答1-1
カルタヘナ法での遺伝子組換え生物等とは、法第2条、施行規則第2条において定義されています。①(細胞、ウイルス又はウイロイドに核酸を移入して当該核酸を移転させ、又は複製させることを目的として)細胞外において核酸を加工する技術によって得られた核酸又はその複製物を有する生物、②異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合する(交配等従来から用いられているもの以外の)技術によって得られた核酸又はその複製物を有する生物、の二つが遺伝子組換え生物等です。
答1-2
法第2条において「一の細胞(細胞群を構成しているものを除く。)又は細胞群であって核酸を移転し又は複製する能力を有するものとして主務省令で定めるもの、ウイルス及びウイロイド」と定義されています。しかし、施行規則第 1 条において「ヒトの細胞等」、「分化する能力を有する、又は分化した細胞等(個体及び配偶子を除く。)であって、自然条件において個体に成育しないもの」の2つについて除いています。
(カルタヘナ法における生物の具体例)
ウイルス、ウイロイド、単細胞生物、動植物の個体
(カルタヘナ法において生物として扱われないものの具体例)
ヒトの細胞・個体、DNA断片、動植物培養細胞、動植物の死体
答1-3
動物自体が遺伝子組換え生物に該当するため、細胞や臓器を単離・摘出する作業は、法令上の遺伝子組換え実験に該当します。一方、単離・摘出した後に性状解析等を行う実験は、得られた細胞や臓器に遺伝子組換え生物(ウイルスベクター等)を含まなければ、法の対象外です。
答1-4
大腸菌を用いてクローニングする実験は、核酸の移転及び複製が行われますので、遺伝子組換え実験として扱われます。
答1-5
標的遺伝子にマウス以外の核酸供与体に由来する供与核酸、例えば、選抜マーカーが組み込まれている場合は遺伝子組換え生物等に該当します。
答1-6
動物作成実験及び動物接種実験は研究開発二種省令において以下のように定義されています。
動物作成実験:動物(動物界の属する生物をいう。)である遺伝子組換え生物等(遺伝子組換え生物等を保有しているものを除く。)に係る実験
動物接種実験:動物により保有されている遺伝子組換え生物等に係る実験
例えば、遺伝子組換え微生物を動物に接種する場合、その実験は「動物接種実験」となります。
答1-7
植物作成実験と植物接種実験の違いは、動物作成実験と動物接種実験の違いと同じです。
答1-8
セルフクローニング、ナチュラルオカレンスとは、施行規則第2条第1号、第2号に定められた技術です。
これら技術の利用により得られた核酸又はその複製物を有する生物(ウイルス、ウイロイドを含む)は法の対象外となります。
答2-1
ある技術がセルフクローニングやナチュラルオカレンスに該当するか否かの判断は、十分な科学的根拠が存在するか否かに負うものとしています。詳細につきましては、
https://www.mext.go.jp/a_menu/lifescience/bioethics/mext_02729.html
をご参照下さい。実際の判断にあたっては、使用者が説明責任を負うこととなりますので、十分に検討し、対外的に説明ができるようにしてください。
答2-2
弊省として具体的な判断基準を示すことはしていませんが、各機関の責任において遺伝子組換えウイルスが残存していないことを科学的根拠に基づき判断できるのであれば、規制対象外として扱って構いません。
対外的にも規制対象外であることを説明できるよう、その判断根拠を適切に入手・保管していただきますようお願いします。
答2-3
遺伝子組換え生物等は、施行規則第1条第2号の規程により、細胞等に核酸を移入して当該核酸を移転させ、又は複製させることを目的として細胞外で加工する技術を用いて得られた核酸又はその複製物を有する生物と定義されています。
そのため、動物個体の体細胞に複製しないDNAを直接注入し一過性の発現をさせる実験は、規制対象外です。
また、抗体を産生させるために体内で抗原遺伝子を一過性に発現させるために接種する実験も、規制対象とはなりません。
答3-1
カルタヘナ法では、拡散防止措置が省令に定められていない遺伝子組換え実験は、拡散防止措置について大臣の確認が必要です。P4レベルの拡散防止措置を執る必要性のある実験は、個別の実験計画ごとに大臣確認申請が行われ、P4レベルの拡散防止措置として適当かどうかの審査がなされます。
答3-2
カルタヘナ法には、拡散防止措置が省令に定められていない実験は、拡散防止措置について大臣の確認が必要です。そのため、細胞融合実験はすべて大臣の確認が必要となります。
答3-3
二種省令第2条に同定済核酸の定義がありますので、ご参照ください。「遺伝子の塩基配列に基づき、当該供与核酸又は蛋白質その他の当該供与核酸からの生成物の機能が科学的知見に照らし推定されるもの」等が定義されています。
答3-4
