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著作権分科会(第20回)議事録

1. 日時
平成18年8月24日(木曜日)14時〜16時5分

2. 場所
霞が関東京會舘「シルバースタールーム」

3. 出席者
(委員) 青山,岡田,加藤,金井,金原,後藤,迫本,佐々木,佐藤,里中,佐野,瀬尾,大楽,田上,道垣内,常世田,土肥,中山,永井,福王寺,松田,三田,森,の各委員
(文化庁) 吉田長官官房審議官,甲野著作権課長,秋葉国際課長 ほか関係者

4. 議事次第
1  開会
2  議事
(1) 平成18年度使用教科書等掲載補償金について
(2) 平成18年度使用教科用拡大図書複製補償金について
(3) 「文化審議会著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」について
(4) 各小委員会における検討状況について
(5) その他
3  閉会

5. 配付資料
資料1−1   諮問(平成18年度使用教科書等に著作物を掲載する場合の補償金の額)
資料1−2 平成18年度使用教科書等掲載補償金について(案)
資料1−3 教科書等掲載補償金額比較表
資料1−4 教科書等掲載補償金関係規定
資料2−1 諮問(平成18度使用教科用拡大図書に著作物を複製する場合の補償金の額)
資料2−2 平成18年度使用教科用拡大図書複製補償金について(案)
資料2−3 教科用拡大図書複製補償金額比較表
資料2−4 教科用拡大図書複製補償金関係規定
資料3−1 「文化審議会著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」の概要
(※著作権分科会(第19回)議事録へリンク)
資料3−2 文化審議会著作分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)
資料4−1 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)
資料4−2 平成18年度著作権分科会私的録音録画小委員会の検討状況について
資料4−3 平成18年度著作権分科会国際小委員会の検討状況について

参考資料1 文化審議会著作権分科会委員等名簿
参考資料2 文化審議会関係法令等
参考資料3 文化審議会著作権分科会(第19回)議事録
(※著作権分科会(第19回)議事録へリンク)
参考資料4 「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)」に対する意見募集について

6. 議事内容
 

【野村分科会長】 それでは、定刻がまいりましたので、若干の委員の方は、まだお見えになっておりませんが、これから文化審議会の著作権分科会(第20回)を開催いたします。
 本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、議事の(1)及び(2)については、「使用料部会の調査審議事項に係る案件」ですので、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成18年3月1日文化審議会著作権分科会決定)1の(2)に基づき、非公開としたいと思います。なお、その内容については、同決定6及び7に基づき、議事要旨を作成し、公開することとしたいと思います。
 また、そのほかの議事については、特段非公開にするには及ばないと思われますので、公開としたいと思いますが、このことについて、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、傍聴者の方には、議事の(1)及び(2)の終了後に入場していただくことにしたいと思います。
 なお、現在、政府全体で「ノーネクタイ、ノー上着」という軽装を励行しているところであり、本日の分科会でも、軽装で差し支えないことにさせていただいておりますので、御了解いただきたいと思います。
 また、前回の会議は平成18年3月1日でございますが、それ以降に事務局に異動がございますので、事務局から紹介をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 7月11日付けで事務局に人事異動がございましたので、御紹介をいたします。
 文化庁長官官房審議官でございますが、これまで、辰野裕一文化庁長官官房審議官がおりましたが、文部科学省大臣官房審議官(高等教育局担当)に転出となりました。後任といたしまして、文部科学省大臣官房人事課長を務めておりました吉田大輔が着任をしております。

【吉田文化庁審議官】 吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【野村分科会長】 それでは、まず事務局より、本日の配付資料の確認をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 それでは、よろしくお願いいたします。
 議事次第の1枚紙に配付資料の一覧が書いてございますが、本日は大変多うございますので、議題の(1)と(2)に関係するものについては、それぞれまとめましてホッチキス止めをしておりますので、御確認いただければと思います。それから資料3‐1は、「著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」の概要です。資料3‐2が、その報告書(案)の本体です。それから資料4‐1が、法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)」、資料4‐2が、私的録音録画小委員会の検討状況について、それから資料4‐3が、国際小委員会の検討状況についての資料でございます。
 なお、参考資料といたしまして、当分科会の委員等の名簿、関係法令、それから前回の議事録を付けております。また参考資料の4としまして、「法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)」に対する意見募集についての資料も配付しております。不足等ございましたら、事務局までお知らせ下さい。いかがでしょうか。ありがとうございます。

【野村分科会長】 それでは、議事に入りたいと思います。

議事(1)平成18年度使用教科書等掲載補償金について
 使用料部会長及び事務局より説明があり、諮問案のとおり議決された。

議事(2)平成18年度使用教科用拡大図書複製補償金について
 使用料部会長及び事務局より説明があり、諮問案のとおり議決された。

 それでは次の議題(3)以降は、先ほど御承認いただいたとおり、会議の公開といたしますので、事務局の方は、傍聴者の入場の誘導をお願いいたします。

(傍聴者入場)

【野村分科会長】 それでは、次の議題に移りたいと思います。
 前回(6月20日)開催の分科会において御報告をいただいた「IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り」に関する法制問題小委員会の検討結果につきましては、資料3の「文化審議会著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」としてまとめていただいておりますので、中山主査より御報告をお願いしたいと思います。

【中山主査】 それでは、「文化審議会著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」につきまして、御報告を申し上げます。
 この報告書(案)につきましては、前回の第19回の分科会で御報告をさせていただいたものについて、6月21日より7月20日まで意見募集を行い、頂戴した意見を踏まえまして再度審議を行い、取りまとめたものでございます。
 本日は、意見募集でいただいた主な意見と、それを踏まえて、前回から大きく変更した点について、御報告をしたいと思います。
 まず最初にIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について、説明をいたします。
 意見募集では、このIPマルチキャスト放送による「放送の同時再送信」の取扱いにつきましては、レコード製作者や実演家の団体等からは、許諾権を報酬請求権にするなどの切り下げに反対、または慎重な意見が出されました。有線放送事業者の団体からは、有線放送事業者に課せられている公共的責務がIPマルチキャスト放送事業者に課せられない限り、同様の取扱いとすべきではないという意見が出されました。それから放送事業者の団体からは、同時再送信にあたっては、放送対象地域に限定し、有利な取扱いをすべきであるなどの意見が出されました。
 次に、有線放送による放送の同時再送信の取扱いにつきましては、レコード製作者や実演家等の団体からは、新たに権利を認めることを評価する等の意見が出されました一方、有線放送事業者の団体からは、既存の有線放送事業者に新たに経済的負担を課すべきではなく、基本的には反対であるという意見が出されました。
 次に、IPマルチキャスト放送による「自主放送」の取扱いについてでございますけれども、これにつきましては、レコード製作者や実演家の団体からは、権利制限の範囲を安易に拡大すべきではないという意見が出されました。それからIPマルチキャスト放送事業者の団体からは、自主放送の取扱い及びIPマルチキャスト放送事業者に対する著作隣接権の付与について早急に検討することを望むとの意見がございました。
 以上のとおり、主な意見を取りまとめて御紹介いたしましたけれども、これ以外にも多数意見はございました。本委員会としては、これらの意見を踏まえまして、再度検討いたしましたけれども、それぞれの御意見は関係者のお立場を反映したものであり、傾聴すべき意見とは思いますけれども、検討結果の内容を変更する必要はないと判断いたしまして、大きな修正はいたしませんでした。
 続いて、罰則の強化についてでございます。これは、報告書(案)の31ページ以降を御参照ください。
 意見募集では、デジタル化、ネットワーク化の進展により権利者の被害が瞬時にかつ広範囲に及ぶことになったことから、著作権者等の権利を守るとともに、著作権侵害行為の抑止力を高めるには、特許法等における刑罰とのバランスなどを踏まえて、著作権侵害罪に係る罰則強化等を図る必要があるという意見をいただいていたところであり、44ページの検討結果におきましては、大きな変更をいたしておりません。
 ただし、意見の中には、保護の外延が曖昧な著作権の侵害に対し、重い法定刑が科されるおそれがあれば、後発の創作行為に対し、かえって自由な創作活動の阻害をすることにもなりかねないため、罰則の厳罰化につきましては消極的な意見もあったことから、これらの意見を踏まえて、罰則を引き上げる範囲を必要最小限にとどめるべく、(3)その他の著作権法違反の罰則についての45ページ7行目に、「慎重に」という文言を追加いたしました。
 次いで、税関における水際の取締りに係る著作権法の在り方についてでございますけれども、報告書(案)の46ページ以降を御参照ください。
 意見募集では、著作権等の侵害物品の輸出を規制するために現行法で対応可能であり、著作権法にわざわざ規定を新設する必要性は感じられないとの意見があった反面、海賊版問題は全世界レベルで対処すべき問題であり、我が国も著作権等侵害品の世界流通を取締るべく、輸出・通過行為についても、法制度をどう整備すべきとの意見もございました。これらの意見を踏まえまして、55ページの検討結果におきましては、大きく変更したところはございません。
 以上のとおりでございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。
 ただいま御報告をいただきました報告書(案)につきましては、本日の審議を経て、著作権分科会の名前で公表することを予定しておりますので、その点も踏まえて、御意見、御質問等をいただきたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ、佐藤委員。

