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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 調査研究協力者会議等 > 原子力安全規制等懇談会 > 試験研究用原子炉施設等の安全規制のあり方について(案) > 2−3


3. 検討の内容

−1 検討項目の抽出

 試験研究用原子炉施設等におけるクリアランス制度の検討にあたっては、廃棄物安全小委員会報告書に示された原子力施設を対象とした「クリアランスレベル検認制度」、「クリアランスレベル検認方法等の技術的要件」を参考にしつつ、当該報告書のケーススタディとして用いられた発電用原子炉施設と、今回検討を行う試験研究用原子炉施設等の相違点を踏まえて、次の5つを検討項目として抽出した。

(1) クリアランスレベル検認制度関係

(1−1) 発電用原子炉施設と試験研究用原子炉施設等との違いによるクリアランス検認制度の相違点の有無

(1−2) 原子炉等規制法及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下「放射線障害防止法」という。)の双方の規制を受けている施設に対するクリアランス検認制度の適用性

(1−3) 施設の改造に伴って発生する廃棄物に対するクリアランスレベル検認制度の適用性

(2) クリアランスレベル検認方法等の技術的要件関係

 技術的要件については、発電用原子炉施設と試験研究用原子炉施設等の違いを考慮し、以下の点について検討を行った。

(2−1) クリアランスにあたって着目すべき重要放射性核種の相違点

(2−2) 重要放射性核種の違いによるクリアランスレベル検認方法の相違点

−2 検討の内容

(1) クリアランスレベル検認制度関係

(1−1) 発電用原子炉施設と試験研究用原子炉施設等との違いによるクリアランス検認制度の相違点の有無

 試験研究用原子炉施設等の廃止措置に伴い発生する固体状物質(固体廃棄物)の量については、例えば参考5に示すように、平成14年に廃止措置が完了した日本原子力研究所のJPDR(熱出力90,000キロワット)の廃棄物に対しクリアランスの適用を想定した場合、発生した約24,400トンの廃棄物の内訳は、低レベル放射性廃棄物として管理が必要なものは、約1,000トン、放射性物質として扱う必要のない物は、約2,700トン、放射性廃棄物でない廃棄物は約20,700トンと試算される。現在は、これら低レベル放射性廃棄物として管理が必要なもの及び放射性物質として扱う必要のない物のうち、その半分に相当する約2,100トンは、低レベル放射性廃棄物として、保管廃棄施設で保管廃棄されている。また、生体しゃへい材残部のようなコンクリート約1,700トンについては、低レベル放射性廃棄物のうち放射能レベルの極めて低いものとして同研究所の敷地内で廃棄物埋設事業の許可を得て埋設されている。また、放射性廃棄物でない廃棄物は、同研究所敷地内の所定の場所に搬出し、建家解体後の埋め戻し材等として再生利用されている。
 また、現在廃止措置中の同研究所のJRR−2(熱出力10,000キロワット)の解体に伴い発生する固体廃棄物の量は、約13,800トン(低レベル放射性廃棄物として管理が必要なものは、約500トン、放射性物質として扱う必要のない物は、約2,600トン、放射性廃棄物でない廃棄物は約10,700トン)と見込まれている。
 さらに、武蔵工業大学炉や立教大学炉のように、熱出力100キロワット級の試験研究用原子炉施設の廃止措置に伴い発生する固体廃棄物の量は、約600トン〜1,600トン(低レベル放射性廃棄物として管理が必要なもの約100トン、放射性物質として扱う必要のない物は、約200トン、放射性廃棄物でない廃棄物は約200トン〜1,200トン)と見込まれている。
 このほか、核燃料使用施設のうち、照射済燃料及び材料を取り扱う施設(以下「ホットラボ」という。)の廃止措置に伴い発生する固体廃棄物の量は、日本原子力研究所のホットラボの場合、約23,000トン(低レベル放射性廃棄物として管理が必要なものは、約200トン、放射性物質として扱う必要のない物は約1,100トン、放射性廃棄物でない廃棄物は約21,800トン)と見込まれている。
 これら発生量は、110万キロワット級の原子炉施設1基当たりの廃止措置に伴い発生する固体廃棄物の量495,000トン〜536,000トン(低レベル放射性廃棄物として管理が必要なもの6,000トン〜12,000トン、放射性物質として扱う必要のない物は12,000トン〜29,000トン、放射性廃棄物でない廃棄物は477,000トン〜495,000トン)に比べ、大幅に少なくなっている。
 このように試験研究用原子炉施設等から発生する固体廃棄物の量が少ないということは、クリアランス検認に係る作業量が減少するという意義を有するが、クリアランスレベル検認制度や検認の対象物、検認の基準及びクリアランスレベル以下であることの判断基準等のクリアランスレベル検認方法等の技術的要件は、物量により影響されるものではないことから、当該検認制度及び検認方法等の技術的要件は、試験研究用原子炉施設等から発生する固体廃棄物についても適用できると考える。

