【対談】特別対談「スポーツ庁長官 室伏広治のアスリート近影」 澤野大地選手(陸上競技)編《後編》

 

澤野大地選手(陸上競技)対談1

 この動画は、令和3年2月に撮影したものです。
(※「YouTube」スポーツ庁動画チャンネルへリンク)

 

もくじ
コロナ禍で世界中の人を元気づけることができるスポーツの力
棒高跳びの魅力――「空を飛ぶ」ような種目
子供たちの夢としてのスポーツを確立させていきたい
国際的なコミッションでも活躍できるアスリートへの期待
国民の皆さんに応援される形で、目標を達成できるように


新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年はこれまでとは環境が大きく変わった1年になりました。その中において、トップアスリートたちは延期となった東京2020大会に向けた努力を重ねてきました。

東京2020大会での活躍が期待されるトップアスリートの言葉を通じて、競技やアスリート自身の魅力を再発見するとともに、スポーツがもたらす前向きな力を発信していくため、室伏スポーツ庁長官との対談動画をシリーズで公開します。

今回は、澤野大地選手(陸上競技)です(プロフィールはこちら)。

コロナ禍で世界中の人を元気づけることができるスポーツの力

室伏
 コロナ禍において、大会が1年延期になり、そういった中でも本当に苦労を重ねながら、トレーニングを継続してきているアスリートの皆さんだと思うんですけれども、澤野選手も、スポーツが好きだから、また、棒高跳びが好きだから、また向上心を持って取り組んでおられていると思いますけれども、改めて、普通ではありえないことが今回、コロナという状況で起こってしまって、これを乗り越えてまた得たところがあるとか、スポーツの素晴らしさを感じたことがあるとか、そういった何か、これをポジティブに捉えられるようなことっていうのはございますか。
 
澤野
 先日行われた全豪オープンで大坂なおみ選手が優勝されましたけれども、やっぱりああいったニュースって、非常に、アスリートだけじゃなくて日本中の人が元気になると思うんですね。わたし自身も、大坂なおみ選手の決勝戦、生でずっと観させていただいたんですけども、あの強さというものを、コロナ禍において多分色んな大変なことがあったと思うんですけれども、そういった中であの優勝にこぎつけた。やっぱりあれって、何か目標に向かってできることをやりながら目標を達成する、そういったアスリートの本当に力っていうものを見せつけていただいたのかなという気はします。コロナ禍においてですね、うまくいかないことが非常に多かったり、もちろん経済界だったりとか医療関係者の方も大変な思いをされているんですけれども、ああいったニュースっていうのは、本当にポジティブになれますし、日本の国民だけじゃなく、世界中の人たちが元気になるようなニュースを届けることが、スポーツってできるのかなと思っています。
 
室伏
 大坂選手の優勝は、心打たれましたね。しかも、大変なところで乗り越えて優勝というのは、またさらにそういう思いにさせられるところはありますね。
 
澤野
 はい。
 
櫻木
 澤野選手ご自身は、東京大会に向けてはどのように臨んでいきたいって思っていらっしゃいますか。
 
澤野
 わたし自身、東京大会を目指して現役を続行してずっとトレーニングをしているんですけれども、応援してくださる皆さん、特に国民の皆さんの賛同を得ながらやっぱり開催してほしいなという思いもありますし、わたし自身は、いまできることをまず行って、自分が目標としているものを、特にわたしは棒高跳びで、やはり自分の目指しているような跳躍をやっぱりしたい、そういったことを目指して日々できることを行いながら、披露できるような形に持っていけたらいいなと思っています。

棒高跳びの魅力――「空を飛ぶ」ような種目

櫻木
 澤野選手、棒高跳びの魅力というのはどういった点でしょうか。
 
澤野
 やっぱり技術性が非常に高い種目ではあるので、そういった技術を高めることによって、わたしみたいな年齢がいった選手でも十分に戦えたりとかですね、また、単純に、もう魅力っていうと、棒一本で人間が身長の3倍もの高さを跳ぶことができる、これってひとつの、やっぱり芸術だとわたしは思っていますので。これは、ハンマー投げもそうですけれども、室伏さんが投げられる姿っていうのは本当にロスがなくすごく綺麗な投てきをされるので、こういった技術種目に関しては、その芸術性っていうものがその種目の魅力なのではないかなと、わたし自身は思っています。
 
