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資料4

私的録音録画補償金制度にかかる経緯

1. 補償金制度の経緯

(1) 第5小委員会(録音・録画関係)(昭和52〜昭和56年)
   昭和52年3月、西ドイツ(当時)同様の録音・録画の機器メーカー及び機材メーカーに対して補償金支払の義務を課する制度を導入する要望書が関係権利団体から文化庁に提出された。また、参議院文教委員会において、「放送・レコード等から複製する録音・録画が盛んに行われている実態にかんがみ、現在行っている検討を急ぎ、適切な対策を速やかに樹立すること」との附帯決議がなされた(注1)。
 これらを背景に、昭和52年10月、著作権審議会第5小委員会での検討が開始された。検討結果として、昭和56年6月、
(注1) 昭和53年4月18日(参議院文教委員会)
  ア. この問題についての国民の理解が十分でないこと
イ. 対応策についての国際的な動向を見極める必要があること
ウ. 権利者、録音・録画機器メーカー等の関係者の間でその対応策について合意の形成に至っていないこと
等の理由から、「現在直ちに特定の対応策を採用することは困難である」とし、「基本的な合意の形成に向けて今後関係者の間で話し合いが進められること」を提言した。

(2) 著作権問題に関する懇談会(昭和57〜昭和62年)
   第5小委員会の報告を受け、昭和57年2月、関係権利団体、録音・録画機器・機材のメーカー団体関係者、学識経験者等からなる「著作権問題に関する懇談会」が設置され、以来5年間にわたり検討を行った。
 検討結果として、昭和62年4月、第5小委員会の指摘する問題点のうち著作権等の保護に対する国民の理解という点については、一定の前進が見られるものの、「この問題を解決するための具体的な方策について、同懇談会において関係当事者間の合意を形成するに至ることは困難である」とし、「再度、著作権審議会において制度的対応策について検討すること」を要請した。

(3) 著作権審議会第10小委員会(私的録音・録画関係)(昭和62〜平成3年)
   第5小委員会や著作権問題に関する懇談会における検討と並行して、各権利者団体から補償金制度導入に係る要望がなされた。また、昭和59年以後、著作権法の一部改正の法案審議に際し、衆議院及び参議院の文教委員会において、私的録音・録画問題に対する制度的対応の推進に関する附帯決議がなされ続けた(注2)。
 これらを背景に、昭和62年8月、著作権審議会第10小委員会での検討が開始された。平成3年12月、補償金制度の導入について関係者の合意が得られる見通しがついたことから、同委員会は以下のように提言をまとめた。
(注2)  昭和59年4月27日(衆議院文教委員会)、5月7日(参議院文教委員会)、昭和60年5月22日(衆議院文教委員会)、6月6日(参議院文教委員会)、昭和61年4月23日(衆議院文教委員会)、5月15日(参議院文教委員会)
私的録音録画が権利者の利益を害しているかについては、「これらの実態を踏まえれば、私的録音・録画は総体として、その量的な側面からも、質的な側面からも、立法当時予定したような実態を越えて著作者等の利益を害している状態に至っているということができ、さらに今後のデジタル化の進展によっては、著作物等の「通常の利用」にも影響を与えうるような状況も予想されうるところである」、
国際的動向については、「国際的動向に照らしてみても、ドイツにおける制度的対応以降、最近のアメリカにおける立法化の動きまで含めて、先進諸国の大勢としては、私的録音・録画について何らかの補償措置を講ずることが大きな流れとなってきており、ベルヌ条約の関係想定に示された国際的基準との関係において何らかの対応策が必要であることを示している。」
とし、制度的措置を講ずるべきと結論づけた。また、具体的な制度について、
  ア. 一定の機器を用いた私的録音・録画について、従来どおり自由としつつも、これまでの無償という秩序を見直して著作権等の経済的利益を保護するため、著作権等に対する補償金制度を創設すること
イ. 著作権者等が、直接、私的録音・録画を行うユーザーから補償金(報酬)を徴収することが困難であることから、制度を実効あらしめるため、録音・録画機器及び機材(生テープ)のメーカーが、販売に際して、一定の補償金をユーザーから徴収し、著作権等に還元するシステムとすること
ウ. 対象となる録音・録画機器・機材については、この制度の円滑な導入のために、デジタル方式のものに限定することが望ましいこと
エ. 補償金の一部は権利者の共通目的のために支出すること
オ. 外国権利者にも権利を認めること
カ. 制度の具体化に向けて関係者間において更に詳細な検討を行うこと
とした。