【佐藤委員】 日本レコード協会の佐藤でございます。IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いについて、2点お願いしたいことがございます。
 1点目は、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信について、レコード製作者及び実演家の権利を許諾権から報酬請求権に変更するとの結論が示されましたが、条文の規定の仕方によっては、報酬請求権の対象にさえならない外国のレコードが生ずるのではないかと懸念しております。例えば、アメリカの商業用レコードは、日本国内で放送に使用されても原則として、放送事業者はレコード製作者及び実演家に二次使用料を支払う必要がないことになっております。このため、今回の改正の際、アメリカのレコード製作者の権利が許諾権から放送における場合と同様、権利なしに切り下げられることがないよう、是非、十分御留意をお願いいたしたいと思います。
 2点目は、今後のIPマルチキャスト放送による自主放送の取扱いの検討にあたっては、著作権法における放送がその高い公共性から特別な取扱いがなされていることを十分理解して議論することが必要であり、IPマルチキャスト放送の積極的活用の名の下に、いたずらに権利制限の範囲を拡大することのないよう、強く要望したいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。

【野村分科会長】 ただいまの意見、最初の点について、何かございますか。

【甲野著作権課長】 最初の点につきましてでございますが、具体的な法案といいますか、具体的な形を考えるにあたりましては、私どもの方といたしましても、今、御指摘のありました点につきまして、留意をしながら作業を進めてまいりたいと思います。
 もっとも米国の方に回らないとすれば、それは条約に入っているか、入っていないかというところが問題であるのかもしれませんけれども、御指摘の点につきましては、今申し上げましたような形で、よく考えていきたいと思っております。

【野村分科会長】 ほかに御意見いかがでしょうか。加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】 日本経団連を代表しまして、加藤でございます。一言コメントさせていただきます。
 まず報告書全体にわたってでございますけれども、IPマルチキャスト等について、大変難しい課題に関しまして、大きな成果を出していただいて、ここまでまとめていただいたことに感謝申し上げたいと思います。
 昨年度、今年の1月に出された前回の報告書にも、幾つか改正事項が御提案されたわけですけれども、それらと併せて、速やかな法改正に向けて、是非努力をしていただきたいというふうに思います。
 それから1点、水際措置について、追加的にコメントさせていただきたいと思います。
 報告書の最後の所に、税関における水際取締りについて、コメントがございますけれども、著作権法で輸出が侵害行為とされた場合に、場合によっては、権利濫用のおそれがあるということを御指摘申し上げたいと思います。具体的には、税関において、権利の侵害品の輸出差止めが申し立てられた場合には、現在、特許権等について、非常に侵害の内容に争いがあり、専門的な分析が必要だという場合には裁判所で争うというようなケースがあり、そういうものを直ちに税関は取扱わず、水際措置の申請があっても不受理とするというようなことを御検討されているというふうに聞いております。
 同様に、著作権についても、侵害の状況が明確であるというような場合には、水際措置というのは大変有効な手段だと思いますけれども、例えばコンピューターのプログラムの非常に技術的な内容の濃いものについては、侵害かどうかなかなか簡単には明白にできないような争いが当事者間である場合がございます。そういうものについて、税関で直ちに水際措置がとられるという場合には、場合によっては権利濫用という結果になるということがございますので、そういうことに対する権利濫用防止のための措置を是非、今後も御検討いただきたいと思います。
 以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、ほかに御意見いかがでしょうか。佐々木委員、どうぞ。

【佐々木委員】 困難な課題について報告書をまとめられたことに、まず敬意を表しますが、やや印象論ですが、一言述べさせていただければと思っております。
 一般的に言って、著作権制度では、著作物の利用実態からその利用の積み重ねを通じて、利用者と権利者のバランスを取る必要性、あるいはその妥当性を、言うならば熟柿が落ちるような形で判断をして法改正をするというようなことが行われてきたというふうに思っております。
 今回の件は、利用者と権利者のバランスを取るという点においては、十分慎重に検討もされ、また関係者の意見も聴きながら進められてきたわけで、特に問題はないのであろうというふうに思っておりますが、やや放送と通信の融合のために著作権の扱いというのはどうあるべきかという、言い過ぎになるかもしれませんけれども、いわば理念先行型の法改正になりそうな感じがいたします。
 そういった意味で、今後の課題である自主放送につきましては、著作物等の利用実態がどうなるのか、そういった動向を十分踏まえて検討していくことが、当然のことですけれども、大切なのではないかというふうに思っております。このことが、著作物等の公正利用に十分配慮しながら、著作者等の権利保護をよく成し得ることであるというふうに思っております。
 印象論で申し訳ございませんが、述べさせていただきました。

【野村分科会長】 どうもありがとうございます。ほかの方、御意見いかがでしょうか。松田委員、どうぞ。

【松田委員】 この審議に加わった小委員会の委員として、今の佐々木委員の発言がありましたので、ほぼ同じ感想を持っておりますので、付け加えたいと思います。
 放送と通信の融合という理念が先行して、そして著作権法上の議論は、それを踏まえた上で、短期に結論を出せという状況にあったことは、絶対否定できないというふうに思っております。したがいまして、この報告書は、自主放送については、今のところでは判断しないという結論になったのは、ある意味では、私は正しかったというふうに思っております。じっくりこの点については、IPマルチキャストないしは有線放送、その他の放送との関係で、正しい競争政策も踏まえて、著作権法上実施できるかどうかということを検討すべきだろうというふうに思っています。
 これから審議は始まりますけれども、今の先行型の、ある意味では結論がありきの審議を、この審議会に持ち込んでもらいたくないというふうに思っております。

【野村分科会長】 ほかに。それでは岡田委員、どうぞ。

【岡田委員】 今の松田委員、それから佐々木委員の御発言にも少し関連するかと思いますが、27ページの(2)具体的措置内容の4行上の所です。「IPマルチキャスト放送事業者に公共的役割を与え、有利な取扱いを根拠付ける重要な要素の一つと考えられることから云々…」とありますが、この文章はIPマルチキャスト放送事業者に対して有利な取扱いをし、優遇するための方策を述べたようにしか受け取れません。
 この報告書を客観的に読めば、全体的に権利者よりも利用者の方に目が向いていると、誰しも感じるところでありまして、もう少し中立的で納得できる公正な結論を出してほしいと思います。

【野村分科会長】 この点については、何かありますか。

【中山主査】 あまり不公平な文章と思ってはいないのですけれども。要するに、ここで書いてあることは、再送信義務については、公共的な役割を与えることが大事だと、だから、政府部内でも早急に検討して法的措置をとれと言っているわけですから、特にこれは結論ありきとか、どちらに有利とかいう話の文章ではないように思うのですけれども。

【岡田委員】 私は、そう感じましたので。書き方の問題かもしれませんけれども、「有利な取扱いを根拠付ける重要な要素の一つ」ということは、やはり有利な取扱いをしたいと、だからこう書かれたのだろうと読まざるを得なかったのですけれども。

【中山主査】 それは、IPマルチキャスト放送についての再送信について、何らかの特別な地位を与える、措置を与えるとすれば、それは何らかの公共的な理由にはあるだろうと。だから、それは政府部内で放送行政としてきちんとやってほしいということが、ここで書かれていると思うのですけれども。

【野村分科会長】 どうぞ。

【甲野著作権課長】 事務局から少し申し上げたいと思いますけれども、この部分につきましては、文言を整理する段階におきましては、IPマルチキャスト放送について、特別に何か有利な取扱いを積極的にやるというよりも、今回、同時再送信について、どういう対応をするかにつきまして、許諾権が働く部分を、結果的には報酬請求権とした部分がございます。
 そうしたところは、事業者にとりましては有利な取扱いということでございますので、もしそれを行うのであれば、公共的な役割ということが是非必要であるので、そこのところについても十分に対応すべきでありますので、それを書くという意味で、こういうような表現にしたところでございます。

【野村分科会長】 今の点は、事務局及び中山主査の御説明でよろしいでしょうか。特に優遇しているあるいは、優遇すべきであるという趣旨ではないということで御了解いただければよろしいと思います。ほかに御意見いかがでしょうか。

【中山主査】 では、一言よろしいでしょうか。
 自主放送につきましては慎重に検討してほしいという御意見が出まして、それは当然だと思いますし、慎重な検討が必要だと思いますけれども、もちろん結論ありきの議論なんていうのはありえないのですけれども、ただ、著作権法がある種のビジネスといいますか、技術の発展を阻害するというようなことがあってはいけない。それとの兼ね合いで慎重に検討すると。決して結論ありきということではないということは、御理解願いたいと思います。
 ただ、あまりこれが世界に遅れますと、それはやっぱり日本のためにもよくないし、かといって、理念先行で行って、実態がないのに結論を出すというのもよくない。その中間で慎重な審議をしていきたいと思っております。

【野村分科会長】 よろしいでしょうか。ほかに御意見は。
 それでは何人かの方から御意見をいただきましたけれども、報告書につきましては、著作権分科会として、ここに示された案のように決定させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、各小委員会における検討状況について、各主査から御報告をいただきたいと思います。最初に法制問題小委員会の検討状況につきまして、中山主査から御報告をお願いいたします。

