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医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第4回)議事録・配付資料

1   日時:平成17年10月4日(火曜日)13時〜15時30分

2   場所:三田共用会議所第3特別会議室

3   出席者:
協力者: 高久座長、福田副座長、大橋、小川、北村、佐藤、新道、水田、田中、辻本、寺尾、名川、福井、南、吉新、吉田、の各協力者
文部科学省: 泉審議官、石野医学教育課長、山本大学病院支援室長、小谷医学教育課長補佐、加藤医学教育課長補佐、ほか関係官

4   議事
   
1. 開会
2. 議事
(1) 説明の聴取
1 新医師臨床研修制度の概要と実態について
2 「地域医療を活性化する国立大学病院専門医養成システム」と東京大学における卒後教育の取組
3 医療人GPと大学病院における卒後教育の状況について
4 「新時代の大学院教育」(中央教育審議会答申)について
(2) 卒後教育に関する意見交換

3. その他

5   配付資料
資料1 厚生労働省資料(PDF:580KB)
資料2 北村委員資料(PDF:174KB)
資料3 地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム(医療人GP)概要(平成17年度)
資料4 平成17年度「地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」申請・選定状況一覧
資料5 平成17年度「地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」選定プログラム
資料6 地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム(平成18年度)(PDF:103KB)
資料7 新医師臨床研修の実施状況調査結果の概要
資料8 大学病院の研修医マッチング結果
資料9 新時代の大学院教育−国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて−
中央教育審議会答申(平成17年9月5日)の概要
(PDF:246KB)
(※中央教育審議会 諮問・答申・報告等へリンク)
資料10 中央教育審議会大学分科会大学院部会医療系ワーキンググループ報告書(概要)
−医療系大学院の目的とそれに沿った教育等の在り方について−
参考 「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」検討事項メモ
これまでの意見等の整理

○高久座長
 それでは、時間になりましたので、ただいまから第4回目の「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」を開会いたします。それでは、事務局から、本日の委員の出欠状況の報告をよろしくお願いします。

○小谷医学教育課長補佐
 本日は、各委員の皆様方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は、垣生委員、橋本委員、松尾委員、吉村委員が欠席となっております。その他、若干遅れてお見えになる委員の方もいらっしゃるようでございます。それから、本日は厚生労働省医政局医事課医師臨床研修推進室長の宇都宮啓様に御説明いただきます。以上でございます。

○高久座長
 それでは、事務局から配付資料の確認よろしくお願いします。

○小谷医学教育課長補佐
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第、資料目次、座席表、メンバー表、当面のスケジュール案、その後に資料1から資料10までございます。資料1につきましては、宇都宮室長の御希望で、宇都宮室長の発表後に配付させていただくという形になっておりますので、お配りしているのは資料2から資料10までということになっております。さらに、前回の会議で配りました「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」検討事項メモとこれまでの意見等の整理の2点を参考資料として配付させていただいております。また、今回卓上の資料でございますが、ペーパー等のこのファイルの次に置かせていただいております、本日北村委員から御説明いただきます「地域医療を活性化する国立大学病院−専門医養成システム−」の本体と、また事務局から後ほど説明させていただきます「新時代の大学院教育(中央教育審議会答申)」を新たに配付させていただいております。不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。さらに、委員の先生方におかれましては、第3回協力者会議の議事録案を配付させていただきました。委員の先生方には、現時点まで一度御確認をいただいておりますが、私どもの不手際等ございましたら、また事務局までお申しつけいただければと思います。後日、文部科学省ホームページに掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。

○高久座長
 それでは、議事に入らせていただきます。最初に、新医師臨床研修制度の概要並びに実態につきまして、本年7月に新医師臨床研修病院、臨床研修医に対するアンケートが発表されています。これらのことにつきまして、厚生労働省医政局の宇都宮医師臨床研修推進室長から御説明お願いいたします。

