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サービス科学・工学の推進に関する検討会(第1回)議事録・配付資料

1.日時

平成20年8月21日(木曜日)16時〜18時

2.場所

東海大学校友会館 富士の間

3.議事

  • (1)サービス科学・工学の推進に関する検討会の進め方について
  • (2)サービス・サイエンスを巡る動向等について
  • (3)科学技術振興機構 研究開発戦略センターにおけるサービス関連の活動紹介
  • (4)その他

5.出席者

(委員)

生駒座長、安部委員、太田委員、加藤委員、儀我委員、北川委員、妹尾委員、高安委員、友田委員、長井委員、中島委員、丹羽委員、日高委員

(事務局)

(大臣官房)

坂田文部科学審議官、合田総括審議官

(科学技術・学術政策局)

泉科学技術・学術政策局長、岩瀬科学技術・学術総括官、近藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、坪田政策課企画官、堀田調査調整課課長補佐、渡邉計画官補佐

6.議事録

【渡邉計画官補佐】

 ただいまから第1回サービス科学・工学の推進に関する検討会を開催させていただきます。委員の皆様には、ご多忙にもかかわらずお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、まず議事に先立ちまして、泉科学技術・学術政策局長より、御挨拶を申し上げます。

【泉科学技術・学術政策局長】

 科学技術・学術政策局の泉でございます。皆様方には大変ご多忙の中を、このサービス科学・工学の推進に関する検討会の委員をお引き受けくださいまして、誠にありがとうございます。
 サービス科学・工学という分野でございますけれども、お手元にこの5月に公表いたしました最新の科学技術白書の一部を抜粋した資料をお配りしてございます。この白書は「国際的大競争の嵐を越える科学技術の存り方」というサブタイトルをつけてございますけれども、その中で諸外国における、あるいは我が国も含めた先進国における産業構造の変化の中で、サービスの占める部分というのが非常に大きくなっているということと同時に、特にアメリカ、あるいは欧米諸国でサービスについての科学技術投資、サービスについてのサイエンスの振興といったことが非常に強く打ち出されているという状況を示してございます。
 我が国におきましても、一部関係省庁がサービスに関してのいろいろな取り組みを行っているところでございまして、文部科学省でも高等教育の支援の施策の中でそういったプログラムが一部ございますけれども、加えて先般、議員立法で研究開発力強化法というものが制定され、その中でも特にサービス・サイエンスについての調査、研究を行うというような規定も盛り込まれているところでございまして、こういった状況を踏まえまして、サービス分野におけるイノベーションということをさらに進めるために、科学技術、あるいは工学的な手法というものをサービスに適用していくということが非常に重要になっているという問題意識を持ってございます。そういう意味で、この検討会におきまして、サービス分野における科学・工学的アプローチといったものをテーマに、科学技術政策として文部科学省として取り組むべき事項、あるいはその方策についてご議論をいただきたいと考えているところでございます。
 あわせて、平成21年度の予算要求に向けても、こういったサービス科学・工学についての予算も要求しようとしているところでございますけれども、そういったことと並行しながら先生方のご議論をいただいて、この方策を具体化していきたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 重ねて、ご多忙の中、委員をお引き受けいただきましたことに厚く御礼を申し上げて、簡単ではございますけれども冒頭のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございます。

【渡邉計画官補佐】

 それでは、議事に入らせていただく前に、委員の皆様のご紹介と資料の確認をさせていただきます。
 まず、委員の皆様方のご紹介をさせていただきます。本日ご欠席の方、まだご到着されていない方を含めまして、あいうえお順でご紹介させていただきます。
 安部委員。

【安部委員】

 よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 生駒委員。

【生駒委員】

 生駒でございます。よろしく。

【渡邉計画官補佐】

 なお、大澤委員は本日、ご欠席のご連絡をいただいております。
 太田委員。

【太田委員】

 太田です。

【渡邉計画官補佐】

 加藤委員。

【加藤委員】

 よろしくお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】

 儀我委員。

【儀我委員】

 よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 北川委員。

【北川委員】

 よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 妹尾委員。

【妹尾委員】

 妹尾でございます。よろしくどうぞ。

【渡邉計画官補佐】

 高安委員は遅れていらっしゃるようです。
 友田委員。

【友田委員】

 友田でございます。よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 長井委員。

【長井委員】

 よろしくお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】

 中島委員。

【中島委員】

 よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 丹羽委員。

【丹羽委員】

 丹羽でございます。よろしくお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】

 日高委員。

【日高委員】

 よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 ありがとうございました。
 続きまして、事務局及び文部科学省出席者の紹介をさせていただきます。
 まず初めに、坂田文部科学審議官。

【坂田文部科学審議官】

 文部科学審議官の坂田でございます。本検討会の背景でありますとか、趣旨、目的は先ほど局長がご説明したとおりでございますけれども、これから大変大事な分野といいますか、大変大事な科学・工学の課題だというぐあいに考えておりますので、先生方にはぜひよろしく率直なご議論をお願い申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】

 続きまして、泉科学技術・学術政策局長。

【泉科学技術・学術政策局長】

 よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 合田総括審議官。

【合田総括審議官】

 合田でございます。よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 岩瀬科学技術・学術総括官。

【岩瀬科学技術・学術総括官】

 よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 近藤調査調整課長。

【近藤調査調整課長】

 近藤です。よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 川端基盤政策課長は遅れて参ります。
 柿田計画官。

【柿田計画官】

 事務局を務めさせていただきます柿田でございます。よろしくお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】

 坪田企画官。

【坪田企画官】

 よろしくお願いします。

【渡邉計画官補佐】

 堀田調査調整課長補佐。

【堀田調査調整課課長補佐】

 よろしくお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】

 最後になりましたが、渡邉、計画官補佐を務めさせていただいております。よろしくお願いいたします。
 続きまして、資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元にあります資料ですが、一番上から座席表。その次、1枚おめくりいただきまして、第1回サービス科学・工学の推進に関する検討会議事次第。1枚おめくりいただきまして、資料1、サービス科学・工学の推進に関する検討会の進め方(案)。おめくりいただきまして、資料2、サービス・サイエンスを巡る動向等について。その次が横紙、資料3、JST/CRDSにおけるサービス関連の活動紹介。その次が参考資料1、「サービス科学・工学の推進に関する検討会」の開催について。次に参考資料2−1、参考資料2−2の科学技術白書の抜粋。その次が参考資料3、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律。その次が参考資料4−1、パルミサーノ・レポート。参考資料4−2、米国競争力法におけるサービス科学。参考資料4−3、米国競争力協議会報告書になっております。
 資料については以上になっておりますが、もし落丁等がありましたら、事務局のほうまでお教えください。よろしくお願いいたします。資料のほうはよろしいでしょうか。
 それでは、まず本検討会の座長の選出ということでお願いをいたしたいと思います。これまでの豊富なご経験などから生駒委員にお願いしたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渡邉計画官補佐】

 それでは、生駒委員、座長席のほうにお移りいただいて、以後の議事進行のほうをよろしくお願いいたします。

【生駒座長】

 私のごあいさつをさせていただきますが、サービス科学・工学という話になりますと、なぜか私にお鉢が回ってまいります。最もサービス精神に欠けた人間でございますけれども、サービス・サイエンスというと話が回ってきます。もっとも文部科学省が、ついにこういう検討会を始めるという時代の流れでございますので、サービスを科学するということで、こういう検討会が設けられまして、特に委員の方の職業その他を見ますと、最もバラエティーに富んで、ゴルフ連盟の事務局長がいらっしゃるところに、大学の金融工学の先生がいらっしゃるという極めて珍しい検討会ではないかと思っております。
 サービスというと、サービス・サイエンス、サービス・エンジニアリングというのは、まだ中身がはっきりしておりません。そういう意味ではできるだけ広くお集まりいただいて、まずは開いた議論を始めていくということがどうも文科省の担当のご意思だと思っておりまして、数学の方から、もちろんITの方、それから、実際に流通その他をやっておられる、現場でいろいろなことを見ておられる方が集まるという大変バラエティーに富んだ方がどうやって議論していくか、これはなかなか大変でございますけれども、少し助走はしてきたと思います。特に経産省が最初にサービス・イノベーション研究会を開いたときのメンバーも何人かいらっしゃいますし、その後、文科省の中の高等教育局がサービス・イノベーション人材育成推進委員会というのをやりまして、そのときのメンバーの方も何人かいらっしゃいます。それから、これからご紹介がありますけれども、私がいますJSTのCRDSの中で、サービス・サイエンスをいろいろ研究しておりますけれども、そこでいろいろお願いしている先生方も入っていると思います。
 そういう意味では、できるだけ皆さん、ご活発にご意見を交わして、来年度以降、実際にサービス・サイエンス・エンジニアリングのファンディングを行うときの何かのお役に立てればよろしいかと思っておりますので、どうぞ、皆さんのご経験をもとにいろいろとご意見をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に進めさせていただきますけれども、本検討会は原則公開でございますが、よろしゅうございましょうか。それでは、本日の議事は公開とさせていただきます。それから、議事録につきましても、各委員の確認・了解をいただいた後、文部科学省のウェブページに掲載する形にさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に入ります。まず、検討会の進め方について、事務局からご説明をお願いいたします。

