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幼児教育部会(第11回)議事録・配布資料


1. 日時: 平成16年4月16日(金曜日)10時〜13時

2. 場所: KKRホテル 東京11階 孔雀

3. 議題:
(1) 総合施設のあり方について5
 
行政体制について
費用負担について
これまでの議論の概要
意見交換
(2) その他

4. 配布資料
 
資料1   総合施設に関する行政体制等について
資料1−1   幼稚園・保育所に関する行政体制(概略図)(PDF:53KB)
資料1−2   国・都道府県・市町村が行う主な幼稚園・保育所関係事務
資料1−3   中央教育審議会「地方分権時代における教育委員会の在り方について」文部科学大臣諮問
資料1−4   教育委員会制度の概要
資料1−5   幼稚園及び保育所等に係る行政(窓口)の一本化の事例
資料2−1   幼稚園と保育所の費用負担の比較(平成15年度)(PDF:21KB)
資料2−2   幼稚園と保育所に対する助成制度の比較(平成15年度)(PDF:17KB)
資料2−3   幼稚園と保育所に対する施設整備費補助制度の比較(平成15年度)(PDF:16KB)
資料3   総合施設に関するこれまでの議論の概要
資料4   今後の幼児教育部会開催日程
参考資料   世田谷区内における私立幼稚園保護者の「子育て支援」に関する意識調査

5. 出席者
委員)
木村分科会長、田村部会長、國分副部会長、無藤副部会長、横山委員、浅田委員、池本委員、石榑委員、門川委員、河邉委員、酒井委員、北條委員、山口委員
文部科学省)
結城文部科学審議官、金森初等中等教育局担当審議官、嶋野主任視学官、義本幼児教育課長、豊岡幼稚園運営支援室長、神長教科調査官、加茂川私学部長、その他関係官

6. 概要
(1) 事務局より配布資料の確認と資料1から2−3までの説明があった。
(2) 「総合施設に関する行政体制」についての意見交換が行われた後、事務局より資料3の説明があった。
概要は以下のとおり。
(○委員、●事務局)
委員 行政体制について、国・都道府県・市町村の役割という観点と、それぞれの自治体の中での担当という観点の、二つの切り口があると思う。
 最初の観点からいうと、私は幼稚園教育にしろ、あるいは保育行政にしろ、大学、高等学校、あるいは中学校あたりと比べても幼児教育というのは地域性が非常に強い分野であり、市町村が第一義的には責任を持ってやる。これが今日言われている地方分権という観点からいいのではないかという見方が一つ。そういう視点から見ると、市町村立学校については市町村の教育委員会が所管してやっているわけだが、その設置認可は都道府県の教育委員会が関与している。私立の幼稚園に至っては、都道府県知事が設立の認可をし、法人の設置者である学校法人の指導等も都道府県知事が行う。あるいは、その助成措置については、都道府県が私学助成として行うということで、わずかに就園奨励費を通じて市町村は絡むけれども、実質は都道府県行政の中に位置づけられている。そういうことからすると、財政の仕組みと例えば私学助成という問題、あるいは私学行政全体のシステムとの関係等があり、単に一つの切り口だけで攻めていけないように思うが、基本的には市町村の事務として位置づけて、いろいろ障害があるとすると、それを除いていく工夫がないかということも一つできるのではないか。
 保育所についても、その設置認可等は都道府県がやっているということ等を含めると、保育所についてもそういうことがあるのではないかというのが、一つの問題提起。
 もう一つの観点は、市町村がやるとした場合に、それを教育委員会がやるか市町村長がやるかという問題。大きな地方公共団体であれば教育委員会がやったり、あるいは市町村長部局がやったりということも可能だが、小さい町村がわずかなスタッフでこれらの仕事を、例えば公立幼稚園について教育委員会といっても、教育長とあと二、三人の職員がいるくらいのところで何ができるのか。資料によると、教育の専門的機関の教育委員会とあるが、そういうことを発揮できる能力があるのかと考えると、非常に寂しい。したがって、保育所等も含めて、教育機能ということになれば、教育委員会が専門的であるし、それから例えば学校の先生との人事異動もやりやすいわけで、指導的なスタッフも整えやすいという観点から、教育委員会がかなり指導的な役割を持っていると言うことはできると思うが、ではどこが担当するかというと、現に一緒にやっているところがあるが、それを市町村長部局に置くか教育委員会部局に置くかは別として、一緒になって進めていくという体制、あるいはそこも弱いということになれば、近隣の大きい都市があれば、そこに一種の業務委託的な方法で、指導内容の充実を図る等、そんなことが可能なのかどうか。そんなところに、行政体制については、課題があるのではないか。

