6.議事内容
- 今期の文化審議会著作権分科会国際小委員会委員を事務局より紹介
- 本小委員会の主査の選任が行われ、道垣内委員に決定した。
- 主査代理について、道垣内主査より大楽委員が主査代理に指名された。
- 以上については「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成十八年三月一日文化審議会著作権分科会決定)における1.(1)にあたり、議事の内容を非公開とする。
【道垣内主査】
それでは、第1回国際小委員会の開催にあたりまして吉田審議官にご挨拶をいただければと思います。
【吉田長官官房審議官】
第8期の文化審議会著作権分科会国際小委員会の開催にあたりまして一言ご挨拶を申し上げます。
委員の皆様にはご多用のところ、この小委員会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。この後、またいろいろと説明させていただきますけれども、近年、世界各国の著作権への関心は一層の高まりを見せているように思われます。また、多様化するという傾向もあるように思われます。
先進国ではグローバルなコンテンツの展開とともに海賊版対策をはじめとする保護の強化を重視するという傾向がある一方で、途上国では自国の経済発展という視点から国際的な著作権の議論にも従来以上に積極的な参加が行われるというような状況が出てきております。
このような状況になりますと、著作権ルールの国際的な合意形成におきまして非常に複雑な対応が求められるようになるわけでございます。さまざまな課題がこの分野にもございますけれども、本小委員会におきましては我が国が今後どのような取り組みをしていくのが適切なのかということにつきまして精力的なご審議をお願いしたいと存じます。
改めてお忙しい中をご協力いただいておりますことに感謝申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【道垣内主査】
どうもありがとうございました。この小委員会は文化審議会著作権分科会によって設置されたわけでございますが、その設置の趣旨と所掌事項につきまして事務局よりご説明いただけますでしょうか。
【高柳専門官】
資料2をご覧いただければと存じます。本委員会につきましては、文化審議会著作権分科会の決定に基づきまして、その他3つの委員会とともに設置がなされたものでございます。審議事項につきましては、2.(4)にございますとおり「国際的ルール作りへの参画の在り方に関すること」となっております。
また4.ですが、本委員会の審議結果につきましては分科会を経て最終的に公表するということになっておりまして、議事の手続き、その他各小委員会の運営に関して必要な事項は当該小委員会で定めるという形になっております。以上です。
【道垣内主査】
ありがとうございました。では、本日の会議の中身に入りたいと思います。まずは、議題(2)ということになっておりますけれども、WIPOの著作権等常設委員会の活動につきまして事務局よりご説明いただけますでしょうか。
【高柳専門官】
資料3に基づきまして第16回著作権等常設委員会(SCCR)の結果概要につきましてご説明させていただきたいと思います。
まず1.概要でございますが、今回のSCCRの会合は今年の3月10日から12日にかけて開催されております。日本からは政府関係者とともに本委員会の上原委員、増山委員をはじめといたしまして関係機関からも多数参加があったところでございます。
今回のSCCRの会合は、昨年のSCCRの2回にわたる特別会合で放送条約の外交会議開催に向けて議論がなされていたわけでございますが、こちらが合意に至らなかったということを受けまして、今後の議題及びその進め方につきまして議論がなされたということでございます。
また、今回、とりわけチリから知財を開発問題と連動させて議論するべきではないかというような趣旨から、「権利の制限と例外(Exceptions and Limitations)」というものに関する提案がございまして、これを新議題として定着させたい途上国側と、それを何とか回避したい先進国側で意見の対立が見られたというところでございます。
また視聴覚的実演条約、さらには放送条約につきましても今後の進め方につきまして議論がなされまして、また今後の新課題の提案がECからございました。
なお、議長につきましては、今回と次回のSCCRという限定でリエデス前議長が再任されるということになっております。
主な概要につきましては2.でご説明させていただきますが、次回SCCRにつきましては本年11月3日から7日にかけて開催するということになっております。
続きまして、2.の結果概要でございます。まず視聴覚実演の保護、放送機関の保護についてでございます。視聴覚的実演条約につきましては、これまでWIPOで理解増進のためのセミナー等々を国レベルあるいは地域レベルで多数行ってきたわけでございますが、その成果を事務局がストックテーキングということで取りまとめて、次回報告するということになっております。
