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第1部 第2章 第2節 3 第3次産業、サイエンス型産業の国際競争力を巡る課題

(1)第3次産業の国際競争力

 我が国をはじめ主要先進国における産業構造の変化の中で、年々、雇用面を含め、経済に占める第3次産業の割合が増加し続けている。実際、第3次産業は我が国のGDPの約7割を占め、雇用の約3分の2を占めている(第1−2−31図)。また、製造業においても製品のサポートなど事業におけるサービス部分が大きくなっていることが指摘されている。
 このため、我が国経済が引き続き活力を維持していくためには、サービスを担う第3次産業が製造業とともに経済を支える「双発のエンジン」としていく必要がある。
 しかしながら、我が国の第3次産業の生産性は米国などに比べて総じて低位にとどまっており、製造業との比較においても、生産性の伸びを他の先進諸国と比べると低い状況にある(第1−2−32表)
 このようなサービスにおける生産性の向上や新たなサービス産業の育成は、我が国の競争力強化のために重要な課題と考えられるところであるが、それを日米で比較した場合、我が国におけるサービス産業への科学技術投資は、米国と比べ圧倒的に低い状況にある(第1−2−33図)
 米国においては、前述の「パルミサーノ・レポート」において、経済活動においてサービスが大きな比率を有するにもかかわらず、サービス・セクターにおける体系的な研究開発が不足しているとの問題意識の下、「サービス・サイエンス」を「コンピュータ・サイエンス、オペレーションズ・リサーチ、数学、意思決定論、社会科学などの学際的学問」と定義し、その振興を提案しており、産業界及び行政府に大きな影響を与えた。
 この流れを受け、米国競争力法においても、「サービス・サイエンス」を「消費者とシェアホールダー(株主)のための価値を創造する中でイノベーションを促進するため、コンピュータ・サイエンス、オペレーションズ・リサーチ、産業工学、ビジネス戦略、マネジメント科学、社会・法科学に対して、科学、工学、マネジメント領域を適用する(それらの領域が孤立していたのでは、得られないものである)」と定義した上で、政府が全米アカデミーズにおける大学及び産業界の有識者からの意見聴取に基づき、1年以内に報告書を策定すべきこと等を規定している。
 また、米国においては、現在、NSFにおいても「サービス・サイエンス」に関する競争的資金の配分を行っているほか、大学において「サービス・サイエンス」に係る取組が行われているところである(第1−2−34表、第1−2−35図)

第1−2−31図 我が国の産業構造の特徴

日本の実質GDPの推移(1993〜2003)

日本の就業者数変化(1993〜2003)

  • 資料:経済産業省

第1−2−32表 主要国における製造業とサービス産業の労働生産性上昇率の比較

労働生産性上昇率(1995〜2003)

  製造業 サービス産業
米国 3.3パーセント 2.3パーセント
英国 2.0パーセント 1.3パーセント
ドイツ 1.7パーセント 0.9パーセント
日本 4.1パーセント 0.8パーセント