【中山主査】 法制問題小委員会におきまして、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)」を取りまとめましたので、御報告申し上げます。
 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会では、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等をはじめとした新たな問題のほかに、「著作権法における今後の検討課題」に沿いまして、私的使用目的のための複製の見直し、共有著作権に係る制度の整備について検討を行いました。また併せて、本委員会の下にワーキングチームを設置し、著作権法と契約法との関係及びいわゆる間接侵害について、引き続き検討を行いました。
 まず検討内容1として、私的使用目的の複製の見直しについてでございますけれども、報告書(案)の2ページ以降を御参照ください。
 近年の複製・通信技術の発達は目覚ましく、インターネットを通じた著作物等の交換、共有などにより、私的領域においても大量かつ広範囲に高品質の複製物が作成可能になっている状況でございます。それと同時に、技術革新により、複製の拡大ということだけではなく、私的領域であっても、契約や著作権保護技術を通じまして、権利者の利益を確保することも可能となってきております。
 このため、現行法の制定当初は予定していなかった、このような事態に対応した適切な権利保護の在り方につきまして、検討を行いました。検討結果につきましては、4ページ以降を御参照ください。
 私的複製の範囲の検討課題につきましては、私的録音録画の在り方と密接に関係する課題でありまして、権利の保護と著作物等の公正な利用とのバランスを図る方策として、いずれの部分を補償金で対応し、またいずれの部分を著作権保護技術等で対応し、あるいは私的複製の範囲としておくことが適切なのかといったことにつきまして、一体的な議論が必要であるということから、私的録音録画小委員会における検討の状況を見守り、その結論を踏まえて、必要に応じて、私的複製の在り方全般について検討を行うことが適当であるという結論を得ました。
 検討内容の2といたしまして、共有でございますけれども、近年、共同著作物の作成が増加するなど、社会の実態に変化が見られておりますけれども、共同著作物に係る規定の見直しについて、実務の状況を踏まえて、検討を行ってきたところでございます。検討結果につきましては、11ページ以降を御参照ください。共有に係る権利の取扱いにつきましては、共有者間における契約で定めることが多く、権利関係の明確化の観点からも、個々の状況に応じて、契約で処理することが望ましいことから、現時点において、立法上措置する必要はないとの結論を得たところであります。
 次に検討内容3.契約・利用でございますけれども、契約・利用ワーキングチームの検討結果につきましては、報告書(案)の13ページ以降を御参照ください。契約・利用ワーキングチームでは、いわゆる契約によるオーバーライドについて検討いたしました。著作権法の権利制限規定につきましては、その規定に反する契約が直ちに無効になるわけではないという意味で、「強行法規ではない」と結論付け、そのような規定をオーバーライドする契約の有効性を判断するにあたっては、ビジネスの実態全体を見て、制限の程度・態様やその合理性、関連する法令の趣旨等を考慮する必要があるため、幾つかの要素を特定して、ある類型について「一般的に」その有効性を判断することは困難であるとされました。
 したがいまして、現行著作権法上において、直ちに立法的対応を図る必要はないと考えられ、この契約による著作権法のオーバーライドの問題につきましては、今後の議論の蓄積を待つことが適当であるという結論を得ました。
 検討内容4.の司法救済ワーキングチームでございますけれども、これは報告書(案)の15ページ以降を御参照ください。
 司法救済ワーキングチームでは、いわゆる「間接侵害」について、裁判例からのアプローチ、外国法からのアプローチ、民法からのアプローチ、そして特許法からのアプローチの四つの観点から検討を行い、特に本年はドイツ、フランス、アメリカ、イギリスの主要4法制の比較法研究について、精力的に検討を行いました。
 以上を踏まえた上で、特許法第101条第1号・第3号に対応するような間接侵害を何らかの形で著作権法上も認めるという基本的な方向性については、特に異論はございませんでしたが、それを超えるような間接侵害の考え方については、比較法研究を含めた徹底的な総合的研究を踏まえた上で、今後もさらに検討を継続していくべきものであるという結論を得ました。
 なお、本日御報告いたしました報告書(案)につきましては、お手元に参考資料4として資料が配付されておりますけれども、広く国民の皆様から御意見を頂戴すべく、明日から1ヶ月間意見募集を行い、今後はそれを踏まえてさらに検討をしていくという予定でございます。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、引き続きまして、私的録音録画小委員会の検討状況について、これも中山主査から御報告をお願いいたします。

【中山主査】 それでは、引き続きまして、私的録音録画小委員会より、検討状況について御報告を申し上げます。資料の4‐2を御覧ください。
 私的録音録画小委員会は、私的録音録画に関する問題について、本年3月に集中的な審議を行うために設置され、約2年間をかけて、私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しについて、検討をするということになっております。これまでに合計4回の検討を行いました。各会の検討内容につきましては、資料の下の表を併せて御覧ください。
 まず補償金の見直しを検討するにあたって、同制度を取り巻く状況の変化を把握する必要があることから、私的録音録画の実情の変化につきまして、関係団体の実態調査や関係業界の各種統計資料を踏まえまして、検討を行いました。
 また、私的録音録画に係るビジネスモデルと技術的保護手段の現状につきましては、理解を深めるために、著作権保護技術の現状や音楽配信、映像配信の状況につきまして、関係者からのヒアリングを行いました。
 以上を踏まえて、第3回、第4回におきましては、利害関係を有する委員から、論点となるべき事項を提出していただいた上で、議論を行い、今後の検討事項を整理いたしました。次回以降、具体的な事項につきまして、検討を開始いたします。
 なお、今後の検討にあたりましては、適宜、国内実態調査、海外調査を行いまして、それを議論に反映させていきたいと思っております。以上でございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは次に、「国際小委員会」の検討状況について、道垣内主査より御報告をお願いいたします。

【道垣内委員】 それでは資料4‐3に基づきまして、国際小委員会の検討状況について、御報告を申し上げます。
 本年度の国際小委員会は、今年の1月に取りまとめられました昨年度の小委員会の報告書の内容を踏まえまして、資料4−3の下の所に表になっておりますが、このようなスケジュールで検討しているところでございます。
 テーマは、大きく分けて二つございまして、一つはアジア地域等における著作権分野の海賊版対策の在り方、それからもう一つが、放送条約への対応でございます。
 先に2の方から申し上げますと、放送条約につきましては、今年の9月のWIPOの著作権等常設委員会が開催され、その条約についての方向といいますか、外交会議をどうするのかということが決まることになっておりまして、それを待ってその検討をするということでございまして、これが9月ですから、まだ行っておりません。でもおそらく問題になるのは、次のような点であろうというのが、ここに書いてあるところでございます。
 なお、最後のウェブキャスティングにつきましては、おそらくは、その対象としないということになるのではないかと思いますけれども、そこを除けば、早期の条約締結も不可能ではないのではないかという見通しでございます。
 第1の方に戻りますが、海賊版対策につきましては、今はまだ論点を出していただいている段階でございまして、各委員から様々な御意見をいただきまして、その中から問題点を抽出し、論点を整理して、徐々に議論しているという状況でございます。
 実態調査につきましても、「アジア地域等」と書いてございますが、例えばイタリアにおける日本のゲームソフトの海賊版の状況についての御報告とか、そういったことを踏まえまして、どのように効果的な海賊版対策をしていくかということを議論しているところでございます。
 何か御示唆いただけるというのであれば、ここでも御指摘いただければと思います。以上、御報告まででございます。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、まとめて質疑に移りたいと思います。
 なお、本日は法制問題小委員会の下に設けられておりますワーキングチームで座長をお務めいただいております大渕委員にも御出席いただいております。また、同じく座長をお務めいただいている土肥委員も含めて、それぞれ御検討いただいた事項については、適宜対応をお願いしたいと思います。
 それでは、ただいまの御報告につきまして、御意見、御質問がありましたら、御発言をお願いいたします。はい、どうぞ、佐野委員。

【佐野委員】 資料4−1の中の2ページ、私的使用のための複製の見直しのところなのですが、この項目は、私的録音録画小委員会においても議論されています。それで、特に私的複製と著作権保護技術との関係の部分は、やはり非常に重要だと思って、検討を重ねてきています。
 今回初めて、私もこの報告書(案)を拝見しましたが、私的録音録画小委員会の委員との意見交換がないままに、この案が出されたことは、私は非常に問題ではないかと思っています。
 昨年出された著作権分科会報告書では、私的録音録画についての抜本的な見直し及び補償金制度に関しても、その廃止や骨組みの見直し、さらには他の措置の導入も視野に入れて、抜本的な検討を行うべき、そして19年度中に一定の具体的結論を出すようにということが書かれております。その報告を受けて、私的録音録画補償金制度を検討する委員会が新しくできたわけです。
 法制問題小委員会と私的録音録画小委員会との関係というのは、様々な経緯があってできてきたわけですから、やはりこの報告書の案を出す前に、きちんと両方の委員会の委員の方々の意見を聞いた上で出していただきたい。さらに今日また初めて知ったのですが、これについて皆さん、つまり消費者、国民の意見を聞くとのことですが、この段階でこういう形でパブリックコメントを出されると、答える方も非常に混乱すると思います。内容に関して、私の希望としては、私的録音録画小委員会ともっときめの細かい整理をした上で、この報告書に関する意見を国民の皆様に聞いていただきたいということです。
 それから一つ質問があるのですが、この内容の中で、「解釈上」とか「立法上」というふうに区別して書かれていますけれど、私にはよく意味が分かりません。法律の専門家でもありませんし、解釈上の問題として扱うということは、要するに法律はもう改正しないで、このままで行くというのか、そこのところもお聞きしたいと思います。

【甲野著作権課長】 今回の私的複製の範囲の問題につきましては、法制問題小委員会として検討すべき項目としてあったことから、私的録音録画小委員会での検討事項とも密接に絡むことになりました。
 したがいまして、これをどのような形で検討したらいいのかにつきましては、法制問題小委員会の場でも議論がなされたわけでございますけれども、やはりこれは、私的録音録画補償金、そして私的録音録画の制度全体につきまして、せっかく一つの小委員会ができ、関係の委員の方々がお集まりいただいているわけでございますので、法制問題小委員会というよりも、まずはそこできちっとした議論をしていただくことがいいのではないか、そのようなことでございましたので、そういう方向でこの報告書案を取りまとめたという経緯がございます。
 したがいまして、確かに私的録音録画小委員会に属していて、法制問題小委員会には属していない委員の方々の、事前に目に触れることはなかったのかもしれませんけれども、まとめた内容といたしましては、私的録音録画小委員会の先生方の意向に十分沿ったといいますか、意に反するものではないのではないかと、私どもとして思っていたところでございます。
 それから、解釈上あるいは立法上というふうにありましたけれども、一つ一つの所におきまして、様々な使い方がなされているかと思います。一律に、ここの件につきまして、これは「解釈上」というふうに書いてあるから立法はしないのだとか、そのようなことまで踏まえまして用語を作ったわけではございませんので、「解釈上」とありましても、あるいは「立法上」とありましても、当然解釈ではどうすべきなのか、あるいは解釈でうまくいかないときには、立法すべきかどうなのか、そういうことも範疇に入れて、御議論をしていただければいいのではないかなというふうに思っているところでございます。

