【対談】特別対談「スポーツ庁長官 室伏広治のアスリート近影」 澤野大地選手(陸上競技)編《前編》

 

【対談】特別対談「スポーツ庁長官 室伏広治のアスリート近影」 澤野大地選手(陸上競技)編《前編》1

 この動画は、令和3年2月に撮影したものです。
(※「YouTube」スポーツ庁動画チャンネルへリンク)

 

もくじ
室伏長官とは、高校の先輩・後輩関係
JOCアスリート委員長として、アスリートから社会へのメッセージ発信を主導
アスリート間での思いの共有――「不安なのは自分だけではなかった」
アスリートのアイデアが元となり、新たな取組も実現


新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年はこれまでとは環境が大きく変わった1年になりました。その中において、トップアスリートたちは延期となった東京2020大会に向けた努力を重ねてきました。

東京2020大会での活躍が期待されるトップアスリートの言葉を通じて、競技やアスリート自身の魅力を再発見するとともに、スポーツがもたらす前向きな力を発信していくため、室伏スポーツ庁長官との対談動画をシリーズで公開します。

今回は、澤野大地選手(陸上競技)です(プロフィールはこちら)。

室伏長官とは、高校の先輩・後輩関係

櫻木
 東京大会に向けた室伏スポーツ庁長官とトップアスリートの対談企画。今回は、陸上競技・棒高跳びの澤野大地選手にお話を伺います。澤野選手、よろしくお願いします。
 
澤野
 よろしくお願いいたします。
 
櫻木
 澤野選手は、これまで2004年のアテネ大会、2008年の北京大会、2016年のリオデジャネイロ大会の3度のオリンピックに出場され、前回リオ大会においては、日本人としてこの種目64年ぶりとなる7位入賞を果たされました。澤野選手は現在、日本オリンピック委員会(JOC)のアスリート委員長ということで、そのお立場からお話を色々お聞きしたいと思うんですけれども、室伏長官との関係でいいますと、長官の高校の後輩でもあるということで、旧知の仲でいらっしゃるんですよね。
 
室伏
 はい。同じ陸上でですね、しかも高校が千葉県の成田高校出身で、澤野選手は私の後輩にもなるんですけども、競技会でもいつも一緒にいましたし、本当によく知っているアスリートです。
 
澤野
 一番覚えているのが、室伏さんがテグの世界選手権のときにメダルを獲られた際にですね、わたし自身、決勝の舞台で戦っていて、メダルのウイニングランをされているときにわたしのところに来ていただいて「頑張れよ」と握手をしていただいたのは、非常に強く覚えています。
やはり、陸上競技で金メダルを取る、しかも投てき種目で、っていうのは、やはり、いま現時点でも全く信じられないぐらいの偉業を達成されたというところで、色んな場面で室伏さんが取り組まれていたトレーニングであったりとか考え方であったり、そういったところも全部拝見しているんですけれども、どうやってあそこまで行き着いたのかなっていうのは、やっぱり非常に興味がありますし、どれだけの努力をされたんだろうというのは、想像もできないくらいのことなんだろうなという気がしています。

澤野選手対談1

JOCアスリート委員長として、アスリートから社会へのメッセージ発信を主導

櫻木
 澤野選手は、JOCのアスリート委員長として、今回のコロナ禍においてさまざまな発信をされているんですよね。特に東京大会の延期が決まった直後、1度目の緊急事態宣言下の昨年4月に、澤野選手が主導で呼びかけられた『#いまスポーツにできること』プロジェクトは、多くの話題を呼びました。改めて澤野選手、この取組について簡単に御紹介いただけますでしょうか。
 
澤野
 JOCのアスリート委員会として、こうやって緊急事態宣言でみんなが思うような活動ができない中、また世の中が暗くなっている中ですね、多くのアスリートが、やっぱり日常のトレーニングに戻りたいと思っていたりとか、また、社会の一員として何かしたいというところでですね、やはり何かしたいという思いで出てきた案が、この「#いまスポーツにできること」プロジェクトでした。その中で、やはりアスリートが、世の中の人たちに何か元気づけることはできないか、また、日頃から応援していただいているファンの皆さんに感謝を伝えられないか、大変な最前線で戦ってこられている医療関係者の皆さんに感謝を伝えられないか、そういった応援のメッセージをアスリートが発信できないかということで、SNSを通じて、『#いまスポーツにできること』とハッシュタグをつけて活動を呼びかけましたところ、本当に多くのアスリートにご参加いただきまして、賛同いただいて、非常に反響をいただきましたし、本当にたくさんの方々にポジティブなメッセージをいただけたなと思っています。
 
櫻木
 多くのメディアでも取り上げられていましたし、動画の総再生回数は200万回近く伸びたということで、この反響については、澤野選手、どのように受け止めていらっしゃいますか。
 
