初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第376号(令和2年1月24日)

 [目次]

【お知らせ】
□令和元年度「全国学校給食週間」について
□20分で学べる!校内研修シリーズ No54 カリキュラム・マネジメント ~新学習指導要領とこれからの授業づくり~
□ICT教育の推進のための著作権制度の改正について(第2弾)
□外務省主催 教育機関向け「海外安全対策セミナー」の開催について
□「京都コングレス」「京都コングレス・ユースフォーラム」を開催します!
□「次世代火山研究・人材育成総合フォーラム」の開催について
□自治体の皆様へ 地域おこし協力隊などをもっと教育に活用しませんか?
□平成30年度文部科学白書<第11回>

【発行】
□「教育委員会月報」について

【地方教育行政研修生リレーエッセイ】
□初等中等教育局財務課教育公務員係 佐藤 美津子 (熊本県)

【コラム】
□年末年始に先生方と対話して考えたこと -2020年を前にした3つの懸念を軸に-
初等中等教育局財務課 課長  合田 哲雄
 

□【お知らせ】令和元年度「全国学校給食週間」について

〔初等中等教育局健康教育・食育課〕

 文部科学省では、学校給食の意義、役割等について児童生徒や教職員、保護者、地域住民等の理解と関心を高め、学校給食の一層の充実と発展を図ることを目的に、毎年1月24日から30日までの1週間を「全国学校給食週間」と定めているところです。
 本年度は下記のとおり実施しますので、お知らせします。

■主唱
   文部科学省
■実施方法
(1)文部科学省
   文部科学省では、以下の行事を実施する。 
   1  学校給食に関する展示
   2  文部科学省ホームページ、twitter等による広報活動
   3  「学校給食・食育総合推進事業」事例発表会
   4  食育授業体験会

(2)学校設置者及び学校等
   各学校設置者及び学校等においても、地域の実情に応じ本週間にふさわしい取組を推進する。

※詳細はこちら
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1299359.htm

(お問合せ先)
初等中等教育局健康教育・食育課
電話:03-5253-4111(内線)2694

 

□【お知らせ】20分で学べる!校内研修シリーズ No54 カリキュラム・マネジメント ~新学習指導要領とこれからの授業づくり~

〔総合教育政策局教育人材政策課〕

 本動画では、新学習指導要領が育成を目指す資質・能力や、それらの資質・能力を育成してくために重要となるカリキュラム・マネジメント(カリマネ)の意味、なぜカリマネを行うのかという理由などを説明しています。そして、カリマネを行う具体の手順について、学校のグランドデザインから学校評価まで順に解説しています。

※教職員支援機構ウェブサイト内
https://www.nits.go.jp/materials/intramural/054.html
ネットいじめやコーチングなど、他にも90タイトルを配信中

(お問合せ先)
独立行政法人教職員支援機構次世代教育推進センター調査企画課
電話:03-6811-0755

(本件担当)
総合教育政策局教育人材政策課教職員研修係
電話:03-5253-4111(内線2986)

 

□【お知らせ】ICT教育の推進のための著作権制度の改正について(第2弾)

〔文化庁著作権課〕

 昨年6月にお知らせしました「授業目的公衆送信補償金制度」について、その後の動きをご紹介します。
※「授業目的公衆送信補償金制度」についてのメルマガはこちら
https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1421619.htm (初中教育ニュース第361号)

 この制度の実施に向けて、権利者と教育関係者が共同で設置しているフォーラムについては、今年度はこれまで計6回開催され、本制度の運用指針の策定に向けた議論が進んでいます。
 フォーラムの場でまとめられている論点整理や主な意見等については、事務局(SARTRAS)のHPにて公開されておりますので、下記をご覧ください。
https://forum.sartras.or.jp/info/003/

 本制度は、ICTを活用した教育の質の向上を図るとともに、著作物の適法利用を進める上で、当事者双方が前向きに活用すべきものです。また、フォーラムにおいて策定を目指している運用指針は、新制度施行後における著作物の教育利用にあたって、全国の教育関係者にとって拠り所となるべきものと考えております。
 フォーラムは文部科学省や文化庁もオブザーバーとして参加しており、今後の動きについては引き続き、皆様にお届けしてまいりますので、各教育機関の設置者におかれては、制度の施行に備えて頂ければと思います。