二種告示別表第二に定めたとおり、増殖力欠損型であってもアデノウイルスの実験分類は野生株と同様にクラス2となります。同告示では、HIV-1 及び Semliki Forest virus の2種類のウイルスに限り、野生株と増殖力欠損株で実験分類が異なります。
答3-5
P2レベルの場合、「高圧滅菌機を用いる場合には、実験室のある建物内に設けられていること」との規定がありますので、実験室のある建物内への設置が可能です。なお、実験室以外の場所で不活化する場合、漏出その他拡散しない構造の容器に入れる旨の規定もありますのでご注意下さい。
答3-6
手洗い用流し、実験台流しそれぞれの直下に薬液に耐えるステンレス製等のタンクを設置し、タンク内で薬液処理した後に排出するといった対応や、流しの下にオートクレーブができるタンクを設置し、オートクレーブ後に排水するといった対応が考えられます。
答3-7
二種省令別表第二に「遺伝子組換え生物等を取り扱う者に当該遺伝子組換え生物等が付着し、又は感染することを防止するため、遺伝子組換え生物等の取扱い後における手洗い等の必要な措置を講ずること。」と規定されています。
答3-8
遺伝子組換えマウスと非遺伝子組換えマウスを同一の部屋で飼育しても構いません。ただし、二種省令別表第四に「組換え動物等を、移入した組換え核酸の種類又は保有している遺伝子組換え生物等の種類ごとに識別することができる措置を講ずること」とされていることから、お互いに明確に区別した上で、取違のないよう留意してください。なお、個体識別については、カルタヘナ法での規定はありませんが、管理上必要であれば、適宜、実施してください。
答3-9
オタマジャクシやメダカは、カルタヘナ法上の「動物」に該当しますので、使用等に当たっては、P1A等の拡散防止措置を執る必要があります。
答3-10
動物使用実験の拡散防止措置の一つとして、二種省令別表第四では、「実験室の出入口、窓その他の動物である遺伝子組換え生物等及び遺伝子組換え生物等を保有している動物の逃亡の経路となる箇所に、当該組換え動物等の習性に応じた逃亡の防止のための設備、機器又は器具が設けられていること。」と定められています。この条件を満たすものとして、ネズミ返しや前室(二重扉)等が想定されますが、いずれを設置するかについては、遺伝子組換え生物の使用様態を踏まえ、御検討下さい。
答3-11
教育目的での実験も、他の実験と同様に法令が適用されます。そのため、法令に基づいて必要な拡散防止措置を執る、又は拡散防止措置について大臣確認を執る等が必要です。 弊省では以下のようなリーフレットを策定しておりますので、こちらもご参照ください。
〇高等学校などで遺伝子組換え実験を行う皆様へ
https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n2279_03.pdf
答3-12
法令では、指導者などへの研修等の規定はありませんが、基本的事項第二の二において、遺伝子組換え生物等の取扱いについて経験を有する者の配置、遺伝子組換え生物等の取扱いに関する教育訓練を行うよう努めることとされており、実験の指導者は遺伝子組換え生物等の取扱いについて十分な経験を有していることが望まれます。
答4-1
二種省令別表第一に掲げられた遺伝子組換え実験又は細胞融合実験を行う場合、大臣確認が必要です。
個別の遺伝子組換え実験における大臣確認の要否を判断する場合は、二種省令別表第一の規定やポジションペーパーを参照ください。
答4-2
別表第一第一号チ、第二号ホ、第三号ニ、第四号ハに記載されている「文部科学大臣が定めるもの」は現在ありませんが、「別表第一第一号ヘ」に記載されている「文部科学大臣が定めるもの」は 告示別表第三に示しています。
答4-3
合成核酸であっても、その塩基配列の由来する核酸供与体がクラス4のウイルスになることから、大臣確認が必要となります。
答4-4
汎用されているマーカー遺伝子のすべてが該当するということはありません。二種省令別表第一第一号ホには、薬剤耐性遺伝子について、「哺乳動物等が当該遺伝子組換え生物等に感染した場合に当該遺伝子組換え生物等に起因する感染症の治療が困難となる性質を当該遺伝子組換え生物等に対し付与するものに限る。」としています。
答4-5
ポジションペーパーとして示した考え方等に基づき、ご判断いただきますようお願い致します。感染受容体には該当しないと判断した場合、対外的にも申請不要であることを説明できるよう、その判断根拠を適切に入手・保管していただきますようお願いします。
〇二種省令における感染受容体の考え方について
https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/data/anzen/position_06.pdf
〇二種省令別表第一第三号ロに該当する感染受容体を付与された遺伝子組換え生物等について
