初中教育ニュース(初等中等教育局メールマガジン)第335号(平成30年6月22日)

[目次]

【お知らせ】
□「第3期教育振興基本計画」の策定について
□「アクティブ・ラーニング&カリキュラム・マネジメントサミット2018」の開催について
□「NITS(ニッツ)カフェ」キックオフセミナー 「教師の働き方改革 ―多忙化の改善に向けて―」の参加者募集について
□「平成29年度ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書)」の公表について
□「夏のリコチャレ2018~理工系のお仕事を体感しよう!~」の開催について
□「Make Code×micro: bit 100プロジェクト」について
【発行】
□月刊誌について
□「初等教育資料」7月号について
□「中等教育資料」7月号について
【コラム】
□「Society5.0に向けた人材育成-社会が変わる、学びが変わる-」が提起しているもの」
〔初等中等教育局 財務課長 合田 哲雄〕

□【お知らせ】「第3期教育振興基本計画」の策定について

〔生涯学習政策局政策課教育改革推進室〕

 本年3月8日に取りまとめられた中央教育審議会答申「第3期教育振興基本計画について」を受け、6月15日に政府として「第3期教育振興基本計画」を閣議決定しました。
 本計画においては、第2期計画の「自立」「協働」「創造」の3つの方向性を実現するための生涯学習社会の構築を目指すという理念を継承しつつ、人生100年時代、超スマート社会(Society 5.0)の到来に向け、「一人一人の「可能性」と「チャンス」を最大化すること」を今後の教育政策の中心課題に据えたうえで、「夢と志を持ち、可能性に挑戦するために必要となる力の育成」など5つの基本的な方針を掲げています。
 また、その5つの基本的な方針ごとに21の目標と進捗状況を把握するための指標、必要となる施策群を整理しています。さらに、今後の教育政策の遂行に当たっての留意すべき視点として、客観的な根拠を重視した教育政策の推進、教育投資の在り方、新時代の到来を見据えた次世代の教育の創造について示しています。
 文部科学省は、本計画に基づき、生涯を通じた一人一人の「可能性」と「チャンス」の最大化に向け、今後も教育政策の推進に努めていきます。
※計画の詳細についてはこちら
第3期計画について(対象期間:平成30年度~平成34年度)


(お問合せ先)
生涯学習政策局政策課教育改革推進室
電話:03-5253-4111(内線3279)

□【お知らせ】「アクティブ・ラーニング&カリキュラム・マネジメントサミット2018」の開催について

〔初等中等教育局教育課程課〕

 去る5月9日(水曜日)から10日(木曜日)に、新学習指導要領の趣旨を具体化するための知見の共有を図る「アクティブ・ラーニング&カリキュラム・マネジメントサミット2018」を開催しました。500名を超える方々の御参加の下、非常に役立ったとの声を多数いただく、有意義な会となりました。
 本サミットがより多くの地域や学校における効果的な教育実践に資するよう、当日の様子及び資料の一部を文部科学省のウェブサイトに掲載していますので、是非御活用ください。
※当日の様子や資料についてはこちら
アクティブ・ラーニング&カリキュラム・マネジメントサミット2018

※担当室長のインタビュー動画はこちら(文部科学省公式Facebook)
アクティブ・ラーニング&カリキュラム・マネジメント サミット2018~"新学習指導要領"を考える~ を開催


(お問合せ先)
初等中等教育局教育課程課教育課程企画室
電話:03-5253-4111(内線2368)

□【お知らせ】「NITS(ニッツ)カフェ」キックオフセミナー 「教師の働き方改革 ―多忙化の改善に向けて―」の参加者募集について

〔初等中等教育局教職員課〕

 独立行政法人教職員支援機構(略称:NITS(ニッツ))では、養成・採用・研修を担う大学や教育委員会など専門の教育機関の関係者と、教員や地域の方々が、教員の資質向上に関するテーマで語り合う参加型ワークショップ(NITSカフェ)を支援する事業を行っています。
 このたび「教師の働き方改革 ―多忙化の改善に向けて―」をテーマに、本年度のキックオフセミナーを実施します。工夫された取組事例やアイデアの発表を予定していますので、是非参加してください。
日時:平成30年7月30日(月曜日)13時30分から16時15分
場所:フクラシア丸の内オアゾ「C会議室」(東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビルディン15階)
申込方法:7月6日(金曜日)までに、下記URLよりダウンロードした参加申込書に記入の上、メールで
nitscafe@ml.nits.go.jp
宛て送信してください。
※キックオフセミナーの申込についてはこちら(独立行政法人教職員支援機構ウェブサイト)
「NITSカフェ」キックオフセミナー 「教師の働き方改革 ―多忙化の改善に向けて―」