(お問合せ先)
文化庁著作権課著作物流通推進室 企画調査係
電話:03-5253-4111(内線3165)

 

□【お知らせ】外務省主催 教育機関向け「海外安全対策セミナー」の開催について

〔大臣官房国際課〕

 近年、日本人の学生や教職員が留学・研究・旅行等で海外に渡航・滞在する機会が増加することに伴い、海外においてテロを始めとする凶悪な事件や不測の事故に巻き込まれる危険性が高まっています。
 このことをふまえ、外務省では、教育機関で海外での教職員や学生の安全管理に携わる事務担当者を対象とした「海外安全対策セミナー」を開催します。
 是非御参加ください。

※申し込み等、詳細はこちら
【大阪:2月28日開催】
【東京:3月4日開催】
https://www.sompo-rc.co.jp/seminars/view/45

(お問合せ先)
SOMPOリスクマネジメント株式会社(業務委託先)
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-24-1
電話:03-3349-9316/FAX:03-3349-4677
E-mail:kaigai-anzen@sompo-rc.co.jp

(本件担当)
大臣官房国際課企画係
電話:03-6734-2569

 

□【お知らせ】「京都コングレス」「京都コングレス・ユースフォーラム」を開催します!

〔大臣官房国際課〕

 4月20日~27日,犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議である「京都コングレス」が開催されます。また,その前週には,世界の若者が集い,非行や再犯防止における若者の役割や法遵守の文化を醸成するための若者の教育について議論する「京都コングレス・ユースフォーラム」も開催される予定です。
 安全安心な社会を支える制度や取組を知っていただくことを通じて,教育関係者の皆様に,日頃縁遠い犯罪防止・刑事司法を巡る国際的な課題について関心をお持ちいただけると幸いです。

※京都コングレスの詳細は,こちら
http://www.moj.go.jp/KYOTOCONGRESS2020/
※京都コングレス・ユースフォーラムの詳細は,こちら
http://www.moj.go.jp/KYOTOCONGRESS2020/events/youth_forum.html

(お問合せ先)
法務省大臣官房国際課 京都コングレス開催準備室
電話:03-3592-7421

(本件担当)
文部科学省大臣官房国際課
電話:03-6734-2569

 

□【お知らせ】「次世代火山研究・人材育成総合フォーラム」の開催について

〔研究開発局地震・防災研究課〕

 文部科学省委託事業「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」の中間成果報告フォーラムを開催します。
 ドローンの空中写真からの噴火の痕跡の自動抽出や噴煙の動きの高速・高精度予測など、本フォーラムでは火山研究の「今」を紹介します。
 そして今回は、次世代火山研究者育成プログラムに参加する学生による発表セッションがあり、学生目線から火山研究について語ってくれます。
 最新の火山研究成果を、高校生にもわかりやすくお伝えします。

■日時 2020年2月16日(日曜日)14時~17時(13時開場)
■場所 一橋講堂(東京都千代田区一ツ橋2丁目1-2 学術総合センター2F)
■定員 350名(応募多数の場合は先着順)
■参加費 無料(要事前登録)
参加登録はこちらから!(締切:令和2年2月12日)
http://www.kazan-pj.jp/forum2020

※次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト公式SNS
FaceBook: https://ja-jp.facebook.com/kazanpj/
Twitter : https://twitter.com/kazan_pj

(お問合せ先)
研究開発局地震・防災研究課
電話:03-5253-4111(内線4137)

 

□【お知らせ】自治体の皆様へ 地域おこし協力隊などをもっと教育に活用しませんか?

〔総合教育政策局地域学習推進課〕

 第2期のまち・ひと・しごと創生総合戦略では、「多様な人材の活躍」が新たな柱として掲げられ、社会教育に関する内容が新たに盛り込まれましたが、その中で、「ひとづくり」を通じた地域活性化を図る取組を促進するため、地域おこし協力隊等の外部人材の活用を促すこととしています。
 そのため、地域おこし協力隊や地域おこし企業人、外部専門家をもっと教育に活用していただけるよう、それらの制度の概要や教育での活用事例を紹介する特設サイトをオープンしました。具体的な事例として、地域おこし協力隊を公民館に配置した鹿児島県日置市の事例や、上記の外部人材をフル活用して高校魅力化を推進した岡山県和気町の事例を紹介していますので、是非ご覧ください。