○宇都宮医師臨床研修推進室長
 御紹介いただきました厚生労働省の医師臨床研修推進室長の宇都宮でございます。よろしくお願いいたします。本日は、このようにお話をする機会を設けていただきまして、どうもありがとうございました。座って、失礼をいたします。資料なんですが、若干クイズ形式のものがございまして、余り大したことはないんですけれども、後で配ってくださいとお願いしました。中には既に御存知の先生もいらっしゃると思うんですが、できれば黙ってご覧いただければありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、早速始めさせていただきます。概要については、既に御存知の先生も多いとは思うんですけれども、改めてさっと復習させていただきたいと思います。まず、なぜ必修化なのかということなんですけれども、これは日経新聞の調査ですが、医療制度改革論議に関心があるかという問に対しまして、少しあるという方を含めますと大体85パーセントぐらいの国民の方がこの医療制度改革論議に関心があると答えておられます。では、その医療制度改革というときに一体何に関心があるのかということなんですけれども、何だと思いますでしょうか。新聞などでの議論では、株式会社参入ですとか、あるいは混合診療とか、そのようなことが言われているんですけれども、ここで4番目にきているのが医療事故対策なんです。では、1番目は何かというと医師の質的向上という問題であります。お金の話というのも出ているんですけれども、やはり国民の間では医師の質の問題、あるいは医療事故、こういった医師や医療の質に対する懸念というか、そういうものが医療界で考えている以上に非常に高いということを是非御認識いただきたいと思います。そして、これは全国の五大紙の医療過誤をテーマにした記事の本数ですけれども、これまでは大体100本、200本のオーダーが主だったものが、西暦2000年ごろから急に増えまして千五、六百本というようになっております。もちろん、2000年ごろから急に事故が増えたなんていうことは普通あり得ないわけで、もともとそういったものはあったと思うんですけれども、このころから急に関心を呼ぶようになったというようなことが一つあると思います。御存知のように旧制度の臨床研修制度は、2年間努力義務ということでありまして、プログラムが不明確とか、ストレート研修中心とか、こういった数々の問題点が指摘されてきたわけであります。実際に、その研修実態を調べますと、13年度のデータですけれども、研修を実施すべき人間のうち12.6パーセントが実は研修を受けていなかったんです。この医師、歯科医師、薬剤師調査によれば、医師のうちの95パーセントは病院や診療所で臨床を行っております。1パーセントが介護保険施設などではたらいている。そうすると実際我々みたいな行政とかあるいは研究とか、そういった臨床以外の人々というのは大体4パーセント程度なんです。にもかかわらず、実際研修を受けていない人は12.6パーセントいたということは、この差に当たる人々というのは研修を受けないで臨床をやっていたという可能性があるということが言えるわけです。実際に研修を受けている方々のうち62.2と25.2と書いてありますが、大体7対3で大学病院の方で研修を受ける方が多かったというような状態であります。高齢化社会を迎えて、複数疾患を抱えた患者さんが増えてきた、生活習慣病が増えてきた。こういった状況で需要としては全人的・診療科横断的な医療あるいは予防医学が増えている一方で、実際にはむしろ医学の進歩による高度化、専門化、細分化。こちらの方に対応する医師が多く生み出されてきたんではないかと。つまり、需要と供給のミスマッチがそこで生じていたんではないかというようなことがあるわけです。ここで、専門医があるべき姿というようなことを書いておりますけれども、やはり本当の専門医というのは広いベースの上に高さを積み上げていくと、こういったものが本来の専門医であろうと思われるんですけれども、どうも現状としては余りベースのことを気にせずに高い方、高い方というものを目指すような、こういった状況が実はあったんではないかというようなことが見られます。これは、その古い制度のもとで2年間努力義務ということで研修を行ったわけですけれども、その修了時において余り自信がない、あるいはできないと答えたその技術についてです。この7割の方ができないとか、自信がないと答えたものは直腸診で前立腺の異常を判断する、これができないとか自信がない。では、8割の方が答えているのは何かというと、鼓膜を観察し異常の有無を判定する。では、実に9割の方が自信がないとかできないと答えているのは何かというと、眼底所見で動脈硬化の有無を判定すること。当然、糖尿病とか高血圧とか、そういったコモンディジーズで眼底を診るということは非常に重要なことではあるんですけれども、この2年の研修修了時においても自信がない、できないという方がこれだけいたというのが現状であったということであります。こういった状況を改善するということを目標に、平成12年に医師法が改正されまして、診療に従事しようとする場合は2年以上研修を受けなければならない。それから、研修に専念しなければならない。こういったことが定められたわけであります。その法改正の時に参議院の国民福祉委員会で附帯決議というものがついたわけなんですけれども、この中で人権教育、医療倫理の確立とか、あるいはプライマリーケアやへき地医療、全人的、総合的、それから研修医の身分の安定及び労働条件の向上ということが言われています。我々は新医師臨床研修の3原則と言っているんですけれども、アルバイトせずに研修に専念して、人格かん養、プライマリーケアというものを身につけると、こういったことが、決して厚生労働省が勝手に言っているわけではなくて、この参議院、国会の中で決議されているということがあるわけです。そして、ご存知のように研修プログラムとしては、原則として2年間で内科、外科、救急、小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療、こういった基本3科目、必修4科目のいわゆるスーパーローテーションということで、これを全部回っていただくということになっております。ちょっと細かいんですけれども、この研修で非常に特徴的なのは到達目標としてまず一つ、医療人として必要な基本姿勢、態度です。こういったものが、入った。単なる手技的なものとか、どういうものを経験しろというのではなくて、こういう中で医療の社会性とかこのようなものが入っている。それから、特定の医療現場の経験として、救急とか、精神とかそういうのもそうですけれども、この地域保健・医療、これが入ったのが今回の制度の非常に大きな特徴ではないかと思います。何でこのようなものが入ったかということなんですけれども、医療の社会性といった時にどのようなものを皆さんは考えられるでしょうか。ここでWHOの健康の定義というのを持ち出してまいりましたが、ここにありますように肉体、精神及び「社会」というこの部分が入っているというのが非常に大きいと私は思うんですけれども、これまでのような病院の中だけでの研修では、なかなかこの社会的なというところが身につけられなかったんではないかということを非常に感じておるわけであります。そこで、先ほどの地域保健・医療というものが、一つの必修科目としても出てきているわけです。ちょっと地域保健・医療というものの意義として、これは残念ながらなかなか臨床の先生方に御理解いただけないところがあるんですけれども、やはり全人的医療と言ったときに、自分の目の前で患者さんの体とか精神状態を診ればそれで全人的医療というわけではなくて、その社会、家庭、地域、職場、学校、こういった部分に思いをよせられる医者をつくっていく必要があるのではないかと、こういうことであります。私自身、岩手県の田舎の方で保健所に勤務したこともございますけれども、それ以前救急医療で病院で研修を受けていたんですが、保健所に出て初めてその患者さんの家庭訪問などをしてこういったものが必要だと感じた経験がございまして、やはり地域保健・医療というものは、今後の若い先生方には是非研修をしていただきたい。それも、単に保健所とか診療所に行って座学ではなくて家庭訪問、往診、地域活動、こういった患者さんの生活する場にどんどん入り込んでいって、そういうものを理解していただきたいということが、これが一番大きいと思います。それから、その目の前にいる患者さんを治療するというだけではなくて、さらに社会復帰へ向けた、あるいはその負担を軽減する、こういった観点からさまざまな制度あるいは家族会などの支援組織、団体、こういうものを知っておくというのも医師として今後必要ではないかというようなことがあります。そのほか、こういったものの届け出というのは、社会防衛の中で医者というものがどれだけ重要な役割を担っているか。つまり食中毒なんかは医者の届出があって初めてアクションが起こせる。また、最近は児童虐待などで医師の役割というものが随分言われておりますけれども、こういったことも是非地域保健・医療研修の中で学んでいただきたいということであります。こういった要素が入っているのが、今回の研修の大きな特徴ではないかと思います。さて、今回の新制度におきまして、併せてマッチングプログラムが導入されました。これによりまして、日本の研修医の動向に大きく流動化が起きまして、これまでとかなり違った状況が見られたと思います。まず一つは、その研修を受ける場所ですけれども、先ほども申し上げましたように古い制度のもとでは大体7:3ぐらいの割合で大学病院の方が多かったわけですが、この新制度になりまして、その差がどんどん縮まってまいりまして大体半々ぐらいに、今年はなりました。ごくわずかでありますけれども、臨床研修病院の方が上回ったというような状況がございます。次に、これちょっと文字が小さくて申しわけないんですけれども、何を言っているかというと、この平成15年度の旧制度の時までは、大学以外の臨床研修病院については原則として300床以上の病院しか研修病院になれなかったんです。そういうことから、300床未満の病院で受ける研修医というのは、わずか16病院で60人しかいなかったわけです。ところが、今回そのプライマリーケアの研修を受けるには大病院だけではいけないだろうということで、この病床についての規制を緩和しました。その結果、中小病院もどんどん参入してきて、今年度は大体300人ぐらいが1年生として300床未満の病院で働いております。昨年から働いている2年生も含めますと大体500人ぐらいが、こういった300床未満の中小病院で研修を受けるようになったというようなことがあるわけです。それから、これは都道府県別のデータでありますけれども、マッチングが始まる前は医師が大都市に集中するというようなことが言われていたわけなんですけれども、この一番左側が古い制度のもとでの研修医の数です。1年目、これ昨年の研修医の数ですけれども、このときは東京、大阪とか京都とか大都市からどんどん研修医が減って、むしろ地方で増える傾向がありました。今年は、若干の揺り戻しの現象はありましたけれども、それでも古い制度と比べると、やはり大都市で減っております。特に東京都の場合は2年連続で研修医が減少しまして、古い制度に比べて417名も減少しております。他方、北海道は31人増えている、岩手は27人増えている、沖縄は46人増えているというような、こういう状況があるわけです。次に、これは、2次医療圏ごとに、人口10万人対医師数をとり、それを横軸にしました。大体この辺が、197.3で人口10万人対医師数の平均ぐらいです。右側にここの人口10万人対医師数が多い地域で、左側に行くほど少ない地域となっております。それぞれの2次医療圏における研修医の数を見たのがこのグラフで、古い制度の平成15年度はこういう形であったんですけれども、16年度、17年度となるにしたがってこっち側の、今まで医師の多かった地域では研修医の数が少しずつですけれども減っております。逆に、平均より少なかった、今まで医師の少なかった地域で研修医の数が増えているというような状況があるわけです。つまり、この制度が始まる前、マッチングが始まる前は、マッチングによって研修医は大きな大都市の大病院に集中すると言われていたわけなんですけれども、こういったデータで見る限りにおいては、むしろ逆に大きい病院よりも、大きい病院にも行ってはいるんですけれども、中小病院の方にも流れるようになっていますし、またこれまで医師の少なかった地域の方へも研修医がどんどん出てくるようになったことがわかると思うんです。そして、次にその研修医に対するアンケート結果ですが、これは今年の3月、つまり昨年から始めたその1期生の、約1年たつ一番最後のところで行ったアンケートであります。大体4,000人ぐらいが答えてくれているんけれども、これも既に記者発表しておりますが、現在研修している病院に応募した動機は何ですかということについて、上のクリーム色っぽい、これが臨床研修病院の答えですが、「症例が多いから」というのが臨床研修病院は非常に多いです。それから、「プログラムの充実」、「地理的条件」。地理的条件がよいというのは設問の設定を我々ちょっとミスしまして、と申しますのはマッチング協議会の方で行ったアンケートではこの地理的条件というのを、「自分の実家に近い」、「学校に近い」、それと「都市部」というふうに3つに分けておりまして、そうしますと例えば都市部というのはそれほど高い順位の方に来ておりません。ただ、このアンケートの場合3つが全部一緒になっちゃったので、結構高いところに来ていると思います。それから、「病院の施設が充実」とか、こういったことがあります。それで、大学病院の場合は、今申し上げた3つが全部重なっているんでしょうけれども、「地理的条件」というのが非常に多くて、それから「病院の施設・設備が充実」と、こういったことが応募した動機として多かったということになっております。次に、あなたが研修している病院の研修体制に満足していますかという問に対しまして、臨床研修病院は半分ちょっとが「大体満足している」と答えているのに対し、大学病院は3分の1ぐらいしか満足と答えていない。むしろ、「満足していない」と答えていた方の方が多いと、こういうことであります。じゃあ、何で満足していないのかという問なんですけれども、これは分母をそれぞれの全体でとっています。不満だと答えた人が分母ではなくて全体が分母なんですけれども、そうしますと、研修病院の場合は「十分に教えてもらえない」とか、そういうのが一番多いんですけれども、そこからだんだんこういう順番になっていく。それに対して、大学病院の場合は待遇・処遇が悪いというのが不満の一番の原因です。これは確かに、きょうはちょっとデータを持ってきてないんですけれども、年収についての調査によりますと大学病院の方が200数十万円、臨床研修病院の方が300数十万円でまだ100万円ぐらい差がついております。ただ、古い研修制度のときに比べて大分その差が、数字で100万円ぐらい縮まってきているんです。やがて、この辺の差は解消してくるのではないかと思います。あとは、「研修に必要な手技の経験が不十分」とか、この辺が多いということがわかります。次に、病院のプログラムに満足していますかということですけれども、これについても大体似たような傾向があるわけです。この満足していない理由ということなんですが、臨床研修病院の場合は、「専門医研修にうまくつながりそうにない」が多い。これは、わかるんですけれども、大学病院でも「専門医研修にうまくつながりそうにない」という方が比較的いたというのがちょっと、これは意外でした。それから、「プライマリーケアの能力がよく身につけられない」。これは、やはりなかなか難しいのかなと、大学病院では。そういうことがあります。それから、今は大学病院と臨床研修病院に分けて調査し、解析したんですが、これはちょっと細かいんですが、病床規模で分けてみました。一番上の濃い青が300床未満、その下が300から500床、それでこの白地に点々が500床以上の大きい病院ということです。これで非常に特徴的だったのは、その300床未満の比較的小さい病院で応募した動機として一番多かったのは、「熱心な指導医が在職」ということ。それから、2番目が「研修理念に賛同」というのが非常に多かったと、突出しているんです。つまり中小病院とかではなかなか自分のところに研修医が来てくれないというような声も聞こえてくるんですけれども、必ずしも諦めることはなくて、熱心な指導医とかあるいは病院として明確な理念を打ち出してしっかりやれば、十分研修医は来てくれる余地はあるんじゃないかなということが、このアンケートからわかるんではないかというふうに思いました。いずれにしても、この新しい制度の導入、マッチングの導入によって大分研修医というものが変わってきたということであります。先生方がどうかというのはわかりませんけれども、我々の時代のこういった進路選択のイメージというのはどうだったかというと、こんな感じで、やはり医局を回ってどんな酒飲ませてくれるかとか、どんな先輩がいるか、そういう雰囲気で自分の大学の医局を選んでいたんではないかなと思います。私自身も、本当は外科に行きたかったんですけれども、何かいま一つでして、そうやって悩んでいた時にたまたま厚生省の人に声をかけられて、厚生省は口がうまくて何となく入ってしまったというような、そういういいかげんな進路選択なんですけれども、多かれ少なかれそんな状況があったのかなと思いました。ところが、今の研修医は違います。考える人になっています。しっかりといろいろなプログラムのことから、医局からこういったことを考えているという、こういうその結果が大きく表れているんじゃないかというようなことであります。いろいろお話してまいりましたけれども、これまでの研修制度というのは、大学や大病院だけで研修医をつくるというような制度だったんですけれども、新しい制度になって中小病院から、保健所から福祉施設から、医師だけではなくてコ・メディカルあるいはさまざまな方々、あるいは患者さんも含めて全体でこの医師を育てるという体制になったということだと思います。是非、今後とも皆様の御協力をお願いしたいと思います。どうも、本日はありがとうございました。

