事例概要
既存校舎における音環境課題と改善の方向性
既存学校施設においては、上階からの生活音や体育館の床衝撃音の伝搬、用途変更に伴う音環境の不適合などが学習環境および教職員の執務環境に影響を与える課題となっている。
特に授業中の集中阻害や執務時のストレス原因となる他、図書室や管理諸室など静穏性が求められる空間においては、環境改善の必要性が指摘されている。
本取組では、天井裏に制振・吸音機能を付加することで音の伝搬経路に働きかけ、既存天井内において施工可能な手法により音環境の改善を図った。
事例のポイント
燕市立小池中学校
上階の音伝搬による音環境の改善
燕市立小池中学校では上階教室での授業や日常的な活動に伴う足音や生活音などが天井を介して伝わり、特に静穏性が求められる校長室での来客対応や執務時の集中を妨げる要因となっており、音環境の改善が求められていた。
これに対し、既存天井を活かしながら天井裏に制振・吸音機能を有する部材を設置することで、音の伝搬経路に働きかける対策を実施した。施工は下階から行い、既存の天井仕上げを大きく変更することなく対応している。
その結果、上階から伝わる生活音等の低減が体感的に確認され、校長室における執務環境の改善に繋がった。日常的な使用の中で音のストレスが軽減されたとの評価を得られている。
本取組は当初、校長室における環境改善を目的として導入されたものであるが、同様の課題が校内の他教室にも存在していたことから、効果への期待のもと、職員室や教室を含めた空間への展開が図られている。用途や規模の異なる空間においても音環境の改善が体感されており、校内全体での環境向上に寄与している。
渋谷区立神宮前小学校
●用途変更に対応した音環境の改善
渋谷区立神宮前小学校では体育館下に位置する多目的室を図書室へと用途変更するにあたり、静穏性が求められる利用形態に対応するため、音環境の改善が求められていた。これに対し、繊維系吸音材では低減が難しい上階からの固体伝搬音(重量床衝撃音)を抑制するため、天井内に制振・吸音機能を有する部材を設置した。あわせて施工前後で音環境の測定を実施し、音の変化を定量的に比較・検証することで、対策の有効性を可視化する取り組みを行った。
施工後の測定結果では上階からの音の伝わり方に変化が確認され、音環境の改善が数値として把握された。これにより図書室として求められる静穏性(L55)に配慮した空間整備が実現し、用途に適した環境が確保された。
本事例では用途変更が前提となる中で、音環境への配慮を行った。さらに定量的な検証を通じて、その改善効果を「数値」として示した点に特徴がある。これにより環境整備の妥当性を裏付けるとともに、計画段階における意思決定の根拠として活用できる判断材料としての活用も可能となった。
●施工前後の音環境の測定
体育館を音源室、多目的室を受音室とし、制振・吸音機能を有する部材の有効性の確認試験を行った。
●測定方法
JIS1418(建築物の現場における床衝撃音レベルの測定方法)
●判定方法
JIS1419(建築物の遮音等級)による
●測定機器
・騒音計
(積分型普通騒音計NA-28)
・バングマシン
(重量床衝撃音発生器FI-02)
・タッピングマシン
(軽量床衝撃音FI-01)
●施工前後の結果
日本建築学会の指針では、L-55は学校施設における好ましい遮音性能水準の目安とされ、本事例においても、求められる静穏性の確保に対し、適切な性能水準に到達していると評価できる。
(注)実際に用途変更した教室は別の多目的室だが制振・吸音機能を有する部材の有無を比較するため、既存天井のある図書室と同規模の多目的室のデータを比較

出典:日本建築学会「建築物の遮音性能基準と設計指針「第二版」」
学校概要
- 学校名
- 燕市立小池中学校
- 所在地
- 新潟県燕市
- 学校規模
- 171人(2026年4月時点)
- 全体工期
- 44日
- 学校名
- 渋谷区立神宮前小学校
- 所在地
- 東京都渋谷区
- 学校規模
- 345人(2025年4月時点)
- 全体工期
- 19日