【中山主査】 立法上の問題というのは、これはもう立法しなければ、そのような結論は得られないときには、立法をするということ。解釈は多分、条文を解釈することによって、そうなるだろうと。裁判所もやることですから、確実には分かりませんけれども、そうなるだろうというので、普通は立法しなくてもいいわけですけれども、しかし立法の中には、確認的に立法するということもありえます。そうすれば、裁判所を拘束しますから、結論は明らかになると。ですから、今まさに課長のおっしゃったとおりだと思います。

【野村分科会長】 御説明をいただいたのですけれども、御意見はございますでしょうか。

【佐野委員】 今の解釈の部分は分かりました。ありがとうございます。
 ただ前段の部分で、まさに明日から意見を聞くということに関しては、私は賛成できません。是非一度、私的録音録画小委員会のメンバーの方と意見交換をした上で、国民の皆さんに案を聞くという形にしていただきたいと思います。

【野村分科会長】 これはどうでしょう。いろいろ御意見があろうかと思うのですけれども。

【吉田文化庁審議官】 佐野委員の御発言は、私的録音録画小委員会との連携というものが不十分ではないかという、こういう御指摘だろうと思います。
 先ほどこの法制問題小委員会で、この事項につきまして検討を始めた経緯、それと、その間に私的録音録画小委員会というものを新たに立ち上げて検討を始めたということの経緯、これは甲野課長の方から申し上げたとおりでございます。
 それで今回は、この4ページ以降の「検討結果」という所を御覧いただきますと、先ほど解釈上の問題、立法上の問題というふうなことがございましたけれども、例えば私的複製と契約との関係ということについては、これは先ほど契約・利用ワーキングチームの議論とも少し重なる部分がございますけれども、いわゆる私的複製を定めた30条の規定と、そしてそれにかかわる契約との関係について整理をしております。
 ただ、これについても、この4ページの下から3行目の所でございますが、「私的録音・録画については、私的録音録画小委員会において、検討を進めていることであるから、同小委員会においてこの点にも留意した検討が進められる必要があると考えられる」というふうにしております。
 また、その次の私的複製と著作権保護技術との関係につきましても、その結論部分は、下から2行目の所にございますけれども、これも、この私的録音録画小委員会において、この点に留意した検討が進められる必要があると考えられるということで、同じような形で、立法上の検討課題の補償金関係あるいは違法複製物等の取扱いということについても、同じような形にしておるわけでございます。
 それで最後のまとめということでございますけれども、ここは「したがって」という一番最後の3行の段落を御覧いただきますと、法制問題小委員会としては、私的録音録画に関する私的録音録画小委員会における検討の状況を見守り、その結論を踏まえ、必要に応じて私的複製の在り方全般について検討を行うことが適当であるということでございまして、まさに私的録音録画小委員会に、法律専門家だけではなくて、様々な分野の関係の方にもお入りいただいて、まさにそこで詰めた議論をしておりますので、法制問題小委員会としては、まずは自らこの点について何か結論を出すということではなくて、私的録音録画小委員会の方の議論を見守って、その方向性を見た上で、さらにこの法制問題小委員会で何か議論すべきことがあればすると、こういった形にしております。そういう意味では、語弊があるかもしれませんけれども、「私的録音録画小委員会の方に委ねる」というような、そういった中身のものであるということでございます。
 そういう意味では、この私的録音録画問題について、今の段階で、この法制問題小委員会が何か結論を出そうとしているわけではございませんで、検討の仕方、それについて整理をさせていただいているということで御理解いただければと思います。

【佐野委員】 今のお話でも確かに何回も何回もこの小委員会に委ねるという意味のようなことが書かれております。この文章で、国民に意見を聞くというのは、意見を出す方としたら、非常に混乱するわけです。さらにまた2年後に私的録音録画小委員会の報告書が出る前にも、多分、皆さんに意見を聞くような形になると思います。
 その時の関係とか、やっぱりよく分かっている方にとっては、よろしいかもしれませんけれども、一般消費者にとって、こういう形で書かれるときの意見の出し方というのは、やはり非常に難しいのではないかと思います。やはりそれも考慮が足りないのではないかなと思います。

【野村分科会長】 一応、これは小委員会の検討結果をここで御報告いただいているということで、小委員会としては、先ほど吉田審議官からもありましたけれども、私的録音録画小委員会との関係については、十分配慮した結果になっていると思います。ここで、小委員会の検討結果として小委員会でまとめられた所を修正するというのも、やや奇妙かと思います。
 両方の委員会の意見の調整についての御意見は御意見として十分伺いたいと思います。
 ほかの方、いかがでしょうか。松田委員、どうぞ。

【松田委員】 松田です。委員会の構造の点から今吉田審議官が言われたことは、私は一応分かりますが、佐野委員の今の意見は、もっと直截に言うならば、今、国民の前に出して、一応の中間の意見に決まっていますけれども、更に進めることについては、むしろ反対だという意見なのではないでしょうか。
 だとしたら、ここは、小委員会の上にある分科会なのですから、ここで議論して決めればいいのではないでしょうかと思うのですが。私は、それ以上の意見はありませんが。

【野村分科会長】 ほかの方、御意見いかがでしょうか。瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】 今、報告内容に関しましては、中途でいろいろ大変緻密な議論をされているということで、理解することはできます。今、方法論に関して佐野委員からもおっしゃられた分と、松田委員からおっしゃられた分もありますが、今ここのところで、議論する内容として、一応私としては、先ほどからずっと、内容に関してどういう経過があり、どういう状況にあるかということについて、一生懸命考えていたのですけれども、今の話は、比較的やや方法論的なお話ではないかというふうに思います。
 今の私的録音録画小委員会の内部でどのような議論がなされていたかということは、報告書以外には実は私は存じ上げませんけれども、その時点で例えばこれは表へ出すのか出さないのかという議論が、どういうステップを踏んでいくかという議論が当然あったと、私は今までの経験から考えておったのですけれども。
 その辺りはやはり、今松田委員のおっしゃられたように、ここでそれを国民に問うことがいいのか悪いのかを議論するべきなのか、内容についての議論をするべきなのかを、ちょっと整理いただかないと、何か内容と方法論が混じった状態で、我々も発言していくというのは、ちょっと難しいような気がする。
 通常でいくと、私自身としては、今のこの内容は途中経過であるために、途中での意見と最終結果を聞くということに、何らの不自然さははっきり言って感じませんけれども、そういう御意見もあるということでしたら、方法論についてか内容についてか、ちょっと分けて今話し合った方がよろしいのではないでしょうかという意見でございます。

【野村分科会長】 ほかの方、いかがでしょうか。はい、どうぞ。

【青山委員】 パブリックコメントの目的がどういうものであるかということにも関係すると思います。この内容で意見を聞かれて、どれだけの答えが出てくるかというのは、かなり難しいかもしれないと思います。ある程度コンクリートな意見が、結論が出てきて、これについてどう思うかということであれば、答えられると思いますが、今のこの問題については中間的な段階ですので、これで何か答えをしてくれというのは、先ほど佐野委員が言われたように、かなり難しいと思います。
 ただパブリックコメントというのは、きちんと結論が出たときにやるというのではなくて、こういう審議会がこの時期にここまで議論をしているということも広く知っていただくということも目的の一つであろうというふうに、私自身は考えておりますので、今日の報告の中にも非常にコンクリートの結論が出ているIPマルチキャストのような問題もありますし。
 けれども、ここの今の問題は、あまりこれからこういう検討をすると、今はここまで来ているということですので、程度、内容が違うと思いますけれども、それはそれとして、パブリックコメントにかけるということの意味は十分にあるだろうというのが、私の、これは個人的な意見でございます。

【野村分科会長】 いかがでしょうか。ほかに。

【中山主査】 では、一つよろしいでしょうか。今、佐野委員のおっしゃった問題は、主として私的使用目的の複製についてのことが中心だろうと思いますけれども、確かにこれは検討課題で、大枠だけを決めている段階であるのですけれども、この私的使用目的の複製というのは非常に大きな問題で、おそらくこのくらいの枠組みでも、いろんな意見が出てくるのだろうと思います。
 これも先ほど、今、青山先生がおっしゃったように、ここだということをきちっと決めてしまってからですと、私もいろいろな審議会に関係していますけれども、きちんと決めちゃったあとのパブリックコメントというのは、「てにをは」の修正ぐらいしかできないというのが実態ですので、この段階でこれを聞いてみるというのも一つの手かなという気がします。
 確かに細かい問題で、イエスかノーかという問題を聞くわけではないのですけれども、多分、いろんな私的使用の規定に関する意見というのは出てくるのではないかと思います。