○高久座長
 どうもありがとうございました。ただいまのお話に何か御質問、御意見おありでしょうか。よろしいでしょうか。非常にクリアに、データをまとめていただきました。よろしいでしょうか。では、宇都宮さん、どうも御苦労さまでした。それでは、順番を少し変えさせていただきまして、議事の(1)の説明の聴取の4番目にあります新時代の大学院教育ということで、これは事務局の方から説明していただきます。よろしくお願いします。

○加藤医学教育課長補佐
 御説明させていただきます。大学院の在り方につきましては、これまでにも旧大学審議会において議論がなされ、数々の答申をいただいたところです。中央教育審議会に一本化されて以降も大学分科会の大学院部会におきまして議論がなされました。特に、平成15年以降、新時代の大学院教育の在り方について御検討いただき、先月5日、これまでの議論の結果として審議会答申をいただいております。机の上にコピーでございますけれども、その答申を用意してございます。概要につきましては、資料9で御説明させていただきたいと思います。今回の答申の、全体の根幹をなすものといたしまして、基本的な考え方というのはこの資料の左側の真ん中辺にございます。一つは、大学院教育の実質化、教育の課程の組織的展開の強化でございます。そして、もう一つは国際的な通用性、信頼性の向上でございます。この二つの実現のために展開すべき施策について、種々御提案をいただいたという内容となってございます。教育の課程の組織的展開の強化と申し上げましたが、基本的に我が国の大学院は従来から課程制大学院であるという扱いになっておりましたけれども、実際はこの考え方が浸透されていなかったという指摘もございます。課程制大学院と申しますのは、一定の教育目標あるいは一定の修業年限、あるいは一定の教育課程を有し、学生に対して体系立った教育を提供する場であるということを大学院として位置付けまして、そういう中で教育の課程を修了した人に対し特定の学位を与えるということを基本とする制度でございます。従来から制度としてこういう枠組みはつくっておりましたが、なかなか中身が伴っていなかった。はっきりした教育目標ですとか、どういう教育内容にするかというものを定めずにそれぞれの研究室のもとで、ちょっと言葉は悪いんですけれども先生方の手足として研究補助をさせていたのではないかと。こういうふうにして与えられた学位が、本当に世界的に通用するものかどうかというその疑問視さえもあったようでございます。こういったことから、これまでの大学院の基盤強化といいますのはこれまでどちらかというと量的整備に重点がありましたけれども、今後はもう一度原点に返って、教育研究機能を国際的水準で強化することで基盤強化を図っていこうということでございます。その大学院教育をもっと組織的に展開をさせる、つまり大学院教育を実質化させることで、学位の世界的通用性を向上させるなど、国際的な質を保証しようというものでございます。具体的にどういう方策があるかといいますのは、各大学院はどのような人材を養成しようとするのか、その目的や役割をまずは明らかにすることが。重要とされております。さらに、その右のページをご覧いただきますと、先ほど申し上げた2つの大きな点の概要が右側のページに書かれてございます。「大学院教育の実質化の方策」でございますけれども、まず(1)といたしまして課程制大学院制度の趣旨に沿った教育の課程と研究指導の確立が必要であるということで、ご覧のように1としてコースワークの充実・強化。2といたしまして、円滑な博士の学位授与の促進と。3としては、教員の教育・研究指導能力の向上。こういったものが重要であろうということでございます。さらに(2)として、大学院の中だけではなくて産業界ですとか、地域社会など多用な社会部門と連携した人材養成機能の強化も必要であろうということもございます。また、(3)としては、学習・研究環境の改善あるいは流動性の拡大ということも重要な要素として挙げられてございます。「国際的な通用性、信頼性の向上」でございますけれども、(1)として大学院評価の確立、これによって質を確保する必要があるというものでございます。ご覧の1から3までの仕組みによって、こういった大学院評価を早期に定着させることが必要であろうということでございます。また、(2)でございますけれども、国際社会において教育研究を通じて国際貢献を果たすべき、あるいは国際競争力のある卓越した教育研究拠点を形成していくべきということが方策として挙げられてございます。そして、左のページに1回お戻りいただきまして、下の方に「大学院教育振興プラットフォームの策定」という言葉がございます。これまで大学院教育の改革の方向性や展開方策について申し上げましたけれども、ただ単に言いっ放しで終わらせるのでは、その意味がないわけでございまして、いかにしてこれを名実ともに実現し実行性を持たせるかというのが、実は一番重要でございます。このために、国や大学等の関係者によって組織的な検討や取組が活発に行われなければいけないと考えております。そのため、仮称という形になっておりますけれども、大学院教育振興プラットフォームというものを策定して、それに基づく施策の展開に努めていくべきとされているところでございます。内容といたしましては、国が今後約5年間程度で早急に取り組むべき重点施策を明示し、体系的かつ集中的な施策の展開に努める。そして、各大学におきましても、これを踏まえつつ大学院教育の充実を図るべきとろうと指導がされているものでございます。これが、先月5日に答申をいただきました「新時代の大学院教育」の概要でございます。それともう一つ、資料10をご覧いただきたいと思いますが、今の中央教育審議会答申に先立つ1年ほど前に大学院部会において審議経過の概要というものをいったん取りまとめております。その際、大学院全体の議論も必要でありますけれども、やはり分野別によって多少中身が違うところもあろうということで、分野別の議論が必要であるとされたところです。このため、人社系、理工農系、医療系の3つの分野におきましてそれぞれワーキンググループを設置いたしまして、御議論いただき、今年の5月に大学院部会に報告がなされたところでございます。先ほどの中央教育審議会の答申におきましても、この3つのワーキンググループの報告が最後の方に添付されています。この中の医療系のワーキングでございますけれども、この調査研究協力者会議のメンバーでございます福田先生、北村先生、南先生にお加わりいただいております。医学、歯学、薬学、看護学、医療技術全般にわたって議論がなさましたが、その中で、特に医学という観点から御説明させていただければと存じます。それが、資料10でございます。医療系大学院の目的・役割でございますけれども、医療系大学院は、従来ほかの分野と同様に、基本的には研究者養成を行っておりました。ただ、現在ではこういった研究者養成だけでなくて、医師という専門性の高い業務に必要な研究マインドというものを涵養することも求められているなど機能は多様化してきているということでございます。多様化という言葉を使っておりますけれども、言葉をかえますとややその医療系大学院の目的・役割というのがあいまいであったということでございます。このため、今後の医療系大学院の在り方といたしましては、先ほどの答申の時も申し上げましたけれども、どのような人材を養成しようとするのかを明らかにすることが重要であるということでございます。医系大学院につきましても研究者養成なのか、すぐれた研究能力を備えた臨床医の養成なのか、まず目的を明確にしてくださいということでございます。そしてそれに応じた教育内容がどのようになっているのかを明確にしてくださいというものでございます。そして、2番として、先ほどの目的が、1主たる目的が研究者養成の場合、その研究者に求められる医学・生命科学研究の遂行に必要な基本的知識・技術をコースワークで修得させることが必要であるということでございます。また、2優れた研究能力を備えた臨床医養成の場合、臨床医に求められる資質あるいは能力を涵養するために必要な内容をコースワークで修得させることが必要であるとされております。併せて、診療を通じた臨床研究のテーマを課して、論文作成の研究指導を行うべきとされたところでございます。いずれの場合におきましても、目的とすべき人材養成に応じてしっかりしたコースワークを設定し、大学院生にそれを課すことによって、きっちり学ばせるということが重要であるという、いわば課程制大学院の趣旨にのっとったものにしてくださいという趣旨でございます。なお、研究能力を備えた臨床医養成の場合留意事項の一つといたしまして、関連学会が行う専門医等の認定資格の取得に必要な教育内容を取り込む工夫も考えられるであろうと。ただ、その場合、あくまでその大学院の教育であることと、こういう資格認定のための研修とは本来的には目的が違うということをまず理解した上で、こういった工夫を行うことも適当であるとされたところでございます。また、この資料にはございませんけれども、本文の中にはこういったコースワークによって修得させる場合、どのようなものを盛り込めばよいのかという具体的な内容が盛り込まれているところでございます。資料の説明は、以上でございます。