委員 基本的に、小さい子どもの教育であればあるほど地域に即して、多様なニーズに柔軟に応じるというのが基本だと思う。同時に、最近では市町村合併が進行して事情が変わるかもしれないが、現実の市町村でいうと、首長部局はもちろん、教育委員会にしても、そこで幼児教育を専門的に考えるような知識なり経験を持っている人がどこまでいるかというと、実際にはいないことが多い。やはり多くの市町村は義務教育の部分を維持するだけで精いっぱいというところがあるように思う。
 例えば東京都の場合でも、一つの区の中にかなりの幼稚園の数があるようなところは、相当しっかりと教育委員会と公立幼稚園の園長先生を中心に頑張って、例えば研修とか、様々な質の確保に努力されていると思う。区や市でも公立幼稚園が一つとか、二つぐらいのところもあるが、そういうところに幼児教育の専門家を置くのは難しくなっている。また、23区については、23区共同の機関を置いて、そこで研修することになっていると思うが、現実的にはそこにスタッフがしっかり置けるような財政的な余裕があるわけではないということ。全国的にいえばかなり高い水準を維持している東京都でもそのような状況であり、まして地方の小さい市町村にいくと相当に厳しい状況である。
 そこで、保育園と私立幼稚園を合わせたら、カバーできる範囲が広がるからいいかというと、新たな財政措置があれば別だが、現実に保育園は保育課で主に賄っている。そこでも設備基準とか、財政的なところのチェックはしっかりやっているが、保育の中身にかかわるような経験を持った人をそちらに置けるというわけではない。
 そういう意味では、総合施設もそうだが、保育所、幼稚園を一緒にして、かなり充実したスタッフで質の確保を行っていくということは、今の延長ではかなり厳しいだろう。分権化し、地域に即すると、今の財政なり何なりで自然にうまくいくということはどうも考えにくいのではないか。その辺りを地域に即していくことは大事だが、そこに義務教育だけではなく、乳幼児教育全体をしっかり維持できるような体制やサポートを、国なり都道府県が行えるような裏づけのもとでやっていただかないと困るのではないかと思う。

委員 総合施設において新たな事務が起こった場合に、どこが主体的に所管するかというのは、地方分権の流れを考えれば、おのずから市町村であり、原則首長である。あくまでも教育委員会というのは例外的な教育行政の処理であって、保育所と幼稚園を併せ持つようなものをあえて教育委員会が所管するならば、それなりの例外的理由が必要であり、やはり原則的に考えれば首長部局、市町村が実施主体になるのだろう。
 ただ、その問題だけで議論すると非常にややこしくなっていくのは、その財源を誰が負担するのかという別の問題があるからで、例えばこれは市町村が実施主体になるとしても、所要財源というのは国あるいは都道府県が部分的にしろ見ていくのか。どういう費用負担構造になるのかということとセットで議論していかないと、非常に難しい問題が起こると思う。

委員 総合施設を首長部局が当然担うのだということになると、我が国の教育としての体系、幼児教育段階と小学校段階の接続が重要だというところが崩れてしまうのでは。その視点に立ち、これは総合施設において必ずすべての子どもに充実した幼児教育を施すという前提があるのであれば、当然これは教育委員会が責任を持つという話になると思う。

事務局 まだ児童部会のほうも議論の途上だが、恐らく両方の部会の何人かが加わっていただいた合同の場で、今後、議論を深めていくという話になると思われる。費用負担の問題、行政体制の問題、これは密接不可分、不即不離の問題であり、また、総合施設全体をどのようなスキームなり、あるいは制度なり、在り方を考えるかということが、まず形として見えてこないことには、行政体制あるいは費用負担の問題もなかなか議論が進んでこない。ここでは現状を報告させていただいて、いろいろな問題点、課題等をあぶり出していただくような御議論をいただきたい。