https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/data/anzen/position_06_sankou.pdf
〇作成されたLMOにおいて病原性微生物による感染が成立しない受容体及び宿主の組み合わせについて
https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/data/anzen/position_05.pdf
答5-1
申請手続きの具体的な流れ等につきましては、
https://www.mext.go.jp/a_menu/lifescience/bioethics/mext_02726.html
をご参照ください。
答5-2
複数機関で実験をする場合は、実験に関しすべての責任を負う機関からまとめて申請、又は、各機関から担当する実験について個別に申請して下さい。
なお、機関間での遺伝子組換え生物の輸送に当たっては、運搬に当たっての拡散防止措置や法26条に基づく情報提供を行う必要がありますので、ご留意下さい。
答5-3
委託先での遺伝子組換え生物の使用等を含めて申請した場合、委託先における当該使用等について、申請者が責任を負うこととなります。当事者間で責任分担を相談したうえで、申請者を決定してください。
答5-4
他機関から実験場所を借りて遺伝子組換え実験を実施する場合であっても、遺伝子組換え生物の使用者は、拡散防止措置の大臣確認を受けてください。
答5-5
分与先においても大臣確認が必要です。
答5-6
「大臣確認申請した項目に変更が生じた場合の報告様式について」に掲げる項目を変更(実験管理者の変更、実施予定期間の延長等)する場合は、指定の様式(軽微変更報告様式)で報告してください。
実験場所の変更、供与核酸の追加など拡散防止措置に影響する変更は、軽微な変更報告の対象とはならないため、大臣確認申請書の「その他」欄に変更内容や変更前申請書の文書番号、日付等を記載の上、再度の大臣確認申請をお願いします。
答5-7
特段不要です。
答6-1
実験の過程において行われる保管及び運搬は、実験最中の一時的な措置であることからP1、P2Aなどの、使用等する遺伝子組換え生物等の種類に応じた(実験そのものの)拡散防止措置が必要です。これに対し、二種省令第6条及び第7条に規定される保管及び運搬は、密閉された容器を用いる等の拡散防止措置が必要です。
答6-2
他の機関に遺伝子組換え生物等を運搬する場合、実験の過程において行われる運搬には該当しません。したがって、二種省令第7条に規定する運搬に当たって執るべき拡散防止措置を執る必要があります。
答6-3
「実験の過程において行われる保管」以外の保管については、保管に当たって執るべき拡散防止措置を執る必要がありますが、これは、P2レベルといった、遺伝子組換え実験の間に執るべき拡散防止措置とは内容が異なります。執るべき拡散防止措置は遺伝子組換え生物等の種類にかかわらず二種省令第6条に規定されており、これを満たしていることが必要となりますが、当該規定にP2レベルの拡散防止措置の施設等の要件を満たす実験室内に保管する旨は含まれません。
答7-1
遺伝子組換え生物等を譲渡等する場合には、法第26条に基づいて、相手方に当該遺伝子組換え生物等についての情報を提供する必要があり、当該情報の内容や提供方法等は施行規則第32条、第33条及び第34条に規定されています。
答7-2
法第26条に基づく情報提供の方法は、施行規則第34条に規定されています。口頭による情報提供は認められません。
答7-3
施行規則第32条第1項第2号において、遺伝子組換え生物等を委託して運搬させる場合の(運搬委託業者への)情報提供は、不要とされております。これは、運搬する者への情報提供を不要とする規定であり、運搬先への情報提供義務は除外していないので、ご注意下さい。
また、運搬に当たって執るべき拡散防止措置の一つとして、「最も外側の容器(容器を包装する場合にあっては、当該包装)の見やすい箇所に、取扱に注意を要する旨を表示すること」が規定されていますので、当該規定に従った表示は、必要です。
答8-1
輸入後の国内での保管や運搬の際には、二種省令第6条、第7条に定める拡散防止措置を執る必要があります。また、遺伝子組換え実験を行う場合には、二種省令に定めた拡散防止措置を執る、又は文部科学大臣の確認を受けた拡散防止措置を執る必要があります。これらを決定するためには、遺伝子組換え生物等について、宿主、核酸供与体、供与核酸などに係る情報が必要です。これらの情報を譲渡先から入手して下さい。
なお、遺伝子組換え生物等の輸入に当たっては、カルタヘナ法以外にも当該生物等の輸入に当たっての制限を設ける法律がありますので、それぞれの法律を所管する官庁にお問い合わせください。
答8-2
文部科学大臣による拡散防止措置の確認を受けるまでは、二種省令に定める遺伝子組換え実験を実施することはできませんので、二種省令第6条に定める拡散防止措置を執って保管してください。
