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医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第11回)議事録・配付資料

1. 日時
  平成18年11月28日(火曜日)14時〜16時

2. 場所
  文部科学省ビル10階会議室(10F)

3. 出席者
 
協力者: 高久座長、福田副座長、荒川、大橋、小川、川さき、北村、佐藤、新道、水田、寺尾、名川、垣生、福井、南、吉田
総務省: 和田 裕生 総務省自治財政局公営企業課地域企業経営企画室長
厚生労働省: 栗山 雅秀 厚生労働省医政局医事課長
参考人: 中野 重行 国際医療福祉大学大学院教授 大分大学医学部創薬育薬医学教授

4. 議事
 
(1) 第一次報告(案)について
(2) 第二次報告(案)について
(3) 臨床研究に関するヒアリング

5. 配付資料
 
資料1   医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議名簿
資料2 「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」の第一次報告(案)に関するパブリックコメントの結果について
資料3 第一次報告の表現の修正について
資料4−1 第二次報告(案)
資料4−2 医学部の期間を付した定員の在り方について(論点整理ペーパー)
資料5 荒川委員資料(PDF:198KB)
資料6−1 中野参考人資料(PDF:223KB)
資料6−2 中野参考人資料
資料6−3 中野参考人資料(PDF:1,043KB)

 

○高久座長
 ただいまより、「第11回 医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」を開会します。本日は、第一次報告案に関するパブリックコメントの結果と第一次報告の表現の修正について、第二次報告案、臨床研究に関するヒアリングについての報告及び審議をしていただきます。
 それでははじめに、事務局から、本日の委員の出欠状況の報告と参考人の御紹介をお願いします。

○事務局(田中補佐)
 本日は、各委員の皆様方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、辻本委員、飯沼委員、松尾委員、吉新委員、吉村委員の5名が御欠席となっております。
 次に、今回から新たに本会議にご参加頂く委員のご紹介をさせて頂きます。
 東京大学医学部助教授、同附属病院 臨床試験部副部長の荒川 義弘委員です。

○田中補佐
 続いて本日臨床研究について御説明いただく参考人の先生を御紹介させていただきます。
 国際医療福祉大学大学院教授大分大学医学部創薬育薬医学教授、中野重行様でございます。

○高久座長
 それでは、事務局の方から配付資料の確認をよろしくお願いします。

○事務局(田中補佐)
 それでは、失礼いたします。
 お手元に資料の中で資料目次という1枚紙がございます。その資料目次も御参照いただきながら、配付資料の確認をお願いいたします。
 まず、資料番号1番は、本協力者会議の名簿でございます。1枚紙でございます。資料番号2番は、第一次報告案に関するパブリックコメントの結果についてということで、両面2枚、4ページの資料でございます。資料番号3番は、第一次報告の表現の修正についてというもので、1枚紙の資料でございます。資料番号4−1は、第二次報告(案)ということで、両面3枚、6ページの資料でございます。資料番号4−2は、これは前回の会議で配付させていただいた資料を改めて配付しているものでございますが、医学部の定員につきましての論点整理ペーパー、両面2枚、3ページの資料でございます。それから、資料番号5番、これは荒川先生の資料でございます。両面4枚、8ページの資料でございます。そして、資料番号6−1から6−3までが中野先生の資料でございます。資料6−1につきましては両面で3枚、5ページの資料でございます。6−2につきましては、両面で4枚、7ページの資料でございます。6−3につきましては、両面で10枚の資料でございます。それから、机上配付資料といたしまして、第一次報告(案)に対しますパブリックコメントの意見をまとめたもの、最終報告の検討課題にも挙がっておりますが、女性医師の復職支援でございますとか、あるいはその医師の派遣でございますとか、そういったほかにもいろいろなことを考えなければいけないのではないかといったような意見が多数寄せられたところでございます。それに対する回答といたしまして、第一次報告などにおきましても、一定の取組みについて記述をしているといったことも紹介させていただいた上で、最終報告に向けて引き続き検討していきたいといったような回答内容を主にしているところでございます。
 中には、例えば、1枚目の裏側、2ページでございますが、モデル・コア・カリキュラムの改訂関係では、がんに関する改訂につきまして、学生の負担が懸念されるといった意見もあったところでございますが、それに対しましては、下の回答にございますように、がんに関する教育の充実の必要性の観点から基本的事項を確実に修得していくことが必要ではないかといった回答、あるいはがんプロフェッショナル養成プランといった文科省の事業に基づいて、がん医療に携わる人材の育成に努めていきたい、そういった回答をしているものもございますが、基本的には今後参考にしていきたいという形で、文部科学省として回答していきたいと考えております。
 なお、御参考までに机上配付資料といたしまして、実際のパブリックコメントの意見などをまとめたものを配付しておりますので、御参照いただければと思います。
 続きまして、資料番号3番でございます。
 第一次報告の表現の修正についてというものでございます。
 この第一次報告の特に臨床研究の推進の部分につきまして、教育者・研究者養成方策の充実に関するワーキング・グループの委員などから、そこにございますような記述につきまして、いわば客観的な記述のみならず、主観的な記述が入っているといった意見、すなわちこの臨床研究の推進の記述につきましては、第一次報告の当初の案には入っておりませんで、委員の方からこの論文の伸びの違いといった意見がございまして、それをもとに事務局で文章をつくらせていただいたところでございます。
 そうした際に、論文の伸びといった客観的な表現に加えまして、いわゆる活力が高い、あるいは力が弱いといった主観的な記述をしてしまいまして、この部分につきましては、御指摘ごもっともでございますので、主観的な要素を排除いたしまして、客観的な記述にさせていただきたいと思っております。
 この第一報告案でございますが、このパブリックコメントを実施したという関係もございまして、現在、案がとれていないという状況にございます。そうした関係で、大学等に対しましては紙媒体としては配付しておりますが、冊子としてまだ配付していないという状況にございます。
 今回、このようにパブリックコメントをまとめ、回答をさせていただきますので、この資料番号の3番の表現の修正をした上で、第一報告案の案を取りまして、冊子、すなわち本にした上で、各大学に配付をさせていただきたいと考えております。以上でございます。よろしくお願いいたします。

○高久座長
 どうもありがとうございました。
 資料3の下の方、この修正の表現の方がよろしいと思います。
 それから、今事務局から説明がありましたように、第一次報告の案をとって冊子で大学に配付したいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、次に、第二次報告について、これは第二次報告案ということで、資料の4からですが、事務局の方から説明していただけますか。4−1と2ですね。

