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公立学校施設の耐震化の推進

 学校施設は,児童生徒が1日の大半を過ごす学習・生活の場であるだけでなく,地震発生時などには地域住民の応急避難場所としての役割をも果たすことから,その安全性の確保のための耐震化の推進は特に重要です。しかしながら,現状では公立学校施設の耐震化の取組は遅れています。そのため,平成16年10月に発生した新潟県中越地震では,校舎の柱が崩壊するなど様々な被害を受けました。
 平成18年4月に実施した文部科学省の調査によると,半数近くの建物は耐震性が確認されていません。また,耐震化の前提となる耐震診断さえ実施されていない建物も多く,学校施設の耐震化の取組が遅れているといえます(図表1)。さらに,その進捗度についても地域間の格差が大きいのが現状です(図表2)。このような状況を踏まえ,文部科学省では,耐震診断については,国土交通省と連携し,18年中に完了するよう教育委員会に通知してきました。また,18年度から公立学校の設置者である市町村ごとに耐震化の状況についても公表することとしました(参照:https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/06/06053106/003/001.htm(※報道発表へリンク))。
 公立学校施設の耐震化が十分に進んでいない理由については,文部科学省が市町村に対して平成18年4月に実施したアンケート調査によれば,財政上の理由が最多でした。一方で,同じような財政状況の市町村であっても,耐震化の取組には,かなりの格差があるという実態も見られます。
 文部科学省では,公立学校施設の整備が計画的に行われるよう,市町村などが行う施設の改築や地震補強事業などについて国庫補助を行っています。学校については,児童生徒の基本的な生活の場であり,より安全性の確保を図る必要があることから,地震防災対策関連法に基づく改築・耐震補強について,国庫補助率の引上げを行っています(図表3)。さらに,耐震診断に要する経費についても国庫補助の対象としています。
 公立学校施設の耐震化促進のため,平成17年度補正予算では277億円,18年度予算では公立文教施設整備費全体で1,137億円をそれぞれ確保し,その推進に努めています。
 また,平成18年度からは,地方の裁量を高め,効率的な施設整備に資するため,耐震関連事業を中心とした「安全・安心な学校づくり交付金」を創設しました(参照:第2部第12章Topics 1)。これにより,地方においては,予算をより効率的に使うことができ,その結果生み出された財源は,例えば耐震化などの事業の前倒しに充てることも可能となることから,耐震化が一層促進されることが期待されます。
 文部科学省としては,安全・安心な学校づくりの実現に向けて,今後とも,必要な施策を進めていきます。

▲新潟県中越地震による校舎の柱の崩壊
(新潟県小千谷市)

▲新潟県中越地震による屋内運動場の天井の落下

図表1 平成18年度公立学校施設の耐震改修状況調査による耐震化の状況(小中学校)
平成18年4月1日現在

図表2 公立学校施設の耐震化状況(小中学校)

▲耐震補強工事施工後の校舎の様子

図表3 地震防災対策に関する国庫補助率一覧

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