委員 首長部局でこれを所管すべきだという話をしているわけではなく、物の考え方としてそこからスタートすべきであり、あくまでも教育委員会がやるならば、幼児教育の重要性、あるいは幼児教育と小学校との連携の問題、そういう面で教育委員会が所管する理由づけがつくならば、それはそれでいい。あくまでスタートはそういう物の考え方ではないか。

委員 グレーの部分が大変多いときに、何が大事かといったら、やはり理念が大事だと思うので、何を大事にしたいかということを根本に置くべきではないか。

委員 財源、費用の問題、行政体制の問題等、我々が現実に仕事をしているところとしてはそのことが気になって、一般論というのは言いにくい。しかし、今、幼児教育、保育も含めて、指定都市から中核市、また、そのほかの市町村は体制が違うと思うが、設置認可が知事にあり、実際の仕事が市町村というのは非常に難しいと思うので、基本は住民に一番近いところに行政の能力を高めていって、そこが所管する、一元化していくのが将来の姿ではないかというように基本的には思う。
 私立幼稚園にしても強固な組織を持って頑張っており、理想とすれば住民に近いところで一元化していくのが流れがいいのではないかとは思う。その場合に、費用負担という大きな問題が一つあり、もう一つは、自治体の中でどこが所管するかというのは、自治体に任せたらいいのではないかと思う。総合施設についても、地方によってどういう総合施設か、かなり緩やかでもイメージできてくれば、そのことも含めて自治体に任せたらいいのではないか。
 ただし、そのときにはやはり理念が大事で、小学校との連携等、教育委員会のかかわりをより深めていくことが絶対的に大事ではないかと思う。地方が縦割り行政にならないように、地方にある程度任せたらいいのではないか。

委員 最近、私立幼稚園の方々との話の中で、私立幼稚園が市町村とのネットワークがないことで非常に困っているのを痛感する。また、市町村で横のつながりを考えている中で、私立幼稚園は学校法人としては私学の中に含まれているので、その部分だけを切り離すというのは難しいという議論がある。実際、学校法人として幼稚園と保育所を両方持つところも増えている中で、あまり私学ということで私立幼稚園を縛るよりは、自治体のほうで統合的にやっていく方向が望ましいのではないかと思う。
 先ほどの教育委員会に任せるか首長に任せるかというところだが、ニュージーランドを例にあげると、これは総合施設ということではないが、ニュージーランドは保育所や幼稚園をすべて教育省の所管に移す改革を行った。その際のやり方として、教育省が直接所管するというのではなくて、別に教育省の関連の就学前教育部という新たな組織をつくって、そこが地方事務所を設けて、そこに保育所も幼稚園も全部統合的に見るような形をとり、今その就学前教育の統合ができたということで、それが教育省の中に再び統合されるような形になっている。市町村を横にならすような1回独立した組織をつくって、ある程度統一的に教育ということが浸透した段階で教育省に移すということをやった。
 そんな形で、独立した幼児教育の専門の部署、教育委員会のかわりのようなものを、財政的には厳しいのかもしれないが、市町村単位、あるいは小さな市町村であればある程度の地域を統括する形で置く等のやり方も考えられると思う。

事務局 例えば高知県では教育委員会の中に、保育所も、私立の幼稚園も含めたことも担当するセクションをつくっている場合もあれば、逆に和歌山のように、知事部局のほうに寄せて、統一的な事務を処理するというケースもあり、それぞれの自治体の判断で、全体の事情に対応しているケースがある。秋田県でも同じように、教育委員会の中に今年の4月から幼保推進課というところを設け、そこが保育所と、教育委員会の中の別のセクションであるが私立幼稚園と、幼稚園全体を通じてやる。地方においては、特に教育事務所単位で、保育所の事務も含めて担当するような形で整理してやろうという形での指導なり対応をされているということが4月から始まっているということもある。それぞれの自治体の判断で、国よりも先んじていろいろな形での模索を始めているという状況がある。

