回答

Q1.ユネスコ(UNESCO)とユニセフ(UNICEF)の違いは?

A1.ユネスコ(国際連合教育科学文化機関/UNESCO:United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization) は当ホームページでも紹介しているとおり、教育・科学・文化の分野での国際協力を進め、相互の理解を図り世界平和と人類の福祉の促進を目的とした国際機関です。1945年に設立のための憲章(ユネスコ憲章)を採択、1946年に設立された国際連合(国連/UN:United Nations)の中で独立した政府機関であり、国連(経済社会理事会が調整)と連携関係を持つことが求められています。(国際連合憲章第57条及び第63条、64条参照)
一方、ユニセフ(国際連合児童基金/UNICEF:United Nations Children's Fund)は、当初、第二次世界大戦で被災した欧州及び中国の子供の緊急支援(食料・医療・医薬品等の支援)を目的として1946年の第1回国連総会により設立された基金であり、これが1953年に、世界各地の子供たちの生存と健やかな発達を守るために、保健、衛星、水と衛生、教育などの支援活動を実施する機関として、国際連合総会の常設的下部機構として転じ、子どもの権利を守る恒久的活動を推進しています。
公益財団法人日本ユニセフ協会のホームページ(※公益財団法人日本ユニセフ協会ホームページへリンク))
ユネスコと同様、国連システム全体において独立した組織であり、独自の構成国、予算及び本部を持っている専門機関(Specialized Agencies)には以下のもの等があります。

○国際労働機関(ILO:International Labour Organization)
○国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations)
○世界保健機関(WHO:World Health Organization)
○世界銀行グループ(World Bank Group)
○国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)   等

  なお、国際連合全体の機構図については、国連広報センターのホームページ(PDFファイル)(※国連広報センターホームページへリンク)を御覧ください。

Q2.ユネスコ活動のためにお金を寄付したいのですが。

A2.日本ユネスコ国内委員会では、個人・企業の皆様からの金品については受け付けしておりません。
一方、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟(※公益社団法人日本ユネスコ協会連盟ホームページへリンク)及び公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(※公益財団法人ユネスコ・アジア文化センターホームページへリンク)では、皆様からの寄付金・募金を国内外のユネスコ活動のために活用させていただいておりますので、これらの法人まで御相談ください。(これらの法人に御寄付いただいた場合、「特定公益増進法人」への寄付金として、所得税の控除措置の対象となります。)
また、両法人では、法人の趣旨に賛同していただける方のために「会員(会費)制度」を設けております。会費として頂いたお金については、両法人が実施する事業に充てられます。会員には、それらの法人の活動等について紹介した隔月刊の機関誌等が特典として届けられます。
さらに、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟では、通常の募金のほか、未使用切手や未使用テレフォンカード、住所を間違える又は古くなって使えなくなった未使用の官製はがき(書き損じはがき)を回収して活動資金に充てていますので、詳しくは同法人のホームページでご確認ください。
なお、ユネスコ本部又は各地域事務所の活動費に充てることを目的として、大口(数万ドル規模以上)の資金を御提供いただける場合には、ユネスコ本部担当局と協議の上進めることとなりますので、事前に当国内委員会まで御一報いただければ幸いです。

Q3.ユネスコの職員として働きたいのですが。

A3. 当ホームページ内の「ユネスコ勤務を希望される方へ」の説明を御覧の上、ユネスコの空席ポスト等に応募される場合は、外務省国際機関人事センター(※外務省国際機関人事センターホームページへリンク)のホームページ等を御確認ください。

Q4.ユネスコ世界遺産について知りたいのですが。

A4.ユネスコ世界(自然/文化)遺産とは、1972年の第17回ユネスコ総会で採択(1975年発効)された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(Convention Concerning the Protection of the World Cultural and Natural Heritage)」の趣旨により、人類共通の財産である世界の(有形)文化及び自然遺産の保護・保存を目的として、その特異性が顕著であるもの、その形態の存続が難しくなっているもの等を「ユネスコ世界(文化/自然)遺産」としてリストに登録するものです。(とはいえ、登録されていない物件が「普遍的価値を有さない」というわけではありません。)そのうち、紛争・自然災害・開発・商業的密猟等によって重大な危機にさらされているものについては、併せて「危機にさらされている世界遺産リスト」に登録されます。
2018年7月現在、1092件の世界遺産(うち文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件)が登録されており、「危機遺産」リストには54件が登録されています。(我が国に存在する世界遺産については、本ホームページの「文化」のページを御覧ください。)