【柿田計画官】

 それでは、ご説明申し上げます。まず最初に参考資料1をご覧いただきたいと思います。本検討会の開催について文部科学省科学技術・学術政策局における設置のペーパーでございます。ここに書いてございますように、まず目的といたしまして、サービスは経済活動において大きな比重を占めるなど、また、国際競争力の観点からも一層重要となる分野であると。それから、医療・福祉といった国民生活の質を向上させる観点からも重要な分野と考えられます。しかしながら、サービスの提供の過程等においては、経験と勘に依存する側面が強いのが実態でございまして、これまで必ずしも科学技術的な手法が取り入れられていないというのが現状であると思います。そこで、サービスについて、科学的・工学的な基礎を確立し、また、それに立脚しつつ、サービスを提供等する方法論の構築や環境の整備等に向けて必要な事項を検討するために、この検討会を開催するということでございます。
 検討事項でございますが、科学技術政策として取り組む事項及びその方策ということにつきまして、ご検討をいただきたいと思います。
 若干、今のペーパーに補足をさせていただきますが、サービスの分野における科学的・工学的手法の適用の重要性というものが最近高まっているわけでございまして、私どもといたしましては、繰り返しになりますが、科学技術政策として取り組むべき施策について、どういったものがありうるか、ご検討いただきたいと思っております。
 そこで、検討のスパンといたしましては、平成23年度から始まる第4期の科学技術基本計画、その期間をカバーするという意味で、今後8年から10年ぐらいのスパンを念頭に置いていただきまして、議論していただきたいと思います。
 それから、冒頭、局長からも話がございましたが、21年度の概算要求におきまして、サービス科学・工学研究の推進というタイトルで、産学等の連携によりまして、サービスの最適化、高度化等を実現する方法論の構築に向けた研究開発を支援するための制度、1つのイメージとして競争的研究資金の創設に向け、今、作業をいたしております。この研究開発は、数学、IT等の主として自然科学をベースにいたしまして、複数の要素的な知識の統合によるサービスの革新、例えば新しいサービスの開発でありますとか、既存のサービスの高度化、最適化、あるいは生産性の向上、こういったものを図るものを想定しております。
 一方、JSTの研究開発戦略センターにおきまして、サービス・サイエンス・アンド・エンジニアリングと題しまして、サービスの生産性向上と新しいサービスの創出等に貢献し得る研究開発に向けた政策提言のための具体的な検討が開始されております。これについては、本日の議題で、後ほど丹羽委員からご紹介いただくことになっております。
 したがいまして、本検討会といたしましては、まずサービスについての全体を俯瞰していただいた上で、先ほど申しました文科省が要求しようとしております競争的研究資金のあり方をはじめといたしまして、その他、サービスの分野における科学技術政策として推進すべき事項について、できるだけ広くご議論いただきたいと思っております。なお、競争的研究資金につきましては、JSTの研究開発戦略センターにおける掘り下げた検討とも連動させながら、そのあり方をこの場で議論いただければと思っております。
 次に、資料1をご覧いただきたいと思います。サービス科学・工学の推進に関する検討会の進め方の案でございます。まず本日第1回ということで、この後、事務局よりサービス・サイエンスに関する動向について、簡単ではございますがご説明させていただきます。その後、JSTのCRDSにおける検討、調査の状況について、丹羽委員からご紹介いただきたいと思っております。
 その後、第2回を9月1日に既に日程をセットさせていただいておりまして、2回、3回に分けまして、幾つかの分野における有識者の方、あるいはこちらに入っていただいております委員の方々から事例等の紹介をいただきたいと思っております。
 第2回におきましては、日高委員よりサービス・サイエンスの概念とITサービスに関するプレゼンテーションをお願いしたいと思っております。それから、もう1件、ロジスティックスの分野についても有識者の方からご発表いただきたいと思っています。
 第3回におきましても、まだ分野は未定でございますけれども、プレゼンテーションをいただくともに、丹羽委員から重ねて、その後の調査状況についてご紹介いただければと考えております。
 第4回、5回ぐらいのところで、事務局のほうから海外のファンディングについてのご説明でありますとか、それから、これまでの議論の取りまとめ、そして、それらを受けて、サービス・サイエンス振興のあり方の案をお示しできればと思っておりまして、スケジュール感としては、年内に取りまとめをさせていただければと考えております。
 以上でございます。

【生駒座長】

 ありがとうございました。今の検討会の進め方に関して何かご質問、ご意見はございますか。サービス・サイエンスそのものに関しましては、後ほど、いろいろとご意見をまたいただきますけれども、今の検討会の進め方、これは結構、短期決戦でして、本年度中に何らかの格好のサービス科学・工学の形が見えたものをつくりたいというのが意向でございますけれども、進め方等について、ご質問はございますか。よろしゅうございますか。
 それでは、次に参りましょうか。次、お願いいたします。

【堀田調査調整課課長補佐】

 事務局から、サービス・サイエンスをめぐる動向等について、ご説明させていただきます。まず、我々なりのサービス・サイエンスというのはどういうものかというとらえ方、そして、今なぜサービス・サイエンスを振興する必要があるのか、そして、諸外国の動向等、そして、今まで日本国内で取り組まれましたサービス・サイエンスに対する取り組み、この4つにつきまして簡単にご説明させていただきます。
 まず最初は、我々なりのサービス・サイエンスとは何かというとらえ方でございますが、一般的には社会科学、ビジネスへの自然科学、工学の応用ないし融合であると考えております。例えば、金融の経営に対する数学の応用ということで金融工学、また、流通分野に対しますIT技術、数学の応用というところでサプライチェーンマネジメント、あるいは、最近話題になっております渋滞の科学、こういった融合分野であると考えているところでございます。
 また、法律的な話でございますが、本年6月に、先ほど局長からもお話がありました議員立法として成立しました研究開発強化法の47条におきまして、社会科学または経営管理方法への自然科学の応用に関する研究開発ということで、経営学をはじめとする社会科学的なものに対する数学とか、IT等の自然科学の応用に関する学問であるというふうに明確に規定されたところでございます。
 次に、サービス・サイエンスをなぜ今、始める必要があるのかという必要性でございます。まず最初に日本におけますサービスの位置づけとしまして、GDPの7割、そして雇用の3分の2を占めているという重要な状況にあるということ、また、製造業におきましても、例えばIT技術を利用した設計システム、CAD/CAM等の設計システム、また、製品をつくった後のサポートなどの製造業の中におけるサービス部門が非常に大きくなっているという状況にございます。日本の経済の中で、サービス業あるいはサービスというものが非常に大きくなっているという現状がございます。
 次のページでございますが、そういった中で、こうしたサービスに対する日本の課題としてどういうものがあるかということでありますが、我が国の経済が引き続き活力を維持するためには、製造業とともにサービスというものを双発のエンジンとしてやっていく必要があるだろうと思っています。ただ一方において、アメリカ等におきまして、最近IT技術、あるいは数学を応用した新たなサービスが非常に伸びているところでございますが、我が国においてはこういったサービス産業の国際的な展開が乏しい、あるいは、アメリカ等に比べてサービス分野におけるイノベーションが乏しいのではないかという疑問があるということ。また、現実にも日米で比較した場合、サービス産業への研究開発投資というものはアメリカに比べて圧倒的に少ない。これは6分の1程度と聞いております。そういった状況にございます。
 さらに、競争力と別の観点からいいますと、少子高齢化や慢性的な財政赤字が続く中、我が国がこれまでどおりの生活を維持していくという観点から、福祉とか医療、こういった公共分野に対するIT技術等の導入によって、質を維持していくという観点も不可欠であると、我々としては考えております。
 最後に、サービス・サイエンス振興がどうして必要かということでありまして、先ほど申しましたとおり、サービス業というものが非常に経済において大きな割合を占めているということから、90年代以降、興隆を見たIT技術、バイオ技術などのいわゆるサイエンス型産業に匹敵する、あるいは、はるかに大きなインパクトを世界の経済に与える可能性があるということ。後ほど簡単に説明させていただきますが、アメリカをはじめとする世界の主要国がサービス・サイエンスの振興を強力に開始したところでございます。これに乗りおくれないということが我々は大事だろうと思っております。
 また、そのような趣旨を踏まえて、先ほど簡単に申しました研究開発強化法の47条におきまして、サービス・サイエンスに関して調査研究を行い、それを施策に反映させるということが明確に規定されたところでございます。こういった国会のご意志も踏まえて、我々としても早急な取り組みを開始していく必要があるだろうと考えているところでございます。
 次のページになりますが、3.といたしまして、諸外国がどのようなサービス・サイエンスに対する取り組みをしているのかということでございます。やはり、一番大きく動いているのはアメリカでございまして、まず最初に2004年の米国競争力会議のパルミサーノ・レポート、当時IBM会長であられましたパルミサーノさんを議長とするレポートでございますが、この中でサービス・サイエンスというものを大きく取り上げまして、非常にインパクトを与えたという状況でございます。このパルミサーノ・レポートの流れを受けまして、去年の8月に成立した米国競争力法案におきましても、サービス・サイエンスの振興を規定したところでございます。この中で政府は、全米アカデミーズにおける有識者からの意見聴取に基づき、1年以内に報告書を策定すべきということを規定しているところでございます。
 そのほかの国々につきましても、次のページになりますが、例えばドイツは2011年までの4年間で100億円を投資するというようなことを言っています。また、フィンランド、英国、韓国などにおきましても、今年から取り組みを始めているところでございます。
 最後に4.といたしまして、今まで政府として、サービス・サイエンスに対してどういう取り組みをしてきたのかでございます。まず(1)として、我が省の取り組みでございますが、この中で人材育成ということでは、平成19年よりサービス・イノベーション人材育成事業、これは大学に対して講座を開くための支援を行っているところでございますが、こういった事業を開始しているところでございます。
 また、(2)としまして、経済産業省がかなり熱心に最近、取り組まれております。平成19年4月に「サービス産業におけるイノベーションと生産性向上に向けて」という報告書を出しまして、それに基づきまして、2のようなサービス産業生産性協議会、こちらはいわゆる官民の協議会でございます。成功体験等の共有化を行うというためのものでございますが、こういった協議会を開催するということ。また、5にありますような産総研におきまして、ことしの4月からサービス研究に関する部署を立ち上げて、研究開発を開始していくといったような状況にございます。
 参考資料でございますが、最後の表として、世界各国のサービス・サイエンスに対する取り組みをまとめておりますので、ご参考にしていただければと思っております。
 そのほか、参考資料2−2から4−3まで、先ほど文中で紹介させていただきましたいわゆる競争力法案でありますとか、我が国の研究開発強化法のサービス・サイエンスに関する部分を抜き書きしておりますので、ご参考にしていただければと思っているところでございます。
 説明は以上でございます。

【生駒座長】

 ありがとうございました。何か今の件でスペシフィックなご質問はございますか。よろしゅうございますか。
 続いて、科学技術振興機構の研究開発戦略センターにおけるサービス関連の活動紹介を丹羽委員のほうからお願いいたしまして、その後で、まとめてご意見、ご討論をお願いしたいと思います。丹羽委員、お願いします。