※NITSカフェ事業の詳細はこちら(独立行政法人教職員支援機構ウェブサイト)
NITSカフェ(平成30年度教職大学院と教育委員会の連携・協働支援事業)


(お問合せ先)
独立行政法人教職員支援機構次世代教育推進センター調査企画課
電話:03-6811-0756/0755

(本件担当)
初等中等教育局教職員課研修支援係
電話:03-5253-4111(内線2986)

□【お知らせ】「平成29年度ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書)」の公表について


〔生涯学習政策局参事官付〕

 「平成29年度ものづくり基盤技術の振興施策」(ものづくり白書)は、経済産業省、厚生労働省、文部科学省が共同で作成しており、5月29日(閣議決定)に公表されました。
 本白書においては、「人出不足対応ができているか?デジタル人材等は確保できているか?」、「ものづくりだけで付加価値を獲得していけるのか?」といった大きな課題について、その解決に向けた具体的アクションの参考となる約150の先進事例を掲載しています。
 特に、教育研究関連では、Society5.0の実現に向けた人材育成と研究開発の推進、人生100年時代に対応する「人づくり革命」に資する人材育成について、大学等の先進事例を交え、紹介しています。
※最新版ものづくり白書の詳細はこちら(経済産業省ウェブサイト)
2018年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)


(お問合せ先) 
生涯学習政策局参事官(連携推進・地域政策担当)付
電話:03-5253-4111(内線2260)

□【お知らせ】「夏のリコチャレ2018~理工系のお仕事を体感しよう!~」の開催について


〔生涯学習政策局男女共同参画学習課〕

 内閣府・文部科学省・日本経済団体連合会は共催で、2018年7月より夏休み期間を利用して、女子中高生等の理工系分野への進路選択を応援するため「夏のリコチャレ2018~理工系のお仕事を体感しよう!~」を開催します。
 女子中高生の皆さん、今年の夏は素敵な理工系の未来を探しに行きませんか。
※イベントの詳細についてはこちら(内閣府特設ページ)
 夏のリコチャレ2018


(お問合せ先)
内閣府男女共同参画局推進課
電話:03-5253-2111(内線37538)

(本件担当)
生涯学習政策局男女共同参画学習課男女共同参画企画係
電話:03-5253-4111(内線3268)

□【お知らせ】「Make Code×micro: bit 100プロジェクト」について

〔生涯学習政策局情報教育課〕

 情報機器や情報サービスに関する業界団体である、Windows Digital Lifestyle Consortium(WDLC)は、小学校のプログラミング教育を応援する新たなプロジェクト「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」を開始しました。(後援:未来の学びコンソーシアム)
 このプロジェクトは、WDLCの「プログラミング教育授業案」を実際の教育現場で活用いただき、その事例が新たな実践につながる仕組みを作ることを目的としています。希望する小学校100校にmicro:bitを20個ずつ、合計2000個を無償提供し、各校はWDLC開発の授業案などを参考に授業を実践します。実践した具体的な内容はWDLC特設サイト上に公開され、教育の現場に活用頂ける共有財産が創出されることを目指しています。
募集期間:6月20日(水曜日)から7月6日(金曜日)
※申込方法や詳細はこちら(WDLC公式ウェブサイト)
MakeCode × micro:bit 100PROJECTとは?


(お問合せ先)
WDLC事務局            
電話:03-4535-8002(受付時間:10時00分~16時00分 ※12時00分~13時00分を除く)


(本件担当)
生涯学習政策局情報教育課情報教育振興室情報教育推進係
電話:03-6734-2090

□【発行】月刊誌について

〔初等中等教育局初等中等教育企画課〕

<教育委員会月報>
 文部科学省の実施する施策の論説・解説や各都道府県・市町村教育委員会の特色ある取組等の紹介など、全国の教育関係者に有用な教育行政に関する情報を提供している月刊誌です。
 6月号の特集は、「高等学校学習指導要領の改訂について」と「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」です。
※詳細はこちら(第一法規株式会社ウェブサイト)
教育委員会月報

(お問合せ先)
初等中等教育局初等中等教育企画課教育委員会係
電話:03-5253-4111(内線4678)

