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著作権分科会 法制問題小委員会(第2回)議事録

1 日時  平成17年3月30日(水曜日) 14時3分〜17時1分

2 場所  経済産業省別館8階 825会議室

3 出席者
  (委員)
    石井,大渕,加藤,小泉,里中,潮見,末吉,茶園,土肥,苗村,中村,中山,前田,村上,森田,山地,山本の各委員、野村分科会長
  (文化庁)
    加茂川次長、森口長官官房審議官、吉川著作権課長、池原国際課長
ほか関係者
  (ヒアリング出席者)
   
【資料1関連】 新井(特許庁総務部技術調査課長)、岡田(特許庁特許審査第一部調整課課長補佐)
【資料2関連】 渡邊(厚生労働省医薬食品局安全対策課課長補佐)
【資料3関連】 常世田(著作権分科会委員)、糸賀(慶應義塾大学教授)
【資料4関連】 江波戸(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課社会参加推進室長)
の各説明者

4 議事次第
 開会
 議事
(1) 権利制限の見直し[1]
1 特許審査手続に係る権利制限について
2 薬事行政に係る権利制限について
3 図書館関係の権利制限について
4 障害者福祉関係の権利制限について
(2) 各ワーキングチームからの検討状況報告
(3) その他
 閉会

5 配付資料
 
資料1   特許審査手続に係る権利制限について(特許庁作成資料)(PDF:224KB)
資料2   薬事行政に係る権利制限について(厚生労働省作成資料)
資料3   図書館関係の権利制限について(常世田委員作成資料)
資料4   障害者福祉関係の権利制限について(厚生労働省作成資料)
資料5   各ワーキングチームの検討状況について

参考資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第1回)議事録
(※第1回議事録へリンク)
参考資料2   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定

6 議事内容
  ○中山主査 時間でございますので、ただ今から文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会の第2回を開催いたします。
 実は前回2月28日の小委員会ですが、ちょうど28日に緊急に入院をしてしまいまして、肝心な第1回目会合を休み、土肥委員をはじめ御迷惑をおかけいたしました。何とか第2回から皆勤に努めたいと思います。申し訳ございませんでした。
 本日は御多忙中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。議事に入ります前にいつもと同様、本日の会議の公開につきましては予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開にするには及ばないと思われますので、すでに傍聴者の方には御入場をいただいているところでございますが、特に御異議はございませんでしょうか。 (「異議なし」の声あり)

○中山主査 ありがとうございます。それでは、本日の議事は公開ということで傍聴者の方にはそのまま傍聴をしていただくことにいたします。
 まず事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○山口著作権調査官 本日の配付資料については議事次第を記載した1枚ものがございまして、その下半分が資料一覧となっております。
 内訳は資料1から4までが本日の各説明者による作成資料です。資料1が特許審査手続、2が薬事行政、3が図書館、4が障害者福祉に係る、いずれも著作権の権利制限関係の資料となっております。また、資料5として各ワーキングチームの検討状況に係る資料を配付しております。
 このほか参考資料として、1は既にホームページに掲載しておりますが、前回の本小委員会の議事録、また2として本小委員会の審議予定となっております。
 以上、お手元を御確認いただければ幸いです。

○中山主査 よろしゅうございますか。
 それでは、早速議事に入ります。
 今期の法制問題小委員会本体におきましては、前期に取りまとめをいたしました「著作権法に関する今後の検討課題」のうち、まずは権利制限の見直しと私的録音録画補償金制度の見直しを取り扱っていくことを前回の会議で御了承いただいたところであります。本日は権利制限の見直しについての検討を開始すべく、まずは昨年著作権法改正要望に関する意見を提出されました関係省庁の方や図書館の分野についてお詳しい有識者の方々にお越しいただいております。説明資料につきましてはあらかじめ各委員にお送りをしておりますので、本日は議題(1)の1から4のそれぞれについて5分程度で簡潔に御説明を頂戴した上で、各15分程度の質疑応答を行いたいと思います。
 そして、一度休憩を挟んだ後に、各説明者にも引き続き参加をしていただきつつ、各項目ごとに自由討議を行いたいと考えておりますので、各委員におかれましてはここで是非積極的に御意見を賜ればと思います。
 なお、教育分野につきましても同様にお話を伺う予定でございましたけれども、事情によりまして次回の第3回の会議で私的録音録画補償金制度の検討に入る前に時間を頂戴したいと考えておりますので、御了承ください。
 それでは、まず特許審査手続に係る権利制限について御説明を頂戴したいと思います。特許庁より総務部技術調査課の新井課長と特許審査第一部調整課の岡田課長補佐にお越しいただきましたので御説明をお願いいたします。

○新井技術調査課長 ただいま御紹介に預かりました特許庁の新井でございます。お手元の資料1となっております「特許審査手続に係る権利制限について」という資料につきまして簡単に御紹介させていただきます。
 まず、特許審査の概要を簡単に御紹介させていただいた上で著作権法との関係、どういうところが課題なのかというところを御説明させていただきます。
 まず、1ページ目でございます。特許出願の審査の概要と書いてございますが、特許審査というのは発明を審査するわけですが、その際にはその発明より以前に同じような発明があったかどうか、いろいろな文献を調査いたします。その調査に当たっては、特許文献以外に、我々は非特許文献と呼んでいますが、論文、書籍、パンフレット、その辺の文献を引用文献として拒絶理由通知書という形で示します。要はこういう過去の文献に基づきましてこの発明は特許にならないのでないかという拒絶理由を通知いたします。
 次は2ページ目でございますが、参考までに審査・審判フローということで御紹介させていただいております。特に左の審査のフローのところでは、審査を開始するのですが、その後、先ほど申し上げましたように特許にならないのではないかという拒絶の理由を通知いたしますが、そのときにいろいろな文献を引用させていただきます。その中の1つにいわゆる非特許文献というのが盛り込まれます。
 その通知を受け取った出願人はそれをクリアするような形で補正しなければならないのですが、実はその期間が通常60日以内という、ほぼ2か月ぐらいの短い期間のうちにしなければいけないということがございます。
 次のページでございます。これはもう少しイメージ的に書いたものでございます。3ページ目でございますが、これは審査官と出願人とのやりとりの模式図でございますが、先ほど申しましたように審査官のほうは拒絶の理由の通知というものを出すのですが、その例として真ん中に拒絶理由通知書と書いてありますが、通常、このような引用文献の提示の仕方で出願人に送付いたします。この中に非特許文献として「雑誌まるまる 第まる号 第まる頁第まる段落参照」という形で出願人の手元に届けます。
 出願人はこれを見て特許にしてくださいという補正を出してくるのですが、そのときに特許文献なら容易に入手できます。特許電子図書館という無料のサービスがあるので入手できるのですが、非特許文献につきましてはなかなか入手がしにくいというのが実状です。
 それから、破線の下に書いてございますが、特許庁にいろいろ出願する書類、明細書と呼んでいるのですが、その中に出願人の方自らがこういう過去の関連する文献がありますということで提出するケースがあり、中には非特許文献を明細書の中に書いてくるケースがあります。審査官がそれを即日入手できればいいのですが、なかなか入手できない場合には特許法194条というのがありまして、書類提出の指令を出しまして、この非特許文献の第まるページのどの段落を出してくださいという指令を出すことができます。出願人はその指令に沿って特許庁の審査官に複写をして提出をするような状況がございます。
 そういう中で4ページですが、今申しましたような特許審査の手続においてどういうところが著作権とのかかわり合いで問題になるかというところを幾つか御紹介しております。
 まずまるの1つ目、上でございますが、先ほど申しましたように特許庁の審査官が拒絶理由通知書を出した後に、原則60日以内に補正しなければいけないということで出願人は対応をとるわけですが、実は審査官が引用した文献については、特許文献、非特許文献いずれも出願人の方には送付されません。特許公報は特許電子図書館から容易に無料で入手できるのですが、非特許文献につきましては時間がかかるもの、あるいは場合によっては入手困難なものがございます。そういうこともありましてポツの1つ目ですが、非特許文献を出願人に送付する場合の審査官による複製、こういうものを検討する必要があるのではないかと思っております。
 それから、ポツの2つ目ですが、矢印で書いてございますが、審査官が非特許文献をそういう形で使ったもの、それを電子的に保存するということで、実はその後においても特許庁の審査官、同じような非特許文献を使うケースがございます。先ほど申しましたように一度、審査官が拒絶理由の通知を行い、出願人はそれに見合った形で補正書を出してくるのですが、そのときに補正書と先ほどの非特許文献を見比べて、確かに拒絶理由の内容がクリアされているかどうかという確認行為がございますので、そういう意味で審査官は再度同じ非特許文献を使うケースがございます。
まるの2つ目ですが、先ほど申しましたように審査官から書類提出を求めるケースがございます。そのときに非特許文献が出願人の手元にあるケースがございますので、その場合には出願人による複製をやっていただければというところでございます。
 最後のまるでございますが、これは利害関係人が他者の特許出願に瑕疵があるのではないかという趣旨で、情報提供と申しますか特許庁にいろいろな文献を出します。中には非特許文献、雑誌ですとかそういうものもあります。そういうものをやはり出していただかないと的確な審査に付すことができないということでございまして、そういう場合には利害関係人による非特許文献の複製を認めていただきたいと思っております。以上4点が著作権法上どういうふうに位置づけられているのか、現在のところ、我々が認識する限りでは必ずしも明確になっていないのではないかと考えております。
 5ページ目ですが、そういう中で特許審査の手続において非特許文献がどのような形で利用されているかというグラフを示してございます。左に非特許文献引用件数と書いてあります。過去3年間調べたところ、年々需要が高まってきております。その背景にはインターネットによる非特許文献サーチとかそういう利便性が増したと書いてありますが、現在のところ年間2万件ぐらい利用されております。これはちなみにどのぐらいの金額的なものになるかということを試算したのですが、例えば年間2万文献、それを例えば1つの文献で5ページぐらい使ったと仮定いたします。複写権センターの料金を見ますと1ページ2円ということですので、それを計算しますと年間20万円ぐらいの規模になります。これはざっとした我々独自の試算ですが、この程度というところでございます。
 6ページ目ですが、関係条文を挙げさせていただいていますが、著作権法の44条、それから32条が係わりがあるのかと思っております。アンダーラインを引いてある42条のところで裁判手続とありますが、先ほど審査の、あるいは審判のところで申し上げましたが、審判手続はいわゆる裁判手続に準ずるものとなっておりますので問題ないのですが、審査の方はその辺は必ずしも明確になっていないというところがございます。
 7ページ目でございます。我々は国内はこういう形で調べたわけですが、諸外国の状況はどうなっているかというところを調べました。これは冒頭申し上げました外国の特許におきましても審査官がいわゆる拒絶理由通知書において、その中で非特許文献が引用されている場合に、それを出願人に送付するのかしないのか、特許庁が各国特許庁に聞き取り調査をした結果でございます。
 米国、英国、独国、中国と書いてありますが、法律あるいは法律に基づく運用に裏付けされた形で、基本的には審査の段階で無償で複製して出願人に送っているというのが実状です。
 8ページ目、それから9ページ目でございます。ここは今申し上げました各国の関係条文を書いてございます。ちなみに9ページ目のところですが、下の方に書いておりますが、「情報社会における著作権及び隣接権の特定側面についてのハーモナイゼーションに関する欧州議会およびEU理事会指令2001/29/EC」、これは実はEU指令の中で、EUの中でこういう特許に関する手続については、いわゆる行政としてはその辺のことについては権利制限することができるということがございます。
 それから、次の10ページ目でございます。先ほど各国の関係条文を御紹介しましたが、ドイツにつきましては我々の方で、結構調査ができましたので御紹介させていただきますと、ドイツ著作権法では第45条に書いてございますように、裁判、官庁の手続についての権利制限が認められております。
 それから、ここにドイツの著作権法改正に当たって国会に提出された法案の提案理由書というのがございます。アンダーラインを引いてあるところを御覧いただくと、特に特許付与手続については重要だということで、著作権者はこのような複製物の作成を禁止したり、補償の支払いに左右されて複製を許可すべきではないというところが提案理由書に書かれております。
 それから、この枠の一番最後の3行ぐらいから書いてございますが、ここでは法律による明確な許可を与えることが望ましいとされております。
 それから、11ページ目です。まとめを書いてございますが、今申し上げましたように我々は迅速かつ的確な審査の実現、特に最近特許庁が果たす役割は大きいわけですが、その実現を果たすということ、それから、今申し上げました主要国との調和という観点からすれば、ぜひ著作権法による対処をお願いしたいというのが我々の切なる願いでございます。
 ちなみに最後でございますが、12ページ、参考5と書いてございますが、これは特許庁の方で、実は昭和41年の著作権制度審議会答申説明書を調べたものです。答申に書いてございますが、特に破線で書いてあります2段目の囲むところですが、裁判所その他の官公署における立証鑑定のための利用等公権力の行使にかかる手続きと書いてございますが、矢印下に書いてございますように、まさしく特許審査手続というのは我々公権力の行使につながるものと理解しておりますので、そういう意味では当初の審議会答申の説明と今回我々が希望している内容とは軌を一にしているものではないかということで参考までに御紹介させていただいております。
 非常に簡単な説明でございますが、以上でございます。

