(川瀬著作物流通推進室長) おはようございます。お時間が参りましたので、文化審議会の著作権分科会私的録音録画小委員会の第1回目の会合を開催させていただきたいと思います。本日は御多忙中の中、御出席いただきまして、本当にありがとうございました。
私は、著作物流通推進室長の川瀬でございます。本日は小委員会の最初の会議でございますので、後ほど主査を選出していただくこととなります。それまでの間、私が進行させていただきたいと思います。御了承、よろしくお願いいたします。
まず今回、委員に御就任いただいた方について御紹介をさせていただきたいと思います。資料の1を御覧いただけますでしょうか。資料の1が委員名簿でございます。石井委員でございます。
(石井委員) 石井です。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 井田委員でございます。
(井田委員) 井田でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 大寺委員でございます。
(大寺委員) 大寺でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 大寺委員は、森委員の御後任でございます。
(大寺委員) 御指導ください。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 大渕委員でございます。
(大渕委員) 大渕でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 華頂委員でございます。
(華頂委員) 華頂でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 河村委員でございます。
(河村委員) よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 河村委員は、佐野委員の御後任でございます。それから、小泉委員でございます。
(小泉委員) 小泉でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 河野委員でございます。
(河野委員) よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) それから、椎名委員はすぐお見えになると思います。津田委員でございます。
(津田委員) 津田でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 筒井委員でございます。
(筒井委員) 筒井でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 筒井委員は、新たに御就任いただいた委員でございます。それから、土肥委員でございます。
(土肥委員) 土肥でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 苗村委員でございます。
(苗村委員) 苗村です。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 中山委員でございます。
(中山委員) 中山でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 野原委員も間もなくお見えになると思います。生野委員でございます。
(生野委員) 生野でございます。よろしくお願いします。
(川瀬著作物流通推進室長) 松田委員でございます。
(松田委員) 松田でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 森田委員でございます。
(森田委員) 森田でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) なお、亀井委員、それから小六委員につきましては、本日は御欠席ということでございます。
続きまして、文化庁の関係者を御紹介させていただきます。
吉田長官官房審議官でございます。
(吉田文化庁長官官房審議官) 吉田でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 甲野著作権課長でございます。
(甲野著作権課長) 甲野でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 木村課長補佐でございます。
(木村著作権課課長補佐) 木村です。よろしくお願いします。
(川瀬著作物流通推進室長) 千代国際著作権専門官でございます。
(千代国際著作権専門官) 千代でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 黒沼著作権調査官でございます。
(黒沼著作権調査官) 黒沼でございます。よろしくお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) それでは、議事に入ります。まず、事務局より配付資料の確認をさせていただきます。
(木村著作権課課長補佐) それでは、恐れ入りますが、お手元の配付資料の御確認をお願いいたします。お手元資料といたしまして、議事次第、1枚物がございますが、この中ほどから下のほうに本日の配付資料一覧を示させてもらっております。順に確認をいただきます。資料の1、先ほど確認いただきました「委員名簿」でございます。資料の2ですが、「著作権分科会の議事の公開について」、資料の3、「小委員会の設置について」、そして資料の4、「私的録音録画補償金制度にかかる経緯」の資料、資料の5、「私的録音録画問題に関する検討の進め方(案)」の資料です。そして、資料の6でございますが、「私的録音録画小委員会審議予定(案)」でございます。
そのほかに参考資料といたしまして、8点ほどございます。まず、参考資料の1でございますが、「文化審議会関係法令等」の資料でございます。そして、参考資料の2でございますが、第7期の文化審議会著作権分科会委員、あと専門委員の名簿でございます。参考資料の3でございますが、著作権分科会の部会、さらに各小委員会の委員名簿でございます。参考資料の4でございますが、「文化審議会著作権分科会報告書」、平成19年1月のものでございます。そして、参考資料の5から参考資料の8でございますが、これまでの私的録音録画小委員会のほうでも配付させてもらった資料を、本日また、参考資料として配付しております。参考資料の5でございますが、「私的使用のための複製に関する制度の概要」の資料、参考資料の6でございますが、「著作権法第30条について(私的録音録画関係)」の資料です。参考資料の7といたしまして、「著作権法第30条の範囲外とすべき利用形態等について(案)」の資料です。そして、参考資料の8でございますが、「私的録音録画に関する補償措置の必要性について(案)」の資料でございます。あと、本日はこれらの資料以外に、お手元に報告書、冊子になっているものでございますが、各委員に私的録音録画と著作権に関する海外調査報告の といったものを配付させてもらっております。また、今期より新規に委員になられた先生方、4名の先生方のところには、同報告書の1につきましても配付させてもらっております。後ほど御参考としていただければと思います。
以上でございますが、漏れ等、ございましたら、事務局のほうへお申しつけください。ございませんか。ありがとうございました。
(川瀬著作物流通推進室長) それでは、次に、主査の御選出をお願いしたいと思います。選任方法につきましては、文化審議会著作権分科会運営規則の規定によりまして、本小委員会の委員の中から互選により選出をするということになっております。事務局としましては、前期の私的録音録画小委員会では中山委員に主査をお願いしておりましたので、今期も引き続き主査をお願いしてはどうかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
(異議なしの声)
(川瀬著作物流通推進室長) 御異議、ないようでございますので、中山先生が主査として選出されたということとさせていただきたいと思います。
それでは、先生に恐縮ですけれども、主査席のほうにお移りいただけますでしょうか。
それでは、これからの議事進行は中山主査にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
(中山主査) 中山でございます。御指名ですので、主査を務めさせていただきたいと思います。
昨年度から大変重たい課題を背負っておりますけれども、ぜひ今期には何とか片をつけたいと思っております。
それでは、まず文化審議会著作権分科会運営規則の規定に基づきまして、主査代理を指名したいと思います。私としては大渕委員にお願いをしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
次に、本小委員会の会議の公開の取り扱いにつきまして、事務局より説明をお願いいたします。
(木村著作権課課長補佐) それでは、恐れ入ります、配付資料の2を御覧いただけますでしょうか。議事の公開の方針についてでございますが、文化審議会著作権分科会の議事の公開についてにより、公開することとしております。この公開の方針につきましては、本年3月12日開催の著作権分科会でも既に了承済みのものでございます。この概略のほうを説明させていただきます。
まず、会議の公開につきましてですが、1のところでございます。この中にあります(1)、(2)、(3)を除いては、会議は公開とするというふうにしております。公開から除く場合というのは、(1)主査の選任その他人事に係る案件でございます。(2)につきましては、これは使用料部会というものが別途設けられておりますが、そちらの議事審議事項に係る案件でございます。そして、(3)として、上記のほか、小委員会主査が公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認める案件、その他正当な理由があると認める案件、こういったものについては公開の対象から外しますということです。
そして、2でございますが、開催案内等につきましては、1週間前の日までに文化庁ホームページのほうに掲載いたします。
そして、会議の傍聴、3でございますが、これにつきましては(1)から(3)までありますとおり、報道関係傍聴者、あと委員関係者、各府省関係者、そして一般傍聴者というふうに定めさせてもらっております。
そして、4でございますが、小委員会主査が許可した場合を除き、会議開始後の入室、撮影、録画、録音、その他の議事進行の妨げとなる行為は禁止することとしております。
そして、傍聴者が会議の進行を妨げていると主査が判断した場合には、退場を命ずるなど必要な措置をとることができるものとしております。
そして、議事録の公開でございます。6と7でございますが、議事録は、原則としまして発言者名を付して公開いたします。ただし、主査が公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があると認めるときは、議事録の全部又は一部を非公開とすることができるということにしております。
そして、7でございますが、この前項の規定により議事録の全部又は一部を非公開とする場合ですけれども、主査は非公開とした部分について議事要旨を作成し、これを公開するものとしております。
そして、会議資料の公開でございます。会議資料は公開とするということにしております。ただし、公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるような場合、その他正当な理由があると認めるようなときは、会議資料の全部又は一部を非公開とすることができるものとしております。
以上でございます。
(中山主査) ただいまの説明にありましたとおり、議事の公開の方針につきましては、議事の内容の公開を一層進めるという観点から、今期も原則といたしまして一般に公開した形で開催するということで、分科会において既に決定されておりますので、よろしくお願いいたします。
