教育局は、公共財であり、最善の投資である「教育」分野において、全ての子供、若者、大人が生涯を通じて質の高い教育にアクセスできるように、「アフリカ」と「ジェンダー」という2つの優先課題(※)に焦点を当てながら、リーダーシップをとっています。地球温暖化、紛争、長引く危機、デジタル革命の加速化といった世界的課題に対処すべく、教育プログラムを進化させてきました。
(※)優先課題
・アフリカ:平等で質の高い適切な教育へのアクセス向上
・ジェンダー平等:教育システムや学習プロセスを通じたジェンダー平等の促進
ユネスコは、「Education 2030 Sustainable Development Agenda」及びSDG 4(教育)で設定された目標に向け、ステークホルダーを結集させることで、教育の変革を促進し、すべての人が同じ教育機会を得られるように努めています。
持続可能な未来のための教育を再考するため、パートナーシップ、モニタリング及び研究等を通じて、Education 2030のアジェンダを主導・調整しています。具体的には、次のことを行っています。
「教育の未来」レポート等により、教育における新たなトレンドとニーズを予測・対応しています。
各国と協力して、データ収集・モニタリング・対話に基づき、教育政策・計画・ベストプラクティスを設計・実施・共有しています。
教育を受ける権利を確保するため、法的枠組みと規範的手段を策定・監視しています。
例:教育における差別の禁止に関する条約、高等教育における資格の承認に関する世界規約、女児及び女性の教育に関する各取組状況のモニタリング 等
国際協力のため、世界の教育コミュニティ間の対話・交流・パートナーシップを促進しています。
各国の教育目標の達成に向けた、組織的・人的能力を開発するための技術的なアドバイス・支援を提供しています。
(主なテーマ)
教育を受ける権利の保護 | 生涯を通じた学習 | 教育におけるジェンダー平等の確保 |
---|---|---|
o 教育を受ける権利 o 緊急時の教育 o 教育における包摂性 |
o 生涯学習 o 幼児期のケアと教育 o 識字能力と成人学習 o 高等教育 o 技術及び職業教育並びに訓練 |
o 教育とジェンダー平等 o 科学技術における女児及び女性の教育 |
教育システムの強化 | 平和と地球のための教育 | 教育の再考 |
o 教師教育 o 教育政策と戦略 o 教育の管理・モニタリング・評価 o 学習成果向上のための評価 o カリキュラム開発 |
o グローバル・シチズンシップ教育 o ホロコーストとジェノサイドについての教育 o ヘイトスピーチへの対抗 o 持続可能な開発のための教育 o 健康と教育 |
o デジタル学習と教育の変革 o 教育の未来 |
<関連リンク>
・ユネスコ本部教育局(Education Sector:ED)(※ユネスコHPへリンク)
上記の取組を実施するための、教育局(ED)等の体制は次のとおりです。
世界中の教育におけるユネスコの活動について、執行部と以下の5つの部門をとおして、全体的なガイダンスを提供しています。
□政策・生涯学習システム部(Division for polices and lifelong learning systems)
・教育政策セクション
・ユース、識字能力・スキル開発セクション
・教師育成セクション
・高等教育セクション
□平和・持続可能な開発部(Division for peace and sustainable development)
・持続可能な開発のための教育セクション
・グローバル・シチズンシップ及び平和教育セクション
・健康と教育セクション
□教育2030部(Division for education 2030)
・SDG4リーダーシップセクション
・包摂性とジェンダー平等のための教育セクション
・移民、避難、緊急事態のための教育セクション
・ASPnetユニット
□学習とイノベーションの未来部(Division for Future of Learning and Innovation)
・教育における科学技術とAIセクション
□コミュニケーション及びナレッジマネジメントチーム(Communications and Knowledge Management Team)
□執行部(Executive Office)
54の現地事務所の専門スタッフにより、政府・開発パートナー・市民社会と強固な協力関係を構築しています。
ASPnet、UNITWIN/UNESCO Chairs、UNEVOC、Learning cities等の広範なグローバル教育ネットワークを通した活動を実施しています。
カテゴリー1センターは、制度的及び法的にユネスコ組織の一部であり、ユネスコにとって不可欠な機関です。
また、カテゴリー2センターは、ユネスコの規定を適用せず、法的にもユネスコの外部の組織となる、ユネスから独立した特権的なパートナーで、ユネスコ総会の承認により設置されます。
両センターともに、教育課題に取り組む国々への支援等をとおして、ユネスコのプログラムの実施に貢献してます。