○高久座長
 どうもありがとうございました。大学院のことにつきまして事務局から説明がありましたが、どなたか御質問、御意見おありでしょうか。よろしいでしょうか。医療系大学院のワーキング・グループのことについては、今年の夏の医学教育課のワークショップのときに井村先生が大分詳しくお話されました。特にこの資料10の一番下の医学系、特に臨床系の方々が一番関心がある専門医と大学院の教育とをどう組み合わせるかという問題について、わかりやすく説明していただいて、多くの方に納得していただきました。それでは、引き続きまして次の議題である「地域医療を活性化する国立大学病院−専門医養成システム−」と東京大学における卒後教育の取組について、これは、北村委員の方からよろしく。

○北村委員
 ありがとうございます。お手持ちの9ページ、その上の資料の中にこの地域医療を活性化する国立大学病院専門医養成システムということで、今年の8月の名前で出ているものがそれです。これが、本物というかこれがそのペーパーなんですが、これの定義あるいはその目指すところに関してお話して、最後に若干ですが、東京大学、私の所属している東京大学に関してお話したいと思います。宇都宮先生からもお話があったように、大学でのマッチ者数というか数は大体外と半々ぐらいになっております。実はこの中間公表というのがありまして、その下にありますが、大学を希望する人、第1希望する人は39パーセント、3人に1人になっているんです。実際、マッチしたのは増えますけれども、それは第2申告でマッチしているということで、大学が研修という面ではそれほど評価されていない。原因はいろいろあるかもしれないですが、処遇という面が一番大きいようには思います。その結果どうなったかというと、どこから見てもいいですが、究極的に大学におけるマンパワーが落ちてきた。どういうことかというと、教員が学生教育、診療、研究に加えて今話題の、話題というか注目されている医療安全にも随分時間をさかれてしまう。それに加えて研修医がプログラム、厚生労働省のプログラムによって動くために3年目、4年目、5年目、この辺りがいわゆる入局してこない現状で、その人材が少ないために診療や学生指導等に時間をさかれ、大学におけるマンパワーが欠乏し、そのため象徴的にも言われているんですが、地域病院から大学へ医師を引き上げたというようなことで、地域の医師不足が社会問題化しました。今日お話するのは、卒後1年目、2年目の卒後初期の臨床研修ではなくて、それを終わった後、3年目以降の医師をどのように養成するか、そしてそれと地域の医師不足をどのように解決するかということで、国立大学が各県に1校近くありますので、中心になって考えるべきだということで考えました。うまくいくと、この3年目、4年目の臨床医を養成することによって地域の病院への医師を充足し、また大学におけるマンパワーも充実することによって教育や研究あるいは診療がより充実してくるというような一挙両得というようなものを目指したわけです。これこそ先生方には、大変よく御存知のことですが、地域医療の確保と自治体病院の在り方に関する検討会や大学の医学部長会議、病院長会議あるいは厚生労働省のへき地医療対策検討会等々、地域医療の活性化というか地域の医療がしっかりするような動きはつかめます。その中で文部科学省あるいは国立大学病院としてどういうことができるかということを真剣に考えました。今年の3月11日に国立大学附属病院の卒後臨床研修の担当者、いわゆる研修センター長が集まりまして実務者会議というのを京都で開きました。全国の状況あるいはモデル的な取組を考えたときに、もちろん初期研修の充実というのも大事なんですが、来年の3月で1年目が終わります3年目以降の医師をどのように、さらに専門医と育てていくか、あるいはその医師と地域医療との関係をどうするかということが直近の課題ではないかというような認識のもとに、京都大学の平出教授を中心とした卒後臨床研修委員会というのが、常置委員会の下にありまして、その委員会、ここでも田中委員がメンバーの一人ですし、私も入れていただいて、そこでいろいろ検討した結果がここの部分です。それで、最終的には8月に各病院長に了解を得、8月11日に文部科学省にこういうものを大学としてまとめましたということを御報告いたしました。メインは、まず3年目以降の医師をどう位置付けるかと。そうした場合に大学病院で3年目以降の医師として養成される場合、これはまあ修練医とか後期研修医とか、専門研修医とか大学によっていろんなことを言っているんですが、位置付けはやはり学ぶこと、学ぶことと診療に従事すること、両方をやる、そういう立場である。決して学ぶだけではない。いわゆる働くことも、もう3年目以降ですから求められて、診療チームの中では中核として教える、場合によっては研修医を教える、学生を教えるということも兼ねたそういう中核としてとらえる。そして、このチームの中で、いわゆる富士山型のすそ野の広い、人間性豊かな、そしてかつ専門性、高さも持った専門医になるということを求められるという時代と位置付けました。そういうすそ野が広くて、高さもある人をどうやって育てるかというと、地域の病院にやはりこういう心と技能を持った専門医養成もある意味では担ってもらうと。やはり第一線で、生の患者を数多く経験するということは絶対必要であろうと。そして、大学は大学で今言ったようなチーム医療の中で教えつつ、またその上の人から学ぶと、それを合体してやろうと、こういう形できている。大学での立場、そして外へ行って経験を積むということ。京大の平出先生が一生懸命考えたキャッチフレーズなんですが、医師循環ネットワーク、循環システムです。こういうのを各大学でつくり上げて、それを各地域の医療機関とともに地域の活性化につなげていきたいというプログラムです。そうすることによって、3年目以降はここに3つ色を変えて書いてありますが、専門的診療能力、専門医としての能力、チーム医療のリーダーシップ、そして富士山のすそ野にある地域医療を担う全人的診療能力、この3つを高めたいということであります。具体的には大学病院に1年いて、外の病院、地域医療期間に2年いて大学に戻る。あるいは外から始めて大学に戻る。いろんなタイプがあると思いますが、1、3はその初期研修のように3カ月やそういうのではなくて1年以上を単位としている。この方法は、従来と何が変わるんだという質問を受けました。従来もいわゆる関連病院という形で外に出ているではないですかと。従来との違いを幾つか申し上げますと、まず初めと終わりがあるということ。プログラムですから終わりがあるんです。何年間、原則5年ぐらいをイメージしておりますが、3年目から7年目までというプログラム、単位があるということ、そして身分がしっかりしていると、呼び方は専門研修医や修練医や名前は違いますが、身分がそれなりにしっかりしているということです。もう一つ、このローテーションシステムを病院同士の契約でやると。どういうことかといいますと、従来ですと例えば消化器内科の関連病院は消化器内科のところの人が行くというようなことになると、ある病院は内科でも消化器内科は優秀なんだけれども循環器はいま一だめだとか、ここに来ている内科医はある一定の内科のOBしかいないというような、ちょっと偏ったことがありましたが、これは大学病院としての契約でありますので、地域病院に行く人は消化器内科も循環器内科も、またその他の診療科も一律のように循環するというようなシステムですので、従来の各診療科ごと、各講座ごとの関連病院という発想ではなくて、病院との契約であるということで、従来行われたものとは随分違うと認識しております。これがうまくいくと先ほど言いました3つのものができると同時に、大事なことなんですが、若手医師のキャリアを大学より発信するというスタイルになると思います。スライドではないんですが、東京大学のことを簡単に述べますと、東京大学は3年以降の研修を後期研修とは、一応専門医研修、専門研修と呼んでおりますが、つくりました。そのキャッチフレーズは、東京大学病院はあなたのキャリアデザインを支援しますと。キャリアデザインというのは、人生設計です、日本語で言えば。いろんな道へ歩む人がいると思うんです。専門医になる人も地域の医療を担う人も、あるいは厚生労働省のような行政になる人も、あるいは被災協力をやる人も、いろんな人がいていろんな人生設計を多くの研修修了者は持っています。それに対して、大学病院として最大限の支援をしようと。どんな形で支援するかは、診療科によるところもあるんですが、まず診療科によってキャリア、過去の先輩たちが築き上げたキャリア、5年後にはこういう状態になっていると思います。8年後にはこうなっていると思いますというようなキャリアを明示し、そのルートを自分で決めて自分は3年間大学にいて、その後外の病院で修練して留学して、あるいは大学院に入って、そしてその後こうこう、こういう人生を歩みたいと、そういう設計をするのは本人ですが、大学の研修センターあるいは大学全体として、その人生設計を実現するために最大限の支援をしようと。財政的にも、それから教育的にも支援をしようというシステムです。東京大学のホームページからいろんな診療科のが見られますので、東京大学附属病院、東大病院のホームページに入っていただいて、後期研修、専門医研修というところをたどっていただくといろんなデザインがあります。これに関して、実は名川先生の外科の教室が一番象徴的なデザインをかいていらっしゃいますので、もし名川先生、追加がございましたらお話いただきたいなと思うんですが、非常にりっぱな人生設計が、外科医で人生設計が描かれております。以上です。御清聴ありがとうございました。