○事務局(田中補佐)
 それでは、失礼いたします。
 まず、資料番号4−1と4−2に基づきまして、説明をさせていただきます。
 まず、資料番号4−2番につきましては、これは前回、この会議に配付させていただきまして、御議論いただいた資料でございます。この資料の4−2の論点整理ペーパーをもとに、報告書体として事務局の方で文章化させていただきましたのが、資料の4−1でございます。
 この資料の4−1、この第二次報告案を本日、御議論いただいた後、次回、12月14日の次回会議におきまして、第二次報告としてとりまとめをできればさせていただきたいと考えております。
 それでは、資料番号4−1に基づきまして、説明をさせていただきます。
 まず、1枚目の1ページにつきましては、はじめに、ということで、第一次報告についても、冒頭に記述をしておりますが、いわゆる冒頭記述をしております。最初のくろひしがたにおきましては、平成17年5月以来検討を行ってきたということ、そして2番目のくろひしがたにつきましては、18年11月、本日、案を取るわけでございますが、11月には第一次報告をとりまとめたと。そして、第一次報告の内容についても若干の記述をしております。
 そして、3番目のくろひしがたにおきましては、残された課題について検討を行ってきたところであるが、このたび第一次報告において今後具体的に検討を行うべき課題としていた入学定員のあり方について、一定の議論の結果をとりまとめたので、二次報告として公表するといったことを記述しております。
 その上で、その次のくろひしがたでございますが、本報告に沿って、文部科学省を初めとする関係者において、必要な措置や取組みが行われることを求めたいとしております。
 そして、最後のくろひしがたでございますが、さらに残された課題、今日、委員、あるいは関係者、参考人の方から御発表いただく臨床研究も含めまして、残された課題については最終報告の取りまとめに向けて、引き続き議論を行っていくといった記述をしております。
 おめくりいただきまして、裏面2ページでございます。
 最初に、2ページ、3ページにおきましては、医学部の定員をめぐるこれまでの動向、あるいは最近の動向について事務局の方でまとめさせていただいております。
 まず(1)の我が国の医師養成制度といたしましては、最初のまるのところでございますが、医師国家試験の受験資格について、紹介などをさせていただいた上で、医師免許を取得するためには医学部の卒業が、一部例外を除き必須となっている。
 2番目のまるでございますが、そうしたことからその定員のあり方は医療政策や医師の需給などと密接なかかわりを持っているといった総論を掲げております。
 その上で、(2)におきましては、これまでの医学部の定員の取扱いの経緯を記しておりまして、最初のまるにおきましては、昭和40年代以降の、いわゆる大学医学部の拡充について記述をしております。
 2番目のまるにおきましては、昭和50年代以降の閣議決定でございますとか、厚生省の医師の需給、あるいは文部省の協力者会議に基づきます入学数の削減の動き、取組みといったことについて記述をしております。
 3番目のまるにつきましては、平成に入ってからの閣議決定、あるいは厚生省の需給の見通し、あるいは文部省の会議、平成に入ってからの入学数の削減に向けた動き、それについて記述をしております。
 おめくりいただきまして、3ページでございます。
 一番上のまるでございますが、そうした流れの中で、現状といたしまして入学定員が最高であった時点と比較して7.9パーセントの削減が実施されているという現状について記述をしております。
 そして、(3)最近の医学部の定員の取扱いを巡る動向といたしまして、これは前々回の会議で資料等に基づき、説明をさせていただいた内容をまとめているところでございまして、最初のまるにおきましては、平成17年2月から行われた厚生労働省の需給検討会の報告の流れ、そして18年7月には報告書をまとめたことを記述しております。
 そして、18年7月の報告書の内容を2番目のまるに記述しておりまして、その上で、記述しておりますが、特に入学定員に関しては、最後の2行でございますが、定員の暫定的な調整を検討する必要がある、そういったことが厚生労働省の今回の需給見通しに基づいて、いわゆるマクロレベルの問題とは別にミクロレベルの取組みとして提言されたということについて記述をしております。
 その上で、一番下のまるでございますが、ここでは、平成18年8月の新医師確保総合対策について記述をしでおりまして、いわゆる医師不足と認められる10県、そして自治医科大学において、暫定的な定員増が容認されたということを記述しております。その上で、下2行でございますが、大学の具体的な定員のあり方については、関係審議会において検討を行った上で、大学の定員増の申請の審査を行うこととされたといったことを記述しております。
 おめくりいただきまして、4ページでございます。この4ページ以降に医学部の今後の定員のあり方ということで、前回、御議論いただきました論点整理ペーパー、さらに前回の御意見を踏まえまして、定員のあり方について具体的な記述をしているところでございます。
 まず、(1)の基本的な考え方でございます。最初のまるにおきましては、僻地を含む地域での医師の確保が極めて困難になっていること。また、小児科、産婦人科などの特定の診療科での医師の確保が困難になっている。いわゆる医師不足の状況について記述をしているところでございます。
 そして、2番目のまるにおきましては、第一次報告で提言しているような取組み、そういったことによって地域別、診療科別の医師の偏在の問題への対応の充実を図ることが必要であるということを記述しております。
 その上で、3番目のまるでございますが、この医師の偏在の問題に対する対応としては、入学定員の増加は短期的には直接的な効果は見られないといったことを断った上で、また地域に必要な医師の確保の調整を行うシステム、そういったものも求められるといったことを断った上で、4行目以下でございますが、地域における医師の偏在の現状、あるいはこの問題への対応の必要性を踏まえれば、新医師確保総合対策で掲げられている緊急対策、これは定員以外のことも含めまして、厚生労働省、文部科学省、総務省が取り組むべき事項、医師の派遣でございますとか、キャリア形成でございますとか、そういった定員以外の事項の実施を前提として期間を付した定員増を認めることが適当であると記述しているところでございます。
 そして、その下のまるでございますが、国においては平成20年度からの入学定員増に必要な申請などに対象大学が対応できるよう所要の措置を講じる必要があるとしております。
 その上で、また、以下のところでございますが、定員増のみならず医学教育の改善など医師の養成・確保の充実を図るということも基本的な考え方のところで明記しているところでございます。
 その下の(2)、期間を付した定員増の具体的な要件のところでございます。
 最初のまるのところにおきましては、期間について記述をしております。厚生労働省の需給検討会報告書、平成34年に医師の需要と供給が均衡するといったことを踏まえれば、入学定員増の期間は平成29年度、収容定員増の期間は平成34年度までとすることが適当であること。
 あるいは、平成21年度以降からの入学定員増の申請などの場合も平成29年度までとすること。あるいは、定員増の申請に当たりまして、その廃止時期も明記することが必要であること。そういったことを記述しております。
 そして、2番目のまるにおきましては、いわゆる増員幅について記述をしております。特に、教育環境の維持という観点から、増員は入学定員当たり10名を限度とすることが適当であるとしております。
 そして、最後のまるにおきましては、今回の定員増につきましては、大学の取組み以前に県が奨学金の拡充など一定の措置を講じることが条件とされているということを踏まえまして、これは手続き的なことで恐縮でございますが、対象大学の申請などに当たっては、文部科学省に置いても対象県の取組みについて関係書類による審査、県が条件を満たしていることへの確認を行うことが必要であるということを記述しております。
 おめくりいただきまして5ページでございます。
 一番上の2行におきましては、医師不足の対象県におきましては、定員増の対象となる条件、奨学金などの拡充などの定員増の条件以外の取組みも含め、医師の確保、あるいは地域定着に関する取組みの充実、強化を期待するといったことも記述をしております。
 そして、その次のまるでございますが、定員の扱いについてまず基本的な考え方を記述いたしておりまして、医師の需給というマクロ的な数量調整の観点だけではなく、すぐれた資質能力を有する医師の育成・確保をいかに図っていくべきかという視点から検討することが必要であるといった基本的な考え方を記述した上で、今回の定員増に当たりまして、学部教育の改善を初め、医師の育成、確保に資する取組みについて一層の改善、充実が求められるということを記述しております。
 そして、その下に、前回の論点整理ペーパーでも説明をさせていただきましたが、大学に求めたいものというものについて3点記述をしております。通常の定員増の申請の審査に必要でございます教員組織、あるいは教育環境等の審査に加え、1点目といたしまして入学者選抜段階における取組みというものを記述しております。ここにおきまして、地域枠の設定の次に前回の論点整理ペーパーでは、記述をしておりませんでした、推薦入学における工夫というものを入れております。
 これは、前回会議におきまして、委員の方から例えば地域枠だけではなくて、推薦入学の数を増やすことによって、地元の高校生を増やすといった取組みの紹介がございまして、そういった意見を踏まえまして、推薦入学における工夫といったことも記述をしております。そして、地元高等学校との連携ということも記述をしております。
 そして、2番目といたしまして、学部教育における取組みの推進といたしまして、地域医療への感心と意欲を高めるためのカリキュラム開発、早期体験学習や臨床実習における地域医療と接する機会の提供を例示させていただいております。
 そして、3番目といたしまして、そうした学部教育の改善などに当たっての地域の医療機関との連携の推進、この3点につきまして学生を地域に定着させるための大学の取組みとして例示した上で、そういった取組みを考慮することが必要であるといったことを記述しております。
 そして、その下、なお書きにおきまして、こういった取組みにつきましては、今回、定員増の対象となる学生のみならず、学生全体に対して広く取り組むことが重要であるといったことを記述しております。また、定員増の対象以外の大学においてもこのような取組みの充実が求められるといったことを記述しております。
 そして、その下のまるでございますが、これは多少手続き的なことで恐縮でございますが、いわゆる国公私における取扱いや審査を統一的に行うという観点から、国立大学におけます大学設置学校法人審議会における「意見伺い」、あるいは公立大学における国私と同様の資料の提出を求めるといったことについて記述をしております。
 (3)におきましては、期間を付した定員増に当たって求められるもの、留意点等についてまとめておりまして、最初のまるにおきましては、期間を付した定員増というものが、一部の地域における医師の不足が深刻な状況に鑑み容認するものであり、全国一律に医師の養成規模の量的拡大を意図するものではないこと。またこれは2度目の記述になりますが、いわゆるマクロ的な数量調整の観点だけではなく、優れた資質能力を有する医師の育成・確保をいかに図っていくべきかという視点からの検討が必要であると、そういった基本的な考え方を記述した上で、このため、そうした観点から期間を付した定員増の実施に当たっては、定員増の対象大学を初めとして、大学の医師養成の取組みの改善・充実、そういったことが図られることが重要であるということをまず記述をしております。
 そして、2番目のまるにおきましては、定員増の申請等の有無、あるいは規模につきましては、対象大学の主体的な判断によるわけでございますが、そうした検討に当たりまして、単なる養成数の増大となることがないよう、教育内容の一層の改善・充実など質を高める取組みに十分留意することが求められるということを記述しております。
 そして、一番下のまるにおきましては、県の医師確保策等を踏まえるなど、県との十分な連携が必要であるということを記述しております。
 おめくりいただきまして、6ページでございます。
 上の方の4行におきましては、県との連携に加えまして、寄付講座の設置など、県による大学への支援の充実、こういったことについて記述をしております。
 また、大学が学生を地域に定着させるための取組みを行うに当たって、県の方が大学の教育内容の取組みに対して協力をしていくと。具体例といたしまして、大学や学生への地域医療に関する情報の提供、学生が地域医療と接する場の提供、そうした県の協力が必要であるといったことを記述しております。
 そして、その次のまるにおきましては、いわゆる卒後におきましても対象大学におきましては、県とも連携しながら、キャリア形成の支援について取組みの充実を図るといったことを記述しております。
 その上で、その次のまるでございますが、国においては今回の定員増の対象大学に対します必要な助言、情報提供、援助などに努めるとともに、財政的支援も含めた支援施策の一層の充実を図ることが必要であると、前回、委員の方から財政的支援といったことについても意見をいただいたわけでございますが、そうした財政的支援も含めたという形で今回明記をしております。
 さらに、また、以下でございますが、定員増の対象以外の県でございますとか、対象以外の大学に対します取組みの充実、あるいは支援についても検討することが必要であるという記述をしております。
 これは前回の委員の意見から対象大学以外の大学の取組みの必要性、あるいは定員増の対象大学を増やすことといった意見もいただいたわけでございますが、対象を増やすことは現時点では難しいわけでございますが、前回の意見を踏まえまして、こういった記述も設けさせていただいております。
 その上で、最後でございますが、まずは3行目当たりからでございますが、この定員の話だけではなくて、定員の扱いと合わせて、そのほかの取組みが必要であるということを記述しております。
 具体例として関係者が連携・協力して地域に必要な医師の確保の調整を行うシステムの構築、あるいは学部教育等の工夫改善、こういった定員以外の取組みも求められていることを記述した上で、最後に第一次報告で提言した事項に積極的に取り組むことを改めて期待したいということを記述しております。
 前回の委員の方々の意見の中で、いわゆる定員以外の取組みが必要であるといったことについて強調する必要があるのではないかといった意見をいただきまして、これにつきましては、最後のところで、第一報告で提言した事項の取組みについて、改めて期待する旨の記述を設けておりますし、全体的にそうした定員以外の取組みの必要性ということについては、各所で表現について配慮をさせていただいたつもりでございます。
 以上が、第二次報告案の説明でございます。よろしくお願いいたします。