本日は、ここまでは人事に係る案件ということで、分科会決定に基づき非公開といたしましたけれども、これ以降の議事につきましては公開にしたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。
(異議なしの声)
(中山主査) それでは、これ以降、本日の議事は公開といたします。傍聴者の方がもしいれば、ご入場をお願いいたします。
(傍聴者入場)
(中山主査) それでは、本日は第1回目の小委員会の開催に当たりますので、文化庁の吉田審議官よりごあいさつを頂戴したいと思います。
(吉田文化庁長官官房審議官) この第7期の文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の開催に当たりまして、一言、ごあいさつを申し上げます。
まず、委員の皆様におかれましては御多用のところ、この小委員会の委員をお引き受けいただきまして、ありがとうございます。
私的録音録画補償金制度は平成4年の著作権法改正によって導入されたものでございますが、爾来、15年近くが、もう経過をしてきておるわけでございます。この間、様々な問題が、この制度につきまして御指摘もあったところでございますので、著作権分科会では昨年の3月にこの小委員会を設置して以来、私的録音録画の実態の変化や、あるいは新たなビジネスモデルの登場、そういった、この制度をめぐる環境の変化を踏まえまして、制度の抜本的な見直しや運用の改善などの問題につきまして、様々な角度から御議論をいただいているところでございます。昨年1年間の議論を通じまして、論点は相当くっきりとしてきたかとは思いますけれども、さらに残された課題がまだ残っているわけでございます。先ほど中山主査のほうからお話もございましたように、今期には何らかの結論をこの小委員会で得たいというふうに、私どもは期待しているところでございます。利用の円滑化と権利の保護の調和という、大変難しい問題でございますけれども、委員の皆様の一層の御協力をよろしくお願い申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
(中山主査) ありがとうございました。
それでは早速、議事に入ります。今回は第1回ということでございますので、初めに、本小委員会の設置の趣旨や所掌事項、これまでの経緯を含めまして、今後の進め方等につきまして事務局より説明をお願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) それでは、まず資料3を御覧いただけますでしょうか。
まず、この小委員会の設置根拠等ですが、この資料3の右肩にありますように、3月12日に今期の第1回の著作権分科会が開催され、その中で小委員会の設置について決定をされております。
まず、1を御覧いただきますと、小委員会につきましては法制問題小委員会、そして私的録音録画小委員会、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会、それから国際小委員会の四つの小委員会を設けるという決定がされております。
その中で、この2の(2)ですが、私的録音録画小委員会につきましては、私的録音録画に関する制度のあり方に関する調査研究ということで審議事項が定められております。
以上が、小委員会の設置の根拠でございます。
続いて、資料4を御覧いただけますでしょうか。資料4以下が、この小委員会に係る資料ですが、本日は初めて御参加される委員もおられますので、最初にこの問題の経緯等について簡単に御説明をしたいと思います。
まず、資料4が経緯ですが、家庭内における私的録音録画が、録音録画機器等の普及によりまして広範囲に行われていますが、これが権利者の利益を不当に害しているのではないかというのが、この私的録音録画問題の始まりでして、この解決手段については、私的録音録画については認めるけれども、一定の補償措置を導入するという、いわゆる私的録音録画補償金制度が導入されている国が多いわけです。
その補償金制度につきましては、我が国におきましては、まず1の(1)ですが、1965年に当時の西ドイツが初めてこの補償金制度を導入し、それを踏まえて関係団体からの要望等がございまして、当時は著作権審議会と呼んでおりましたが、著作権審議会の第5小委員会で検討をされたわけで。この第5小委員会は、昭和56年6月に報告書を出しまして、このア、イ、ウの理由によって、現在、直ちに特定の対応策を採用することは困難であること。基本的な合意の形成に向けて、今後、関係者で話し合いが進められることを提言いたしました。それを踏まえまして、著作権問題に関する懇談会というものが関係権利者団体、消費者団体、それから録音録画機器・機材のメーカーの団体、それから学識経験者によって設置されまして、ここで、いわゆるコンセンサスづくりが行われたわけでございますけれども、昭和62年4月に報告を出されまして、この問題を解決するための具体的な方策について、同懇談会において関係当事者の合意を形成するに至ることは困難であること、再度、著作権審議会において制度的対応について検討することを要請されたわけです。
それで(3)に参りまして、その要請を受けまして、改めて著作権審議会に第10小委員会という小委員会を設けて、この補償金制度の問題について検討がされました。これが昭和62年8月からですが、平成3年12月に補償金制度の導入について、関係者の合意が得られる見通しがついたことから、小委員会は次のような提言をまとめております。
それが下の ですが、私的録音録画は総体として、その量的な側面からも、質的な側面からも、立法当時に予定したような実態を超えて、著作者等の利益を害している状態に至っているというような認識が行われております。
また、次のページですが、国際動向等に照らしても先進諸国の大勢においては、私的録音録画について何らかの補償措置を講ずることが大きな流れとなってきており、ベルヌ条約の関係規定に示された国際的基準との関係において何らかの対応策が必要であるということを示しているとした上で、制度的措置を講ずるべきとしたわけです。その第10小委員会を踏まえまして、平成4年の著作権法の改正によって、この現行の私的録音録画補償金制度が導入されたわけです。
その現行法の見直しの経緯ですが、2の(1)を御覧いただきますと、法制問題小委員会において平成17年から18年にかけて検討されました。この検討の課題につきましては、このア、イ、ウですが、ハードディスク内蔵型録音装置等の追加指定について、それから、パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ、データ用CD−R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取り扱いについて、それから、ウまずア、対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式についての3点について検討がされたわけですが、その3点については、それぞれ、下のア、イ、ウにあるような結論が出ております。
現在の補償金制度について様々な問題点を抱えたままでは、現時点で内蔵型機器の追加指定は適当でないこと、次に、イの現行の補償金制度が内包している問題点から、汎用機器等を現行の補償金制度の対象とすべきでないとする意見が多数であった、ウ現行の指定方式について、指定までに時間がかかり過ぎること、指定制度は消費者は理解できず、制度の理解を妨げる原因となっているなどの指摘が行われまして、法的安定性や明確性の観点から、現行制度のもとでは現行方式は変更すべきでないという結論が出ております。
次のページでございますが、また、それに加えまして、私的録音録画については抜本的な見直し及び補償金制度に関しても、その廃止や骨組みの見直し、さらには他の措置の導入も視野に入れて、抜本的な検討を行うべきであるという結論が出ておりまして、その結論につきましては、平成19年度中には一定の具体的結論を得るように、迅速に行う必要があるとされました。
それを受けまして、前期の私的録音録画小委員会で平成18年3月から検討をしたわけです。その内容については、資料5の説明の中で紹介をさせていただきます。
それで、資料5を見ていただけますでしょうか。資料5は、前期の私的録音録画小委員会の議論を踏まえて事務局で作成した案でして、今後、この小委員会において、この案の方向に沿って御検討いただければどうかという事務局の案でございます。
まず、検討の手順でございますけれども、1を御覧いただきますと、まず第30条の範囲の見直しについてということで、第30条、つまり私的使用のための複製を認めている現行第30条の範囲の見直しについて、まず最初に議論をしていただければどうかと。それで、そこで範囲の見直しが行われますと、もう一つ下の の「なお」というところを御覧いただきますと、「私的録音録画問題は、著作権等の権利制限を認めた第30条の範囲内の複製が問題の前提であることから、一定の利用形態が第30条の対象外になれば、その利用形態に関する補償措置の必要性の議論は必要なくなるのは言うまでもない」ということで、まず現行の第30条の見直しを考えまして、補償措置の外に外すというものについて整理をしていただき、それから、補償措置の必要性と具体的な対応について、改めて議論していただくことでどうかと思います。
それで、まず、それが大きな流れでございますけれども、1の第30条の範囲の見直しについて、それでは少し時間をいただきまして、御説明をしたいと思います。
まず、昨年の事務局が提出しました資料を御覧いただきます。
まず、参考資料6を見ていただけますでしょうか。この参考資料6というのは、前期の私的録音録画小委員会の第8回のときに事務局で配付したものでございます。前回の小委員会のある意味で意見の集約、まとめの資料という位置づけでございます。
まず、「第30条の変遷及び制定趣旨」、これは事実関係を事務局でまとめたものですが、現行法では昭和45年に著作権法が全面改正をされまして、そこで「私的使用の目的」、それから「使用する者が複製」ということを要件として、無許諾かつ無償の複製を認めました。
この制定趣旨としては、「零細な利用であること」、「閉鎖的な範囲の利用であること」ということが、理由として挙げられています。
それから、昭和59年の改正によりまして、公衆よる使用を目的として設置されている自動複製機器を用いて行う複製については、第30条から外すこととしました。これは当時高速ダビング屋さんというのが問題になりまして、業者が高速ダビング機器を置いて、利用者に私的複製をさせるという形態の営業が行われたものに対応する改正です。
それから、平成4年の改正により、先ほど御説明した現行の補償金制度を導入したわけでございます。
それから、平成11年の改正につきましては、技術的保護手段を回避して行う複製について、回避の事実を知っている場合には、第30条第1項の適用をしないこととしたという規定でございます。この技術的保護手段というのは、コピープロテクションと言われているもので、技術によって著作物の複製ができないというような仕組みを指しています。本来、通常の操作方法をしていると複製ができないのですが、それをある種のプログラムや機器を使いますと、回避して複製ができることになります。その回避した複製について、仮に利用者が私的利用の目的をもって複製したとしても、それは私的使用の複製には該当しないというような改正をしたわけでございます。これが現行法の第30条の流れでございます。
それから、3ページのところの「第30条第1項の範囲の見直しの必要性」というところでございます。