  世界遺産条約(「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」)では、文化遺産及び自然遺産を以下のとおり定義しており、本条約締結国は、これらに規定する文化及び自然の遺産で自国の領域内に存在するものを認定し、それが世界の遺産であること、並びにそれらを保護し、保存し、整備活用し及び来るべき世代へ伝承することを国際社会全体の義務として認識し、最善の努力をすることとされています。(同条約第1条、2条、4条、6条等参照) 

【文化遺産】

  • 記念工作物:記念的意義を有する彫刻及び絵画、考古学的物件又は構造物、銘文、洞窟住居並びにこれらの物件の集合体で、歴史上、美術上又は科学上顕著な普遍的価値を有するもの
  • 建造物群:独立した又は連続した建造物群で、その建築性、均質性又は風景内における位置から、歴史上、美術上又は科学上顕著な普遍的価値を有するもの
  • 遺跡:人工の所産又は人工と自然の結合の所産及び考古学的遺跡を含む区域で、歴史上、観賞上、民俗学上又は人類学上顕著な普遍的価値を有するもの

【自然遺産】

  • 無機的及び生物学的生成物又は生成物群からなる自然の記念物で、観賞上又は科学上顕著な普遍的価値を有するもの
  • 地質学的及び地文学的生成物並びに脅威にさらされている動物及び植物の種の生息地及び自生地でありかつ明確に限定された区域で、科学上又は保存上顕著な普遍的価値を有するもの
  • 自然地区又は明確に限定された自然の区域で、科学上、保存上若しくは自然の美観上顕著な普遍的価値を有するもの

※なお、我が国における世界遺産の詳細については、その遺産の存在する各地方公共団体等にお問い合わせいただくか、ユネスコ、文化庁及び公益社団法人日本ユネスコ協会連盟等のホームページ等を御覧ください。

我が国の世界遺産に対する行政的な御質問については、以下にお問い合わせください。

【文化遺産】文化庁文化財部記念物課
【自然遺産】環境省

Q5.ユネスコ世界遺産への登録の仕組みはどのようになっているのですか。

5.世界遺産リストへの登録は、その物件を保有する国が、世界遺産条約(「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」)の締結国になることが必要です。我が国は、1992年(平成4年)に同条約をユネスコと締結しています。世界遺産に登録されるまでには、以下の過程を経ることとなります。

1 国内で必要な手続

  1. 世界遺産条約を締結する。(我が国は1992年(平成4年)に締結済)
  2. 自国内の暫定リスト(Tentative List)を作成し、ユネスコ世界遺産センター(WHC:World Heritage Centre/世界遺産委員会(World Heritage Committee)の事務等を所轄する、ユネスコ文化セクター所轄の組織))に提出する。 なお、「暫定リスト」とは、世界遺産条約締結国が、自国の領域内に存在する文化及び自然の遺産を構成する物件で、顕著な普遍的価値を有すると認められるものについて、当該国がその目録(リスト)を作成し、世界遺産委員会に提出するもので、このリスト(及び関連資料等)の提出は同条約第11条に第1項により、同条約締結国に義務付けられている。この「暫定リスト」に記載する物件の選定については、専門家による検討委員会等により検討され、世界遺産条約関係省庁連絡会議(外務省、文化庁、環境省、林野庁、水産庁、国土交通省、宮内庁、内閣官房、経済産業省)を経て選定される。
  3. 「暫定リスト」に記載された物件の中から、(世界遺産として認定されるにふさわしい)条件が整ったものを、ユネスコ世界遺産センターに推薦する。 なお、この推薦は、各条約締結国が責任を持って行うものであり、上記の手続きを経ず、個人や団体、地方公共団体等が勝手に推薦することはできない。

※上記2.の「暫定リスト」に記載されていないものは、世界遺産委員会での審査の対象とはならない。(ただし、重大な危機にひんしており、その保護について緊急措置が必要な場合は、例外的な取扱いが行われる場合がある。)

2 ユネスコ世界遺産センターでの手続

  1. 各国政府からの推薦書(上記の3.により推薦されたもの)を受理する。
  2. 推薦された物件に関して、専門機関【文化遺産については国際記念物遺跡会議(ICOMOS:International Council on Monuments and Sites/在パリ(フランス))、自然遺産については国際自然保護連合(IUCN:The World Conservation Union/在グラン(Gland)(スイス))】に現地調査の実施を依頼する。