○高久座長
 どうもありがとうございました。
 第二次報告の案についてどなたか御質問、御意見おありでしょうか。
 この第二次報告案は、主に学生定員の増加とそれに対する対応、あるいは教育をどういうふうにするかということになります。ですから第一次報告よりは幅が狭くなっています。
 どなたか、何か御意見おありでしょうか。非常に細かく述べられていますが。
 どうぞ、水田先生。

○水田委員
 これの下の委員会がもう1つありますよね。教育のことに関する。その中で、教育の時間に関しては出なかったのですか。私は、前にも言ったことがあると思うのですけれども、今の全部の医学部を見ていますと、もう大体9月ぐらいには終わるのですね。6年生が。そしてあとは卒業試験と国家試験用のことだけしかやっていない。それをする必要があるのかと。それはおかしいのではないかと私は思うわけです。医学部6年間と言いながら、現実としては5年半なのです。ですから、そういう教育が本当にいいのかどうか。
 卒業試験は、期間的に決まっていますからそうですけれども、国家試験に対して2カ月も3カ月も時間を割かなければいけないという、国家試験の検討もしてあるとは思いますけれども、果たしてそれが必要なのかということをもう少し検討していただきたいなと思います。

○高久座長
 これは前にも北村委員から問題提起されました。
 ほかにどなたか。よろしいですか。もし、あまり御意見がなければ、ヒアリングの方に移りたいと思います。よろしいですね。
 それでは、臨床研究に関するヒアリングということで、荒川委員と中野教授のお二人から御説明いただきますが、お二人の説明を聞いてから質疑応答を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最初に荒川委員の方から御説明いただけますか。よろしくお願いします。