さらに放送条約でございますが、こちらは引き続き継続して議論するのか否か。また継続する場合のスケジュールやその際の議論のベースはどのようなものにするのか等々について議論が行われたところでございます。また多数の国、またNGOからも早期締結に向けて作業を継続すべきという表明がなされまして、最終的には議長が論点整理ペーパーを次回SCCRのために用意するということで整理されております。
続きまして(2)の権利の制限と例外についてでございます。本件につきましてはチリ、ブラジルなどの共同提案でございまして、その趣旨といたしましてはいわゆる知識へのアクセスを保障するために著作物を権利者の許諾なく、いわばフリーユースできる権利制限、そのようなものについて明確なルールが必要だということでございまして、このような観点から今後議論すべき論点として3つの提起がございました。
1つ目はメンバー各国がどのような権利制限あるいは例外の規定を持っているのか調査するというものでございます。2つ目は権利制限と例外というのがイノベーションにもたらす効果、分析、このようなものをきちっとする必要があるのではないかです。
さらには3つ目として国際レベルでの権利制限と例外に関する最低限の規範設定、norm-settingという言い方をしておりますが、とりわけ社会的弱者の知識へのアクセス改善に関するものについて最低限のnorm-settingが必要ではないかというものでございます。
このような問題提起を踏まえまして、まず取り組みの第一段階として、次回SCCRにおきましてフォーラム等を開催したり、あるいは教育分野の権利制限と例外に関するWIPOにおける追加的なスタディ等の実施が提案されたところでございます。
この議題に関する各国のスタンスでございますが、途上国からは多少の温度差はございましたが、保護と利用のバランスの観点、あるいは開発アジェンダ推進の観点からチリの提案に対する支持表明がございました。
一方で先進国からは各国における権利制限と例外の導入、運用状況に関する情報公開については行う用意はある。しかし、国際例外での規範設定につきましては既にスリーステップテストをベースとした検証方法が定着しておりますので、いわばほかの判断基準あるいは個別具体的な権利制限と例外を規定することは必要ないのではないかという主張がなされたところでございます。
議論の結論といたしましては、引き続き次回のアジェンダとして維持していくということになりまして、次回SCCRでの情報公開のための会合の開催ですとか、セミナーの開催に向けたより詳細な作業計画を立てていくということになっております。
最後に(3)の今後の課題及び議題の優先順序というところでございますが、以上ご説明させていただきました議題以外にも、今後ほかにFuture Worksということで挙げるべきものはあるのかどうかという問題提起がございまして、ECから今後の課題ということで準拠法、権利者不明の著作物、いわゆるオーファンワークスの問題、著作権の集中管理、さらには追及権の4つの提案がなされました。これらにつきましては、自らの地域の利益の観点から出されたものかと存じますが、一方で権利制限や例外に関する動きを牽制する向きも大きいのではないかと思われます。
このECの提案につきましては多くの国から時間的制約から新たな議題の設定について、今非常に否定的な反応、あるいは検討の余地はあるけれどもさらに情報提供が必要であるというような意見が示されまして、次回SCCRでさらに検証を進めていくということになっております。
最後に、議題の優先順序です。いろいろな議題が出てまいりましたところでございますので、議題の優先順序はどうするのかというのが最後議論にございました。ブラジル、チリ等からは権利制限、例外、これを最優先として放送機関の保護等については、そのサブとして扱っていくべきではないかという発言。アフリカからは視聴覚実演、放送機関の保護、権利制限・例外、これらを同列として扱うべきとの発言がございました。先進国からは視聴覚実演の保護、放送機関の保護を優先して議論をすべきであるという発言をしたうえで、権利制限と例外につきましては情報交換は今後の課題として適切であろう。ただ、イノベーションへの効果分析、規範設定については反対である。また、そもそも権利制限と例外の部分につきましては情報が少ないという話と、検討時間が不足しているということで、次回SCCRでより詳細な情報を提案国から要求したいという意見が示されたところでございます。
以上、簡単ではございますが、SCCRの結果につきましてご報告しました。
【道垣内主査】
ありがとうございました。資料では、日本語で「権利制限と例外」となっている部分が、英語ではExceptions and Limitations、となっており、逆のようですが、まだ初期の段階ですので特に何が制限で何が例外かということも区分なく、使われているのだろうと思います。ただいまのご報告を踏まえまして何かご質問、あるいは日本としてとるべき立場、考え方、何かご意見いただけますでしょうか。
【石井委員】