委員 ここでの議論は、幼保一元化なりを含めたものをどういう位置づけをするかということで、おのずと結論が出てくると思う。乳幼児教育をいかに充実させるかという視点から言うと、当然、教育の専門家が入ったようなところが必要になるということだと思う。そうではなくて、明らかに福祉的な要素を含めれば、教育内容には関知しないという意味で、当然違ったところに持っていく可能性がある。
 ここでどういうスタンスでそれを位置づけるかという問題が議論されるべきだと思うし、たぶん今まで議論の流れは、当然、教育というものを、3歳からでなくて、0歳からとという観点から教育をとらえていったときに、当然、保育所があったり、幼稚園があったり、総合施設、いろいろオプションがあっていい。しかし、そこではきちんとした一貫した教育を考えていこうというスタンスで考えていくならば、当然、教育委員会は関与せざるを得なくなると思う。そこのスタンスがぶれると、どっちがいいのかという議論をしても、結局、議論は収斂しないと思う。それはどちらかの立場に立てば違ってくるわけであり、そこのところがどうもあいまいなのではないか。
 つまり、各都道府県の例が出ているが、各都道府県がどう考えているかということを出していかないと、その収斂にはならないのではないか。ここはどう考えて、だからこういうようなところに置いたのだということを言ってほしい。それを実施する、つまりテクニカルな運用上の問題はわかるが、ここでの議論は、なぜそういう形にしないといけないのかということが出てこないと、そこで議論ができないと思う。

事務局 最近、秋田県から聞いた話では、今回事務を整理するにおいてもかなり議論があり、教育委員会に移すか、あるいは知事部局に移すかという話があったようで、最終的に教育委員会のほうに整理した一つの理由としては、子どもにかかわる乳幼児教育を中心に構成していくことが大事だということ、それからこの部会でも議論されたが、子育ての支援といった場合、経済的な親に対する支援の問題、それからいわゆる就労支援という問題と、子どもの発達なり育ちなりを一つ整理して考えようという考え方から、教育委員会に落ちついたという説明があった。

委員 国として審議しているのは、乳幼児教育をどういうふうに位置づけて、つまり、地方自治体に任せていいのかということと、そうではなくて、国として乳幼児教育はこのように位置づけ、その中で自治体が自由度は持っていいということなのか、全くそれは自由にやってくださいということなのかというのは、全然議論が違ってくると思う。その範囲で言うと、どうしても教育委員会が必要になってくるとは思うが。

事務局 所管の問題をどうするかという二元論でいくと議論が進まないので、そこは基本的にはこの部会では、幼児教育をとらえた場合、それをどのように充実させていくのかという視点からとらえて、その中で、教育委員会なりがどう関与するか、あるいは全体としてどのようなとらえ方をするのか、あるいは都道府県あるいは市町村との分担関係をどうするかという議論をいただきたい。
 所管をどうするかという問題になるとデッドロックになってしまうので、行政体制の在り方としては、そのような一つの考え方なり、筋道について議論いただければありがたいと思う。

委員 地方での補助金、あるいは設置認可の所管の部署と、日常の運営にかかわるような部署が分かれており、従来、これは私立幼稚園としてはどうしても設置認可、また、通年では補助金というのが一番関心事にならざるを得ないわけで、そのために私立幼稚園の組織は都道府県をどうしても向いている。
 区市町村に対しては、教員の採用届とか、そのレベルのことはあるが、それを幼稚園団体の組織としてしっかり関与するという習慣がない。したがって、地方にすべての権限が移った場合、もちろんそれに対応していかなければならないが、現状でも困難を抱えている。