○中山主査 ありがとうございました。それでは、今の御説明につきまして御質問のある方はお願いいたします。

○山本委員 資料の4ページ目のところで1点確認させていただきたいのですが、ちょうど真ん中のところですが、その後の審査・審判手続での利用に資するために、他の出願人書類等と同様、該当非特許文献を電子的に保存することが合理的であるというのが書かれているというのは、これは具体的な審査手続きの中で使用され、保存されたものを他の関係とする審査に使い回しするという趣旨なのか、その個々の裁量で。それとも、もっと一般的に非特許文献であるということでライブラリーをつくるというような、極めて一般的な利用の仕方をしようという趣旨なのか、どちらなのかを教えていただきたい。

○新井技術調査課長 今御質問のライブラリーみたいなものというところでございますが、そういう趣旨ではございませんで、我々はいわゆる出願書類をすべて電子的に全部保管しております。それから、特許庁と申請人との間でいろいろやり取りをしますが、そういうものもすべて電子的に格納されております。
 特許文献につきましてはいつでもお見せできるのですが、非特許文献につきましてはなかなか容易に入手できないということで、今回出願処理の一環として同じように電子的に保存させていただきたいという趣旨で記載させていただいております。先ほど申しましたようにその非特許文献、一度電子的に入力したものを、その後の同じ出願案件でもう一度使うケースがございます。拒絶理由通知書をいったん発出しますが、それをクリアするような形で出願人がいわゆる補正をしてきます。その補正を本当に発明として特許していいのかどうか判断するわけですが、そのときに先に審査官が示した引用文献の技術的な内容ともう一度照らし合わせて、本当に先に見た非特許文献と見比べて特許性があるかどうか、その辺のところを見ることで使うケースがございます。
 もう一つのケースとして、その後審判に行った場合にも使う場合があります。いずれにしても、このように個別の出願案件ごとに電子化するというもので、ライブラリー的なものをつくるという趣旨ではございません。

○中山主査 よろしいでしょうか。
 他に御質問はございませんか。

○苗村委員 今の御質問の続きになりますが、4ページに赤い字で書いてある箇所が4か所あって、その4つの点について著作権の侵害になるかどうかというのが問題になっているのだと理解しますが、今たまたま御質問のあった特許庁の内部での使用の目的の複製、それができているものは、これは普通考えればすでにある権利制限の範囲かと思われますが、後の方の11ページを見るとこれについても改正も必要だと捉えており、11ページの中で出願・情報管理のための電子的な保存等と書いてあります。
 それが1つの質問で、あと、特許庁さんの審査官の方が複製をされて、それを出願人に送付するということについては11ページでも間違いなく改正が必要だと御提案されていて、これはよく分かるのですが、逆に出願人あるいはその他の利害関係者が特許庁に提出するために複製をする行為については、4ページ目でクエスチョンマークをつけておられますが、11ページ目では改正が必要だと言っておられないのは、これは必ずしも強い要求ではないと理解してよろしいのでしょうか。

○新井技術調査課長 11ページで書いてある括弧書きですが代表的なところを掲げたという趣旨です。したがって4ページの4つが、特許庁としては著作権法改正が必要ではないかと考えております。
 今、出願人への送付、電子的な保存とありますが、それらも含めて御検討いただければと思っております。

○小泉委員 今の御質問に関連するのですが、やはり4ページに関してですが、2つ挙がっておりまして、1つは審査官さんが出願人に送付するために複製ということで、こちらは文献の入手困難ということで、しかも職務理由と大きく係わりますので正当化理由として理解が容易なのではと思います。一方、今の御質問にもありましたとおり、出願人による複製を考えますと、入手困難ということのみでは難しいような気がします。資料赤字の3行目には、権利者側から複製許諾を得ることは困難が伴うと書いてありますが、一方で、資料の5ページによりますと、非特許文献の利用についてはかなり環境整備がされていて、コストさえ支払えば許諾が得られるような仕組みが一方で整いつつあるとのことです。
 そこで質問ですが、第一に、出願人による複製についての正当化をどうお考えかということと、第二に、ドイツの法制度についての資料がついておりますけれども、ドイツでは出願人による複製も許すという運用が行われているのかという2点御質問したいと思います。

○岡田調整課課長補佐 2点目の御質問についてですが、ドイツの法制度では出願人はどうかといいますと、出願人の複製も許されています。アメリカも同様です。アメリカは特に情報開示制度があります。いわゆるIDSというものです。IDS(情報開示陳述書)は、それをすべて出さないと特許が許可されても権利行使ができません。
 出願人が複製して特許庁に提出する情報は出願人にとって有利な情報ではありませんで、むしろ不利な情報とも思われるものです。知っているものは出してくれということでございます。
 それから、審査官が通常の状況で手に入るものは出願人には求めません。通常は審査官が入手します。手を尽くしてもどうしても手に入らないという場合に出してくださいというお願いを致します。

○中山主査 今の質問に関連して非特許文献でお金を出しても手に入らないものがどのぐらいあるのでしょうか。現在、SOFTICで先行文献のデータベース化をしていると思うのですが、具体的にあれに入れることができない、つまりなかなか取ることができないような文献というのは多いのでしょうか。

○新井技術調査課長 その辺のデータ的なところは持ちあわせておりません。例えば、マニュアル的なものがどの程度引用されているか分からないのですが、パソコンとかソフトが出ると必ずマニュアルが作られます。そういったものはバージョンアップで頻繁に作り変えられ、古いものは無くなってしまいます。そういう意味では入手しにくいというのは現実としてあったかと思います。
 それがどのぐらいあるかは把握できないのですが。

○中山主査 他に御質問ございましたら。

○前田委員 現在、非特許文献の引用件数はどれぐらいあるか御紹介いただいたのですが、現時点では許諾を得て利用しているということなのか。それとも、そうでなく事実上行われているという状態なのか。

○新井技術調査課長 実は図書館機能を有する独立行政法人の情報・研修館がございまして、そこにまず御案内します。そこは複写をして提供しております。
 その情報・研修館にない文献等もあるケースがございまして、それは特許庁のほうで複写して提供しておりますが、そのときに著作権料は正直言って意識しておりません。
 数年前だったかと思いますが、特許庁としてもその辺のところの運用が曖昧なときがあって、非特許文献の申し入れがあっても提供しなかった時期がありました。そうすると、先ほど申しましたように、特許にならないのではないかという文献の題名だけ示されてその内容が全く見られないものですから応答のしようがないということで、一時期大混乱を招いたこともありました。そういう反省を含めて、行政庁の運用として、求めがあれば提供するというのが実状でございます。

○中山主査 他に御質問はございませんでしょうか。
 よろしゅうございますか。
 では、内容につきましては後でまた討論の時間がございますので、特許庁に関しましてはこのぐらいにしたいと思います。ありがとうございました。
 引き続きまして薬事行政に係る権利制限について御説明を伺いたいと思います。厚生労働省より医薬食品局安全対策課の渡邊課長補佐にお越しをいただいております。恐れ入りますが前の方にお願いいたします。
 それでは、説明をお願いいたします。

○渡邊安全対策課長補佐 資料2に基づきまして説明させていただきたいと思います。厚生労働省では医薬品に関します規制の法律として薬事法を所管いたしまして、その法に基づきまして医薬品の品質、有効性、安全性を確保するために製薬企業に対して様々な規制を行っております。
 先ほどの特許庁さんからの御説明ですと、特許庁さん自身が文献を提供するような場合の特例を要望するということでしたが、私どもの薬事法に関しては医薬品に関しまして、説明責任を有するというのは製薬企業の考え方において、製薬企業が種々の情報を集めまして、それで何らかの安全対策を行う、あるいは行政なりに提出するということで、本日は薬事法制度上、製薬企業が義務づけられているものについて御説明いたします。
 1ページ目の医薬品等の有効性、安全性等を確保する制度の1つとして承認制度というものがございます。これは医薬品を製造販売する前に国あるいは都道府県知事が個々の医薬品等の有効性、安全性等を審査するというシステムを薬事法ではとっております。その際に有効性、安全性に関する報告を資料として国あるいは都道府県に提出するということが行われております。
 それと、一度承認になった医薬品でございます。新医薬品につきましては承認までに臨床試験ということで有効性、安全性の試験についてヒトを対象として試験が行われるのですが、承認申請まででは臨床試験ということで患者さんも制限されますので、臨床試験では投与されないような子どもさんでありますとか高齢者の方、あるいは長期間使用した場合の成績などというものが承認になって販売されてからでないとなかなか得られないということで、再審査期間という期間を設置しております。
 通常、新医薬品については6年間ですが、この6年間の再審査期間の後に安全性等を再確認する制度ということで、再審査制度という制度がございます。この再審査に当たりまして承認されて販売されてから医薬品の有効性とか安全性に関する研究報告がございましたら、資料として再審査申請の際に提出するという制度になっております。
 もう1つ承認に関する制度といたしまして再評価制度という制度も法律で規定しております。ただいま申し上げました再審制度は、新医薬品が承認されてから一定期間後に必ず見直しを行うという制度ですけれども、再評価制度というのは承認された後、適宜医薬品を指定いたしまして、有効性、安全性等を見直す制度が法律に位置づけられております。再評価申請するときに、やはり有効性、安全性というものに関します研究報告がございましたら資料として提出していただくということが現状でございます。
 ただいま申しました承認制度、再審査制度、再評価制度というのが承認に関する制度でございますが、そのほか医薬品が承認された後、販売された後、副作用等の発生をとらえて安全性を確保する制度がございまして、副作用感染症報告制度でございますけれども、この副作用感染症報告制度といいますのは、医薬品による副作用あるいは感染症が発生した場合に報告するということが薬事法に規定されておりまして、そのうちの報告事項といたしまして医薬品の副作用の発生傾向の変化を示した研究報告というものが薬事法施行規則の厚生労働省令に規定されておりまして、こういった副作用に関します研究報告がございましたら厚生労働省に報告していただくという義務を製薬企業に課しているところでございます。
 もう1つは治験時副作用等報告制度というものがございまして、これは販売された後ではなくて、承認申請前に臨床試験を行っている段階、臨床試験のことを薬事法では治験と呼んでおりますが、この治験のときにも研究報告として臨床試験中の医薬品で副作用の発生傾向が変化したというような研究報告があれば厚生労働省に報告するようにということで、報告の義務は薬事法に規定されておりますが、報告の事項として研究報告ということが厚生労働省令である薬事法施行規則に規定されております。 3つ目の感染症定期報告でございますが、これは医薬品の中でも化学物質ではなくて、生物由来製品と呼んでいますが、動物を原料といたします医薬品でありますと、動物由来ということなので感染因子が医薬品の中に混入してくる可能性が完全には否定しきれないということですので、そういった原材料となる動植物における感染症に関する論文を評価して、その結果を定期的に国へ報告するという制度が薬事法に規定されております。
 この感染症定期報告でも原材料が動物に関します研究報告を厚生労働省に提出するということで、製薬企業に対して薬事法で義務を課しているところでございます。
 一番下のところでございますが、製薬企業による医療関係者への適正使用のための情報提供でございますが、こちらは薬事法におきまして製薬企業に対して、医薬品を適正に使用するために必要な情報を提供するという努力義務を課しております。
 次の2ページ目に移りまして、一番上のポツでございますけれども、添付文書の記載事項及びその改訂の根拠情報の提供ということで、こちらは製薬企業に対する情報提供の努力義務の1つといたしまして、医薬品にはどういう使い方をするのか、どういう効果があるのかということを書いた添付文書というものを添付して販売するようにという規定がありますが、その添付文書に記載されている内容がどういった根拠で書かれているのかということを実際に薬を使ううえで医療関係者、医師等の方々に製薬企業が情報提供するという場面がございます。
 これは、医療機関への情報提供の努力義務を課しているのですが、薬事法上は製薬企業は医療関係者の方々から求められれば改訂の根拠となった研究報告等を医療関係者の方に提供して、適正に使用していただく。これも医薬品を安全に使用していただくためには必要なことということで、実際製薬企業は医療関係者の方に対してそういった研究報告を提示をしているというような状況にございます。
 2ページ目の2の義務を果たすために企業が必要な行為についてでございますけれども、今申しましたように承認・再審査・再評価制度というものにつきましては、こういった承認申請あるいは再審査申請、再評価申請という申請をする場合に資料として研究論文等を添付して申請していただくということで、この場合に研究論文等の複写ということがございます。
 もう1つございますけれども、副作用感染症報告制度、治験副作用報告制度、あと1つここに書いてあるのは感染症定期報告制度という、副作用等の報告制度におきましては副作用の発生傾向が変化したというような研究報告、あるいは医薬品の原材料となる動物で感染症が発生したという研究報告があれば、その論文等を複写して、国に提出していただくという状況です。
 それと、最後のまるですが製造業者等による医療関係者への適正使用のための情報提供ということで、これは製薬企業の努力義務として情報提供が掲げられておりますので、薬事法に書かれている努力義務を果たすために、製薬企業が必要な研究論文等を複写して医療関係者の方に提供していただいているという状況でございます。
 こういった医薬品の安全性を確保するために薬事法上の義務あるいは努力義務が製薬企業に課せられておりますが、こういった義務を果たすために研究論文等を製薬企業が複写あるいは頒布する。あるいは電子媒体で配付するということもあり得ますので、そういった場合に著作権法の規定を除外していただくと、これまで企業の側からは著作権法の規定がかなり厳しいと聞いておりますので、今後こういった行為がスムーズにいくのではないかと考えております。
 簡単ではありますが、以上でございます。