【野村分科会長】 ほかに御意見いかがでしょうか。はい、どうぞ。

【佐野委員】 国民の皆さんに意見を聞くということは別として、私的録音録画小委員会と法制問題小委員会との意見交換というところに関してはどうなのでしょうか。

【野村分科会長】 それは事務局の方から、お答えいただきましょうか。

【甲野著作権課長】 今回のこの件に関しましては、法制問題小委員会の方で、私的録音録画の範囲につきまして、何らかの形で方向性を出すということではなく、また、その内容につきましては、私的録音録画小委員会の方に委ねるという形でございましたので、事前にこれを私的録音録画小委員会の方々とすり合わせをするというようなことまではしなかったわけでございますけれども、今後、両方の委員会におきまして共通する部分というものは、いろんなところで出てくることもあろうかと思いますので、そうした場合には、よく連携が取れるように、事務局としては十分配慮していきたいと思っております。

【中山主査】 佐野委員のおっしゃることはもっともで、これは審議会の小委員会の方でも、「二つの委員会の関係はどうなっているんだ?」という意見が確かにございまして、これから、それは私ども留意をして、議事を進めていきたいと思います。

【野村分科会長】 松田委員、どうぞ。

【松田委員】 私的録音の方はその委員会に任せて、そしてこの、言ってみれば分科会に上がってきたわけですよね。ということは、法制問題小委員会はこの段階では議論していないわけです。だとしたら、私はそれを反対しているわけではないのです。私的録音録画補償金の小委員会の委員会がまとめたものを、その内容について、現段階において私は格別、これを反対する意見を持っておりません。しかし、だとしたのならば、それは法制問題小委員会の名前で出すべきではないのではないでしょうか。その点は、いかがなのでしょうか。法制問題小委員会の下の検討委員会、ワーキンググループ、これならば、ひとまとめにして法制問題小委員会でいいのかもしれませんが、私的録音録画補償金小委員会に任せ、そしてその審議の下で出てきたものであるならば、その名前で出せばよろしいのではないでしょうか。
 私は理解を間違っていますでしょうか。ちょっと御説明いただけませんでしょうか。

【中山主査】 私的複製の問題と補償金の問題、これは密接に絡んでおりまして、私的複製、その全体を、この30条全体をどう考えるかという点と、補償金をどうするかというのは切り離しては考えられない。しかしいろんな都合で二つに分けたので、こうなったわけですけれども、法制全体の大枠は、この法制問題小委員会でやるということで、一応切り分けをしておりまして、それはそれでやむをえないのではないかと考えております。ここでこれを全部切ってしまうというわけにもなかなかいかない。そうすると、つまり30条の体系自体が、どうなってくるのかというのが分からなくなってしまう。そういう可能性が出てくるかと思います。

【野村分科会長】 どうぞ、佐々木委員。

【佐々木委員】 私は議論の経緯が分からないもので、やや外れたことを申すかもしれませんけれども、私的複製という大きな制度的な枠があって、その枠の中に私的録音録画があるわけですね。したがって、ある事柄については、私的録音録画ということを検討している専門的な部署において、きちんとまず検討してもらうというのが、一般的な筋だろうと思うのですね。そして、それを私的複製という大きな枠の中に当てはめてみたときに適切かどうか大局的な判断をしていくというのが一般的な流れだろうというふうに思います。
 したがって、この法制問題小委員会ですか、この法制問題小委員会が、ある部分について、私的録音録画の小委員会に検討を委ねて十分議論してもらうということは、やはり当然のことであろうというふうに思っております。

【野村分科会長】 ほかに御意見、いかがでしょうか。大渕委員、どうぞ。

【大渕委員】 私も、この法制問題小委員会と私的録音録画小委員会の両方に属しておりますけれども、これは多分、私が理解しているところでは法制問題小委員会としては、先ほどのような二つの問題、私的複製30条全体と、それから私的録音録画と両方にまたがる、非常にある意味でとり進め方の難しい論点について、とりあえず先ほど私的録音録画小委員会の方に委ねて、必要に応じてまた、それのフィードバック的なものを受けて、法制全体を取りまとめるということだろうと思います。これはむしろ取りまとめとしては、「委ねる」という方にアクセントがあって、もちろんやり方としては、委ねずに併行して両方ともやっていくという方向もあり得るわけなのですが、それはとりあえずせずに、私的録音録画小委員会の方に委ねて、それを見て必要に応じて検討を行うということなので、これは十分、法制問題小委員会の検討の方向性としては、一つのスタンスを示している。これについては国民に意見を問うて、いや、そのような形を取らずに両方とも併行してやりましょうというような意見もあり得るのです。
 そういう意味では、こういう形の、法制小委としては、こういう形で取りまとめたわけですが、それを国民に聞いて、そうでない意見を聞くというのは十分意味があるのではないかと思うのですけれども。

【野村分科会長】 永井委員、どうぞ。

【永井委員】 結論を得る前に、こういうパブリックコメントを求めるというのは大変結構なことだと私は逆に思いますが、パブリックコメントを求めるときに、一般的に非常に文章が難しくて、大体言ってくださる方は、利害関係者であるとか、非常に専門家が多いのですね。私的録音録画に関しては、国民的関心が非常に今高いものだろうと思うのですね。そういう場合に、一般の人から意見を受けるためのパブリックコメントの工夫をする必要がある。これは文化庁だけではなくて、全般的にそうなのですけれども、何を求められているのかがさっぱり分からないというような書き方が非常に多いのですね。その辺の工夫を是非お願いしたいというふうに思います。それが私の意見でございます。

【野村分科会長】 ほかに御意見いかがでしょうか。はい、どうぞ。松田委員。

【松田委員】 先ほどの回答で、私はまだ分からないから、もう一度聞かせていただきたいと思いますけれども、「小委員会」という名前で審議をしている以上は、法制問題小委員会と他の小委員会というのは、レベルとしては同じと考えるべきなのではないのでしょうか。ということは、この分科会から更に分かれた小委員会が私的録音録画小委員会、国際小委員会と法制問題小委員会と並列にあるのではないでしょうか。
 そしてもちろん、その法制問題小委員会が大きくなっておりますから、法制問題小委員会の中で、ワーキンググループができているときには、これは独立で意見を出すことができないわけで、小委員会、法制問題小委員会の方に上がってきて法制問題小委員会の名前で審議して、名前で出すと、諮るということは、これは適当なことだと思いますが、少なくとも私的録音録画補償が、小委員会というものができている以上は、この固有の委員会で審議をしたものとして出すべきではないでしょうか。法制小委員会が、それだとあまりにも大きくなりはしないでしょうか。佐野委員の危惧は、もしかしてその辺にあるのかもしれない。
 というのは、法制問題小委員会としては、審議をしていない部分についても、私的録音録画小委員会の方で、私的録音録画小委員会の方で審議をしたものを法制委員会の名前で出すということになると、何か級が飛んでいるのではないかという、こういう危惧から出ているのかなというふうに思いますが、私もこれは、この点については、よく分からない。
 私は、幸いにして小委員会に両方出ていますから、この場においても内容は分かっていますけれども、その形式を考えてみますと、「なるほどな」というふうに思わないではないのですが、もう一度、御説明願えませんでしょうかね。むしろこれは、事務局というよりは、分科会会長としては、どういうふうにお考えになっているかということではないかと思いますが。

【野村分科会長】 一応、小委員会が二つ並列で置かれているわけですよね。昨年度までは、法制問題小委員会の中で議論してきたわけですね。それを、今年度になってから二つに分けたということです。今松田委員が言われたように、法制問題小委員会の中に作るということではなくて、別途横に置いたということです。ただ、私的録音録画の問題は特に私的複製という大きな問題の中の一つの問題であって、言ってみればその中に組み込まれているようなことではありますけれども、あくまでも法制問題小委員会の中のワーキングとか、そういう位置づけではありませんので、それぞれ一応別個独立の小委員会ということです。
 ただ、今回ここの報告書にあるように、その私的録音録画の小委員会の議論の結果を法制問題小委員会の検討結果の報告の中に組み込んで報告するというようなスタイルではなくて、これは法制問題の小委員会の審議結果として、ここにまとめられているということです。そのことは、それは先ほど中山主査が説明されたとおりではないかと思います。
 それを、今こういう形でパブリックコメントを求めるのがいいかどうかということが、ここでの議論の対象であって、委員会としてまとめたこと自身について、こういうまとめはおかしいということではないと思います。佐野委員もそういう趣旨で発言されたのではないと思っていますけれども。どうぞ。

【中山主査】 いいですか。小委員会はもちろん並列であることは間違いないわけですけれども、ただ扱っている問題といたしましては、この法制問題小委員会で扱っている30条全体の問題が大きな問題で、その中のある特別な、特殊な部分が私的録音録画問題であるという、こういう、内容的にはそういう関係になっているわけです。
 30条全体をどうするかということは、これはかなり法的な問題ですので、当然そこの委員は、法学者を中心とした学識経験者が中心になっていると。しかし私的録音録画の方は、もうかなり技術的な問題も出てきます。学者だけではとても間に合わないところも出てきますので、メンバーは関係の団体からも入っておりますし、そういう技術がよく分かるような人が入っているという、そういう関係になっているわけです。
 したがって、この大きな問題、30条全体を扱うときも、当然その録音録画の方も、目配りをして書かなければいけないし、私的録音録画を扱うときにも、では30条全体の設計はどうなっているのかということを当然考えていかなければいけない。
 したがって、ここで少し私的録音録画の部分が出てきても、それはやむをえないのではないかと思います。むしろこれを切ってしまうと、30条を一体どう考えているのかということを、法制問題小委員会のその本来の目的が達せなくなってしまうのではないかという、私はそのように考えております。