答8-3
締約国向けの輸出では法第27条で定める「輸出の通告」および法第28条で定める「輸出の際の表示」が必要です。これらについては、施行規則第36条又は第38条に定めた除外規定に該当する場合は、対応が不要です。その他に、国内における空港・港湾までの「運搬」時は、二種省令第7条に定めた拡散防止措置を執ることが必要です。
なお、遺伝子組換え生物等の輸出入に当たっては、カルタヘナ法以外にも、輸出入国の法令等による規制がある場合がありますので、あらかじめ情報を収集して適切に対応する必要があります。
答8-4
非締約国向けの輸出では法第27条および法第28条で定める措置は不要です。 ただし、国内における空港・港湾までの「運搬」時は、二種省令第7条に定めた拡散防止措置を執ることが必要です。
なお、遺伝子組換え生物等の輸出入に当たっては、カルタヘナ法以外にも、輸出入国の法令等による規制がある場合がありますので、あらかじめ情報を収集して適切に対応する必要があります。
答8-5
具体的な通告先は、カルタヘナ議定書のバイオセーフティクリアリングハウス(ホームページ https://bch.cbd.int/en/)に掲載されていますので参照下さい。
なお、通告後、カルタヘナ議定書に定めるところにより、輸入国当局から輸出の可否等についての通報があり、輸入の許可を受けた後に輸出することとなります。このような、遺伝子組換え生物等の国境を越える移動に関しての手続きは、カルタヘナ議定書に規定されておりますので、ご参照ください。
答9-1
研究開発二種省令に拡散防止措置が定められている場合(大臣確認が不要な実験の場合)は、文部科学省への申請・届出等は不要です。
ただし、そのような実験であっても遺伝子組換え実験は各機関の責任の下に実施することとなるため、各機関に設置された安全委員会等で適切な拡散防止措置等についてよく検討していただきますようお願いします。
その他、国の法令では求められていませんが、自治体等が条例として定めていないか、各自治体等にご照会ください。
答9-2
委員会は、基本的事項(告示)第二の二において設置するよう努めることとされており、必置ではありません。ただし、遺伝子組換え実験の実施は研究機関が責任を負うこととなりますので、適切な拡散防止措置や大臣確認の要否等について十分把握・検討した上で、実験を行うようお願いします。
答9-3
基本的事項第二の二において、あらかじめ遺伝子組換え生物等の安全な取扱いについて検討するよう努めることとされています。
答9-4
教育訓練の対象については、各機関において判断するべき問題ですが、一例としては、遺伝子組換え実験に従事する者などが教育訓練の対象者として考えられます。
答9-5
基本的事項第二の一において、人の健康の保護を図ることを目的とした法令(労働安全衛生法など)等予定される使用等に関連する他法令を遵守することとされています。各機関において、適切な対応をお願いします。
答9-6
運搬の際には、省令で定める拡散防止措置を執る必要があります。また、使用等する遺伝子組換え生物等について、拡散防止措置の大臣確認が必要なものについては、新任地で実験を行うに当たっては、異動先の使用等を行う実験室について、新たに拡散防止措置の大臣確認を受けるまでは実験できませんのでご留意ください。
答10
拡散防止措置を講じている範囲から遺伝子組換え生物等が拡散した場合に事故であると判断されます。
このことから、拡散防止措置を講じている範囲が実験室であれば、遺伝子組換え生物等が実験室内にとどまっている場合は事故には該当しません。
答11-1
人の遺伝子治療については、所管官庁である厚生労働省にお問い合わせ下さい。
答11-2
遺伝子組換え実験にかかる健康の保護については、基本的事項(告示)第二の一において、人の健康の保護を図ることを目的とした法令等の遵守が規定されているところです。
このことから、労働安全衛生法などの関係法令を遵守の上、健康の保護に係る措置を図るよう十分留意してください。
答11-3
法の規制は、遺伝子組換え生物等を使用等する者を対象とするため、大家さんには規制が及ぶところではありません。
答11-4
人用医薬品の研究開発で、動物接種実験の段階は研究二種省令をご参照ください。
答11-5
正式なものではなく、tentative translationという位置づけのものでよいのでしたらJ-BCHの
https://www.biodic.go.jp/bch/english/law.html
をご参照ください。
答11-6
不活化されたものはもはや遺伝子組換え生物等ではないので、法の対象外です。廃棄物処理に関しての法令や条例、規則に従って廃棄をしてください。
〒100-8959 東京都千代田区霞が関三丁目2番2号 文部科学省研究振興局 ライフサイエンス課
生命倫理・安全対策室 「遺伝子組換え実験担当」宛
E-mail:kumikae☆mext.go.jp(☆を@に置き換えてください。)