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文化審議会

2003年10月6日 議事録
文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第6回)議事要旨

文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第6回)議事要旨

  日  時   平成15年10月6日(月)14:00〜16:00
場  所 文部科学省分館第201・202特別会議室

出席者 (委員) 
大渕、久保田、後藤、高杉、細川、松田、前田、光主、三村、山口、山本、吉田の各委員、齊藤分科会長
(文化庁)
森口長官官房審議官、吉川著作権課長、吉尾国際課長、川瀬著作物流通推進室長、俵著作権調査官ほか関係者

配付資料

資料     文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第5回)議事要旨(案)  
資料   著作権法における罰則規定の概要  
資料   知的財産権が侵害された場合等に係る諸法律の罰則規定  
資料   著作権侵害に対する諸外国の罰則  
資料   「知的財産推進計画」及び昨年の「審議経過報告」における罰則に係る記載について  
資料   懲役刑と罰金刑の併科の必要性について(前田委員提出資料)  
資料   過去10年間における映像ソフト協会に係わる刑事告訴状況一覧  
資料   社交場「刑事告訴事件」一覧  
資料   ACCS会員関連   刑事事件一覧表  
資料 10   日本レコード協会関連刑事事件一覧  
資料 11   刑事通常第一審における著作権法違反事件   罰金額区分別終局人員数(全地方裁判所)  
資料 12   刑事通常第一審における著作権法違反事件   懲役刑期区分別終局人員数(全地方裁判所)  
資料 13   著作権法違反事件受理処理人員の推移  
資料 14   著作権法違反被疑者処分結果調査結果  
資料 15   「司法救済制度小委員会」の検討状況について(案)  

概   要 (○:委員   △:事務局)

1.    議事に先立ち、「罰則の見直し」について、事務局から説明が行われた後、「懲役刑と罰金刑の併科の必要性」について、前田委員から説明があり、その後、以下の通り意見交換が行われた。

   著作権侵害の事例について、4名の委員から資料が提供されているが、これらについて何か説明・御意見などがあればお願いしたい。

   刑事事件であると、本当に悪質な侵害であると懲役刑が科せられるが、執行猶予つきというケースが多く、とても残念に思う。その後、損害賠償請求も行うが、悪質なケースについては、罰金刑と併科ということもできるようにして欲しい。

   法定上の上限の金額が引き上げられているのに、実際の罰金額というのは余り変わっていない印象を受ける。

   全く同意見になるが、法定の上限を上げても、それで効果が上がるのか疑問である。
   また、利益の吐き出しについては考える必要があるだろう。刑法上は没収というよう   な条項が任意であるが、必要的没収のようなものがあったほうが良いのではないか。

   略式起訴で罰金額50万円となるような事例は軽微な例なのだと思うが、悪質であるからこそ公判請求をされているのに、執行猶予つきでは侵害し得になってしまう。抑止効果の観点からも罰金刑と懲役刑の併科は導入して欲しい。

   私も併科の規定を置く事に賛成である。法定賠償や3倍賠償の議論をすると、必ず懲罰とか、侵害の予防効果といったものは刑事罰の守備範囲であって、民事上の問題はそこには入り込むのはおかしいという意見になった。そうであれば刑事罰において、是非、犯罪の抑止に資するようにしてもらいたい。

   事前に逮捕というケースはどれくらいあるのか。

   今すぐには思い出せないが、我々の業界では証拠隠滅ということが良く行われるので、証拠の保全という視点から逮捕の要請が強い。

   刑事罰を上げることでどれほどの効果があるのかは疑問である。現実には、法定刑が上がっていても実際に科されている量刑は低いという実態があったり、ネット上の侵害についても、その数は膨大であり、刑事事件として訴えるとなると、侵害の中から違法性高い、可罰性の高い行為をピックアップすることになり、時間もコストもかかる。我々は情報モラルを説明するときに法定刑の大きさから説明するので、引き上げに反対はしないが、このような現実がある中で、特に確信犯に対してはどれほどの効果があるのか。

   併科することには賛成である。
   また、大半の侵害事件は、略式で50万円以下の罰金刑が科されるというところに問題があるのではないか。罰金の上限を上げるだけでなく、下限も上げてはどうか。学生が侵害主体となるような事件などに、低い罰金刑も科せるようでなくてはならないという考えはあるかもしれないが、そういう場合にはそもそも起訴猶予になるはずであり、問題は無いのではないか。

   賛成の意見が多いが、反対の立場の意見はあるか。例えば、過去の審議会でも出されていたかと思うが、刑や損害賠償の外縁を広げて行くと、グレーゾーンの部分があり、その部分についての、公表の機会というか、ビジネスの機会のようなものが萎縮するのではないかという意見もある。

   例えば翻案の場合など、法解釈に余地がある場合、実務上日本の警察はほとんど動かず、ほとんどが起訴してもらえない。したがって、そのような心配は要らないのではないかと思う。

   濫告訴、濫告発という、本来民事事件として争うべき事件を抑止しているという面はあるのかもしれない。また、立法上は法定刑の引き上げという手段に限られてきてしまうが、刑事裁判においては、検察官から求刑があった上で判決が出るので、実刑を重くしたいなら、求刑する際の量刑の基準をもっと上げるように、業界の方から働きかえるという方法もある。
   さらに、法定刑を引き上げるという点については、必要性があることはわかるが、侵害主体が学生であったりする場合もあるので、ドイツのように、営利目的の場合について特に課徴するような形の規定を設けるというのも一つの手段ではないか。