【田上委員】 初めての議論が展開されていて、よく分からない部分もあるのですけれども、佐野さんの御不満というのは、私が憶測しますに、私的録音録画小委員会で議論していると。一方で、法制問題小委員会で、何人かの方は兼務されており、全体像が分かっている。佐野さんは、分からないまま、ここで私的録音録画の議論をされて、今日出てきたら、これ法制問題小委員会が私的録音録画小委員会に回したと。構造が分からないまま、ここでいきなりパブリックコメントを求めるのは、いかがなものかなというような疑問ではないかなという感じがするのですけれども、いかがですか。
 ですからやはり手続論とか、そういうたこつぼの中に放り込んでおいていきなりというのも、いかがなものかという気もしますので、運営の改善というのは、やはり求められるべきだと思うのですが、パブリックコメントを、だからやめると言わずに、こういう段階で1回求めて、どんな意見が返ってくるかをちょっと見てみるというのも、どうでしょうかね。それで、少し改善をしていくというのが、いいのではないかと思いますが。
 もう一つは、先ほど永井さんが言われたように、分かりにくいのですね。専門家の整理の仕方というのは、申し訳ないのですけれども、極めて正確に議論を精緻に展開して専門用語を使って出されることはよく分かるし、それが大切なことは分かるのですけれども、一方で、多くの人に意見を求めるときに、できるだけやっぱりかみ砕いて分かりやすく伝えるということがやっぱり必要ではないかと思います。その努力は今後も続けていかなければならないのではないかと。専門家の方、事務局にお願いしておきます。

【野村分科会長】 ほかに、大渕委員。

【大渕委員】 ちょっと付加的に1点だけなのですが。先ほど同じレベルの法制問題小委と私的録音録画小委員会との関係でいかがかということがあったのですが、私の理解では、まさしく同じレベルの二つの委員会で、ただ、その二つの案件は非常に密接に関連しているということであれば、ここでは法制問題小委員会の方で私的録音録画小委員会に委ねますという、そういう態度表明をして、こういうまとめをしているわけですが、逆に今度は理論的、ちょっとどの程度必要性があるかは、また今後見てみなければ分かりませんが、私的録音録画小委員会の方で、これはやはり、この部分は30条にかかわってくる問題だから、ここは委ねますという形をと執ってもいいわけです。
 そこは、別にどっちが上下とかいう話ではなくて、関連している委員会同士は、やはりその辺で連携を取って、これはひとつ、こういう態度を表明して、先ほど田上委員が言われたところに関連していると思うのですが、まさしくその中身ないし方法論も含めて、パブリックコメントで国民に問うてみて、それについて、ちょっと分かりやすいかどうかとか、その辺の工夫はまた今後あろうかと思うのですが。先ほど出ておりましたとおり、最後に意見を問うというのではなくて、こういうような執り進め方で、中身なり手続も含めてやっておりますよということで国民の意見を求めるというのは、非常に意味があることではないかというふうに思っております。

【野村分科会長】 土肥委員、どうぞ。

【土肥委員】 私も両方の委員会に出させていただいております。そもそも法制問題小委員会で私的録音録画の問題、補償金の問題というのは、これまで長い時間をかけてやってきたわけです。そこでの議論を受けて、この春の分科会の中で、私的録音録画に関しては、別途小委員会を立ち上げるということを、ここで決めたわけですね。
 したがって、この法制問題小委員会と別に、私的録音録画補償金に関する委員会を作って、そこでその専門的、集中的にやってくださいというのが、この分科会の御意見だったというふうに私は理解をしております。
 その際に、法制問題小委員会独自に私的録音録画に関して何らかの検討をするか、これは方法論として多分あったのだろうと思います。しかし30条の構成を御覧いただくとお分かりのように、私的複製の問題に関しては、これはもう2項という問題が厳然として存在するわけです。したがって、そこについては別途立ち上げたところの小委員会において、これは議論をするというのは、方法論としてごく当然のことで、この逆にやる場合は、おそらく相当異論が出るのではないかと思うのです。そういたしますと、これはごく当然の検討の仕方、運営の仕方ではないかと思います。
 今回のパブリックコメントで聞くところというのは、そういう意味では、特にピンポイントでこういうふうになったという形で聞く、この30条問題について聞くわけではないのですけれども、この30条問題というのは、法制問題小委員会からの議論をずっと引いていますので、先ほど青山委員がおっしゃったわけですけれども、透明性という点からしても、かなり長期にわたってこの問題を議論していますので、節目、節目でパブリックコメントをかけて聞くというのは、これは審議会の透明性を促進するという観点からも望ましいのではないか。その過程で、場合によっては、貴重な御意見を承ることもできるのだろうというふうに思っておりますので、この機会にやってはどうかという、御意見にもちろん賛成でございます。
 あと、法制問題小委員会と私的録音録画小委員会の連携といいますか意見の疎通をどうして図るかと、これは両方の委員長である中山委員が先ほど十分考えて今後やるとこういうことでございますので、それはもちろん私としては支持をしたいと思いますけれども、事務局におかれても、今後何らかの局面において、双方のそういう場なり、意見の交換をするような場を作っていただければいいのではないかというふうに思います。以上でございます。

【野村分科会長】 ほかに御意見いかがでしょうか。

【中山主査】 いろいろありがとうございます。確かに二つの小委員会の間の意見の疎通というのは足りなかったかと思いますので、今後はそれを留意するという点が第1と。
 第2は、パブリックコメントを作るにしても、文章が難しすぎるという点でございますけれども、これも明日までに間に合うかどうかは、ちょっと何とも言えませんけれども、今後これは大いに留意していきたいと思います。
 ただ、本体は、これはやはり正確な文章を使わなければもう不正確になりますので、場合によっては、例えば分かりやすいレジュメのような物を付けるとか、これは私個人の考えですけれども、何らかの工夫をして、なるべく多くの国民に理解をしていただくようにするという、この委員会同士の意見の考え方の、意思の疎通と、それからパブリックコメントをなるべく分かりやすくという、この2点は大いに今後留意していきたいと思います。

【野村分科会長】 では、いかがでしょうか。ほかに。はい、どうぞ。

【松田委員】 結論的に、今中山小委員長の、主査のところの取りまとめで、私はいいと思っております。
 しかし、ここで出てきたことは、法制問題小委員会とその他の小委員会はレベルとしては同じ。同じであるのならば、理論的には意見が違うことが現れる場合もあるわけです、理論的には。そうならないように連絡を取り合って、一つの意見にして、この分科会に一つの意見として出すべきが当然ではありますけれども、場合によっては、理論的にはあり得る。ということは、それぞれの小委員会で取りまとめたことは、それぞれの小委員会の名前で整理すべきだなというふうには思っております。
 しかし今回は、最終的な意見でもないことと、とりあえず広く諮って30条の問題と私的録音録画の問題とを国民から意見を聴するという段階でありますから、私はいささか、その名前の点について、こだわるようではありますが、今回はもうなしにして、このまま、この分科会では、分科会では、この名前で出すということで、取りまとめられれば、それはそれで問題はないわけですね。分科会の方が親委員会なわけですから。
 そういうことで、おそらく野村会長も、中山副会長もそういう意見で、ここで出されているのだろうということで、私は今まで質問の形で疑問を呈しましたけれども、今回に限って、このまま出すことについて意義がないということで、発言をさせていただきたいと思います。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、いろいろ御意見をいただきましたけれども、一応先ほど御報告いただいた報告書の形で今回意見募集をいたします。
 そして、この問題について、特に私的録音録画小委員会と法制問題小委員会との関係、あるいはその間の意志の疎通等については、それぞれの委員会で、今後、配慮していただくということと、それから意見の求め方について、これはもうちょっと先を目指さないといけないのかもしれないのですけれども、受け手の側の分かりやすさみたいなことについて、努力が必要ではないかと思います。このように委員会の報告書という形で意見を求めるということもありますけれども、ほかの省庁がやっているように、もっと端的に質問事項を書いて、それに補足説明みたいなものを付加するというスタイルもあると思うのです。いずれにせよ、こういう意見募集の仕方については、また今後、いろいろ事務局で検討していただくということにしたいと思います。
 今日の段階では一応、従来のやり方ですけれども、この委員会の報告書という形で意見募集をするということで、お認めいただけるでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、今後も各小委員会において、いろいろな本日意見をいただきましたので、引き続き御検討をお願いするということにしたいと思います。
 本日、議題は以上なのですけれども、まだ若干時間がございますので、各委員からいろいろ自由に御意見をいただけましたら、大変ありがたいのですけれども、いかがでしょうか。
 それでは、まず三田委員から、お願いいたします。

