事例概要
かほく市では、旧3町の合併後、市内小中学校の老朽化が課題となっていた。かほく市立七塚小学校は明治6年(1873年)に開校。昭和42年(1967年)に建設された校舎をはじめ、築40年以上の建物が全体の約8割を占めていたことから、建設時期や老朽化の状況が近い外日角小学校とともに長寿命化改修が実施された。計画にあたっては、先行して実施していた外日角小学校の改修の知見を生かしながら、七塚小学校の計画が進められた。
かほく市は平成28年度(2016年度)から石川県内で先駆けてコミュニティ・スクールを導入し、「地域総がかりで子どもたちを育てる」学校づくりを推進している。校舎改修にあたっては、基本設計に先立ち、学校運営協議会において4回にわたり地域住民との意見交換を実施。区長や子ども会、PTAなど地域を代表する委員から、図書館を玄関正面の学校の中心に配置することや、災害時を見据えて家庭科室を地域が利用しやすい場所に配置することなどの意見が寄せられた。
こうした要望を既存校舎の改修のみで実現することは難しかったため、改修に加えて、L字型の既存校舎と体育館で囲まれた部分に校舎を増築し新たな空間を整備した。増築部分の1階には図書館を中心に、多目的ホールや家庭科室を配置。家庭科室を体育館に隣接させることで、災害時には避難所としても利用しやすい設計としている。
また、増築によって教室面積を広げ、ゆとりある学習環境を確保するとともに、南側の校舎への渡り廊下を新設し、これまで課題であった校舎間や特別教室への移動動線を改善した。
また、改修前から使われていた木製の手すりを残したほか、玄関前タイルの色彩を踏襲した木壁を採用するなど、既存校舎の記憶を継承しながら改修を実施。学校が長年育んできた風景や愛着を残しつつ、機能改善や教育環境の充実、防災機能の向上、地域との連携に配慮した学校施設を実現した。
黄色で塗られた部分が既存校舎。
青色で塗られた部分が長寿命化改修に伴う増築部分。
2階3階部分に新設された(写真中央)。
1階部分は学童玄関がある。
事例ポイント1
学校の中心機能となる図書館や多目的ホールを増築
増築部分の1階には、児童用玄関正面に吹き抜けのエントランスホール、その奥に図書館を配置。さらに周辺に多目的ホール、会議室、家庭科室、PC室を集約し、調べ学習やグループワークなど、多様な学習活動に対応できる環境を整備した。
コミュニティ・スクールとして地域人材による授業も行われる七塚小学校では、外部講師の授業を受けた後、図書館で調べ学習を行ったり、多目的ホールや会議室でグループごとにプレゼンテーションをまとめたりと、一連の学習活動をこのエリアで展開できる設計となっている。図書館や各部屋に大きなガラス開口を設けることで視線が通る一体的な学習環境を形成。学習内容や人数に応じて柔軟に場所を使い分けられるほか、教員が児童の活動を見守りやすい配置となっている。
下駄箱の手前から撮影。
吹き抜けのエントランスホールの先に配置された図書館
吹き抜けを介して1~3階がゆるやかにつながる空間。
スムーズな学校内動線を確保
L字型校舎の内側に図書館や多目的ホールなど学校の中心機能とメイン階段を増築することで、校内動線を改善した。さらに、これまで1階を経由する必要があった校舎間に2・3階の渡り廊下を新設したことで、普通教室から南校舎にある特別教室への移動がよりスムーズになっている。
南校舎は1階に学童、2階に図工室、
3階に理科室を配置している。
事例ポイント2
ゆとりある教室と連携空間で多様な学びや交流を促進
増築や教室配置の見直しにより、普通教室を従来の廊下面積を取り込んだゆとりある空間へと改修した。また、特別教室を普通教室へ転用した教室では、十分な面積を確保し、こちらもゆとりある学習環境を実現している。教室にゆとりが生まれたことで、新JIS規格の机を配置するとともに、教室内にロッカーや収納スペースも確保している。教室内だけでなく、廊下側の壁面にもOSBボードを採用し、児童の作品や学習成果を日常的に掲示できる環境とした。