3 専門機関による調査

  1. 実地調査(上記の2.により世界遺産センターより依頼されたもの)を実施し、当該地の価値や保護・保存状態、今後の保護・保存管理計画等についての評価報告書を作成する。
  2. ユネスコ世界遺産センターに評価報告書を提出する。

4 世界遺産委員会での採択

専門機関による報告(上記の2.)に基づき、世界遺産委員会(年1回開催)で世界遺産リストへの登録の可否を決定する。
これによりリストへの登録が可決されたものが、新しく世界遺産リストに追加(世界遺産として認定)されることとなる。

Q6.ユネスコ無形文化遺産について教えてください。

A6.2003年の第32回ユネスコ総会において、「無形文化遺産の保護に関する条約(Convention for the Safeguarding of the Intangible Cultural Heritage)」が採択され、世界遺産条約が対象としてきた有形の文化遺産に加え、無形文化遺産についても国際的保護を推進する枠組みが整いました。条約の策定段階から積極的に関わってきた日本は、2004年にこの条約を締結しました(2018年7月現在の締約国は178か国)。
この条約においては、口承による伝統及び表現、芸能、社会的慣習、儀式及び祭礼行事、自然及び万物に関する知識及び慣習、伝統工芸技術といった無形文化遺産について、締約国が自国内で目録を作成し、保護措置をとること、また、国際的な保護として、「人類の無形文化遺産代表的な一覧表」や「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表」の作成、国際的な援助などが定められています。
2018年7月現在、我が国からは「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」には「山・鉾・屋台行事」など21件が登録されています。


無形文化遺産については、以下の各ホームページ等を御参照ください。 
無形文化遺産の保護に関する条約の概要に関するホームページ
(※文化庁ホームページへリンク)
文化遺産についての情報ページ
(※文化遺産オンラインへリンク)

ユネスコの無形文化遺産ホームページ(英語)

(※ユネスコ本部ホームページへリンク)

Q7.ユネスコが発行している書籍等を手に入れたいのですが。

A7.ユネスコが発行している書籍等については、ユネスコ本部で購入可能なほか、ユネスコのホームページ(※ユネスコホームページへリンク)でも購入することができます。また、ユネスコの各地域事務所でも各種の書籍等を発行しています。
なお、現在、当委員会では書籍等の販売は行っておりません。

Q8.ユネスコ本部(または関連機関)を訪問することはできますか。

A8.セキュリティー(安全)の関係上、特段の用件がない場合はユネスコ事務局(本部・地域事務局)に入ることはできません。
なお、ユネスコ本部(※ユネスコ本部ホームページへリンク)のホームページ内には、本部の様子がヴァーチャルで体験できるページがあります。

Q9.自分たちでできるユネスコ活動(民間ユネスコ活動)にはどのようなものがありますか。

A9.我が国の法令の範囲内において、ユネスコが掲げる理念や目的に沿った活動であり、かつ国・地方公共団体の実施するものでなければ、「民間ユネスコ活動」と言えますので、その活動は多彩です。
日本国内には、約300の民間ユネスコ協会やユネスコクラブ等が様々な活動を行っており、実際の活動分野としては、国際理解や国際交流に関するもの、地域の環境保護に関するもの、有形無形の文化や自然を守るための活動、平和教育に関するもの、発展途上国への識字や教育等に関する支援活動などがあります。
これらの民間ユネスコ協会等が実施する活動につきましては、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟及び各ユネスコ協会のホームページ等で御確認、御相談ください。

Q10.民間ユネスコ活動や国、地方公共団体、ユネスコ本部との関係はどのようになっているのですか。

A10.ユネスコ本部及び各地域事務所、国及び日本ユネスコ国内委員会、地方公共団体、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟及び各地域のユネスコ協会、公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター等は、それぞれ密接に連携しながら、ユネスコの掲げる目的の達成に努めています。
具体的には、次のように多様に連携しています。