【三田委員】 一部新聞にも報道されましたので、御存知かとも思いますけれども、7月の頭に、著作権権利者の団体のかなりの数が集まりまして、著作権の保護期間の延長について議論をいたしました。現行の50年を70年にしていただきたいという要望を、各団体がほとんど満場一致で持っておりまして、9月には意見をまとめまして、記者発表等をやりたいというふうに考えております。それが一部新聞で報道されたわけでありますけれども、各団体によって、多少の意見の違いがあるのですけれども、ここでは文芸家、作家について、私の個人的な見解を申し述べたいというふうに思います。
 著作権になぜ保護期間、存続期間というものがあるのかというと、芸術作品というのは、それが世に認められるまでに、多少のタイムラグがあるということと、優れた作品については、何年間も多くの人に愛され利用されるということがあるからであります。
 特に、一般的に50年なり70年ということを考える場合に、孫子の代までというようなことをいわれているわけでありますけれども、まず第1点としては、人間が長生きするようになったということがあります。この場合、著作者が長生きするというケースもあるのですけれども、著作者が早く死んで、奥さんが長生きするというケースもあるわけですね。平均値を取って、みんなが長生きすれば同じことではないかという議論があるのですけれども、著作権法というのは、私権、私の権利でありますので、最も損をする人の立場になって、これを保護していく必要があるだろうと思います。
 例えばある作家の場合、ある作家というのは、例えば太宰治のような者を想定しておりますけれども、40前に亡くなられまして、奥さんがもう少し若いと、奥さんが生きているうちに、50年だと、保護期間が切れてしまいます。
 お嬢さんが二人おられます。これも有名な方ですから申し上げますけれども、自民党の津島派の津島さんの奥さんと、作家の津島佑子さんであります。太宰治の著作権は、もう10年近く前に切れておりますけれども、お嬢さん方は、これから30年生きられると思います。そうすると40年間、著作権が切れたままの状態で、自分の父親の作品が100円ショップ等で売られていくというような事態を目にしなければならないわけですね。
 御承知のように、太宰治の慰霊祭をやるときに、「桜桃忌」ということを言っております。あれは『桜桃』という作品があるからで、太宰治が酒場でデザートにさくらんぼが出てきたと。で、これをうちの娘に食わせたら喜ぶだろうなと思いながら、自分で食ってしまうというような話であります。芸術家のすべてがそうではありませんけれども、多くの芸術家は、自分の芸術を生み出すために、全身全霊を注ぎ込んで、家族のことは省みないというケースが非常に多いわけでありますけれども、しかし、家族がその作家を支えているから、芸術作品が誕生するということも言えるわけです。ですから、家族の内助の功というものを認めるということで、この著作権が作家の死後も存続し、また遺族に継承されるというシステムができているのだろうというふうに思います。
 特に、例えば檀一雄の著作権はまだ生きております。そうすると、娘さんの壇ふみさんが小説の中に登場人物として、まだよちよち歩きですけれども出てくるのですね。これから壇ふみさんが長生きしますと、作品の中に自分が出ているのに著作権が切れてしまうということも十分に起こるわけです。
 こういう事態を考えると、現在普通のサラリーマンの方でも、厚生年金は奥さんと半分ずつ分けるのだというようなシステムになっている時代に、奥さんが生きているうちに、著作権の保護期間が切れてしまうというようなケースが出るということは、大変に問題であるというふうに、私は考えます。
 それから第2点として、御承知のように日本は50年でありますけれども、諸外国、欧米各国は70年であります。このことで、非常に問題が出ております。つまり、本国では著作権が存続しているのに、日本だけで切れてしまって、著作権フリーになってしまうと。これは、日本が先進国であると自負している割には、大変に恥ずかしいことであるというふうに考えます。
 それから第3点としては、「戦時加算」というものがあります。これは日本が戦争に負けたために、10年間ぐらい著作権が機能しなかったのだということで、プラスで加算されているわけでありますけれども、同じように、一緒に戦争に負けたドイツやイタリアでは、この問題はもう解決しているのですね。日本だけが、いまだにまだ戦争の影を引きずっているということも非常に奇妙な問題であります。
 今までこれを胸を張って言えなかったのは、50年という欧米等の戦勝国よりも20年も短かったために、この戦時加算に対して胸を張って問題提起できなかったということでありますので、欧米と対等のフェアな状況にするということは、一刻も早く実現すべきことだろうというふうに考えます。是非とも、早急にこの問題を検討していただきますと同時に、この戦時加算の問題は、国際委員会の方でも検討していただきたいというふうに思います。以上です。

【野村分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、松田委員。

【松田委員】 私は実は先ほど手を挙げたのは、違うことで発言しようと思ったのですが、2回発言させてください。あとでもう一度やります。
 今の件なのですけれども、保護期間をどうするかという問題は、何十何年何月何日までというのは、いくら議論をしても議論が出てこないわけです。しかしながら、国際的なレベルというものはどうなのかということは、当然検討しなければいけないというふうに思います。
 それから、戦時加算の問題なのですけれども、解決した問題と言いますけど、実は最初からイタリアとドイツは、戦時加算はないのです。日本だけなのです。ドイツは平和条約が締結しなかったから、この問題に遭遇しなかった。イタリアは、拒否したから戦時加算はなかった。日本は戦時加算で、おまえたちが戦っていた間は保護しなかったのだから、それもプラスしろと、こういうことにされたわけです。
 しかし、戦っていたのは日本だけではありませんよ。連合国だって戦っていたわけで、連合国が日本の著作権を守っていてくれたのでしょうか。そういうことがあって、日本は守らなかったというのであれば、戦時加算は、私はやむを得ないと思うけれども、私はそういうことはなかったのではないかと。むしろ勝った負けたではなくて、お互いに戦っていた中で著作権を守らなかったのであれば、戦時加算を日本だけで押し付けられているのは屈辱的だと思います。少なくともこの点については、70年問題と併行して国内法制化にあたり議論して、何とか解決していただきたいと思っております。

【野村分科会長】 それでは、里中委員。

【里中委員】 三田委員がおっしゃったことに、漫画家の立場として、付け加えたいと思いますけれども。
 本当に著作権70年間というのは、漫画家にとっても、悲願なのですね。確かに家族とか周りの方の問題もありますが、今、海賊版対策であれこれ言っておりますが、よその国が70年間保護されて、「よその国」と一口に言ってしまってもいけませんが、いわゆる著作権先進国といわれるところは、70年どころか、有名なところでは、ミッキーマウスの著作権が切れそうになると、アメリカでは保護期間が延びるといわれております。そのミッキーマウスはどういうものであるかというと、漫画のキャラクターですよね。
 日本が早く切れてしまうと、何が起こるかといいますと、日本の今後素晴らしい経済的効果を生むであろう伝統的な漫画のキャラクターとか、アニメのキャラクターとか、あるいはよその国で漫画とかアニメーションにされるような日本の文芸の原作とか、そういうものが使い放題と言うと語弊があります、ちょっと下品な言い方で申し訳ないのですが、そうされてしまうわけです。私たちがまだ気づいていない、我が国が誇りを持って経済効果を上げることのできる素材は山ほどあるわけですね。それが、私どもにとっては非常にあっという間の出来事だとは思うのですが。
 例えば手塚治虫を例に挙げますと、亡くなりまして、やがてもうじき20年になろうとしております。そうすると、残り30年で、どこの国でも「鉄腕アトム」でも何でも、キャラクターグッズとして作れるのか、新しいアニメーションを作れるのかとなると、ミッキーマウスがたどった運命と比べて、非常に恐ろしい、何だか情けないなという気がいたします。ですから、是非、実際に「鉄腕アトム」の著作権をプロダクションが持っているのか、手塚治虫の遺族が持っているのか、そういう細かいことは存じ上げませんが、例として挙げさせていただきました。
 また文芸の方でも、文芸作品としてのその著作権、その文芸作品のまんまのという以上に、漫画やアニメーションの原作、映画の原作として使われるということも考えますと、やはり是非、もう70年は最低ラインだと思っております。
 そうなりますと、またアメリカでミッキーマウスの著作権が切れそうになると延びるかも分かりませんが、何もそんな変な競争するつもりはありませんけれども、実は国としての経済的な問題も抱えていると。そして、今海賊版対策で非常に苦労している分野が、漫画とかアニメの分野だということも考えに入れますと、いずれどういうことが起こるかという想像の上に立って、是非とも70年というのは、最低ラインで進めていただければとお願いいたします。

【野村分科会長】 佐藤委員、どうぞ。

【佐藤委員】 著作権者の方が70年と言われている中で、レコードの保護期間延長に関する検討についても、この場で何度かお願いしています。
 IFPI「国際レコード産業連盟」という国際的な機関があって、ここでは世界的に、このレコード保護期間の延長がファーストプライオリティーのテーマになっておりますので、是非、御議論をお願いしたいと思っています。よろしくお願いします。

【野村分科会長】 後藤委員、どうぞ。

【後藤委員】 すみませんが、せっかく保護期間の話題になりましたので。映画だけがもっと不当に、確かに映画は公表後70年なのですが、著作者である監督が著作権者でないものですから、全く門外漢に置かれているので、非常にちょっと映画だけがほかの著作物とは違う扱いになっておりますので、この他の著作物の保護期間が70年になるという契機にもう一度、映画の著作権のことも忘れずにお考えいただきたいというふうに思います。
 まだ最近、ちょっと70年になったばかりで、また蒸し返すようで申し訳ないのですが、この機に一言申し上げておきたいと思います。

【野村分科会長】 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

【中山主査】 ちょっといいですか。

【野村分科会長】 はい、どうぞ。

【中山主査】 期限の問題は、確かこれは議論、議題になっていますね、一応。ですから、議論はいたします。
 これは非常に難しい問題で、ただいま御議論で出ましたような根拠だけではなくて、もう少し経済学的な理由などがいろいろありまして、確かにアメリカでは期限が延びましたけれども、反対論も非常に強いし、そういう反対論が一体何を言っているのかということも、非常に分析して、我が国としてあるべき姿というものを検討していければと思っております。