石井でございます。第16回のSCCRでございますけれども、これもNHKからというよりはNHKが属しますアジア太平洋放送連合(ABU)として私どもも参加してまいりました。放送条約について、議論自体は厳しいというお話もありましたけれども、今後とも継続検討をするということで、私どもとしては一つ山を越えたのではないかと思っております。
その後4月に、先ほどのABUでは著作権部会を開きましたが、ここでも条約成立に向けて各国放送機関が各国政府に働きかけていくことが大事だというところを確認したところでございます。これについては引き続き皆様方のご支援をよろしくお願いしたいと考えております。
もう1点、これは質問でございますが、今後の議題を見ていますと、例えばECの提案にありますようにオーファンワークスの問題ですとか集中管理の問題、あるいは制限と例外の問題にしても、これは言ってみれば日本でもいろいろと他の小委員会等でも話題になっているものと通じるところもあるのではないかと考えていますが、これらについては日本政府としては何かお考えがあるかどうか、もし今の段階でありましたら、お聞かせいただきたいんですが。
【高柳専門官】
現時点におきましては、今回、新しくチリ、ブラジル等から提案があったということでございまして、また準拠法、オーファンワークス等々はECから口頭ベースで提案があったということで、細かい、具体的にどういうものをどういう形で議論していくのかという点については、ディスカッションペーパー等々もございませんので、これに対してどのような対応をしていくべきかは、現時点ではこれから議論していかなければならない問題ではないかと考えております。
ただ、一方で今後の国際小委員会での国際対応の進め方というところで今後、国際小委員会でどういうことを議論していくべきかということとも関係してまいりますので、ぜひこの国際小委員会の場でいろいろとご意見を賜れればと考えております。
【道垣内主査】
そのほかご意見はありますか。
【上原委員】
先ほど高柳さんからご説明がございましたが、今回はある意味では多様な話が出たというか、逆に言うと何のまとまりもない会議であったということがざっくばらんな言い方をすれば言えるのではないかと思います。
昨年の総会で放送条約につきましては、これを議題として維持すべしということで、総会マンデートで既にSCCRに振られておりますので、SCCR側としてもこれは維持せざるを得ないという状況はある中でどのような議論ができるかという問題。
それから、視聴覚実演につきましては特段総会から強いマンデートが出たわけではないのですが、その後放置されていたということもあり、改めてSCCRの世界に戻ってきたということがあろうかと思います。いわゆるWIPOインターネット条約という中で残されている2つにつきましては、改めてSCCRの議題になったということですが、視聴覚実演はECとアメリカのスタックした状態がとけないままですので、各国とも何とか前へ行けないかという希望は持っているものの、具体的な展望は持てないということで、ただ放送の方が昨年から今年にかけて条約成立の方向へ行く可能性があった状況が一歩後退しておりますので、SCCRでの議題としてさらに扱っていこうということで、一度戻ってきたという状況かと思います。
放送機関の保護につきましては、正直申し上げましてブラジルからは”almost finished”、ほとんど終わった件であるという発言があって、Exceptions and Limitationsをどんどんやればかまわないという発言もございました。ただ、それに対しては我が国をはじめといたしまして先進国あるいはアフリカ諸国などを中心といたしまして、いわゆる既存のテーブルに載っている議題については少なくともプライオリティを落とすべきではないという意見が全体の中で過半数以上、7割8割というところまでいっておりましたので、そういう意味で今後とも継続しようというモラルはあるという状況ではありますが、では具体的にどういうふうにものを進めていくかということにつきましては、正直申し上げまして今回放送機関の保護についても何ひとつサブな議論が進むという状況ではなく、今後、SCCRをどのようにやっていこうかという全体の議論の中に埋没していったという部分があります。
その中でもプライオリティがExceptions and Limitationsなのか、放送機関の保護なのかというところがまさに先進国と途上国の大きな立場の差として出ているというのが大きかった部分かと思われます。