【丹羽委員】

 それでは、資料3に従いましてご説明をさせていただきます。私ども、科学技術振興機構、研究開発戦略センターという組織でございますけれども、JSTのCRDSというふうに略して言っております。ご存じの方もいらっしゃるとは思いますけれども、初めてこういう名前を聞かれる方もおありだと思いますので、最初に若干、この研究開発戦略センターの概要の紹介をさせていただきます。
 2ページ目でございますが、これが私どもの研究開発戦略センターの体制でございまして、センター長は生駒が務めております。平成15年の7月にできましたので、できてから5年程度の組織でございます。下のほうに幾つか並んでおりますけれども、ここがそれぞれの技術分野をカバーしております。Uと書いてありますが、ユニットというつもりでございまして、ユニットが並んでおります。
 ここでやっている作業は、右側の3ページでございますけれども、右下に研究開発戦略センターというものがございます。ここで戦略プロポーザルというものをつくりまして、国がファンディングをすべきテーマ、あるいは推進方法等を関係の府省、あるいは総合科学技術会議等にご提案をしているという機能を担っております。
 文部科学省に対しても、もちろん、この戦略プロポーザルを提案いたしまして、戦略目標等の策定の参考に資するということになっております。そのほか、経産省や関連の府省にももちろん提案させていただいているところでございます。
 次に4ページでございますけれども、先ほどもちょっとご紹介がありましたが、私どものCRDSの中でチームというのをつくっておりまして、具体的な提言をしようということで、現在、検討して進めているところでございます。サービス・サイエンス・アンド・エンジニアリングチーム、SSEチームというふうに呼んでおります。ここでの状況でございますけれども、現在、サービス関連の研究、教育、施策などの状況調査とともに、重要な研究領域、課題抽出を進めているというところでございます。
 視点としては、3つぐらいあるのかなと考えておりますが、サービスの生産性向上、2番目は新しいサービスの創出、3番目として、サービス・サイエンス・エンジニアリングについての新しい学問領域、あるいは学問体系を開拓するということではないかと思っております。この検討会の趣旨からいいますと、3番に力点を置く、プライオリティーからいうと3番の点がそれに当たるのではないかと、現在は考えているという状況であります。
 5ページ目に行きまして、今までいろいろ行われているサービス研究をカテゴライズするとどうなるかというのを簡単に書いてございます。横軸は、ハードサイエンス、ソフトサイエンスという言葉が妥当かどうかはわかりませんけれども、ハードサイエンスというのは、いわゆる自然科学、数学、IT等々のものを指しておりまして、ソフトサイエンスというのは、もう少し人文科学、あるいは人間科学、そういうものを含めたものを指しているというつもりで書いております。それから、縦軸のほうは、上が応用、あるいは実際のビジネスに近いところ、それから、下がより基盤に近いところというつもりで書いております。
 3つの丸がございますけれども、一番下にあるのが人間や組織の行動の計測・分析、あるいは価値等々をハードからソフトまで広くカバーするような研究領域というのが1つあるのではないかと考えております。それから、2番目はその上に立ちまして、サービスのモデル化、効率化、こういうのが1つのカテゴリーとしてあるのではないか。それから、3番目がサービス・イノベーション、新しいイノベーションの解析と新サービスの創成ということにカテゴライズされるのではないか。もちろん、これらは相互にオーバーラップするところも多々あるんですけれども、あえて分ければこういうことかなと考えているところです。
 6ページ目は、それを少しブレークダウンしてキーワードを説明したものでございます。一番目の人間・組織の行動の計測・分析、この辺は、例えば検索エンジンとかポータルサイト、ICカード、携帯電話トレースによって人間の行動を計測するとか、あるいはサービス価値の評価方法の研究等々が入るかと思います。それから、2番目、サービスのモデル化と効率化という領域では、オプティミゼーションとか、コンプレクシティー、ウェブサービス等々が入るのではないかと考えます。3番目のサービス・イノベーションの解析と新サービスの創成については、実社会におけるケーススタディーを積み重ねて、イノベーションプロセスのそこに何か法則性があるのではないかというようなことを探索するとか、あるいはビジネスモデルをつくってみるとか、そういうような研究が入るかと思います。
 7ページに行きまして、これはサービス・サイエンス・エンジニアリングを検討するときに、こんなふうに構造化して考えたらいいのではないかと考えている絵でございまして、一番上に対象サービスがございます。対象サービスというのはいっぱいありまして、今日、ご出席の委員の方々のそれぞれのご専門の分野があると思いますが、それに資するものとして、その下に技術パッケージというふうに書いてございます。一番下にある要素技術を幾つか組み合わせたような、そういうパッケージをつくりますと、対象サービスに対して何らか資することができるというような、そういう構造ではないかと思っております。これは下から上に向けての矢印しか書いていないんですけれども、実際には、この対象サービスから下に向かっての矢印もあるわけでございまして、それを繰り返しながら、だんだんリファインしていくというような構造ではないかと考えております。
 次のページでございますけれども、これは重要研究課題を最終的には切り出したいと思って、現在進めているわけでございますけれども、それのアプローチとして2つの方法があるのではないかと考えています。
 1つ目は、対象サービスを設定して、そこをあらかじめ決めて、そこで必要となる技術パッケージと要素技術を検討する。例えば医療なら医療というサービスを決めて、そこで必要となる技術パッケージを検討するという方法が1つあるのではないかと。この方法の特徴としては、現実のサービスを対象といたしますので、問題点が明確になる点があると思います。ただ一方で留意すべき点として、なぜそのサービスを設定したかという根拠があいまいになるおそれがある。それから、選んだ特定のサービスにのみ適用可能な狭い技術の研究に陥るおそれがあるのではないか。それから、3番目として、既存の技術を寄せ集めて対象となるサービスをよくする、生産性向上等々のことに終わってしまうおそれがあるのではないか、こういう点は留意すべき点であろうと思っております。
 一方、もう1つのアプローチとして、アプローチ2と書いてございますけれども、これは対象サービスを特定するのではなくて、複数のサービスで必要となる機能を抽出して、それに必要となる技術パッケージと要素技術を検討していこうという考え方であります。例えば、そこに2つほど書いてございますけれども、こういう技術というのは、医療サービス、あるいは何々サービスというものに限らず、ほとんどどんなサービスでも必要となる技術でございますので、そういうものをあらかじめ決めておいて、抽出しておいて、そこからスタートするというやり方も1つあるのかなと考えております。この特長としては、ある程度広範なサービスに適用できる技術を対象にできるという点はありますが、もう一方、留意すべき点としては、では、なぜその機能を抽出したのかという根拠があいまいになるおそれがある。それから、もう1つ、サービス・サイエンスと言わなくても行われている研究課題しか出てこないおそれがある。それから、具体性が欠けるというようなところがあって、それぞれ一長一短があるのかなと考えております。
 9ページ目はそれをもう少し詳しく説明したものでございまして、アプローチ1でいうと、例えば対象サービスA、B、C、Dとありまして、黄色いところからスタートして右側へ話を進めていく、展開していくというやり方です。
 アプローチ2というのは、複数のサービスで必要とされる機能からスタートして、右側の欄にあるような要素技術はもちろん必要でありますけれども、それを対象サービスに適用してみるというような流れでスタートするやり方も1つあるかなと思います。
 10ページ目はサービス関連施策の状況ということで、先ほど既にご紹介がありましたので、ここでは繰り返す必要もないと思いますけれども、1つだけつけ加えますと、米国の国家競争力法というのが書いてございますけれども、The America COMPETES Act、ここにも書いてございますけれども、これが2007年8月9日に立法化されました。1年以内にOSTPが議会に対して、サービスに関連の研究を、どういうことをやるべきかということを答申するということになっておりまして、8月9日が期限だったわけなんですけれども、それを過ぎても特に動きがなかったと。それで、18日、19日に国家科学技術サミットという、OSTP主催の会議がございまして、そこで何らかの話があるのではないかということで、みんな注目していたんですね。それで、ちょうど私どもの組織からそれに参加していた者がおりますので、情報を集めるように言っておいたんですけれども、入ってきた情報では特に何もなかったということでございます。マーバーガーというOSTPの長官がいるんですけれども、その人は健康上の理由で来なかったということで、配付資料の中にマーバーガーのメッセージがあったそうなんですけれども、特にサービスに関してメンションはされていなかった。ただ、サミットの中で、ヒューレット・パッカード(HP)とIBMがプレゼンをしたということであります。HPの人の中に、やはりサービスに関してもう少し連邦政府がファンディングを強化すべきだという話があったそうです。IBMの話は、必ずしもサービスということだけではなく、もっと理工系の教育、研究に連邦が力を入れるべきであるという主張を展開したということでございます。ですから、サービス関連でOSTPから議会に対してどのような話があるかということは、まだ現在の時点ではわかっていないと。今後の展開を注目する必要があると思います。
 私からは以上でございます。

【生駒座長】

 どうもありがとうございました。後ろについている資料は何ですか。

【丹羽委員】

 これは10ページ、サービス関連施策の状況の中で、青い字で書いてあるところを少し詳しく説明した資料を後ろにつけてございます。産総研のサービス工学研究センターの状況、それから、東大の産学連携本部のサービスイノベーション研究会の状況、それから、NSFにおけるサービス関連のプロジェクトの状況が書いてございますけれども、これは参考までということでつけてございます。

【生駒座長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまから約1時間、時間がございますので、今までのプレゼンテーションに対する質問を含めて皆さんのご意見を交換していただきたいと思います。どうぞ、ご自由に手を挙げて意見なり質問なりをしてください。どうぞ。

