快適性と省エネの両立を目指した、地域の防災拠点となる長寿命化改修

矢吹小学校(福島県西白河郡矢吹町)

東日本大震災の経験を踏まえ、地域住民の防災拠点の役割、環境教育の機能を持たせ、児童が快適で過ごしやすい柔軟な学校空間の整備を行った。 コスト低減の必要性や学校敷地の狭さから「居ながら改修」にて改修を進めた。

長寿命化 脱炭素 防災 省エネ 自然エネルギー 柔軟な学習空間 居ながら改修 小学校

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改修ポイント

教室の他に子どもたちの居場所がある

トイレの余剰スペースを活用した木質の壁のアルコーブ写真。壁沿いにベンチが設置されている。

各階に、トイレや階段室、ホールの余剰スペースを活用したアルコーブを設置。 教室の外にも、子どもたちがゆっくり過ごしたり落ち着いたりできる多様な居場所を確保した。

改修プロセス

仮設校舎を設置しない、「居ながら改修」でコスト削減

本改修では、事業コストの削減のため、また仮校舎を設置するスぺースの確保が困難なことから、居ながら改修を行なった。 授業への影響を考慮して、音の出る工事を休日に実施し、工期を長期化することで、児童に負担のない工事を進めた。特別教室や体育館の使用が制限されたが、カリキュラムの変更や、一つの特別教室を複数の科目で利用するなどの工夫で対応した。

地域の人を巻き込み、ワークショップで学校方針のアイディア出しを行う

学識者、地区代表者、学校代表者、保護者等による「矢吹小づくり検討委員会」を組織して6回の会議を開催。改修をきっかけとして、学校づくりの目標を立案し、防災機能と教育、そしてエコスクールに関する施設計画の内容について議論を重ね、「矢吹小学校改修基本計画報告書」を策定。 基本計画の方向性が見えた段階で、保護者と教職員等が参加したワークショップを開催し、施設を環境教育に生かすアイディアを募った。 事業着手後は定期的に工程会議を開催し、学校、教育委員会、施工業者の連携を密にしながら、学校運営や学習環境への配慮及び安全対策に努め、施工をスムーズに進めた。

学校概要

※令和3年4月時点

学校名
矢吹小学校
所在地
福島県西白河郡矢吹町
全体工期
平成24年6月~平成28年9月
学校規模
9(2)学級、201人 ※学級数のカッコ内は特別支援学級数を表す。
敷地面積
23,086m2
保有面積
校舎 4,583m2 / 屋体 1,306m2
構造
校舎 RC造3階建 / 屋体 S造2階建
竣工年
1965(昭和40)年
 

主な改修内容

  • 断熱改修(断熱材新設、二重ガラスに交換)による快適性の向上
  • 建物躯体の長寿命化(躯体補修、一部補強)
  • 教室配置及び設えの機能改善、質的向上(2室→1室化、小教室等の新設)
  • 内装木質化、美装化による学習環境の向上
  • 屋上防水全面更新(既存防水に新設防水を被覆)
  • 太陽光発電システム(90kW)設置によるランニングコスト低減
  • BEMS(Building Energy Management System)方式を用いた発電
  • 使用エネルギー可視化によるエネルギー管理
  • 電気設備器具(LED照明、コンセント他)及び配線・配管全面交換
  • 機械設備器具(節水型便器、換気扇他)及び配管全面交換

平面図

木質の壁や床に囲まれた廊下の写真。詳細は以下。

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