※詳しくはこちら
https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/katsuyou/

(お問合せ先)
総合教育政策局地域学習推進課法規係 
電話:03-5253-4111(内線2977)
E-mail:chiikihouki@mext.go.jp

 

□【お知らせ】平成30年度文部科学白書<第11回>

〔総合教育政策局政策課〕

平成30 年度文部科学白書の内容について、数回に分けて紹介してまいります。
 
<激甚化する災害への対応強化 Column No.08 p.36>

 学校施設には,日常はもとより災害時においても十分な安全性・機能性を有することが求められます。
 学校施設を適切に維持管理するためには,学校施設を所有・管理する学校設置者の方々と,学校施設を利用する教職員の方々がそれぞれの立場に応じて点検等を行い,常時適法な状態を維持することが必要です。文部科学省では,「建築基準法」等の規定に基づいて学校設置者が実施すべき維持管理の必要性や制度の概要をとりまとめた「子供たちの安全を守るために―学校設置者のための維持管理手引―」を平成28年3月に作成するなど,学校施設における適切な維持管理の推進を図っています。

※詳しくはこちら
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab201901/1420047.htm

(お問合せ先)
総合教育政策局政策課政策審議第一係
電話:03-5253-4111(内線3458)

 

□【発行】「教育委員会月報」について

〔初等中等教育局初等中等教育企画課〕

 「教育委員会月報」は、文部科学省の実施する施策の論説・解説や各都道府県・市町村教育委員会の特色ある取組等の紹介など、全国の教育関係者に有用な教育行政に関する情報を提供している月刊誌です。
 1月号の特集は、「文部科学大臣令和2年年頭の所感」、「新学習指導要領全面実施に向けて 2」、「地球温暖化にまつわる概況」です。

※詳細はこちら(第一法規株式会社ウェブサイト)
http://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/100408.html

(お問合せ先)
初等中等教育局初等中等教育企画課地方教育行政係
電話:03-5253-4111(内線4676)

 

□【地方教育行政研修生リレーエッセイ】

〔初等中等教育局財務課教育公務員係 佐藤 美津子(熊本県)〕

 早いもので、文部科学省での研修も残り2月あまりとなりました。貴重な経験をさせていただいていることに感謝しながら、一日一日、精一杯務めたいと思います。
 さて、冬の味覚で熊本のPRをさせていただきます。熊本には美味しいものがたくさんありますが、柑橘類で世界一の大きさ「晩白柚(ばんぺいゆ)」はご存じでしょうか。人の頭ほどもある重量級のこのみかん。さくっとした歯ごたえとすっきり淡い酸味がくせになること間違いなしです。機会がありましたらぜひご賞味ください。
 昨年11月には、熊本地震以来3年7ヶ月ぶりに、熊本城の大小4体のしゃちほこが揃いました。熊本と大分をつなぐJR豊肥本線は地震による斜面崩壊等のため一部区間が不通になっておりましたが、今年度中に運転再開の見通しとなりました。2020年、創造的復興へ進み続ける熊本へいらっしゃいませんか。なかなか熊本までは…という方には、オール熊本アニメ『なつなぐ!』(公式Twitter https://twitter.com/NatsunaguPR )をおすすめします。首都圏及び熊本県で年明けから放映が始まりました、日本初!自治体制作の地上波ショートアニメです。熊本の風景、食べ物、そして熊本弁がたっぷりつまった5分間をお楽しみいただければと思います。
 

