改修概要
福井県福井市では、原則1小学校区ごとに1公民館が設置されており、地域に密着した職員体制のもと、社会教育、生涯学習の拠点、地域コミュニティの活動拠点として役割を果たしている。
順化小学校は昭和41年(1966年)竣工から50年以上が経過し老朽化が進むとともに、児童数の減少から余裕教室が生じていた。また、同地区内にある公民館は、昭和45年(1970年)に建設され、老朽化と耐震性の問題から建て替えや移転の必要があった。
そこで、順化小学校校舎の長寿命化改修に合わせ、学校に公民館の機能を移転し、小学校と公民館の複合化により学校施設の有効活用を図った。福井市内で初の小学校と公民館の複合施設である。
3階建校舎のうち、高齢者らも利用しやすいように1階に公民館を配置。玄関はバリアフリー化してスロープを設けた。小学校は2、3階に配置し、普通教室は日当たりがよく騒音の少ない南校舎に集約し、道路に近接した北校舎には特別教室や児童クラブ等を配置するなど、ゾーニングを刷新した。会議室や調理室については学校と公民館の共有で運用している。
複合化にあたり、児童の安全確保のために防犯カメラを増設するなどの防犯対策を講じ、共用で利用する部屋の運用や管理主体等についても関係者の意見をすり合わせながら改修事業を進めた。公民館で活動する自主グループが小学校活動で指導にあたるなど、地域と一体になった社会教育を目指し、教育環境の向上と地域コミュニティとの接点をつくり上げた。
改修ポイント1
公民館との複合化のためのレイアウト




公民館は高齢者等に配慮して1階に配置し、ハートフル駐車場とスロープを設けた出入口を設置した。普通教室は日当たりが良く騒音の少ない南校舎に集約し、道路に近接した北校舎には特別教室や児童クラブ等を配置した。
改修ポイント2
公民館利用者と児童の交流

調理台が6つ並ぶ調理室

1階に位置する会議室や調理室は学校と公民館で共有で運用している。お互いの交流が生まれるなどの利点がある一方、調理台の高さなど使い勝手の課題もある。
改修ポイント3
児童の安全確保
児童の安全確保のため防犯カメラを増設したほか、小学校玄関だけでなく 公民館玄関にも学校同様のインターホン、電子錠を設置して建物の出入をチェックするとともに、建物内の相互間扉を施錠できるようにしている。
また、工事中の児童の安全確保のため、第1期工事では全ての機能を一旦北校舎に移して南校舎を施工、その後夏休み期間中に学校機能を南校舎へ移し、 北校舎及び渡り廊下棟部分を第2期工事として施工した。
改修プロセス
保護者等の関係者や地域住民との合意形成
市の施設マネジメント計画(平成27年3月)において、地域施設や学校施設の有効活用のための手法として複合化を位置づけており、それを踏まえて検討を実施した。
保護者等の関係者への説明と併せ、公民館複合化検討委員会を開催するが、整備手法が複合化ありきだという反対意見が上がった。そのため、①耐震化、②現地建替、③移転新築、④小学校敷地内新築、⑤複合化、の5つの整備手法案を改めて示し、そのうえで⑤複合化に概ね了承を得た。
また、部屋を学校と公民館で共用で利用する際の運用や管理主体等について、各関係者の意見をすり合わせながら、学校と地域コミュニティとの接点をつくることを実現した。
学校概要
※整備当時
- 学校名
- 順化小学校
- 所在地
- 福井県 福井市
- 全体工期
- 令和2年2月
- 学校規模
- 6学級(2)、123人 ※学級数のカッコ内は特別支援学級数を表す。
- 敷地面積
- 14,274㎡
- 保有面積
- 校舎 3,587㎡ / 屋体1,520㎡
- 竣工年
- 1966(昭和41)年
主な改修内容
【長寿命化】
- コンクリートの中性化対策、鉄筋の腐食対策及び鉄筋のかぶり厚さの確保
- 屋上、外壁への耐久性に優れた材料の使用
- 断熱(屋上、壁)、強化複層ガラスによる省エネルギー対策や安全対策
- 建具取替、内部(床・壁・天井)改修
- 照明器具のLED化、空調設備の設置、給排水配管・器具更新
【複合化】
- 公民館玄関ポーチの増設、スロープの整備
- 公民館と学校が相互に利用できる調理室、大ホール等の整備
- 駐車場の拡充及びアスファルト舗装