Q11. ユネスコの予算の仕組みはどのようになっているのですか。

A11.ユネスコの予算は偶数年に始まる2か年で編成され、年度前に開催されるユネスコ総会で「事業予算(Programme and Budget)」として採択されます。ユネスコの事業予算案は、総会の第5番目の資料として提出される慣習から、C/5(「C」は総会(General Conference)のC)、又は採決された総会の会期を付して、33C/5(第33回総会で採択された事業予算)等と呼ばれます。
ユネスコ憲章及びユネスコ財政規則により、ユネスコ事務局長がまず「予算見積」を作成し、ユネスコ執行委員会に提出します。執行委員会はこれを検討し、かつ、望ましいと認める勧告を付して、事業予算案として総会の通常会期に提出します。事務局長が作成し、執行委員会が検討した事業予算案は、遅くとも総会の開会日の3か月前までに加盟国等に到達されるように作成しなければなりません。ただ、実際には、1年以上前からユネスコ執行委員会や、アジア・太平洋地域等、各地域内において事業予算案が検討されたりしています。
なお、事業予算案(C/5)は、ユネスコ総会が決定した「ユネスコ中期戦略(Medium-Term Strategy)」に基づいて作成されます。(「中期戦略」は、総会の第4番目の資料として提出される慣習から、C/4、または採決された総会の会期を付して、31C/4(第31回総会で採択された中期戦略)等と呼ばれます。)2014年~2017年会計年度の事業予算(37C/5)は、第37回ユネスコ総会で採択された中期戦略計画(37C/4:2014~2021年の8か年)に基づいています。

Q12. ユネスコには中長期的な活動戦略などはあるのですか。

 A12.本サイトの「ユネスコ」のページ、このQ&Aの「A12」で触れたとおり、ユネスコは複数の予算年度ごとに「中期戦略(Medium-Term Strategy)を作成し、それに基づいて予算を作成しています。
   現在進行中の中期戦略は、平成25年(2013年)の第37回総会で作成された、平成26(2014年)~平成33年(2021年)の8か年の中期戦略(37C/4)であり、「教育・科学・文化・コミュニケーションを通して平和の構築や貧困の撲滅、持続可能な開発等、人類の発展に貢献すること」をミッションとし、2つの包括目標と2つの優先課題、9つの戦略目標により構成されています。(詳しくは本サイトの「ユネスコ」のページをご参照ください。)

Q13.ユネスコが採択する条約・勧告・宣言等はどのような役割があるのですか。

A13.ユネスコ憲章(国際連合教育科学文化機関憲章(昭和26年10月6日条約第4号))第1条により、ユネスコの目的及び任務は次のように定められています。 
【目的(第1条第1項関係)】 
   国際連合憲章が世界の諸国民に対して人種、性、言語又は宗教の差別なく確認している正義、法の支配、人権及び基本的自由に対する普遍的な尊重を助長するために教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって、平和及び安全に貢献すること 
【任務(第1条第2項関係)】 
  (a)大衆通報(マス・コミュニケーション)のあらゆる方法を通じて諸人民が相互に知り且つ理解することを促進する仕事に協力すること並びにこの目的で言語及び表象による思想の自由な交流を促進するために必要な国際協定を勧告すること。
(b)次のようにして一般の教育と、文化の普及とに新しい刺激を与えること。加盟国の要請によって教育事業の発展のためにその国と協力すること。人種、性又は経済的若しくは社会的な差別に関わらない教育の機会均等の理想を進めるために、諸国民の間における協力の関係をつくること。
自由の責任に対して世界の児童を準備させるのに最も適した教育方法を示唆すること。
(c)次のようにして知識を維持し、増進し、かつ、普及すること。
世界の遺産である図書、芸術作品並びに歴史及び科学の記念物の保存及び保護を確保し、かつ、関係諸国民に対して必要な国際条約を勧告すること。

教育、科学及び文化の分野で活動している人々の国際的交換並びに出版物、芸術的及び科学的に意義のある物その他の参考資料の交換を含む知的活動の全ての分野における諸国民の間の協力を奨励すること。
いずれの国で作成された印刷及び刊行物でもすべての国の人民が利用できるようにする国際協力の方法を発案すること。
   また、同憲章第4条第4項(前半)においては、「総会は、加盟国に提出する提案の採択に当たり、勧告と加盟国の承認を得るために作成される国際条約とを区別しなければならない」とされています。
これらの条文により、ユネスコは、その機関の目的及び任務を遂行するために必要な「条約」「勧告」等を総会において区別して採択しています。

条約(Conventions) 