委員 根本は教育だと思うので、教育委員会の役割が大きいということは譲れない部分だが、子育て教育が必ずしも教育委員会中華思想みたいになってはいけないと思う。
 例えば警察にも教育機能を持ってもらわなくてはだめなのではないか。警察は学校との関係においても、教育のことを考えるのが学校であって、警察はそれに反するような意識が双方にあるような、あるいは国民、市民の保護者の間にもある。あるいは、児童相談所もすばらしい教育機関であり、あるいはこれから家を建ててもらうとしたら、家を建てる住宅行政が本当に教育のことをわかってもらわなければならない。
 教育以外の部分は、教育の素人なんだという考え方に立てば、今までと同じことになるのではないか。だから、市民のネットワークをつくり、行政のネットワークをつくり、その双方の関係について、きちんと市民のネットワークと行政のネットワークが有機的に機能する中で、あらゆる部局が教育について理解し、実践者になる、そんな仕組みをつくっていく。こうせずに行政の所管だけの議論でやっていれば、「教育のことは教育委員会で」となり、保育所も何も全部教育委員会にしたとしても、それでいいということにならないと思う。したがって、PTAも、市民団体も含めて、警察との提携、話し合いの場をつくり、意見を言い、また、意見をもらう。そういうことをしていく中で、市民参加を求めていく。そういうことも含めてある程度地方に任せたらいいのではないか。そして、市民の評価を得て、いいものをまた全国に発信していったらいいのではないかと思う。教育的なことは教育委員会、そのほかのところは教育的でない、ということを前提にしないで、もう少し柔軟に考えたらいいのではないかと思う。

(事務局より資料3の説明)
委員 「幼稚園・保育所が連携して一つの総合施設を設置する」というのは、具体的には場所が離れているものを総合施設と呼ぶという意味なのか。

事務局 固定的に総合施設を言う場合、新しい施設をつくるということが先行し、それでかなり誤解を生む面があるのではないか。むしろ地域にいろいろな資源があるので、そういう資源を有効にネットワークし、連携して考えていくような、緩やかな形態の総合施設もあっていいのではないかという議論もある。物理的に離れている場合もあれば、近接しているところ、いろいろなことがあり得ると思うが、その具体化をしていくには、さらに技術的な問題等も検討しないといけないと思う。

委員 議論の中で、日本に住むすべての子どもたちに充実した幼児教育を施したいというのが共通した意見だったと思うが、現状でも多くの子どもたちは幼稚園において充実した幼児教育を受けている。総合施設というのは、新たに生まれた考え方であって、この流れでいくと、子どもたちに対して充実した幼児教育の機会を保障するために総合施設があるのだというふうに、読み取れてしまう。総合施設として席捲されてしまうというか、飲み込まれてしまうような流れはちょっと怖いと感じる。

委員 子どものためにこういう施設をつくっていこうということが理念として書かれていて、それが実際の段になると、だんだんに何でもありというような雰囲気になってきている。
 先ほど費用負担等の議論があったが、財布の中身がこれだけしかないところから総合施設にのっとってやっていくと、あそこは削ろう、ここは削ろう、あそこはまあいいよなという感じになり、この理念がどんどん薄れて、何でもありの、言ってみればこれまでの幼稚園や保育所がやってきたよりも、むしろ薄いものになってしまわないかという懸念を持った。
 例えば、これまで幼稚園が培ってきたノウハウをしっかりやろうと思えば、それなりの条件を整えていかないとできないことだろうと思うが、最後には、可能な限り民営にしてもよいとか、柔軟にしていってよいということがあまり強調されてしまうと、そこが守られないというか、そういう危惧を少し感じた。