著作権制限のあり方につきましては、利用実態の変化に即して、ベルヌ条約等における、いわゆる「スリー・ステップ・テスト」の基準に照らして検証し、必要に応じて見直しを行うことが求められるということでございます。スリー・ステップ・テストといいますのは、これはベルヌ条約で著作者に複製権という権利を基本的に認めつつも、一定の場合には権利制限を認めるという条約上の根拠があるわけです。その複製権の権利制限につきましては、特別な場合であること、著作物の通常の利用を妨げないこと、著作者の正当な利益を不当に害しないという、その三つの要件をかなう場合に制限が許されるということになっておりまして、それをスリー・ステップ・テストと言っているわけですが、その基準をやはり適用して、必要に応じて見直しを行うのだということです。
平成4年の改正につきまして、これは現行の補償金制度を導入した改正でございますが、著作者等の利益が害されている状況を補償金制度により補うことによりまして、権利制限の基準に適合させることを意図したものであるということです。
その後、やはり事情の変化があるのではないかということで整理されているのが、次のセンテンスです。どういう事情の変化があるのかというと、デジタル複製が主流となり複製手段も多様化・高性能化したということです。これが複製の質、これは高音質になったという意味の質で、それから、著作権の保護技術と契約を組み合わせることにより、一定の場合には著作物提供者が家庭内における複製を管理できるようになったこと、それから、権利保護と利用の円滑化の調整手段の確保ということで、第30条につきましては、これは閉鎖的な範囲で行われる、つまりプライバシーの中に権利者が手を出せないということも、一つの制限の理由になっておりますが、著作権の保護技術と契約を組み合わせることによって、家庭内のプライバシーに触らずに、複製をコントロールできるというような状況になってきたという意味です。
それから、インターネットを利用した配信サービスやファイル交換が普及して、録音録画源が多様化したということ。これは、平成4年当時はパッケージからのコピーが主流だったわけで、パッケージからのコピーと、あとは、いわゆるエアチェックと言われるようなFM放送なんかの複製しかなかったわけですが、インターネット経由で複製ができるという手段が新たにできております。
それから、ファイル交換などを活用した違法複製物等からの複製などが社会問題になっている。これは大きな被害を与えているということで、権利者被害の深刻化などの点で特徴があるわけでございます。
以上のような環境変化を踏まえて、著作者等の利益を害する状況がより深刻な分野とか、著作権保護技術の契約によって別の利用秩序が形成され得る場合には、第30条第1項の適用について見直しを行うことが適当ではないかというような整理をしたわけです。
なお、括弧書きのところの資料については、本日は添付しておりません。
それから、次の参考資料7を見ていただけますでしょうか。今、私が御説明したのが、いわゆる著作権法第30条の変遷と、それから、第30条第1項の範囲で見直しの必要性について事務局で整理した考え方です。それでは、参考資料7というものは、第30条の範囲外とすべき利用形態等について具体的に整理をしたものでございます。
まず、1ですが、これは私的録音録画に関する補償の必要性を考える場合に、まず第30条の範囲の見直しを行いまして、改めて、その必要性を考えるという手順でどうかということで、今、私が申し上げた資料5の手順と同じです。
それから、見直しに当たりましては、例えば、プレイスシフト、これは様々な環境で視聴するための録音録画でして、例えばパッケージで買ってきたCDから携帯用の音楽プレイヤーに録音をして、例えば電車の中で聞くとか、車で聞くためにCDRに焼くとか、そういうことを意味しています。それから、タイムシフト、放送時間とは別の時間に視聴するための録音録画など、私的録音録画によって音楽、映像楽しむという状況は、特にCDや放送からの複製の分野では長く定着している状況でありますので、このような分野につきまして消費者の利益も考慮した上で、その状況を制度改正により大きく変化させないということが必要なのではないかというのが、一つの考え方です。
それから、 ですけれども、特定の利用につきまして第30条の適用をなくすというような場合については、それによる複製の抑止効果とか実効性の確保の見通し、権利者に深刻な被害を与えている私的録音録画の実態。それから、許諾処理に関する費用負担。これは例えば第30条を外しますと、権利者と利用者が許諾契約を結ぶ必要があるわけですけれども、そういう許諾処理に関する費用負担。それから、オーバーライド契約に関する有効性。これは第30条を維持しつつ、その当事者間の契約によって、その制限規定を超えた契約を結ぶというようなオーバーライド契約があるわけですが、これの有効性。それから、私的領域に関する法の介入等の点について、十分配慮をするというようなことを前提にして考えてはどうかということです。
それで、次のページでございます。
その2の要件を踏まえまして、私的録音録画の形態ことに整理をすると、次のように考えられるということで、まず と に分かれています。
が制度改正には課題が多いと考えられるもの、それから が制度改正には課題が少ないと考えられるものに仕分けをされております。課題が多いと考えられるものにつきましては、例えば他人から借りたCD等からの私的録音録画、それからレンタル店からの借りたCD等からの録音録画、それから放送からの私的録音録画というような類型が該当するのではないかと。理由としましては、利用者に対する権利行使は事実上困難であるとか、大きな秩序の変更が伴うとか、違法状態が放置されるおそれがあるとか等々でございます。
また一方、制度改正には課題が少ないというふうに考えられるものにつきましては、違法複製物や違法サイト、これもファイル交換によって違法にアップロードされたものからの複製というものを含んでいるわけですが。それから、適法配信からの私的録音録画ということで。
違法サイトの場合には利用者に対する権利行使は事実上困難ではありますけれども、ファイル交換の場合には、ダウンロードされたものが同時にアップロードされるということですから、実態把握が困難だとか、利用秩序の変更を伴いますが、違法複製物等からの録音録画が違法であるという秩序、利用者にとって受け入れられつつ。例えば私的録音録画の実態調査においても、その80パーセント以上の人が、権利者の了解を得る必要がある行為かもしれないというふうに認識する等々の理由が挙げられています。
また配信からの私的録音録画につきましては、著作権保護技術と配信の契約によって、利用者の把握や複製の制限は容易であるということ。コンテンツホルダーであるレコード製作者、映画製作者以外の権利者、例えばレコードに含まれている実演家や著作者の権利についての権利行使も容易になるということもあります。
それから、二重取りの疑念がなくなる。例えばネットワーク配信で配信されたたものから複製がされると。その複製について第30条から外しますと、その外したところは補償金の制度の対象外になりますので、そこで払われる対価とそれから補償金制度というのは矛盾しなくなって、二重取りがなくなるというようなことがあります。
それから、利用者は現状と同様に、適法に録音録画することが可能であります。つまり配信事業者に対して権利者が配信契約をしますと、その契約の中で利用者の複製についても契約をすればいいわけです。また、その配信ビジネスモデルといいますのは、配信したものが、利用者が複製をするというところも含んでいますから、そのビジネスモデルを考えれば、利用者が使えなくなるということはないということです。
それから、罰則の適用につきましては、今までの技術的保護手段の回避による複製、先ほど説明しましたけれども、これは第30条の第1項の適用がありません。したがって、技術的保護手段を回避して行う複製は違法なものとされていますが、ただ、法律の規定によりまして、その場合に罰則の適用がないということになっておりますので、仮に第30条の範囲を縮小するとしても、その考えを踏襲すべきであるかというような考え方が整理されております。
資料5に戻りまして、参考資料6と参考資料7に基づいて前期の小委員会では議論されたわけですが、その議論を踏まえて、さらに検討をして、第30条の範囲の問題について一定の結論を得ればどうかということです。例えば検討例としては、今説明しましたように、制度改正に課題が少ないというふうに整理されているものについて、第30条の対象外とするのか、それとも前回の小委員会でも議論がございましたように、他人から借りてきたCD等からの複製、そういうものも課題は多いかもしれませんが、やはり対象外にしていくのかというような議論があると思います。
それから、2番目の「 」ですが、第30条の対象外とする利用形態について、権利者と著作物提供者や利用者との円滑な契約が可能かどうかということです。例えば今、整理しました配信事業については、想定されるのは、いわゆる有料の配信サービスです。これはiTunesのようなサービスが想定されるのですが、ただ、インターネットを利用したダウンロードサービスといいますのは、ほかにもあるわけでございまして、例えば一般のホームページからダウンロードする場合とか、広告収入により運営している配信サービス、利用者にとっては無償のサービスになりますが、営利を目的としているサービスもありますので、そういったものについてもどうするのかというような制度設計の問題があるのではないかなということです。
それから、違法サイトからの複製につきましては、現在の違法サイトの利用条件が変わらなければ、違法複製の状況が蔓延するおそれがあるわけですが、これについてどう考えるのか。特に権利者側のこの問題に対する取り組みというものが注目されるところでございます。
次に、2の(1)ですが、これは、まず著作権保護技術と補償措置の必要性についてです。参考資料8を御覧いただけますでしょうか。参考資料8は、これは前期の私的録音録画小委員会の第8回目の配付資料でございまして、私的録音録画に関する補償措置の必要性について事務局で整理したものでございます。
まず、私的録音録画の実態に対する評価についてということで、これは、前期には私的録音補償金管理協会、それから私的録画補償金管理協会が、この検討に先立って実態調査をしておりますので、その実態調査が委員会に提出されております。また、制度が始まって以来、平成4年以降、定期的に実態調査が行われておりますので、それを比較検討した資料も事務局でつくって、提出させていただきました。そういった実態調査の結果等から以下の事実が推測され、平成4年の補償金制度導入時と比べて複製の総体が減少しているとは考えられず、デジタル録音録画の特性を考えると、むしろ増加しているのだというふうな考え方が推定されるがどうかということでございます。録音録画について、それぞれ配付資料に基づいて検討されているところでございます。
それで、2枚目ですが、契約に基づくいわゆる「使用料の二重取り」の問題、これは法制問題小委員会で検討したときにも、使用料の二重取りの問題につきましては、大きな問題として、課題として挙げられているわけです。つまり、販売価格に、レンタル価格に、放送の使用料に、複製の料金も上乗せされていれば、権利者は使用料を二重取りになることになります。つまり、補償金制度で補償金を取ることと、提供の際に複製の使用料が上乗せされていれば、二重取りになるのではないか、また二重取りになっているのではないかというような疑念といいますか、指摘があったところです。それについては、契約の実態から明示的に録音録画の対価が含まれているとは言えないと考えられるということです。
なお、ただ、配信事業の場合につきましては、配信契約の中で第30条に基づき私的録音録画ができることを明らかにしているものも見られますけれども、配信の対価の中に私的録音録画の対価が含まれないということを明示しているものもなく、つまり、コンテンツの提供の対価というのでしか考えられないものが多いわけでして、利用者の録音録画も含めてビジネスモデルになっているところから、その点は非常にあいまいなところが残るという整理をしているところでございます。
