改修概要
和歌山県新宮市では学校編成計画において、小学校4校を2校に統廃合し、うち1校を新築、1校は改修とする方針が示された。改修となる本校は、1955(昭和30)年築の旧蓬莱小学校と1982(昭和57)年築の旧王子小学校の統合校となる。旧蓬莱小学校は老朽化が著しかったため、比較的新しい校舎の旧王子小学校を長寿命化改修と増築し、統合校の新校舎とすることになった。
改修事業は、地域や統合学校関係者の交流を促すため、ワークショップ等を実施して小学校像のビジョン・教育目標を共有しながら計画を進めた。
工事期間中は仮設校舎で対応し、教育活動の縮小を補うために社会見学や施設訪問など、地域教育を取り入れることで仮設校舎の設備では学習できないところを補うようにした。
改修前は教室内や廊下の幅が狭く、施設全体が経年劣化による老朽化が進んでいたところ、内装を地域材で木質化することで改修でありながらイメージを一新させ、一部を増築することにより教育環境の充実を図った。中庭に図書室を増築し、学校の中心に配置。地域のボランティア室を設けて、図書室を活用した地域教育拠点を目指している。
低学年の教室は1階に配置し、教室の一部を増築して「デン」や「アルコーブ」を設けて、児童の居場所を確保している。また、中高学年の教室の周りには余裕教室や多目的スペースを確保して快適で柔軟に対応する学習環境とした。
改修ポイント1
児童の居場所を確保し、教育環境を向上




教室空間を確保するため、一部増築により、低学年は教室前に縁側空間とアルコーブを設けて教室の充実を図り、中高学年は余裕教室の転用とグラウンド側への増築でオープンスペースを設けた。

体育館は、WiFi環境が整備されており、端末を活用して授業を行うことができる。ICT化の推進として、各教室へのモニター設置、電子黒板を導入した。
改修ポイント2
地域交流を含めた学校図書教育


中庭に図書室を増築し、校舎の中心に配置。図書室内に地域ボランティア室を設置し、地域交流を含めた学校図書教育を進める方針とした。
改修プロセス
ワークショップやアンケートを実施し、地域と一体になって教育環境を整備
統合による改修事業の基本計画の検討において、統合対象校の既存施設と活動の様子を調査するとともに、児童と教職員を対象としたアンケートや各種のワークショップを行い、意見交換や意識の高揚、課題の解決を図った。ワークショップは統合校の関係者の交流を促すことも目的とし、地域連携や施設開放をテーマとしてグループ討議やアンケート報告などを行った。
また、統合校建設協議会を設置し、学校関係者の他に公民館長、民生委員、町内会長などが参加して、施設全般にかかる意見の集約を行った。統合校建設協議会と教職員連絡協議会は、検討状況を共有し、目指すべき学校像など教育面に関わるビジョン・目標を議論しながら計画を進めた。

学校概要
※令和3年4月当時
- 学校名
- 新宮市立王子ヶ浜小学校
- 所在地
- 和歌山県新宮市
- 全体工期
- 平成18年7月1日~平成24年12月20日
- 学校規模
- 17(5)学級、334人 ※学級数のカッコ内は特別支援学級数を表す。
- 敷地面積
- 13,546㎡
- 保有面積
- 校舎 5,644㎡ / 屋体 838㎡
- 構造
- 校舎 RC造3階建 / 屋体 RC造2階
- 建竣工年
- 1981(昭和56)年
主な改修内容
【老朽改修】
- トイレ改修
- 外壁改修
- 内装改修
【教育環境の向上】
- 増築により各教室の空間を拡充。アルコーブやデンを配置。
- 増築により図書館を学校の中心に配置
- 校長室と職員室をグラウンドが見える位置に移動するなど、レイアウトを見直し
- スロープを設置しバリアフリー化
- 地域材を用いた内装木質化によりイメージを刷新
- 給食調理室を児童の動線と交錯しない位置へ移設するとともに、面積を拡充しドライ化
- 太陽光パネル(災害時用電源)の設置
平面図