   ユネスコで採択される条約は、上記の規定及び、「国際連合教育科学文化機関憲章第四条4に規定する加盟国に対する韓国及び国際条約に関する手続規則」に基づき、作成、採択されます。ただし、同規則により、ユネスコの執行委員会及び総会の提案となるまでには、専門家などによる検討が慎重かになされ、また、条約文案の作成に当たっては、そのための専門家委員会が設けられ、頻繁かつ長期間にわたって開催されることが多くあります。(条約文案の作成にあたっては、我が国からも積極的に専門家を派遣しています。)
そのように慎重に精査された条文案は、まずユネスコの執行委員会に附され、執行委員会での検討を経た後、はじめてユネスコ総会の議案となります。(しかしながら、その案件が「国際条約」とするに値するか、「勧告」とすべきかを検討する権限は総会にあるため、条約としての作成を前提として作成されていたものが、総会の意思決定により「勧告」等となる可能性もあります。)
それらの手続を経て、ユネスコ総会の議案として提案された「条約(案)」は、総会でも審議及び討議、修正等がなされ、最終的な条約案について投票がなされ、3分の2の多数をもってはじめてユネスコの「条約」として採択されることとなります。(ただし、ここで賛成票を投じた国全てが、条約を批准したことにはなりません。)
総会で採択された条約は、ユネスコ事務局より速やかに各加盟国に送達され、各加盟国はその条約が採択された総会の会期終了後1年以内に、その国の権限のある当局に提出することとされています。我が国では、「国際連合教育科学文化機関総会で採択された条約及び勧告に対する国際連合教育科学文化機関憲章第四条4の規定に基づく国内措置に関する閣議決定」(昭和40年5月18日閣議決定)により、「国会」とされており、その提出にかかる報告書は、外務省及び文部科学省(及びその条約に関係のある省庁)が協議して作成のうえ、共同で内閣の閣議請議を求めたうえ、内閣総理大臣から両院議長あてに提出することとされています。(ただし、この提出をもってその国がその条約を「批准/承認」したことにはなりません。)
その条約を承認する場合はどうかについては、外務省の主管の下、関係省庁の協力の下に検討され、国会の承認を求めることとなります(憲法第73条)。
国会にて条約が承認された旨が、ユネスコ事務局長に送達された時点で、初めて我が国がその条約を承認したこととなります。
なお、条約の発効については、各条約の定めるところにより異なりますが、2006年4月に発効した「無形遺産の保護に関する条約」については、条約を批准/承認/承諾した加盟国が30か国に達してから3か月後に発効することと定められていました。

勧告(Recommendation)

ユネスコで採択される勧告は、「国際連合教育科学文化機関憲章第四条4に規定する加盟国に対する勧告及び国際条約に関する手続規則」第1条(b)では、「特定の問題の国際的規制のための原則及び基準を総会が定め、かつ、加盟国に対してその原則及び基準が自国の領土内で適用されるために必要な立法上その他の措置をその国の憲法上の慣行及びその問題の性質に従つて高ずるように勧奨する」ものと定められており、国内の法令等に準拠する範囲内で加盟国においてその内容を実践するよう要請されるものですが、「条約」とは違って「受諾」等の手続はなく、法的拘束力はありません。
しかしながら、ユネスコにおいて踏むべき手続については、「条約」に準じ、それをユネスコの総会の議事案として附議するまでには、「条約」と同様の手続が踏まれます。(同規則第2条以降参照)
また、ユネスコ総会の場において、上記の「条約」として国際的に規制すべき内容であるかどうかについて審議された結果、「条約」作成を前提としていた案件が「勧告」となることもあります。(同規則第6条、第13条)
「勧告」の採択は、「条約」とは違い、過半数の投票で採択されたものとされます。(同規則第12条)ただし、この採択で賛成票を投じたとしても、その加盟国にその「勧告」を履行するような拘束力が生まれるわけではありません。
このようにして採択された「勧告」は、「条約」と同様、内閣での閣議請議を求めた上、内閣総理大臣から、両院議長あてに提出され、国会においてそのような「勧告」が採択された旨を、国会に報告することとされています。
ただ、上記のとおり、「勧告」には、「批准/受諾/承認」等の手続はなく、国会に報告されたからといって、法的拘束力が生じるものではありません。

宣言(Declaration) 

   ユネスコ総会等において、決議される「宣言」は上記の「条約」や「勧告」とは違い、ユネスコ憲章等において具体的に規定があるわけではなく、また、「勧告」と同様、「批准」等の手続も生じませんが、「勧告」と同様、全世界的な原則を定めようとするために適宜、ユネスコ総会において決議されるものです。
なお、平成17年(2005年)の第33回ユネスコ総会において、「宣言」についても「勧告」に準じ、ユネスコ憲章等においてその国際法的な手続及び採択の規則の枠組みを作成しようとする決議が採択されたところです。(第33回ユネスコ総会決議第87号(Resolution 33C/87))