  • 資料:OECD「Compendium of Productivity Indicator 2005」より文部科学省作成

第1−2−33図 日米のサービス・セクターにおける研究開発費の推移

  • 資料:OECD「Research and Development Statistics」

第1−2−34表 NSFの「サービス・サイエンス」に係るファンディングの概要

分野 研究のタイトル 研究内容 研究機関
医療 Patient Scheduling for Primary Care Clinics: Theory and Implementation 病院を訪れる患者の中には、予約時間に来なかったりキャンセルしたり、あるいは予約なしで現れたりする人がいる。そのような状況下での診療予約スケジューリングの改善を目指す研究。 パデュー大学
Optimization Models and Algorithms for Emergency Response Planning 大規模な感染症が発生した際の医薬品の効率的配分に関する研究。非線形整数計画法などを使って新しいモデル化手法とアルゴリズム開発を目指す。 南カリフォルニア大学
Optimal Management of Expedited Placement Livers 肝臓移植手術における適合患者発見の決定プロセス支援に関する研究。 ピッツバーグ大学
Collaborative Research: Optimization of Intensity Modulated Radiation Therapy with Time Varying Delivery Plans and Fraction Constraints ガン治療には半数以上のケースで放射線療法が使われる。その際、複数の放射線ビームをどのように組み合わせるかの計画法に関する研究。 アーカンソー大学
ビジネス一般 Collaborative Research: Model Accuracy and Learning in Revenue Management and Dynamic Pricing 売買の決定プロセスにおける不正確なモデルの影響の解析に関する研究。 ミネソタ大学
Scalable Analysis for Customer Contact Centers カスタマー・コンタクト・センター(コールセンター)の振る舞い(顧客にサービスする時間、コンタクトしてきた顧客が途中で待ちきれずにコンタクトをやめてしまう確率など)をモデル化し解析する手法の研究。 ジョージア工科大学
交通 Pareto-Improving Road Pricing Schemes for Sustainable Mobility 渋滞解消と排気ガス削減の両面から最適化を図る有料道路の料金設定に関する研究。 フロリダ大学
物流 Designing Distribution Centers for the Service Economy 倉庫の構造と配送センターの設計および運用の最適化に関する研究。 オバーン大学
大規模災害対策 Contending with Materiel Convergence: Optimal Control, Coordination, and Delivery of Critical Supplies to the Site of Extreme Events 大規模災害発生時の物資の配分に関する研究。社会学、制御理論、統計的最適化手法などを使用する。 レンセラー工科大学
Collaborative Research: Patient Triage in the Aftermath of a Mass Casualty Event - A Dynamic Programming Approach 大規模災害時には救急車、X線撮影装置、手術施設などが一度に不足する事態が起こると予想され、これら医療用施設や装置の効率的活用が極めて重要になる。被災者に対する応急措置の対応を統計的ダイナミックプログラミング手法によって効率化する研究。 ノースカロライナ大学
通信サービス Positive Externalities and Complementarities in Networked Services ネットワークサービスにおける外部性(加入者が増えるほどそのネットワーク利用者の便益が増大する性質)の評価モデルの創出と解析に関する研究。 スタンフォード大学

  • 資料:科学技術振興機構 研究開発戦略センター

第1−2−35図 「サービス・サイエンス」のカリキュラムの例

  • 資料:科学技術政策研究所 「科学技術動向月報」2005年12月

(2)サイエンス型産業の国際競争力

 「サイエンス型産業」とは、「サイエンス(科学)に依拠した産業群、あるいは基礎的な科学の重要性がとりわけ高い産業群」のことを指す(注)
 近年、特許に学術論文が引用される傾向が高まっていることに見られるように、技術と科学との関係が近くなっている領域が見られる。具体的には、エレクトロニクス産業で多くの要素技術が物理限界に近づき、その課題の解決に基礎的な科学にまでさかのぼったアプローチが重要な役割を果たしている等の例がある。
 特に、このような特性を強く持っている産業が「サイエンス型産業」と呼ばれており、医薬品産業、IT産業、半導体産業などがその代表例として挙げられることが多い。
 これらの産業において、我が国は必ずしも強い国際競争力を保持しているとは言えず、1980年代以降それらの産業の振興に強力に取り組んだ米国に大きく後れを取っている現状がある。
 例えば、医薬品やソフトウェアは輸入超過状態にあり、特に汎用(はんよう)的なパッケージソフトに関して米国の強さが顕著である(第1−2−36図、第1−2−37図)。さらに、半導体については、かつては世界シェアの多くを我が国が保持していたが、いわゆるモジュール化等により、製造プロセスの比較優位が消滅したこと等により、1990年代後半から急速に凋落(ちょうらく)し、韓国、米国に大きく差をつけられている状況にある(第1−2−38図)

  • (注)後藤晃、小田切宏之 「サイエンス型産業」2003年 NTT出版

第1−2−36図 我が国の医薬品の輸出入

  • 資料:厚生労働省「薬事工業生産動態統計」

第1−2−37図 我が国のソフトウェアの輸出入

  • 資料:社団法人電子情報技術産業協会、社団法人我が国パーソナルコンピュータソフトウェア協会、社団法人情報サービス産業協会「コンピュータソフトウェア分野における海外取引及び外国人就労等に関する実態調査」

第1−2−38図 世界の半導体産業の動向

DRAM出荷額(ドル)国別シェアの推移

  • 資料:科学技術政策研究所「イノベーションの測定に向けた基礎的研究」

 従来、我が国の製造業の国際的な強さは、生産現場における生産性の向上に大きく依拠してきたとも指摘されているところであるが、「サイエンス型産業」においては、必ずしもこのようなアプローチのみでは競争力を維持することができず、基礎的な科学にさかのぼって課題を解決するアプローチの必要性が高くなると思われる。
 このような特性から、諸外国においては、特に大学や研究開発ベンチャーが「サイエンス型産業」における基礎研究を担い、産学の連携により、多くの製品開発が行われたとの指摘もなされている。

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