小学校と地域コミュニティの複合施設で、地域に根ざした教育環境を整備

桐原小学校(滋賀県近江八幡市)

学校の耐震化対策と合わせて、地域のコミュニティセンター・小学校・学童が一体となった「コミュニティエリア」を整備した複合施設で、防災拠点としての役割も果たす小学校に改築。

耐震化 地域と連携 防災 改築 柔軟な学習空間 対話型設計 複合化 小学校

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改修概要

地域のコミュニティ拠点にある小学校

桐原小学校は明治8年(1875年)に開校。3棟あった旧校舎のうち最も古い校舎は昭和50年(1972年)に竣工され、築後40年以上が経ち、施設の老朽化が進んでいる上に耐震性能が著しく不足していたことから使用禁止としプレハブ教室が使われるなど、教育環境の改善が求められていた。

近江八幡市では、東日本大震災を契機として、学校の耐震化対策と合わせて、地域活動の利便性の向上と地域防災拠点とするために、小学校をコミュニティセンターとの複合施設として整備を進めて行くことを決めた。「桐原コミュニティエリア」はその5例目となり、地域コミュニティ拠点として、小学校・コミュニティセンター・子どもの家(学童保育)からなる複合施設である。老朽化した小学校を建て替える上で、環境設備を整え、地域と学校が連携して子どもの教育に携われるような体制を整えた。

学校と保護者、地域住民がともに知恵を出し合い、協働で子どもたちの豊かな成長を支えていくことや、コミュニティセンターが小学校と連携し、学区の防災の司令塔としての役割も持たせていくことが複合化の整備方針として掲げられた。

学校施設を利用し、地域の人による子ども食堂を年4回実施し、地域の人が気軽に訪れるようにしたり、課外活動には地域の人がボランティアで参加するなど、地域と学校が連携しやすい体制をつくっている。

改修ポイント1

地域のコミュニティ・防災拠点としてのコミュニティエリア

コミュニティーセンター入口から見た小学校の門の写真
小学校の入口は門扉等でセキュリティ上、区別された中にある
桐原小学校1階部分の平面図

桐原小学校は地域の防災拠点となるため、コミュニティエリアの人口の約1割となる1700人を収容できるように設計され、体育館や多目的ホールはコミュニティセンターと小学校の中間点にあり、夜間、休日など小学校で使わない時には地域開放し利用可能となっている。

体育館の床はラバーとなっており、シートを敷かなくても、すぐに行事や避難所として使え、災害時には断熱の効果も期待できる。また体育館は備蓄倉庫を備えており、冬用のヒーターやロールシート、毛布、水などが備蓄されている。
学校が避難所となった場合は、体育館、多目的ホール、学校1階の施設へと段階的に使えるように整えられ、教室は教育の場として確保されている。

改修ポイント2

景観保護・子どもの安全管理にも寄与する2階建構造

校庭から見た小学校及びコミュニティセンターの外観。校庭は全面、天然芝のつくり
2階、教室前の廊下の様子

田園の中に整備することによる景観への配慮から勾配屋根で2階建てを基準とした。
1階エリアには全ての管理部分(職員室や校長室、休憩室)を集約したことで、職員が学級園や花壇を含む運動場エリアを見渡せ、生徒の様子を見守りやすい配置とした。

2階エリアには1~6学年までの教室をひとつのフロアに集めることで異学年の交流を生み出している。また、教室前の廊下が広く、廊下側の壁を開放できる構造となっているため、学習スペースを廊下まで拡張できる。さらに、廊下を仕切る扉を設置し、学年ごとに区切って授業を行うなど、用途に応じた柔軟な空間活用を可能にしている。

改修プロセス

地域住民が一体となり、コミュニティエリアの方針を整備する

小学校・コミュニティセンター・学童施設の複合化にあたり、それぞれの関係者や地域住民が参画し、計画・体制などのソフト面が整備された。
地域住民で構成された「桐原コミュニティエリア再構築委員会」において、小学校施設とコミュニティセンター施設について、目指す姿や整備方法について検討が行われた。

地域:桐原コミュニティエリア再構築検討委員会
     → まちづくり協議会、自治会、小学校、幼稚園から構成
市 :桐原地区コミュニティエリア整備事業プロジェクトチーム会議
     →政策推進課、まちづくり支援課、財政課、管財契約課、危機管理室、子ども支援課、土木課、農業振興課から構成

児童がワークショップに参加し、新校舎の建設に関わる

建設中には、キャリア教育の一貫として、新校舎を設計する思いや苦労を子どもたちに知ってもらうために、当時の5年生に向けた勉強会を開催した。
また、校内の4つのテラスには、当時の5、6年生が作成した作品を、大阪市立大学の建築科の大学院生の協力を得てテラスごとにデザインされた陶板レリーフとして飾っている。3、4年生にはトイレのサインのデザインをしてもらうなど、子どもたちのアイディアが残り、小学校の建設にユーザーである生徒が関わることで、愛着を持って使われるように考えられた。

学校概要

※令和3年4月時点

学校名
滋賀県近江八幡市立桐原小学校
所在地
滋賀県近江八幡市森尻町
全体工期
平成24年~平成28年3月
学校規模
17(5)学級、492人 ※学級数のカッコ内は特別支援学級数を表す。
敷地面積
8,810m2(学校のみ)

平面図

改修後の1階平面図
改修後の1階平面図
改修後の2階平面図
改修後の2階平面図

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