2024年から2025年の期間中、以下の戦略目標と成果に貢献するとともに、持続可能な開発目標(SDGs)、特に「SDG4-Education 2030アジェンダ」の実現を支援することを目指し、アジェンダの調整を主導し、進捗状況を監視します。
Output1.ED1:包摂性の促進、周縁化への取組及び権利の向上のための教育システムの構築(危機への対応を含む)
Output1.ED2:特に学習危機により大きな影響を受けている女子及び女性のため、ジェンダーに関して変革された教育システムにより 学習者を自信づけ、安全な学習環境の確保し、教育上の障壁を克服する
Output7.ED3:健康的な生活を先導し、持続可能な開発を推進し、創造的で責任あるグローバル市民として世界と関わるための変容 的教育を通じ、学習者が力づけられる
Output1.ED4:識字力、技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)、STEM教育、高等教育を通じて、学習者が、 個々人や労働市場、社会的需要に応じた関連スキルを身につける
Output1.ED5:コロナ危機により生じた変化に対応し、学習成果改善のための教員訓練及び支援
Output1.ED6:進化する学習環境へ柔軟に対応し、より良いSDG4遂行のための、教育システムのレジリエンス、質及び公平性の強化
Output2.ED7:協調、データ及びモニタリング、知識及び革新的パートナーシップに裏付けされたSDG4達成のための教育政策及び財政 的決定
Output8.ED8:より包摂的で効果的かつ適切な学習の確保のための技術とデジタルイノベーションの活用
Output2.ED9:学際的研究や予測、公共政策の議論を通じた教育と学習の再考
<関連リンク>
・2022年-2029年中期戦略(41/C5)概要
年代 | トピック |
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1950年代 |
・人種に関するユネスコ宣言の採択 |
1960年代 |
・「教育計画」4つの世界地域教育会議の開催(カラチ、アディスアベバ、サンティアゴ、トリポリ) ・「アジア地域初等教育発展計画:カラチ・プラン」(1960年)・「アディスアベバ・プラン」(1961年) ・「サンティアゴ・プラン」(1962年) |
1970年代~1980年代 |
・未来の学習(Learning To Be)の発表(フォール報告、1972年) 生涯教育から生涯学習(lifelong learning)へという流れを主導。・「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」の採択(1974年) ・機能的識字(functional literacy)概念の導入 機能的識字とは、単なる(初歩的な)読み書き能力にとどまらず、人々が社会の一員として基本的な生活能力を獲得したり社会参加をするうえで、必要不可欠とされる読み書き能力のことである。ユネスコにおける識字の概念は時代とともに変遷している。 |
1990年代 |
・万人のための教育世界会議の開催(1990年) 万人のための教育(EFA:Education for All)世界宣言の採択。「基礎教育(Basic education)」の捉え直し及びアフリカ地域への関心を高める事に貢献。
・「学習:秘められた宝(Learning: The Treasure within)」の刊行(ドロール・レポート、1996年) 教育方針「学習の4本柱(知ること・為すこと・共に生きること・人間存在として生きることを学ぶ)」が掲げられた。・国連総会での「平和の文化(Culture of Pease)に関する宣言」の採択(1997年) 平和の文化とは、生命の尊重、暴力の終結、教育・対話・協力を通じた非暴力の促進・実践に基づく一連の価値観、態度、伝統、行動様式、生活様式である。次の千年を迎えるにあたり、平和の文化を促進・強化するために宣言された。 ・世界教育年鑑(World Education Report)の継続刊行(2000年まで) 世界の教育状況を収集・発信したもので、現在のGlobal Education Monitoring Reportの前身となる。 |
2000年代 |
・世界教育フォーラムの開催(2000年) 「ダカール行動枠組み」が採択され、2015年まで達成すべき目標が宣言された。(1)就学前教育の拡大・改善 (2)すべての子どもの無償初等教育へのアクセス確保 (3)青年及び成人の学習ニーズに対する十分な対応 (4)成人識字率の改善と、成人基礎教育へのアクセスの平等の確保 (5)初等中等教育における男女格差の解消、教育の場における男女平等の達成 (6)教育の質的向上 ・EFAハイレベル会合、ワーキンググループ会合の主導・開催 EFAのフォローアップの一環で開催。成果の一つとして、Global Education Monitoring Reportの刊行が開始された。各号で教育に関するテーマ設定をすることで、Agenda-setterとしての役割を確立。 ・持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミト)の開催(2002年) 「ESDの10年(2005-2014)」を日本が提案。・「国際の10年」や「国際デー」等による教育のアジェンダ設定と啓発 ・国連人権教育の10年(1995-2004)、国連識字の10年:すべての人に教育を(2003-2012)、持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030) 等 ・国際母語デー(2/21)、国際識字デー(9/8)、世界教師デー(10/5) 等 ・援助アクター間の壁を超えた教育支援に関する連携体制構築への貢献 ・女子教育イニシアティブ(United Nations Girls’ Education Initiative: UNGEI)・緊急時の教育支援機関ネットワーク(Inter-Agency Network for Education in Emergencies: INEE) |
2010年代 |
・世界教育フォーラムの開催(2015年) 2015年から2030年までの、教育に関する世界共通の目標を設定する「インチョン宣言」が採択。後に、持続可能な開発のための目標(SDGs)の第4番目として統合される。・「教育2030行動枠組」(FFA:The Education 2030 Framework for Action、2015年)の策定 インチョン宣言及び国連総会でのSDGsの採択を受け、具体的な行動枠組みが策定された。・「教育を再考する(Rethinking Education)」の刊行(2015年) 気候変動に関する教育(Greening Education)という新しい教育の概念の起点となる。・SDGs達成に向けたユネスコの重点領域の明確化(2017年) 報告書「UNESCO moving forward the 2030 Agenda for Sustainable Development」(2017年)にて、ユネスコの2つの国際重点領域として「ジェンダー平等」と「アフリカ」が設定された。 また、SDGs内の9つの目標(第4, 5, 6, 9, 11, 13, 14, 15, 16目標)に焦点化した活動指針が提示された。 ・ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP:Global Action Programme、2015-2019年)の策定 「ESDの10年」に続く行動指針。 |
2020年代 |
・「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)ロードマップ(Education for Sustainable Development: A roadmap)の刊行(2020年) ESDは、質の高い教育に関するSDGsの実現に必要不可欠な要素であり、教育のみならずすべてのSDGsの成功への鍵として、SDGsの実現に不可欠な実施手段でもあるとされている。 ・ 「私たちの未来を共に再想像する:教育のための新たな社会契約(Reimagining Our Futures Together: A New Social Contract for Education)」の刊行(2021年) 「学びほぐし・学び捨てる(unlearning)」概念が提起されている。・「教育変革サミット(TES)」の開催(2022年) 「教育のための国際金融ファシリティ(IFFEd)」「気候変動に関する教育パートナーシップ」が立ち上げられる。・「平和、人権、国際理解、協力、基本的自由、グローバル・シチズンシップ及び持続可能な開発のための教育に関する勧告」の採択(2023年) 1974年のユネスコ教育勧告を改訂。 |
年 | トピック |
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1997年 |
高等教育教員の地位に関する勧告 国際平和、国際理解、国際協力及び持続可能な開発という普遍的な目的を実現するうえで、高等教育並びにその能力及び高度の資格を備えた高等教育教員の必要性について言及されている。 |
1998年 |
21世紀のための高等教育に関する世界宣言―ビジョンと行動 ・パリで開催されたユネスコ「高等教育世界会議」で採択されたもの。・教育は「人権と民主主義、持続可能な開発及び平和の基本的な柱」と宣言され、高等教育の充実の重要性が指摘されている。 |
2018年 |
高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約(通称:東京規約) ・アジア太平洋地域において、締約国間が相互に高等教育資格を承認・評定する枠組みを整えることにより、国際的な学生及び研究者の流動性を促進。 ・アジア太平洋国内情報センターネットワーク(APNNIC)の設立。 |
2019年 |
高等教育の資格の承認に関する世界規約(通称:世界規約) 高等教育における個人の世界的な移動を容易にするとともに、国際協力の促進及び強化等を目的とする。 |
国際統括官付