ただ、Exceptions and Limitationsの取り扱いにつきましても先進国側が望んでいるものと途上国側が望んでいるものとかなり幅があるものですから、扱い方を気をつけませんと、今IGCでやっておりますTraditional KnowledgeとExpression of Folkloreの保護のようにやり方論だけで喧嘩をして延々と進むという、非常に虚しいことになって、結果としてほかのものへのお互いの妨害行為で終わるという、議論を前に進められない話になる心配がございます。次回の11月のSCCRまではリエデス氏が議長を続けることが内々に決まっておりますので、放送については新たなペーパーが出てくる。それから、Exceptions and Limitationsにつきましても新たな考え方をそこでまとめていこうということでございますので、我が国といたしましてもその辺の状況を最初から決め打ちにしてしまいますと大変動きがとりにくくなろうかと思いますので、大きな方向性の中で状況を見定めながら、会議が動く方向での貢献ということを見定めた動きを今後していくことが必要かと思います。国際小委員会でも前回の終わりのときに多少、準拠法などの問題も申し上げたかと思いますが、SCCRで出た話題のうち半分ぐらいが開発アジェンダないしはIGCの問題とも絡んでくることでございますので、そうした各委員会での議論も今後参考にしつつ、SCCRでの議論をどういうふうにうまく組み立てていくのかということを見ていかなければならない段階に今入ってきているのではないかと感じましたので、その旨をご報告申し上げます。
【道垣内主査】
そのほか何かございますでしょうか。
私から1点だけ申し上げます。SCCRの議論の進め方ですが、ECの提案は今後の課題としてという提案の仕方であるのに対して、チリをはじめとする国々は、今後の課題ではなく別項目として提案しております。その中には議題としてきちんと取り上げると決まったものと、そうでないものときっとあるはずだと思います。視聴覚実演と放送についてもワークスとして決まっていて、作業も始まっており、途中で止まっておりますけれども、それ以外のものとしてExceptions and Limitations等が挙がっている。要するに5つ新しい事項があるという位置づけなのでしょうか。
【高柳専門官】
今回の議論では今までの議題でございます視聴覚的実演条約と放送条約、これは引き続き議題として継続していくということになり、今回、新たにLimitations and Exceptionsにつきましても、継続的な議題として載せていきましょうということになっております。
一方で、ECが提案した4つの部分につきましてはそもそも議題として提案された段階でございまして、SCCRの場でそもそも今後議題案としてアジェンダに載せていくのか。それとも、すでにいろいろな議題がたくさんある中でマンパワーも時間も限られていますので、議題には載せないのかという前段階のところで次のSCCRでどうするかを議論していきましょうという形になっております。
【道垣内主査】
そうしますと、今回の会合での頭出しの最初の出し方としては同じレベルのはずですね。Exceptions and Limitationsが前から出てきたわけではなくて、今回、新たに4か国提案として出てきたが、それを議題にするということは今回決まったということですか。そこで差があるということでしょうか。
【高柳専門官】
Exceptions and Limitationsにつきましては今回、チリ等から提案があったわけでございますが、既に例えば12回か何かのSCCRで一度チリから提案がございましたので、それを踏まえて今回さらにSCCRでのExceptions and Limitationsの議論を拡張する形でチリからさらに提案があったということになっております。そういう状況から申しますと、Limitations and Exceptionsの方が議論は進んでいる。それ以外のECの提案につきましては、今回初めて提案があったということでございまして、具体的な中身につきましても全く細かい提案はECから出てきておりませんので、まさにこれからアジェンダに入れるべきなのかどうなのかというところが議論されていくということになろうかと思います。
【道垣内主査】
分かりました。ありがとうございました。
【上原委員】
今の点、高柳さんからお話ししていただいたとおりですが、Exceptions and Limitationsについては第13回のSCCRだったと思います。今ちょっと記録を持っていないのですが、そのときに既にチリがペーパーで出しておりまして、それはどちらかというと放送条約との関係で、そこの部分をできるだけ大事に煮詰めないと前へ進めないよというニュアンスが非常に強かったんです。その関係がありまして、SCCRの中の放送条約を詰めていく間に先進国側からもExceptions and Limitationsについてそれをすることによって放送条約が煮詰まっていくならば、どこまでが必要か必要でないか一定の討議をしましょうということになりました。例えばECなどからは必要に応じてこういう可能性のある例示列挙的なものを出しましょうかという話もされたことがあります。