   刑罰の抑止効果を高めるには、いろいろなファクターがあって、個別にどういう刑罰が下されるかだけではなく、どこまで検挙してるかなども関係してくる。その点を整理して考える必要がある。
   まず、法定刑の上限ぎりぎりがいつも科されていて、それで上限を上げて欲しいのではなく、下のほうの刑しかいつも科されていないのに、上限をあげるというのは、どうかと思う。重い罪であるというメッセージを与えるという理由しかなくなるのではないか。また、求刑に対して量刑が低いのか、それとも求刑自体が最初から低いのか検討も必要である。
   また、先ほど営利目的の行為についてだけ、併科にするという話があったが、例えば悪質なものだけに限定するなど、分類して刑罰を科すという考え方もある。
   ただ、やはり抑止効果は刑事事件で対処するというのが大原則なので、ここが不十分なために3倍賠償でということにならないようにすべきだ。

   営利目的の行為について併科にするというのは良いのではないか。法定刑だけ上げても、実態変わらないだろうと思うが、新たな類型を作れば、運用する検察、警察もまた別の対応する可能性出てくる。著作権の侵害で営利目的での侵害という規定を入れると、特許侵害の場合とパラレルになって、それについては特許の侵害刑と同じような5年以下というような扱いも、バランスがとれて良い。

   今、著作権情報センターの研究所で「著作権と文化」という側面で報告書をとりまとめている。そこでは、人の発表物をさらに流通させたり、ネットに乗ったものについてはお互いに交換できるようにしたりすることが、文化の発展に資するのだという立場のグループがいる。そういう立場の人は、刑罰を強くすると、むしろ著作権法における規制という受け取られ方をするかもしれない。そういう人々のことも、特許法等とは違って、著作権法では考えたほうが良い。

   つまり、併科については格別反対の意見はないようであり、執行猶予になっても一定の罰金を支払わせる方が公平であるということで良いか。
   また、特許法並びにする場合には、「営利」、「業」などという概念を用いて、産業財産権とパラレルに考えられるものについて刑の見直しをしようというのが意見として出ていると、整理できる。

   特許法と著作権法とは、影響しあうという関係があるので、併科については著作権法が早めに導入すると、報告書の中で提案されるということではどうか。引き上げについては、私も賛成であるが、営利を目的とした場合というのを特化して別個に導入するということで記載することでよいか。

2.    「司法救済制度小委員会の検討状況について」

   4ページ目の(2)の2侵害とみなす行為の見直し、のところであるが、この○の2行目、「主観的要件については」の後の理由は、「実質的根拠がないから削除すべき」という趣旨である。

   4ページの(2)1間接侵害規定導入の必要性、の「積極意見」のところで、具体的な事業者のジャンルが列記されているが、「著作権侵害があった場合など、著作権侵害に間接的に関与するものに対して」というふうな一般的な表現にした方が良いのではないか。
   同じ観点から、4つ目の○のところについても配慮した方が良い。

   ただ、分科会での発表資料なので、ある程度具体的なイメージが浮かぶ方が良いと思う。CDプレス事業者と印刷業者については、間接侵害を導入することは適切でないという消極意見として出ているので、これで業者さんたちにご迷惑がかかるようなことはないのだろうと思うがどうか。

   やはり具体的な例がないと一般論の議論になりすぎるという風には思う。特にCDプレス事業者などは適当でないという意見や、表現の自由との関係では、特に演奏会などの会場提供者の場合には問題があるという意見など、反対論との関係が、積極論を外すと何だかわからなくなる。

   また、(2)2侵害とみなす行為の見直し、や、(3)差止請求制度の見直しについてというところで、これだけだと積極論だけでみんな賛成したみたいなので、反対意見として現行法制の解釈運用で対応することができるという意見についても、書いておいて方が良いのではないか。

   それはそのようにする。

   4ページ目の(3)差止請求制度の見直しについてでは、反対意見も結構強くあったと思うので、その点も書き加えたほうが良い。また、(2)1間接侵害規定の導入の必要性の「慎重意見」の2番目に「差止めについては不法行為の請求権認められていないため、制度改正が必要かもしれない」の「制度改正」とはどういう意味か。

   確かに、差止めについては立法により差し止めを認める必要があるという発言は反対意見として出した。限定した形でであれば、著作権法上、間接関与者に対して差止めを認める規制を限定的には認める必要性はあるのではないかと申し上げた。

   今、出された意見については全部確認させていただきたい。この資料は、分科会全体の中で多少議論してもらえるようなものにしなければならないのであり、議論をしたところで質問が出た時には、皆さん方の意見や、それから慎重意見も含め、口頭で私の方から加えさせていただきたい。さらに、分科会全体会で出た意見は、この小委員会に意見として出さなければならない。そして、また報告書になる前の議論をもう一回総括的にするということにはなる。
   今日の意見を踏まえ、必要な範囲内で報告をさせていただきたいと思うが、文章の修正についても事務局と私の方でもう一度修正させていただいて送らせていただくということにしたいが良いか。

(異議なし)
以上


(文化庁長官官房著作権課)

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