それから、3ですが、著作権保護技術とその範囲内の私的録音録画についてです。平成4年から今日に至るまで一番大きな違いが、やはり著作権の保護技術が導入されてきたということです。著作権保護技術、特に技術的保護手段につきましては、これは著作権法の定めによりまして、権利者の意思に基づいて用いられるものが技術的保護手段ということで、これは法律上、定義をされております。したがって、そういうことを踏まえて幾つかの問題点について整理をしてみました。
まず、これについては、幾つかのケースが考えられます。下記の1のとおりですが、技術的保護手段を導入したシステムを承知した上でコンテンツを提供していた場合には、権利者は当該保護技術の範囲内の私的録音録画を許容していると考えられるがどうかということでございます。つまり、技術的保護手段を承知しながらコンテンツを提供しているわけですから、当然、一定の範囲内の録音録画を許容していると、権利者はですね、考えられるかどうかという点です。この場合、コンテンツホルダーである権利者、これはレコード製作者とか映画製作者等になる場合が多いわけですが、自分の意思によりコンテンツを提供しているときは、権利者の意思は明確でありますけれども、そのコンテンツに含まれる、例えば、実演家とか作詞家、作曲家のような著作者についても、私的録音録画については権利行使ができない以上、消極的であるけれども許容しているというふうに考えられるかどうかということです。
それから、著作権保護技術の範囲内の録音録画を関係権利者は許容して提供しているとしたとしても、補償措置の必要性まで否定したと考えるかどうかということですが、それは次のページですが、次のページの理由によりまして、当該許容と補償措置が併存できないとか、併存させるべきではないとまでは言えないと考えられるが、どうでしょうかということです。つまり、一定の範囲のコピーは許容しているけれども、補償措置の必要性まで権利者が否定して提供しているとは思わないけれども、どうかということです。
次に、次のページの2の(2)です。補償措置の必要性についてということですが、これは複製が禁止されている場合には、補償措置はあり得ないのは当然のことですが。
ですが、これは権利者が補償の必要性までを否定したと言えないという理由ですが、一つは、私的録音録画によって著作物を楽しむという社会現象というのは、消費者の権利とまでは言えないとしても、確立された社会慣行であるわけです。そして、その権利者側もその社会慣行を認めて、複製を一切禁止するという措置はとっていないというのが現状でして、補償措置を前提に、このような社会現象を認めるという選択肢もあり得るのではないかという考え方です。
それから、著作権の保護技術は、禁止の措置をとっている場合を除きまして、私的録音録画を制限するというよりも、一般的な利用者にとって必要な私的録音録画を認めつつ、高品質の複製物が私的領域の外に流出することを抑制するという意味が強いのではないかということです。
それから、補償金制度は、あくまでも私的領域内の複製を対象にしたものであることから、その点から著作権の保護技術と補償措置は矛盾しないと考えられるかどうかということでございます。
こういうふうにして補償措置の必要性について整理したわけでございますけれども、これにつきましては、様々な意見がありまして、委員の意見が一致したということにはなりませんでした。
そういった前年度の議論を踏まえて、まずは著作権保護技術の程度と補償措置の必要性の関係について、改めてさらに整理した上で、どのような著作権保護技術であっても、複製が可能である限り補償措置の必要性が伴うのか、例えば、どんな著作権保護技術が導入されたとしても、一回でもコピーができれば補償措置が必要なのかということまで言えるのか。反対に、どのような保護技術がまた導入されれば、補償措置の必要性がなくなるというようなことについても検討してはどうかということについても検討してはどうかということの検討が必要ではないかと考えております。
それから、参考資料6を御覧いただけますでしょうか。その参考資料6の3ページの(2)です。技術的保護手段の回避禁止措置の見直しについて。平成11年の改正によって技術的保護手段の回避禁止措置が導入されたわけですが、技術的保護手段について法令上、特定の使用に限定することはしておりません。例えば技術的保護手段について権利者側が例えばコピーの禁止の信号を入れたとしても、それについては特に規制がされていないわけです。
ただ、次の になりますけれども、そういうことで反対に複製を禁止することも可能であるわけですが、仮に複製を一切禁止するような技術的手段を用いた場合には、事実上、第30条に基づく私的録音録画が認められないということになるわけです。これにつきましては消費者の利益等を考慮して、技術的保護手段のあり方について法的に一定の制限を課すという法制をとっている国も、米国やフランスに見られるところでございます。
それから、一方、例えばドイツのように複製を一切禁止するという措置を法的に制限している措置はありませんけれども、技術的保護手段の影響度について補償金の額で調整をするというような方式に改める法案が、現在、国会に提出されているというところもあります。
この問題につきましては、私的録音録画に関する制度設計上、重要な点ですので、前期では一定の結論を出さずに、それが補償金制度の制度設計の構成要素の一つとして、このあり方も含めた全体のパッケージの中で検討していくことが適切だろうという整理をしました。したがって、それを踏まえた上で、資料5に戻りますけれども、補償措置の必要性と関連して、技術的保護手段の設定についても一定の制約を設けるかどうかについても、あわせて検討してはどうかというふうに考えております。
そういうことで、補償措置の必要性というものについて議論した上で、具体的な対応方法について議論をしてはどうかと思います。ただし、補償措置の必要性については関係委員の間で、多分、事前に一定のコンセンサスを得られないというケースも考えられると思いますので、ある程度、議論した上で具体的な対応方法に移っていただければどうかというように考えております。
これは二つに分けておりまして、いわゆる私的録音録画補償金制度よる対応ということで、具体的な制度設計について検討をしていただきたいと考えております。また、その他の方法として、例えばオーバーライド契約による方法があるのかどうかということです。第30条を維持したまま、例えば権利者と著作物の提供者や利用者との契約によって対応する方法があるのではないか、また、それ以外の方法があるのではないかというような御指摘もありますので、それについては検討してはどうかということです。
例えばCDのレンタルにつきまして、レンタル店がレンタル料金に私的複製の部分の対価を上乗せして、それを徴収したり、CDの販売時にCDの販売価格に私的複製の部分の対価を含めてはどうかというような御指摘もあるところです。また、放送については、一定の意見については言及されておりませんけれども、何らかの方法が考えられるかについて検討してはどうかと思っております。
それから、すみません、長くなりましたけれども、最後に資料6を御覧いただけますでしょうか。これが一応、今後の日程の案でございますけれども、本日、27日に第1回目の検討をしていただいて、フリーディスカッションということでお願いできればと思っていますが、次回から検討事項に基づいて議論をしていただきまして、大体9月ぐらいに中間まとめということでまとめていただいて、著作権分科会に報告し、かつ、意見募集をしたいと考えています。その意見募集を踏まえた上で、さらに議論をした上で、分科会に報告書を提出して審議をお願いするということでいかがかと思いますが、それもあわせて議論していただければと思います。
長くなりましたが、以上でございます。
(中山主査) ありがとうございました。
それでは、ただいま御説明いただきました資料5の今後の検討の進め方につきまして、御意見、御質問を賜りたいと思います。実体的内容につきまして、後で自由討議の時間を設けてございますので、そちらのほうでお願いしたいと思いますけれども、とりあえずは今後の検討の進め方、資料5についての御意見、御質問をちょうだいしたいと思います。何かございますか。どうぞ。河野委員。
(河野委員) ありがとうございます。資料をおまとめいただきまして、ありがとうございました。資料5の進め方に関してですけれども、今まで幾度となく申し上げてきた意見が反映されていないという点がございまして、極めて残念に思っております。
まず、技術的保護手段と補償措置の必要性ということに入る前に、補償が必要な行為態様というものについて議論が必要なのではないだろうかという意見を、今まで幾度となく申し上げてきたと認識をしております。
具体的には、自分が買ったパッケージから、それをプレイスシフト、あるいはメディアシフトのために複製をする行為、またはタイムシフトのために複製をする行為、そういう行為も含めた私的使用のための複製すべてが、著作権者の正当な利益を不当に害する場合と考えられて、すべてにおいて補償が必要なのかどうかということについて、もう一度議論をしてはいかがかということを再三申し上げてきたつもりです。ですが、この点、進め方の中に全く触れられていないということについて、極めて残念に思います。いま一度、そこの補償の必要性についてご議論をいただくことを強く希望いたします。
(中山主査) その点は、どなたですか。室長から。
(川瀬著作物流通推進室長) これは前期のこの委員会で、私が申し上げましたとおり、私どもがこのような資料を作りましたのは、補償金制度というのは平成4年に、これは関係者のコンセンサスによってできた制度でございます。そのときの考え方といいますのは、確かに個々の行為を見ると補償の必要性の濃淡はあるかもしれませんが、その小さな行為が積み重なって大きな行為になっている。その大きな行為について、やはり補償の必要性が必要だろうという判断に基づいてできている制度です。したがって、もし必要なら、その行為類型に基づいて補償の必要性の軽重といいますか、そういうものを整理することは、行為類型に従ってやるということは構わないと思いますけれども、私どもがこの資料をつくったときには、その辺については関係者間の、一応、今の現行の制度のできたときの話し合いによって整理がされているのではないかという思いで作らさせていただいています。その現行の制度、つまり平成4年以降の、私が説明しましたように、いろいろな状況の変化において、例えば著作権保護技術につきましては、平成4年当時はSCMS方式、つまり専用器、専用媒体においてSCMS方式を導入するかしないかという時期でした。それがしばらくして録画のCGMS方式ができて、それから、今、携帯電話やネットワーク配信に多様な著作権保護技術が導入されるのは、もう皆さん、御承知のとおりです。このような問題が補償金制度のあり方について影響を与えているかというのは、これは新たな問題だと思いますから、検討をしてはどうかと思っておりまして、そういう意味で、このような提案をしているわけですが、今、河野委員から提案されたようなところについて、議論を拒否するというものではないので、そこは委員会のほうで必要性があるということであれば、私どももそういった行為類型ごとに従った、整理した資料等を提出しますので、議論していただければと思います。
(中山主査) 今の河野委員の御意見につきまして、何か意見がございましたらお願いいたします。どうぞ。椎名委員。
(椎名委員) 自分の買ったものを自分のコンピューターにインストールする、あるいはiPodに収納するという利用形態が、制度にとってどれだけ補償措置の必要性という観点からどうなのかということで、軽重を判断していくといっても、結局、そうすると例のアとイ、友達のために複製する行為、あるいはレンタルから複製する行為。とりわけ、アのほうの友達のためにというところの、じゃあ自分のためにインストールする行為は、どこからどこまでで、どこからが他人になるのかとかという議論をすることと同じであって、それをしていても始まらないと思うのです。僕はもともと、アとイを第30条の範囲から外すことは反対をしているのですけれども、その補償措置の必要性の度合いの軽重の判断にはなるかもしれないけれども、その行為自体をいちいち取り上げて、その友達が彼女になって、彼女が奥さんになったらいいのかとかという、その境目を議論していく時間はもったいないなと。そういうふうに思う次第です。