(4) 平成4年著作権法改正
   第10小委員会の報告を踏まえ、平成4年臨時国会において著作権法を改正し、私的録音録画補償金制度を導入した(第30条第2項)。

2. 補償金制度の見直しの検討の経緯

(1) 法制問題小委員会における検討(平成17年〜平成18年)
    iPod等のハードディスク内蔵型録音機器等の普及等を背景に、平成17年2月、法制問題小委員会は、現行の私的録音録画補償金制度に関する以下の課題について検討を開始した(注3)。
(注3) 「著作権制度に関する今後の検討課題」(文化審議会著作権分科会 平成17年1月)で示された課題の一部
  ア. ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定について
イ. パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ、データ用CD−R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いについて
ウ. 対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式について
 検討結果として、平成18年1月、補償金制度が私的録音録画問題の解決に果たした意義を認めつつも、補償金制度上の問題、運用上の問題及び現行補償金制度の前提となる状況の変化について指摘した上で、上記のアからウの課題について、以下のように結論づけた。
  ア. 現在の補償金制度について様々な問題点を抱えたままでは、現時点で内蔵型機器の追加指定は適当ではない。
イ. 現行の補償金制度が内包している問題点から、汎用機器等を現行の補償金制度の対象とすべきでないとする意見が多数であった。
ウ. 現行の指定方式について、指定までに時間がかかりすぎること、指定制度は消費者には理解できず制度の理解を妨げる原因となっていることとの指摘が行われたものの、法的安定性や明確性の観点から、現行制度の下では現行方式は変更すべきでない。
 また、これらの結論を踏まえ、「私的録音・録画についての抜本的な見直し及び補償金制度に関してもその廃止や骨組みの見直し、更には他の措置の導入も視野に入れ、抜本的な検討を行うべきである」とし、見直しの結論については、「平成19年度中には一定の具体的結論を得るよう、迅速に行う必要がある。」とした。
 なお、検討に当たって十分留意すべき点として、
「国際条約や国際動向との関係に大きな留意を払いながら、私的録音・録画により権利者の利益が不当に害されると認められることのないよう留意する必要がある」こと、
「ユーザーにとって利用しづらいものとならず、かつ納得のいく価格構造になるよう留意する必要があるとともに、ユーザーのプライバシーにも十分留意しなければならない」こと
消費者の理解向上のための広報等の強化や共通目的事業の再検討等の当面の運用上の改善
等の指摘がなされた。

(2) 私的録音録画小委員会(平成18年〜)
   法制問題小委員会での検討結果を受け、平成18年3月、私的録音録画補償金制度の見直し等について集中的に審議を行うために、私的録音録画小委員会が設置された。
 同委員会では、権利制限の趣旨や私的録音録画の実態を踏まえ、第30条第1項で認められる私的複製の範囲を見直し、権利制限規定の対象外とする録音録画行為等について議論した上で、私的録音録画に関する補償措置の必要性について検討を行った。
 その結果、第30条第1項の範囲について、
  ア. 海賊版などの違法複製物やファイル交換ソフトなどにより違法に送信されるものからの私的録音録画
イ. 音楽・映像配信事業などの適法配信からの私的録音録画
については、制度改正を行う際の課題が少なく、制度改正は可能ではないかということで、概ねは合意が得られた。
 補償措置の必要性については、補償措置の前提となる私的録音録画の現状について、
  ア. 私的録音補償金管理協会及び私的録画補償金管理協会が行った実態調査の結果等から、平成4年の補償金制度導入時と比べて、「複製の総体」は増加傾向にある、
イ. 販売、レンタル、放送等の契約の実態からは、いわゆる「使用料の二重取り」が明示的に行われていることは、原則としてないと考えられる、
ウ. 権利者が著作権保護技術の導入を承知した上でコンテンツを提供した場合にも、一般的には、当該保護技術が許容している範囲内の私的録音録画に対する補償の必要性までも否定したとはいえない、
等と整理した上で、補償金の必要性について議論したが、合意にはいたらず、継続検討事項とされた。


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