○高久座長
 どうもありがとうございました。名川先生、何か、付け加えることがありますか。

○名川委員
 特にありません。

○高久座長
 どうもありがとうございました。今の北村委員の御説明に何か御質問、御意見おありでしょうか。どうぞ。

○佐藤委員
 山形大学でも、やはり地域医療活性化のためには後期の卒後研修が非常に大切であるという認識を持ち、現在、先ほどもありました大学院教育とリンクさせた形の後期の卒後研修教育プログラムというものの作成を進めている最中です。具体的にお話しますと、大学院とリンクさせた形で、1つは「基礎的な研究をやる」、そういうキャリアを持った専門医養成コース。もう1つのコースは「臨床的な臨床研究をして」、それで学位をとって専門医というコース、最後は、特別「学位の取得にはこだわらない」けれども、専門医の取得を目指すコースの3コースからなるプログラムです。

○北村委員
 大学によっていろいろ工夫していただければいいと思うんですが、今この面で先進的なのは岡山大学、岡山大学は研修センターに専任の先生を置いていて、研修センターが契約までやります。人事のすべてをやるということは、まだ手探りの状態なので、各診療科の人事までをやるかはわかりませんが、それぞれの契約で何人の人を派遣しますよとか、そんなことまではやるように伺っております。あと別の理由もあったんですが、弘前大学も医師の派遣は、各診療科ではなくて大学が一本窓口一つになっていわゆる派遣するというシステムを立ち上げていますので、それを普遍にしていけば、一人一人の人事は難しいとは思うんですが、人材の派遣まではできるんではないか。

○高久座長
 国立大学病院以外にも、いろんなところで後期研修を計画していますね。ある程度の給料を考えていると思うのですが、国立大学の場合に、給料が出る可能性があるのですね。

○北村委員
 今の状況では難しいなと思います。先ほど宇都宮先生がおっしゃったように大学に研修医が不満がある第一の理由は処遇です。例えばレジデントハウスがある病院もありませんし、給料が安いと。伝統的に、それ等はあったわけなんですが、一つはやはりこの状況、これを機会に専門研修医あるいは修練医に対して何らかの給与的な裏付けを文部科学省にお願いしたいという意図もこのペーパーにはあります。それから、東京大学としては週4日の採用という形で、ほかの日を外の病院でやってもらうという、経済的に補うということもあり得るというふうにはしていますが、決していいこととは思ってはいない。

○高久座長
 他にどなたか。どうぞ。

○石野医学教育課長
 若干補足ですが、今北村先生から処遇の話がありました。今国立大学病院についていいますと、研修医については一人当たり360万円の予算が積算の中に組み込まれています。あと、その研修を終わった後の受け皿としては、基本的な予算上の積算としては、非常勤の医員になります。今問題とされた300万円だか310万円ぐらいですが、研修医から例えば今の専門医養成プログラムにいったときに給料が下がるというのはなかなか厳しいところがあるものですから、私どもではそれぞれ大学の創意工夫ということをお願いするわけですけれども、若干何かの支援ができないかということで、予算要求の段階ですが、18億円ぐらいの予算要求はしております。それで全部支援できるというわけではありませんけれども、医員の300万円に若干プラスアルファできるような補助として面倒見られないかということはしています。

○高久座長
 どうもありがとうございました。他にどなたか、御質問おありでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、次に医療人GPと大学病院における職業教育の現状について、事務局の方から説明していただけますか。

○山本大学病院支援室長
 大学病院支援室長の山本でございます。私から、地域医療の関係で医療人GPと、新医師臨床研修の関係で、昨年の7月に調査したものがございまして、その結果について御説明をさせていただきます。それでは、最初に医療人GPの関係から説明をさせていただきます。ここに書いてございますように正式名は、地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラムということで通称医療人GPと呼んでいるものでございます。このプログラムは、地域の医師不足の解消など医療に関する、社会的ニーズに対応して大学病院がその臨床教育機能を活用して行う特色ある、優れた取組に対して重点的に財政支援をしていこうというものでございます。この結果において、教育の活性化や医療への貢献を図ることが可能になるということでございます。今年から始まったプログラムでございまして、予算は7億5,000万円ということになってございます。概要の丸の二つ目のところでございますけれども、募集テーマ、2つ設けておりまして、1つはへき地を含む地域医療を担う医療人養成ということでございます。これは、御案内のとおりでございますけれども、昨年の2月に関係省庁連絡会議で地域医療の推進方策を取りまとめましたけれども、文部科学省におきましても地域医療に関する教育の充実を図るということにしておりまして、そういう背景を踏まえまして設定ものでございます。それから、二つ目が全人的医療を実現できる医師・歯科医師の養成ございます。これは患者を全人的に見ることができる基本的な診療能力の修得を目的とした新医師臨床研修制度が16年度から始まったこと、また平成18年から歯科医師についても必修化となることから設定したものでございます。それから一番下に、スケジュールが書いてございますけれども、各大学からテーマに応じて応募をいただきまして、文部科学省に設置しました選定委員会、高久先生に委員長をお務めいただいているものでございますが、その委員会におきまして、9月中旬に20件を選定したところでございます。なお、その選定されたプログラムにつきましては、基本的に3年間財政支援をするということにしておりますし、またその選定されたプログラムにつきましては、事例集の作成あるいはフォーラムを開催する時に説明をしていただくというようなことで、広く社会に情報提供もしていくことを考えております。それから、資料の4が申請と選定状況一覧でございます。一番右側に合計がございますけれども、申請件数が全部で66件ございまして、そのうちの20件を選定しております。資料の5でございますけれども、これがテーマ別に選定したプログラムの一覧でございます。内容の説明は省略させていただきますけれども、テーマ1の地域医療を担う医療人養成で、北海道大学から琉球大学まで国立が9件、公立大学が2件、私立大学が4件、計15件を選定したところでございます。テーマ2の全人的医療の医師・歯科医師養成のプログラムでございますけれども、国立大学が2件、公立、私立大学それぞれ1件、それから共同教育プログラムといたしまして、東京医科歯科大学から申請のあったプログラムを1つ選定して、計5件を選定したところでございます。資料の6は、平成18年度の概算要求の内容を示した資料でございます。7億5,000万円は継続分として、さらに新規分の4億円を上乗せし、全部で11億5,000万円を要求しております。その4億円の新規のテーマでございますけれども、下から2つ目ぐらいのところにテーマが書いてございますけれども、分野別偏在等に対応した医療人養成ということを考えております。医師の偏在につきましては、地域と分野がございますので、平成18年度につきましては、分野別偏在として、今財務省と折衝しているという状況でございます。2つ目は新医師臨床研修の実施状況調査結果の概要でございます。大学病院につきましては、特に厚生労働大臣の指定が必要ないわけでございますけれども、厚生労働省の諸基準を参考にしつつ、充実した研修が行われる必要があるということから、研修の実施状況を各大学にフィードバックすることによって研修内容や体制をさらに充実していただこうという目的で調査をしたところでございます。昨年の6月、7月ですから、研修が始まったばかりの時ではありますが、他大学状況を早く各大学病院が知り得て改善をしていけばと考え実施したわけでございます。3番の調査結果の概要のところでございますが、例えば(1)の研修プログラムにつきましては、基本的な診療能力育成に留意した見直しを行った病院が9割ございますし、(3)の研修医の処遇のところですがこれは、当然のことだと思っておりますけれども、全病院がアルバイトを禁止している。(4)の指導体制におきましても、指導体制の充実を図った病院が8割ございますし、(6)の実施体制では、プログラムの管理・研修医の人事管理を行う研修センターを設置している病院が9割というふうなことで、これを見ると各大学もいろんな取組をして、その充実、改善に取り組んできたということがおわかりになると思います。それから、次の裏側でございますけれども、これは、記述式で各大学から特色ある取組を提出していただいたものの一部をここに記載したものでございます。2年間の研修終了後の進路について管理委員会を中心に専門分野への橋渡しの支援を行うというようなところもありますし、地域での研修中も大学病院にメンタルヘルスサポーターを設置し、研修後の支援と相談体制を充実することというようなところもございます。また、プロブラム作成者と後期研修医の話し合いによって、研修医の意見を取り入れつつ常に改善・進化するプログラムを作成するシステムを整えたところもございます。資料の8につきましては、先ほど来お話が出ておりますので、説明は省略させていただきますけれども、いずれにしましても各病院におきましては先ほど宇都宮室長さんから御紹介がありましたアンケート調査結果、あるいはこういうアンケート調査結果を参考にしてさらなる改善・充実に取り組んでいるものと承知しております。以上でございます。

