第2節 文教施設の耐震性の向上

 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災以降,16年10月の新潟県中越地震や17年3月の福岡県西方沖を震源とする地震など,大規模な地震が頻発し,学校などの公共建築物にも大きな被害が生じています。このような状況を受け,17年9月には中央防災会議において「建築物の耐震化緊急対策方針」が決定されました。また,17年11月には「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が改正され,公共建築物について,より一層の耐震性の確保が求められることとなりました。
 文部科学省においても,従来から,学校などの文教施設の耐震性の向上に取り組んできています。
 具体的には,まず,大規模な地震による文教施設の被害状況などを考慮して,耐震構造設計の考え方をはじめ,非構造部材など(天井や建具,照明機器など)の耐震点検や改修方法,機能改善を伴う耐震補強(耐震改修)を行う際の基本的な考え方などについて調査研究を実施しました。これらの調査研究の成果を基に,各都道府県教育委員会などに対し,新築建築物における設計上の配慮や既存建築物の改修時における留意事項などを通知しています。
 また,耐震性能などに関する調査研究の結果を踏まえ,より一層学校施設の耐震化を進めるために,平成14年10月に,地方公共団体などが所管する学校施設全体に関する耐震化推進計画の策定手法などについて検討するための調査研究協力者会議を設置しました。この会議の成果を基に,耐震化推進に関する基本方針,具体的な耐震化推進計画の策定手法,地震動予測地図(参照:第2部第6章第3節8(2))の活用方法などを内容とする「学校施設耐震化推進指針」を15年7月に取りまとめ,各都道府県教育委員会などに通知しました(図表2-13-2)。
 さらに,この会議の提言を基に,平成15年度から,地方公共団体などの設置者が学校施設の耐震化推進計画を策定することを支援するため,「学校施設耐震化推進計画等策定支援事業」を実施しています。あわせて,学校施設の耐震化推進に関する情報提供機能や相談体制の充実・強化を図るため相談窓口を開設しています。また,18年には学校施設の耐震化の推進の参考になるように,学校施設の耐震補強方法についてまとめた事例集を作成し,配付しています。
 このほか,公立学校施設の耐震化については優先的に国庫補助を行うとともに,国立学校などの施設については,「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」(参照:第2部第12章第3節1(2))に基づき,耐震性能の強化を含め老朽化した施設の再生を最重要課題として重点的・計画的に整備を進めています。また,私立学校施設についても,耐震補強事業に要する工事費,実施設計費,耐震診断費に対して補助を行い,耐震化の推進に努めています。

図表●2-13-2 「学校施設耐震化推進指針」による既存学校施設の耐震化推進計画策定フロー

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