□【発行】「初等教育資料」7月号について

〔初等中等教育局教育課程課〕

 7月号、特集1のテーマは「資質・能力の育成に向けた授業づくり」です。新学習指導要領で今求められている授業づくりのポイントについて、6月号に引き続き特集します。
 特集2のテーマは「他者と協働する音楽科の学習指導」です。音楽科の授業の質的な改善に向けた他者と協働する学習指導について、論説、鼎談(ていだん)、実践例を通して考えます。
※詳細はこちら(株式会社東洋館出版社ウェブサイト)
初等教育資料


(お問合せ先)
初等中等教育局教育課程課教育課程第一係
電話:03-5253-4111(内線2916)

□【発行】「中等教育資料」7月号について

〔初等中等教育局教育課程課〕

 7月号から11月号まで「高等学校学習指導要領の改訂と各教科等の展望」と題して特集します。7月号はその第1弾として、平成30年3月に公示された高等学校新学習指導要領の国語、外国語を取り上げ、改訂の趣旨及び要点について解説するとともに、各教科における今後の指導の在り方等について紹介しています。
※ 詳細はこちら(学事出版株式会社ウェブサイト)
中等教育資料


(お問合せ先)
初等中等教育局教育課程課教育課程第三係
電話:03-5253-4111(内線3706)

□【コラム】「Society5.0に向けた人材育成-社会が変わる、学びが変わる-」が提起しているもの

〔初等中等教育局 財務課長 合田哲雄〕


 メールマガジン「初中教育ニュース」をお読みいただき、ありがとうございます。文部科学省初等中等教育局財務課長の合田です。


 林芳正文部科学大臣は、6月5日に政策ビジョンを公表しました。


◆Society5.0に向けた人材育成-社会が変わる、学びが変わる-(※国立国会図書館ホームページへリンク)別ウィンドウで開きます


 このコラムでは、今回の政策ビジョンの基本的な考え方や文部科学省としての「思い」についてご説明したいと思います。


(この政策ビジョンをお読みになると…)
 Society5.0、人工知能(AI)、EdTech…。今回の政策ビジョンにはこれまで文部科学省の学校教育関係の文書にはあまり出てこない単語が多く盛り込まれています。特に、子供達の知的好奇心を刺激し、それぞれの教科固有の見方・考え方を働かせて考え抜く学びを展開している先生方のなかには、「文部科学省は我が国の学校教育の財産を等閑視して、新しいメディアや技術に飛びついているのではないか」と疑問を持たれた方もおられることでしょう。他方で、「これだけの大きな構造的な変化のなかで我が国の教育はガラポンで一新しないといけない」という危機感もあろうかと存じます。


(我が国の学校教育の良さを引き出すために)
 結論から申し上げれば、今回の政策ビジョンは、我が国の教育が大事にしてきた大きな蓄積を社会全体でもう一度捉え直し、これまでの教科教育の蓄積やベテランの先生の技量をEdTechなどにより可視化・共有するとともに、一人一人の子供に寄り添った多様で質の高い学びを実現することで、いまの大人たちを越えるような社会創造の担い手を育成することを目指しています。その上で、このような学びを実現するに当たっての三つの課題((1)個別最適化された学びをいかに公正に提供するか、(2)読解力などの基礎的な力を確実に習得させる仕組みをどう構築するか、(3)高校から大学にかけての文理分断の学びをどう脱却するか)を乗り越える政策的な方向性を打ち出しています。


(Society5.0において子供達に求められる力)
 まず議論したのは、Society5.0とは何か、Society5.0において学校はどのような役割を担うのかという点でした。その議論は「本文」の第1章、第2章、そしてその最後に添付されている資料「Society5.0に向けた学校ver.3.0」にまとめられています。
Society3.0(工業社会)、Society4.0(情報社会)に続く、Society5.0(超スマート社会)においては、私たちの身の回りに存在する様々なセンサーや活動履歴(ログ)等から得られるビックデータが、AIにより解析され、その結果がインターネットに接続されることにより、様々な分野において作業の自動化等といった革新的な変化が生じるとされています。しかし、AIの本質はアルゴリズムであり、少なくとも現在のAIは情報の意味を理解している訳ではありません。Society5.0において、人間としての強みを発揮するために求められる力は、(1)文章や情報を正確に読み解き、対話する力、(2)科学的に思考・吟味し活用する力、(3)価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心、探究心などであり、これらは、「書くことは考えること」という指導、多様な子供達がともに学ぶなかでの「学び合い」「教え合い」の学校文化、教科教育研究や授業研究といった固有の財産を持つ我が国の学校教育が150年にわたって重視してきた力そのもの。2017年に公示された新しい小・中学校学習指導要領も、同じ認識に基づき、主体的・対話的で深い学びの実現のための授業改善を図り、語彙を表現に活かす、科学的に思考する、数学を日常生活に活かすといった学びを重視し、学習意欲や他者と協働しようとする態度の育成を目指しています。
初中教育ニュース(初等中等教育局メールマガジン)第327号(平成30年2月23日)