室伏
 飛んでいるような感じなんでしょうね、きっとね。
 
澤野
 本当に飛ぶ、空を飛ぶっていうのがまさに当てはまるような種目ですね。バーを越えたときは、本当に空中を飛んでいるような気持ちになりますし、そこが気持ちいいから、今でもそこを突き詰めて続けているという気持ちはあります。
 
澤野選手対談4
 
室伏
 上等な選手になるとですね、落ちそうになるバーを、手で最後こうやって直したりするんです。
 
澤野
 それあの、駄目です。それ、ルール上失格ですから。
 
室伏
 触ったら駄目だね。
 
櫻木
 でもなかなか、通常では体感できないような気持ち良さがありそうですし、やはり、競技観ていて美しいですよね。
 
室伏
 陸上が先駆けて取り組んだ、このコロナ禍でやったことがあって、それは、オンラインでの棒高跳びの大会をまず最初に行いましたよね。世界陸連もそれを、中継したりしていましたけれども。コロナ禍でこういう大変なときでも、そういう国をまたいで競技会をやったっていうのは、本当に元気づけられたものだと思いますけれども。ああいうのを観ていて、どうでしたか。
 
澤野
 世界に先駆けて、スポーツが、まあ、スポーツだけじゃなくすべての出来事が止まってしまったあの中で、陸上競技の、特にわたしのやっている棒高跳びからスポーツが動きだしたという事象自体が、すごくわたしとしてはうれしかったですし、やっぱりあれを真似したい、あれをやってみたいということで日本でも取り組んだりもしたんですね。
 
室伏
 本当に勇気をもらえましたしね。可能性もね、新しい取組っていうことで感じたので、本当によかったなと思いました。

子供たちの夢としてのスポーツを確立させていきたい

室伏
 長く競技をされてきて、やはりスポーツが人生そのものだっていうふうに思いますけれども、澤野選手にとって、スポーツって何ですか。
 
澤野
 スポーツって、僕は、衣・食・住と同じところにある、なければならないもの、生きていくためになければならないものかなと思っています。なんか文化のひとつみたいな形ですね。スポーツがあるからこそ自分自身を体現できたり、自分自身が今棒高跳びをやっているのは、棒高跳びが人生の中で一番好きなことだからこそなんですけれども、そのスポーツによって、自分自身が何か満足感を得られたりとか、人に何かを伝えることができたりとか、また、他にもあらゆるトップアスリートが活躍することによって、世の中の人たちに例えば元気を届けることができたりとか、そういったことだとわたしは思っています。
 
室伏
 澤野選手は、まだできるだけ長くやってもらいたいというふうに思っていますけれども、国際舞台でというところは一線を引くことも、どこかにはあるとは思います。で、今後のご自身のスポーツへの付き合い方、ですか、今後競技者としてじゃないところも含めては、いかがですか。どう自分自身が付き合っていきたいと思いますか。
 
澤野
 スポーツをやることは素晴らしいっていうのは、わたしもそうですし、多分室伏長官もそうだと思いますけれども、スポーツは素晴らしい、スポーツに価値があると思われているからこそ、こうやってスポーツを広めようっていう活動もいっぱいやっているんですけれども、もっとこう、世の中に、特に日本の国民のみなさんにそういったことを浸透できるような活動をできればいいのかなと思っています。わたし自身が、やっぱりスポーツがあったからこそ今の自分があるとも思っていますし、スポーツからいろんなことを学ばせていただいて、今の自分があると思うので、そういったスポーツの価値、力というものを世の中にどんどんと広めていきたい。また、子どもたちの夢として、やっぱりスポーツっていうものは非常に重要なものであったりするので、そういった子どもたちの夢にもなり得るスポーツというものを、ちゃんと確立させていきたいなと思っています。