それに対して最終的には先進国側がスリーステップテストを中心としてやった方がいいのではないかということであったのですが、これ自体は独立した項目かどうかは別にして、いわゆるパラレルあるいはインクルードされる形で放送条約の論議の中でもSCCRの中で論議されてきたということがございます。昨年の総会でもSCCRにおいて放送条約の外交会議がいったん御破算といいますか先延ばしになったということを受けて、このExceptions and Limitationsの大事さを強調する意見が出ておりましたので、その辺を受けているということがございますので、今回のチリ提案は前のチリ提案をさらに強化して完全にこれだけ独立項目、放送条約との関連づけが特段なくてもするという意味で4か国共同提案という形で出てきたという背景があります。その辺は今後何をやっていきましょうかという形での議長の呼びかけに対して、その場でECから例えばこういうものがあるのではないかということで言われた提案とはレベル差が歴史的にあるものだという背景だと思っております。
【道垣内主査】
よく分かりました。ありがとうございました。
そのほかに何かございますでしょうか。次回の11月のSCCRに向けて日本政府としてもECと並んで議題を多くしていくのが得なのか、あるいはその2つの条約に絞っていくためにその方向は支持しない方がいいのか。そうすると「制限と例外」の話が大きく扱われることになるけれども、それでいいのかとか、難しい立場だと思います。その他、特にご意見ございますか。
それでは、その点は今後の議論の展開を見るということにさせていただきたいと思います。
引き続きまして、今期の国際小委員会の進め方につきまして、まずは事務局から準備された資料に基づいてご説明いただきまして、この小委員会の委員の皆様に、ここで何をどうしていくかというご議論をいただきたいと思います。それでは、ご説明をお願いいたします。
【高柳専門官】
それでは、資料4につきまして説明をさせていただきたいと思います。今期の国際小委員会の進め方(案)ということでございますが、これを考えるにあたりまして、1.ということで現状認識を簡単に整理させていただいております。
具体的には90年代後半以降、先進国を中心といたしまして、いわゆるWIPOの場でデジタル化、ネットワーク化対応の条約策定というものに取り組んできたということでございますが、その中でWCT、WPPTが生まれてきたわけでございます。その後のいわゆるAV条約あるいは放送条約を議論をしてきたところでございますが、残念ながら現在のところ採択のめどが立っていないという状況でございます。
このような背景を考えますと、各国の知財に対する関心というのが2000年に入って以降、非常に多様化しているのかなと考えております。少なくとも途上国、昔は知財制度の導入に注力するということでやってきたわけでございますが、最近は国内の開発問題の対処手段として知的財産に着目している。したがってマルチの場で単に知財制度を自分たちが導入していくというのではなくて、自分たちの開発問題との連携を図る形で積極的に議論に参加するようになってきているかなと考えております。
また一方で先進国でございますが、著作権の保護やエンフォースメントの強化、このようなものが非常に重要だということであるわけでございますけれども、残念ながらマルチの場というのがこのような形で非常に議論が硬直化してしまっている。そうしますと、そのためにはより機動的な枠組みでやっていくべきではないかということで、例えば、複数国間の枠組みですとか、あるいはFTA等のバイの枠組み、このようなものを活用しながらどんどん別のルートでやっていくという傾向が非常に顕在化していくのではなかろうかと考えているところでございます。
このような状況の中で日本といたしましても、今までどちらかといいますと90年代後半以降、インターネット条約の締結に向けて、ある意味で非常に中心的な役割を担ってやってきたわけでございますけれども、このような非常に先行きが不透明な状況になっている中で、日本としてこのような状況の中で一体何ができるかを考えていかなければならないのではなかろうか。
また、もともと日本の自国の著作物の海外展開ですとか、海賊版対策での海外での侵害状況を踏まえまして、国益という観点からどういうふうに取り組んでいくべきなのかという視点も今一度改めて振り返ってみる必要があるのかと考えておりまして、このような点につきまして今一度日本の国際的なルール形成に向けたスタンスを明確化していく必要があるのではなかろうかということでございます。
このような問題意識を踏まえまして、国際小委員会におきましては今後の国際対応の在り方というものを議論していただければと考えております。
具体的な2.の今後の検討課題というところでございますが、現在、WIPOで議論されておりますインターネット条約、それ以外にもフォークロアの問題、あるいは先ほど説明させていただきました開発と知財の問題、さらにはそれ以外の日本として国際的に働きかけていく課題等々考えておりますので、そのようなものにつきましてどのような対応をとっていくべきなのかということを検討してはどうか。
また、その際、いわゆるWIPOを中心としたマルチの枠組みのみならずプルリあるいはバイ、二国間協議等さまざまな政策的な枠組みがございますので、このようなものをどのように活用していくかということもこの場でご議論いただければと考えております。