委員 親に、あなたたちしっかりしなさいとおしりをたたく形で言うだけではなく、今、子どもを育てる保護者が、実際にはかつての社会的な支え、あるいは家庭内での支えを失っているわけで、その方々に寄り添う姿勢といいますか、その大変さを社会的にも少しは分かち合いましょうというようなニュアンスをもう少し含めるべきだと思う。
 また、この資料のままでは、結局、お金がひどくかかるスーパー保育園をつくってしまうことになると思う。0〜5歳を全部やらなければ総合施設としての資格はないのだというふうに条件を厳しくしてしまうことにも反対。原則として、教育という営みを考えていけば、既にこの国の合意事項として3歳〜5歳というのは合意されているところであり、3歳〜5歳を含むという点は当然だと思う。2歳児については、これからちょっと考えていくという課題として残せばいいと思う。しかし、少なくとも0、1歳を、施設において長時間の保育を行うというメッセージをここで発するということは、子どもの視点に立ったと高らかにうたっていることと矛盾すると思う。子どもの視点に立つという以上、少なくとも我が国は、児童の権利に関する条約を批准し、また、児童憲章を持っている国であり、ともにその趣旨は、すべての子どもはまずもって家庭において幸福に育つ権利があるということを言っている。そのことを踏まえた内容にならなければ、子どもの視点に立ったということには断じてならない。
 したがって、0、1、2歳については、原則としてほっておいてはいけないわけで、一所懸命育てようとしている方々に寄り添って、親子登園等でというくだりがあるが、まさに新たに考えられる総合施設では、そちらこそ本来の事業とすべきであって、0〜2歳児に対する長時間の開所は絶対にすべきではないと考える。
 もう一つ、評価とも関連するが、現在の保育所の自己評価、第三者評価などを見ると、評価の観点が多様なメニューを用意していることがよい評価、また、長時間あるいは超長時間の保育を提供することがよいこと、そういう評価規準だが、そうではなくて、子どもの視点に立つという以上、子どもの権利が守られるような評価規準でなければならない。評価の視点は子どもの視点。そうすれば、逆に多様なメニューは用意すべきではない。必要に応じてやることは構わないが、それを絶対的な条件にしてはいけないと思う。

委員 3歳以下のところの位置づけをどうするか。そこのところは、親をどう育てるかというか、その辺のところをどうサポートするか。抱え込んでしまうのではなくて、例えば保育時間の問題にしても、一緒に親子で登園してきているなら、長時間保育は必要でないし、その辺りの歯どめをきちんとかけておかないと。就労支援ではないというそこのところがきちんと歯どめがかからないといけないのではないかということは思う。

委員 このペーパーの性格だが、「議論の概要」ということになっているので、これ自体を中間まとめ的に外に出すというものではなくて、今まで議論が出たのを、議事要旨的に整理したものだと私は理解しているが、それにしても、これが場合によってはひとり歩きする可能性もある。このペーパーを見ると、どちらが原則かというのがどうもよくわからない。むしろ3歳児以上が例外的で、0歳からが原則的な在り方のような印象もあり、そこのところは必ずしも詰め切っていないので、議事要旨的なものであるとしても、まとめ方について慎重な配慮が必要ではないかと思う。
 そういう視点から言うと、「設置主体・管理運営等のあり方」というところで、例えば最初のほうに、「現在、いわゆる公設民営幼稚園の実現に向けた検討が行われている状況を踏まえ」とあるが、必ずしも私の理解では実現に向けた検討が行われているとは思っていない。先般の初中分科会の教育行財政部会で公設民営議論が出たときに、それは確かに当面、特別のニーズがあるときに、高等学校と幼稚園に限定しようということと同時に、それは学校法人を原則とする。しかも、特区に限定するということであって、実現に向けた検討が行われている状況にあるとは私は思っていない。
 そして、結論部分で、「可能な限り公設民営総合施設の実現に向けた検討を行うべきではないか」となっているので、同じ中教審の教育行財政部会が出したものと真っ向から反対になっている。その後の状況によると、法制的にもそういうことは難しいのではないかという意見が出ているということも聞いているので、こういう意見が出たから、単にこうやったということならいいけれども、やはり整理の仕方として、そこのところは慎重にしないとまずいのではないかと思う。

事務局 なるべくそれぞれの各部会の議論を忠実に反映させていただこうと思い資料を作成したが、実に反映していない部分、あるいは不正確な部分もあり、その辺りも精査して、表現振りについてはなお工夫、あるいは配慮させていただきたい。

