動画で工程を確認しながら技術を磨く授業へ
【お話を伺った先生 】

- 村井 浩昭(むらい ひろあき)先生
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校長。愛媛県立吉田高等学校の校長を経て2024年度より同校に着任。近隣校と連携しながら新校の開校に取り組む。
- 飯田 高大(いいだ たかひろ)先生
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情報科教諭。愛媛県立宇和特別支援学校を経て2023年度より同校に着任。2024年度より文部科学省「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」の採択を受け、「ライフデザイン科」「情報科学科(新校)」における先端機器の導入や教員向けDX機器研修の推進などを行っている。
- 佐伯 宏美(さいき ひろみ)先生
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非常勤講師。愛媛県立西条農業高等学校を経て2023年度より同校に着任。生活産業情報の授業を担当。
事例概要
- 実践している学校・学科
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愛媛県立小松高等学校・ライフデザイン科
- 利用しているデジタル教材・デジタル環境
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生徒用端末、高性能デスクトップPC、せっけい倶楽部(住宅間取り作成ソフト)、iPad、3Dプリンタ、3Dスキャナ、360度カメラ、VRゴーグル、モーションキャプチャー、Microsoft Office 365 Education(Word、Excel、PowerPoint)、Canva、Adobe Illustrator、Photoshop
- どのような学びが可能になったか
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・被服製作実習で製作工程の手順動画を共有することで生徒が必要な場面で見返しながら復習できる環境が整った。
・ アンケート分析や資料作成、住宅間取り作成ソフトの活用などを通して、データ分析や情報を整理して提示する力を育てている。
・ 3Dプリンタの講習を通して地域題材を扱う課題研究での活用を構想。地域モチーフのおもちゃ制作や教材づくりなど、地域と接続した探究活動への展開を検討している。
- 支援や事前準備のポイント、工夫
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・3Dプリンタ等の機器導入時に業者を招いた教員向け研修を実施し、基本操作を確認。
・情報担当教員が中心となり、3Dプリンタ等の生徒向け講習を実施。機器の仕組みや出力の流れを理解する機会を設けた。
- 導入・活用の成果・今後の予定
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・3Dプリンタ導入時に業者を招いた教員向け機器研修を実施し、基本操作と運用の流れを確認した。
・情報担当教員が中心となり、生徒向け講習を実施。出力の仕組みや操作方法を学ぶ機会を設けた。
・デジタル機器は特定科に限定せず、授業や学校活動の中で学科横断的に活用できる可能性を検討している。
実習の積み重ねが、技術の精度を支える
ミシンの針が一定のリズムで上下する。布を送り、縫い目を確かめ、端をそろえる。教室には、作業の音が静かに響きます。愛媛県立小松高校の被服製作実習は、そうした反復の上に立っています。縫う、切る、折る、組み立てる。工程自体は特別なものではありません。しかし、仕上がりは細部で決まります。縫い幅がわずかにずれるだけで、全体の印象が変わる。途中を急げば、最後に歪みが出る。だから戻る。ほどく。縫い直す。手を動かしながら精度を上げていきます。
ライフデザイン科の日々の授業では、被服製作の工程を一つひとつ確かめながら技術を高めていきます。製作の工程を確認する。直線が曲がらないかを見る。糸の始末が甘くないか確かめる。細かな確認を重ねることで、仕上がりの精度は少しずつ上がっていきます。どこまでできているかを自分で確かめながら作業を進めることが、この授業の基本です。
技術を磨く授業では、つまずきがあると手が止まってしまいます。どこで迷ったのかわからないままでは、先に進めません。そこで教員は、被服製作技術の工程を動画にまとめ、ロイロノートで共有しています。授業中でも、分からなくなったら見返す。前の工程に戻る。必要な部分だけを確認する。それぞれのペースで修正ができる環境です。
授業を止めて一斉に説明をするわけではなく、生徒が自分で立て直せる仕組みをつくる。教室全体の流れを保ちながら、個々の理解を支える。その設計が、授業の精度を高めています。
授業の後に感想を書かせると、思いのほか長く書く生徒もいます。どこで手が止まったのか。どの工程で工夫したのか。やり直しを何回したのか。言葉にして残すことで、自分の変化が見えてきます。
「自分の手で何かを作ることができるようになる」「一生ものの技術になる」。
生徒たちからそういった言葉が聞かれるのは、積み上げの実感があるからでしょう。技術は一日で身に付くものではありません。積み重ねは決して裏切らない。
ライフデザイン科では、技術の向上を図る指標として全国高等学校家庭科技術検定に挑戦し、複数の1級取得者を「3冠王」と呼んでおり、生徒たちも一生懸命挑戦しています。しかし、技術検定はゴールではありません。積み重ねが確かに身に付いているかを測る通過点です。教室の中心にあるのは資格ではなく、「精度を上げ続ける姿勢」です。検定はその延長線上に置かれています。技術の精度を磨き続けるための指標です。
被服実習でミシンに向かう。手元のタブレット端末で手順を確認することも。実習室には生徒が製作した検定問題の浴衣も置かれている。
手を動かす授業に、言葉を重ねる
工程動画の共有は、単に手順を示すためだけのものではありません。生徒の学び方そのものにも影響を与えています。
被服製作の実習では、同じ工程を繰り返します。迷いが生じたときは動画を開き、該当箇所を見返す。どこで手の動きが違っていたのかを自分で確かめる。その確認を経て、もう一度手を動かします。
画面の手元と、自分の手元を見比べる。工程を確かめる。修正する。その一連の流れが授業の中に組み込まれています。技術を身に付ける過程に「確かめる」という段階が明確に入っています。
端末は振り返りの場面でも使われます。どこで迷ったのか、どの工程が難しかったのかを文章にすることで、自分の作業を振り返る時間が生まれ、学習が整理されます。
技術の授業は、感覚に頼りやすい面があります。できた、できないで終わらせないために、言葉で振り返る。動画で確認し、文章で整理し、再び手を動かす。その往復が、技術を確かめながら学ぶ授業につながっています。