○中山主査 ありがとうございます。それでは、ただいまの説明につきまして御質問がございましたら、お願いいたします。

○潮見委員 2点ですが、薬の場合、ずっとお話を聞きますと基本的にこれは製薬会社の義務ですね。製薬会社が要するに薬を開発の関連して、そのための研究調査、開発に係るコストの1つです。実際に文献がないとか、入手困難ということでもない。そういうときにそのコストといいましょうか、それを製薬会社からではなくて、なぜ他のところに転嫁しなければいけないのかということについて若干御説明していただきたい。つまり、審査をする側が先ほどの特許庁さんではありませんが、何かそういう文献のコピーとかに必要だというのが、そうではないようですのでということです。
 もう1つは、これは先ほどの特許庁さんのほうでは諸外国のことをお調べになっておられるようですが、その辺りお調べになられているのか。実際調べておられたらどういうふうなことになっているのかをお尋ねしたいところであります。
 と申しますのは、例えばドイツの薬事法では、しばしば改正していますが、あまりおっしゃることは聞かないです、実際には。ですから、そういう情報があれば教えていただきたい。以上です。

○渡邉安全対策課長補佐 御質問の1点目のコストの問題でございますけれども、企業の側からはコストの面も一部あると聞いておりますが、コストの面というよりは、企業がそういう情報を知ってから国に報告するまでの期間というものを定めておりまして、研究報告を企業が知った日から30日以内に仮に報告するようにというようなことを、これは薬事法の施行規則、省令で期間を規定しているという状況がございます。
 それと、治験の副作用報告ですが、これは臨床試験ということで承認される前の医薬品ですので、より早くそういった情報が国のほうに提出していただきたいということで、治験時副作用報告制度の中でも研究報告、副作用の発生傾向がどう変化したかというような研究報告を企業がした場合は15日以内に国に報告していただくというような期間を定めておりますので、企業につきましてはこういった定められた期間内に著作権者に許諾をとって必要な資料を国の方に提出するというのがかなり難しいということを聞いております。
 2点目の外国の例でございますが、こちらは申し訳ございませんが外国の制度はどういうものか、著作権法の特例等が定められているかいないかというものは今のところ承知しておりませんので申し訳ございませんけれども、そういう状況でございます。

○中山主査 よろしいでしょうか。

○山本委員 この提供の期限ですけれども、一番最後の製薬企業から医療機関への提供、それは多分医療機関から請求があってからだと思うのですが、これは努力義務だから、これは期間はないのですか。

○渡邊安全対策課長補佐 企業から医療機関への情報提供については努力義務で、おっしゃるとおり提供までの期間は定めておりません。

○中山主査 他に質問はございませんか。どうぞ。

○山本委員 資料の2ページ目の末尾のところですが、著作権法の規定を除外する事柄として、研究論文等の複写、頒布、ここまではわかるのですが、電子媒体での配付等というのが入っております。承認・再審査・再評価制度等々の制度に伴って文献を提出する必要があるというのは、複写する場合はその提供で足りるのではないか。つまりここでなぜ電子媒体での配付まで入れられているのか、その趣旨を教えてください。

○渡邊安全対策課長補佐 電子媒体での配付といいますのは、製薬企業から行政庁への提出の場合に電子媒体で提出していただきたいというのが1点でございます。それともう1点が、製薬企業から医療機関に対する情報提供の場合、電子媒体での提供を行う場合もあり得るということで書いております。
 行政庁への電子媒体への提出でございますが、現状、副作用報告ということで患者さんが医薬品で副作用が起きたという個別の症例につきまして、この患者さんがこういう医薬品を飲んで、こういう症例になりましたというような症例の内容につきましては平成15年10月からオンラインで製薬企業が国に対して電子的な報告をするというシステムをつくりまして、製薬企業の方はそういった個別の副作用の症例情報については主にオンラインでただいま厚生労働省の方に報告しているような状況でございます。
 もし著作権法上、電子媒体で研究報告が可能になれば、将来的には研究報告についても電子的な報告をしていただけるのではないかということで考えております。
 もう1点の製薬企業から医療機関に対しての情報提供につきましても、現状、紙媒体で医療機関の求めに応じて情報提供しておりますが、これも求めがあって、電子的媒体で送ることができると、最終的には患者さんに使われている医薬品ですので、患者さんの安全性の確保のためにより早く情報を入手できることが可能になるのではないかと考えております。

○中山主査 よろしいですか。どうぞ。

○山地委員 2点お伺いしたいのですが、1点は日本複写権センターとの関係ですが、この種の学術文献については多数のものが日本複写権センターの対象になっているのではないかと思います。ですから、製薬会社が複写権センターと契約していれば、そのもとで許諾の必要はないし、料金の支払いも問題ないのではないかということ。どの程度複写権センターが係わってやっているのか。概略の数字で結構ですが、9割方とか6割方とかわかれば教えていただきたい。それが1点目です。
 もう1点は、ここでいろいろ文献が出てきます。これは日本国の文献だけではなくて外国の文献も含まれているということですか。

○渡邊安全対策課長補佐 厚生労働省は著作権を管理する団体とはあまり関わりがないのですが、製薬企業から聞いている限りではある企業の場合ですが、一か月間に副作用の関係で調査した情報の件数が303件というような実例があったとしますと、そのうち学会報告あるいは雑誌別で見ると、雑誌での報告が72誌で92件、学会での報告が30学会で111件という内訳だったようですが、この雑誌の報告の72誌、192件のうち、著作権の管理団体が管理しているような雑誌が27誌74件であったということですが、45誌118件は出版社が著作権を管理しているか、あるいは著作者に権利が留保されているというような状況だったということで、これは業界全体ではなくて、ある企業の実例ということで、そういう状況であったということをこちらで把握しております。
 あと研究報告となる文献ですが、これは日本の研究報告に限らず海外の文献も対象としております。

○中山主査 他に御質問ございましたら。

○前田委員 製薬企業による医療関係者への情報提供についてお尋ねしたいのですが、その情報提供というのは例えばある雑誌論文があったらば、その雑誌論文をコピーして、その論文を医療機関に提供するという形で情報提供が行われることが多いのでしょうか。それとも製薬会社のほうでこんなことがありましたよという製薬会社のレポートをつくって、それを医療機関に配付するという形で行われることが多いのでしょうか。

○渡邊安全対策課長補佐 これは企業の情報提供の場面によって違うようですが、まとめたものを情報提供をすることもあれば、文献そのものを情報提供することもあるということのようですが、企業から話を聞きますと、例えばこういう副作用症例が発生しましたということを関係者の方、医師の方にお伝えしますと、ではその論文の中ではどういったわけで患者さんが発症されていて、どういう症例なのかという詳しい内容を医師の方は当然、自分の患者さんを持っておられるので知りたいということなので、結局は論文そのものを要求されることがかなり頻度が高いと聞いております。

○苗村委員 1つ前の質問の関連の質問ですが、例えば製薬会社が日本複写権センターの会員になっているにもかかわらず、そこを通して複写できないような論文があった場合に、その複写の許諾が得られないために適切な例えば副作用に関する情報が医療機関等に伝わらないということはあって、十分ではないんですが、かなり多くのものが複写権センターあるいは企業でそういう資料、研究論文等の複写等の契約の取り扱いをしているところがありますから、そこに有料でお金を払ってやっているわけですね。
 そうしますと、考え方としてはそういう形で複写あるいは電子媒体での複製などができない場合について、何らかの形で強制許諾を認めるべきだという御趣旨と理解してよろしいのか。あるいは今、有料でコピーしている。私はこの分野専門でないもので知らないのですが、例えば1ページ2円ではなくて、特に外国の文献等ですとかなり高いのではないかと思うのですが、それを無料にさせるべきだという、そういう意味が含まれているのか、いろいろな考え方があると思うのですが、例えば現行で業界では大体このぐらいでコピーができている。ところが個人が研究論文の著作権を留保していて、本人がどこかに遊びに行っていれば2週間のうちにコピーがとれない。そういうときには業界のだれしも標準的な価格で強制的に使用を認めるべきだという、そういう御趣旨と理解してよろしいでしょうか。

○渡邊安全対策課長補佐 業界はお金の問題ではないと、私どもが話を聞いているときにはそのように言っているのですが、ただ実際上、お金の問題ではないと言いましても、今おっしゃられたように特に海外の文献ですと、複写に関してもかなり高額の複写料を請求されるような場面が多いということで、私が今業界から話を聞いているところによりますと、製薬企業はすべての学術論文を定期的に月刊誌等を講読することができないので、文献のデータベースで検索して、ヒットした文献を複写したいということで考えているようですが、その複写する場合にある文献の会社などは文献の雑誌自体は年間契約にしてもらうことが前提なので、複写するに当たっても当然文献自体を年間契約したぐらいのお金相当を取られてしまうことはあり得るということを製薬企業から聞いております。かなりの費用負担ということは発生するということを聞いていますので、その辺も配慮していただきたいというようなことで聞いております。
 ですので、実際にどういった著作権上の規定、例外というのを設けていただくかというのは、その辺は兼ね合いになるのかなということで考えています。
 企業としては可能であれば著作権の制限なく行うということであれば、複写料なく可能になるというような制度を望んでいるということが実情であるようですが、そこは関係の方々、権利者等がいらっしゃいますのでいろいろな関係の方々の利害等がございますが、そういったことを考えながら検討いただければと思っております。

○中山主査 これは国に提出する場合も医療機関に提出する場合も1部ですね。

○渡邊安全対策課長補佐 国に提出する場合につきまして、私どももいったん提出されますと専門の先生方に評価していただくということがございますので、複数部提出するようにということで企業に要求している場合もございます。
 あと医療機関に対しても資料としては個別の医療機関のある医師の方に対しては一部でしょうけれども、当然、複数の医師がいれば、それぞれから要求があれば、それぞれの要求に対して一部ずつ提供するということになっているということです。

○茶園委員 確認ですが、先ほどの特許庁さんの御意見と今回の厚生労働省さんの御意見には関連しているといいますか共通しているところがあると思いますので、その点からお尋ねいたします。特許庁さんからは、特許庁さんのところで情報を集めて、それを出願人に対して提示するということについて、著作権法で改正してもらいたいという御意見があったと思うのですが、厚生労働省さんの方では、薬事行政に関して、厚生労働省内で情報を収集して、それを製薬会社や医療関係者に提供するということが行われていて、著作権法上の問題があるということはないのでしょうか。

○渡邊安全対策課長補佐 これは先ほどの製薬企業が医薬品を製造しているという立場ですので、基本的な責任は製薬企業のほうにあるということで、文献調査を製薬企業にお願いしていますけれども、そこは漏れがあってはいけないということなので、厚生労働省としても適宜文献の調査あるいは海外の規制当局の情報等を収集しております。こういった文献がある、そういう報告があるということが分かれば、製薬企業に対してあなたの製品の安全性について問題はないのですかというような問い掛けをして、企業がその文献を細かく検討いたしまして、その評価を提出していただくという方式をとっております。
 厚生労働省が直接医療機関に対して文献情報を提供するのかということに対しては、一般的には厚生労働省ではそういうことは行っておりません。医療機関に対する情報提供といいますと、企業に対して厚生労働省から指示するという形での文献情報の提供ということを行うのが普通でございます。
 厚生労働省が情報発信するという場合には、先ほど申しました添付文書というのが医薬品の場合には常についているんですが、こういった添付文書の中にその医薬品とはこういうような重篤な副作用が発生しますというようなこと、例えば肝障害とか肺の障害が発生しますというような記述を追加するということをいたしますので、そういった記述を追加しましたというところにつきましては厚生労働省が対外的に公表する、発信するということが通常行われておりますが、それのもとになった文献報告自体を厚生労働省が直接医療機関に提供するという形には通常行われておりません。

○中山主査 よろしいでしょうか。また後で議論をしていただきますが、何か今伺っておくことがございましたら。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、引き続きまして図書館関係の権利制限についての説明を伺いたいと思います。著作権分科会の委員であり、日本図書館協会の理事でもあります常世田委員と、平成13年に著作権分科会情報小委員会の下に置かれました図書館等における著作物の利用に関するワーキンググループのメンバーでもいらっしゃいました慶応義塾大学の糸賀教授にお越しをいただいております。
 それでは、恐れ入りますが説明をお願いいたします。