澤野選手対談5
 
室伏
 ありがとうございます。
 
櫻木
 まさにスポーツ庁の役割でもありますね。

国際的なコミッションでも活躍できるアスリートへの期待

澤野
 室伏長官は、JOCのアスリート委員会の前身でもあるアスリート専門部会の部会長であったり、さらにはIOCのアスリート委員、国際陸上競技連盟、そういったところのアスリート委員会も経験されて、国際的な活動を積極的に行われてきたと思うんですけれども、現在のスポーツ庁の長官として、今後のアスリートに対して期待することってなんでしょうか。
 
室伏
 競技力もそうですけども、国際感覚を持ったアスリートが是非どんどん出てきてもらいたいと思いますし、積極的にそういった各競技団体のアスリート委員会にも参加していただいてですね。今、澤野選手も一生懸命、各競技団体のアスリート委員会を設置して、そこにメンバーを増やすように取り組んでおられますけれども、国内もそうですし、国外にもしっかり目を向けて、これはトップアスリートであれば、よく競技で遠征にも行くし、色んな方とも知り合いにもなれるわけですから、是非そういった国際的に活躍できる、競技会でもそうですし、そういったさまざまなコミッションで活躍できる人が出てくるといいなというふうに思っていますし、支援していきたいというふうに思っています。
 
澤野
 本当にそれは思います。そういったところにちゃんと意見が言える人、発言できる人、そういったところに関われる人がやっぱりいるべきだなとわたし自身も思っております。
 
櫻木
 競技の舞台以外でも、日本の存在感を増していくということですかね。
 
室伏
 そうですね。存在感もそうですし、言うべきところはしっかり、ルール改正だって、ルールに関してはしっかり提言をしていってね、より良い形にしていく。これが一番大事なところだと思いますね。国際交流っていうところでは、衝突だって当然あるかもしれませんけれどもね。でも、それは上手に意見を通して、またお互いに世界のアスリートにとって良いかたちになるようにっていうことだと思いますね。

国民の皆さんに応援される形で、目標を達成できるように

櫻木
 澤野選手、最後にですね、新型コロナウイルスの影響が続く中ではありますが、国民から多くの声援の声ですとか、期待の声も届いているかと思います。改めて、この動画を視聴されている国民の皆さんへですね、東京大会に向けた意気込みですとか、あとは伝えたいメッセージがあればお願いします。
 
澤野
 現在、まだまだコロナウイルスの影響が非常に強く、特に医療現場の方々、また、飲食店などをされている方々が非常に大変な思いをされている中だと思います。その中で、アスリートは感染対策をしっかりしながら、東京大会が開かれることを信じてトレーニングを行っているんですけれども、やはり、国民の皆さんに応援されてこそのパフォーマンスがあると、選手たちはみんな思っていますので、やはり国民の皆さんに理解をいただいて、応援される形で開催をしていただきたいという思いが非常に強いです。そういった中で、開催されればそこでベストパフォーマンスができるように、選手たちはできる限りの調整をしてですね、そこにピークを持っていき、パフォーマンスができるようにしていくと思いますので、わたし自身も含めまして、そういった、国民の皆さんに応援される形でですね、今までの目標を達成できるように頑張っていきたいなと思います。
 
櫻木
 ありがとうございます。長官、いかがでしょうか。
 
室伏
 いや本当に、大変な思いをしながらもトレーニングを継続してやっていますけれども、是非本当に頑張ってもらいたいなというふうに思います。
 
櫻木
 澤野選手、ありがとうございました。今日は、陸上競技・棒高跳びの澤野大地選手にお話を伺いました。ありがとうございました。
 
澤野
 はい。ありがとうございました。

澤野選手対談6

澤野選手との対談 前編はこちら!


  【プロフィール】
澤野 大地(さわの・だいち)
陸上競技・棒高跳びの日本記録保持者。2004年アテネ大会で初めてオリンピックに出場すると、日本人としてこの種目20年ぶりの決勝進出を果たす。その後、2008年北京大会、2016年リオデジャネイロ大会にも出場し、リオ大会では日本人としてこの種目64年ぶりの入賞を果たした。現在は、日本オリンピック委員会(JOC)のアスリート委員長も務め、現役アスリートの代表としてスポーツ界に貢献している。

 

お問合せ先

スポーツ庁競技スポーツ課