わからないところは動画で何度も繰り返し確認できる。
生活産業情報で「整えて伝える」
生活産業情報の授業は、教室内の演習にとどまりません。近隣校との合同による職業・学科横断的学習研究の成果発表会にも参加しました。小松高校(ライフデザイン科)、東予高校(電気システム科)、丹原高校(普通科・園芸科学科)の三校が、それぞれの専門性を持ち寄る場です。
その中で小松高校が発表したのが「桑の葉茶の研究」でした。地域の素材をどう活用するかという視点から進めた取組です。地域資源を見つめ直し、活用の可能性を探る。発表の場に立つことで、取組は校外にも広まります。他校の生徒や教員に向けて説明するためには、伝える構成を考えることが求められます。

小松高校をはじめ近隣の3校が集まっての成果発表会。小松高校のテーマは地域の特産品でもある桑の葉を使ったお茶の研究。
この発表経験は、生活産業情報の授業内容ともつながっています。文化祭のファッションショーで実施したアンケートを題材に、グループで分析し、一枚の資料にまとめる活動が行われました。集まった回答を整理し、項目ごとの傾向を読み取ります。Excelで表やグラフを作成し、Wordでレイアウトを整える。数値を並べるだけでは伝わりません。どこを強調するのか、どの順で示すのかを試行錯誤することに時間をかけます。
作業の中で、「こうした方が見やすくなるよ」と生徒同士が自発的にアドバイスし合うこともありました。見出しの位置を変える。グラフの大きさを調整する。情報の順番を入れ替える。画面を囲みながら、配置を検討します。
グループ内では技術を教え合う場面もあります。操作が得意な生徒が方法を示し、別の生徒が実際に試してみる。相談しながら考え、整える過程を経て、出来上がった資料を前にした生徒からは「自分でこんなことができるんだ」という声も上がりました。生徒の成長を感じる瞬間です。
伝える技術を向上するため、ビジネス文書実務検定3級の取得にも取り組んでいます。文字入力や書式の基礎をそろえる時間です。「1文字1文字でしか打てない」状態から始める生徒もいます。基礎が整うことで、アンケート分析のような活動も支えられます。