【中島委員】

 はこだて未来大学の中島ですけれども、生駒先生のワークショップで昔、2年ぐらい前ですか、情報系の今後どうするかというのを議論していたときに、スピンというモデルをみんなで考える。それは研究開発をするだけで止まるんじゃなくて、それをサービス、要するに実用に供して、そこからまた新しい価値とか、設計のし直しに戻してくる、そのサイクルをずっと回していかなきゃいけないという話をしていたんですけれども、そのときからサービスという言葉を使っていました。その時のサービスというのは、今言われているサービス産業という意味よりは、いろいろな技術を実用に供するという意味で、実は英和辞典を引くと、サービスというのは二十幾つ、翻訳が出てくるんですけれども、その中の1つに実際に使うという意味がありますけれども、その意味で使っていたんです。
 そのことから、今、ちょっと丹羽委員の話のアプローチ1とアプローチ2がどっちがいいだろうという話を聞いていて思ったんですけれども、実はサービスをどこかで固定するというのはだめなんじゃないかと思っているんです。それで、なぜかというと技術が変わればどういうサービスが提供できるかというのは当然変わるべきだし、それから、サービスが変わればどういう技術を開発すべきかというのも変わってくる。お互いに関連があって、どっちを先に決めてもだめなんじゃないだろうか。だから、先ほどのスピンみたいに回さなきゃいけないんだろうと思っています。
 それで、私は情報系なので、最近思っていることなんですが、よく自治体の住民サービスというのが最近いろいろなところでIT化というか、ネットワーク化されつつあるんですが、あれがちょっと語弊があるんですけれども、悪いほうのいい見本だと実は思っているところです。例えば例を挙げますと、住民票をインターネットで申請できますよという仕組みがあるんですけれども、インターネットがあれば、実は住民票が要らなくなるというのをやってほしいわけですね。住民票は、要するに個人のアイデンティティーのためにあるわけですから、それを全部インターネット上で認証してしまえば、ああいう紙に印刷する必要がないのではないか。あるいは、いろいろな省庁の間で発行している証明書は、省庁間で勝手にインターネットでやりとりすれば、一々住民が取得して反対側に提出するという必要はないのではないかと思います。
 そういう意味で、これは例ですけれども、技術が変わればサービスはもっとよくなるはずであるということで、そこを根本的に考え直さないモデルだとよくない。そういう意味で、このサービス工学・サービス科学というのは、ある意味で単にサービスがあって、そのための科学技術をどうするかじゃなくて、自身の新しいモデルを要求しているんじゃないかなというふうに思っているところです。

【生駒座長】

 ありがとうございました。何かご意見ございますか。今の、極めて含蓄のあるご提案で、いきなりそこへ飛んじゃったんですけれども。
 今日は、このアプローチ1とアプローチ2の両サイドの方が委員になっておりますが、アプローチ1のように対象サービスで専ら現業を営んでいる方と、むしろツールを持っていて、それをいろいろアプライしていこうという方と、両方の方がいらっしゃる。それに対して、今の中島先生のお話は、既存のものではなくて、お互いインタラクションしながら新しいサービスの技術も生み出されていく、それがサービス・サイエンスの本来の真髄であろうと、こういうご指摘だと思います。私も誠にそのとおりだと。いきなりそこを突いちゃうと議論が全然できなくなりますから、そこは結論にしたかったんですけどね。結論になっちゃったんですけれども、どうぞご自由にご発言をお願いしたいと思います。どうぞ。

【安部委員】

 会の最初なので、ある程度決めておくことがあるのかなと思っていまして、私は大体2004年あたりから、先ほどの話でいうとパルミザーノ・レポートが出てきてから、多分日本で従来型のサービスとは違ったサービス・サイエンスとかサービス・エンジニアリング、そういったものが注目されてきたのかなというふうに思っていまして、日高委員はずっとやってきているんですけれども、経産省がやっているのもそうなんですけれども、定義に入らないんです。サービスとは何かということを、やっぱりそこにいくと神学論争とかそっちになっていく可能性があるので、みんな大体そこを避けながらずっとやってきたんじゃないかなというふうに思っていまして、アプローチの問題も、やっぱりサービスとは何かというのをある程度決めてからやったほうがいいのかなというところを私は実は思っていまして、というのは、サービスというのはやはり階層的にも産業として見るレベルから、商品として見るレベルから、プロセスとして見るレベルから、かなり多階層にわたっていて、どこに焦点を当てるかによってアプローチも違うし、解決策とか対応策も違ってくるんじゃないかなと。大体の会議を見ていてもそこがごっちゃになっているので、最後はみんなが思っているサービスで出てきた話を解釈しているということになりかねないので。というか、今まではずっとそうだったような気がして、そろそろ2004年から時間もたったので、そこを真正面からやってみるのもいいのかなという1つの提案です。
 それから、もう1つの提案は、ここにも載っていますけれども、日本でも海外でも、いろいろなところでもうこの分野の分析が進んでいまして、特に日本でいうと文科省と経産省、役所のほうが進んでいると思うんですけれども、その中で、今回の会議というのは文科省がやっているので、経産省との住み分けみたいなものをどういうふうに考えていらっしゃるのかというのはあったほうがいいのかなと。それをなくして、両方とも競争しながら同じ方向でやるんだと、いつも産学連携から、MOTから、大体経産省と文科省は同じようなことを、若干経産省が先にやって文科省が追いかけるという歴史だったと思うんですけれども、そういうようなところを分けるのか。今までどおりでもいいんだ、競争しながら提言を競い合わせるんだというのでもいいんですけれども、その辺のところもちょっとお聞きしながら進めたほうがいいかなと。ちょっと会の始まりなので。

【生駒座長】

 そうすると、後半の話はご回答いただけますか。

【柿田計画官】

 やはり文部科学省としてどういうことをやるかということをご議論いただきたいと思っておりまして、今、競争的研究資金制度ということを我々は来年度に向けてやっていきたいと思っておりますが、そのファンディングを受ける側といいますのは、もちろん産、学、いろいろあるわけでございますけれども、やはり文部科学省としては1つの大きなセクターである大学というところをにらんで、そこでサービスというものを対象とした基礎的な研究をやっていきたいと。
 そこで、先ほどの丹羽委員のペーパーにもございましたけれども、サービスを提供するに至る基本的なレベルでのいろいろな要素技術、あるいは要素となるような知識というものがあるわけですけれども、それらについて、新しいものの創出でありますとか、あるいは要素技術を組み立てて、さまざまなサービスの分野に対応していくような、そのための知識・方法論をつくり上げるとか、そういう意味では、現実のサービスに係る課題に対して学問的なレベルまで遡って研究開発を行うというのが文部科学省としてこれからやらなければいけないことの1つかと思っております。
 さらには、研究開発の成果を教育の現場に活用していくということを通じた新しい人材育成のあり方なども、中長期的なテーマとしてはあり得るかと思っておりますので、私の認識では、もちろん経済産業省もさまざまな取り組みをやっており、産業界、いろいろな業界の生産性の向上を果たすという部分では、とりわけ経産省が力を入れて取り組まれていると思いますけれども、文部科学省としてはより学問的なレベルまで掘り下げて、冒頭申しましたように数学だとかITだとか、そういった自然科学をベースにサービスというものを対象とした研究を行うというように、非常に概念的な話で恐縮ですけれども、イメージとすればそういう形で考えております。

【生駒座長】

 模範回答でしたけれども、よろしゅうございますか。

【安部委員】

 やっぱり経産省の施策は、ケーススタディから入って、ベストプラクティスみたいなものを集めて、その中で共通のものがあって、多分サービスの1つの特色としては、生産性の非常に高い企業さんとか産業さんと、低い産業さんとか企業さんがばらばらにあるので、そのベストプラクティスがあれば、そこで全体の底上げをするというようなところが私のイメージなんですけれども、そうじゃなくて、文部科学省は、もっとサイエンスというようなところ、サービスのモデル化で、もう少し人間の満足感はどうなるかとか、多分そんなところまで入っていこうとしているというふうに理解したんですけれども、それでよろしいですかね。

【生駒座長】

 非常にはっきりしたものは、サービス産業の生産性改善というのは、アメリカと日本では歴然と違いがあるわけです。ちょっとデータが出てきますけれども。だから、その1つは、ある意味ではクオーテーションマークの学問を上手にプラクティカルに使って生産性を上げるかどうかという点で、そういうような学問というのをつくりたいと。要するに、生産性向上というものの基盤になるものをつくりたいというのが多分文科省のチャレンジで、それをもとにして、やっぱりこれは技術だけじゃなくて教育面もあるわけですよね。ですから、その辺がうまく、教育面と研究面が一体となって進められるようなものが、それは何を教えればいいかとか何を研究すればいいかがわかるといいという、そういう意味だろうと思うんですけれども、できるかどうか非常に難しくてわからないんですけれども。
 それから、前半のほうのサービスとは何かというのから始めようというのは、実はCRDSの中での議論のときに、それをやるなと私はまず言ったんですけれども、おっしゃるように神学論争になってしまう。それで、プラクティスでイグザンプルを幾つか並べた上で、最後にサービスというのはこういうものだと定義したほうがプラクティカルだなというので、一応実際のプラグマチックな実践的なアプローチをとった上でサービスを定義しようというふうに、CRDSの中ではしてもらっていますね。
 もう1つは、サービス産業という言葉じゃなくて、サービスという言葉にとどめているのがみそでして、これは中島委員がおっしゃったように、サービス産業じゃないと。サービスを、技術を使うというふうにうんと広くするからまだわからないんですけれども、わざわざサービス産業の産業をとって全部やっているという点がちょっと要注意というか、コメントでございます。
 それから、サービスというものが何であるかどうかというのは、これはチャレンジングでして、今後の課題というか、今日は結論が出ませんけれども。
 今のご意見に対して、何かご意見ございますか。

【日高委員】

 多分、生駒座長と私、最初の経済産業省の会議は、そのときの反省会でおっしゃっていると思うんですけれども、実はサービスを分けて、タイプで分けましょうとやるのは、それでフォーカスをしようという話を多分おっしゃっているんだと思うんですけれども。