委員 総合施設で、3歳以下をどうするかというのは、大変重要なポイントだろうと思う。そのときに、女性の生き方と相当かかわってきているのではないかということをとても感じる。
 先日、内閣府の「えがりてネットワーク」というところで、企業の代表者3名の方が、いずれも男性であったが、企業でこういった男女共同参画を進めているというお話があり、その3名の方に「男性はなぜ働くのですか」という質問があった。その3名の方は、それぞれ表現は違えども、自己実現をするためだということをおっしゃった。
 後でよくよく考えてみると、女性は、特に母親は、どう自己実現を果たしていこうとしているのだろうか。そう考えると、本当に多様になっているのだろうと思う。両極を言えば、実際に働きながら子どもを育てて、仕事のほうにウエートを置いた自己実現を図りたい人もいるだろうし、子育てを通して自己実現を図りたいと考えている人もいるだろう、あるいはその両方を何とかバランスよくやりたいと思う人もいるのだろうと思う。そういったことも関わっているので、もっと幼児教育の重要性を、企業を含めた社会全体にアピールをして、支援がもらえるような提言をここでしていただきたいと思う。また、すべての親が子育ての喜びを味わえるような理想を掲げていくことも、この中に盛り込みたいことの一つだと思う。

委員 この出されたペーパーから何をつくろうとしているのか。そこから何を事務局としては出そうとしているのか。総合施設に関するここでの提案をこれでまとめるのか。

事務局 この問題は、制度設計においては、当然、厚労省においても審議会で検討しており、ここだけで結論を出すという内容ではない。これまで幾つかの項目について議論をいただいたので、その議論を一応整理して、これまでのおおむねの議論なりを形として整理させていただいた。今後、両方の部会での合同の検討、あるいは文科省、厚労省それぞれの関係のところで事務的な検討をする中で、その成案を得るべくこれから議論をしていく。その議論の上において出発点として考えている。

委員 この部会としての総合施設の在り方についての一つの案を出した上で議論するのか、こういう議論がありましたよと持っていくのかでは、全然意味が違う。これを出したということは、この中で、この意見は例えばまずいということから、最終的には総合施設に関しての提案をしたいのであれば、そういう議論をしなければならない。つまり、これが出てきてもゴールが見えない、ということ。

事務局 審議の仕方は、たぶん一律に一つのベクトルで進んでいくのではなくて、恐らく合同でやりながら、その状況を部会のほうにお返しするという中で深まっていくということであると思う。また、論点によっては、先ほどの3歳以下の取り扱いの問題のように、なかなか集約が難しいところもあると思う。ここではカチッとしたものとして、何かこういう形で部会としての結論、あるいは部会としての一定の判断という形でまとめるというまでのところではないかと思う。事務局としては、議論として今の状況においては、このようなおおむねの考え方を緩やかな形で整理させていただいたというものの事柄かと思う。

委員 設置主体の話で「可能な限り公設民営総合施設」とあり、民営施設をやはり志向すべきだと考えている。というのは、今、公立の幼稚園というのは、実態としてものすごく減っているわけで、各自治体においては公立の幼稚園は廃園の方向にいっている。一方で、従来全く民間が参入し得なかった保育所については、規制緩和で民間参入が相当進んでいるという実態がある。保育所でもない、幼稚園でもない、かといってそういう性格を併せ持つ、魅力的な施設があるが、たぶん住民からしたって、こういう施設が主流になっていくのだろうと考える。そうすると、今の保育園あるいは幼稚園の実態から見れば、やはり民間がかなり参入し得る分野ではないかという気がする。したがって、「可能な限り公設民営」ということではなくて、これは公立も当然あっていいし、公設民営もあっていいし、やはり民営ということを視野に置いた検討が必要だと思っている。

委員 総合施設は、よく言えばいろいろな可能性を秘めた施設。でも、同時にいいとこどりだけしてしまえば、どういう施設かよくわからなくなってしまう施設かと思う。
 保護者にとっては、別に設置主体がどこであれ、管理運営がどこであれ、そんなことは関係なく、子どものためになるなら、ここに預けよう、ぜひここに入れたいという施設をつくっていただきたいと思っている。確かに新しい施設や制度というのは魅力があって、そこに入れてみたいという気持ちに少しはなるかもしれないが、実際に保護者が、ポンとできた施設に子どもを預けるかといったら、それは甚だ疑問である。