具体的な今期の検討課題ということでございますが、前期の国際小委員会で国際対応の検討の在り方ということでご意見を賜ったところでございます。資料5を見ていただけたらと思いますが、こちらに挙げておりますような内容を前期の国際小委員会でご指摘いただきましたので、このような点が具体的な論点ということで、今期の国際小委員会の論点になっていくのではないかと認識しております。
具体的にはまず上からご説明いたしますと、インターネット条約ということで視聴覚実演、放送条約等々につきましてこれをどういうふうに打開していくのか。マルチのフレームワーク以外の枠組みも補完的に活用する可能性はないのかどうかという意見がございました。また、途上国が非常に権利制限の例外ですとか伝統的知識、さらにはフォークロア等の保護のためのルール形成に向けた動きをマルチの場で活発化させておりますので、このような課題に対して日本はずっと反対という立場でいってしまっていいのか。あるいは日本としてもう少しよい立ち回り方があるのかどうか。このような点も論点としてあるのかなと考えております。
またP2Pによるファイル交換ですとか、動画投稿サイトなどを通じた一般個人のやり取りの侵害行為というのが国境を越えて深刻化しているという状況がございまして、このようなものについて各国が抱えている共通課題を国際的な枠組みの中でできることがあるのかどうか。そのような指摘も前期の国際小委でご指摘があったかと思っております。
また、海賊版対策につきましては、途上国で海賊行為がいろいろ行われているわけでございますが、非常に多様であるということで、そのようなものに対して効果的に対応していくためには、やはり各国の情報収集、それも効果的な情報収集の枠組みが必要ではないかというご指摘もあったかと存じます。このような点についてどのように対応していくのかというのが、また一つ大きな論点としてあるのかなと考えております。
さらに、以上のような大きな点につきまして、マルチ、FTA、プルリの枠組み、さらには二国間協議、あるいはAPACEプログラム等、国際協力の政策手段が多数ございますので、このようなものをどういうふうに連動、補完させていくべきなのかという点がもう一つ横串の議論としてあるのかなと考えております。
さらには最後に、国際対応に向けた対応の在り方の検討、その実施にあたりましてはもう少し民間、行政サイドで情報交換及び実務の双方の面で連携をとりながらやっていくことが不可欠ではないか。ここの国際小委員会の場もどのような形でそういうものにうまくご意見をいただくような形で連動させていったらいいのか。そのようなご指摘もあったかと考えております。
以上のような国際対応の検討の論点、このような部分につきまして、今後特に優先的に議論をしていくべきものは何かというあたりのご意見をいただきまして、今期の国際小委員会の課題に反映していければよいかなと考えております。
最後に3.の今期の進め方というところでございますが、いろいろな論点がございますし、また、このような問題には情報収集等々も必要になってまいりますし、より専門的なご知見を賜ってなければならないかなと考えられますので、まずは傘下にワーキングチームというものを設置いたしまして、その場でこのような細かい議論につきまして、各論点につきまして議論をいただきまして、情報収集等をしていただきまして、それをある程度整理していただいたうえで年度後半、この国際小委員会の場でワーキングチームの検討状況の報告という形であげていただくという形にしてはどうか、ワーキングチームの検討状況を踏まえまして、この国際小委員会で最終的に審議をして、報告書または審議経過報告ということで取りまとめていってはどうかなということで考えております。以上でございます。
【道垣内主査】
ありがとうございました。今、資料4、5を使ってご説明いただいたわけでございます。資料5の第7期の国際小委員会となっているのは、現在は第8期の文化審議会の下部の委員会で、前期であった議論を踏まえて、今回どうやっていくかというのが資料4の紙ですね。1.の現状認識はともかくとして、2.の今期の検討課題というところをきちんと作って、ワーキングチームを作ってご議論いただくというのがこの提案です。この小委員会としてはそうするかどうかも含めてご審議いただきたく存じますが、その前提として、2.のところに修正や追加の必要があれば、ご意見をいただくというのが今日の重要な点ではないかと思います。
何かご意見いただけますでしょうか。
こちらからどなたにというのも何ですが、山本委員、資料5の中には山本委員のおっしゃったこともかなり盛り込まれているのではないかと思いますが、それがきちんと資料4に受け継がれていないとすれば当面先送りするということを意味しているわけで、それは困るということであればぜひおっしゃっていただければと思います。
【山本委員】
具体的な進め方についてこのワーキングチームというのを提案していただいております。これは前回私の方でそういうのはどうかと申し上げたところですが、資料6について質問させていただいてよろしいでしょうか。