○荒川委員
 東大病院臨床試験部副部長の荒川と申します。改めてよろしくお願いいたします。
 もう皆さん御存じの方も多いとは思いますが、一度少し全体をレビューさせていただいて、その中でまた問題点を整理させていただくという趣旨でちょっと資料を用意いたしました。
 まず、めくっていただきまして、日本の創薬・育薬研究の現状ということで、横軸に基礎研究、臨床研究、育薬研究、育薬研究と申しますのは市販後の研究というふうにお考えいただけたらと思います。
 それから、左側に実施主体であります企業、あるいは研究者、医師というふうに書いてあります。
 基礎研究につきましては、もう御存じのように企業でもあるいは研究者の方でも比較的しっかり日本はできている方だと言われています。ただ、臨床研究になりますと極めて現状としては遅れているということは否めません。
 治験においては、認証認薬問題等で、もう既に御存じかとは思いますが、治験は海外が先行している。日本は平均して4年遅れていると言われています。それから、昨今では、その治験もマルチナショナル、あるいはグローバルに行われるようになってきまして、諸外国ではその割合は約半分になっていると言われています。日本では、露骨な日本ははずしが起こっていまして、ほとんど進んでいない。ますます危機的状況になっているのが現状です。
 それから、その下にあります。トランスレーショナル・リサーチ、TR、これも文科省等で進めているところでありますが、まだまだ研究者の方がノウハウとか、支援する組織がないということで、薬事法等のいろいろ制度上の問題もありまして、そういったことが整備されておりませんで、これもなかなか難航を極めているという状況です。
 それから、基盤整備の遅れとありますが、臨床研究の段階では、いわゆる臨床研究基盤というのが、整備が大幅に遅れていまして、これは教育に対すること、あるいは支援に関すること、これはまとめて後でもう一度お話しします。
 それから、その横にあります臨床情報基盤ですが、これは市販後等で安全性情報も含めて、今、電子カルテとか、診療情報システムとか、かなり電子化が、医療機関には進んでいるのですが、それを有効に活用する方法がまだなされていない。これを理想的には国家レベルで、より有機的に使っていけば、そういった統計情報が医療行政とか疫学研究、それから臨床試験の基礎データ、そういったことにも使えます。それから、先ほど言いましたように、安全性情報等でいきますと、リアルタイムに安全性情報を収集するということが可能になってきますので、そういったシステムを国家レベルでやっていかなければいけない、そういったことが極めて遅れています。北欧等の一部の国ではそういったことが始まっていますので、日本もやらなくてはいけない。
 それから、育薬研究のところですが、これはかつて大分前のことですが、公正取引上の問題もありまして、企業が自粛している、もう1つは、市販後に行う臨床試験等は、GCPに則らなければいけないというような一部の誤解もありまして、それでそういったこともあって、この辺が全然進んでいないという状況です。
 次のページにいきまして、臨床試験の枠組、今度は臨床試験という観点から見ますと、臨床試験の目的は大きく分けて2つあります。1つは、左上の研究開発、新しい医療技術の開発です。それから、右上にありますように最適な医療の提供に必要なエビデンスの収集です。
 まず、研究開発の方を見てみますと、大学等では基礎研究、あるいは診療上で得られた新しい治験から、自主臨床試験が始まって、それがうまくすると企業主導の治験、医師主導の治験という形に結びついて研究開発に行きます。
 これは東大病院を例にしますと、昨今ちょっと医学部の方でまとめた資料があるのですが、約2ページにわたるぐらいこういったことを例示することができます。もう既に承認申請まで行っているものもあります。
 ですから、こういったことをやっていく上で、自主臨床試験の質を上げないことには、有効な効率的な開発ができない。また、大学等の知的財産も守れないというような状況になりますので、この辺もしっかり質を上げることをやっていかなければいけないと思います。
 それから、最適な医療の提供ですけれども、治験から得られる情報は限られた情報でしかありません。よくがんの領域では言われておりますように、市販後の研究が非常に重要です。がんの場合は、集学的療法と言われていまして、薬物治療も複数の薬剤を使いますし、あと手術、放射線治療といったものを組み合わせて、どれが最適かと。どれも1つずつは決して治療効果は高くありません。そういったものを組み合わせて、どうやって治療効果を上げていくかと。これは大学の医師が中心としてやっていくべきことなのですが、まだまだそこのところはボリューム等十分ではないというのが現状です。
 次のページに行きまして、臨床試験に関する規制です。
 日本、アメリカ、EUと比較してみますと、治験に関しては、これは国際的なハーモナイゼーションが進みまして、どれもGCPが適用されています。それ以外の研究者主導の自主臨床試験についてみますと、米国、EUの方はもう既にGCPが適用、あるいは準用されています。日本においては、ようやくこの2003年に文科省、厚労省で出しました臨床研究に関する倫理指針が適用されるのみです。これはヘルシンキ宣言に個人情報保護法の趣旨が加わったという程度のものです。
 しかし、先般、御議論もあったようですが、ランセットとかニューイングランド・ジャーナルメディスンといったそういった一流誌に載せるためには、やはりそういった国際的なスタンダードを自主的に運用していくことが求められる時代だと思います。そして、信頼性の確保もやっていかなければいけないという時代であります。
 次の臨床研究の基盤のところのさんかくの説明をさせていただきます。
 これは太線で大きく分けた、上の方のさんかくですけれども、これが個々の研究を直接的に支援する、大学医療機関等の枠組だと思っています。
 そのうちのまず左から、教育、臨床情報基盤というところについて御説明いたしますが、臨床研究に関する教育ということに関しては、現状としては皆無に近いというのが現状です。もうこれを何とかしなくては、この研究者も育ってこない、ノウハウも育たない。
 それから、先ほどの臨床基盤というのも現在では各診療科においてマニュアルでつくっている情報データ。手入力でやっている情報データベースというのがもうやっとであります。これを病院レベル、あるいはもっと大きなレベルで統合して利用していく。そのためのシステムとしてFDAとかアメリカの民間企業を中心に治験は中心にはなりますけれども、Cディスクというデータ交換標準仕様の開発が進んでおりますので、日本でもそれを取り入れてデータ交換ができるようなシステムをつくっていかなければいけないと思っています。これはもう国家レベルでプロジェクトを組んでやっていくべきものだと思います。
 それから、真ん中の研究支援に関してですが、これは大きく分けて、研究事務局を支援するデータセンターです。データマネジメントとか、あるいは生物統計に関する統計解析とか、そういった支援部門がやはり必要です。医師だけではなかなか質の高い研究を遂行することはできません。それを支援する組織というのが必要です。
 それから、実際の臨床試験を支援するコーディネーター、これもやはり治験と同様、質の高い治験を遂行する上ではやはり必要になってきます。そういったコーディネーターを雇う資金等も実は現状としてはないという状況ですので、この辺は研究費等も配慮していただく必要があろうということです。
 それから、次に監視と書いてあります。倫理委員会とか治験審査委員会のことだと思ってください。
 これは、研究の質、臨床研究の質を保つ、ゲートキーパーです。これもちゃんと質を保てるように機能してないと意味がないので、この辺もちゃんと整備していかなければならない。比較的どの大学も倫理委員会等はもちろんあると思いますが、それに対する教育とか質の確保というのは現状としてはまだ十分ではないと言われています。
 この3つをもうちょっとわかりやすく言いますと、一番左が臨床情報基盤というところが、臨床研究の種をつくるところ。種がないことにはどうしようもないと。それから、真ん中のところはそういった臨床研究を育てるところ。種に上手に水をまけば、育っていくということです。ただ、やはり質をコントロールする必要があるということで監視ということです。
 この3つはやはりバランスよく育っていかないと、質の高い臨床研究というのは、活性化と質の高いものを保つことができないということになるかと思います。
 それから、もう1つ、下に書いてあることですけれども、もっと幅広く視野を広げてみますと、そこには行政、学会、産業界、それから、国民、マスコミというレベルの支援が必要になってきます。
 まず一番左のところですけれども、やはり研究者の動機づけ、インセンティブの問題がやはり大きいです。
 臨床研究に関しては、この辺もっと積極的にやっていくために学会認定とか、あるいは業績評価でどんどん臨床研究の業績を組み入れていただくという、より高く組み入れていただくというようなことをやっていただきたいというふうに考えております。
 それから、国民の理解もなかなかまだまだ進んでいないと。臨床試験ということに関しての漠然としたイメージが決してよくないところもあると思いますので、そういったところ。
