木造校舎の建設に伴う木育学習の実施                  【技術的課題解決事例】

身延町立身延中学校(山梨県身延町)

事例のポイント

子供達に、「木を使うこと」が持続可能な森林保全に寄与することを学んでもらうため、木造校舎建設時に様々な木育学習を実施している。

地域連携・複合化 木造 環境教育・木育

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概要

木造校舎ならではの木育学習の実施

山梨県身延町は、山梨県の南部に位置し、山間のみどり豊かな自然あふれる地域。旧校舎は、1970年に建築され老朽化が進む中、2018年に通学格差を減らして平準化を図ることを目的として、身延町立学校施設整備計画が策定され、町の中央に新校舎の建設が進めらることとなった。
校舎を新築するにあたり、身延中学校新校舎等整備基本計画検討委員会を設置して 、木造と鉄筋コンクリート造のメリット・デメリットを比較検討し木造校舎に決定した。町内唯一の中学校校舎の建設であり、生徒たちに身延町への愛着を持ってもらうため、身延町行政だけでなく地域を巻き込んだ建設を目指した。
未来を担う子供たちが「木を使うこと」が持続可能な森林保全に寄与することを学んでもらうこと、また地元木材をふんだんに使用した校舎建設に携わることで、町や新校舎に愛着を持ってもらい、身延町の将来を支える人財を育てることを目的に、下記①~⑥の木育学習を実施した。
1.キャリア教育(建築設計業者):小学4~6年生対象(166名)
2.キャリア教育&工事現場見学(建築工事業者):中学1年生対象(45名)
3.梁への寄書き:小学3~6年生対象(183名)
4.上棟式への参加:中学2~3年生対象(103名)
5.給食センター見学会:小学1~2年生対象(80名)
6.手漉き和紙材料製作:小学生6年対象(49名)

1.キャリア教育(建築設計業者)小学4~6年生対象(166名)

子供たちへ、「木造校舎」の紹介を通じ「建築設計士」の職業を紹介することで、将来の職業や木造建築物への関心を高め、職業の選択肢を増やすことを目的にキャリア教育を行った。

2.キャリア教育&現場見学(建設工事業者)中学1年生対象(45名)

完成後「木造校舎」に通う予定の生徒たちが 、建設中の現場見学を行う中で、工事現場で働く多くの方々の役割や連携を理解し、将来の生き方・働き方を考え、様々な職業選択を可能とすることを目的にキャリア教育を行った。

3.梁への寄書き 小学3~6年生対象(183名)

新校舎に通う子供たちが建設工事から携わり、新校舎の梁に名前や夢・目標を書いてもらうことで、中学校を卒業した後も身延中学校・身延町への愛着を持てるよう、梁への寄せ書きを行った。

4.上棟式への参加 中学2、3年生対象(107名)

昔はしきたりとして、上棟の際「建前(餅まき)」を行っていた。昨今は、色々な行事が簡略化している中で、中学生に古式ゆかしき「建前(餅まき)」を体験してもらい建物建築への興味や新校舎へ愛着を持ってもらいたいとの思いから実施。併せて建設中の木造校舎現場の内部を見学することで、建設過程における各業種の役割などの学習を行った。

5.給食センター見学会 小学1、2年生対象(80名)

町内全ての児童・生徒たちに建設工事へ携わってもらいたい思いはあったが、小学1、2年生は低年齢のため建設現場には招かなかった。その代わりに同時期に施工し8か月前に完成した身延町学校給食センターの見学会を開催。説明時に中学校建設状況の映像を流しながら校舎説明を行った。

6.手漉き和紙材料製作 小学6年生対象(49名)

新校舎のメインスペースである木の香ホール。
大階段の手摺に町特産の西嶋和紙を挟み込んだガラス手摺を採用している。その和紙の材料となる楮(こうぞ)や三椏(みつまた)をほぐす過程で、皮などの異物を取り除く作業を子供たちが行い、和紙の材料制作を行った。

その他

図書館
木の香ホール
工事現場見学の様子
梁への寄せ書きの様子



学校概要

学校名
身延町立身延中学校
所在地
山梨県南巨摩郡身延町下山9667番地
全体工期
令和5年6月~6年3月
学校規模
9学級、19人(令和7年4月現在)
主な使用樹種
スギ、ヒノキ、カラマツ

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