○常世田著作権分科会委員 説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
 資料の1ページを御覧いただきたいと思います。今回説明申し上げるのは6点ございます。この6点につきましては、著作権の権利者の関係者との会議を持っておりまして、その会議の場で概ね了解をされているもの、あるいは了解されていることについてガイドラインを作成しようというような状態にあるものです。
 また、図書館関係の所管課であります文部科学省の生涯学習局の社会教育課においても、図書館振興のためにこの6点については必要であろうという立場をとっていただいている、そういうものであるとお考えいただきたいと思います。
 まず、Aについてでございます。現在の著作権法上ではコピーにつきましては所蔵している資料のみ許されるということになっています。図書館におきましては図書館法という法律に基づきまして、他の図書館から借りた本も利用者に提供するということをしなさいと法的に定められているわけです。
 一つの図書館でなかなか利用者の要求に対応することができないので、本の貸し借りをするわけですが、その際、他の図書館から借りた本は所蔵している資料ではございませんので、コピーができないということになっております。
 これにつきましては、資料を取り寄せて、それを利用者が見て、後でコピーするため、いったんその本を所蔵館に戻しまして、改めてその図書館に出かけ行ってコピーをする、あるいは、そこに手紙を出す、電話をして所蔵を確認し、コピーを依頼して、そしてコピー代を、さらに料金を払ってコピーを送って、そして所蔵館からさらにコピーを郵送してもらうという煩雑な手続きをとっています。
 しかし、手に入るものは全く同じものでございますので、結果的に権利者に対しての経済的損失は発生しないことになるわけです。
 次に、3ページのBでございますが、これは図書館に設置されておりますインターネットの端末等で、インターネット上の画面を主に紙媒体にプリントアウトするということがございます。これは現行制度では困難な状態にありますが、現在、世界的な傾向としまして、図書館がハイブリット化といいまして、デジタル情報と印刷媒体を有機的に組み合わせて利用するという方向が打ち出されて、そういう方向でだんだん図書館が運営されていますが、現行、日本ではあるページを開いて読んで、最新の情報をウェブから入手しよう、そういう環境があふれてきたわけですが、そうした場合にその場でプリントアウトできませんので、選択した画面のアドレスを覚え、そして家のパソコンで改めて打ち出す、そういう状況があるわけであります。
 これに関しまして、現在の本の権利者との調整においては基本的にはサイトなどを運営している権利者は、プリントアウトを前提にしている作成者が多いであろうということで、問題はないのではないか。特に、それを嫌うのであれば、技術的にコピーできないような手段をとるということで権利を守るという手段に切り替えたほうが現実的ではないかという議論が行われております。
 次に、5ページのCでございますが、図書館において図書館の資料が劣化して使用できなくなる、そういうことがあります。これについては現行法でも保存のためにコピーをするということが許されているわけでございますが、ここで言っているものは解説にもありましたようにSPレコードとか、CD−ROMあるいはDVDというようなものについて、再生する機械が作られなくなったり、あるいはOSがバージョンアップされることで実際に再生ができなくなるという問題が起きてきておりまして、これに関してこのコンテンツを利用するために媒体変換のためのコピーを図書館で可能にしてほしいということでございます。
 これはかなり規模の大きい県立図書館ですとかそういうところではこういう問題が起き始めております。利用を担保するために保存するための法的な改正あるいはその対処というものが必要になるのではないかと考えております。
 それから、6ページのDでございますが、これは政府が発刊する報告書ですとか、あるいは印刷物等は普通の印刷物と著作権法上同じ扱いになっておりますので、本来国が作成し、しかも国民に広く周知するという目的で発行されるものでありながら、市民がコピーしやすいという状況にはありません。
 例えば官報など、新しい法律が改正されたという場合、法律そのものはコピーできますが、法律の解説とか、そういうところにつきましては、すぐ必要なわけですが、現行では困難です。
 これは先ほどありましたように、本来の国民に広く周知するという点において、やはり図書館においては周知の可能性を狭めていると考えられております。
 それから、7ページのEでございます。これは障害を持った方に対しての情報提供ということでございますが、まず複製の方法、これは点字については、福祉施設でなくても許諾を得ずに作成することができますけれども、それ以外に弱視の方に関しましてはオリジナルを拡大して読めるようにする拡大図書、あるいは、視覚障害者の方が点字に替えて録音図書を利用するということがございますけれども、そういうものについての許諾を得ないコピーを可能にする必要があるのではないか。
 あるいは、視覚障害者で点字が読めない方、実際には内部障害とか、身体的障害を持った方がページをめくれないということがありまして、その方にとっては録音されたコンテンツを利用するということによって利便性があるという部分がありますので、対象を視覚障害者以外の障害者にも拡大する必要があるのではないかと考えております。
 また、実際の公共図書館に対して、障害を持った方のニーズが多様に変化してきている。そのことについて健常者であれば図書館の本棚に行って、資料を手にとって、そのまま資料を読むことができるわけですが、実際に障害を持った方はそれを保証されていません。法の前の平等が実は担保されていないという状況がございます。印刷物を録音した録音図書が健常者にもそれは利用できるのではないかということで権利者からなかなか許諾が得られないということがありますが、公共図書館という公共の機関ではきちっと利用の状況を把握することが可能だと思います。
 それから、9ページのFでございます。これはAと少し関連するのですが、他の図書館に所蔵している、特に郷土資料といいますか、その地域で印刷された本、あるいはその地域の新聞などにつきましては、やはり遠隔地の図書館から取り寄せる必要がございますが、その場合に一度コピーしたものを郵便物として郵送するということが大変手間がかかると同時に、郵送料、コストがかかるということがございます。ファクシミリ等で対処することによって、そのコストを軽減し、手数を軽減するということで利用を促進するということが主であると考えております。
 実はこのことについては大学図書館においては幾つかの権利者団体との間で調整が進んでおりまして、昨年からすでに大学図書館においてはこういう資料のファクシミリによる送信というものが実現されておりますので、公共図書館においてもその範囲を広げていく必要があるのではないかと考えております。
 以上でございます。

○中山主査 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして御質問がございましたらお願いいたします。

○小泉委員 ただいまの最後に御説明があった点に関してですが、資料の9ページには、ファックスと並んで、「インターネット等」があがっております。両者が権利者に与える影響はかなり大きな違いがあるのではないかと思います。インターネット等での公衆送信についても同様にお考えですか。

○常世田著作権分科会委員 先ほどお話ししました大学における権利者との調整については概ね合意いただいております。今のファクシミリやコピーは実際、もうデジタル化されておりますので、このファクシミリの内部ではパソコンによるコピーと同じ状態が発生していると考えられます。今回の場合は、メールを使って、目的以外には一切使わないということを厳密に守ることが前提ということです。

○小泉委員 インターネットというのは公衆送信ではなくて、メール送信のことをお考えでしょうか。

○常世田著作権分科会委員 申し訳ございません。メールでの送信のことでございます。

○中山主査 他に御質問ございましたら。どうぞ。

○加藤委員 今のお話に直接関係するお話ではないのですが、私知らないものですから、日本の図書館の設置数とか予算規模を単純に比較することはできないと思いますが、ヨーロッパ、アメリカと比べて日本のそれはどういうふうなのでしょうか。

○常世田著作権分科会委員 G7というものがございますが、G7の最低がイタリアですが、そのレベルより、設置数においても予算においてもかなり低いと言われています。

○中山主査 よろしいでしょうか。
 他に御質問ございましたら。どうぞ。

○苗村委員 質問に関連して、質問というよりはむしろ確認をさせていただきたいのですが、インターネットを利用するという中で例えば電子メールに添付ファイルとして付けて送るとなりますと、これは受け取った側は単にそれを自分のプリンターで、図書館のプリンターで出すだけではなくて、さらに電子的な複製ができてしまう恐れがあるわけです。多分おっしゃっているのは図書館同士の間で利用して、その著作物の複製物をやりとりするにしても、実際に利用者に渡すのはあくまでもプリントしたものであって、結果は通常の複写機でコピーしたものと同じであるということを確認しておきたいということ。
 もう一つですが、先ほど大学図書館と権利者の間で合意されたということがございました。多分これは権利者すべての同意が得られたわけではなくて、私が聞いている限りでも何かと心配されている方がおられるので、多数の合意という意味だと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。

○糸賀慶應義塾大学教授 同席させていただいております糸賀が補足させていただきます。今お尋ねの件に関しましては、基本的には苗村委員の御理解のとおりでございます。例えば、大学図書館でインターネットあるいはファクシミリを使って他の図書館から文献を取り寄せた場合でも、これは図書館間でのやりとりですから、受け取った図書館側で一部これをプリントアウトし、紙に印字したものを利用者に図書館で提供するという形態をとっております。
 ここで御懸念のように電子的にもっと大量に複製ができてしまうのではないかということは、そこで防ぐような手立てはとられております。
 もう一つお尋ねの点は、すべての権利者は当然契約といいますか、協定に加盟しているわけではございません。そこに加盟していないものについては原則できないことになりますが、大学図書館は多くの場合学術論文、学術雑誌です。そういう意味では営利性をあまり求めないということもありまして、大方の理解はいただいている。もちろんすべての権利者がこれで了解しているわけではございません。

○中山主査 山地委員。

○山地委員 二つあります。一つは今の質問に関連して、大学図書館ではすでに一部実施しているということですが、これは料金は無料でやっているのでしょうか。
 もう一つは、3ページ目のBですが、インターネットで見ることと図書館業務の関連がよく分からない。例えばこの図書館のホームページがインターネット上にあって、そこに見に行くと本があって、それを見るということなのでしょうか。それとも図書館とは直接は関係がない情報をたまたま図書館にあるパソコンを利用して見るということですか。どちらですか。

○糸賀慶應義塾大学教授 初めの方の質問にお答えさせていただきます。基本的にはこれは無償許諾という形をとっております。いわゆる使用料をとるとか、補償金を払うという形ではありません。無償の許諾です。
 通信費についてはほとんど無料に近いようなものなので、その都度料金を取るということはしていないように聞いております。
 ただし利用者に対しては当然通常の複製は1枚30円とか40円とかコピー代をとっておりますので、それとほぼ同額の料金を利用者からはとっていると思います。権利者に対してお金を払うということはしていません。

○常世田著作権分科会委員 インターネットと図書館業務の関連でございますが、公共図書館においてはいわゆる娯楽的な小説ばかりでなく、専門分野の実用書、専門書を借りる、あるいはコピーをとるというふうに変わってきています。そういう面においてさまざまなインターネット上のサイトで情報を集めるということを目的としております。

○中山主査 ファクスとインターネットで複写を送付するというのは、図書館間の話ですか。
 ユーザーが図書館に対して要求するということではないですか。

○常世田著作権分科会委員 現在、我々が考えているのは図書館間の話です。

○中山主査 あと31条の3項の話。

○常世田著作権分科会委員 もともと要求を出したのは利用者なのか図書館なのかという点で異なります。

○中山主査 ユーザーから直接遠隔地の図書館にコピーをくださいと言ってお願いするのか、こっちの図書館を通して図書館間の話としてやるのか。

○常世田著作権分科会委員 大学を構成している構成員、つまり教員や学生から自分が所属している大学図書館に対して要求を出して、その図書館で対応できない場合に他の大学図書館が対応する。その場合をファクスなりインターネットで。

○中山主査 このFの要求というのは個々のユーザーが遠隔地の図書館に直接要求をするということまでは含まない、そういう趣旨ですか。

○常世田著作権分科会委員 そのとおりです。

○中山主査 他に何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。
 では、また後でまとめて議論いたしますので。どうもありがとうございました。
 続きまして、障害者福祉関係に係る権利制限につきまして御説明を頂戴したいと思います。厚生労働省より社会援護局障害保健福祉部企画課社会参加推進室の江波戸室長にお越しをいただきました。それでは、御説明をお願いいたします。