 それから、現在使われている医薬品、医療機器が、諸外国の方のデータをもとに日本の国民が恩恵をいただいているということも認識していただかなければいけないと思います。そういった背景もあります。
 それから、次の産学官の連携ですけれども、産学官連携とうたわれてはいますが、臨床研究の段階では、なかなか実はこれも進んでいないのが現実です。お金のことに関しても、財団等を通じて、ちょっと聞こえは悪いですけれども、マネーロンダリング的に少し国とか民間から少しお金が流れてきてとなっていますが、それはやはり現在の科学研究費補助金が非常に使いにくい。臨床研究には向いてないという側面があって、そういうふうになっているというふうに私は認識しておりますけれども、その辺の使いやすさ、臨床研究は人が中心ですので、人が使える、やはり人材が雇える、あるいは本当にこういったデータセンターとかそういったところに支払えるお金が必要になってくるのですね。そういったことがちゃんと使いやすくなっていなければいけない。
 それから、トランスレーショナル・リサーチをやるにしてもノウハウがない。これはやはり人材交流が一番手っ取り早いのです。民間等から人に来ていただく、あるいは規制当局から人が来ていただく。そういった場を提供するのはやはり大学だと思っております。大学病院というのはそういう受け皿にはなり得るところですので、ぜひそういうやりやすいシステムをつくっていただきたいと思います。
 それから、あとやはり積極的に大学がここの部分を支援していく必要があると思いますので、民間等の資金を導入して、こういったデータセンターの維持とか、そういったこともやっていかなければいけないと思います。
 それから、行政の方ですが、先ほど申しました研究費の充実についてですけれども、よく言われていますように、日本のライフサイエンス関係の予算は米国の10分の1以下であるというふうによく言われています。これではなかなか太刀打ちがきかないというのが現状かと思います。それから、先ほども言いましたお金の使い勝手の問題もあります。
 それから、規制緩和です。これは薬事法で、未承認薬、未承認の医療機器の製造・販売・授与が禁止されております。これが臨床研究をやっていく上で、特に医療機器等では非常に大きな問題になっております。
 それから、健康保険の問題も今後問題があります。補償制度、患者さんにボランティアとして協力していただく以上、やはり何らかの補償制度が国として立てていただけたらと思っています。
 次のページにいきまして、臨床研究推進方策ということで、ここにまとめたものがありまして、これは昨年治験のあり方検討会、厚労省の方の検討会ですが、その下に作業班が設けられまして、その作業班の中に6つほどのトピックスがありまして、6番目のトピックスが研究開発の推進ということで、実は私がそのまとめ役をさせていただいて、製薬協、それから米国研究製薬協、それから欧州製薬団体連合会、医療機器の団体、そういったところから代表を出していただきまして、こういった案をつくりました。この案そのものは日の目を見ることはなかったのですが、ちょっとこの案を少し使って御説明させていただきます。
 一番右側の細かくいっぱいあるところ、これは行政側に努力していただいて、主に厚労省になりますけれども、ぜひ制度改革をやっていただきたいという部分です。
 それから、左側の方ですけれども、これは大学とか大学病院が中心になって、この辺を推進して、それに対して、ぜひ国や産業界が支援をしていただきたいと、そういう側面のところです。
 まず、右側の臨床研究の環境整備、制度のお話をさせていただきますと、臨床情報基盤センターは先ほど申し上げたとおりです。これは例えば厚労省関係ですと、公衆衛生院とかそういったところが中心になっていただければと思いますが、これは大学病院がやってもいいことかと思います。
 それから、薬事法の改正、先ほど申し上げたとおりです。やはり未承認薬、未承認医療機器を使った場合は、安全性とか品質とか、そういったことが確保されるべきなのですが、現在ではそれに対するガイドラインは全くありません。
 それから、アメリカ、欧州では未承認薬、未承認医療機器、あるいは適用外で使うお薬等に関しては、その臨床試験を行う場合は、FDAなり、欧州の方でも規制当局の方に届出をする必要があります。これはアメリカでは、IND、Investigational New Drug Exemptionという形になっています。これをして一定期間、30日程度をおけば、何もなければ始めていいよということになって、そこは1つのゲートキーパーになっています。イギリス等にも同じような制度があります。これが日本には全くありません。
 それから、次のICH−GCP、ICHというのは国際的なハーモナイゼーションをする会議のことですが、そこで議論された日本、アメリカ、EUの共通のGCPがありますので、先ほど言いましたように日本も臨床研究に対しても、GCPを準用して質を保つということを積極的にやっていく必要があります。
 それから、IRB、これはInstitutional Review Board、倫理委員会、あるいは治験審査委員会のことを指しています。これも日本では幾つIRBがあるかわからない状況です。ですからこれも登録、認証等をして、それからそれと倫理委員に対する教育プログラムの提供とか、それの必修化とか、そういったことも今必要だと言われています。これが品質を確保するゲートキーパーであるという問題です。
 それから、特定療養費問題、これは混合診療の問題で、治験に関しては、保険等の混合が認められているのですが、治験以外の臨床試験に関しては、実は保険行政上は認知されていません。全く認知されていません。
 それから、健康被害補償制度も特にございません。
 そこで、この図の左側の方を簡単に説明します。
 左側は、大学、大学病院が中心になってやることですけれども、やはり教育等が十分でない。特に、生物統計家が不足していて、気軽に生物統計について相談できる専門家がいないというような状況では、なかなか質も確保できません。こういったところはやはり臨床研究をやっていく上で、やはり専門の講座を設けてやっていただく必要があると思います。現在、ポストを増やすということはタブーに等しいかもしれませんが、ぜひお考えいただかなくてはいけないことだろうと思っております。
 それから、AROと申しますのは、下にちょっと書いてありますけれどもAcademic Clinical Research Organizationのことで、臨床試験の支援をすると、研究者の支援をする部分です。単にデータマネジメントとか、生物統計とかそういったことだけではなくて、教育とか、それから研修とか、そういったことも一緒にやるのがこのアカデミックといわれているゆえんです。これはアメリカ等では、デューク・クリニカル・リサーチ・インスティチュートとか、ハーバードだとか、有名な著名な大学にはこういった機関を置いて支援をしております。
 こういったものをやって、どこの大学も本当に必要かというのはもちろんあるかと思いますので、主要なところには置いていただいて、やはりここを核としてどんどん養成していかなければいけないと思います。
 これもやはり専任スタッフ、それを専門とする講座というのがやはり必要になってくるのではないかと思っております。
 この赤丸で示したところに関しては、教育プログラムということで少しちょっと次のページにまとめさせていただきました。臨床研究に必要とされる基本的知識ということでまとめさせていただきました。
 対象は、医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師等になります。基本的な事項としては、大きく言えば科学性、倫理性、信頼性に対しての項目になりますけれども、具体的な項目を挙げますと、臨床研究・臨床試験の必要性。それから、医薬品・医療機器の研究開発のステップ。臨床研究に適用される倫理指針・規制。それから、4番で、倫理審査・インフォームドコンセント。5番で、臨床研究・臨床試験のデザインと限界。6番、安全性報告の義務。7番、臨床研究の立案、文献検索の演習、Plan-Do-Seeの考え方。8番として、生物統計に関する基本的知識と演習。9番として研究報告書のまとめ方。10番として信頼性の確保、品質管理の基本的知識、記録の保存。これは昨今基礎研究でもよく言われている部分です。それから、11番、臨床試験の登録・公開、透明性の確保。こういったことが今必要になってきております。
 最後のページになりますけれども、医学、薬学教育への臨床研究の組込み。これは中野先生からもお話があると思いますが、やはり必修科目、あるいは選択科目として早い段階で、共用の段階でもいいかと思いますので、入れていただいて共用試験とか、国家試験とか、あるいは学会認定とか、そういったところで入れていただかないとなかなか学生は勉強しませんので、そういった試験の中にも入れていただきたいと思います。
 それから、社会人養成コースとか、公開講座とかいったものもどんどん充実していく必要があります。それから、専任講座の設立と教員の養成、これも現在は指導する側もまだまだ薄いという状況になっていますので、そういうところで養成していかなければいけない。
 それから、先ほど言いましたAROでの臨床実習、大学院生、レジデントを受け入れていくと、こういったことになるかと思います。以上です。