(EdTechと学校教育の可能性)
 他方で、日々の授業を支えるテクノロジーは日々進化し、「私たちの身の回りの存在する様々なセンサーや活動履歴(ログ)等から得られるビックデータが、AIにより解析され、その結果がインターネットに接続されることにより、様々な分野において作業の自動化等といった革新的な変化が生じる」ことは学校教育でも生じつつあります。
 例えば、多くのベテランの先生方は、その経験と蓄積により、子供達の誤答を見ればどの単元の学びの理解が不足しているためにこのような間違いをしたのかが分かります。AIはベテランの先生方の経験知や暗黙知を可視化し、共有する上で最高の道具立てです。たとえば、埼玉県戸田市では「リーディングスキルテスト」の結果が指導に活用され、成果をあげています。
 これらのテクノロジー(EdTech)が確立すれば、本文巻末の「Society5.0に向けた学校ver.3.0」にあるとおり、学校を中心とした子供達の学びは、基礎学力の確実な定着にしても、個人の関心や特性に応じた学びにしても「個別最適化」が可能になります。だからといって、学校における集団を軸にした教育が不要になるわけではありません。むしろ逆で、人間としての強みを発揮する上で不可欠な、他者と協働して知識を活かし、より善く生きよう、より善い社会にしようという資質・能力を育む上で、学校における集団を活かした学びは益々重要になってきます。その際、EdTechにより「個に応じた指導」や「指導と評価の一体化」といったこれまで我が国の学校教育が目指してきた指導の質的転換が可能となれば、我が国の学校教育の可能性は大きく広がると申し上げてよいでしょう。


(乗り越えるべき三つの課題への対応)
 ただし、このような学校教育の進化に当たっては、(1)個別最適化された学びをいかに公正に提供するか、(2)読解力などの基礎的な力を確実に習得させる仕組みをどう構築するか、(3)高校から大学にかけての文理分断の学びをどう脱却するか、という三つの課題があります。これらについての議論をまとめたのが「本文」の第3章です。

 第一は、この個別最適化された学びの具体的な姿を教育関係者や子供達、保護者と共有し、このような学びが公正に提供されるような仕組みを確立することです。前述のとおり、EdTechは「個に応じた指導」や「指導と評価の一体化」といった我が国の学校教育が目指していた教育の質的転換を一気に加速させる可能性を持っていますが、まだまだ関係者の間で具体的なイメージが共有されたり、その効果が認識されたりしているとは言えません。経済産業省の「未来の教室」事業とも連携しながら、学習の個別最適化や異年齢・異学年など多様な協働学習のためのパイロット事業を展開し、その成果を関係者の間で共有し、これまでの我が国の教育の蓄積とEdTechとの融合やその横展開を進めたいと考えています。その際、お金がなければこのような学びが受けられないということがあってはなりません。公正に提供されるための仕組みを構築することは文部科学省の重要な責務です。年間1800億円措置されている学校のICT環境整備のための地方財政措置(地方交付税交付金)が市町村において確実に子供達の学びの環境の充実のために投じられるように、首長や地方議会にも積極的に働きかけてまいります。

 第二は、読解力などの基礎的な力はSociety5.0において人間としての強みを発揮する上で益々必須の力になっており、その確実な習得が可能な環境が必要だということです。昨年の学習指導要領改訂においても、家庭環境や情報環境の変化を踏まえ、小学校低学年では身の回りの語彙、中学年では感情を表す語彙、高学年では思考を表す語彙といった語彙の確実な習得や共通-相違、原因-結果、具体-抽象といった情報と情報の関係性の理解など、教科書の内容を正確に理解するための学びを重視しています。しかし、今後確立しなければならないのは、日々の授業のなかで読解力などの習得の状況を把握し、習得が不十分であればその子供に必要な振り返り学習を提供するといった学びのサイクルであり、その確立にはEdTechが有効です。また、学校の指導体制の確立も欠かせません。小学校高学年における専科教員の配置を推進するとともに、低迷する小学校教員採用試験の志願倍率などを踏まえ、小学校と中学校といった複数の学校種の免許状取得を可能とするなど教員免許制度の在り方も見直します。