【安部委員】

 タイプじゃないよ。

【日高委員】

 タイプじゃなくても、何かサービス。どのサービスに絞るかとか、サービスとは何かというのをはっきりさせようということだと思うんですけれども、やってみると結構大変で、簡単じゃないと思うんです。要するに、それができるほど我々はまだ理解していないんじゃないかというふうに思っています。すなわち、“What is service”というのは議論の出発点にあるものじゃなくて、いろいろやっていくうちに結論として見えてくるというような色彩が強いと思うんです。それで、多分生駒座長は、それは定義せずにいろいろやってみて考えようということをおっしゃっていると思うんですけれども、私もそこに関してはそのとおりかなと思います。
 それで、最初ですので、発散フェーズということでもっていろいろ意見を言わせていただこうと思うんですけれども、私、IBMにおりまして、これの一番おおもとはパルミザーノもありますけれども、ジム・スポーラーというアルマデンの研究者が一番リードしていて、月に一度ぐらい電話会議で話すんですけれども、先月、6月にたまたま会う機会があって直接話したら、IBMは“Service Science,Management,Engineering”、SSMEと言ってきたんです。4文字あったんですけれども、6月には5文字になっているんです。最後にDがついてると。SSMEDだと。ジム・スポーラーは、今はSSMEDと言っているわけです。Dというのは“design”だと。サイエンス、マネジメント、エンジニアリングと言ってきたんだけれども、その中ではどうもデザインがカバーされていないから、そこをエクスプリシットに入れたいという話をしていたんです。私は、そうやっていると次にどんどん長くなっちゃうから、それはサービス・サイエンスでいいという話をしたんですけれども、やはり具体的にアメリカ人は非常に分析的に考えるので、そうするとデザインの要素というのはやっぱり大事かなと。
 先ほど、丹羽委員からアプローチの話がありましたけれども、私からすると、これはどちらも分析的なアプローチだと思うんです。多分、1つは設計する視点というのが要るはずで、要するに、サービスをどういうふうに分析したらいいのかという視点がまず要るのかなというふうに思います。例えば、きょう一番最初の紹介の中でもって、事務局の方から金融プラス数学が金融工学という話が出てきましたけれども、これはわかりやすいんですけれども、ちょっと焦っているかなという感じがして、こんなに単純じゃないと思うんです。
 何かというと、我々は科学の議論をしているはずなので、科学は違う2つのものを違うもので見ていると始まらないわけです。医療と金融は全然違います、だけど、共通点は何で、どういうところが本質的に違うのかとか、そういうような議論をするところがまずあってスタートするのかなというふうに思います。だから、それをやっていると時間がかかって、それだけで10年とか使っちゃいそうな気もするんですけれども、そういうサービス全体を整理するような視点に関する議論というものがまず要るのかなと。その中でもって、こういうようなカテゴリーのサービスはこのアプローチが望ましいとか、そういう議論もできていて、そうするとそこに適用されていく個別の技術というのも整理されてくるのかなというふうに思います。
 だから、多分いろいろ難しいって、要素技術のコンポーネントそのものが、重要じゃなくはないんですけど、それに対する研究が主になるんじゃなくて、それを統合的にいかに設計するかというところが1つ、今まで全然やってなくて、チャレンジングなやり方というふうに思っています。ちょっと発散するような話で申しわけないんですけれども。

【生駒座長】

 はい。どうぞ。

【儀我委員】

 私、数学の儀我と申します。経産省と文科省の住み分けのようなお話もあったと思うんですけれども、このサービスの中でぜひとも取り上げていただきたいのは、何を隠そう、大学の中の研究サービス、これが1つ重大な問題だと思います。これは経産省は多分やってくれないと思うのです。
 具体的にどういうことかと申しますと、例えば日本の大学で研究して成果を上げた場合と、イギリスとかアメリカで成果を上げた場合と、伝搬の仕方が全然違ってくるわけです。もちろん個人の問題もあるのですけれども、文献整備など、研究に欠かせない研究基盤が日本の場合は既にかなり弱いものです。これから電子化に伴い、その重要性は高まりますが、海外の方法をアドホックにがたがた入れているだけですと、ますますややこしくなります。確かによく、大学の方はご存じだと思いますけれども、電子化によって仕事が増えたというのはいっぱいあるわけですよね。そういうふうになってしまうので、研究サービスをどの様な形うにするかということが問題であると思います。
 特に、研究した結果はいろいろで、実験は実験でデータの積み重ねであると思います。それを他の分野の人が見やすい形にしたり、あるいは数学のいろいろな研究成果をほかの分野に見やすい形にするというのは非常に重要だと思います。そのためにはただ文献をもっていればいいというものでもないし、実験をすればいいというものでもないはずです。だから、私はサービスで大事なもののひとつとして、大学の研究サービスがあると思います。これは文科省でぜひ取り上げていただきたいと思っております。経産省は多分やってくれないと思いますので。それを一言申し上げておきます。

【生駒座長】

 ほかにご意見。どうぞ。

【高安委員】

 ソニーコンピュータサイエンス研究所の高安といいますけれども、私は物理学者の立場からのお話をさせていただきたいんですけれども、私自身はこのサービス・サイエンスとして例に挙げられている金融とか流通、小売り、交通、設計のどれともかかわるような具体的な研究をいろいろやっているので、いろいろお話ししたいことはあるんですけれども、一言で言いますと、これからの時代は社会現象が物理学の研究対象になる時代になっていると思っています。そういう理由は、今まで見えなかった人間の行動が非常に細かく見えるようになってきたということなんです。
 例えば、POSデータなどですと、大体市場にある100万種類ぐらいの商品1個1個がいつどこで売れたというような情報がありますし、金融市場でも、秒単位で動く金融市場が世界中合わせたら100万種類ぐらいあるんですけれども、そういう情報も全部手に入りますし、日本国内で大体企業は数百万社あるんですけれども、そういう企業同士がどういうつながりを持っているかというようなデータも最近は手に入りますし、インターネットに対するブログなどの書き込み、これも何百万人という人が毎日書き込んでいるものを、検索エンジンを使うと瞬時に解析できるわけです。
 大体そういう100万という単位の数字のデータがどんどんたまってきているんですけれども、どこの現場でもそれを十分こなせていないんです。例えば、私が所属しているソニー自身でも、販売の人とここ2年ぐらい共同研究をやっているんですけれども、販売に関しては、データとしては1個1個のデータがあるんですけれども、それじゃあ、そこからどれぐらいこれからテレビが売れるかとか、そういう予測になると全く勘と経験になってしまうんですね。
 それは、聞いているところによると、結構進んでいると言われているコンビニ業界でも同様なレベルらしくて、まだまだ全然膨大なデータを扱えなくて、結局ためたデータをそのまま捨てたり、ほかっているということがほとんどです。そういう現状があるので、そこはほんとうに科学的に分析すればいくらでもいろいろなものが出てくる余地があると思っていますので、自分の分野の宣伝になりますけれども、そういう今までは見えなかったものが見えるようになってきて、それでコンピューターを使えばいくらでも解析することがあって、しかもニーズもある、ターゲットがあるということをちょっと。今まで抽象的な話が続いたので、具体的なお話をと思いました。
 以上です。

【生駒座長】

 ありがとうございました。それでは、少し具体的に現場の方からご意見をいただこうと思うのですが。

【妹尾委員】

 抽象的な話を。

【生駒座長】

 抽象的な話を、もう1件だけ入れて、もうちょっと具体的な話へ移りたいと思います。どうぞ。

【妹尾委員】

 では、具体的になる前に。妹尾でございます。大きく3つぐらいの話を抽象的にさせていただきたいんですけれども、1つは、この会がサービス科学・工学の推進にというところがやはり気になってしようがないので、これはいつも生駒座長に怒られるのですが、社会系の人間としては、やはり科学・工学と言い切らないでほしいというわけです。私は、今サービス・スタディーズの体系化に取り組んでいます。サービス・サイエンスも含んだ概念でいきたいと。なぜならば、サービス・サイエンスと言った途端に、サイエンスの定義はいろいろありますけれども、要するに論理的整合性と経験的妥当性の軸における仮説の検証を科学と呼びましょうと言った以上は、科学・工学だけになってしまう。
 今、サービス全体の産業を考える学術体系を考えるときには、科学と工学だけではないでしょう。むしろ、もう少し広い範囲でサービス・スタディーズを体系化したほうがいいんじゃないですかということを申し上げます。来年から、東大とは別のところで、あるビジネススクールでサービス・マネジメントの科目開発を実際行って、始まりますけれども、そのときも、実はサービス・サイエンスではなくてサービス・スタディーズの体系の中でやろうと思っているんです。ということは、すごく、神学論争をするつもりはないんですけれども、例えばアリストテレス的に言えば、片方でテクノとポイエーシスがあるときに、つまり科学と工学があるときに、反対側にアリストテレスは何を置いたかといったら、当然プラクティスとプロネーシス、すなわち慮学を置いたわけです。すなわち実践学です。実践学と慮学を置いた。
 それが全く発達していないということが実はサービスがうまく進展していないところですから……、哲学は別ですよ。アリストテレスの三角形で言えば、こっち側に対してこっち側もきちんと体系づけませんかというのが実はご提案で、何を言いたいかというと、科学技術のファンディングというとみんなこっち側に寄っちゃうんです。ところが、そいつを活用して、プラクティスとプロネーシスをやるようなところについてのファンディングは実はあまりなされない。だから、社会系の研究者としては悔しいなというのがあって、ぜひこちらも体系上入れていただけたらすごくうれしいというのが1点です。すなわち、それは何かといったら、分析的な学問ではなくて、探索的な学問もあってもいいでしょうという話です。
 2点目が何かというと、サービスの議論はいろいろなところでご一緒させていただいているのですが、いつも切り分けませんかというのが3点あるので、それを提言させてください。1点目は何かというと、イノベーションとプロダクティビティーの話がよくごっちゃになります。イノベーションというのはモデルを新しくすることを言うのであって、プロダクティビティーというのは現行モデルを磨き上げることを言うんです。ですので、サービスの現行モデルを磨き上げるという先ほどの生産性向上の話と、新しいサービスモデルをつくろうねというイノベーションの話は、関係はしますけれども一度切り分けたほうがいいだろうというのが1点目。
 2点目は、サービスとものづくりの関係を、これは逆に切り離さないでほしいと思うんです。というのは何かというと、今、私の見るところでは、サービスとものづくりというのがものすごく関係づけられてきている時代に入ってきたというふうに見ています。すなわち、今まで無関係だったものが代替関係と補完関係と相乗関係に入ってきた。代替関係とは何かというと、典型的なのはSaaSですよね。Software as a service。すなわち、グーグルのサービスでマイクロソフトのオフィスがというものが出なくなるという関係、これが代替関係ですよね。ところが、補完関係というのがあって、モノが徹底的に革新されると、例えば電動介護いすが介護サービスにものすごく役立つというこの補完関係ですよね。3番目は何かというと、iPodはなぜあれだけ売れたといったら、iTunesというサービスとカップリングになったからですよね。これは相乗関係ですよね。すなわち、サービスというのがモノと関係づけられる。あるいは、モノがサービスによって価値づけられるというところの関係性はぜひつくりたいので、そのときにサービスをサービスだけの範疇で見るというのはいかがでしょうかという2つ目の関係性。
 3つ目の議論は何かというと、先ほどの資料の中にもあったんですけれども、この話をすると必ず経験と勘が悪者になるんです。経験と勘ではなくて、科学でいこうと言っちゃうと、これは代替関係になっちゃうんです。そうすると、いつも現場の人たちが大反発をするんですよね。そうではなくて、経験と勘というものとサイエンスをどう関係づけたらいいかという議論をしたいと。これもおそらく代替の部分が確かにあるかもしれません。だけれども、補完関係をどうつくればいいか。それから、どうすれば経験と勘とサイエンスが相乗関係を持つかという、これも研究分野だろうというふうに思うので、ぜひそこのところの関係を、サービス・サイエンスと言った途端にものづくりは切っちゃうよとか、経験と勘は切っちゃうよみたいな話にはしないでいただければなというふうに思います。
 それから3番目、先ほどのアプローチ1とアプローチ2のお話でどっちがいいかって、中島委員のお話があったんですが、私はアプローチ3を考えてほしいというのがあって、なぜかというと、アプローチ1というサービス固定で要素技術探索型というのと、それから要素技術を固定していてい用途開発探索型という2つがあると思うんですが、内閣官房の知財戦略本部のほうでもそれを議論しているのは、イシュー先導型だってあるだろうという言い方をさせてもらっています。すなわち、サービスイシューは何というところからサービスアイデアをやって、そいつをイネーブルする技術を開発するという回り方だってあるはずなので、その意味では、だれかがサービスイシューに関してサービスアイデアを出してくるという、そこの部分もものすごく重要なんです。
 グーグルは技術がものすごかったって、生駒座長はよくおっしゃるんだけれども、検索でああいうことをやろうというアイデアは、技術から出てきていないんです。そのアイデアをイネーブルする技術はあった、開発したということはあるので、アイデアジェネレーションの部分についての学術的な部分はあるはずなので、あるいはイシューセッティングからアイデアを創発させるような、その方法論というのもあるはずで、そこまでも範囲にしていただけたら、我々社会系、経営系の人間はものすごく喜んでそこへ、科学技術の関係の方とご一緒できるかと思うんです。