【道垣内主査】
進め方ではなく、まず内容についていかがでしょうか。
【山本委員】
こういう形で進めていただければいいのではないかと思いますが。
【道垣内主査】
進め方についてですが、資料4の2の2番目の
はオープンエンドになっているので、今後も付け加えることは可能ではあります。しかし、ワーキンググループを設置して、そこに審議を委ねると、この小委員会はもちろんずっとスタンディングで見ていることにはなるものの、一応手を離れるということになりますので、手を離す前に加えるのなら本日の機会ではないかと思います。あるいは、もう少し具体的に何か書くということもあり得ると思います。このままでよろしいでしょうか。
そうしましたら、進め方につきまして、ワーキンググループを作るということについてもご承認いただいたということで、よろしゅうございますでしょうか。
でありましたら、資料6に基づいてもう少し具体的なご説明をいただけますか。
【高柳専門官】
それでは、資料6でワーキングチームの設置につきましてご説明できればと思います。ワーキングチームの構成ということでございますが、小委員会の設置について4の(2)の規定に基づきまして、本国際小委員会の下にワーキングチームを置くということにさせていただければと考えております。ワーキングチーム名は国際ルール形成検討ワーキングチームということで、国際的なフレームワークの構築及びその効果的な活用について検討を行うということでどうかと考えております。
また、ワーキングチーム員の構成でございますが、ワーキングチームに座長を置きまして、小委員会の委員のうちから小委員会の主査が指名するということでお願いできればと考えております。
また座長につきましては、ワーキングチームとして必要な若干名を指名する。またワーキングチーム員につきましては小委員会の委員以外からも指名できるということで参加いただくような形でやれたらいいのではないかと考えております。
最後に検討方法ということでございますが、ワーキングチームは作業がいろいろ発生してくるのではないかと思われますし、また原則として公開が予定されている小委員会における審議に付されることに鑑みまして、必ずしも会議の開催という検討方法に限定せず、メーリングリスト等の活用によって機動的な検討ができるような形にしてはどうか。いわゆるより活発な議論ができるような形で柔軟な対応ができればいいのではないかと考えております。
また、会議を開催する場合におきましては、原則として会議の内容につきましては非公開ということで、別途議事要旨を作成して、これを後日公開するという形で進めさせていただければと考えております。以上です。
【道垣内主査】
資料6の具体的な方法につきましてご意見をいただけますでしょうか。
【山本委員】
資料6のところで検討課題が国際的なフレームワークの構築及びその効果的な活用について検討を行うというのは、申し訳ないですけれどもものすごく漠然としています。先ほどの資料5での検討課題といいますか、論点ですが、どのように対応するのかよく分からないのですが、この辺の資料6における検討課題のイメージについて、想定されている具体的な内容を教えていただけますか。
【高柳専門官】
具体的な課題につきましては、まさに今後どういうものをプライオリティを持って議論していくべきなのかというところにかかってくると思っておりますので、そういう意味では資料4の2.の
の部分、あるいは資料5で先ほどご説明させていただきました前期の国際小委員会でご提起いただきました論点、このようなものを検討課題としてやっていければよいのではないかと考えております。
【道垣内主査】
具体的には資料4の2の先ほど決めていただいたものがこの委員会の今期のテーマでございますので、それの具体的な力仕事あるいは調査研究も伴うような作業をワーキングチームにおいて行い、その成果をまたこの小委員会に戻して審議をするということになります。
プライオリティをつけるというのも重要な作業でしょうし、それぞれについての日本としてとるべき方向のような議論になるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
【山本委員】
理解しました。つまり国際小委員会で検討する論点として挙げられているもの、資料4でも5でもいいですが、それについて具体的に検討してもらうためのワーキングチームを設置するというイメージだということですね。それでもいいのかもしれませんが、ワーキングチームという形でやる場合には論点を絞って、検討してもらうべきことを絞って、それについてお任せするというのが一番効率的なのではないかと思います。そういう意味ではテーマが多すぎるのではないかと思います。優先順位をつけるとか、これを検討してもらうのが優先順位として大事だとか、その辺のところは小委員会自身決めるのが本当はいいのではないかと思いますが。
【高柳専門官】