 第三は、AIは数式(数学)であり、そのエンジニアには物理学が求められるなど、STEAM教育(理数、アート)の重要性が増しているなか、我が国において高校から大学にかけて文系・理系に分かれているという文理分断を脱却することが求められていることです。例えば、高校生の7割が普通科で学んでおり、その7割がいわゆる文系を選んでいますから、高校生の半分は普通科文系ということになります。他方、大学生の5割は人文・社会科学系学部に在学しています。この普通科文系から人文・社会科学系学部へというコースのなかで、少なくない高校生が高校2年以降理数科目をほとんど履修していないとすれば、未来社会においてリスクの高い学びだと言わざるを得ません。昨年末にお伺いした長崎県立長崎西高校は生徒の3分の2は理系とお聞きし、未来の学校を見ているように感じましたし、入試で数学を課すという早稲田大学政治経済学部の大変な英断もこのような文脈でより深く理解できると思います。高校における文理分断の改善を図るとともに、大学における専攻分野のポートフォリオを変更していくための具体的な施策について現在、省内で議論を続けています。
 他方で、長野県飯田市では牧野光朗市長の強いリーダーシップのもと、長野県飯田OIDE長姫高等学校、松本大学、飯田市の三者によるパートナーシップ協定を締結し、地域人教育を通じて地域の良さを学んだり、コミュニティを支える意欲や能力を育てたりすることに取り組んでいます。高校生になったら地元や地域と切り離されるのではなく、地方創生の核として、生徒が「やりたいこと」を見つけられる高校への転換も重要であり、文部科学省としてもこのような高校を支援し、横展開を支えたいと思っています。


(立場を越えた対話と連携の重要性)
 このように今回の政策ビジョンは、これまで進めてきた学習指導要領の改訂や高大接続改革、教職員定数の改善などの条件整備といった施策が、我が国の学校教育の良さを引き出し、共有し、発展させることがAI時代において求められているという基本的な認識で貫かれていることを改めて明確にしています。その上で、EdTechといったテクノロジーの進化がこのような良さの共有や進化を加速させる大きな可能性を持っていることを踏まえ、その可能性を引き出す上で考えられる三つの課題をどう乗り越えるかについての政策的な方向性を示しました。
 したがって、まだまだ施策として具体性がなく物足りないと思われた方も多いと思います。この政策ビジョンで示された方向性を実現するために、文部科学省として具体的なスケジュールを明確にしながら、来年度の概算要求に関連施策を盛り込むなどの具体的な施策を実施してまいります。また、さらに大事なのは、立場を越えた関係者の対話と連携です。学校の先生方はもとより、20代でNPOを立ち上げたり、起業したりして時代の歯車を回し、イノベーションで社会をけん引している若いパイオニアの方々や企業、経済産業省、総務省などともしっかりと対話し、熟議を重ねたいと思っております。

 私自身、自らの学校時代を含めて、知識を確実に習得させるとともに、教科固有の見方・考え方を働かせて考え抜き、その教科を学ぶ意味を実感させる授業を展開する多くの先生方に出会うことができました(もちろん、そのような魅力的な授業を展開する先生ばかりではありませんでしたが)。例えば、歴史の先生は、歴史教科書の脚注をただ覚えろという指導のためではなく、歴史を知る楽しさ、歴史を学ぶ意味、歴史を因果関係で捉えて考えることの社会生活における重要性を伝えたいと思って教職を志し、日々の授業の構想を練り、工夫しておられます。EdTechは、時に教科の枠組みを越えてでも、教科の魅力と重要性を子供達に伝える最大の武器になります。だからこそ、学校のICT化については、提供されたタブレットなどを使うという受け身の姿勢ではなく、教壇にお立ちの立場から、こんなタブレットやソフト、システムがあれば、これまで我が国の教育界が培ってきた財産を引き出し、共有し、さらに進化させることができるとったアイディアをどんどん出していただきたいと思っております。学校のICT化を支えているメーカーや教育関係のベンチャーの方々と対話していて、これらの方々が最も求めているのは、子供達のために必死で汗をかいている先生方の本音だと痛感しております。文部科学省、経済産業省、総務省で構成している「未来の学びコンソーシアム」といった立場を越えた対話と連携のためのプラットフォームを積極的に活用したいと考えています。


 文部科学省は、今回の政策ビジョンを関係者の間の議論や対話のための一つの土俵としながら、日々の授業や子供達の学びをしっかり支えるために誠心誠意取り組んでまいります。引き続きどうか宜しくお願い申し上げます。


お問合せ先

初等中等教育局

「初中教育ニュース」編集部
電話番号:03-5253-4111

(初等中等教育局「初等中等教育ニュース」編集部)

-- 登録:平成30年06月 --