(中山主査) ほかに、この点につきまして何か御意見がありましたら。どうぞ。
(野原委員) 今回、初めて参加させていただきますので、議論が戻るところもあるかもしれませんが。やはり私も河野委員の意見に賛成で、私的利用のための複製というのは第30条に書いてあるとおり、基本的には私的利用のための複製をしていいわけですよね、著作権法上。そうではない例外を決めるという議論なわけで、やはり基本的に私的使用のための複製をすることは、法的に何の問題もないという前提が、随分とこの場に来ると違って聞こえてくるというところに、とても違和感を感じます。
利用者の視点というか、消費者の視点で見ると、以前はレコードを買って、シングル盤、600円とかで買って、それをどういうふうにカセットテープで録音して聞いても、そして、それをいろいろ自分の好きな曲だけピックアップして聞いても、それは当然、自分の音楽の楽しみ方だったわけですね。今はそれをしようとしても、CDで購入する場合、ダウンロードで購入する場合、それぞれお金を支払っているわけですね。それだけでも私は、消費者は以前よりもたくさんお金を払うようになっているというふうに思います。それは、いい点は著作権者、隣接著作権者の方々にそれは回っていっていることだと思いますので。そういうことから考えても、この場での議論をもう少しユーザーサイドに引き寄せていただきたいというふうに強く思っていまして、そういう観点から、先ほどの河野委員の意見には賛成でして、私的使用のための複製にどうしてそんなに制限をかけられなくてはいけないのかというあたりを、もう少しきちんと整理をした上で議論を進めていただけるとありがたいなと思います。
以上です。
(中山主査) ほかにございませんか。松田委員、どうぞ。
(松田委員) 松田でございます。河野委員と野原委員との議論、今、かみ合っていますでしょうか。河野委員は、本来、第30条の範囲内であって複製ができる場合であっても、それについての補償金をかけるかどうかについての再吟味が必要だと。言ってみれば第30条の範囲内であったとしても、その価値といいますか、影響といいますか、そういうものを吟味して補償金の範囲内から外せるものがあるのではないかという御議論ではないでしょうか。そうですよね。
(河野委員) そうです。
(松田委員) そうすると、野原委員の第30条でコピーができるようにすべきだというのとは、ちょっと議論がかみ合わないように思うのですけれども、どうなのでしょうか。
(野原委員) 私の話し方が、言葉が不十分だったのかと思いますけれども、私が申し上げたかったのは、基本的には私的使用のための複製というのは、ユーザーの権利として基本としては認められているのだと。その上で、ある条件下では私的使用のための複製の範囲外ということで、補償金制度等の対象になってくるというようなイレギュラー対応をする分野だというような議論だというふうには思っておりまして。そのあたりの考え方はずれていないと思うのですけれども、私が申し上げたかったのは、IT化が進んでデジタル録音が非常にふえることによって、かえってユーザーにとっては支出しなくてはいけないシーンがどんどんふえてきているわけで、さらに補償金制度もあって、同じような形で音楽を利用していても、それに対して必要なコストはむしろ上がっていっているような気がしまして。そういう環境の中でありながら、さらに、この私的録音録画補償金制度の中で、いろいろな範囲をふやしていくような議論は避けていってほしいというようなことを申し上げていまして、私的使用のための複製は基本的には自由にできるのだというスタンスをきちんと押さえた上で、どこまでが範囲、範囲外ということを議論していただきたいと申し上げました。
(松田委員) 自由にできるんですよ。
(野原委員) いや。ただ、それがもちろん、この条件外についてはということですよね。自由にできないというよりは、自由にやるけれども、それに対して、その行為に対して、私的録音録画の補償金を取ることで著作権者に使用権を戻そうということなわけです。なので、この制度自体が膨らむということは、消費者にとってはそれだけまた負担が大きくなるということなので、そもそも、どういうふうに使うかということから議論していくという発想には賛成したいということです。
(中山主査) ほかに、この問題について御意見ございますか。どうぞ。津田委員。
(津田委員) 津田です。そもそも、この私的録音録画小委員会ができた経緯というのがございまして、この平成17年と18年の法制問題の小委員会における検討で、非常にiPodに課金をするかしないかというところでもめたというか、かなり委員の間で意見が割れて、結果、それがこういった先送りになる形で、新たにこの私的録音録画小委員会が立てられたという経緯があると思うのですが。そこのそもそも論に立ち返って、割とこの私的録音録画に対して抜本的な見直しをということだったのが、僕がちょっと資料5の私的録音録画問題に関する検討の進め方を見ていくと、ちょっとマクロの話をするところが、なぜかちょっとミクロの話にかなり落ちているような気がしていて、結局、僕個人の考え方で言うと、この私的複製のための範囲の見直しについては、やはり参考資料7とかで挙げられている、制度改正には課題が少ないと考えられているような違法複製から違法サイトからの私的録音録画を、これを範囲内にするというような議論も、やはり現状のインターネットの特性を考えると、これが違法になったときに非常に消費者に与える影響というのは大きいのではないか。また、そういうことが違法化されることによって、いろいろなコンテンツの流通がアングラ化してしまって、アングラ化することにより、やはり懸念みたいなことというのも恐らく議論として話さなければいけないのかという部分を僕は感じていますし。
要するに何が言いたいのかというと、非常にこの、今回、資料5で挙げられている検討の進め方のところで、個別、個別に対して、多分、ここにいらしている委員の方で、それぞれの方でかなり立場が違うと思うのです。例えばこの項目いついては、ここは賛成だ、ここは反対だというところがあるときに、それが17年、18年で話し合われたように、まず最初に、この議論を進めていくに当たって、この文化庁さんがまとめていただいた検討の進め方案について、それぞれの委員の現状での個別の賛成なのか反対なのか、どうなのかという意見をまとめていただいて、その上で、なんか僕は話をしたいなというふうに思うのですが、いかがですか。
やはり、あまりにも結構、例えば、この検討の進め方というところで範囲の見直しをする、この進め方の案を見る限り、先ほどの河野委員の話ともちょっと関連するかと思うのですけれども、まるで範囲を見直すことがなんか前提で、話が進んでいるように思えるのですが、それに対する何か考え方というのは、恐らく委員によって、多分、違うのではないのかなと僕は思っていまして、まず、それを最初に明らかにしてから議論を進めたほうがいいのではないのかなというふうに思うのですが。それぞれの委員の立場を鮮明にしていただいてということです。
(中山主査) 生野委員。
(生野委員) 今の津田委員の御指摘に関してですが、私の理解では、昨年度、平成18年度のこの小委員会の中で論点整理が行われて、今後の検討の進め方として確認された内容で、この資料は出されていると認識しております。それと、違法サイトからのダウンロードの話があったわけでございますが、これに関してはアングラ化するということがないような、レコード協会としてもユーザーが違法サイトから入手しないようにどう識別するか等の検討を進めているというところで、時期を見て説明をさせていただきたいと思います。
(中山主査) 津田委員の御意見は、資料5の最初の第30条の範囲の見直しについてのところで、当然、出てくることではないでしょうか。まず、これを特別に取り上げて決着をつけるという、そういう趣旨ですか。
(津田委員) 先に、この委員の方は、これに関してはこうだという意見を、話していても当然わかるところではあるのですけれども、一応、それが明らかになった上で議論を進めたほうが、なんかむだが少ないような気がしますし、論点整理がじゃあ十分にできていたのだったら、なぜ一番最初に、河野委員が残念だというような発言につながったのかなというふうにもつながるかなと僕は思っていて。まず、そこをちょっと、それぞれの個別の現時点でのお立場を明らかにしたほうが、むしろ議論は活発化するのではないかなというふうに思うのですけれども。
(中山主査) 全員の意見をまず聞いてという趣旨ですか。
(津田委員) そうですね。
(川瀬著作物流通推進室長) まさしく、今、津田委員がおっしゃるとおりなのですが、ただ、もともとこの委員会は、例えば学識経験者だけで冷静に制度設計をするということではなくて、もともと立場の違う方に委員に就任してもらって、この中でコンセンサスづくりも含めて、法律問題もあわせて検討していくということで進めているところですので、今、河野委員からのお発言や野原委員からのお発言にも示されたとおり、そもそものところでは、まだ前期の小委員会の議論においても、完全に意見が一致しているわけではございません。
したがって、ある程度、制度設計等について議論を進めていく中で、さらに、今、中山主査がおっしゃいましたように、そもそものところの議論も当然あると思いますし、委員会のコンセンサスがあれば、そういう資料も私どもで提出させていただいて、議論を拒むものではございませんので、やっていただいて、ある程度、全体的に議論を進めて、また、例えば、文化庁のほうで、そういう議論を集約した上で、それに基づいて、またそもそも論に返って議論をするというようなことで、できるだけコンセンサスづくりを進めていけばどうかと思っています。従って、最初、そもそも論についてコンセンサスをつくって、そのつくったものを踏まえて次の段階に移っていくということでは、これはとても2年や3年では議論が集約できないと思いますので、ある程度、議論を進めていく中で、そういった御意見も参考にしつつ、最終的に第30条の範囲の問題、それから補償措置の必要性、それから仮に補償措置を導入した場合には、具体的にどういう設計が合理的なのかというものをあわせた上で議論していただければ、ありがたいと思っています。
(中山主査) どうぞ。大渕委員。
(大渕委員) この点についても前期に何度も申し上げたとおりでありますが、取り進め方については、この資料5で言いますと、1番目の第30条の範囲の見直しという論点と、それから2番目の補償措置の必要と具体的な対応方法という論点は相互に密接に関連しておりまして、最終的には、トータルな制度として、どのように権利者の利益と利用者の利益との間のバランスを図っていくかという話になると思います。そして、一方の議論との関連で、いろいろと他方の議論が影響を受けてくるというところもありますので、両者を分断してそれぞれを孤立的に検討するというよりは、両者を並行的に進めていったほうがいいのではないかと思います。
(中山主査) 最初から皆さんに鮮明にしていただいて議論をするというのもなかなか難しいですね。特に学識経験者の場合は、議論をしているうちに固まってくる場合もありますし、最初からはなかなか難しいのではないかという気がしますし、それから、河野委員の御意見、ごもっともですけれども、これも随時、議論の中で提示させていただいて結構だと思いますので。それだけを取り上げると、また大変なことになると思いますので、ぜひその折に御発言をお願いしたいと思います。どうぞ。