○高久座長
 では、引き続いて、中野先生の方から御説明よろしくお願いします。

○中野参考人
 中野です。よろしくお願いいたします。
 私の資料は、6−1と6−2と6−3ですけれども、6−1に基づいて御説明したいと思います。6−2については、これは治験の活性化、5カ年計画へ向けての調査活動で、その結果の概要、医療機関の治験実施体制に関する現状調査班の膨大な資料がございますけれども、それの概要版でございます。これは後で御覧いただけたらと思います。
 それから、資料の6−3ですが、これは平成14年度に文部科学省の予算で米国とは限りませんけれども、この年は米国に行きまして、特に臨床試験をよくやっている施設を8つほど回りました。そのときの報告書です。
 ちょっと一言だけお話ししますと、日本では治験にスポットライトが当たっておりますけれども、向こうでは、治験が特に目立つということではなくて、臨床研究、人間を対象にした研究そのもので考えていまして、その中に治験も含まれていると、そういう感じが非常に強くいたします。日本は治験のところだけが突出した感じがいたします。それは歴史的にそうなっているので、ちょっと後でそのことにも多少触れたいと思います。
 それでは、資料6−1を御覧いただきたいと思います。
 1ページの右上ですけれども、これはもう大胆に大きくまとめてしまったのですが、明治以来、最初イギリスの医学を導入しようとした部分もあるのですが、途中でドイツ医学に切替えております。そこで基礎医学が重視されてきたということがベースにあると思います。
 御承知かと思いますけれども、臨床試験の基本的な考え方、比較試験だとか、無作為化、そういう方法はイギリスで誕生しております。イギリス医学をバランスよく日本に導入しておれば、あるいは今のようなことにはならなかったのかもしれないなというような、そんな感想を持っております。
 臨床医学研究の評価が医学部の中でも比較的低かったと思います。したがって、臨床試験の実証、これは社会的使命、医師の社会的使命だと思いますけれども、それを社会的使命と考える医師及び制度が育っていないというのが現状であろうと思います。今、いろいろ苦労しているのは、過去のつけを今払おうとしている、そういうことだろうと思います。
 それから、3番のところには、薬物治療を成功させるためには、医師がどういうことをすべきかというのをちょっと挙げてみましたけれども、これをちょっとまとめたものが、その右の4です。薬物治療に関する医師の社会的使命、5つのステップとしてまとめましたけれども、当然のことながら、診断があって、これは治療法に結びつく診断というのがあって、それから薬を使うわけですが、その薬というのは有効性と安全性が確認された、臨床試験で評価されたものでないといけない。つまり2番のところは治験の段階になります。そういう標準化されたものを使って、3番の適切な薬物投与設計をし、それを4番、評価する、実際に使った薬物が効いているのかどうか。本当に人類の健康に役立っているのかどうか。
 つまり個別の患者でも観察というか診察してフォローすることは必要ですが、同時に集団として見る必要があります。これが臨床試験のとても重要なところだと思います。
 それから、5番で、その結果、評価した結果を次のステップへフィードバックをする。こういうことがとても重要だろうと思います。
 次を見ていただきますと、それをちょっと図にしてみたのがこれです。
 今の世の中は、Plan-Do-See Cycleで動く時代になって、Plan-Do-Seeということを非常に重視するようになってきました。
 では、合理的な薬物治療を考えていく場合に、Plan-Do-Seeというのは何なのだろうかというのが図の5になります。その枠の中に囲ってある、例えばPlanのところでは、適正な薬物の選択であり、合理的投与計画の設計である。こういうことができるように医師を教育する必要があると思います。それから、Doのところでは、適正な処方ができる。かつ服薬指導ができる。これは薬剤師と協力してするということになります。
 問題は、Seeを本当にしているのだろうか、PlanDoはある程度教育の中に入ってきているとしても、そのSeeのところが欠けているのではないかということをこの図で表したつもりです。
 つまり私どもは、薬を選んで使います。その結果がどうなのかというのは、左のSeeのところにつながって、評価ですが、これは患者個人の診察でフォローすることも必要ですし、同時に患者集団での評価が必要です。Population-based medicineと言いますか、Populationを対象にして初めて評価できるということです。
 それから、もう1つは、Planするために薬の標準化、これが有効性、安全性にかかわってきますが、新しいよりよき薬の開発のところが治験であり、創薬であり、それから市販後のものは育薬ということになろうと思いますが、いずれにせよ、そのベースにある基本的な考え方は臨床試験の考え方であって、その臨床試験を実際に応用する、ここのところが現在の医学教育でほとんど欠落していると言っていいのではないかと思います。つまりPlanDoで、Seeをしていないのではないかと、そういう感じがいたします。
 それから、6番目の図ですが、Evidence-based medicineというEBMというのはこういった医薬品に関して言えば、有効性、安全性、または市販後のものでは、有用性を見ようとする、その確認のためには臨床試験も必須になっているということです。
 それから、7番のところに行きますが、治験は臨床試験の一部であり、臨床試験は臨床研究の一部で、上から見るとちょうどそういう感じになるのですが、臨床研究はここでは人間を対象にした研究という意味で使っております。これをちょっと斜めから見ると、こういう構造になっていると思います。
 人間を対象とした研究の中で、さらに前向きのある介入をして、その介入の効果と言いますか、影響を調べるのが臨床試験で、その中で、厚生労働省に承認してもらう医薬品と医療用具、医療機器を承認してもらうための認証試験が治験、こういう構造になっていると思います。
 そうなのですが、我が国は治験のところを法制化していますが、つまり人間を対象にした全体が法制化されているわけではありません。3階のところは非常に充実してきたのですが、2階、1階がまだがたがたしていると。つまり構造物を3階から建てているという、非常に難しいことをやっていると思います。
 それで、これは何のためにするかというのは、その下に医療とか基礎研究、Ground Floorにちょっと書きましたけれども、医療をよりよくするため、患者さんに提供する医療の質を高めるために行なう行為だろうと思います。
 それから、8番目は治験で言われていること、臨床試験全体に通じますけれども、質と速度とコストです。これが整わないと国際的な連携、共同研究ができないということで問題だと思います。
 それから、次のページに行きまして、これは1997年にGCPが法制化されて、薬事法の中に入りましたが、それ以来私も関係してきたもので、いろいろな政策が行政の方でなされてきたもので、その幾つかを挙げております。
 確かにある程度そういった整備は整いつつあるのですが、なかなかまだ基本的なところが動いてないかなという気がします。じゃ、それはなぜかということなのですが、10のところにつきまして、治験の部分のみが法整備できている。そのほかのところはガイドラインという形で、先ほど荒川先生からもちょっと御指摘がありましたけれども、そういうことが現状としてございます。
 それから、米国はNational Research Actと、これは1974年に出ていまして、国家研究法というものがございます。これが出て、米国の臨床研究はそれまでいろいろ問題があったのですが、患者の保護、被験者の保護というのも非常に整備されるようになりました。その後、各大学に、先ほどの6−3を見ていただくといろいろ資料が載っておりますけれども、米国はほとんどの大学に臨床試験のセンターを持っています。これは国の予算が相当ここで使われております。
 日本は、12を見ていただくとおわかりのように、GCPと各種のガイドラインだけなのですね。私は?(クエスチョンマーク)が3つ書いてあります。臨床研究基本法のようなものが要るのではないかという気がします。
 それで、実は右下に科学技術基本法というのがあるのですが、これは1995年に超党派的につくられたものです。
 それで次のページを見ていただきますと、13のところ、臨床研究基本法というのはどんなものだろうかというと、こんなものになるのだろうと思います。被験者保護法とかいう発想があって、かなりの方が熱心に動いておられるのですけれども、被験者保護は当然のことなので、それだけではなくて、臨床研究者を育成するということがとても重要なことだろうと思います。これは国の仕事でもあると思います。
 そうすると科学技術基本法では、科学技術を日本で推進しなければ日本の国力は駄目になるというので、科学研究者を育成するということを国の責務として法律にうたっています。先ほどお話ししたように超党派的なものとしてでき上がっています。それに相当するようなものが臨床研究でもいるのではないかなと、前からこういうお話をしているのですが、なかなかこれは動きません。こういうものはやはり発想していかなければいけないと思います。
 それで、14の方に行きまして、なぜそういうことを言うかと言うと、先ほどの3階建ての図なのですけれども、上の方の治験はやはり規制が基本的な考え方がベースにあると思います。これは、製薬企業が依頼して行うものであるから、これは規制しておかないととんでもないことが起こるかもしれないと、過去そういう歴史的な問題もあったので、そういうことが基本的に考え方にあると思います。その規制の考え方が臨床試験、臨床研究のところまでずっと下りてきている。一方、基礎研究の方は、これは推進なのです。科学技術基本法もまさにそこは読んでいただくと、そういうことになっています。
 そうするとこの臨床試験のあたりは、国として推進するということをはっきりと認識しないと、規制という考え方でいけばいつまでもその研究者は育たないだろうというのが私の感想であります。
 それから、次の15、16ですが、これは現状での問題点を幾つかそこに挙げてみましたけれども、ここはちょっと飛ばしまして、次に改善策のところでまとめました。そちらの17、18で見ていただいたらと思います。
 この会は、文部科学省の会ですので、特に文部科学省も関係するかなというところにちょっとポイントを絞ってお話をしようかなと思います。
 17のところですけれども、まず1番ですが、臨床研究、臨床試験体制の整備、これはもう先ほど荒川先生からもお話がありましたけれども、公費臨床試験の促進が必要だろうと思います。臨床研究枠のようなもの。これはもう米国と比べたら圧倒的に国の予算の使い方が違います。米国はもう国策のようにして臨床研究をやっていると言っていいかなと思います。
 それから、先ほどの臨床研究基本法の整備、これは被験者保護法といわれるようなものと臨床研究者の育成、これを合わせたようなものです。これは厚生労働省の方に要望することなのかもしれません。
 それから、いつも思っていることなのですけれども、産学官民の協力システムづくり、治験を含む臨床試験の現状の問題点というのはいろいろなところで語られているのですね。いろいろなところで語られて、同じことが繰返し、繰返し語られています。それをピックアップして、それを政策に反映させるワーキング・グループというものが、責任あるものがつくられていないのではないかという気がします。ちょっときつい言い方ですけれども、今まで私は10年ほどやってきて、基本的なところは、システムづくりが十分にできていないのではないか、そんな感じがします。
 それから、整備ということで言いますと、ちょっとここには書きませんでしたけれども、欧米と比べて日本の特徴は、治験を例にとりますと、治験依頼者、製薬企業と医療機関の長との契約になっています。これは日本だけのことです。これは文化的にその方が責任がはっきりすると、そしてうまく行くだろうということでそうなっています。
 これを私はうまく利用して、欧米の場合は研究者、治験で言うと治験責任者と依頼者が直接の契約になりますが、日本の場合は病院長との契約です。そうするとこれがうまくこれを利用しない手はないのではないかという気がして、病院長との契約であれば、病院としてのセンター化をもっと効率よくできないかなという気がします。
 例えば、書類にしても、非常に多くの書類が各病院でバラバラにあります。これですごく時間をとられています。それから、治験の管理センターのようなものができましたけれども、これが書類を中心のセンターであって、依頼者が来ればワンストップですべてができる。そこにみんなが集まってきて一気にやってしまうという、ワンストップ・オフィスというような、そんな発想で動かしていかないといかんのではないかと、そんなイメージを持っております。
 それから、IRB、先ほど荒川先生が言われたように、私どもも調査を先日してみて、IRB委員の教育が一番なされていない。つまりIRBの中身がブラックボックスに入ったままで、IRBに審査を依頼して、最後はそこで審査してもらうという、そういう流れになっているのですけれども、IRBの中身そのものが非常に問題が残っているのではないか。つまり質のコントロールができていないのではないかということです。ここはこれからの課題だと思います。これはやっとそこに日の目を見えてきた、これから改善するということかなと思います。
 それから、18番目ですけれども、この3番のところが文部科学省サイドから言うととても重要かなと思います。医師・研究者・医療機関側の努力、それで臨床試験に関する教育の充実、コアカリキュラムに入れればいいという問題だと思うのですけれども、コアカリキュラムには少なくとも入るべきだろうと思います。入らなくても当然教育すればいいわけですけれども、コアカリキュラムにも入っていない。
 それから、CRC、これは治験コーディネーター、あるいは臨床研究コーディネーターという臨床試験あるいは臨床研究を支援するコメディカルスタッフですが、これは1998年から公的に我が国でも養成するようになりました。それで、大体延べで5,000人近くの者が、CRCの養成を受けている。ところが、この医療における位置づけが確立されていません。それで、CRCの定員が、わずかながらの定員化がなされたのですけれども、これは文部科学省だけではなくて、日本の医療機関全体でCRCの定員化と、それから医療機関を外部から評価するときの項目にこういうものは採用していただきたいと。そのように思います。
 それから、その次は臨床試験参加へのインセンティブ、これがないと。ないというか、非常に乏しいということがいろいろなところで語られてきました。つまり評価が十分にされていないのではないかと。これは、人事面での評価、例えば履歴書に臨床研究経験を記入するだけでも、特に臨床のスタッフを審査する、特に大学なんかはそうですが、そういうときには履歴書にそういう欄をつくるだけでも、一歩前進ではないかなと、そういう感じがします。
 それから、5番目ですけれども、これはとても重要だと思って、その次にそういった図をつくってみたのですが、創薬、育薬の医療のチームとしてのチームプレーができていないというのが我が国の現状ではないかと思います。
 皆さん、非常に真面目な方が日本は多いので、それぞれの集まりに行って、話をいろいろ聞き、ディスカッションすると、皆さん一生懸命になっているのですが、全体としてのチームプレーになっていないなというのが最近非常に強く思うようになりました。
 それで、今年の夏ごろから、創薬・育薬医療チームとか、創薬・育薬医療スタッフとか、こういう発想を我々は持って、我が国全体でよりよき医薬品、あるいは薬物治療を我々は確立していくのだという、そういう意識改革が必要なのではないかなと、そんな感じがいたします。
 そのチームプレーヤーは、図の19に一応書き込んでみました。こんな感じになろうかと思います。
 チームプレーが非常に難しいのは、それぞれの働いている場所が散らばっているから、見えにくいということだと思います。これを何とか今からやっていかんといかんのではないかという気がします。
 それから、最後ですけれども、臨床研究、臨床試験、これは被験者になる患者さんの協力が必要です。つまり市民の方々の理解と協力が必要です。何のためかと言うと、よりよき医療をつくっていく、安心できる医療をつくっていくということで、医療者と住民とが一緒になってつくっていくと、そういうことだろうと思います。
 そのために、臨床研究基本法のようなものがベースに必要なのかなというのは個人的な感想です。以上です。