澤野
 本当に、わたしだけじゃなくてですね、JOCのアスリート委員会として動いたことによって、日本のあらゆるスポーツ種目の選手たちが、もちろんそれはメダリストであったりとか、世界記録保持者であったり、色んな方々にご協力をいただいて賛同をいただいたからこそ、そうやって世の中に広まってですね、再生回数も増えたりとかしたのかなと思っています。また、アスリート自身が、日頃からお世話になっている方々に、なんとか感謝を伝えたい、また、頑張っていらっしゃる方に応援のメッセージを伝えたいという、そういったものが形になった結果なのかな、と思っています。

アスリート間での思いの共有――「不安なのは自分だけではなかった」

室伏
 よく本当に、アスリートの皆さん、JOCの澤野選手を、委員長を筆頭にこういったイベントができて、本当によかったと思います。わたしも組織委員会にいたときにですね、一度、澤野選手も参加されていたJOCとアスリートのミーティングに、組織委員会のメンバーとしてわたしも行っていたんですけれども、状況報告などもさせていただいたりして、そのときにも色んなことを感じるものがありました。本当、今のアスリートは、1年もオリンピック・パラリンピックが延期しちゃって、しかも競技をするトレーニング場がなかったりとか、そういう切実な問題を抱えている中で、本当によく、自分たちから明るい話題を提供しようということで。

澤野選手対談2
 
櫻木
 トレーニングの状況ですとかモチベーションの共有などされたということですが、これはどのような狙いで開催されたんでしょうか。
 
澤野
 世の中、日々コロナの状況が変わっていく中で、アスリートにとっても不安な毎日を過ごしていることが非常に多かったので、わたし自身も東京オリンピックを目指す一人として、現役のアスリートの一人として、やっぱり不安な気持ちを少なからず持っていました。そういった気持ちをアスリート同士で共有する、また、何か新しい施策などないかとか、アスリートの率直な生の意見を集約したいというところで、アスリートミーティングをやったらどうかというところが、JOCのアスリート委員会で立ち上がりまして、それが実現したというところです。
 
澤野
 まず一番最初に開催して、アスリートのみなさんが思ったのは「あっ、困っていたのは、不安だったのは自分だけじゃないんだ」っていうことをまず共有できたこと、それが一番大きかったのかなと思います。アスリートはそれぞれ一人で頑張っていたりもするんですけれども、それぞれこのコロナ禍において集まることができなかったりとか、合宿ができなかったりしたんですけども、実際にそうやって悩んで、いろいろ工夫しながらやっていたのは自分だけじゃなかった、というところで、どんなにトップのアスリートでも、不安な気持ちを抱えながらトレーニングをしていたというところは、共感できたっていうのはよかったのかなと思います。またさらに第2回、第3回と続けていく中で、アスリートが実際に、じゃあどうしていけばいいかというところを、率直な意見として集約できたことがよかったですし、実際にそこから出た意見というものを、アスリート委員会として、施策としてしっかりと、プロジェクトを実施して形にしたものもありましたので、そういったことは非常によかったのかなと思っています。
 
室伏
 本当に、1回目はわたしも聴かせていただいて、「かなりこれは、アスリートによってはすごく深刻に捉えていて大変な状況だな」っていう風に思いました。ですけど、本当に今澤野選手がおっしゃったように、自分だけじゃないんだっていうことで、じゃあ今これからどういう風にやっていこう、トップアスリート同士ですから、きっと面白いアイデア、面白いって言うのはあれですけど、乗り越える術というのを何か考えられるという風に思います。

アスリートのアイデアが元となり、新たな取組も実現

櫻木
 そのアスリートミーティングで出たアスリートのアイデアが元となって、10月には、現役のトップアスリートや引退した元トップアスリートなどが、東京2020公式のスポーツゲームで対戦する『ドリームチャリティーバトル2020』も開催されたということで、こちらもコロナ禍だからこその発信ですよね、澤野選手。
 
澤野
 そうですね。実際に試合が行われないからこそ、バーチャルでも何かそういったアスリートとファンの方々とのコミュニケーション、交流っていうものをつなげないかというところで、せっかく公式ゲームがあるのだからそこを使ってみようというところで実施したのが、この『ドリームチャリティーバトル2020』ですね。実際に、わたし自身も参加したんですけれども、非常に興味深い、面白い企画だったなと思っています。

澤野選手対談3
 
櫻木
 わたしも拝見したんですけれども、とっても楽しませていただきました。意外な一面が垣間見えたりしますよね。
 
室伏
 やっぱり負けるとみんな、相当悔しそうな。
 
澤野
 そうなんですよ。ゲームとはいえ、負けると悔しいので本気になっていますよね。
 
櫻木
 アスリートらしい面も見られるということですね。

澤野選手との対談 後編はこちら!

  【プロフィール】
澤野 大地(さわの・だいち)
陸上競技・棒高跳びの日本記録保持者。2004年アテネ大会で初めてオリンピックに出場すると、日本人としてこの種目20年ぶりの決勝進出を果たす。その後、2008年北京大会、2016年リオデジャネイロ大会にも出場し、リオ大会では日本人としてこの種目64年ぶりの入賞を果たした。現在は、日本オリンピック委員会(JOC)のアスリート委員長も務め、現役アスリートの代表としてスポーツ界に貢献している
 
 

お問合せ先

スポーツ庁競技スポーツ課