○高久座長
 どうもありがとうございました。今の説明にどなたか御質問、御意見おありでしょうか。

○辻本委員
 素朴な疑問です。資料7の状況結果、これはアンケートでお求めになった内容でございますね。はい。それで、ここに8割とか7割とか数字があるんですけれども、それ以外の、例えば7割と答えたところの3割はどうなっているとか、8割と答えたところの2割は現状どうなっているのか、そのあたりはさらにということでも追跡の、何らかの調査ということをやっていらっしゃるのかどうかをお尋ねいたします。

○山本大学病院支援室長
 この資料は、概要という形で取りまとめておりますけれども、実際はそれぞれ設問に対して幾つかの選択肢を設けまして、回答していただいております。したがいまして、他のところはどういう状況かというものも、もうちょっと詳しい資料もあるわけでございますけれども、概要としてまとめた関係上、この資料にはその細かい数字は、記載しなかったということでございます。

○高久座長
 他にどなたか、御質問おありでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。これで一応プレゼンテーションの方は終わらせていただきまして、残された時間で今回は、卒後の教育について主に議論をするという予定になっています。参考の裏に「卒後教育に係る論点」ということで幾つかのことが掲げられています。ここにあります4つのポイント、この中には既に今日の発表にも関係がありましたし、今までも議論したことがありますが、この項目に必ずしもとらわれなくて結構ですから、卒後教育につきまして、今日の発表も踏まえていろいろ御意見をお伺いしたいと思いますけれども、どなたか御意見おありでしょうか。どうぞ、水田委員、それから吉新委員。

○水田委員
 後期研修に対する九州大学病院の取り組みを説明させてください。先ほど北村先生からのお話は、とても理想的な方法だと思いますが、実際に医局を飛び退けて大学病院が関連病院と人事のすべてを直接行うというのは、難しい点が出てまいります。私どもは後期研修は関連病院と一緒にプログラムを組むと言うことを大原則にしておりますので、各医局と関連病院から後期研修のためのコーデイネーターをだしていただいて、委員会を作り、プログラムを決めて人員も決めるやり方を取ります。また、3年次の人が何人大学へ帰ってくるかと言うことは、みんな心配しておりますが、私どもが調べたところ95人くらいは大学へ帰りたいと言っております。彼らと話してみますと、研修病院に行ってとても勉強になったが、2年間やってみて、これからもずっと同じ病院で続けるかと言われると、やはり大学のアカデミックな雰囲気の中での研修も受けたいし、大学院で研究もしたいと言う意見がありました。処遇の問題ですが、やはり医員としての採用しか方法は無いのではないかと思います。お給料はもちろん1年次、2年次の研修医より多くしないといけませんが、現在も色々手当を入れますと研修医よりは多い額をはらっておりますので、その手当を少し増やすようにしたいと思っております。医員はネーベンにいけるからお給料は少なくてもいいのではないかと言う意見もございますが、私はその考えはおかしいと思います。非常勤とはいえ、大学病院の職員にネーベンを当てにするような処遇は断固辞めるべきです。文部科学省からも予算要求をしていただいているとの事でございますので、病院として何とかきちんとしたいと思っております。

○高久座長
 どうもありがとうございました。それでは、吉新委員。

○吉新委員
 先ほどからのいろいろプレゼンテーション聞かせていただきまして、大変勉強になりました。今回の地域医療の死角をといいますかへき地医療の確保が、先ほどの仕組みで本当に動くのかなと思うんです。北村先生の場合は、東京大学から見た地域ということで、北海道では特急が止まる駅は北大、急行は札幌医大、鈍行は旭川医大と、差別的な冗談なんですけれども、バスがとまるところは自治医大という事を聞いたことがあります。医局の医師派遣というパワーが落ちて、へき地の部分に非常に医師不足が深刻になったというのが現実で、そこを埋める仕組みをどうしようかという場合に、大学にやっていただけるのは地域医療やプライマリケアの教育だと思うんです。オックスフォードに行くと、オックスフォード大学のラディクリフという附属病院の教授は、目の前で開業しているんです。開業をして、午後は学生を教えて、そこで大学院生がたくさんいる。プログラムでコモンディジーズの疾患統計のソフトを開発していましたけれども、また、オーストラリアのニュ-サウスウェールズ大学へ行ったら、ゼネラルプラクティスの教室の教授が往診をしているんですね、僕も同行しましたけれども、へき地医療とか地域医療の前に日本のドクターというのは、2分の1は開業医なわけです。いわゆるゼネラルプラクティショナー、最近は専門医の開業医が多いと思うんですけれども、いずれは専門医もみんなゼネラルプラクティスをやるんだと思います。ですから大学のアカデミズムの中にゼネラルプラクティスがないというのが、日本の大学教育での問題なんではないかなと考えます。先生方にそういうお話をするというのは、大変失礼ですけれども、大学病院の中にゼネラルプラクティスの場を持つというのは極めて困難ですし、附属病院での診療で、診療各科とのスラッグルが起きますので、できれば地域の病院なり、あと教授が目の前で開業、医師会の先生とトラブルがあると困りますけれども、そのプラクティスの場を大学が自分の担当する当道府県のエリアにたくさん持つということがひとつ僕は、地域医療を展開する上で大事じゃないかなと思います。本日のテーマからいいますと、教育者、研究者の育成という意味では、大学のアカデミズムの中に何とかゼネラルプラクティスなり、地域に根ざした地域医療教育をもっと取り入れて、その大学で一番大きな講座にしてもらいたいなというようなことを思います。その中で学生教育をするとか、カナダなんかですと、教授が年のうち1カ月ぐらいビジティングプロフェッサーシップという離島やへき地で働いている卒業生のところに行って、教育や応援にいくと言っていましたけれども、そんな仕組みがあったら本当にすばらしいなと思います。何となくへき地、離島にいるというと、大学病院のアカデミズムの中から見るとプレステージが低くてずっと二流、三流といったイメージが付きまといます。何とかそのアカデミズムの中にコモンディジーズや地域医療という概念をもっと強調していただきたいなと思います。できれば大学の派遣システムの中に、全国にある都道府県ごとにあるへき地医療支援機構のメンバーを組み入れていただく、それぞれの大学が中心に、前に発表された山形県の蔵王システムもそうですけれども、大学の医師派遣の仕組みに県の衛生部なり医務課の抱えている医師不足の問題が、そこで一体となって検討されたらすばらしいなと思いました。以上です。

○高久座長
 どうもありがとうございました。どうぞ、大橋先生。

○大橋委員
 大橋でございますけれども、先ほど水田先生からありましたように国立大学の医学部長会議の中に地域医療・医療人育成の小委員会というのがございまして、その委員長としてやらせていただいております。いろんな先生の御意見のとおりやはり基本的な問題は、3年目以降の後期研修医に大学がどういう役割をするかが問題だと思います。医学部として、医育機関としてやるべき事、大学院、特に臨床系の大学院というのを専門医育成とどういうふうに連動しながら、運営していくかの問題が一つです。また本来医師のキャリアデザインの中でその後期研修をどう位置付けていくかという事が2番目の問題だと思います。そこに何らかのインセンティブ、今ジェネラルプラクティショナーをイギリスと同じように大学に置けとの御発言がありましたけれども、それを入れたら地域医療を担う、必要なキャリアが積めて、その研修がちゃんとインセンティブとして与えられるような資格です。専門医の人たちの資格の一つとしてそういうものが与えられないのかどうかというような点が、一つ議論としてありました。もう一つは、実は、長野県の事例なので恐縮なんですけれども、非常に大勢の初期研修の学生を日本中から集めている病院から、こういう依頼が大学に来ました。大学と我々の地域医療を担っている大型病院は本質的に役割が違う。ですので、自分たちの病院連合の中で幹部候補生、要するに将来の院長候補とかあるいはその部長候補という医師を、大学院で2年くらいのキャリアアップを図ってもらうように大学院を運用してほしいとの要望です。けれども所属は大学の講座ではなくてあくまでもその病院の職員でいるシステムを要望しています。そして、学部と同じように、はっきり言うと講座制、主任教授の下に置かれてしまうのは困ると。ですから、大学院であっても大学院医学研究科の中で責任を持って、そして地域の病院が必要とするある程度のキャリアアップのカリキュラムを教えて、そしてまた病院に戻すというようなことが保証できれば、大学院は定員不足で困っているようなので、定員の何パーセントかを持ってもいい、そういう申し出をいただきました。ですから、やはり学部長会議におきましても、専門医と臨床系大学院というようなものの組み合わせをしながら、最初の初期研修の目指したプライマリーケアの部分は地域医療機関で実施していいんじゃないかと思います。それに対して、医師の生涯育成の大きなデザインとして大学病院がやるべき、あるいは大学院がすべき役割というのを再考した方がいいんではないかと思います。そこの部分について十分に相互理解して連携を図っていけば、地域の病院と何もコンペティションすることはないと思います。医療経済の視点からとらえるとコンペティショナーになってしまうかもしれませんが、そうではなくてやはり役割分担で、日本の医師をどう育てるんだという大きな展望のもとでやるべきではないかということを学部長会議では考えております。それについて、関係してちょっとすみません。宇都宮室長に2つ質問したいんですけれども、初期研修を導入した理由が、国民が医師の質的向上と安全性確保ということを望んでいるという事が大きな前提だということはよくわかりましたが、それについて評価をどういうふうにされて、国民の付託に答えるのか。そのシステムは国がどうお考えになっているのかお聞かせください。