○高久座長
 どうもありがとうございました。
 今日は、主に臨床研究、臨床治験のことをお二人の先生からお伺いしました。これを先ほどコアカリキュラムに入れるという問題がありました。もう1つは、大橋先生のワーキングで検討されている大学における研究・教育の充実という観点からということですね。
 それでは、お二人の御説明に、どなたか御質問、御意見おありでしょうか。
 私の方から、荒川先生にお伺いしたいのですが、この2ページ目に、大学に直接は関係ないのですが、国際的な臨床研究の日本はずしという問題です。前に別の厚労省の会議で国際的な共同研究、共同治験が随分進んでいるという話を強調されていたのですが、その後の新聞報道を見てみますと、日本は非常に少ない。時間と費用がかかりすぎるということが新聞に書いてありました。まさしくその様ですね。特に、いじわるをされているわけではないと思います。

○荒川委員
 まさしくコストとスピードと言われています。ただ、その分析がまだ立場、立場によって違いますので、一概にコストの問題を医療機関側だけに押し付けられてもちょっと困ったなという気はしています。
 と言いますのは、全体でアメリカの2倍とも3倍とも言われていますが、国内の大手の開発部長さんがおっしゃるには、いや、日本もアメリカも変わりませんよとおっしゃる方もいます。
 結局、どの試験のデータをもって比較したかによっても違いますので、それで一概に高い、高いと言われてもちょっと困るところがあります。
 ただ、一般的に言われていますのは、CROという臨床試験の開発の支援をする機関のコストが高いとは言われています。それから、もともと人件費が日本は高いですから、それからモニタリングとか、品質保証に対して、日本人の性格と言いますか、重箱の隅をつつくようなことを規制当局もあるいはモニターさんという品質管理を担当する方も、それからCRCもみんなそれをやっているものですから、もうちょっと必要以上の品質管理をやっているのではないかと言われて、いわゆるオーバークオリティ問題というのがあります。ですから、そこが1つです。
 それから、やはり少数例、多施設という問題がもう1つ大きな問題としてあります。これをまとめていくことが今課題とされています。これは費用アップ、コスト高につながっていきますので、これを大学病院としてもどうやって奨励、集積していくかということが1つの課題になっています。御存じかと思うのですが、国立病院機構の方は、機構本部の方に推進室を置いて、様式等も統一して、矢崎先生が中心になってやってらっしゃいます。
 ひるがえって大学病院の方は、実はこうこういった、私ども臨床試験部とか、いろいろな名前でありますけれども、そういったところを横に連絡するような連絡協議会というのが実は存在しておりませんので、こういった問題もいろいろな形でシェアして、あるいは協力してやっていくということが、実は必要なことだとは思っております。

○高久座長
 どうもありがとうございました。
 どうぞ。

○福井委員
 私もここに書かれてあることは、本当に賛成いたします。ただ、この会議、教育という視点で見ますと、目的は臨床研究を今後発展させるにはどういう教育をしたらいいかという話になると思うのですが、私は二十数年来、アメリカで見てきて、本当にこうなればいいなと思うのですが、ベーシックには、私自身は、公衆衛生大学院は日本にはないことが非常に大きな問題であって、そこで疫学者だとか、生物統計者、いかも医学部の出身者ではない人たちもそこに来て一緒に教育を受けると。そういうシステムが本当に必要だと思っています。
 ちなみに京都大学では、2000年に公衆衛生大学院を木谷医学教育課長のときにつくっていただいて、その後、データ・マネージメントセンターといって、2001年にEDM共同研究センターというのをつくって、大規模に臨床試験をやってきたのですけれども、臨床研究で、しかも薬に特化したことだけをどこかにつくるのではなくて、薬も含めたいろいろな臨床研究ができるようなそういう人材育成とシステムづくりという視点で考える必要があるのではないかなと思いました。

○高久座長
 中野先生の御意見もそうですが、私はずっと臨床にいました。けれども、臨床研究を特に軽んじているわけではないのですが、日本では臨床研究がやりにくい。動物実験の方がはるかにデータが出やすい。臨床研究は福井先生がおっしゃったように統計の専門家がいないと、一流の雑誌に載せられる様な論文が出来ない。そのことがかなり大きな障害になっていると思います。お金もかかります。基礎研究の方が結果が出やすいというのが一番大きな理由で、臨床研究は重要だと私たちはずっと思ってきました。

