実践的・体験的な学びを通して、基礎的・基本的な学力を確実に身につけながら、社会で生きる力を育てることです。ICTはあくまで手段であり、生徒が社会と関わりながら学ぶための学習環境を整えるものとして位置づけられています。
 
その実現に向けて、学校では地域や企業との連携を積極的に進めてきました。教室の中だけで完結しない学びを成立させるため、外部との調整や連携を担うコーディネーターを配置し、教員が授業設計や指導に専念できる体制を整えています。こうした仕組みが、継続的な実践を支える土台となっています。

コーディネーターの配置や教員の進路指導の影響もあり、進学・就職いずれも決定率が高く、令和7年は進路決定率95.8%。
コーディネーターの配置や教員の進路指導の影響もあり、進学・就職いずれも決定率が高く、令和7年は進路決定率95.8%。

コンピュータデザイン科――「誰のためのデザインか」を問い直す

コンピュータデザイン科では、制作活動が「自分が作りたいもの」を形にすることに寄りがちで、作品を外部に届ける機会が限られていたという課題がありました。そのため、クライアントの要望を踏まえて企画や修正を重ねる、デザイン本来のプロセスを十分に経験できていない状況も見られました。

こうした課題を受けて取り組まれているのが、専門高校地域連携推進事業(*1)「MIRAIプロジェクト」です。MIRAIプロジェクトは、地域施設や企業を実際のクライアントと位置づけ、生徒が社会とつながる課題解決型の学びを実践する取組です。制作物を学校内で完結させず、地域に届け、評価や反応を受け取ることを目的としています。

沖縄県立美来工科高校では、コーディネーターを介して連携先との関係を築き、公益財団法人沖縄こどもの国と協働したPR動画制作などに取り組んできました。園内ルールや施設の魅力を伝える動画を制作し、完成した作品は公式YouTubeチャンネルで公開されています。誰に向けて、何を、どのように伝えるのかを考え抜く経験は、生徒にとって初めての本格的な社会との接点となりました。
(*1) 専門高校地域連携推進事業:沖縄県教育委員会による実施事業。

連携先の「沖縄こどもの国」と協働で取り組むPR動画の制作過程を授業内で発表。グループで1動画を制作する。
連携先の「沖縄こどもの国」と協働で取り組むPR動画の制作過程を授業内で発表。グループで1動画を制作する。
  
授業には「沖縄こどもの国」の職員も参加し、各発表へフィードバックを実施。地域企業で働く職員目線での貴重な意見は生徒たちの実践的な学びにつながる。
授業には「沖縄こどもの国」の職員も参加し、各発表へフィードバックを実施。地域企業で働く職員目線での貴重な意見は生徒たちの実践的な学びにつながる。

「沖縄こどもの国」とは2024年よりデジタルコンテンツの活用などを協働で取り組む。
「沖縄こどもの国」とは2024年よりデジタルコンテンツの活用などを協働で取り組む。

教科を横断し、デザインのプロセスを学びに落とし込む

MIRAIプロジェクトでは、「情報デザイン」「コンテンツの制作と発信」「課題研究」の3教科を横断し、週5時間、約75時間にわたる取組が行われています。単発の制作で終わらせず、講話や施設見学、ヒアリング、企画書作成、絵コンテ制作、プロトタイプ、フィードバック、修正といったデザインのプロセスを、授業計画の中に明確に位置づけました。
 
事前学習では、名刺制作を通して情報デザインの基礎を学び、実際の制作に入る前にはクライアントへのヒアリングや現地調査を行います。制作期間中は、TeamsやFormsなどのクラウドサービスを活用して実習日誌を記録し、生徒の主体的な取り組みや課題を可視化しています。授業の最後には振り返りやお礼状作成を行い、国語科と連携した学びへと広げています。

科目を横断した取組によりそれぞれの理解が深まる。
科目を横断した取組によりそれぞれの理解が深まる。

ITシステム科――学んだ技術を「使われる仕組み」へ

ITシステム科では、専門的な知識と実践を結びつける学びが展開されています。その基盤となっているのが、Ciscoネットワーキングアカデミーのカリキュラムです。国際標準の知識を学びながら、実機を用いたネットワーク構築やトラブル対応に取り組むことで、知識を実社会で通用する「使える力」へと転換しています。