(津田委員) 先生、なんか何度も。なんか僕がすごい、ちょっと難しい話になってしまっているのかもわからないですけれども、僕が本当に、単純にシンプルに気になるのが、資料5の1番の範囲の見直しについてというので、いろいろな御意見を伺っていて、資料とかも見ていて、その中で僕が思うのは、やっぱり範囲の見直しというところで、僕は現状、この議論に参加していて、この範囲を見直す必要性を現時点で僕は感じていないのですよ。だから、そういう意味で、ただ、それが、この18人ぐらいいる委員の中で僕一人なのか、それとも、ほかにも同じようなことを感じられている人がいるのかというのを、単純に知りたいなという部分がありましてですね(笑)。明らかに18人の中で僕一人だけだったら、もうしようがないかなという部分もあるのですけれども、恐らく、それはそうではないのではないかなという気もしていて、そういうところも明らかになると、少しいいかなというか。もちろん、当然、大渕先生がおっしゃったみたいに、2番との兼ね合いというのもあるのですけれども、それでもある程度、やっぱり基本的な何かスタンスみたいなのがわかっているといいかなという気がしておりまして、そういう感じです。
(中山主査) どうぞ。椎名委員。
(椎名委員) 同じようなことを別な言い方になるのですけれども、やっていてものすごく気持ちが悪いのは、第30条第1項の範囲の見直しを、ものすごい時間をかけてやったわけですよね。おぼろげにアとイを外すことに賛成の人がいて、反対の人がいて、違法に関しては、おおむねだれも反対しなかった。津田さんが、今、反対だとおっしゃったのですけれども。ウについては、対価の中にシステム的に含めることができるから、外すことも可能なのではないかという議論がありながら、参考資料8の著作権保護技術とその範囲内の私的録音録画についての の2番目を見ると、著作権保護技術の範囲内の録音録画を関係権利者は許容したとして、補償措置の必要まで否定したと考えるかどうかであるがと、云々かんぬんで併存できない、併存さすべきではないとまでは言えないと考えられるがどうかというと、また話が戻ってしまったりして。戻ってはいないのでしょうけれども。そこのあたりの範囲の話がずっと続いて、それを当然、こんな状況では結論的なものというのは出せないのだと思うから、制度設計の話に入って、戻ったり返ったりしながら。例えば違法なものについても、それが実効性がないのだったら補償の必要があるのではないですかという議論も出るのだろうし。だから、ここら辺を全部抱えながら先に進まなければならないところが、なんか、ものすごく気持ちが悪いというか。でも、その第30条の範囲の見直しに結論が出たわけではないのですよね。そういう理解でいいですよね。もちろん、結論は出ていないのですけれども、おおむねの方向性というのがまとめてあるのだけれども、それの中でも、いろいろな可能性を持ちながら制度の話をしていくという理解でよろしいですよね。
(川瀬著作物流通推進室長) 第30条の見直しの話につきましては、違法サイトからの複製の問題と適法配信からの複製の問題は、これはかなり性格が違うわけでして、違法サイトからの複製の問題というのは、これは権利者側の委員からも御発言がございましたように、例えば取り締まりの強化とかをするために必要だということと、それから、やはり違法サイトからの複製が合法だというのは、やっぱり権利者感情としては問題だというような御指摘もあります。一方、適法配信につきましては、これは例えば補償金制度を導入せずに、30条はもとの昭和45年に戻して無償で、それから権利制限をかけるということであれば、いわゆる法制問題小委員会で御指摘があった二重取りの議論は回避できるわけです。ただ、いずれにしても両者の問題点は違うわけで、私が先ほど言いましたように、トータルの制度設計の中で30条を外す範囲を決めるという問題もあろうかと思います。だから、やはり補償金制度についてどうするのかという問題も含めて検討した上で、また、もとに戻って、30条についてどの部分を外すのか、外さないのか、そもそも論に帰るということが、やはり大事なのではないかと思っています。
(中山主査) これは大渕委員がおっしゃったように、すべて関連していますので、どれか一つを取り出して議論しても、また次のところへ行って、また次が議論になってしまっては、これは元も子もないので、やはり、今、室長がおっしゃったように、やはりトータルな議論の中で、いろいろな議論があると思いますので、そこではいろいろ御発言願えればと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。河村委員。
(河村委員) 主婦連合会の佐野から代わりまして、今回、初めて参加なので、今までの議論を全部把握しているわけではないのですが、今回初めてなので、消費者として私が感じていることを申し上げます。
まず、いろいろ説明や御意見を伺ったりしている中で、この30条というのが、どういう哲学というのでしょうか、どういう理念でできているのかというのが私には、今までのところ、よくわかりません。こういう私的な録音録画ができる豊かな、個人的な範囲内で楽しいことができることについて、権利者の方に何らかの補償が必要なのではないか、という理念であろうととらえていたわけですが、片や、それはいけないことだと考えられることもそこに含めていっているようにも見えます。そうしますと、豊かなすばらしい文化というよりは、なんだか、よくないこともそこに連なって起きるから、それも全部そこに入れてしまって、権利者さんは補償金をもらえれば、それでいいというような考え方なのか。例えば子供に対して、この30条を説明するときに、一体、これは何に対してお金を払わされる制度なのかを、理念的に私は今のところ、理解が足りないのかもしれませんが、説明できないのですね。これは、みんなに許された豊かな私的な文化なのだけれども、補償金というのが妥当な額、必要ということみたいよと説明するのか、悪いことがこんなにくっついているから補償金をとられているのよというふうなことなのか、よくわかりません。ですから、30条の範囲の見直しといいますが、30条とはそもそも何を求めているのかというのが、よくわからないということですね。
それから、あと、これは全然、私の意見としての結論ではなく、こういう考え方もあるかなと今考えたということにすぎませんが、私的な録音録画の中には、河野委員がおっしゃったように、例えば自分のために買ってきたCDを、自分が例えばほかのところ、車の中で聞くためにとか、複製する場合に、それは何ら権利者の方の利益の損失になっていないと思うのですね。そのために、もう一枚、買うことはない。家族のため、家族が同じCDをもう一枚、買うということはないとすれば、何ら機会を失っていないと思うのですね。そういうことも含まれてしまう制度であるとするならば、例えばそこは無償でできるというふうにするのも一つですし、そういうものも含めようとすれば、さきほど軽重がつけられないとおっしゃいましたけれども、軽と重を足してバランスをとったら安くなることも充分考えられるわけですから、そういうような考え方もできてくるのではないか。そういうバランスを考えて、制度ができていけばいいなと考えております。
(中山主査) ありがとうございます。ほかに何か。はいどうぞ、土肥委員。
(土肥委員) この問題、確かに私的使用ということになりますと、消費者がお買いになったものをどのように利用するということも勝手ではないか、これは確かにそういうことなのですけれども。これは有体物の世界だと決してそうおっしゃらないわけで、家の中でも外でも使いたいから、両方、使わせてくれと、これは、そうは仰せられない。これは無体物の場合だから、こういうことになるわけですけれども。
この無体物についてのこの複製の権利を著作権者が持っていると。だけども私的使用というものがあわせて認められている。この私的使用というのは、そういう意味からすると著作権の権利制限と、こういう側面を持つわけですね。そうすると、この権利制限という側面を議論する場合は、これはどうしてもスリー・ステップ・テストのところから議論せざるを得ない。著作権者の利益が不当に害されているのか、いないのか。従来は、30条というのは著作権者の利益は不当に害されていないからできたわけですけれども、しかし、デジタルの著作物が生まれてきたときに、やはりこれは害されているのではないかという、そういう認識があったのだと思うのです。
これがその後、技術的保護手段、そういったものが出てきて、もっと違う見方ができるのではないかというのも、我々、今日あるところであるわけですけれども、この問題を議論するときに、私も前期のときに大渕委員がおっしゃったように、相互に非常に密接に関連するのだから、分断して議論するというよりも関連して議論してほしいというふうに申し上げたのですけれども。これは変わらないのですが、ただ、議論をするとすれば、鶏が先か、卵が先かというと、もうこれは、やはりこれは権利制限の話ですから、30条の範囲が適当なのかどうかということを考えて、30条の中に録音録画補償金というもので手当する必要があるのか、ないのか。それを議論せざるを得ないのではないかというふうに思っています。つまり、30条の中に私的録音録画補償金の手当は要らない領域があるのかどうかですね。これは、そうすると30条の中に入りながら、しかも録音録画補償金の手当もないという、そういう領域が著作権者の利益を不当に害しない場合がまだあるというような議論もあるのかもしれませんけれども、そういう場合というのは議論する場合に、スタートとしては、やはりこの30条の範囲、これがどこまでなのか。その結果、その補償金が必要なのか、要らないのかと、こういうことになるわけでしょうから、卵か鶏が先かということからすれば、やはり、この30条の範囲のこの現状が適当かどうかというところからスタートした上で、次の補償金ということになるのではないかと、こう考えています。
(中山主査) ほかに御意見がございましたら。どうぞ。苗村委員。
(苗村委員) たまたま今日、手元に海外調査報告があります。これの71ページのあたりをちょっと御覧いただくと、多分、この問題に関して事情をあまり御存じでない方には参考になると思います。日本ではどのぐらいの金額が実際に補償金として取られているかということですが、録音の場合、機器に対して1台平均412円、それから媒体、MDに対して3.79円、録画の場合は機器の場合、344円、それから媒体に対して1.85円、これで、その記録容量分だけ曲を大量に、あるいは放送番組をたくさんコピーができるというのが現状なのですね。ヨーロッパの例を同じ表の左のほうで見ていただくと、2けたぐらい高かったりしておりますが、いずれにしても現状はこういうものです。したがって、消費者の立場から見て、この制度があるために非常に多くのお金を払わされるというのは、多分、何かの誤解ではないかという感じがします。これは現状の話です。将来、どうするかは別としまして。
それをもしなくしたときに、むしろ消費者から見て個人的に心配なのは、例えば今まで数百円だったCDを100円値上げしますとか、ダウンロードのときの金額を50円値上げしますということが出てくるおそれがある。ある意味で、この補償金制度があることによって、消費者は正々堂々と人から借りたCDからでも音楽が録画できる、デジタル放送の録画ができるということでやっているわけで、消費者にとっての味方の点もあるということは、ちょっとよくご理解いただきたいというのが一つです。
私自身は今、どちらの立場というのは、前から実は申し上げているのですが、将来的にはこういう制度はなくして、すべて技術的手段で料金回収ができるようにするのがよいと思っているのですが、なかなか難しいなということで、当分は補償金制度を残さざるを得ないのかなという消極的な、賛成とは言いませんが、この資料5の考え方で検討するのがいいと思っています。
それはそれとしまして、事務局にちょっと一つだけ確認なのですが、資料5の中に明示的に書かれていませんが、今回検討するのは、あくまでもこの小委員会の発足のときの趣旨で、抜本的見直しをするわけですから、現行の制度で補償金の対象になっているものはそのままにした上で、いわゆるiPodのようなものを含めるか含めないかを議論するのではなくて、MDその他も含めて、すべて対象とするかしないかを検討する。そういう理解でよろしいですね。先ほど委員の御発言の中で追加する、あるいは拡大をすることに反対という御意見があったので、そうではなくて、そもそも全面的になくすのか、新たな考え方で適用対象を決めるのか、そういうことを検討するという、そういう理解でよろしいでしょうか。