○江波戸社会参加推進室長 江波戸でございます。それでは、資料に基づきまして、4点の要望につきまして説明をさせていただきます。障害者福祉関係の権利制限についてという資料でございます。1ページ目をお開きいただきたいと思います。
 1点目でございますが、視覚障害者の用に供する録音図書について、点字図書と同様に公衆送信を認めていただきたいというものです。
 2番に記載させていただきましたように、黒ポツの二つ目ですが、視覚障害者、30万人のうち点字を読むことができるという方は1割程度でございまして、残りの方が録音図書を通常利用しています。
 このような状況から録音図書の製作、貸出に私ども、そして現場のほうも力点を置いているところでございます。
 黒ポツの上に点字の本48万タイトルと録音図書で同様48万4,000、そしてCD化されたものが23万ということで、この状況を御理解いただけると思います。
 また3に記載させていただきましたように、3の1番目に書いてございますが、びぶりおネットと書いてございます。それは録音図書の公衆送信システムでございます。平成16年4月から日本点字図書館、日本ライトハウス、これも全国視覚障害者情報提供施設協議会に加盟する団体ですが、ここの2つの点字図書館によって稼働されているというところでございまして、このシステムの即時性の確保、情報入手の時間的制約の解消、そういうところにあるわけでございまして、今後びぶりおネットによります視覚障害者の読書環境の向上のためにびぶりおネットの公衆送信につきましてぜひともお認めをいただきたいということをお願いする内容でございます。
 現在、このびぶりおネット、3番に書いてございますように一括許諾ということで個々に著作権の制限を解消しているという状況にあるところです。
 2つ目ですが、2ページ目、こちらは聴覚障害者の用に供するために著作物に手話や字幕をつけること。それから、これの公衆送信をお認めいただきたいというものでございます。
 1番の現行制度に書いてございますように、現在、点字による複製はお認めいただいているところでございますが、字幕なり手話を入れた複製、これは認めておられないというところでございまして、3に現行の状況が書いてございますが、放送事業者や著作者団体と事前の一括許諾契約によりまして字幕手話を入れているという状況にあります。
 現在、聴覚障害者の情報提供施設がありますが、28ございまして、その代表が許諾契約を結んでこれを行っている、そんな状況にあります。
 著作権料の支払いなどのために製作状況は3にありますように、3の黒ポツの三つ目ですが、そう数も多くございませんし、また費用もいろいろかかるということでございますからして、団体のほうからぜひとも聴覚障害者の方々のために手話や字幕の付与を認めていただきたいということであります。
 それから、公衆送信につきましても現在、1の黒ポツの二つ目ですが、ここに記載させていただきましたとおり、リアルタイムでの送信、これにつきましては条件をつけまして認めていただいているところでございますが、手話をつけてというところでは認められていないということから、要望にございますように手話につきましても公衆送信を認めていただきたいということでございます。
 リアルタイムでの送信は平成12年より認めていただいているところですが、現在、日本リハビリテーション協会、それからNPO法人のCS障害者放送統一機構においてお認めをいただいた後、その事業といいますか、公衆送信を行わせていただいているところであります。
 3ページに3点目の要望を書かせていただいております。
 字幕に関する翻案権の制限でございますが、これにつきましては一定の条件を満たした上でお認めをいただきたいというものです。
 現在、現行制度に書いてございますように、字幕によって自動公衆送信をする場合には翻案ということが認められているわけですが、2番に書いてございますように文字情報を的確に読むことが困難な知的障害のある方でございますとか学習障害の方々、こういう方々にルビを振るとかわかりやすい表現に要約するといった配慮が必要です。また、教育や就労の場面、また緊急災害情報などの場面での情報提供に配慮が要るということから、一定の条件というところ、3番のほうに書いてございますが、例えば先ほど出てまいりました聴覚障害者情報提供施設などにおいて一定の体制を整え、翻案できるというふうにお認めをいただきたいという内容でございます。
 現物は本から何からすべてのものと御理解をいただければと思います。
 4ページ目でございます。4点目の要望ということで、本人が所有する著作物を所有者自身が利用するために、例えば視覚障害者のための録音など、本人が読める形に第三者が変換することに関して、一定の条件を満たした上で認めていただきたいというものです。
 現行制度、著作物の複製、私的利用の範囲に限り、そして使用する者に限りということで複製ができるわけでございますが、例えば視覚障害の方々が御自分で複製するということはなかなか厳しいわけです。2番に書いてございますように、障害があるゆえに、障害者自身で著作物の変換ができないという状況にあるわけでございますから、一定の条件と書かせていただいておりますが、第三者が変換することに対しまして、どうか御配慮をいただきたいということでございまして、障害者福祉に関係します権利制限について、この4点をお願い申し上げるということでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○中山主査 ありがとうございました。御質問を頂戴したいと思います。

○苗村委員 非常に小さな表現についての質問で恐縮です。4ページの要望についての最初の表現ですが、個人が所有する著作物を所有者自身が利用するためとありますが、ここで言われる本人、所有者自身、同じ人を指すように見えます。この人は多分障害者であると想像されます。この文脈です。ですから、例えば目の見えない方がこれを読んでもらう目的で買うということを想定、例えば本を買ってきて、人に読んでもらいたいということで買ってきた。だけど、読めないから読んでもらいたい、そういうふうに読めるのですが、あえてそういうことを意図されたのか。何か個人が所有する著作物を所有者自身が利用するためにというのは、何か理解しにくい。端的に言いまして障害者に録音などの方法で読んであげるためにというか、表現は別としまして最初の十数文字が理解できないわけで、補足していただけませんか。

○江波戸社会参加推進室長 すみません。ややこしい表現で。委員御指摘の前段の方で御理解を賜れればと思います。すなわち障害者の方々がその本を買う、しかし読めない、その状況ということでございますので、まさしく御指摘のとおりと御理解いただきたいと思います。

○苗村委員 第三者が買った場合ではないという。

○江波戸社会参加推進室長 そういうことです。

○苗村委員 分かりました。

○中山主査 他に御質問ございましたら。

○前田委員 1ページ、2ページのところで1ページでは公衆送信を、2ページでは手話、字幕を付与することや公衆送信もというお話ですが、聴覚障害の方あるいは視覚障害を持っておられる方に対して提供する場合のみ許されて、健常者に対して公衆送信等をすることは許されないという前提での御提案と理解してよろしいですか。

○江波戸社会参加推進室長 委員御指摘のとおり、視覚障害者の方、聴覚障害者の方に送信するということでございます。

○中山主査 これは例えばテレビなどに流してしまって、普通の人が見ても意味がないというだけの話ではなくて、視覚障害者に鍵を渡して、その鍵を持っている人だけ見れる、聞ける、そんな話ですか。

○江波戸社会参加推進室長 最初の視覚障害の方々のびぶりおネットという御紹介をさせていただきましたが、これは今現在会員制ということになりますので、一般の方が登録することはないと思いますから、そういうことで視覚障害の方がこのびぶりおネットを利用している、こういうことになろうかと思います。
 それから、これは通常の映像の装置プラス、実は今、受信するための機器というとでアイドラゴン、商品名ですが、そのアイドラゴンを用いて手話なり字幕なりをという仕掛けにしたわけで、それがなければということで、我々は多分使わないと思いますが、そういう意味で障害者に限定されていると言えます。

○中山主査 分かりました。他に御質問がございましたら。

○山地委員 この種の議論はかなり昔からいろいろあると思いますが、これは権利者、著作者との話し合いは進んでいるのでしょうか。
 もしも行われているのだとすると、権利者などが抱いている反対ないし懸念の中で代表的なものを御紹介いただければと思います。

○江波戸社会参加推進室長 現在、ここに要望を出させていただいております諸団体と権利者の話し合い、それから権利者の懸念につきまして、今私ども承知しておりません。後ほどペーパーなりで今の御指摘いただいた点についてお答えをさせていただければと思います。

○中山主査 他に御質問は。
 よろしゅうございましょうか。
 ありがとうございました。 今までの議論を踏まえまして、これから自由討議に入りたいと思いますが、本日は長丁場になりますので、その前にいったん休憩をとりたいと思います。
 つきましては10分間ということで、45分まで休憩ということで、3時45分から再開したいと思います。
 定刻に始めたいと思いますので、是非45分には御着席ください。

 (休憩)

○中山主査 少し早いですが、全員そろいましたので、よろしいでしょうか。
 それでは、残りの時間を使いまして、それぞれの項目ごとに自由討議を行いたいと思います。各委員におかれましては積極的に御発言を賜りたく思います。
 また、席が若干遠くなりましたが、各説明者の皆様も適宜御発言をお願いしたいと思います。
 それでは、まず特許審査手続きに係る権利制限につきまして御意見の方を頂戴したいと思います。
 何か御意見ございましたら。

○苗村委員 先ほど、私が質問させていただいた4点の項目について、個人的な考え方を申し上げます。4つの項目のうち、2番目の非特許文献を出願・審査情報の一環として電子的に保存するために特許庁の審査官が特許庁内部で複製物をつくり、御自身あるいは同僚の審査官に使っていただくということについては、厳密な解釈の理論はあると思いますが、少なくとも42条の行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合に該当するのではないかと私は思います。
 ですから、もし解釈が適当でなければ文言の修正は要ると思いますが、御提案でいいように思います。
 それから、あとの点についても、いずれも特許庁における審査の効率化、期間短縮のために必要であれば、それが許諾権であり、著作権者によって複製の許諾が下りないために審査が長引くというのは確かに不都合ですから、何らかの対処はいると思いますが、少しニュアンスが違うような気がいたしました。
 まず、1番目の出願人に送付するために審査官が複製させる。これは確かに審査官の方がその文献を手元に持っておられて拒絶通知を出す。さらに文献をつけた方が早い。したがって、これは内部の利用ではないが、それに準ずるという意味で、より優先順が高いと思いますが、出願人が例えば補正を行う、あるいはその他の理由のためにつけるためのものである、さらに、最後の利害関係者は例えば定例的なケースは閲覧公開があって、それを見た閲覧人以外の企業の方などが自分の書いた現物のコピーを送るという場合だろうと思いますので、一般的には通常のやり方でいいのではないかという感じがしますので、比較的優先度は低いような気がします。

○中山主査 今の最初の問題は行政目的のための内部資料として必要な場合という、必要と書いてありますね。コピーで持っていても用は足りるけれども、より効率的にやるというのは、この必要であるかどうか、そういう問題だと思いますが。

○山地委員 今の件についてですが、今日の御説明で、ペーパーレス化だとおっしゃっていましたので、例えば情報としてペーパーレス、電子化してとっておくというようなケースもあるのではないかと思います。
 その場合には電子媒体であればネットワークを経由して見るということになる。そうすると、行政に閉じないということになるのではないでしょうか。
 ですから、私はこれはあってもいいと思いますし、権利制限することに賛成をすることにいたします。
 それから、4つ目ですが、苗村先生のようなお考えもあることは認めますが、しかしながら無効要因を内包する特許を少しでも減らすためには、やはりこういう情報提供を迅速に行わせる必要があると思います。複雑な手続きなしで、こういうことを行えるようにすることによって、無効要因を内蔵しているような特許を少しでも減らすという努力をすべきだと思いますので、第4項も認めてよいのではないかと思います。

○中山主査 有料とした場合、5ページで1ページ2円、仮に10円としても5ページで50円になりますが、その少額の金を権利者に送るということですか。
 有料という意味ですが。10円あるいは50円を送るべきだという御趣旨ですか。

○苗村委員 そこまでは細かく考えておりません。ただ、考え方としてこれは報酬請求権であればそのためのやり方もあると思いますが、承認するということの必然性が私には見えなかったので。より細かい具体的なものについてはまだ私の頭にはありませんが。

○中山主査 他に。

○小泉委員 4ページに関連するのですが、先ほど少し申し上げましたとおり、審査官とか特許庁による複製というのは42条に準ずるものとして許容される旨明確化することが必要だと思いますが、一方で出願人による複製については、先ほど御紹介のありました集中管理の環境整備との兼ね合いでどこまで入手「困難」と言えるかが問題となると思います。集中管理の体制が不備のため入手困難なものがあるとすれば、そこについては非常に強い必要性が認められるというのは皆さん同意されると思います。ただ、現段階で全部フリーにしていいかということは、踏み切れないものがあるわけです。
 これは立法的な技術の問題になってくるかもしれませんが、仮に出願人による複製についても一定の制限を認めるということになりますと、著作者の利害を不当に害しない、といった、集中管理というものを意識した一般的な文言を入れて少し限定をつけるといったようなことが必要なのではないかと思っております。

○中山主査 大渕委員。

○大渕委員 今言われた点に関しましては、42条において、裁判手続のために必要と認められる複製についての権利制限は、裁判所が複製の主体である場合だけでなく、裁判手続の当事者が複製の主体となる場合についても認められると解するのが一般的見解であり、そして、この点は、裁判所に準じる特許審判手続の場合も同様であると解されていることが参考になるものと思います。
 先ほど小泉委員が言われた点に関しましては、現行の42条のただし書において、「ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」という安全弁的な例外規定が置かれているわけでありまして、これと同一かどうかは別として、このような安全弁的な規定を置くことにより、ご懸念のような点は解消し得るものと思います。
 今議論されている4つの点は、基本的にはいずれも特許制度における公益達成のために非常に重要なものと言えるのでありまして、3点目についても、審査官からの書類提出の求めに応ずるための非特許文献の出願人による複製ということなので、むしろ審査の迅速・的確な進行に協力するためのものであります。それから、4点目の特許庁への先行技術文献の提出のための利害関係人による複製というのも、大前提として、もちろん無効原因を含んだ特許の付与を許してはいけないという非常に強い公益的な要請があり、そのために利害関係人から、このような情報提供を受けるということは我が国の特許制度において非常に重要な役割を果たしております。もともと特許というのは法律の定める特許要件を満たしたものであるがゆえに独占権たる特許権を付与してはならないという非常に強い公益性がありますので、4点目のものも、これに資するものだという重要な観点は忘れてはいけないのではないかと思います。したがって、4点とも権利制限を認めるべきだと思います。

○山本委員 私はこの4つの点については必要性がある。公益上の必要性から言っても、これは権利制限が認められるべきであると思います。
 次に、現行法の42条のところで、立法または行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合にはという規定に入るのかという点については、内部資料として必要かというところに入らないのでないか。
 あくまでも行政目的であることによって、公益性があるので、内部資料であるかどうかはあまり重要ではないのでないかと思います。
 従いまして、ここのところは行政の目的のために必要と認められるためにはというふうに、内部資料としてを消せば、全然問題がない、そういう問題のように思います。
 この4つの点について必要性がある、公益性があるというのはすでに議論されておりますので、そのとおりだと思います。
 基本的にこの場合については、あるいは個別に許諾を得るという手段も一部ではあり得るかもしれませんが、しかし基本的にはこの目的において自分の鑑賞目的ではない。一方で、行政目的であって、それとその市場規模としての相対での許諾を受けるというのは基本的に両立しえない問題、市場の失敗がある場面だと思いますので、許諾を得る手段があるからというのは、あまり重視性はないのではないかと思っています。