【生駒座長】

 ありがとうございます。最後の部分は、大澤委員は今日は出ておられないんですが、彼が『チャンス発見』という本を書いていまして、極端に言いますと、アイデアをいかにコンピューターから創出するかと、それで入っていただいたんです。大変重要なご指摘をたくさんいただいたので、そのうちにまたよくお話を伺いたいと思います。趣旨はまことにそのとおりだと思っておりまして、どれも賛成でございます。
 それでは、少しプラクティカルな面からのご発言をお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。実際にサービス業を営んでいる方にお話を伺いたいんですが、どこからでも結構ですが、加藤委員、いかがですか。
 加藤委員は私の理解するところでは、千葉夷隅のゴルフ場の支配人をされていたんですか。

【加藤委員】

 そうでございます。

【生駒座長】

 あそこは経営品質賞というのをまずもらったところで、大変ユニークなサービスでかなり、当時まだあれがなかったんですよね。

【加藤委員】

 アクアラインですか。

【生駒座長】

 東京湾のアクアラインが。そのころでも大変繁栄してゴルフ場を経営されていたということで、どうぞ加藤委員、何かご発言をお願いします。

【加藤委員】

 大変学術的なお話をいただいた、現場の立場として伺うと、率直な話、かなりいろいろな差があるなと感じています。現実的に今、サービス産業、私はゴルフ場という中で、またそれに関連したホテルだとか、そういう方ともちょっとおつき合いがあるわけですが、最後に応援歌のように、勘と経験というのは非常に守ろうとすることが多いということ。それから、その中で、やはり今お話が出るとおりに、何をどうしていいかということがなかなかわからない。また、だからこそ、今回そういうものの方向性を出されると思うんですけれども、そういうことで勝手に第一線の社員は、自分たちなりに考えて、自分たちのものをつくり上げていっている。
 が、ゆえにして、そういうものが時として、勘や経験が邪魔になるということになるかもしれないんですが、しかしそういうものに頼っていかないと、自分のやっていることは正しいかどうかということの判断がつかないという部分があったんじゃないかと思います。
 ただ、そういう中で、少し方向性を出していったり、それから何をどうしていこうかということに対する手法だとか、そういうものが少しでも見えてくると、意外とそれは最初のときは問題があるんですが――問題があるというのは、それを受け入れられないという問題があるんですけれども、それは乗り越えてくることができる。
 そうしますと、自分たちが実際にサービスを提供している、またお客様たちが思っているものとの間における、俗に言う暗黙知をどうやって形に切りかえてやっていくのか。それが残念なことに、裏づけをとるまでというのはものすごく時間がかかるんですが、そういう中から声の数値化とか、そういうものによって自信を持ってやっていくわけでございます。
 私たちの産業の中で一番問題なのは、やっぱりそういうところへ方向づける方がいらっしゃらない。また、そういう人が育ってきていないわけですから、たまたまその場所にそういう方がいれば、そういうものの目が覚めるだろうけれども、ほとんどの場合がそういう結果になっていかない。
 そういう意味では、今回、先ほど事務局のほうでお話が出ましたような、そういうものをその代の中で考えられ、そういうものに提供され、そこで学ぶ、そういう方が出てくることが非常に大切だと思うんですが、やっぱり少し時間がかかるという感じがあると思うんです。
 私は、いろいろな中で実際にやってきましたが、やはり経験というのはどうであるかは別としまして、やっぱり勘だとかひらめきというのは非常に重要なことで、こういうものからそれをどういうふうにその後、正しいものであり、またこれは普遍的なものなのかということをつくり上げていくときに非常に科学だとか、こういった面が必要で、そういうものを無視しては、ただ単にその人のもので終わっていってしまって、それが移転できていかないという感じになるかと思っております。
 そういう意味では、非常に第一線のメンバーたちは、例えば私の経験の中では、ISOというものをあるゴルフ場が受けようと思ったときに、残念なことに、グラフがかけないんですね。そういうものを審査する方は、非常にばかにした物の言い方をするようなことをされて、非常に科学性なほうに、こうと思うところから離脱をしていってしまって、今、ゴルフ界では何十コースかISOを取ったんですが、どんどんと返していってしまうという、逆行していってしまっているような状況がある。
 私はアマチュア団体なのですが、プロの世界においても、なぜ女子プロは非常に人気があって、男子プロは人気がないのかなんていうところを少し踏み込んでみますと、非常に明確に出てくる部分がございます。こういったところが実際に担当していると、裏づけがとれていないというのは、やはり適当な中でこうだろうと、目の前に起きている事象だけでとらえていってしまうために結果が結びついていかない。正直言うと、若干、そういうことがいろいろと現実には多くあり、結果として生産性も上がらないし、場合によりますと、そこで働いている社員の人たちのモラールも上がっていかないという部分ではないかと思っているわけです。
 そういう面から、きょう私ども、こういうところに参加させていただいて、私どもの所属には約1,500のゴルフクラブがございますし、またそれに関連してホテルの関係なんかもございますから、そんなところにいろいろなお話ができればと、こんなふうに思っております。
 少し的が外れたら申しわけないんでございますが、そんな形でちょっとお話をさせていただきました。

【生駒座長】

 ありがとうございました。はい、どうぞ。

【北川委員】

 お二人の委員から経験と勘の話があったので、ちょっとコメントさせていただきたいと思うんです。
 我々、経験と勘のものを科学的にということを日ごろ言っているんですけれども、これは決して経験と勘が悪者であるとか、邪魔者ということではなくて、ベストな人間が経験と勘でできるものを、ある意味で万人ができるような方法を確立するということを目指しているというつもりです。
 考えてみると、やはり科学技術の歴史というのはそれをやってきたんだと思うんです。例えば、中世であれば鉄をつくることもたくみのわざであったわけですし、近年になってもマネジメントだとか、それからファイナンスもそうだと思うんですが、すべて勘でやってきたことをだんだん科学的に、ある意味ではある程度の科学的知識があれば、だれでもできるようになってきている。
 サービスもまさにそうだと思うんです。これまで経験豊富な方ができたことを、もう少し科学的にやっていこうと。そのための方法を開発していけばいいんじゃないかと思っております。

【生駒座長】

 ものづくりにおいて、テクニークという技能がサイエンスに出会って、テクノロジーになって、技術になったんだというのがまさに考え方だそうです。これは石井紫郎先生のお話で、多分そう。技能も今、熟練工で必要なんですけれども、それをいかに科学化しておいて、テクノロジーになって伝承可能になる。これがまさにサービスの分野においても、今求められているというか、IBMの火つけ役で世界中で盛んになってきた理解なんです。ですから、ある意味ではサービスというのは、T型フォードの時代にいるんだと思っています。

【妹尾委員】

 座長、あえて今のところだけいいですか。

【生駒座長】

 はい。

【妹尾委員】

 経験と勘を悪者にしないようにと言った以上は、今のに反論じゃないんですよ。まさに北川委員おっしゃるとおり、経験と勘を万人へ持っていくのが科学の歴史だったというのがあるんですが、例えば今、オリンピックをやっていますけれども、体操競技を見ていて、我々はミュンヘンを思い出して、月面宙返りを塚原がやったことを思い出すと、彼はイノベーターだったんです。
 今、月面宙返りは中学の体操でもみんなやるんです。ということは、イノベーションが普及したということですね。これはまさに経験と勘だけで塚原がやったわざが、まさにそれがどういうふうにって解析できて、子供たちもみんな簡単にやれるようになった。だからこれは科学の普及だと。
 だけど、第2の塚原はだれがつくるんだという、要するにイノベーションをつくったやつを万人に普及するんだけれども、次の経験と勘のトップをつくるやつをどうするんだというのも大きな学術教育の分野なので、先ほどのように、モデルを磨いて万人に普及するという話は、新しいモデルを創出するという、この両輪がぜひあってほしいという感じはする。あえてオリンピックで例をとるとそうなると思います。