□【コラム】年末年始に先生方と対話して考えたこと -2020年を前にした3つの懸念を軸に-

〔初等中等教育局財務課 課長 合田 哲雄〕

 メルマガ「初中教育ニュース」をご覧いただきありがとうございます。このメルマガに財務課長としてコラムを寄せるのも今回で4回目となりました。

 この年末年始に、熊本や久留米、東京において、立場や分野を越えて地域の教育をどう盛り上げるかを考えるフォーラムや育休中の先生方を中心とした自主的な勉強会、教師自らが学びの場を創り上げることを使命とする一般社団法人Teacher's Lab.の公開イベントなどにお伺いし、教壇にお立ちの先生方と教育のあり方について対話する機会をいただきました。また、16年前に私がPTA会長をしていた小学校において肚の据わった骨太な指導で有名で、今も教壇に立っておられる先生と久々にお会いし語り合いました(余計なことですが、PTA会長になったのは34歳だったのかと、齢五十のいま時の経つ迅さを痛感しています)。
 これらの対話を通じて、教育は「人」であることや教師という仕事がいかに子供たちの人生に影響を与える創造的なものであるかを改めて認識しました。
 他方で、小学校で新しい学習指導要領が全面実施され、すべての小・中学校の子供たちが一人一台の情報端末で学ぶ「GIGAスクール構想」もスタート、給特法改正(月45時間、年360時間の上限ガイドラインの指針化など)を踏まえて学校における働き方改革が加速する2020年という年にあって、先生方がどんな不安や懸念を感じておられるのかも実感することができました。
 文部科学省として今、「学校ICT活用フォーラム」や「学校の働き方改革フォーラム」などを開催し情報発信を重ねておりますが、このコラムでは、日々の指導に全力投球なさっている先生方の率直な不安や懸念のうちよくお尋ねのある3点について対話するような形で、今年一斉にスタートする教育の変革の意味を考えてみたいと思います。

(1) いろんな改革がそれぞれの文脈で学校に押し寄せるけど、これらをすべて一身に引き受けるのは学校だから全部やるのは無理!

 そうですよね。新学習指導要領、GIGAスクール、働き方改革と畳みかけられると、そう思われると思います。また、文部科学省の説明もそれぞれの担当者が横のつながりなく説明することもあるので、なおさらです(申し訳ありません…)。
 しかし、これらの取組は決してバラバラに行われているのではなく、子供たちが未来社会を自立して切り拓くための資質・能力をはぐくむという目的を共有し、その実現のために相互に関連し合っています。
 では、「子供たちが未来社会を自立して切り拓くための資質・能力」って何でしょうか。人工知能(AI)の飛躍的進化やSociety5.0時代だから、プログラミングができて、英語を流暢に話せることでしょうか。そういう表層的なことではないですよね。
 2年前の初中教育ニュース第327号のコラムでも書きましたが、未来社会は、目の前の子供たちが新しい価値や文化を創造してわれわれ大人を乗り越えることで発展する「出藍の誉れ」時代。したがって、今、大人が子供たちにすべきことは、同調圧力のなかで付和雷同したり他人任せで考えることを止めたりするのでなく、自分の足で立って自分の頭で考え、他者と対話することの大事さを共有できる学びを提供することだと思います。
 だからこそ、
・ 教科書や新聞、新書などの内容を頭でベン図などを描きながら構造的に正確に読み取る力、
・ 歴史的事象を因果関係で捉える、比較・関連付けといった科学的に探究する方法を用いて考えるといった教科固有の見方・考え方を働かせて、教科の文脈上重要な概念を軸に知識を体系的に理解し、考え、表現する力、
・ 対話や協働を通じ、新しい解や「納得解」を生み出そうとする態度、
が大事なのですが、これらは、「書くことは考えること」という指導、多様な子供達がともに学ぶなかでの「学び合い」「教え合い」の学校文化、教科教育研究や授業研究といった固有の財産を持つ我が国の学校教育が150年にわたって重視してきた力そのものです。

○初中教育ニュース第327号(平成30年2月23日)
https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1402526.htm

 したがって、我が国の学校教育は決して「浮き足立つ」必要はないのですが、一方で、私どもの矢野和彦審議官が昨年末の初中教育ニュース第373号で指摘したように、「フェイクニュース」が広がるデジタル社会においては、情報やテキストを唯々諾々と鵜呑みにするのではなく、事実に当たったり論理的に検証したりして真偽を確かめる力も「構造的に正確に読み取る力」として求められるようになっています。
 にもかかわらず、今の子供たちのインターネットの使い方はSNSでのチャットとゲームに著しく偏っていて、24時間SNSのチャットで返事しないと仲間外れにされる、社会学で言われている「学校カースト」の序列で息苦しいといったように高い同調圧力に晒されていることも事実です。情報環境や家庭環境の変化のなかで、語彙の習得という点で小学校入学の段階からかなりバラツキのあることも深刻に受け止めなければなりません。

○初中教育ニュース第373号(令和元年12月24日)
https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1422844_00003.htm

 新しい学習指導要領が語彙を重視したり各教科の見方・考え方を働かせた主体的・対話的で深い学びを重視したりしているのは、このような背景があるからにほかなりませんが、SNSのチャットやゲームから子供たちを取り戻し、語彙を確実に習得させたり、インターネットを活用した探究や学びへと誘ったりするためには、一人一台の情報端末の整備が欠かせません。