○中山主査 内部要件を切ってしまうと。行政目的のために外部に配るということを言うわけですか。まる山本委員 それが行政目的であれば。

○前田委員 それが行政目的になるのかどうかというところが、まず先生のおっしゃる問題なのではないかと思います。

○中山主査 行政目的のために配る文書は外部に知らせるためにいっぱいあると思いますが。

○前田委員 今の中山先生のおっしゃった外部に配付する場合については、現行法でもただし書きが働きますので、著作権が制限される場合に当たらないことも多いのではないかという気がします。
 4つの例外について、私は、お話がありました内部要件を削るかどうかは別として、4つとも認めていいのではないかと思います。
 その必要性については皆さんから御説明がありましたし、それから山本委員から鑑賞目的でないというお話がありまして、もともと技術文献は表現に着目してそれを楽しむために利用されるのではなくて、技術的な性格が強い事実的著作物であり、そこに書かれている情報に価値があるわけでして、その情報の面に即しての利用になりましょうから、こういう形での利用は広く認められてもいいのではないかと思います。
 もう一つ、特許の有効、無効の判断をするとき、進歩性があるかどうかを判断するときに必要不可欠な文献があったとき、それがたまたま許諾が得られないために提出されないということになると、問題でありますし、そういう意味で代替性がない場合がありますので、やはり個別の許諾ではなくて、何らかの方法を考えなければならないだろうと思います。
 その次に、山本先生のように内部要件を削除するかどうかというと、そこまで思いきるのかはどうかなと。行政の中には、いわゆる行政サービス、公権力の直接的な行使とは違う行政サービス的なものがいろいろあるわけで、行政サービスの目的での外部に対する配付も含めて著作物の自由利用を広く認めるのもちょっとどうか。
 むしろ審査手続のためとか、さっき薬事のほうでお話がありました、法令に基づき報告義務が課されていて、それに応じなければいけない場合に例外を認めるというように、もう少し限定したほうがいいのではないかと思います。

○石井委員 私は著作権については全く詳しくないので、今までの議論とは違う、単純に事実関係で質問したいのですが、特許庁のほうで特許の審査なり審判なりをなさった結果をどの程度ウェブなり何なりで公開なさっているのか。あるいはこれからどうなさるおつもりか。
 そのときにこういう集めた論文は公開の対象になさるのか。あるいはなさっているのか。
 内部でやる場合と、その事後的であれ、それを外に向かって公開するのでは性質が違うのではないか。私は分かりませんが、その辺を教えていただきたい。

○中山主査 特許庁からお願いします。

○岡田調整課課長補佐 今の御質問は出願書類をオンライン経由で御覧になれるかどうかという趣旨かと思います。非特許文献については紙で入手した後、電子化して包袋書類に入れてはございませんので、閲覧するということはできません。閲覧は特許庁にお越しいただければ、電子的な書類は閲覧することはできます。
 また、パソコン出願ソフトというもので遠隔地から閲覧することも可能でございます。
 引用文献が包袋書類となった場合に閲覧をどうするかということでございますが、この点についてはアメリカの例がございます。アメリカの方では包袋書類として、使った証拠物件すべて電子化して一件書類として保存しております。その書類はインターネットでだれでも閲覧することができますが、著作権があるものについては、それだけは遠隔地からは見られないよう、マスクをかけてございます。
 しかし、米国の特許庁に来た場合には、そこでは電子的に見せるということになっておりますので、我々としましてもこのような制度改正ができた暁にはそういう例を参考にして対応したいと考えております。

○土肥委員 私もこの中で4つの規制については制限を設けるべきではないかと思っております。認めるにいたしましても、いわゆる3ステップテスト、これは当然にございますので、これからの縛りは常にあるということでございます。それを前提にして、これら4つの制限を認めるべきではないかということでございます。
 先ほど、山地委員もおっしゃいましたし、大渕委員もおっしゃいましたが、それぞれ制限については目的、利益というのは当然あるだろうと思います。特許庁の特許事務処理上の利益、それに伴う出願人の利益。それから、第4のところですが、これは異論はあるかもしれませんが、これはかなり重要な利益でありまして、先ほどのお二人がおっしゃっておられるように、この利害関係人による情報提供をスムーズに行わせる、これがなされませんと、御指摘のようにもしかしたら瑕疵のあるようなものが特許になってしまう。そういうことは非常に重要な問題でございますので、全体を比較すると決して劣らないような重要な制度でございますので、これについてもスムーズに進める、そういうやり方がベストであろうと考えております。以上です。

○中山主査 ありがとうございます。他に。

○苗村委員 私は先ほど申しましたように、特許行政、特に審査の高速化のために必要なことについて著作者が排他的独占権を主張することによって、支障を来すということは避けるべきだと思います。
 しかし、審査官による複製ではなくて、外部の人、特に利害関係人による複製の場合、あるいは出願人による複製の場合、今比較的大きな企業等の場合には複写権センター等を通して、有償でとっているわけですが、それをあえてここで無償にすることについては関係者の間からかなり不満が出るのではないかと心配しております。
 といいますのは、ここで対象となるのは基本的には技術的な文献ですので、当然のことながら一般的な小説その他の作品が対象になるわけではない。科学技術、医学等の分野の学会がかかわるようなものが多いわけです。こういったところはある種の非営利のビジネスモデルがすでに確立されていて、それで有償で複製を自由にとる。だれもノーとは言わないということで進んでいるわけですが、あえてここで無償にするということについては、非常に難しいことになる。
 例えば比較的大きな企業で社内にある図書館にある学会誌等のコピーを通常ある料金で認める場合に、特許庁に提出する場合に限って無償であるということを規則として決めるのはあまりにも不自然な気がします。特許物については基本的に支障がないわけで、ただ例外的に権利者が特定の企業または個人であり、そこが複製を認めない場合に例外的にそれを認めるというのはいいと思います。これは先ほど土肥委員がおっしゃった3ステップテストの中の一つの例外的な場合に限るに当たるのではないかと思います。

○山本委員 まず今の御意見に対してですが、複写権センターにライセンスを出しているところがすべてではないというところが一番大事なところです。
 複写権センターを通じて複写できるものについては、何に使うかは自由なわけです。つまり自分で本を買わずに自分の読みたいところだけコピーして、それを読むという使い方もできます。
 しかし、ここでの今の4ページ目の一番最後は目的が違います。本来無効である特許を特許にならないようにするという目的で、自分が文献を楽しむという目的ではないです。
 本来、特許になるべきではない特許が生まれて、市場を独占してしまうことによってどれだけの公益が失われるのか。そのことを考えれば、わずかにコピー代に数円払うのを惜しむ人がもしいたとして、そのことのために無駄な公益の被害が出るというバランスを考えれば、複写権センターを利用せずともただで使う、こういう目的のためには第三者が、利害関係人が特許庁に対して文献を出せるとしておくことの重要性は極めて大きいと私は思います。

○中山主査 今の契約は複写枚数ごとにできるのですが、通常はそんなことはやっていないので、一括してコピーの機会等を基準に、一括した契約でやっているわけです。仮にここでこの例外規定を入れると、今までの契約より50円下げるとか、その分だけ返す。こういう話になるのでしょうか。

○苗村委員 先ほど私が御質問されたことと関連しますが、個々のコピーを何のためにつくっているかということを統計をとれば、そういう議論になると思いますが、ある意味では今でも複写権センターが対象としている文献については問題なく動いているだろう。50円が払えないからあえて特許庁に送らないということはないと思います。もしあれば単に文献の番号だけを追記すればいいだけで、実質的に害がないのではないか。
 問題は支払いができないような、例えば複写権センターに加入していないとか、その他の理由で支払いができないものが問題になると思う。その金についてこのような形で権利制限の対象にするのがよろしいと思います。
 私が心配しているのは、ある分野の学会の論文で、その論文を書いている人たちは特許に出願せずにどんどん情報を公開している。それがたくさんの人に読まれている。しかし、それはたくさんの特許出願に対して先行技術文献として使われるので、いろいろなところでコピーされて特許庁に送ってこられるということが起きたら、少なくともその学会の論文を書いている人、あるいは学会にとってはネガティブインセンティブになるわけで、そういうことを公開することが役には立つけれども、少なくとも例えば複写権センターを通して入ってくるお金があなたのほうの学会誌はほとんどこういう目的に使われているから、配分が少ないよという議論をかけられることは非常に不都合であると思います。
 ですから、量が少ないからいいのですが、この目的に合わせた複製に限って無償であるというのが私はあまり合理的でないという気がします。

○大渕委員 今の点は先ほど山本委員が言われたとおりでありまして、最後はバランスの問題に帰着するものだと思います。特許法を含めた知財法全体、あるいは、法体系全体の観点から見ると、無効事由を含むような特許が付与されることによる公益的なダメージは非常に大きいので、その点からして、先ほどから論じられている4番目についても権利制限を認めるべきものと思います。
 今御懸念されているような点は、先ほども申し上げたとおり、現行法でも42条のただし書において、一定の場合にはこの限りではないということで安全弁が付されていますが、今回も、これと同一かどうかは別として、このただし書のような安全弁的な規定を置くことにより御懸念の点は解消し得るものと思います。
 現行法上、学術書を含めて、裁判手続や特許審判手続のために必要と認められる複製として権利制限の対象となり得るわけですが、これとの比較からして、裁判や審判であれば、権利制限の対象となり得るわけですが、これとの比較からして、裁判や審判であれば、権利制限が肯定されるが、審査となると、一律に権利制限が認められなくなるということが、立法政策上、合理性を有するのかという点については疑問があるように思われます。

○山地委員 学会との関係ですが、本件に関して言うと学会誌、論文全体をコピーするのではないのです。先行技術として関連ある部分だけをコピーします。ですから、先ほどの特許庁の説明にもありましたが、5ページ程度です。ですから、学会の場合、多くの場合、学会の運営費を稼ぐために学会誌を有料で売ったりしますが、その売れ行きにそれほど影響があるとは考えられない。ですから、そこまで御心配になる必要はないのではないかと思います。
 もう一つは、中村先生もおっしゃられた点ですが、複写権センターはほとんどの企業は包括契約になっていますので、これが権利制限になったからといって何ら不合理ということはないと思います。
 仮に本件を有償化しますと、対象論文についてはむしろ二重払いになる懸念が出てくるのではないかと思います。
 さらに言うと、一般論として権利制限をした場合、報酬請求権の考えを取り入れるべきだという議論が一般論としてあるのは承知しておりますが、本件については言うと部数が多くないので、徴集コストのほうがかかって、全く割が合わないのではないか。
 つまり10円を取るために100円、1,000円ぐらいになる。そういうコストがかかってしまうことになると思うので、その点は問題だと思います。

○末吉委員 私もこの4点はいずれも権利制限に賛成です。1点、特許庁の方に質問ですが、今回プレゼンテーションは特許を中心にやっていただきましたが、4ページを見ると意匠、商標、実用新案、及び国際出願もほぼ同様と書いてあります。例えば商標なども同じような状況であるという認識でよろしいのでしょうか。

○新井技術調査課長 先ほどは時間の関係で割愛しましたが、御指摘のとおり商標等も同じでございます。先ほど非特許文献の請求が2万ぐらい年間あるということで御紹介しましたが、我々が調べている限りは確かに特許が大半ですが、商標については年間数十件、意匠については年間数百件の規模ということで、それぞれそれなりにあります。
 そういう意味では詳しく御説明をしなかったのですが、考え方としては商標等についても特許と同じと御理解していただければよろしいかと思います。

○中山主査 それでは引き続きまして薬事行政に係る権利制限についての御意見を頂戴したいと思います。

○村上委員 反対側の利害関係者、例えば学会誌を出す学会とか、もしくは医学関係の図書を出す専門の出版社が反対するならば利害関係者だと思いますが、大変だという声が上がっているのか上がっていないのか。権利制限の目的ははっきりしているわけで、逆に反対サイドからの意見は何かありますか。

○渡邊安全対策課長補佐 製薬企業に聞きますと、論文を書いて出した大学の先生、研究者の方々からということは私どもも聞いていないのですが、著作者から著作権の管理を委託された出版社や管理団体等からはお金を払ってくださいというかなり高額な請求の要求はあることは製薬企業から聞いております。
 研究者の方々から直接ということは聞いておりません。

○村上委員 というのは、研究者の人が直接権利を持っていないで、それを管理する、例えば医学系の医学の専門出版社とか、その発表する学会から、それはあまり問題ないという感じなのか。何かの問題があるというのかという質問です。

○渡邊安全対策課長補佐 製薬企業から著作権の管理について問題ということを聞いているのは、日本というよりは外資系の著作権の管理団体、管理会社が著作権料の支払いについて話し合いがうまくいっていない状況にあるということは聞いています。

