第2節 文教施設における安全・安心の確保

1.公立学校施設の安全・安心の確保対策

 学校施設は,児童生徒が一日の大半を過ごす学習・生活の場であり,児童生徒の生きる力をはぐくむための教育環境として重要な意義を持っています。さらに,地震などの災害発生時には地域住民の応急避難場所としての役割をも果たすことから,その安全性の確保は特に重要です。
 しかしながら,平成18年4月に実施した文部科学省の調査によると,公立学校施設の半数近く(45.3パーセント)について耐震性が確認されておらず,耐震化の前提として必要な耐震診断の実施状況も十分でないため,耐震化の推進が急務となっています(参照:第2部第13章Topics第2部第13章第2節)。
 また,公立学校施設は,昭和40年代から50年代の児童生徒急増期に建築されたものが多いため,老朽化した建物が増加しています。平成18年5月現在,全国の公立小中学校のうち,建築後20年から29年を経過した建物は全体の約38パーセント,建築後30年以上経過した建物は全体の約39パーセントを占めており,老朽化対策も重要な課題となっています(図表2-12-2)。
 このような状況を考慮し,文部科学省では,安全・安心な学校づくりを進めるため,新築・増築事業のみならず,改築・耐震補強事業についても国庫補助の充実を積極的に図っています。また,平成18年度からは,地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大するため,耐震関連事業を中心に,「安全・安心な学校づくり交付金」として一部交付金化を行いました(参照:本章Topics 1)。
 今後も,公立学校施設整備に支障が生じないように,地方公共団体では,中・長期的な視点に立って計画的な整備を進める必要があります。文部科学省としても,地方公共団体が適切に公立学校施設整備を実施できるように,良好な教育環境の構築に向けて支援していくこととしています。

図表●2-12-2 公立学校施設の老朽状況の深刻化

 なお,公立学校施設の整備に当たっては,昨今の厳しい財政状況の中で,民間資金を最大限に活用する方策であるPFI(注)の導入も考えられます。これは,公立学校施設の設計や建築から管理運営までを一括して民間事業者が実施するもので,費用の軽減やサービス水準の向上が期待できます。

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