 また、1年前の初中教育ニュース第356号にも書きましたが、学校における働き方改革は教師が教師でなければできないことに全力投球できる環境を整備し、教育の質を高めることを目的としています。

○初中教育ニュース第356号(平成31年3月22日)
https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1414646.htm

 そのような観点から、一人一台の情報端末の整備により子供たちが日々の確認テストや単元テスト、学期のまとめテストなどをCBT(computer based test)で受けたり、手書きのテストを簡単にスキャンできたりするようになれば、これらのテストについて自動採点が可能となり、採点に追われていた先生方の時間の使い方は相当変わってくるでしょう。これまですべて紙ベースで行ってきた子供たちへのノートや日記へのコメントを端末で行ったり、保護者への連絡、学校行事や保護者会の保護者の出欠管理などを行う無料アプリを使ったりすることでも大きな効果が見込まれます。

 このように、2020年に一斉にスタートする新学習指導要領、GIGAスクール、働き方改革の加速化は、子供たちの自立に向けた教育の質の向上という同じ目的を共有しており、相互に関連する形で推進してこそその目的を実現できるものです。

(2)一人一台の情報端末が子供たちに整備されたら、これまでの我が国の教育界の蓄積はもう通用しないだけではなく、生身の教師も不要!

 子供たちは教室で黙々と情報端末を操作していて教室にいるのはICT支援員のみとか、そもそも学校という仕組みも不要になって自宅で子供たちが情報端末で勉強する-そんなイメージが確かに浮かびますね。それは、教育投資、特に教師の人件費を削減したいとか、そもそも学校という仕組み自体が「オワコン」(終わったコンテンツ)で不要と思っている人たちにはユートピアなのかも知れません。
 しかし、適応指導教室やフリースクールといったオルタナティブな仕組みが必要なことは論を俟ちませんが、学校という社会制度がなくなったり教師が不要になったりすることはありません。
 そもそも、公教育は国民の意思である法律と教師の専門性という二つの基盤で成り立っています。では、国民は法律の規定を通して教育に何を要請しているのでしょうか。義務教育を例に挙げれば、教育基本法第5条第2項は、義務教育の目的を「社会において自立的に生きる基礎を培」うことと「国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うこと」と定めており、国民が義務教育に要請していることはこの規定に表れています。したがって、公教育には、子供たちへの指導と学びを通して国民から要請されたこれらの資質・能力をはぐくむ責務があります。
 知識や経験が異なり、多様な考えや発想を持った他者と対話を重ねることは面倒で、AIや他者が決めたことに従った方が楽かも知れません。しかし、自分達で社会の方向性を決めることを放棄し、すべてAIや特定のリーダーに丸投げする社会はディストピアそのもの。だからこそ、教育基本法は、あらゆる問題について、これですべて解決という特効薬はなく、複雑で課題を丁寧に解きほぐして関係者の「納得解」を得る地道な努力からわれわれは逃げるわけにはゆかないことを前提に、公教育に対して、自分の足で立って自分の頭で考え、他者と対話する力をはぐくむことを求めています。

 (1)で述べたとおり、我が国の学校教育はこのような力をはぐくむことを重視してきましたから、その蓄積が通用しなくなることはありません。創造的な授業ために真剣勝負を挑んだ150年にわたる優れた教育実践の蓄積に触れる度に、今に通じる課題についてここまで考え抜き先を見通していたのかと深く感じ入ることが少なくありません。これらの蓄積は言わば教育界の「共有財産」ですが、指導方法についての小さな違いや言葉の定義の違いから教育研究団体が多くの流派に分かれ、互いに対立する傾向があるのは本当に残念なことです。教育の目的を実現するために大同団結してもらいたいと心から願っています。

 また、一昨年6月の初中教育ニュース第335号で触れたとおり、一人一台の端末整備により、語彙の習得や算数・数学の学習などについて、理解の早い子供がどんどん学びを進めたり、過去に学んだ単元の理解が十分でない子供には振り返り学習をしたりといった個人の理解の程度に合わせた個別性の高い学びを行うことが可能となります。

○初中教育ニュース第335号(平成30年6月22日)
https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1406368.htm