○茶園委員 権利自体が働いて許諾を得る必要があるか否かという問題と、許諾を得なくていいとして、有償するか無償にするかという問題の二つの問題に分けて考えてみたいと思います。
 許諾を受けなければいけないということになると、先ほどの特許庁のお話のように入手困難な場合にどうするか、許諾が拒否された場合にどうするか、許諾を得るにしても時間がかかり迅速な対応ができないことに対してどうするか、という問題があると思います。
 検討の対象として3つの行為が挙げられていますが、上の2つについては許諾を得なくてもよいと考えていいのではないか。承認、再審査、再評価制度、副作用感染症報告制度に関しては、複製がされる量もかなり少ないでしょうし、許諾のコストという点も考えますと、無償ということにしても著作権者の利益を害さないのではないかと思います。
 これに対して、3番目の製造業者等による医療関係者への適正使用のための情報提供につきましては、これも許諾を得なくてもよいと認めてもよろしいのではないかと思いますが、一方これについては複製の量は大きくなるように思いますし、文献が掲載されている雑誌は医療関係者に配付されるものでしょうから、無償にするのはどうかというように思います。
 ですから、私の意見は3つとも権利制限を認めてもよいのではないかと思いますが、一番最後の3点目については無償にするか有償にするかを検討する必要があるのではないかと思います。

○山地委員 分けて議論をいたしますと、私も許諾権については権利制限するべきだと思います。
 有償にするかどうかですが、2点考えたいと思います。まず、一つはこれは著作権の問題ですからだれに払うか。著作権者、権利者に払うのか。あとは発行者。版面権がない状態でどうするか。取ったお金をだれに払うかという問題があると思います。
 まず著作権者については考えますと、薬の問題もそうですが、技術者、研究者が技術論文として書くのがほとんどですので、その論文を売ること自体をビジネスにしているケースはほとんどないと思います。しかも、ほとんどの場合、職務著作となっていて、著作権は企業に帰属している場合がほとんどではないかと思います。
 企業も薬のことをビジネスにはしているでしょうが、論文、本が売れて著作権料が入ってということを期待していることはほとんどないのではないか。ですから、研究者側から大きな要求はないのではないか。それはお互い様ではないかと思います。
 多くの製薬企業があって、それらの会社の社員が書いた論文を別の会社が利用する。それはお互い様という感じになるかと思います。
 次に問題になりそうなのは発行者、本を売っているところから本が売れなくなるから困るということがあるかもしれないと思いますが、それは著作権法ではどういうふうに考えるのか。現状では日本では版面権はまだ認められていない、何に基づいて発行者にお金を払うのかという理論づけは必要になるのではないかと思います。

○苗村委員 今の最後の点、二重払いの問題ですが、私の理解はむしろ逆で、これを無償とすることによって一括契約の中から理論的には排除しなければならない。逆に、有償にしておけば一括契約の中でカバーできますから、別途徴収する必要がないというのでより合理性があるように思います。
 先ほどの山地委員の御発言に関してコメントしますが、私は医薬業界については知識がないのですが、一般的にSTMと呼ばれる科学技術医薬関係の学術出版社、学会等はその論文を書く人の数に対して読者の数がはるかに多い。しかも、論文を書いた人に対して著作権料などは払われないで、論文を書いた人はそれを無料で広く知らせることにより、学問的な貢献をするということで動いています。問題は学会の方や学術出版社が著作権収入によってビジネスが非営利であるにせよ、そのビジネスに対して特定の目的の場合は無償でコピーできるというのを新たに導入することに危険を感じています。
 そういう分野の学術出版あるいは学会というのが今非常に厳しい環境になっています。そうでなくてもこの後続けていられるのであろうかという状況になっているわけです。かなりの分野、特に日本語の学術論文が果たして継続して出版できるか。そういうかなり際どいところに立っているところで、あえてこれから特定の趣旨のためには無料でコピーができるというのは新たに導入する必要はないのではないか。
 医薬行政のためにぜひともコピーが必要だ。しかし、その権利者がノーと言っている。その場合にあくまでもそれをコピーして、相場に応じた権利料を支払うことを複写権センターの延長で実施ができれば一番いいのではないかと思います。以上です。

○山地委員 複写権センターについて考えを申します。現在の複写権センターの料金の決め方は複数あります。選択できるようになっていますが、個別に指定するケースを選択した場合は、本件のように権利制限があるものについては払わないということになる。それは構わないと思います。それで解決します。矛盾はない。
 一方、包括的なケースがほとんどですが、従業員の数、保有している複写機の台数を関数にして決めるやり方があります。それについてはこの種の権利制限が抜けたからといって、見直しはされないと思います。でも、見直しがされないからといって、大きな論理矛盾が一気に表面化するわけではないでしょう。理屈の上では権利制限がたくさん出てきた場合には従来に比べて料率をコンマ何パーセントか下げるべきではないかという議論はあるかもしれませんが、その程度の問題点はあらゆる分野に、著作権法のほかの分野にもたくさんあるわけですし、それはある程度はやむを得ないことではないか。許容される範囲内ではないかと思います。

○前田委員 茶園委員から御提案がありましたように、この3つのまるのうち、上の2つと一番下のまるは多少違うのではないか。上の2つについては、これは法令に基づく審査、報告等のためのものであります。伺いますと迅速性が要求される。薬事行政を円滑に行うために必要性が非常に強いと思われる。提出先が官公庁ということで、提出先が限られていて、おそらく部数もさほど多くならないでしょうから、権利制限規定を設けても、部数が多くならないというのであれば無償でいいのではないかという気がいたします。
 一番下のまるはニュアンスが違って、提出先が広く医療関係者一般ということですし、作成部数が多くなり得ます。また、論文を丸ごとコピーして渡すことが行われるという先ほどのお話がございました。これは無料で自由というわけにはいかないのではないか。
 私が聞いたところによりますと、医学文献に関しては論文単位で購入できるということも多くなっている。論文単位で購入ができて、かつリーズナブルな価格で購入できるという仕組みないしは論文単位で的確な流通を行っているような業者が存在しているのであれば、3番目のまるについては権利制限規定を直ちに置く必要もないのではないかと思います。

○潮見委員 水をかけるようで申し訳ないのですが、今の話を聞いていますと、例えば先ほどの資料3もそうです、厚労省さんのほうもそうですが、これは行政目的のために文書を出す、それが内部資料で使われる、今、前田先生はおっしゃられた。そういう形で次々にやっていきますと、今の法律とどこが違うのか。特にあるヒアリングの主催者がいらっしゃって、そこで特に行政目的ということ、公益、公共性を言われる。そうしたら、その辺に説得力があればこういうことができる。
 現在の条件も行政目的を含めて、内部資料についてはこれはやれます。ただし書きが、先ほどのお話ではありませんが、部数が大きくなって、著作権者に不当な利益が生じるということであれば、そうしたらチェックができる、こういうシステムになっている。
 つまり現在の変更後のこちらの似たようなものをつくるということをおやりになろうとしているのか。それともこの条文の中で今日出ているような問題が到底処理できないから何とかしようとしているのか。それが見えにくくなってきているのではないかという印象があります。
 どっちの側のルールができればいいということなら、それはそれで構わないと思いますが、法制問題をどうするという点ではどっちに着地点を求めようとしているのかということを少しはっきりさせた方がいいのではないかという印象を持っています。

○中山主査 今の条文では読めない、あるいはグレーなところが問題になると思います。そうすると、果たしてこれをやっていいかどうか迷って、躊躇して人の生命、身体に影響を与える可能性がある。そういう話ではないか。だから、文書を出していたかもしれないけとれども、はっきりと規定してほしいという、そういう意向ではないか。

○石井委員 条文をいじるのかどうか、その辺がわからなかったので質問しました。
 もう一つは、全然違うことですが、さっきから問題になっている複写権センター、あそこで処理している対象の著作物は外国の出版物についてもカバーされていると理解してよろしいのでしょうか。例えば『ネイチャー』とか『サイエンス』。あるいはヨーロッパなどは今、大同団結して学会で非常に優秀な雑誌をつくるようになっています。しかも理科系においては著作権は譲渡するか、あるいは著作権の管理を委託するように契約が付随して行われているわけです。研究者自身ではなくて、そっちのほう、出版元が問題のようです。複写権センターの仕組みがあるからと言って、こうした外国の場合には一体どうなっているのか。非常に単純な質問です申し訳ないですが、質問した次第です。

○吉川著作権課長 私は十分な知識はないのですが、外国の権利者については、実際的にはあったとしても少ないのではないかと認識しております。

○中山主査 外国の集中処理機関と複写権センターと契約をしていればとれるということではないでしょうか。

○山地委員 私の知る限りでは外国は入っていないと記憶しております。アメリカについてはCCCが問題としていまして、話し合いをしています、2〜3年前に。日本の複写権センターとの話し合いがうまく成立しませんで決裂し、たしか日本は学術著作権協会がCCCの窓口になって、学術著作権協会がお金を集めてアメリカのCCCに払う、そういう仕組みになったと理解しています。
 ただ、CCCもアメリカの全著作物を扱っているわけではない。CCCが扱っているドキュメント、発行者は以下のとおりですという資料がありまして、それを見るとCCCの対象になっているかどうかわかる。そういう仕組みになっています。

○山中著作権課長補佐 課長補佐の山中と申します。著作権等管理事業法ができて、若干状況が変わってしまった後のところははっきりと把握していないのですが、複写権センターは、ドイツの管理団体とは相互管理契約を結んでいたのではないかと思います。アメリカについては山地委員がおっしゃったように交渉中でしたが、管理事業法ができて、新たな団体もできてきたところで、アメリカの管理団体が複写権センターではなく、新しい団体と交渉して、包括というよりは個別に許諾するような形での対応ができるような話になっていたと、確実ではないのですが、そんな話を聞いたことがございます。
 それから、複写権センターは基本的な包括許諾につきましては企業内での利用を前提としてやっておりまして、企業から外に出す複写については包括許諾契約とは別の契約をしているのではないかと思います。
 この辺は、確認しないと不確かなことかもしれませんが、管理事業法ができる前の状況ですが、一応お話をさせていただきました。

○中山主査 私も設立段階にしか関与していないもので、これは事務局の方で調べてください。
 石井先生がおっしゃるように外国の文献が多いと思うので、外国との関係は大事だと思います。

○石井委員 権利制限を設けると決めたときに、外国の利害関係者との間でどういう問題が起きるのか。条約が何かあるのでしょうか。

○中山主査 それは日本の法律ですので、日本国内の問題になります。外国は文句は言うかもしれませんが、日本でつくってしまえば、法的には大丈夫ということになります。

○石井委員 条約の枠組みがどういうふうになっているか、その辺が全然わからないものだから教えていただきたい。

○中山主査 権利者の利益を不当に害するようなものはだめですが、例外的に権利制限はできます。少数部数で、しかも生命や身体に関係しているということならば、多分条約には触れないのではないかと思います。
 事実上、けしからんと文句を言っていることはあり得ると思いますが。

○森田委員 ここでの議論のあり方ですが、どういう方向に進んでいくかについてお伺いしたいところがあります。
 先ほど御意見がありましたが、最終的にどういう形で今日の話を統一するかというときのあり方として、裁判手続きの中に特許審判手続も含むというのを入れるかどうかという議論がございます。薬事行政についての2とか3とか入れるとか、そういう方向でどういう条文を置くかという議論をしていくのか。
 それとももう少し広い形で考えていくのか。薬事行政の製品の安全に関する情報で、情報を共有するための情報提供の努力義務を担保するためとなりますと、薬事に限らず類するものはありそうな気がします。
 そうしますと、なぜそうなったのかという話になってきますので、もう少し広く受け皿を考えるべき行き方もありますから、そのどちらをここで目指すのかをどこかの段階で明確にすると、そのための議論は豊かになると思います。
 もう少し広い受け皿を考える場合、42条で先ほどから出ていますようにここに2つのタイプのものがあって、裁判手続のためにという方は運営主体が公的な主体ですが、一方は行政が主体と限定があって、性質の違う2つのものがあって、どういう形でこれは広くなるか。そもそも裁判手続の場合はなぜ良かったのかということと、ここで議論しているものが同じものなのかどうか。
 それから、気になりますのは、裁判訴訟手続というのは、運営主体が民間ですが裁判手続に準ずる公的なものとして、特に認証を受けたような場合については近づけていこうという政府の基本方針があると思います。それを広く考えると、運営主体の問題なのか、それとも公益目的という公益性の問題なのかという点をはっきりさせる必要があると思いますので、この辺りは前者の特許の場合、薬事行政に関する特則を設けるのであれば、そういう議論は必要ないかと思いますが、もう少し広く受けてということになりますと、受け皿はさらに政令、こういう場合は当たるとか当たらないとか、また、報酬請求権の形にするかどうかという点も広く受けるのではあれば、2つ用意しておいて、これはどちらかというような調整の仕方もあり得ると思いますが、ここでの方向性はどちらに向かっているのかを知りたいというのが趣旨であります。