○大橋委員
 私どもの委員会、教育者、研究者育成のところでも、今福井先生が言われたいわゆる治験ということのみならず、人を対象とした臨床研究というのを今後日本の中でどのように発展させるかという視点から、ちょっとお尋ねしたいと存じます。臨床系の大学院の中で、今言ったように、臨床家として持っていなければいけない、臨床治験をやるときに質を確保していくために必要なカリキュラムで、ある程度のみんなに教育すべき問題と、オールラウンドのどの大学もやるのではなくて、ある程度限られた人材でチームをつくってやらないと、世界に太刀打ちできないのではないかという視点からと教育者、研究者の中で、特に臨床系の大学院の中で、どういうものが今まで不足していて、どういうものがみんなに与えるべき、どういうものが質確保のために必要なのかということについてご教示下さい。もう1つは、公衆衛生大学院という名前が出てまいりましたけれども、我々の中では、疫学のような教育をする者が減ってきたなど、いろいろ問題があったわけですけれども、そういう面について、どういうふうなチームをつくればいいのか、その辺について東京大学ではどういう御議論があるのかちょっとお願いします。

○荒川委員
 アメリカでは、IRB、倫理委員会の事務局が倫理に関する教育プログラムを提供して、あるいは国家レベルでも提供しておりましたけれども、まず研究倫理のこと、これは徹底しないといけない問題だと思います。日本はまだそこのことも十分にやられていません。東大では、倫理セミナーというのを必修化して、2年に1度受講していただくことを始めています。これは平成15年から始めました。これはやはり最低限やっていくべきことだと思います。
 まずそこの中で、基本的な臨床試験の考え方を入れればいいのですが、安全性と人権の擁護ということをまずは確保しておかないといけない問題だと思います。
 かつて、いろいろな事件があって、アメリカにもありましたけれども、日本にもありました。それから、残念ながら東大病院にもありましたけれども、そういったことを教訓にやはりそれを生かして、確実にやっていかなければいけないということだと思います。
 まずそれが1点です。
 それから、チームとしてやっていく、これはどちらかと言うと研究者の自主的な支援ということだと思いますので、先ほど言いましたデータセンターとか、気軽に誰でも協力は得られるという既存に設置されたものが必要になってくると思います。
 これはやはり病院内に設置すべきもので、先ほど公衆衛生大学院というのは教育のレベルでは非常に重要ですが、実習のレベルでは病院の中にそういった支援センターを置く。これは動物センターとか、放射線センターがあるのに、臨床研究センターがないのはなぜですかと言いたいところなのですが、やはりそういったものをちゃんと充実して、誰でもそこにアクセスすれば指導が受けられる。やはりそういうものをつくっておかなければいけないと思います。
 いろいろなポストが、医師、薬剤師、看護師とかありますけれども、実はこういった統計家だとか、データマネージャーをするポストとか、そういったポストが病院の中には確保されていません。これを位置づける上でも、そういう経験のある人を雇う上でも非常にこれは大きな障害になってくると思います。ですから、そういった経験のある人をそれなりの処遇で受け入れられる体制をつくっていかないといけないし。ポストも用意してあげなければいけない。
 そういうことやって、先ほども言いました人材交流ができる形でやっていかないと、本当にトランスレーショナル・リサーチも有効な形でそれを戦略的に開発することができませんので、そういったポストを弾力的に運用するシステムづくりが必要だと思います。以上です。

○大橋委員
 それに関していいでしょうか。
 一番私が、創薬以上に問題だなと思うのは、医療機器だと思います。医療機器のほとんどが輸入品で、やはり医療機器の安全性というのを医学部のみでチェックして、治験に持ってくるのは非常に難しいということがあります。東京大学の場合には、医療機器についての倫理委員会と医療機器については別立てというか、どういうシステムで安全性の担保とか何かの評価をされて、どう評価するのか、その辺についてご教示下さい。

○荒川委員
 医療機器の治験に関しては、病院の治験審査委員会の方で通常の医薬品の治験と同じような形でやっています。これに関しては、厚労省の方の機構相談も受けていますので、それなりの安全性はある程度は議論されてきたと思います。
 多分、御議論のところは、治験以外の臨床試験、あるいは開発段階、本当にまだ探索的に研究を行っている医療機器の方だと思います。これは先ほど言いました未承認医療機器の問題がありまして、これも環境的に整備されていません。医療機器業界が非常に困っているところです。
 医療機器の場合は、改良型のものが多いで、これはもう医療機関が協力して一緒になってフィールドで改良を重ねていかなければいけないのですが、これがなかなかやりにくい。未承認機器のハードルがあります。それから混合診療の問題があります。これもなかなか認知していただけない。
 そういった問題がありまして、東大病院でどうしているかということですが、現在のところ医療機器の臨床試験は病院の治験審査委員会ではなくて、医学部の倫理委員会になっていますが、これはちょっとすみ分けをした関係上、そうなっているところです。
 それから、医療機器に関しては、なかなか安全性等を読めないという関係で、とりあえずそうさせていただいたのですが、今は品質確保という観点からすれば、治験審査委員会の方でも、審査していただこうという方向に今はなっています。
 まだまだ医療機器と一口に言っても、ステントもありますし。

○大橋委員
 治験や臨床研究の遂行にあたっては本邦と西洋との文化の違いというものも影響するかと思いますが、どうしょうか。

○中野参考人
 先ほど説明したように、まず臨床研究について被験者保護と研究者養成が法制化されているということが違います。また、欧米と日本との医療制度の違いということもあります。アメリカの臨床研究の現場では、被験者がインセンティブを感じることができます。やはり啓発というものが大事になるわけですが、参加してよかったというものを作らないとなかなか啓発に進めないということもあると思います。

○高久座長
 教育については、臨床薬理という講座が出来て、そこで取り組まれていると思いますが。

○中野参考人
 臨床薬理の講座を持っているのは10大学程度です。

○福井委員
 臨床研究が必要だと医学生に理解させる取組が重要だと思います。臨床疫学の講座で医学生に教えることも考えられます。北米では1年目から臨床疫学を教えています。

○福田委員
 今までは公衆衛生領域だったと思います。医学教育モデル・コア・カリキュラムには、臨床研究やヘルシンキ宣言等について記載されているところであり、共用試験でも出題されています。公衆衛生等の大学院の質を確保するには、やはり指導者であり、何も知らない人が教えるようなことがあってはいけない。また、IRBの患者への説明文書が分からないという問題もあり、なんらかの標準化も必要ではないかと思います。

○高久座長
 IRBの委員に対する統一的な教育が重要ですね。

○小川委員
 治験の空洞化に関しては、よく日本は質が悪いと言われるが、どうなのでしょうか。

○荒川委員
 質が悪いと言われる点は、CRCがついていない時代に、データの処理等が十分でないことから、言われたことがありました。今はあまり言われません。質よりも、今はスピードとコストが問題になっています。たしかに、少数例多施設による質の低下はあるかもしれませんが。日本は薬価が抑えられていて、国際共同治験など日本は後回しにされています。

○北村委員
 治験の事前登録について、治験番号をとっていることを雑誌に掲載する際の条件としてはどうかと思いますが。

○荒川委員
 2年前、国際的な11の編集者会議の声明で、登録を受付条件とするようになっています。UMINでは300くらい登録しています。

○北村委員
 日本の医学関係の雑誌の編集者会議はないですよね。

○座長
 英語の論文や臨床論文を補助金の条件とすることも考えられますね。

○荒川委員
 フェーズ1は厚生労働省も慎重です。フェーズ1の施設がないという課題もあります。

○荒川委員
 霊長類の試験はほとんどアメリカでやっているのが現状です。

○福田委員
 利益相反も考えなければいけません。なお、お手元にも資料としてありますが、平成17年9月の新時代の大学院教育の中央教育審議会答申では、89ページあたりですが、公衆衛生分野の大学院についても提言がされていますので、ご紹介させていただきます。

○座長
 それでは時間がまいりましたので終わりにしたいと思いますが、事務局から何かありますか。

○事務局(田中補佐)
 次回は12月14日に開催する予定で、第二次報告の最終的なとりまとめと臨床研修に関する有識者からのヒアリングを予定していますので、よろしくお願いいたします。

(高等教育局医学教育課)


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