文化祭でのファッションショー。参加した地域の方にアンケートを実施し分析を行った。ショーの様子をビデオカメラで撮影し、新型タブレット端末で編集した。
今年1月には、学校に高性能デスクトップPCが導入されました。その機器を使った表現活動も行われています。小松町の町花である椿を題材に、図形を組み合わせて表現する授業です。椿文化を広めるという文脈も背景にあり、地域由来のモチーフをデジタルで形にする試みです。
図形の配置を変える。色を調整する。重ね方を工夫する。画面上で試しながら、構図を整えます。地域に根ざした題材を扱うことで、学習は具体になります。単なるデザイン演習ではありません。地域をどう伝えるかという問いが含まれています。
桑の葉茶の研究、アンケート分析、椿の表現。いずれも、地域を題材にした活動です。整え、示し、発表する過程が、次の課題研究へとつながっていきます。

授業では導入された高性能PCを使って地域由来の花・椿をモチーフにしたデザインを行った。
紙からデジタルへ――「せっけい倶楽部」を活用、住空間を“動かして”考える
生活産業情報の授業では、住生活に関する学習において住宅間取り作成ソフト「せっけい倶楽部」を活用し、住空間のレイアウトを行っています。画面上で壁を配置し、家具を置き、動線を確かめる作業です。
以前は、紙に描いた図面や切り貼りでレイアウトを作成していました。家具の位置を変えるたびに書き直しが必要で、全体のバランスを確認するには時間がかかります。一つ修正すると、別の部分も変える必要が出てくる。精度を高めるほど、作業量が増える構造でした。
ソフトを使うと、その状況が一変します。ドラッグひとつで壁の位置や家具を調整できて、変更は即座に反映されます。リビングとダイニングの位置関係を入れ替える。収納を追加する。数パターンを保存し、並べて比較することもできるのです。
立体表示に切り替えると、空間の広がりを視覚的に確認できます。通路の幅は十分か。家具の高さは圧迫感を生まないか。窓の位置によって光の入り方はどう変わるかが具体的に見えてきます。
修正が容易になったことで、生徒の発言も「ここを広くしてみたい」「この家具は向きを変えた方がいいのではないか」など前向きな変化が見られました。実際に動かしながら配置を考えることができるため、その場でアイディアが形になります。言葉だけで終わらない。試して確かめることができます。
アイディアが多く出てくると、生徒同士のコミュニケーションも生まれます。どのレイアウトが使いやすいか。どこに無駄があるか。理由を挙げながら授業が進むようになりました。
授業はソフトの操作習得が目的ではなく、空間をどう構成するかを考える時間です。変更が容易な環境は、学びを深める土台になり、案を出すことのハードルも下がります。
実習の授業が技術の精度を磨く時間だとすれば、「せっけい倶楽部」を使った取組は選択と検討を繰り返す時間です。紙での作業から画面上のデジタル空間へ。デジタルの活用が考え方の広がりにつながっています。
住宅間取り作成ソフト「せっけい倶楽部」を使い住居をレイアウト。修正や変更が容易で立体的に表示することもできる。生徒がより積極的に取り組むようになった。
3Dプリンタの導入と課題研究――地域とつながる構想へ
課題研究では、地域に関連したテーマを扱います。人口減少など地域の現状にも目を向け、自分たちがどのように関われるのかを考える時間。地域の課題に当事者として向き合います。
その中で、今年度導入された3Dプリンタの活用が大きな役割を担うことが期待されています。まずは情報科担当教員が中心となり、生徒向けの講習を実施しました。プリンタの仕組み、データ作成の流れ、出力までの工程を説明し、実際に動かしながら確認する時間を設け、3Dプリンタの仕組みや設定、出力までの流れを理解するところから始めています。
今年度はまだ授業として体系的に運用している段階ではありません。40人規模の授業で一斉に扱うには課題も多く、活用の方法を探っている最中です。少人数で取り組む課題研究にどう活用するかを具体的に検討しています。
3Dプリンタは、単なる「先端機器」として導入されたわけではありません。作って終わりにしない。地域のために何ができるのかを考える装置にしたい。3Dプリンタは、その問いを形にするための道具です。自分たちも地域の一員であり、関わる側に立てるのだと実感してほしい。そうした思いが導入の根底にあります。