委員 0歳〜2歳というのは、本当にしっかり議論しなくてはいけないと思う。そこの費用がすごくお金がかかっているところでもあって、そのお金がかかっているものをどんどん増やしていくのか、あるいはそれをもっと別の形でやるかというのは、お金との絡みもあって、十分議論する必要があると思う。子どもの権利ということを本当に考える必要があると思っているが、単に0歳から対応するということが、単に長い時間預かるものを増やすという意味ではなくて、本当に孤独でどうしていいかわからないような親たちがアクセスできて、自分も救われるというか、そういう何か拠点としての総合施設になってほしいと思う。
 したがって、0歳〜2歳は教育ではないというふうに切り捨てるのではなくて、そこを教育的観点からどういうふうな在り方が必要かということを、部会としてしっかり提示した上で、厚労省とのお話し合いを進めるべきではないかと思います。その関係では、親の育ちとか、あと運営に親が参加するということをもっと強調して、保育を増やすという意味ではなく、教育をしっかりさせるということをきちんと文章の中でアピールできればと思っている。
 今日の話でも認可外保育所の話は全く出てきていないが、東京都の認証保育所などで、認証であってもかなり長時間で、子どもにとって非常に問題なことが一部で起こっているということも踏まえて、そこまでも視野に入れながら理想的なものを打ち出していくということをぜひやりたい。

委員 保育所について、0歳をやることが経営的にいいかどうかは微妙で、つまり、保育者の数などを国の基準より普通は高い基準にすると、最終的にはかなり大変だと思う。
 それと別の話だが、少なくとも3歳未満について、総合施設の中で保育所並みに預けることを原則基本にする必要はないと思うが、排除することはよくないと思う。それは、全国的にいって、特に小さい市町村とか、あるいは大都市であっても、子どもの数が減少した中で、幼稚園、保育所をあわせて総合施設の中でやりたい、やらざるを得ないという強い要望というか、ニーズがあって、既にここでも紹介されてきたので、そういうところで3歳未満を預かってはだめというと、総合施設化するメリットがなくなってしまう。よって、そこは排除はしないほうがいいのではないか。しかし、原則は長時間預かるというのは、いわゆる保育に欠ける子どもを対象にするはずだから、保育所が本来やるべきことで、その保育所を総合施設に全部ほうり込むわけではないのだということは明確にしたほうがいいと思う。
 設備基準についてだが、最低限必要とされる基準と望ましい標準的なものとを分けたらどうかという指摘があって、そういった考え方が、ほかの様々なやるべきことというか、広く言えば保育・教育サービスだが、そこも考えていくことが必要。つまり、総合施設として絶対確保しなければならない、例えばカリキュラムなり何なりはこうなのだということと、それにオプションというか、地域のニーズに応じて、あるいは園の考え方に応じて加えていく部分はどこなんだというところをはっきりさせていくことが必要ではないかと思う。
 それはまだ費用負担等々についてはちゃんと議論していないが、そこにも関わってくるところで、中核的標準というか、最低基準の部分は国・自治体としてしっかり財政的にサポートしなければいけないでしょうけれども、オプショナルな部分については、例えば保護者側の収入に応じた費用をある程度分担をしてもらうとか、そこの分け方が必要だろうと思う。中核的な部分をどこまでにするか、そこがこれから非常に大事な議論になるのではないか。当然、厚生労働省の多くの方々とここでの議論の食い違いは出てくるだろうから、そこをしっかり詰めるべきではないかと思う。

委員 このペーパーだが、いずれ近く厚労省のほうの児童部会と議論をぶつけ合うというか、主張し合うというための、いわば心覚えみたいなものだと思う。にしても、ここのところはかなり共通的にコンセンサスを得られているものと、先ほどの3歳未満の子ども、これがかなり本質的な部分ではあるが、そうでないところといろいろあるので、その辺を仕分けして、それぞれこのメモが妙な誤解を与えたり、ここの部会での審議とちょっと違ったようなものにならないように、工夫いただきたい。
 しかし、やはり書いてみないと、それが原則なのか、例外なのかというところまで詰めた議論をしていないし、あるいは多様なものかどうかということもきちんとやっていないわけで、やはり書いてみることは必要か思う。

午後0時 閉会


(初等中等教育局幼児教育課)

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