○中山主査 最終的にはどういう条文になるかは非常に難しいと思います。それは今すぐ着地点は見えてこないのですが、とりあえずは皆様がどういう感触をお持ちかを聞かないと何も始まりせんので、今日は皆さんの御意見を伺うことを考えています。
 なぜ特許と薬なのかと言われましても、これは何かほかにもありそうですが、今のところそういう要望が全然ないというだけで、もし必要があれば、ADRという話を伺いましてなるほどと思ったんですが、もしそういう御意見があれば、それは伺って、最終的には条文の作成のために役立てたいと思います。
 次の図書館関係の権利制限についての御意見をいただきたいと思います。

○里中委員 この場にいるのが著作者としているつもりはないので、あまり著作者としての意見は申し上げたくないと思っていたのですが、どうしても著作者でありますので、確かめたいなと思うところがあります。
 先ほど委員の質問に対して、著作者との話し合いはついている部分もあるというお答えがありましたが、いだきました書類の最終ページ、10ページですが、図書館同士が持っているものを相互貸借し、また図書館でこれまで図書物を渡していたものをインターネットを利用して渡すのだという、口頭ではそういったおっしゃったように聞こえたのですが、10ページ目を見ますとやはり利用者が手元の受信機でコピーをプリントアウトすると書いてあります。ですから、どっちのつもりかをもう一度お伺いしたい。
 それと、もう1点、図書館に関しましては著作者たちちから見ますと、かなり著作者側が著作権を行使しないままにしてきたという経緯があります。9ページ目の2、最後の3行、なお、著作権者に及ぼす経済的利益の損失は、複写物を郵送、つまりこれまでは郵送していたのだから、それと同じことなので、経済的な損失は与えないとおっしゃっていますが、すでに図書館で定価で本を仕入れて、ただで見せて、著作権者に何の見返りもないというところで大変経済的損失を被っておりますので、これまでただだったものをこれからもただで配って大して変わりはないではないかとおっしゃっているように聞こえます。下品な討論で申し訳ございませんが、いい言葉が見つかりませんので。
 ですから、著作者としましては、これまでただだったんだけれども、どうか頼むから貸与権なり展示権なりを行使させていただきたいと申し上げてきたわけですが、そういう声が全然反映されないどころか、どんどん権利が損なわれていくという気がします。ひがみかもしれませんが、そういうふうに感じます。
 障害者の方とかいろいろ都合のある方が文化的な権利を主張でき、著作権者ができる限り自分の権利を主張せずに生きる。これは国民の使命だと思っております。ですから、他の項目、不自由なお体を抱えた方がより良い環境で生活するするためにということにつきましては、国民が納得すると思いますが、別立てでFとして著作物を公衆送信することについてとなっているのが、図書館のサービスのあり方が近代的になるのはいいのですが、積み残して解決して来なかった問題についてもう一度考えて話し合った上で、こういう問題を出していただきたいなと思うのが著作者との気持ちです。
 本当はこういうことをこの場で申し述べる筋ではないとわかっておりますが、他で申し上げる時間がないかもしれませんのでお話しさせていただきました。
 ですから、本来でしたら、全国の公共の図書館が持っていらっしゃる情報をお互いに共有することはとても便利なことだと思います。便利なことであることであると同時に著作者にとっては恐いことで、極端に申しますと、たった1冊の本がどこかの図書館にあると、そこからインターネットを経由して、全国のだれもが見られるようになるはずです。
 SF的な言い方かもしれせんが、本は1冊しか必要なくなる。そういう感じにならないとも限りません。これまで著作物のコピーが必要なのは学術書とかそういうものであったとおっしゃいますが、学術書とかの発行部数が少なくて、本当に大変な思いをして書いていらっしゃる方には、もともと発行部数が少ないからいいじゃないかではなくて、文化を守る、そういう著作者を応援するという意味でも、もともとそれほど売れていないからいいというのはやはり文化国家ではないのではないかと思います。
 こちらでお書きになっています9ページの2ですが、2行目、情報から新たな知的生産物を生むことを促進することにもつながる。大変結構です。知的環境というのは大変大事ですが、それを生み出す側への配慮、それを伺いたいなと思いました。すみません、長くなりまして。とりあえず最初の質問、10ページ目に書かれていることとさっきおっしゃっていることと少し違うのではないか。利用者の手元の受信機等でプリントアウトと書かれています。さっきの側のお話と違いの説明を伺いたいと思います。

○常世田著作権分科会委員 1つ目の御質問についてです。これは資料にも書いてありますが、1ページにも載っていますが、作花先生の『詳説著作権法 第3版』というところからの引用であります。これは直接利用者にファクスで送ってもいいではないかという意見まで、そこまでの意見が専門家の間でもありますという、あくまでも参考の視点を文献としてここに載せさせていただいているわけでありまして、私たちが必要としているのはそこまでいかない、ずっと手前の図書館同士でのファクス、通信ということを考えておりますので、研究者の中では個人のパソコンにおいても実質は変わらないという意見、そこまであるよという趣旨で書いております。
 2つ目の意見でございますが、これは里中委員、大変貴重な御意見ですが、一つはまず本の貸し借り、あるいは図書館でのコピーについて、これは実際に調査しなければいけないことを我々考えておりますが、現場にいて実感するものでございますが、基本的に入手困難な資料が圧倒的に多いということがございます。特に最近の出版事情では専門書などを含めて、数年たつと品切れ、要するに発注しますと事故伝という形、要するに本はありませんという形で戻ってきてしまう。そういうものがかなりの量を占めることを御理解いただきたいと思います。
 それから、これはあくまでも一般のコピーですので、著作物の一部ということでございまして、小説の全ページをコピーするということは全くございません。
 コピー代は当然受け取りますので、買った方が安くなります。
 私は今委員がおっしゃったことを、作家の方はこの日本では収入の面で必ずしも高額所得者である方が多いわけではないことは十分理解しております。これは例えば文藝家協会の委員をされておられる三田誠広さんと、一緒に今いろいろ御相談をしておりますが、もう少し大きな枠で、文化行政全体で創造的な活動をしている人たちをどうするかという国家的な問題であろうと私は思っております。図書館も優先的に予算が切られている状態です。里中さんは表現についておっしゃいましたが、品のない表現を許していただけるのであれば、まさに貧者同士が喧嘩をしているという状態になっております。
 お金のあるところからきちんと取るということがまず前提になって、その次に来る問題であると私は思っております。
 先ほど申しましたように、特に欧米の先進国では、例えばアメリカの図書館では有料のデータベースのデータを図書館で無料で入手して、それをメールで自宅のパソコンまで送ってしまうことが1万人、2万人という小さな人口の町の図書館でさえ可能になっています。
 図書館を、情報を使ってその国を強くしていくという、情報政策の中で位置づけて、非常に強力に進められているところがございますので、政策的なもので考えたときに日本はそういう面で韓国、中国と比べても遅れをとりつつあると言えるのではないか。
 ですから、純粋に著作権の問題で討議することも重要だと思いますが、情報を活用して、国民一人ひとりがその能力を発揮して日本の国全体の民度を高めて、日本という国を強くしていくところも一つあるだろうと考えております。
 もう一つは、図書館は権利者の権利を確かに制限をさせていただいている。いただいているという言い方はおかしいですが、図書館が販売を促進するという機能もあることは実際に証明されているところがあります。図書館で見た本を買う、あるいは、図書館に行って本に親しむことによって、印刷物についての親和性を固めていく。これは図書館が活発に活動して、大変多くの本を貸し出している自治体の本屋さんは潰れているかというと、決してそうではないということでも証明されると言われています。

○中山主査 ただいまの里中委員と常世田さんのお話は、一方では権利者、他方では図書館のあり方、特に電子図書館のあり方という非常に大きな問題を含んでおりますので、貴重な御意見として頂戴したいと思います。
 今日は5時までに終わらなければいけないところ、司会の不手際で申し訳ないですが、障害者関係に係る権利制限についても御意見を頂戴したいと思います。

○苗村委員 障害者関係については特に意見はございませんが、図書館の先ほど里中委員から御指摘のあった最後のところについては、私はかなり懸念を持っておりますので、簡単に申します。
 先ほども大学図書館関係の中で権利者との間で合意があったことは私も内々伺っておりますが、限られた範囲、学会だろうと思います。そうでないかもしれませんが。いずれにしても逆に強く懸念を持っているところもあります。
 しかし、大学図書館ですが、それを公共図書館に広げようという話ですので、そうしますといろいろな問題が発生する可能性があるように思います。まだFについては必要性と、それによって生じる影響については十分な検討がされていないような気がいたしますので、少なくとも大学図書館と学術著作権協会との間の状況、実際にどういう運用がされるかを見た上で判断していくほうが現実的ではないかと思います。以上です。

○中山主査 ありがとうございます。
 よろしゅうございましょうか。議題が残っておりまして、先を急ぎたいのですが。
 ちょっと時間を延長させていただきます。次に各ワーキングチームからの検討状況を伺いたいと思います。
 各ワーキングチームの第6回までに検討すべき事項につきまして、各座長より簡潔に御報告を頂戴したいと思います。
 それでは茶園座長よりお願いしたいと思います。

○茶園委員 デジタル対応ワーキングチームについて御報告いたします。このワーキングチームのメンバーは資料の2枚目にありますように、児玉先生、島並先生、末吉先生、光主先生、山地先生です。そして、末吉先生に座長代理をお願いしてございます。
 開催状況については1枚目に戻っていただきますと、そこにあるように、3月17日に第1回を開催しました。今後、約1か月弱に1回程度のペースで討論し、その間、メンバーでまとめるということにしております。
 この第1回の会合におきまして、第6回までに検討するべき事項として、デジタル化時代に対応した権利制限の見直しと技術的保護手段の規定の見直しの2点を決めさせていただきました。
 このデジタル対応ワーキングチームのミッションはあともう1点、放送条約関係があったのですが、放送条約に関しましてはまだ流動的であるということがありまして、その一方でデジタル化時代に対応した権利制限の見直しと技術的保護手段の規定の見直しは極めて緊急性が高いだろうということで、この二つの項目を検討することに決定いたしました。以上です。

○中山主査 ありがとうございます。次に契約・利用ワーキングチームの土肥座長よりお願いいたします。

○土肥委員 契約・利用ワーキングチームについて報告申し上げます。委員は先ほどございましたように1枚めくっていただいて真ん中あたりにある7名でございます。
 第6回目までに検討する事項としては、契約規定全般の見直しとなっております。法制問題小委員会から検討課題としてまとめられている点はこの以外にライセンシーの保護と登録制度の見直しがあったわけでございますが、ライセンシーの保護については他の制度との整合性の問題もございますし、そういたしますと、これと密接につながる登録制度の見直し、これについてももう少し先で検討するほうがいいのではないか、こういうことです。その結果としてここにございますように、契約規定全般の見直しを短期的には検討していこう、こういうことでございます。
 すでに2回開いておりまして、次回におきましてはこの契約・規定全般の見直しということについての具体的な中身について報告できるのではないかと考えております。以上です。

○中山主査 ありがとうございました。最後に司法救済ワーキングチームの大渕座長よりお願いいたします。

○大渕委員 それでは、司法救済ワーキングチームついて御報告いたします。同じく資料5ですが、まずメンバーにつきましては、2枚目にありますように、山本弁護士、上野助教授及び横山助教授と私の総勢4名であり、ワーキングチームとしては一番小規模なものとなっています。
 弁護士の山本先生に座長代理をお願いしております。
 第6回までに検討すべき事項は、「間接侵害」という非常に複雑困難で、かつ、重要なテーマでありますが、司法救済ワーキングチームにはもう一つ検討課題として損害賠償があります。まず間接侵害の検討を先に始めるということでこの検討を開始しております。
 開催状況としては、第1回が2月28日の月曜日に開かれております。その後も1か月に1回程度の頻度で会合を行い、各会合の間はメール等でメンバー間の連絡をとっていくという形で検討を進めてまいりたいと思っております。以上です。

○中山主査 ありがとうございます。各ワーキングチームでは会合以外にも大変な宿題をお願いして、大変大きな作業をお願いしているわけでありますが、鋭意よろしくお願いいたします。
 時間の都合で最後大分端折ってしまって急いでしまいまして申し訳ございません。また議論する時間もあるかと思いますので、今日の会議はこれぐらいにさせていただきたいと思います。
 権利制限の見直しにつきましては先ほど申し上げましたけれども、次回の冒頭で残りの教育関係について御説明を伺った上で、次々回の第4回におきまして引き続きまとめての討議を行うということを予定しております。
 次回は私的録音録画補償金制度の見直しの議論の第1回目もを行っていただく予定でございます。
 最後に事務局から連絡がございましたらお願いいたします。

○山口著作権調査官 本日はお越しいただきました各説明者の方々を含めまして、長時間ありがとうございました。正式には、近日中にホームページに掲載いたしますが、事務的には現在のところ、4月28日木曜日の9時半から、昼食を用意しつつ13時まで。場所この経済産業省別館の11階にございます1111号室を予定しておりますのでよろしく御承知おきください。

○中山主査 今日は熱心な討議をありがとうございました。これをもちまして文化審議会著作分科会の第2回の法制問題小委員会を終わりにさせていただきたいと思います。
 本日はありがとうございました。


(文化庁長官官房著作権課)

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