【生駒座長】

 それで、もう少し現場のほうから物流の友田委員、何かあればお願いいたします。

【友田委員】

 友田でございます。物流といいますか、私どもがやっているのは、現場のトラックを使った配達からお店の受発注の仕組みで、それをオペレーションしてまた現場にいくという、これが紙を使わなくてコンピューターで全部やれたらいいなというようなことを今、試行錯誤してやっております。
 今、経験と勘というお話がございましたけれども、トラックの中にコンピューターを積みたいと思ったんです。トラックの中にコンピューターを入れることによって、いろいろなことができると思って、そのできることの1つとして、トラックから運転手のドライビングの安全性をはかる指標をつくりたいと思ったんです。
 今までデジタルタコグラフといって、管理的なものはあったんです。何回違反をしたかとか、急ブレーキ、急発進をどのぐらいするのかとかいうデータはあったんですけれども、運転の滑らかさとか穏やかさをはかる指標はなかったんです。運転の穏やかさ、滑らかさをはかる指標というのができると、スピード違反をしたら、これは法律違反なんですけれども、安全運転とか、そんなに関連性はないんです。例えば、トラックは80キロですから、100キロのスピードで走っても車間距離をいっぱいとっておけば安全なんです。安全なんですよ。それをちゃんとはかる指標があれば、ドライバーに数字でちゃんと言える。それを私の経験と、こういうふうな運転をしなさい、それからこういうふうなエンジン回転で走ってくださいとか、ここでこのスピードはまずいと、こういうことを指導することによって、今までやっていた荒い運転が滑らかになったんです。
 それは、やっぱり現場に数字で言えるようになった。経験と勘だけじゃなくて、安全運転しろよと言うだけじゃなくて、どんな運転をいつやってくれと。指標はこうだというところを言えるようになってきて、そんなことがきちんと言えるような今の世界になったのかなと。
 ただ、なかなかこの普及に苦労しておりまして、まだうまくいっていない状況ではあるんです。ですから、私がここで言う、今、皆さん方、先生方のお話をお聞きして、ちょっと学術的過ぎて、私みたいな現場の者が役に立つのかななんて、ちょっと不安に思っております。話がとりとめなくて申しわけないんですが、こんな感じでございます。

【生駒座長】

 今、トラックにコンピューターを積み込んでそういうことをやっておられるんですか。

【友田委員】

 そうですね、はい。今までコンピューターを積むという思想がなかったものですから。自分でつくりまして、ちょうどつくれる人が近くにいたので、その人に頼んでつくってもらって、それに載せております。いろいろなことをやりたいんですけれども、なかなかお金が足りなくてやれておりません。

【生駒座長】

 可視化というのは確かに、サービス業のいろいろな面での可視化というのは、人間とのインタラクションでも可視化が一番重要でしょうね。今まさに可視化ですね。あと、燃費をミニマムにしろという指示を出すと、非常にスムースな運転になると聞きましたけれども。瞬時に、その時々の燃費がわかるメーターをつけておくと、今、プリウスなんかもそうですね。

【友田委員】

 そうです。現在はCANからとれるらしいんですけれども、そのCAN情報を各メーカーさんから公開していただけないんですね。ですから、ちょっといんちきじゃないですけれども、調べてCAN情報をいただきたいなということで、そういうところも少し研究をしたいんですけれども、これまたお金がないというところに来ております。
 ドライバーがきちんとやると、私どもの会社で、平成13年から現在まで29パーセントの燃費カットができているんです。ですから、これはやっぱり経験と勘をきちんとやって、そこに数字化して、ドライバーの教育まで、人的なところまで入っていくと、かなりの効果が出るんじゃないかと思っています。

【生駒座長】

 ありがとうございました。ご質問ございますか。はい、どうぞ。

【儀我委員】

 数学の儀我です。現場のお話ということで、学問とは遠いと友田委員がおっしゃっていらっしゃいますが、今のは数学的には、関数がどれぐらい滑らかかという問題で、それは非常にアカデミックに、どうやってそれをはかるかという非常に重要な問題であります。そういうところでちゃんとつながっていると思います。
 どんなものでもいいけれども、いろいろなものを数学の視点でもう一回根本的に考え直すということは、非常にイノベーションにつながると思いますので、それがうまくできるような仕組みをつくるというのが大事であると私は信じております。

【生駒座長】

 ありがとうございます。数学者からバックアップがありましたから、多分いろいろなことができると思います。

【友田委員】

 実は、私もどうしたらいいのかと全くわからなかったんですけれども、そのコンピューターをつくった人が、それはフーリエでやればいいよという話で……。

【儀我委員】

 そうです。

【友田委員】

 それで解決をして指標化できました。

【儀我委員】

 ただ、それが既成のですと多分そういうふうになると思います。既成の方法ですとおそらくフーリエ変換とか、フーリエ級数を考えるなどして滑らかさをはかる、これはごく自然だと思うんです。けれども、もしかすると、ほんとうに知りたいのはその情報じゃない可能性もあるんのすね。とりあえずの数学ではそうかもしれないけれども、もっとそれを別の視点で数学的に見ると、ほんとは欲しいものは違う可能性があるということもあり得るわけです。

【生駒座長】

 1つ、共同研究ができましたね。
 ほかに何かございますか。はい、お願いします。

【長井委員】

 大阪大学の長井です。まだ私は、サービス科学・工学というようなことに関して、概念的に物事を考えたことはないんですけれども、金融工学、リファイナンスという分野にちょっとかかわっているという観点から、こういうサービス科学・工学に関する研究開発の構築とか体制の築き方ということに関して、ちょっとお話ししたいと思うんです。
 研究開発をするに当たっても、その担う人材というものがもちろん基盤にあるわけですから、人材育成の問題と当然つながってくるわけです。人材育成というときに、研究開発する人材ということと同時に、そのすそ野となるような人材を育成するメカニズムということが問題になろうかと思います。新しいサービス科学・工学に関する研究開発ということにつなげるような、その人材育成をするメカニズムをどうつくるかということなんですが、これはかなり、相当難しい問題ではないかと思います。
 リファイナンス、金融工学に関して、ちょっと例をとっていきますと、今ウォールストリートで最も有名な日本人は、伊藤清と言われております。伊藤清先生というのは日本人数学者で、戦前の物がない時代に確率微分方程式の理論をつくり上げて、もちろん確率微分方程式の理論というのは何も金融工学に応用されることを意図してつくったわけではないわけですけれども、それが何十年かたって、革命的に金融の現場で応用されるようになって、先ほど言われました経験と勘で行われていた金融の業務に応用されるようになって、もちろんそこにはコンピューター技術と結びついたという基本的に重要な観点がありますけれども、それと結びついて発展したというわけですけれども、それほど革命的に大きな発展をする基盤になった数学をつくった伊藤清先生のような方を育成することが、どういうふうなメカニズムでできるかということを考えますと、これは非常に難しい問題になるかと思います。
 その後の確率微分方程式の歴史を申し上げますと、理論の発端はまず伊藤清先生がつくり上げたわけですけれども、その研究が発展したのはアメリカというよりも、むしろフランスとかロシアで研究が発展したわけです。しかしながら、経済学、あるいは経営と結びつけて、金融と結びつけて確率微分方程式を使うようになったのは、アメリカのマートンとかブラック・ショールズといった方々の学際的な研究によって、確率微分方程式理論が革命的に利用されるようになったというような背景があるわけです。
 一方、現在は、世界のクオンツの3分の1がフランス人であると言われている状況です。なぜそんなに多くのフランス人の人材が、金融の現場で活躍しているかということの背景には、フランスで確率解析の研究が非常に進んだということがやはり背景としてあると思います。その当時、研究している時点では、直接それが応用されるということは意図されていなかったにもかかわらず、結果的にクオンツという、金融実務の現場に非常に有用な人材として育っていくということがあるということを考えますと、研究開発する人材の育成と、どういうメカニズムで結びつけるかということを考えるのは、非常にこれは金融にかかわらず、サービス科学・工学全体にわたって非常に大きな課題ではないかと感じております。

【生駒座長】

 ありがとうございます。私はサービス・サイエンスのベースは数学だということを前から言っておりまして、それでわざわざ数学者を2人、こういうちょっと違った場ですけれどもお願いをしております。日本は数学は昔強かったんですが、今は非常に弱くなったと聞いておりまして、まさに伊藤先生のような全然違った分野でベースをしっかりやっていて、何年か後に応用されて世の中を変えるという数学というのは、非常に重要だろうと思っております。
 それでは、医療サービスのほうからひとつお願いします。

【太田委員】

 私は岡山から来まして、岡山の県北の山の奥の新見という町で開業というか、病院を経営しております。なぜ私がここに呼ばれたか、ちょっと不思議なようなんですけれども、1つは新見市というのは皆さんご存じだと思いますけれども、市町村が電子投票を一番にやりまして、ITに力を入れているということで、今年の4月から光ファイバーの末端が各家庭1万2,000世帯全部に使える状況に整備されつつあるという、これがまず1つあります。
 それに向けて、私が新見医師会で遠隔医療ということで、3年にわたっていろいろ実験をしてまいりました。それでこのたび、総務省と厚労省の遠隔医療の懇談会に委員として出させていただきまして、それで文科省の方が選んでいただいて、この席に出てきたわけでございます。とにかく、そういう状況でございます。
 医療というのは皆さんもコンピューターや何かいくらでも使って、皆さんができるかといったら、そういう状態じゃないわけでございまして、私の市のほうで、医者で病院関係で電子カルテというのはまだ一例も、使っている方がおられないという現状、これを知っておいてほしいんです。それでいきなりそういうふうなコンピューターを使って通信をやってと言ってもとっても受け入れてもらえない。ですから、私が今、遠隔医療ということでやるのは、テレビ電話からまず始めようということで、これは病院と病院、それから病院と在宅の患者さんで取り組んでおりますけれども、そういうことをここ3年やってまいりました。それでいろいろ機械なんかもつくったりしてやってきたという実績がございまして、選んでいただいたということでございます。ただ、1つはそういうふうに、まだITといっても、すぐには受け入れていただけない現状があるということを、医療現場でも地方ではそういう状態ということを認識していただきたいと思います。
 それから、今いろいろお話を聞いておりまして、ほんとうに初めて聞くお話ばかりで、どうもすぐに私も理解ができないわけなんですけれども、ただそういうこの場に私が出てきたもう一つの理由というのは、そういうふうなフィールド、ITの実験をするフィールドというのが、おそらく日本で一番の条件がある地域だと思います。うちは中山間地で、これだけの通信網ができたというのはないと思いますので、これを利用するのに何かいい方法、それをお聞きできるんじゃないかということもちょっと楽しみにして、この会に委員として出させていただいことをお話しておきます。よろしくお願いします。

