ここからサイトの主なメニューです

資料2

サービス・サイエンスを巡る動向等について

科学技術・学術政策局
平成20年8月

1.サービス・サイエンスとは?

 社会科学やビジネスへの自然科学、工学の応用ないし、融合であるとされることが多い。

 例えば、

  • 金融プラス数学 → 金融工学
  • 流通プラスIT技術、数学 → SCM(サプライチェーンマネジメント)、渋滞の科学
  • 小売プラスIT技術 → POSシステム、
  • 交通プラスICカード技術 → SUICA等
  • 設計プラスIT技術 → CAD/CAM

 本年6月に議員立法として成立した研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律(研究開発力強化法)第47条において、
「社会科学又は経営管理方法への自然科学の応用に関する研究開発」
と規定されたところである。

2.サービス・サイエンス振興の必要性等

(1)日本におけるサービスの位置づけ

 我が国をはじめ主要先進国における産業構造の変化の中で、年々、雇用面を含め、経済に占める第3次産業の割合が増加し続けている。実際、第3次産業は我が国のGDPの約7割を占め、雇用の約3分の2を占めている。また、製造業においてもIT技術を利用した設計システム、製品のサポートなど事業におけるサービス部分が大きくなっていることが指摘されている。

(2)現状の課題

 我が国経済が引き続き活力を維持していくためには、サービスを担う第3次産業を製造業とともに経済を支える「双発のエンジン」としていく必要があるが、現在、世界各国、特にアメリカにおいて、IT技術、数学を活用した新たなサービスが爆発的に伸張しているところであるが、我が国においてはサービス産業の国際的な展開が乏しいのではないか、また、アメリカ等に比べサービスのイノベーションが乏しいのではないかなどの疑問がある。
  また、日米で比較した場合、我が国におけるサービス産業への科学技術投資は、米国と比べ圧倒的に低い状況にある。
 さらに、今後、少子高齢化、慢性的な財政赤字が続く我が国がこれまで通りの豊かな生活を維持していく観点から、福祉・医療などの面におけるIT技術等の導入等により生活の質の維持・向上を図っていくことも不可欠である。

図 我が国の産業構造

図 主要国における製造業とサービス産業の労働生産性上昇率の比較

図 日米のサービス・セクターにおける研究開発費の推移

(3)サービス・サイエンス振興の必要性

 サービス・サイエンスは、サービスが経済に占める割合の大きさ及びその成長率の大きさなどから、90年代以降、興隆を見たIT技術、バイオ技術などいわゆる「サイエンス型産業」に係る技術に匹敵、あるいははるかに上回る大きなインパクトを世界の経済に与える可能性がある。
 3.以下で説明するとおり、世界の主要国がこぞって、サービス・サイエンスの振興を開始しているところであり、これに乗遅れることがあれば、我が国が世界経済の主要なプレーヤーから脱落するおそれも否定できない。
 このような趣旨から、本年成立した研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律(研究開発力強化法)第47条において、
  「・・・社会科学又は経営管理方法への自然科学の応用に関する研究開発の推進の在り方について、調査研究を行い、その結果を研究開発システム及び国の資金により行われる研究開発等の推進の在り方に反映させるものとする。」と規定されたところであり、このような国会の意志を踏まえ、早急に取組を開始する必要がある。

3.世界各国におけるサービス・サイエンス振興の動き

 近年、米国を始めとして、世界の主要国がサービス・サイエンス振興の取組を開始。

(1)米国

1米国競争力評議会の「パルミサーノ・レポート」(2004年)のインパクト

 パルミサーノIBM会長(当時)を議長とする「パルミサーノ・レポート」がサービス・サイエンス振興の重要性を取り上げ、産業界及び行政に大きなインパクトを与えた。

(内容)
  • 経済活動においてサービスが大きな比率を有するにもかかわらず、サービス・セクターにおける体系的な研究開発が不足しているとの問題意識の下、
  • 「サービス・サイエンス」を「コンピュータ・サイエンス、オペレーションズ・リサーチ、数学、意思決定論、社会科学などの学際的学問」と定義し、その振興を訴える。

2米国競争力法

 この流れを受け、昨年8月に成立した米国競争力法においても、サービス・サイエンス振興を規定した。

(内容)
  • 「サービス・サイエンス」を「消費者とシェアホールダー(株主)のための価値を創造する中でイノベーションを促進するため、コンピュータ・サイエンス、オペレーションズ・リサーチ、産業工学、ビジネス戦略、マネジメント科学、社会・法科学に対して、科学、工学、マネジメント領域を適用する(それらの領域が孤立していたのでは、得られないものである)」と定義した上で、
  • 政府が全米アカデミーズにおける大学及び産業界の有識者からの意見聴取に基づき、1年以内に報告書を策定すべきこと等を規定している。

(2)その他の国々における取組み

 米国に続き、以下の諸国が、サービス・サイエンス振興への取組みを開始。

1ドイツ

 2008年より、サービス・サイエンスの振興を開始し、2011年までの4年間で約100億円を投資予定。

2フィンランド

 2008年3月に公表された研究開発・イノベーション戦略における8つの重点テーマの一つとして、「サービスビジネスとイノベーション」が位置づけられた。

3英国

 2008年3月に公表された「Innovation Nation」に基づき、「公的なサービス」が重要とされた。

4韓国

 第2次科学技術基本計画において、サービス・サイエンスの振興を政策目標とすることを規定。

(3)具体的な支援のあり方

 諸外国の具体的なサービス・サイエンス支援のあり方については、別紙参照。

4.日本における主なサービス・イノベーションへの取組みの現状

(1)文部科学省の取り組み

  • 1産学連携による高度人材育成の一環として、「サービス・イノベーション人材育成推進事業」を平成19年度より実施。6大学にてカリキュラム開発等を開始。

(2)経済産業省の取り組み

  • 1「サービス産業におけるイノベーションと生産性向上に向けて」(19年4月)を取りまとめ。
    • (内容のうち関連する事項)
      • - サービス産業における生産性の現状分析
      • - 科学的、工学的アプローチの適用(サービス工学研究ロードマップの策定、サービス研究拠点の整備、顧客満足度向上につながる認知工学等の研究開発推進等)
      • - サービス産業人材の育成(教育体制の充実、スキル標準の作成、能力評価制度の構築、プログラムや教材の充実等)等
  • 2サービス産業生産性協議会(代表幹事:牛尾治朗)を平成19年5月に設立。協議会は、産業界、教育機関、行政が連携してサービスイノベーション、サービス産業の生産性向上に取り組むための共通プラットフォームとしての機能を担い、「経験と勘」に頼るサービス産業に「科学的・工学的」な手法を導入することにより、サービス産業の生産性向上を目指す。
  • 3サービス産業生産性協議会と産業技術総合研究所が平成19年12月に相互協力協定締結。経産省が推進するサービス産業生産性向上施策への貢献。提携の内容は、1サービス産業の支援、2サービス産業の人材育成支援、3サービス産業における産学官連携の推進、4サービス産業に関する情報交換と情報発信等。
  • 4サービス研究のロードマップ策定事業
  • 5産総研におけるサービス研究