○宇都宮医師臨床研修推進室長
 今のその評価についてなんですけれども、まず来年の3月いっぱいでこの研修医の1期生が終了するということがございます。その機会をとらえまして、現在厚生労働科学研究費で、その実際にこの2年間で研修をしたその研修医がどのような技能を獲得したかとか、そういった面についての調査を行おうというふうに考えております。

○高久座長
 よろしいですか。

○大橋委員
 すみません。いわゆる国家資格みたいな、アドバンスの国家試験みたいなことは考えていないんですか。

○宇都宮医師臨床研修推進室長
 国家試験みたいなものは考えていません。

○高久座長
 今大橋委員がおっしゃったことの方で幹部候補生の要請というのは、それは先生、社会人枠で大学院を始められると可能だと思います。

○大橋委員
 そのとおりなんですが、従来の社会人枠というのとの違いは、地理的に、地方にありますと結構遠くて、課目を履修させようと思うと夜しかできません。そうしますと、診療が終わって6時から来て9時まで授業をやると、そうすると交通事故とかさまざまな安全性の問題が生じてまいります。それゆえにインターネットでe-ラーニングを使った形でそれを変えようと努力しているんですが、しかしそれではフェース・トウ・フェースのようにはうまく課目の履修ができていきません。ですから、2年くらいは大学に来ていただいて、その間に必要な課目や臨床技術をとっていただいてまた病院にお戻しするというものです。

○高久座長
 週に3日ぐらい来てとか、それから先生のところは総合大学ですから、恐らく幹部候補生というときには医療経済、あるいは法律的なことも勉強するコースを入れると良いのではないかなと思います。それから、先ほど吉新委員が学生の教育の中コモンディジーズのケアを含めた教育を充実する必要があるとおっしゃいました。それからもう一つ、在宅医療が地域医療にとって極めて重要です。自治医大では少しやっていますが、多くの医科大学で在宅医療の教育は行っていない。在宅医療の教育が必要ではないかということが、去年のニューイングランドジャーナル誌に出ていました。それから、総合診療を学ぶために2年程度地域に出る必要があると言われていました。それからキャリアの問題で日本の場合総合診療、医師会はかかりつけと言っていますが、認定・専門医制度がない。それに関連する学会で話し合いをしているという話ですが、専門医制をつくっていただくと、地域の医療に従事したことが資格につながります。これは、学会の問題です。一応学会は文部科学省の管轄になっている。ですから、提言の中でも総合診療を行うことが認定医や専門医に結びつくような方策を考えることを言っても良いのではないかと思います。卒後の教育のところで。他にどなたかどうぞ。

○新道委員
 卒後臨床研修の中で、コ・メディカルスタッフとのパートナーシップを医師にどのように教育されるのかということを懸念しております。臨床の人々の間で耳にすることですが、医師は、コ・メディカルスタッフを医師のアシスタントとして働いていらっしゃる方が多いようですが、そうではなく、やはりパートナーシップを持てるように育ててほしいと思います。そのことは、先ほど北村委員からの御報告に後期研修の中で診療チームにおいてリーダーシップを発揮できる人間性豊かな専門医の養成ということがございましたけれども、そのことは不可欠な要素と思いますので、医師がコ・メディカルスタッフとパートナーシップが持てるならば、私はチーム医療の中でも質の高い医療が展開できるのではないか、特に医療過誤等を予防する安全管理などもできるのではないかと思っています。そこで、臨床研修の中で是非、そのことをプログラムとして押さえていっていただきたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。

○高久座長
 おっしゃるとおりだと思います。これ、初期臨床研修でも当然問題になりますね。宇都宮さんどうぞ。

○宇都宮医師臨床研修推進室長
 細かくは書いていないんですけれども、到達目標の中でチーム医療というものをきちんとできるというような項目がございまして、その中で今委員のお話されたようなものは入っておるというふうに我々は理解しております。

○高久座長
 吉田委員、どうぞ。

○吉田委員
 実は、昨日ある委員会がございまして、この中でも何人かその会議に出ていらっしゃる方もおられますけれども、そのときに議論があったことを二、三申し上げますと、まず1点は、今座長もおっしゃいましたが、そもそも日本における専門医というのは一体何か。アメリカの専門医と同じようなものを漠然と考えて、そしてそちらの方に志向していっているんじゃないかと、多くの研修医は。ですから、そもそも日本における専門医というものをもう少し十分に調査して、しかもどうあるべきかということの議論が必要ではないかと、今座長おっしゃったように、これが1点。それから、2点目は先ほど水田委員がおっしゃったことに関係いたしますけれども、研修病院でいわゆる後期臨床研修をやる場合に、大学との関連をコンソーシアム的なものをつくって、大学との関連をうまくやっていきたいというふうな考えが、研修病院の方からの提言としてありました。それを実際にどうやって大学側が受け入れるかということが大変問題があるわけでございます。それから、3点目は、これは昨日なかったんですけれども、これも座長さっきおっしゃったことで、社会医学系の問題です、日本での。文部科学省の方に、委員会の名前を忘れましたけれども、要するに井村委員会で、日本におけるスクール・オブ・パブリック・ヘルス、公衆衛生大学院、これが非常に重要であるというふうに思っておりまして、これはやっぱりアメリカの医学と日本の医学とは大きな差がここで、これがあるかないかということで大きく生じておりますので、この辺のことも検討していただけたらというふうに思います、この機会に。

○高久座長
 大きな問題です。専門医のことで、アメリカと日本とで基本的に違うのは、アメリカの専門医はレジデンシィーのプログラムの中で数を限って養成をしているということと、それからもう一つアメリカの場合に減ったとはいえ、医師の半分ぐらいはファミリーフィジシャン、今議論になっている総合診療の専門医で、あとをスペシャリティーに分かれている、そこが非常に違うと思います。それから、一番違うのは、専門医に診療報酬がちゃんとつくということ、そこが日本の専門医とは基本的に違っている点だと思います。スクール・オブ・パブリック・ヘルスの問題は、非常に重要な問題で、特に国際的にはヘルスリサーチが非常に重要だと思います。それをやるのは、スクール・オブ・パブリック・ヘルスを出た人材が必要です。WHOはブルントランさんが事務局長のときはハーバードのスクール・オブ・パブリック・ヘルスを出た人が中心になって動かしているような状況でした。日本はそれに全然対応できていない。産業医大は産業医の養成が中心です。スクール・オブ・パブリックヘルスに一番近いところにあるのではないかなと思っています。これは余計なことかもしれませんが。

○福田副座長
 今スクール・オブ・パブリック・ヘルス(公衆衛生大学院)の話は、中央教育審議会の大学院の医療系部会でも議論されました。これが必要だということはみんな認識しております。特に、最近の種々な事例もありますが、環境問題等についてのレギュラトリーサイエンス、規制科学等の研究・教育分野が非常におくれていて、結局それが大きな被害をもたらすような事態が発生しています。この辺に関して、公衆衛生大学院に近いものは、京都大学に一部ありますけれども、それがどうして広くできないのかということも議論いたしました。結局そういうところを出た人たちが活躍できる場が現実にない状況です。職種も少ないということがあって、これはかなり根本的に検討する必要があります。しかも医学だけではなくて、学際的にいろいろな分野を含めてやらなければいけない、法律も含めてです。そういう新たな展開をしていく必要があるとの議論となりました。大学院部会の医療系ワーキンググループ報告書には、その論点が記載されております。これから進めなければいけないというのが、現実的な課題です。