 しかし、学校の役割は、知識の習得にとどまらず、習得した知識や思考を活かして、より善く生きようとかより良い社会にしようとするための教育実践を重ねることにあります。生身の教師が不要どころか、子供たちの学ぼうとする心に火を灯し、ICTを活用して単元の内容をより構造的・立体的に理解できるような授業を演出し、「学び合い」や「教え合い」でクラス全体の知識の理解の質を高めたり、討論や対話、協働を引き出したりするための教師の役割と力量はますます重要になっています。文部科学省としても、ICTを活用した具体的な指導例をYoutubeなどで積極的に発信したいと考えています。
 また、情報端末が収集できるのはあくまでも標準化されたデータであることにも留意が必要です。一人一台の情報端末の活用が、語彙や計算力といった体系化・構造化しやすい分野の反復学習のみに偏るのではなく、各教科固有の見方・考え方を働かせて単元の内容より深く理解して思考し、自らの興味や関心に基づいてどんどん探究を進めることに結びつかなければならないことはもちろんで、学習指導要領の内容事項のコード化(※)、専門的な教材や動画などのコンテンツの活用のための基盤の確立(例えば、NHKの多様なコンテンツの活用やSTEAMライブラリーの構築など)にも取り組んでいます。

(※)文部科学省「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」(令和元年6月25日)の21~22ページをご覧ください。
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/24/1418387_02.pdf

 同時に、一人一台の端末整備による教育ビックデータは大きな可能性を持つものですが、大事なのは知識理解の状況や身体機能の単なる標準化ではなく、子供たちの意欲や関心、社会的孤立などを把握し、子供たちの個別の事情や状況に応じた指導や支援を行うことであることを見失ってはなりません。
 そのことは、どのようなデータを集めるかだけではなく、そのデータを見取り、指導や支援に活かす教師の力量が重要であることを意味します。標準化されたデータをあくまで一つの材料としながら、個別の子供たちの具体的な状況に応じた指導や支援を行うことは専門性を持った生身の教師でなければできません。その意味でも、教師が不要という議論はあり得ないことがお分かりいただけると思います。

 したがって、今回のGIGAスクール構想については、専門職としての教師の立場から、情報端末はどんな機能が必要で、いかなるソフトやアプリが役に立つか、子供たちの変化を見取り、興味・関心を引き出すに当たってどんなデータが必要かなどについて、どうぞ子供たちのために存分に「我が儘」になって発信してください。特に、デジタルネイティブの若手教師の方々のアイディアや発想には大いに期待しています。管理職や教育委員会の皆さんには、このような声を大切にした子供たち第一で教師フレンドリーなICT環境整備をお願いしたいと思っております(そもそも、情報機器は「誰でも使える」ユーザーフレンドリーから最も遠いと感じておりますが、今回は子供たちと真正面から向き合う教師が誰でも使える情報端末を作り出す最大のチャンスだと思っています)。

(3)趣旨は分かったが、校長や教育委員会、首長が理解してくれないなどいろんな隘路があってなかなか改革が進まない。文部科学省の支援も不十分!