教室前のオープンスペースは、調べ学習やグループ活動などに活用できる連携空間として整備したが、その他にも給食の配膳や作品展示など、幅広く利用されている。教室と廊下を仕切る壁面に大きな開口を設け、視線が通る明るく開放的な学習環境を実現した。
教室が広くなり、新JIS机を導入している。
教室内どこでも掲示が可能に。
児童の作品を展示。
昼休みになると、広い廊下で活発に活動する姿が見られる。
事例ポイント3
ゆとりある教室と連携空間で多様な学びや交流を促進
既存校舎についても、長寿命化改修に併せて内装に木質系仕上げ材を多用し、木のぬくもりを感じられる学習環境を実現した。
職員室・多目的ホール前の廊下。
教室前に小スペースを設けた空間。
既存校舎の記憶を継承
改修前から使われていた手すりや家具などを継承し、地域住民や卒業生も親しみや愛着を感じられる空間とした。
地域の方による手づくりの座布団を添え、
親しみのある居場所としている。
バリアフリー化を推進
既存校舎にエレベーターを新設するとともに、段差を解消し、誰もが利用しやすい学校施設を整備した。
地域の防災拠点として機能を強化
災害時の活動拠点となる体育館は、校舎外から直接アプローチできる専用玄関を新設して避難時に開放しやすい設計とするとともに、スロープを設けてバリアフリー化。さらに、体育館に隣接して防災備蓄庫、家庭科室を配置するなど、避難所運営を考慮した設計としている。また、体育館の屋根をカバー工法で改修することで断熱性能を向上させ、避難所となる体育館の室内環境を改善している。
災害時にはBOXが開き、地域の防災士が
玄関を開けることができる。
工事プロセス
1.仮設校舎の建設と体育館改修(令和元年(2019年)7月から)
敷地内にS造(鉄骨造)延床面積約2,028㎡の仮設校舎を建設。同時に屋内運動場(体育館)の長寿命化改修に着工。 1年先行して長寿命化改修を実施した外日角小学校では、コストを抑えるため仮設校舎を小さくし、居ながら改修の形で工事を進めた。しかし、児童と工事車両・作業員の動線を分ける必要があったほか、教室の引っ越しを何度も行うなど、学校運営や現場のオペレーションが複雑になるという課題が生じた。
1期工事と2期工事で使用部分と工事部分が入れ替わっている。
七塚小学校ではその経験を生かし、仮設校舎の面積を十分に確保した上で工事エリアと明確に分離した工事計画を採用。学校運営への負担を抑えながら、円滑に工事を進めることができた。
外日角小学校の経験が活かされている。
2.本校舎の改修・増築工事(令和2年(2020年)2月)
児童が仮設校舎へと一時移転したのち、本校舎の全面的な改修および増築工事(S造:約1,875㎡)を本格化。
3.新校舎への引越し(令和2年(2020年)9月下旬)
工事の目処が立った9月の週末(土日)を利用し、仮設校舎から完成した新校舎への大規模な引越し作業を実施。 令和2年9月28日:新校舎での授業がスタート。 令和2年10月:長寿命化改修工事が完了(竣工)。全普通教室・特別教室への空調設備(エアコン)設置やICT環境の整備もこの段階で完了。
4.その後の継続的な機能強化
令和8年(2026年)2月:屋内運動場(体育館)への空調設備設置工事が完了
学校概要
- 施設名
- かほく市立七塚小学校
- 所在地
- 石川県かほく市木津61-1
- 学校規模
- 生徒数315人、学級数14学級(普通学級:12学級、特別支援:2学級)(令和8年5月1日現在)
- 建築面積
- 3,364㎡(増築部分:1,155㎡)
- 延床面積
- 6,989㎡(増築部分:1,843㎡)
- 敷地面積
- 18,241㎡
- 構造
- 既設部分(鉄筋コンクリート造)、増築部分(鉄骨造)
- 完成年
- 令和2年(2020年)10月
- 設計会社名
- (株)五井建築研究所
- 施工会社名
- 建築:兼六・タタミ特定建設工事共同企業体
電気設備:北菱電興・河北台電設特定建設工事共同企業体
機械設備:菱機・おりた特定建設工事共同企業体
- 監理者
- (株)五井建築研究所