まさにご指摘のとおりかと存じますので、先ほどの資料4あるいは資料5でいろいろ論点が上がっておりますので、具体的にワーキングの方でどのような論点を優先的に議論していくべきなのか、そこの優先順位みたいなものを今日のこの小委員会の場でいただければ、そのプライオリティに従ってワーキングの方で議論していけるかなと思いますので、その部分につきましてもご検討をいただければと考えています。
【上原委員】
ワーキングチームの位置づけと、そこで何をやるかですが、先ほど第16回SCCRのご報告でも申し上げましたように、国際動向が非常に散漫な状況にある中で何にプライオリティをつけるかをここで考えて、このワーキングチームでそれについて方向性を詰めろということ自体がなかなか難しい。放送条約が一番近かったけれども後退してしまった。もう1回戻ってオーディオビジュアルをやるかというと、アメリカとヨーロッパが動いてくれなければ、たとえ日本が動いたとしても、おそらくはブリッジができないだろうという具体的な問題があったりいたします。
今の状況で中で言うと、一番大事なのは先ほどちょっと申し上げましたけれども、今までSCCRに出てきた問題を中心に国際小委員会ではそこの中で詰まっていきそうなものについてどういう方向性がいいのかということでやってきたのですが、SCCR自身が今方向性を持っていない中で次のSCCRを見ないとなかなか状況も出てこないという状況もございますので、この小委員会で全体状況1つ1つのチェックをしていくのは大変なので、先ほど申し上げましたようにSCCRの今までの流れの確認だけではなくて、並行して起こってきていて、SCCRに絡んできているIGCであるとか、あるいは開発アジェンダというもの、あるいは前回ありましたExceptions and Limitationsの、これも過去の第12、13回SCCRあたりから出てきたところの歴史であるとか経緯、それから現在、各国がどのようなことを言っているのかの整理。さらにはECが言っているような問題についても出てきた背景、これはEUのディレクティブの問題等があろうかと思いますので、そうしたものを整理して、むしろ今後の日本の優先順位を決めるための資料整理をまずワーキングチームがやって、それを本来小委員会で吟味してどうするべきかというふうに決めるという形でないと、問題点を整理するのに親委員会だけでは進めにくいということで今回ワーキングチームを活用するという方向で進んだらいかがかと思います。
【道垣内主査】
この委員会が小委員会ですので、その下にさらにワーキングチームを作り、事務局と一緒になってこの小委員会に出す資料をきちんと作っていただくというのが私のイメージです。事務局としても前期のことも踏まえ、球をどうするのかということについてなかなか決めにくいということもあって、さらに委員以外の方、もっと若い方を含めた何名かの方にメンバーになっていただいて、ご議論いただくということではないかと思います。
ほかの小委員会でもワーキングチームを複数置いている例があるようです。
【吉田長官官房審議官】
それは各小委員会の審議の状況によりますから、ある時点においては1つだけという場合もあるでしょうし、複数作る場合もあるでしょう。
【道垣内主査】
ということで、すでにワーキングチームを作っていただくことについてはご承認いただいたと思いますが、その具体的な委員の構成あるいは原則非公開という形で進めるとされている検討の方法についてはよろしいでしょうか。非公開という点については、ざっくばらんに思う存分しゃべってもらうという点でも意味があるかと思いますので、よろしゅうございますでしょうか。
そうしますと、このワーキングチームをどうするかということで、このワーキングチームの座長は小委員会の委員のうちから主査が指名するというのがこの資料6の2の(1)にございます。これに従いまして、私といたしましては長年国際的な場での経験もたくさん踏んでいらっしゃって、かつ知見も広い上原委員にこのワーキングチームの座長をお願いしたいと思います。上原委員におかれましては座長としてワーキングチームのメンバーを決めていただきます。その方々のご都合によると思いますが、事務局からメンバーに対して参加の意思を確認し、チームを作っていくということにしていただければと思います。
上原委員、よろしゅうございますか。では、よろしくお願いいたします。
今日の議題、用意しているのはこれぐらいですが、そのほか何か特にこの際ご議論いただくことはございますでしょうか。
今の予定ではワーキングチームの作業がどう進むかによって、必要であれば途中で1回小委員会を開き、そのような形にならなければ年度末に近いところで1回開いていただいて、そこでご審議いただくという予定でございますので、よろしくお願いいたします。
それでは、事務局からその他連絡事項がございましたら、よろしくお願いします。
【高柳専門官】
本日はどうもありがとうございました。先ほど主査からお話がございましたが、ワーキングチーム員のメンバーにつきましては、後日確定した段階で事務局より各委員にメール等によりご連絡するような形でできればと考えております。以上です。
【道垣内主査】
それでは、今日の小委員会はこれで終了いたしたいと思います。ありがとうございました。