(川瀬著作物流通推進室長) この検討事項を見てもらえばわかりますように、まずは30条の範囲についてどう考えるのかというのを議論しまして、それから補償の必要性について議論をするとでどうか、先ほど言いましたように、平成4年から事情の変化があった、その要因について踏まえた上で補償措置が必要かどうかを改めて考え、河野委員がおっしゃるように、その都度、そもそも論も必要に応じてやるということでどうでしょうか。そして、仮にですが、補償措置が必要だということにして、それは補償金制度というものが、これはEUでは、ほとんどの国が採用していますし、アメリカも一部、採用していますし、そういった例もありますわけですから、海外のそういった制度設計も踏まえた上で考えてみるということでどうか。それ以外に必要なものがあれば、この最後の2のところで、例えばオーバーライド契約によって考えるという手順を踏んでやろうと思っていますものですから、苗村委員がおっしゃるように、私どもとしては特定の結論というものを想定した上で考えているわけではございません。
(中山主査) そろそろ時間で、まとめなければいけないのですけれども、各委員がおっしゃるとおり、この問題は30条の根本論にも、もちろん関係してくるわけです。しかし、30条を無条件で開いてしまいますと、パンドラの箱を開けたようなもので何年たっても解決しない面もありますし、また法制問題小委員会のほうとも抵触いたします。ここでは著作権法を制定して45年に30条ができて、私的使用目的の複製は自由になったと。しかし、技術の発展によって補償金が必要になった。しかし、またここに来て、技術の発展によって新しい状態が生じていると。あるいは技術の発展によって新しいビジネススキームが出てきていると。それに対して、一体、補償金というのはどうしたらいいのかという、そういう観点から議論をしていただいて、しかし、先ほど言いましたように、根本論にももちろん関係しておりますから、随所で必要があれば根本的な意見も出していただくということで、一応、この資料5のとおり進めたらどうかと思いますけれども、いかがでしょうか。そうしませんと、なかなかこれはもう、収拾がつかなくなってしまいますので、そういうことでよろしいでしょうか。
〔異議なしの声〕
(中山主査) ありがとうございます。ちょっと強引に進めましたけれども、申しわけございません。いろいろ御異論はあると思いますが、それはぜひ実質論のところで、いろいろ御提言いただければと思います。
それでは、今後の検討の進め方は、一応、この資料5に従っていくということにしたいと思いますけれども、残りの時間、先ほど申し上げましたとおり、資料5に従って実体論も含めて自由討議に移りたいと思いますけれども、時間も、もうそれほど残っておりませんので、資料5のうちどれからでも結構でございますので、御意見がございましたら、お願いいたします。どうぞ。椎名委員。
(椎名委員) 制度全体の見直しであるということについて、それに関して一言、申し上げたいのですが、この小委員会が最初に始まったときに、各委員から考え方のプレゼンテーションを行った際に私が申し上げたことなのですが、補償金制度というものの支払い義務者、今、消費者ということになっていて、世界的にも日本だけの制度なのですが。当然ながら、支払う立場として消費者の方々が発言される。しかしながら、制度の根本的な見直しということで、その支払い義務者の見直しも当然含まれるのだと理解をしていまして、そういったところの資料の整理も、そろそろ上げていただきたいということがあります。
やはり私的録音補償金制度というのは、権利者の被害を救済するということに加えて、やはり、ある種の利益調整というふうな側面も含んでいると思うのですね。私の説明の中でも申し上げたのですが、やはり私的録音補償金制度の対象になっていない機器が盛んに言われるようになって、デジタル方式の私的録音が増大したと。なおかつ、そういった機器、データの売り上げで利益を上げていらっしゃる方がいる。それがどのぐらいのものなのか、はたまた、どのぐらいのへこみが出ているのかというふうなところを検証しつつ、この問題を語っていく必要があって、そこら辺の整理もそろそろしていただきたいなというふうに思います。
(中山主査) その点について、事務局、何かありましたら。
(川瀬著作物流通推進室長) もちろん、制度設計につきましては白紙ベースで考えたいと思います。ただ、やはり手順としましては、現行の制度というものがございますので、現行の制度が機能しているのかどうか、また、問題点があるかどうかというところから、検証してみて、それで現行の制度で仮に対応できなければ、他の方法を考えていくという手順になろうかと思います。その場合には外国でどういう制度が行われているのかということもございますし、前回の議論の中でも消費者といいますか、利用者以外の方が支払い義務者になる場合には、メーカーという考え方もございますし、例えばレンタル業者とか、販売業者とかというような意見も出ておりますので、そういうものもすべて取り上げつつ、長所とか短所とかを踏まえた上で、一番合理的な制度設計にしていきたいというふうに思っております。
(中山主査) ほかに何か。小泉委員。
(小泉委員) この委員会というのは関係者の意見だけではなくて、法制のさっき冷静な議論とおっしゃったかもしれませんけれども、2年目は特にそういう制度論をしていかなければいけないので、そのための基礎資料というのでしょうか、その提供をお願いしたいのですけれども、具体的には本日、机上にも上がっておりますけれども、この海外調査報告というものがありまして、これ、ざっと拝見しても非常に有益な情報が載っていると思うのです。とりわけ同じような問題で悩んでおります、フランスだとかドイツで動きがありますので、こういうものの知恵を適宜、借りることによって、法制的な検討をしていきたいと思うのですが。
この資料については、特に言及、御説明がなかったと思うので、参考資料としてではなくて、参考の参考みたいな感じの位置づけになっていると思うのですが、ざっと拝見して非常に有益だと思うのですけれども、この調査の主体が、今回の検討の進め方で議題になっている管理協会さんが行われているので、やはり我々の検討としては、これがどうこうという趣旨では決してありませんけれども、文化庁の審議会としての基礎資料というのでしょうか、そういう形での調査というものを、どういう形でも結構ですので、参考として上げていただいて、フランスではこうですというようなことを、できれば教えていただきたいというか、と思っております。参考にしていただきたいと思います。以上です。要望です。
(川瀬著作物流通推進室長) 補償金管理協会が海外調査団を派遣しておりますが、昨年の5月に行きました調査も、2回目の調査も文化庁の担当官が同行しております。それから、それ以外の国やその海外調査で言及された、例えば新たな変化の詳細等につきましては、御承知のとおり文化庁は国際課という組織があり、国際著作権に詳しい専門家もおりますので、そういったところから当該国の担当課に質問をしたり、資料を提供してもらったりしながら、随時、資料は提出させていただきたいと思っております。
(中山主査) その点、よろしくお願いいたします。今日のこれは、管理協会が配ったものを参考までに配ったという、そういう位置づけでよろしいですか。
(川瀬著作物流通推進室長) はい。前期の委員会のほうで、第2回目の調査、第1回目もそうですけれども、直後に一応、概要ということで、概要ペーパーを示しながら担当のほうから御説明をさせてもらいました。今回、配付しましたのは、それの詳細版ということで配付しておりますので、私どもとしては、前回、概要版ですけれども、説明をもう既にしたという心づもりで、今回は詳細版を参考ということでお配りさせていただいたわけでございますので。ただ、先ほど言いましたように、これからそういった具体的な制度設計をする場合には、当然、諸外国でどういう制度になっているのか、または諸外国で、現在、どういうような問題点があって、どういうような対応策が考えられているのか。またEUは、またEUでまとまりがあって、著作権の私的録音の問題についても検討しておりますので、そういった動向がどうなっているのかというようなことは、非常に我が国の制度設計をする場合にも重要な点でございますので、その辺は私どもも心して対応したいと思います。
(中山主査) これは正規の参考資料に上がっていないので、審議会としては、これは参考資料という趣旨でよろしいですか。
(川瀬著作物流通推進室長) すみません。内実を言いますと、参考資料なのですけれども、やっと印刷が間に合ったので、それで急遽お配りしたということです。すみません。参考資料番号を打っていないのですが、気持ちとしては正規の資料ということですけれども、本当にきのうぐらいに入手しましたので、単なる参考資料というよりも、これからこの委員会で活用していただく、または委員の先生が今後、制度設計等について御検討する場合の参考にしていただくと、そういう位置づけです。
(中山主査) わかりました。議事録と一緒にホームページにも載せるという趣旨ですね。正規の参考資料ということになりますと。
(川瀬著作物流通推進室長) 何分、分量が多いので、一応、概要版でホームページに載せる資料にさせていただきたいと思うのです。ただ、もし申し出あれば、いつでも我が課で閲覧をしてもらうなりは、させていただきたいと思います。
(中山主査) わかりました。ほかに。どうぞ。井田委員。
(井田委員) 井田でございます。先ほどまでの、個々の議論と制度設計と並行して行うということについては、もう異論がございませんけれども、資料4の中でも「合意には至らず継続検討事項」というふうに一番最後に明記されていますし、もう、ほぼこれは決まった内容だという前提で制度設計に入ることのないように、ぜひお願いいたしたいと思います。
資料5に関してですけれども、第30条の範囲の見直しについてということで、特に課題の少ないものということは、もう明記されているのですが、課題の多いという中でも、前回の最後に申し上げましたけれども、レンタルの関係とか、それから、放送でも有料放送に関してもひと括りというか、範囲内ということで入れてありましたけれども、そういった例えばレンタル事業者の方の御意見も一回も聞いていませんので、そういう方をお呼びすることができないかとか、一部、有料放送も適法配信と同じような部分もあると思いますので、放送としてひと括りにするのではなくて、もう少し、そこら辺の詳細な実態を調べていただければ、そういうものも把握していきたいなというふうに考えていますので、よろしくお願いいたします。
(中山主査) それは事務局には、よろしくお願いいたします。ほかに御意見。どうぞ。華頂委員。
(華頂委員) 華頂でございます。先ほどの津田委員からの皆さんがどうお考えかというご質問がありましたので、私だけお答えしたいと思います。映画は非常にシンプルです。資料7の3の のウにあるように、放送からの私的録音録画のみ許容しています。その上のアとイにあります、他人から借りたもの、それからレンタル店から借りた、まあDVDになりますけれども、これは原則、複製禁止にしておりますので、はなから違法であるというふうになっています。30条の範囲の見直しなのですけれども、 にあります、 のアですが、違法サイトからのダウンロードによるコピー、これはぜひとも外に出していただいて、違法行為にしていただきたいというふうに思っております。補償金にかかわる問題について映画製作者としては、3の のウ、タイムシフト、レートビューイングによる複製ですね。ここが非常に重要だと考えております。以上です。
(中山主査) ありがとうございます。ほかに。どうぞ。野原委員。
(野原委員) 次回に向けての1点、お願いなのですけれども、先ほど、この海外調査報告の2のほうの71ページで、日本の制度がこうなっているという御紹介をしていただいたのですけれども、この金額、私は安いと思っていなくて、消費者がどう思っているかというあたりも大事かなと思っています。なので、1点は、できれば消費者のこの制度に対する認知度とか意識といったような調査結果が既にあるのであれば、ぜひ出していただきたいし、やはりそういったことも俎上に上げていくべきではないかと思います。