【生駒座長】

 ありがとうございました。医療サービスの電子カルテ化、IT化というのは岐阜大学の附属病院が何かすばらしいものがあるそうですね。黒木先生が学長のときにつくられたシステムが、あれは富士通さんも入っているんじゃない? IBMかな。

【安部委員】

 いや、富士通が4割くらいシェアが。

【太田委員】

 それから、大病院では電子カルテはもう普通に使えるようになりましたけれども、地方の病院、中小病院では、まだだめだという現状でございます。

【生駒座長】

 そうですね。
 これで一通りご発言いただきましたでしょうか。何かまだご発言いただける方は……、さっき手を挙げたんですね。

【中島委員】

 ちょっと物流の話に戻りたいので、今、ちょっと病院の話が出たのでそれも一緒にお話しさせていただきたいんですが、情報って最初のほうにも出ていますけれども、ここではわりと基本技術みたいに言われている部分があって、ちなみに、IT技術というとちょっとTが重なってしまうので、もともとITはInformation Technologyと言うものですから、ITだけにしておいていただきたいんですけれども。
 やっぱりそこをもうちょっと研究開発する、要するに科学の対象として見ていただきたいなというのがあります。ここで単なる道具だと思われると、ちょっと遺憾というのがあるんです。
 ただ、さっきの友田委員の話とかも聞いていると、すごくおもしろいのは、我々がこう使うといいだろうと思っているのと違うところをいろいろおっしゃる。それが非常に大事だと思うんです。きのうもJR北海道の副社長の話を聞いていたんですけれども、鉄道は今、GPSが使えるので信号機をなくそうとか、そういう話がいっぱい進んでいて、多分そういう意味で、物流に関していうと、いろいろなシステムが根本的に変わる可能性があるんじゃないかと思うんです。
 今、トラックの話も、多分全部GPSを積んで、位置と速度をとれれば、安全とか効率という話もあるけれども、実はもっと効率的に全体をマネージできるかもしれないという話もあります。
 それから、そういうことをやるときに、やっぱり技術が直接、例えばドライバーとかに見えるのはまずいんだと思うんです。要するに、今、病院の話もありましたけれども、地方のお医者さんが使ってくれるようなものを、実は我々はつくらなきゃいけないんですね。できることだけ見せて、ただこれを使えと言うから当然使えませんという話があるので、とてもコンピューターなんか入っていないように見せかけるということをやっていかなきゃいけないし、それをどうやったら使ってもらえるのかというのを知るためには、やっぱり現場の人たちと、それから研究者が一緒にやらなきゃいけないんだと思います。
 ゴルフにどう使うかというのはまだ全然思いつかないんですけれども、それもそのうち出てくればおもしろいかと思っています。

【生駒座長】

 ありがとうございました。ほかに何かご意見ございますか。はい、どうぞ。

【妹尾委員】

 今度は現場の話をさせていただきます。秋葉原の再開発のプロデュースをしている現場からいうと、今の中島委員のお話は大変おもしろくて、すごくわかりやすい例を言うと、我々マーケティングをやっている人間は、常に製品が出てきたときのコンセプトじゃなくて、ユーザーがそこに見出すコンセプトをいかにつかめるかというのが重要。
 少し前の例になりますけれども、わかりやすいのでいえば、ポケベルってもともとはページャだったんです。だけど、ページャで出てきて、だけどあそこに番号が表示されるのを渋谷、あるいはアキバに来てる連中が、あれは言葉に置きかえられるよねというふうに全く違うコンセプトで見たときに、重要なのはそのコンセプトで見たというところをぴゅっとつかめるかどうかで、全くサービスが変わるということなんです。
 これを我々は何といっているかというと、ユーザー・ドリブン・イノベーションと呼んでいるんです。だから技術のリードをする側の技術基点型のイノベーションも、もちろんありますけれども、ユーザー基点型でその技術とどうかかわるかというイノベーションがあるわけで、その意味ではサービス開発というのは提供者がやるだけじゃなくて、それの提供される側が、いかにそいつをイノベーティブに使うかとか、あるいは解釈するかという、ここのところも重要なんです。
 確かにアプローチ1、アプローチ2はあるんだけれども、そこのところももう少し加味しながらサービスをどうやるか。単に、ユーザーをデータを出すものとするんではなくて、技術解釈をする人間だとか、あるいはそういうような、サービス開発をするのは実はユーザー側なんだという視点も、ぜひこの中に入れていただくとおもしろいのかなと。これは現場の感覚です。だから、アキバはなぜイノベーションの拠点にするか、私が再開発やっているかというと、あそこはユーザー・ドリブン・イノベーションの宝庫になり得ると思っているのでやっているので、そんなようなことです。

【生駒座長】

 プロシューマーですよね。

【妹尾委員】

 そうですね。

【生駒座長】

 まさにプロシューマー。プロダクター、プロダクトとコンシューマーとが一緒になったところでのイノベーションということですね。

【妹尾委員】

 はい。

【生駒座長】

 はい、どうぞ。

【安部委員】

 今の話にもちょっと関連するんですけれども、確かにユーザーのことを一生懸命やっていないというのが、日本のサービスの1つの欠点ではありますけれども、もう少しこの研究会では、ユーザーがすべての自分のニーズを知っているわけではない。ユーザーが知らないところのニーズを、どうやっていろいろなデータとかも含めながら見つけるか、そういったところまで進めていただければ非常にありがたいと思うんです。よろしくお願いします。

【生駒座長】

 ほかに何か、ご意見、どうぞ。丹羽委員はプレゼンはしていただいたんですが、ご自分のご意見はいただいていないので、どうぞ。

【丹羽委員】

 今までの議論をお聞きしていますと、結局この検討会のアウトプットとしてどういうものを出すのかというあたりを、もう少しはっきりしておいたほうがいいかなという感じがいたしました。
 例えば、今、安部委員から出たような、そういう議論というのは非常に大事ですし、そういうことまでいくのか、あるいは冒頭に出たようなサービスとは何かとか、サービス・サイエンスとか何かとか、そういう定義に踏み込むのか踏み込まないのか、その辺は議論もありましたけれども、アウトプットとして、結局、これは6回ぐらいしかないですよね。その中でどんなふうに、最初、冒頭にちょっと柿田計画官からもありましたけれども、どんなところまで議論をして、どう持っていくのか。そのあたり、もう少しイメージをはっきてしておいたほうがいいんじゃないでしょうか。

【生駒座長】

 さすが弊社の上席フェローで、いつもプロポーザルをまとめるのに苦労しているものですから、それをおもんぱかってのご発言ですけれども、事務局いかがですか。

【柿田計画官】

 まず、1つの大きな事柄としては、まずサービスという分野、最初に話がありましたけれども、サービス産業ではなくて、この検討会の名前も「サービス」ということにしておりますが、そのサービスの分野で科学技術政策が果たすべき役割としてはどんなものがあるか、これが非常に大きなテーマになります。
 そこから始まって、具体的な施策に落とし込むときに、サービスといってもいろいろ広いものですから、どういう分野・課題を対象とするのかというようなこと。それから、例えば競争的研究資金ということを我々、当面の施策として念頭に置いておるわけでございますけれども、そのファンディングをするに当たりましても、研究開発の目標というものを設定しなければなりませんが、どういう目標を設定すべきか、あるいは設定のための手順ということも重要になると思います。
 それから、このファンディングは当然大学だけではなくて、産業界とも組んだ形での研究開発を実施していくためのものになると思います。先ほどの議論にもちょっとありましたけれども、産学等が連携するに当たって、それぞれの主体がどういう役割を担うべきなのか、あるいは期待すべきなのかというようなこととか、それからさらには、教育という話も出てまいりましたけれども、なかなかこれはすぐに、直ちに来年、再来年というわけにはいかないと思いますので、中長期的に推進すべき施策として、1つとしては、人材育成としてどういうやり方、メカニズムをつくるかとか、そういったところまで、中長期的なテーマとして、こういうものがあるというようなところまで浮き彫りできればいいかと思っております。

【生駒座長】

 方法論としては、こうやって皆さんがご意見をいただいたやつを上手にまとめていただけるんですよね。

【柿田計画官】

 今日、非常に大事なご意見等いただきましたので、一度、論点を整理させていただきます。その上で、1つ1つ項目を絞ってご議論をしていただく。それとあわせて、冒頭言いましたけれども、各分野からのプレゼンテーションも伺い、論点を明らかにしながら議論していければ、何とかまとまるのではないかと思っております。

【生駒座長】

 そうですね。今日は非常に、情報、インフォーマティブなご発言がたくさんあったと思いますので。何かしゃべりたいですか。

【北川委員】

 ちょっと自分に引き寄せての発言ですけれども、従来のサイエンス、特に私どもの統計数理というのは、物事をマクロにとらえるということをやってきたわけですけれども、サービスの本質というのは、むしろマクロというより個々、個性をとらえる、個をとらえるということだと思っています。それは、創薬であったり、医療であったり、マーケティングも、それから教育もすべて、今後はマス何とかじゃなくて、個に焦点を合わせたサービスをやっていかないといけない。
 そういうふうに考えると、そのための要素技術、いかに従来の普遍的な知識だけじゃなくて、個々の人に関するニーズだとか、そういう情報を取り込んで、従来の知識と合わせながら対応していくかという技術というふうに私は個人的には思っていますので、その辺をターゲットにしていくと、1つ重要な問題が浮き上がるんではないかと思っております。

【生駒座長】

 ありがとうございました。
 それでは、ちょうど時間になりましたので、一応、今回の分のご議論はこの辺で締めさせていただきます。それで、今日のご意見は事務局のほうでうまくまとめていただいて、論点整理ということで、次回の議論へつなげていっていただけると思います。
 それでは、今後の予定等について、事務局からご説明をお願いいたします。

【渡邉計画官補佐】

 それでは、次回以降の日程についてご説明させていただきます。次回の第2回検討会は、委員の皆様には既にご案内のとおり、9月1日月曜日14時から16時を予定しております。会場、議題等、詳細につきましては、後日ご連絡させていただきます。
 また、本日の資料につきましては、お帰りの際に封筒にお名前をご記入の上、机上に置いておいていただければ、事務局から後ほど郵送させていただきます。
 以上でございます。

【生駒座長】

 もちろん、お持ち帰りいただいても結構でございます。
 それでは、第1回検討会をこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

(科学技術・学術政策局計画官付)