○福井委員
 公衆衛生大学院は、京都大学に社会健康医学系専攻という名称で設置されています。それは欧米の、特にアメリカのハーバード大学とジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生大学院をモデルにしてつくったものなのです。ハーバード大学やジョンズ・ホプキンス大学では400人近くファカルティ・スタッフがいます。京大で私が責任者でつくった時には、当初50人くらいのスタッフで申請したんですが、結局持ち出しのスタッフをあわせて20人程度になりました。実際にポジションがついたのは4つか3つだったように思います。すごく見劣りがしますし、あれだけの幅広い社会的な問題を扱うためには、もっとたくさんのスタッフがいないと公衆衛生の教育はできないと思います。それで、日本にできれば3つか4つぐらい拠点になるようなちゃんとしたスクール・オブ・パブリック・ヘルスを作っていただき、アメリカの学会で行っている認定審査も通るような質の高いモデルとなる公衆衛生大学院をつくらない限りは、小さなものが乱立してもだめだと思います。

○高久座長
 ほかにどなたか、御意見おありでしょうか。いろいろな御意見をいただきましたけれども、どうぞ。

○福井委員
 総合診療のことですが、専門学会とのかかわりでなかなか総合診療分野の専門学会をつくるというのは、プレステージもないし、難しいと思っています。私は個人的にはジェネラルの分野だけは厚生労働省が何かの形で、20年前の家庭医論議を蒸し返す気持ちはないんですけれども、総合診療医認定をするというふうにしていただかないと、多くの人がそっちの分野に流れと思っております。

○高久委員
 日本医師会の、私が座長をしている委員会で専門医のことを議論していまして、当然総合診療ということも話題になりました。医師会は生涯教育を重視しています。医師会では、家庭医という言葉は非常に難しいと思いますが、総合診療医まではいくのではないかと思います。かかりつけ医というのはタイトルとしてはおかしいという議論が医師会の中でもありました。開業するならば総合診療のせめて認定医ぐらいの資格を持つ必要があるのではないか。総合診療学会、家庭医療学会、プライマリーケア学会がありますね、それらの学会が、一緒になって総合診療の認定医の制度をつくってもらい、それと医師会の生涯教育とうまく絡み合わせばある程度展望が開けるのではないか。そういう形で報告書をまとめることができないかと思っています。うまくまとまるかどうかわかりませんが、せっかくできても神棚のように供えているだけになる可能性もあると思いますが、そういう方向にあるということです。それから、もう一つ、これは余談になりますが、日本のように患者が家庭医、総合診療医を通さないで、直接専門医に行くというシステムは、混乱を生じるのではないか。そういうルートをつくる必要があるのではないかという議論もありました。他に、どなたか、どうぞ、南委員。

○南委員
 私、国民を別に代表するというわけではありませんけれども、やはりこの新しい臨床医の臨床研修の必修化の制度自体がかなり国民のそうした総合診療医的なものの質の向上を強く希望しているということを背景に制度化されたというふうに多くの国民は理解していると思いますので、そこはやはりとにかく余りにも高度専門的になり過ぎて患者の方を向いていない医者が多いという声が非常に多かったわけですから、そこはやはり何らかの形で制度化していただかないと、なかなか形として見えてこないと動機もないと思うので……

○高久座長
 言われるとおりだと思います。どうもありがとうございました。他にどなたか。よろしいでしょうか。どうぞ。

○辻本委員
 宇都宮さんにちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、先ほどのお話の中でその地域医療ということが今回の目玉というような位置付けだと伺ったんですけれども、大学病院に限らず地域の病院のお医者さん自体が、地域医療ということを余り御理解になっていらっしゃらない。私たちの活動の中でも、大阪府下のある病院の臨床研修の方をお引き受けして1週間ずつお預かりするんですけれども、まず指導医のお立場の方がともかく行ってくればいいよというようなそういう送り方をしているんです。何だか知らないけれども、先生が行けって言ったから来ましたというような、そのお客さんのような形で入ってくることに私たちはショックを受けるわけです。そうした老健とか施設などで1週間単位で預かっているというような人もいろいろお話を伺うと、ともかくお客様で先生、先生ということで1週間過ごしていただければそれでいいと思っていますという、全く連携がとれていない、そうした実態の中で本当に地域医療ということで一体何を学ぶのか。研修医のある人は、ここは息抜きだと思ってこのプログラムは、特に自分でも期待していませんということをはっきり言われたんです。その辺りをどういうふうにお受けとめになっていらっしゃるのか、問題意識を持っていらっしゃるのか、すみません、ちょっとお尋ねしたかったんです。

○宇都宮医師臨床研修推進室長
 確かにそのような実態があるということは、私の方も伺っております。何しろこの制度ができたのが、インターンが廃止されてから36年ぶりということで、その36年の間になかなか地域医療を診るという教育が余りなされてこなかったんではないかと思います。ですから、この制度が始まっても、確かに現場の中でなかなか御理解いただけない先生が少なくないということがあると思います。また、これはある雑誌に載った調査なんですけれども、研修医1年目のうち4割ぐらいが公衆衛生医師の存在を知らないと答えているというのがありまして、そうするとそもそも地域とかそういう公衆衛生の現場に自分が出て何をやろうとしているのか全然理解していないということだと思うんです。確かに、現時点ではおっしゃるようになかなか我々の目標とするところまではいっていないんですけれども、我々としても事あるごとにそういった大学の先生方に対しても、あるいは病院団体あるいは本日いらしていないですけれども医師会の先生方などにお話しさせていただいております。かなり意識を高く持ってくださっている先生もいらっしゃるので、今後は少しずつ改良されていくと思います。若干時間はかかるかもしれませんが、方向性だけはちゃんといい方向へ向かっているということを御理解いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○高久座長
 よろしいでしょうか。

○田中委員
 大学の名誉のために、ちょっといいですか。辻本委員がおっしゃったのは極端な例だと私は思うんです。例えば、自分のところの話をするのも何ですけれども、東京医科歯科大学では卒後臨床研修プログラムで1カ月間診療所に出てもらい、そこで在宅医療とかを中心にやってもらいます。そこに参加する診療所の指導医は年に2回ミーティングをやって、どういうような問題点があるかとか、それも過去3年間にわたってやっているわけです、急に準備するわけではなくて。さらに、エポックすなわちオンラインの卒後臨床研修の評価システムを使用してチェックしていますし、それからそもそも行く前にプレアンケートといってどんな項目について学ぶかとか、細かなアンケートをとってその後ポストアンケートというのを終わった後とって、前後の比較をしてどういう問題点があるかという分析もやっているんです。ですから、さっきおっしゃったのは極めて特殊な例であって、それですべてやっているというふうに思われると大学としても困るんです。

○水田委員
 私も、それはサポートしたいという感じです。ちゃんときちんと担当の人がそこの病院に行って、連れて行ってお願いして、代わるたびにお願いしていって、そしてそこの病院とも話し合いをするようにして、学生の中には非常に、研修医の中には楽しいと言っているのもいますから、そう捨てたものではないんじゃないかなと私は思っております。

○辻本委員
 東京医科歯科大学の報告書は、このプログラムが始まる以前からの報告書は、私毎年読ませていただいておりまして、やっぱりそういう蓄積がある中ですばらしいものが今日できでいるんだろうというふうに思うんです。ただ、ほかのところは始まりました、じゃあやらなきゃいけませんと。実は、良い悪いの問題ではなくて、現場もそこにエネルギーを投入できない。何をやっていいのかわからないという、そういう意味で申し上げておりますので、単なる批判だけで申し上げたわけではございません。実態ということで。

○高久座長
 先月、島根県の方に行ってきましたら、島根医大は地域保健・医療ということで隠岐島の診療所に研修医が行っていました。それは非常に良いプログラムで、研修医の研修の話を聞きましたが、非常に勉強になったということと、隠岐島の医療事情がよくわかったと言っていました。ですから、さまざまだと思っています。自分の大学のことを言って申しわけないのですが、たまたま先週の土曜日に自治医大の卒業生が臨床研修を行っている病院の院長先生が会を開きました時に、自治医大は5年生の時に診療所に2週間ほど、行っているのですが、研修病院で同じ診療所にまた行けと言われた。同じところでは意味が薄れるということで少しトラブったことがありました。特に、地域保健・医療は全く新しいプログラムですから、これからいろいろ工夫していかれれば良いと思っています。そろそろ終わりの時間になりました。今後の予定について事務局の方からお願いします。

○小谷医学教育課長補佐
 今後の予定でございますが、お手元に今後のスケジュール案という形でお示しをさせていただいておりますが、次回は11月1日火曜日に、会議室は、建物はこの建物になりますけれども、お部屋の方が第4特別会議室という別の部屋になります。地域医療を担う医師養成の在り方についてと、教育者・研究者養成及び大学病院につきまして御審議いただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○高久座長
 それでは、11月1日午後1時半から3時半までということでよろしく御予定をお願いしたいと思います。


(高等教育局医学教育課)

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