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参考資料4

WIPOにおける開発と知的財産に関する議論の動向

平成20年5月12日

 近年、途上国は、WIPOの場において、開発問題を重視する視点から知的財産(権問題)を捉えようとする動きが活発化しており、その中心となるのが、開発アジェンダ関連提案に関する暫定委員会(PCDA:Provisional Committee on Proposals Related to a WIPO Development Agenda)の議論、そして、PCDAの後継となる開発関連の問題を扱う常設委員会である「開発と知的財産に関する委員会(CDIP:Committee on Development and IP)」の議論である。
 開発と知的財産に関する議論のこれまでの経緯及び最近のCDIPの動向については以下のとおり。

<これまでの経緯>

 国際連合でとりまとめられた「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)」(注)を受け、国際連合の専門機関であるWIPOも開発問題に積極的に取り組むべきであるとする意識を背景として、2004年のWIPO加盟国総会において、ブラジル・アルゼンチン等の計14ヶ国からWIPOにおいて開発問題(途上国の経済発展に係る問題)に関するアクションプランを策定しようとする提案が行われた。この提案を受けて開発アジェンダの議論が開始され、PCDA等での議論を経て、45項目の具体的提案がまとめられた。その内容は、既にWIPOが取り組んでいるキャパシティビルディング等に関するものだけでなく、途上国の経済的発展を考慮した条約等の作成に関するものなど、広範囲に及んでいる。
 昨年のWIPO加盟国総会では、これまでのPCDA等において合意の得られた45項目及びそのうち即実施が可能な19項目について採択された。当該19項目の主な内容としては、規範設定(条約、ガイドライン等の策定)の際に各国の開発のレベルの差を考慮すべきこと、規範の設定の際にWIPOは国際的知財関連条約、とりわけ途上国・LDCの関心の高い条約において柔軟性を考慮すべきこと、フォークロア、伝統的知識等の保護について検討が行われている政府間委員会(IGC)のプロセスを加速すべきこと、などが挙げられる。
 また、PCDAの後継となる開発関連問題を扱う常設の委員会であるCDIPの設立が承認された。

  • (注)ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)
     2000年9月ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットに参加した147の国家元首を含む189の加盟国代表は、21世紀の国際社会の目標として国連ミレニアム宣言を採択。この国連ミレニアム宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、一つの共通の枠組みとしてまとめられたものがミレニアム開発目標。

<CDIPの動向>

 本年3月に開催された第1回CDIPにおいては、議長より、即実施が可能な19項目に関する今後の作業計画についてのたたき台が提案された。しかしながら、同委員会の手続規則は採択されたものの、実質的な検討作業は余り進捗せず、他の常設委員会の議論に影響を及ぼす可能性のある規範設定に関連した提案への検討作業には着手されていない。また、7月開催予定の第2回CDIPに向け、4月に非公式の会期間会合が開催されたが、この場でも大幅な進捗は見られていない。なお、ブラジル等は、当該19項目の実施について、各委員会への拘束力を確保する観点から、CDIP議長又はWIPO事務局長名で勧告を発する旨の提案をしている。