構想の一つが、地域に根ざしたおもちゃづくりです。地域の子どもたちに手渡すことを考え、特産であるみかんや「西条まつり」のだんじりをモチーフとした案が挙がっています。おもちゃを使ってもらい、反応を受け取り、改良する。課題研究として循環させる構想です。
他にも地域のお年寄りに向けたものづくりも考えています。手に取りやすい形状、触れて楽しめる仕組み。3Dプリンタを使えばオリジナルなものを作ることができます。ライフデザイン科で培ってきた視点をデジタルで形にする発想です。
数学の教員からの教材づくりに関する要望もあります。ピタゴラスの定理を立体で示す教材を制作し、数式で学ぶ内容を形にし、触れて確かめる教材にすることで、目で見て理解する試みです。
DXハイスクールの予算により、今年度は他にもデジタル機器が充実しました。購入したモーションキャプチャーを使って高齢者や障がい者の動きを考慮したゲーム開発も可能ではないかという案や、部活動で身体の動きをデータ解析することに活用できるのではないかという話もあります。
360度カメラやVRゴーグルも整備され、地域を撮影し体験できる形にするコンテンツも考えています。映像を組み合わせることで新たな表現も可能です。課題研究にどう活かすかを検討しています。
部活動でビデオカメラを使っているので連携して学校のPR動画を制作する案もあり、デジタル機器があることで、教科を横断した取組が加速しました。
ライフデザイン科と情報科が協力し、設計や制作を進める構想もあります。技術とデジタルを分けるのではなく、それぞれの専門性を活かす方向で学科横断の発想が広がりました。
3Dプリンタはまだ授業の中心ではありませんが、次年度の活用に向けて具体的な構想が進んでいます。地域と向き合う中で、形にする力をどう育てるか。次年度に向け、具体的な準備が進んでいます。
情報科教員による講習。生徒からは「保育や介護の実習にも生かせるのではないか」「もっと話を聞きたい」といった声も上がった。
整備と挑戦――道具を授業に根づかせる
機器が整えば、すぐに授業が変わるわけではありません。3Dプリンタにしても、モーションキャプチャーや360度カメラ、VRゴーグルにしても、扱う側の準備が必要です。
機器は初めて扱うものであったため「自分が使えないと生徒たちに教えられない」と導入時には業者を招いての教員向け研修を実施しました。基本操作や安全面の確認、扱い方を学んだうえで、生徒への講習へ。新しい機器を前に教員自身が試し、失敗も経験する。その上で、授業への展開を考えるのです。
どの単元に置くのか。どう評価につなげるのか。検討は今も続いています。
生活産業情報の授業や地域課題の課題、そこに3Dプリンタやデジタル機器が加わります。先端機器を使うことも大切ですが、重視しているのは学びの変容。デジタルを活用することでデータ分析や情報の発信を学校が担い、地域との連携や研究を深めることもできます。新しい機器は、そのための道具にすぎません。
ミシンの音から始まった学びは、いまデジタル機器へと広がっています。けれど、土台は変わりません。精度を上げるために戻り、確かめ、やり直す。その姿勢があるからこそ、3Dプリンタも、映像も、データも生きるのです。技術の確かさを土台に、地域へひらくDX。小松高校の挑戦は、その静かな積み上げの中にあります。

来年度から同じ敷地内に新生小松高等学校が開校されるにあたり新しい制服が誕生、新制服を使ったARを開発。この技術を使って、ファッションショーのデジタル化を模索中。インタビューに答える生徒が着用しているのが現在の小松高校の制服。
※本記事は実践事例を広く紹介することを目的としており、記事内において一般に販売している商品、機器等に言及している部分がありますが、特定の商品等の活用を勧めるものではありません。学校が一般に販売されているものを活用する場合は、活動内容や各学校の状況等に応じて選択してください。
※本記事の情報は取材時点(2026年2月)のものです。

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