新しい学びに対応した教育環境の実現、 地域とともにある学校づくり

土小学校(千葉県柏市)

学習指導要領に対応した主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、教育環境の向上と老朽化対策を一体的に解決する市の改修モデルとなるように学校関係者の対話を重ね、検討が行われた。

部分改修 対話型設計 柔軟な学習空間 地域と連携 メディアセンター バリアフリー化 小学校

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改修概要

千葉県柏市では、市内学校施設の老朽化を背景として、中長期的な学校施設保全計画を検討する「学校施設保全計画部内検討委員会」と、校舎長寿命化改良工事の具体的な内容を検討する「校舎長寿命化改良工事設計作業分科会」の2つの部局横断的な検討会を設置。この2つの検討会が連携して、ICTを活用した教育への対応やインクルーシブ教育への対応等、新しい学習指導要領に沿った教育環境の向上を目標として校舎の在り方が検討された。
「校舎長寿命化改良工事設計作業分科会」にて開催されたワークショップでは、教職員、保護者、地域住民が参加し、管理諸室や地域開放スペース、図書スペースのゾーニング等、具体的な改善案に関する意見を取りまとめた。
改修整備計画では、子どもたちの学習環境・生活環境の向上に加えて、地域とともにある学校づくりのために、地域連携の充実とセキュリティを考慮して単独の棟に地域関係諸室を集約した。また、繰り返し行われていた増改築のため教室配置や昇降口が分散して、管理が困難だったという課題に対し、管理諸室(職員室等)の周りに普通教室を集約・再配置し、特別教室、管理、地域開放のエリアを整理した。
普通教室は学年単位でまとめ、一体的に授業がしやすいように再配置するとともに、教室内は主体的・対話的で深い学びの実現という新学習指導要領への対応や、狭い・収納が少ない等の課題に対応するため、新たな設えが計画されて、創造的で柔軟な空間が実現されている。このほか、バリアフリー化のためエレベーター・スロープの新設、トイレの増設などが実施されている。
 

検討プロセス

新しい学びに対応した教育環境を実現

中長期的な学校施設保全計画を検討する「学校施設保全計画部内検討委員会」と校舎長寿命化改良工事を検討する「校舎長寿命化改良工事設計作業分科会」が設置され、2つの部局横断的な検討体制が連携して、ICTを活用した教育への対応やインクルーシブ教育への対応など、新しい学習指導要領に沿った教育環境の向上を目標として校舎の在り方が検討された。
3面ホワイトボードとする教室の設えや、エレベーター、スロープの設置等のバリアフリー化など、土小学校の具体的な改修内容を決定し、その内容を新たな整備水準として中長期的な学校施設保全計画にも反映した。

 

地域とともにある学校づくり

教職員、保護者、地域住民が参画したワークショップを複数回開催した。前半は、学校への思いや現在の学校の課題について確認し、後半は、その内容を踏まえ、管理諸室や地域開放スペース、図書スペースなどのゾーニングや昇降口の集約など、具体的な改善案に関する意見をとりまとめた。

ワークショップの様子
      
学習指導要領や施設の現状・課題等を踏まえ
整備内容について検討(普通教室)
      

改修ポイント1

主体的・対話的で深い学びを促す教室空間に転換

各教室には、3面ホワイトボードやプロジェクターを整備するとともに、室内空間を有効に活用できるように収納やロッカーを増設した。また、間仕切りは全面開放できるものに更新した。このような工夫により、グループ学習等の柔軟な活動に対応できる教室空間への転換を図った。
また、教室背面には開口部を設けて、1学年2学級のユニットを計画した。これにより、ICTと連動して一人の教員が二クラスを一体的に授業ができるメリットを生かし、学年担任制を採用する等、教職員の専門性や相互連携を高める取組も進めている。
 

主体的・対話的で深い学びを促す教室空間
(3面ホワイトボード)
ホワイトボード付き間仕切り
隣の教室との開口部(教室背面)

改修ポイント2

図書活動をより進展させる、メディアセンターの充実

子どもたちの好きな場所であり、学校の魅力の一つでもある図書室にメディア機能を付加することにより、調べ学習が容易に行える環境を整えた。また、子どもたちや地域の方が利用しやすいよう、図書室の近くに昇降口や地域交流エリアを配置するなど工夫した。
効果として、休み時間を利用して読み聞かせ活動を行ったり、体験的なふるさと学習を実施するなど、多様な活動が可能となっている。
 

畳部分を活用した茶道体験
地域ボランティアと協力して作った
装飾・レイアウト
図書室と地域サロンを結ぶ「土っ子デッキ」
屋外での活動や地域との交流に使われる多目的スペース
となっている
「どこでも読書」の環境をつくる「図書テラス」を図書室前に設置
      

改修ポイント3

地域と連携・協働する、地域交流スペースを集約

地域連携の充実とセキュリティを考慮して単独の棟に地域関係諸室を集約した。1階に地域交流にも活用できる多目的室やサロン、2階に学童保育に使用するこどもスペース、3階にふるさと資料室を配置した。
学校では地域と連携した教育活動(地域学校協働本部等)にも力を入れており、地域交流スペースを生かして、体験的な教育活動や、学校運営協議会における意見交換など、様々な活動が活発に行われている。
 

ふるさと資料室
      
多目的室を使った昔の道具体験
      
学校運営協議会
      
      

改修ポイント4

バリアフリー化によるインクルーシブ教育への対応

分散していた昇降口を1つに集約し、安全で明るい昇降口を確保した。また、全ての普通教室にアクセスできる位置にエレベーターを新設するとともにトイレを増設している。
そのほか、体育館や駐車場から校舎へアクセスできるスロープを設置することで、バリアフリーに対応した施設に改修している。
 

屋内運動場と本校舎をつなぐスロープとカラフルなミニ雛壇を設置
      
地域の利用も考慮して、
図書室の近くに昇降口を配置
      
急勾配だった正門周りを緩やかで楽しい門に改修。
土小の特徴である読書をイメージしたブックゲート
 
      

学校概要

※令和3年4月時点

学校名
土小学校
所在地
千葉県柏市
全体工期
令和元年7月~令和2年11月
学校規模
13(3)学級、428人 
※学級数のカッコ内は特別支援学級数を表す。
敷地面積
12,302㎡
保有面積
校舎 4,547㎡ / 屋体 720㎡
構造
校舎 RC造3階建 / 屋体 S造2階建

主な改修内容

•体育館・駐車場から校舎へアクセスできるスロープの設置
•各教室へアクセスしやすい位置にエレベーター設置
•まとまりのない教室の再配置
•昇降口を増築し、4つの昇降口を集約化
•学校と地域開放エリアをつなぐデッキの設置
•地域関連諸室を1棟に集約
•道路拡幅による安全な通行経路の確保
•新しい学びのスタイルを実現する教室空間への転換

改修計画の全体像

詳細情報はこちらから

学校施設の教育環境向上を図る改修等に関する課題解決事例集
https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/seibi/1372577_00003.htm
 

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