あと、もう1点は、この補償金の徴収額の用途ですけれども、どういうような方々にどういうふうに分けられている。団体ごとにという話は伺いましたけれども、その辺の実態のデータも出していただいたほうがいいかなと思います。よろしくお願いします。
(中山主査) 認知度については、以前、データがでておりまして、何パーセントか忘れましたけれども確かにかなり低い。それから、使途につきましても一応は、前期か前々期か忘れましたけれども出ていますので。特に新しい委員の方には、そこら辺のデータを回すようにしていただければと思います。
ほかに何かございましたら。どうぞ。森田委員。
(森田委員) 先ほどから出ています進め方と、それから小泉委員の御発言にも関係しますけれども、この今日の資料の5の1、2というのは、行きつ戻りつしながらやっていくというのが適当ではないかと思います。前期におきましては、主として1と2の(1)のあたりは、かなり資料も提出していただいて議論してきたわけですが、最終的な制度がどういうものになるかという、2の(2)の特に がどうなるかという点は、まだはっきりとした提案が示されておりません。この点は、前提問題が確定してから制度設計をするというのが一つの考え方かもしれませんけれども、前提問題としては幾つかの選択肢を残しつつ、仮にこういう選択肢をとったならば、この2の はこういう制度になるのだというふうに、どこかの段階で、大ざっぱなもので結構ですから、シミュレーションとして幾つかのパターンを示していただいて、その中で1の議論も行うということでよいのではないかと思います。先ほどの、例えばタイムシフトとかプレイスシフトの問題というのは、そのような目的であれは何回コピーしてもよいということなのか、それともやはり程度問題であって、それが非常に少ない回数にとどまる場合には補償金を要しないというように、補償金の額の算定にあたって、そのようなコピーの目的を考慮するというような行き方もあると思います。また、具体的に2の(2)の で、前回まで出ている大まかな方向でいきますと、適法配信とか、それから違法サイトからの複製は除くということですので、従来の補償金の対象になっているようなものであっても、今後は除くということになります。除くという場合には、それでは、実際にはどのような補償金の算定方式になるのかという点は、現行制度とは扱いが異なってくることになります。したがって、この2の のあたりについての制度設計について、幾つかのパターンを示していただいて、その中で、この1の問題が具体的にどこにどう反映してくるのかということを示していただいて議論をしたほうが、単に抽象的な理念だけでなくて、全体の制度のつくり込みの中で、どのあたりを議論しているのかということがわかりやすくなるのではないかということを感じたものですから、その点を希望いたします。
それから、小泉委員がお話しになられました諸外国の制度も、具体的な(2)の のこの問題についてはどうなっているかというようなあたりで、調査報告書はいろいろ情報が盛り込まれていると思いますけれども、この中から重要だと思われる情報をピックアップして、ここでの議論の中に組み込んでいくための資料として、幾つかのものを用意していただいて、それをもとに議論をするということになりますと、諸外国の認識についても、委員の間の中で共通理解が深まるのではないかというふうに考えるものですから、そのように希望したいと思います。
(中山主査) ありがとうございます。確かにどこかの段階でシミュレートして示していただくと、議論しやすいかと思いますので、よろしくお願いいたします。
大渕委員、どうぞ。
(大渕委員) 今、森田委員が言われたシミュレーションの点に賛成でありまして、前期から繰り返し申し上げているとおり、やはり1番目の問題点と2番目の問題点はすべてトータルに関連して考えていくべきですので、しかるべき段階で、それらを組み込んだ形でシミュレーション的なものでやっていただければと思います。
そして、どこまで可能かは別として、大まかな数字でも結構ですから、大体のラインが出てきませんと、イメージがつかめずに、結局、抽象論、観念論になってしまいますから、理論的な、全体的な整合性という面だけでなく、実際の数字的な面からもアプローチしないと、なかなか結論に至らないと思いますので、これらの双方の面につきシミュレーションのような形でお願いできればと思います。その際には、やはり諸外国で実際にどうやっているかというのは、重要な情報だと思いますので、その点についても今申し上げたシミュレーションに沿った形で整理していただくと、いろいろと新しい視点も出てきて議論がしやすいのではないかと思います。
どの段階で行うのがよいかという点は、今後議論を実際に進めていく際に出てくるでしょうが、以上申し上げたようなシミュレーションを行わないと議論は収束しないのではないかと感じております。
(中山主査) 事務局としては、ちょっと負担がふえますけれども、なるべく出やすい形でシミュレートしていただけると、議論も速やかになると思いますので、できるだけよろしくお願いいたします。ほかに何か。どうぞ。石井委員。
(石井委員) 今日は純粋に個人的な意見を申し上げますけれども、先ほどたしか河村委員からですか、御指摘があったと思いますが、そもそも第30条とは何のためにあるのだとなりましたけれども、私は、これはやっぱり基本的には消費生活、個人の生活というものを豊かにする一つのツールというか、方策という面はあるかと思います。ただ、そういいましても、じゃあ、それで機器もお金を出して購入して、そういう状況の中で権利者が蚊帳の外と言ったらあれですけれども、そういうところに置かれていいのかというところでの、一種のバランスをとるというものもあるのですけれども。ただ、そうはいっても、今、言っている第30条の範囲というのは、本当に全部が豊かな生活のためなのか、ひょっとしたらグレイなというか、今となっては違法としたほうがいいのではないかなと思われるところも出てきたのではないかというのが、この1番目の「・」の見直しの範囲だと思います。私はちょっとまだ、どちらがいいのかは判断がつきかねているのですが、これはもし可能であれば事務局にお願いなのですけれども、何となく、この私的複製というのは、各国同じだというような感じも持たれている向きもあるかもしれないのですが、結構、これは違うのではないかという気もします。そういう制度の上に立って補償金制度というものもできているわけですので、例えばイギリスとかフランスとかドイツ、アメリカというところで、本当に日本と同じ範囲で、この私的録音録画が認められているのかということも、もし可能であれば示していただけると議論の参考になるのではないかと思います。
(中山主査) ますます事務局には重くなりますが、もしできましたら、よろしくお願いいたします。ほかに何か御意見、ございましたら。どうぞ。松田委員。
(松田委員) 第30条がどういう位置にあるかということ、それから、今日の発言の中では、消費者の負担がだんだん、技術が進むにつれて大きくなっているのではないかという趣旨の御発言がありました。私は決してそうではないのだということを、ちょっと最後に発言したいと思っています。第30条は、昭和45年時代には原則的な規定しかなかったわけでありまして、その後、各号が定められて、自動複製機器、これもテクノロジーとの関係ですよね。それから、第2号、技術的保護手段の回避に関する規定。これもまさに発展するテクノロジーとの関係で入ってきましたね。それから、2項のデジタル方式の私的補償金制度、これを導入したのも実はデジタル方式による複製が、それも私的レベルでの複製が容易になったという、発展するテクノロジーとの関係で設けられているわけですね。今、今度はどういう発展するテクノロジーや社会状況の中で、何号かが必要かということが確かに議論されているわけだと思います。
そうすると、どうしても今の著作権法というのは、発展するテクノロジーとの調整の問題を無視して、権利と利用の調整を図れなくなっているということは、私は現実としてあるのだと思います。まさに、そこのところがみんなの悩みなのだろうと思います。
第30条の原則的規定ができたときには、ベルヌ条約の規定を受けて、通常の利用、正当な利益、不当に害しないと、こういうようなルールのもとに承認されてきたわけですけれども、発展するテクノロジーが、いろいろな利用が可能になってくると、それだけではどうしても、このベルヌ条約の条項の範囲内の、特別な場合には当たらなくなってきてしまって、そして第30条を、テクノロジーを真ん中に置いて、利用と権利を調整するという、第30条にそういう機能がどうしても負担として起きてきてしまった。私はそういうふうに見ております。
こういう状況を見てみますと、実は権利者のためだけに、何か私的利用のところに補償金を取って権利を拡大しているというふうな視点で見るだけでは、ぐあいが悪いのではないかと思っています。というのは、これ、もし今言った第30条の1号2項を全然改善しないで、今までずっと引っ張ってきてしまったとしたら、これはもっともっと大きい問題が起こっていたのではないでしょうか。結局、権利者が市場における回収が、なかなか難しくて、第30条がどういう根拠としてあるのか、ベルヌ条約の違反ではないかというような議論さえ生まれてきてしまう。そこのところを3回の改正で立法してきて、調整してきて。第30条というのは、そういうつらい立場にある調整をしながらやってきているということを、ぜひ、ぜひ、ご理解願いたいというふうに私は思っております。
(中山主査) ありがとうございます。ほかに御意見ございましたら。どうぞ。河村委員。
(河村委員) 先ほど消費者はたくさん、多大に負担させられていると誤解をしているのではないかとおっしゃった委員がありましたけれども、私はとても少ない額であるかどうかとか、つまり、額がこうだからいいではないかというような考え方はとっておりません。認知度が低くて、薄く広く、どのような場合でも、買ったときに取られるというような制度というのは、本当にみんなから承認されて、導入されるべきだと思っています。そういう薄く広く取っていくものというのは、とても危険をはらんでいるからこそ、それが知らない間に出されているということの問題は、とても大きいと思っております。
それから、今、松田委員がおっしゃった機器の進歩という点ですけれども、一言、私、消費者として申し上げたいのは、技術の進歩によって的確な課金というのが可能になっている面も絶対に否定できませんので、被害ばかりが起きているとか、目に余る行為ばかりが横行しているというようなことではなく、現在のようにわからないところで広く浅く取るのではない、もっと的確な方法の技術が、やっと生まれてきたというふうにも考えられるのではないかと思っています。
(中山主査) ありがとうございます。ほかに何かございましたら。よろしいでしょうか。
ちょうど時間となってまいりましたので、本日の討議はこのくらいにさせていただきたいと思います。
次回以降も引き続きまして、資料5の検討の進め方に従って具体的に検討を進めてまいりたいと思います。
それでは、これを持ちまして、私的録音録画小委員会の第1回会合を終了させていただきたいと思います。
最後に、事務局のほうから連絡事項がございましたら、お願いいたします。
(川瀬著作物流通推進室長) 日程の関係でございますけれども、既に御案内のとおり、次回の小委員会につきましては、4月16日の月曜日の1時半から予定をしております。なお、その次につきましては、5月10日の水曜日の10時から。第4回目につきましては、5月31日木曜日の10時からの予定です。会場等につきましては、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。
本日は、どうもありがとうございました。
(中山主査) どうもありがとうございました。
(了) |