 そうですよね。いろんな隘路があることはよく分かります。中でも、周囲(特に上司)の無理解は身近で最も高い壁かも知れません。
 チョークアンドトークで十分だ、これからも鉛筆とノートで学ぶのだと言う管理職や同僚は少なくないかも知れません。働き方改革という文脈だけではなく、少子化のなかで部活動の持続可能性自体が揺らぎ抜本的な部活動改革が喫緊の課題であるなかにおいても、ある先生から、部活動指導に全力投球の教師が、勝利至上主義で土日も終日練習を繰り返して疲労骨折の生徒が何人も出てしまったことがあり、部活動で学校活性化になると管理職からも評価されているそのような教師とも敵対しないで生徒を守ることは直球勝負だけでは難しく、芯のある柔らかな対応の長期戦だったと聞かされたときには驚きました。
 しかし、それは学校だけでなく、霞が関も同じです。自戒を込めて挙げますが、難しい仕事から逃げ、「大過なく」「ミスなく」が身上の人、指令塔と称して指示だけして後は他人任せの人、評論家のように言うだけの人。こういった課長や局長に直球勝負してしまう自分の直情径行さは大いに恥じ入っていますが、子供たちではなく自己の利益を優先したり、社会の構造的変化に無頓着で自己変革なんて必要ないと思ったりしている人に共通しているのは、目の前の手段を目的と混同し、より構造的に課題を把握することをしないため、失敗を恐れて「今までどおり」「何もしない」を選択することです。
 それは時代背景もあるでしょう。みんなが同じ学びをし、同じように部活動に励み、みんなが全く同じ内容のテストを受けて、一点一分で序列化することで人材をスクリーニング(ふるい分け)してきたのは、工業化社会においてはみんなと同じことができることに価値があったからです。経済界は、状況をメタレベルで認識しゴールを設定できる人間なんか要らない、与えられたゴールに最短距離で到達できる人材がほしいと長いこと求めてきましたから、学校もそれに引きずられてきました。手段が目的化するのも当然だったのかも知れません。
 しかし、今、状況を俯瞰してゴールを設定できる力が強く求められており、子供たちの社会的な自立を目的とする学校教育において、多様な学びを通して自分の足で立って自分の頭で考え、他者と対話する力をはぐくむことが掛け値なしに重要になっています。校長先生や教育委員会の皆さん(もちろん、文部科学省職員も)にはこの学校教育の本来の目的に立ち返って、浮足立つことなく、新学習指導要領やGIGAスクール構想、学校の働き方改革を大いに使いこなし、目の前の子供たちのために必要ならばこれまでのやり方や方法を果断に変革していただきたいと思っております。皆さんの持っている権限と責任は思っておられる以上に大きいものです。今、時代の歯車を回しているのは、省庁の官僚や大企業の幹部ではなく、自分の言葉とアイディアで勝負する「筋の通った変わり者」。SNSや「学校カースト」などで増幅されている同調圧力に晒されている子供たちにとって、皆さんの勝負は大きな勇気となるのではないでしょうか。

 「いくら理想論を言われても、首長がお金をくれないからどうしようもない。」-これもよくお聞きします。もちろん、文部科学省も本年度補正予算案に2318億円計上し、国としてこれまでとは次元の異なるICT環境のための投資を行うとともに、手分けをして地方自治体の首長の皆さんに「近く全国学力・学習状況調査がCBT化されますので、一人一台の情報端末と高速大容量の通信ネットワークを整備しないと子供たちの学びや生活の状況を把握し、子供たちをしっかり支えることができなくなりますよ」と必死で説得しています。その上で、この問題こそ、「これですべて解決という特効薬はなく、複雑で課題を丁寧に解きほぐして関係者の「納得解」を得る地道な努力からわれわれは逃げるわけにはゆかない」の典型であることも認識していただきたいと思っています。地方自治体においてどうプライオリティを設定して、何に投資するかには様々な議論があるでしょう。各行政分野の担当者がそれぞれで手練手管を弄して必死に予算を獲得しようとします。教育委員会は、『ファウスト』ではありませんが、時に悪魔と契約してでも予算を獲得するという意思と腕力が必要です。学校はその教育委員会をしっかりと支えることが求められています。

 「その言葉、文部科学省財務課長にそのままお返ししたい」という声が直ちに聞こえてきます。そのようなお声をしっかり受け止め、今後ともまなじりを決して教育投資の確保に取り組みます(令和2年度予算案においては、ここ8年では最高の1726人の教職員定数の改善、学習指導員やスクールサポートスタッフ、部活動指導員といった外部人材を2万2800人配置するための経費を計上できました。教育関係者の皆さんの御支援のおかげです)。
 また、萩生田大臣のリーダーシップのもと、小学校高学年の教科担任制や低・中学年の教育課程の重点化、自治体や地域といった学校とは別の主体が実施するスポーツ・文化活動に希望する教師が兼職・兼業の許可を受けて参加する仕組みの構築(令和元年11月8日衆議院文部科学委員会における萩生田大臣の答弁)などの部活動の抜本改革、免許更新制度の10年間という期間全体での教師の研修歴、履修証明や資格の取得を累積して加算する方式への転換、全国学力・学習状況調査のCBT化などを確実に推進したいと考えております。
 これらのためには、私自身も、子供たちや学校のためなら悪魔との契約も辞さない矢野審議官といった先達の知力と腕力をしっかりと引き継ぎたいと思っております。

 子供たちと子供たちが創造する未来社会のために、このメールマガジンをお読みの皆様と対話と協働、連携を重ねたいと思っておりますので、これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

お問合せ先

初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部

03-5253-4111

(初等中等教育局「初中教育ニュース」編集部)