Ciscoネットワーキングアカデミーのカリキュラムを活用した実機による実践的な授業。
Ciscoネットワーキングアカデミーのカリキュラムを活用した実機による実践的な授業。

ネットワークの授業ではLANケーブルの配線やデバイスの基本設定などを実機で操作し、技術を習得する。
ネットワークの授業ではLANケーブルの配線やデバイスの基本設定などを実機で操作し、技術を習得する。

先端技術を探究につなげる課題研究

課題研究では、VR技術を活用した取り組みも行われています。解体予定の校舎をデジタルアーカイブとして残すプロジェクトでは、「記憶や雰囲気をどう残すか」という問いに向き合いました。地域や企業と連携し、外部講師を招いて専門的な技術指導を受けることで、学びは一層深まっています。技術を触って終わるのではなく、社会的な意味までを問い直す探究へと発展しています。

学校行事での実装――番号札呼び出しシステム

ITシステム科の学びが実社会と直結した例として、学園祭での「番号札呼び出しシステム」があります。生徒が自ら設計し、プログラミングやネットワークの知識を駆使して構築から当日の運用までを完結させました。来場者はQRコードで受付を済ませると、順番が近づくまでメール通知を待ちながら自由に他を見学できます。さらに運営側でも、リアルタイムで待ち人数や状況を共有し、最適な呼び出しタイミングの判断に活用しました。この取組は、単なるシステム開発に留まらず、利用者と運営側の双方の利便性向上を実現した実践例です。生徒たちは、技術を通して課題解決に貢献する喜びを実感し、大きな達成感を得る機会となりました。

生徒がUVプリンタを使って制作したオリジナルキーホルダー。学園祭などでの販売も行った。
生徒がUVプリンタを使って制作したオリジナルキーホルダー。学園祭などでの販売も行った。

レーザー加工機や3Dプリンタ。他にも昇華プリンタや熱プレス機、ガーメントプリンタなどプロと同じ機材を使ってオリジナルグッズが制作できる環境を整備。

レーザー加工機や3Dプリンタ。他にも昇華プリンタや熱プレス機、ガーメントプリンタなどプロと同じ機材を使ってオリジナルグッズが制作できる環境を整備。

両学科を支えるコーディネーターの役割

コンピュータデザイン科とITシステム科、いずれの実践においても、コーディネーターの存在が欠かせません。コーディネーターは、地域施設や企業、外部人材との連携先の選定や事前の打ち合わせ、授業実施に向けた調整を担い、学校と外部をつなぐ役割を果たしています。こうした調整を通して、教員が描く教育構想を具体的な学習活動へと落とし込み、生徒が実社会と関わる学びに安定して取り組める環境を整えています。連携が単発で終わらず、継続的な実践として積み重なっている背景には、この調整役の存在があります。

社会とつながる学びが、進路観を育てる

地域や社会と関わる学びを通して、生徒は自分の将来を具体的に語り始めています。デザインシステム構築などのICTに関するスキルや情報技術を「誰かのために使う」経験は、進路選択に現実味を与え、学びへの意欲を高めています。理系・情報系大学への進学や、将来は情報教育を担う人材として地域に貢献したいという声も聞かれます。

生徒の振り返りからも学びへの意欲が高まったことがわかる。
生徒の振り返りからも学びへの意欲が高まったことがわかる。 

実践を「特別な事例」にしないために

沖縄県立美来工科高等学校の取組は、先端ICT、地域連携、コーディネーターという要素を組み合わせることで、再現可能な学びの仕組みを築いています。社会とつながる経験を日常の授業に組み込み、学びを一過性に終わらせない仕組みとして定着させていく。その積み重ねが、これからの学びの在り方に多くの示唆を与えています。

※本記事は実践事例を広く紹介することを目的としており、記事内において一般に販売している商品、機器等に言及している部分がありますが、特定の商品等の活用を勧めるものではありません。学校が一般に販売されているものを活用する場合は、活動内容や各学校の状況等に応じて選択してください。
※本記事の情報は取材時点(2025年12月)のものです。

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