【野村分科会長】 それでは、よろしいでしょうか。それでは、はい、どうぞ。

【松田委員】 今日のここでの議論は次の審議につなげられるということで、なるほどというふうに思いました。
 この分科会の審議に毎回参加しておりますと、この分科会それ自体は、少なくとも著作権の審議については、小委員会ないしは、その他の検討のワーキンググループの最後の取りまとめであるわけですから、当然ここを通過するのは当たり前であると思っております。それについては、いささかも異論はないのでありますけれども、ここで意見が出たことが議事録にとどめられて、そして、その後何も行われないということが、多々あるのではないかと私は思います。もちろんそれは発言する側も、どういう意味で言っているかということが明確でなくて、「要望を出します」という形で終わってしまっているので、要望が事実上あったということでとどめ置けばいいのだろうということで終わっているかのようになっておりますけれども。しかし、ここの委員というのは、小委員会よりも、ある意味では何を審議し、それから最終的に外に出すときの最終的な判断をする審議会でありますから、分科会でありますから、いささか、それぞれの委員は小委員会よりも重いのだろうというふうに思っています。
 現に、いろんな団体の利用者であっても、それから権利者であっても、そこでは著作権担当の部署の方が出てこられるのではなくて、会長さんとか理事長さんないしは副理事長さんという方々がここには出てきていらっしゃる。それで、発言をなさる。
 発言をなさるのであれば、発言する側も、それを議題として挙げろと。どういうふうに扱えというふうに明確に言うべきだろうと思います。ただ、聴き置いたらいいというのではなくて、結局そうなると議事録に残るだけになりますから、もっとはっきり審議として提出するのか、今意見としてとどめておけばいいのかということをはっきりすべきだろうと思っています。
 しかしながら、そういう言い方に問題があるとしましても、重要なことがその後何も審議されないで終わっているということは、私はあるのではないかというふうに思います。例えば、たまたまですが、前回の議事録を今パーッと見てみましたら、レコード業界からは、今と同じ発言で、隣接権の保護期間の検討をすべきであるという意見が出されました。それから芸団協の大林委員からは、同趣旨のことが発言されました。それから辻本委員の方からは、多分ゲームのことだろうと思いますが、デジタル著作物の再販に関する権利の在り方について検討すべきであるという、こういう意見が出ました。それから金原委員の方からは、出版社の権利についてということで、著作物の伝達するものに対する創作的な評価をすべきである、伝達する事業者の意欲を失わないように配慮すべきであるという意見が出ていて、これは明らかに審議する必要があるというふうに議事録に載っておるわけです。
 こういうふうに出されたときに、何だかスクリーンがかけられてしまって、その後何も議論をしないというのはいかがなものかと、私は思います。できれば会長においては、それがどういう趣旨であるかをやっぱり議長として、仕切っていただいて、そしてそれはとどめおくだけでいいのか、それとも小委員会で検討すべきなのか、別の小委員会を作るべきなのかということを、まさにこの分科会を実質的な議論の場にするためには、そういう進行をしていただきたいと私は思います。
 といいますのは、小委員会にいきますと、それぞれの立場の発言がむしろ出なくなりまして、一般的な意見、一般的な見解というものが先行してきます。ここはまさに利用者とそれから権利者と両方が出ているわけですから、その意見をもう少し尊重した形で、この分科会を審議していただくという方が、この分科会が活性化するのではないかと、私は思っております。
 これはもちろん、これをどういうふうに審議しろというふうに私は言っているわけではありません。ここで、私の意見を述べておきたいというふうに思います。

【野村分科会長】 現在、小委員会、各小委員会で取り上げられている課題については、その節目で、この分科会で報告いただいて、そこでいろいろ意見を言っていただいて、それは各小委員会で十分議論に反映されていると私は思っています。
 それから、それ以外に例えば今の保護期間みたいな問題については、中長期的な課題というのは、2年、3年前でしたか、一応まとめられています。その優先順位プライオリティーについてはいろいろあるとは思いますけれども、一応そこで課題として取り上げられているものについては、順次この審議会で取り上げていくということになっていますし、それから、ここの委員は1年単位で替わっていっているわけですけれども、各年度で、今年度について、どういう議論をするかということは、大体年度の初めに、もう議論されていますので、全くここで話を聞いて、そのまま議事録にとどめておくだけということではないと理解しています。
 確かにその重要度について、いろいろ各権利者なり団体として、いろんな形で意見を出していただいた方が、もちろんそれはいいと思いますので、絶対文章でなくてはいけないというは言うつもりもありませんけれども、いろんな方法で出していただいて、事務局として、そういう世の中の動きに合わせて、各年度でプライオリティーをつけて、こういう問題を取り上げたいということで、従来やってきたというふうに思っておりますし、これからもそういうふうにやっていくということではないかと思います。
 ですから、こういう折にいろいろ意見をいただいて、それは、ここで言いっぱなしでおしまいですということでは全くないというつもりで、私もやっています。
 道垣内委員、どうぞ。

【道垣内委員】 松田委員のおっしゃったことの中で、実質的な議論を少しさせていただきたいと思いまして、せっかくの場ですから。
 先ほど戦時加算のことにつきまして、再検討すべきだという御趣旨の御発言がございました。それはそのままになりますと、今、分科会長のおっしゃったことに従って検討課題になりかねないわけですが、これはいささか無理な話ではないかと思うのです。平和条約に規定がある問題で、平和条約を改正するということは、およそ現実的にはない話であって、時間を待つほかないのではないかなと思うわけでございます。日本法として著作権の保護期間を70年に延ばすという話と、平和条約に基づく戦時加算の問題は、やはり違う話で、その後者も一緒に議論しろというのは、あまりちょっと私は考えられない話ではないかと思います。

【野村分科会長】 福王寺委員、どうぞ。

【福王寺委員】 日本画を描いております、日本美術家連盟の福王寺です。
 5月26日の国際小委員会で、少しだけ意見を述べて、これは議事録に載っていますけれども、三田先生のおっしゃっていたことを、国際小委員会で話しました。それで、今、著作権保護期間延長ということで、法制問題小委員会の方でも話し合っていただけるということで、国際小委員会の方でも、戦時加算の問題等を含めて、やっぱりその50年から70年というのを一応話し合うだけ話し合ってみてもいいのではないかと思うのですね。ただ、それがどの程度、進展するかということは、また別問題だと思うのですけれども、話し合うことに対して、意味はあると思います。
 また、私は美術の方の代表で来ておりますので、横山大観先生という方が、昭和33年に亡くなられて、あと2年ぐらいで著作権が切れてしまうのですね。大観先生の記念館が池之端にありまして、ほとんどその著作権の使用料で運営されているわけですね。そのアトリエも保存されていますし、そういったアトリエを見ることで、作家の人たちはとても勉強になるわけですね。それがまた50年で終わってしまいますと、その記念館を運営するのもすごく難しいということがありますし。そういった意味でも、70年というのは、ここは絶対話し合っていただきたいということがあります。
 あと一つ、疑問に思うのは、仮に70年になった場合に、50年経って切れてしまった権利者の著作物が、それがまた、70年に延びた場合に、それは救済できるものなのかどうかというのが、僕は素人なので、法律的な問題は分からないのですけれども、その辺について保護期間が切れた方についても考えていただければ、ありがたいと思います。以上です。

【野村分科会長】 松田委員、何かございますか。

【松田委員】 私の意見に対して、平和条約が現にある以上、それは不可能であると、70年問題とは全く別だというふうに委員から発言がありましたけれども、これは、私は事務局に聞きたいのです。
 あの平和条約がありますけれども、この問題を国内法上の問題として対処することと国際間の協議の中にこの問題を入れるということはできないのでしょうか。本当にできないのであれば、これは全く別問題だと思いますけれども、むしろできるのであれば、この際すべきではないのでしょうか。

【野村分科会長】 じゃあ、岡田委員。

【岡田委員】 私も同感です。平和条約があるから、あらかじめ、「だめだ」とあきらめるのではなく、ほかの方法論が探れないのかということを、考えてみるべきだと思います。国と国との話し合いで、では、戦時加算をもうやめましょうという合意が得られるかも知れません。平和条約があるからという考え方は、ちょっとここではやめてほしい、方法論を探ってほしいということです。

【野村分科会長】 これは、この問題を取り上げるとき、また議論になるのだろうと思いますけれども、今日の段階で、事務局で特に何か御発言があれば、どうぞ。

【秋葉国際課長】 今、御発言のあった点については、国際条約の話になりますので、外務省をはじめ、関係省庁との関係もございますので、その辺も含めまして、検討させていただきたいというふうに考えております。

【野村分科会長】 それでは金原委員、どうぞ。

【金原委員】 先ほど松田先生がおっしゃったことですが、やはりこの著作権分科会というのは、小委員会とやっぱりレベルが違うと思います。
 この委員会、著作権分科会は、やはり権利者、利用者双方の代表が出てきているわけですので、ここで出るやはり要望なり発言なり提案というものは、非常に重たいものだろうと思っております。それぞれが、言ってみれば勝手なことを言っているのではなくて、それぞれの団体、あるいはグループの代表として、意見を取りまとめて、多分それぞれ皆さん発言されていると思いますので、是非、ここで出た発言については、これは全部取り上げなくてはいけないということでは必ずしもないと思いますが、是非事務局の方で整理をして、出た要望、あるいは意見については、是非次回なり、次々回でもいいのですが、是非フィードバックをしていただいて、全然やらなくていいものも、もしかしたらあるかもしれない。
 しかし、やはり先ほど言いましたように重みがある発言だと思いますので、ぜひこの委員会でフィードバックをしていただいて、小委員会の方では、それぞれの団体が出てないケースが多いですから、ここしか発言の場がない、要望を出す場がないのに近いだろうと思いますので、是非、そのような形で運営をしていっていただきたいというふうに思います。

【野村分科会長】 それでは、いろいろ御意見をいただきましたけれども、ほぼ定刻がまいりましたので、本日はここで終了させていただきたいと思いますが、最後に事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。

【甲野著作権課長】 本日は、長時間にわたりまして、御検討、御審議いただきまして、どうもありがとうございました、本日取りまとめていただきました報告書につきましては、事務局より各委員に改めてお送りをしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

【野村分科会長】 それでは以上をもちまして、第20回の文化審議会著作権分科会は終了させていただきます。御多用の中、各委員におかれましては、御出席いただきありがとうございました。


(文化庁著作権課)

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