(1−2) 原子炉等規制法及び放射線障害防止法の双方の規制を受けている施設に対するクリアランス検認制度の適用性

 試験研究用原子炉施設等については、原子炉等規制法に加え、放射線障害防止法の規制対象となる施設も存在しており、このような施設においては、両規制の対象となる廃棄物の混在が考えられる(参考6(PDF:25KB))。この中で、試験研究用原子炉施設の一部に見られるように、原子炉起動用に用いる中性子線源等、密封された放射性同位元素の使用のためのみに放射線障害防止法の規制対象ともなっている施設については、放射性同位元素の使用履歴を調べることにより、確実に汚染が排除できると考えられる。放射性同位元素を当該施設の外へ搬出することにより、放射線障害防止法の規制対象から外れ、原子炉等規制法の規制の下に廃止措置を実施し、クリアランス制度を適用することも可能な場合があると考えられる。
 一方、施設によっては、放射性同位元素の使用や廃棄物の貯蔵等で引き続き放射線障害防止法の規制を受け、使用されることも想定されることから、今後、このような施設に対する廃止措置の効率的で効果的な安全規制の実現に向け、国において、引き続き検討を行う必要がある。

(1−3) 施設の改造に伴って発生する廃棄物に対するクリアランスレベル検認制度の適用性

 試験研究用原子炉施設等では、施設の廃止措置以外にも、施設の改造に伴い、配管等の金属廃棄物やコンクリート廃棄物が発生する。このような廃棄物のうち、その汚染の由来が原子炉冷却材による二次的な汚染、あるいは放射化による汚染等、廃止措置によって発生する固体状物質と同等の固体状物質についてもクリアランス制度を適用することが可能であると考えられる。
 なお、試験研究等で日常的に発生する廃棄物について、すでに発生しているものは、様々な汚染レベルの廃棄物が混在して管理されていることが想定される。また、今後発生するものについては、定常的に発生するものの、その量が原子力安全委員会でクリアランスレベルを算出する際に用いられた10トン程度の物量に比してかなり少ないことが想定される。このような廃棄物のクリアランスを行うためには、クリアランスレベル検認等について、引き続き検討する必要がある。

(2) クリアランスレベル検認方法等の技術的要件関係

(2−1) クリアランスにあたって着目すべき重要放射性核種の相違点

 原子力安全委員会では、これまで、58核種についてクリアランスレベルを示している。また、この中から、クリアランスを判断するための重要放射性核種を、軽水炉、ガス炉、重水炉、高速炉及び核燃料使用施設について選定し、それぞれの核種について「クリアランスレベル算出結果に基づく基準値」(以下、「基準値」という。)を導出している(参考2(PDF:51KB),参考3(PDF:122KB)参照)。また、IAEAでは、規制免除レベルの算出及び適用の考え方、算出結果等を示した安全指針(以下、「RS-G-1.7」という。)において、人工起源の257核種について規制免除の対象となる放射能濃度を示している。
 このため、試験研究用原子炉施設等におけるクリアランスレベル検認方法に対する技術的要件として、着目すべき核種が、原子力安全委員会によって基準値が示された重要放射性核種であるか、仮に異なる核種が着目すべき核種となった場合、すでに原子力安全委員会等によってクリアランスレベルが示されている核種であるかといった点について検討を行った。
 試験研究用原子炉施設等のうち、軽水炉型試験研究用原子炉施設については、原子力安全委員会において、すでに重要放射性核種の評価が行われており、重要放射性核種は、発電用原子炉施設に対して評価された核種と同じ核種であることが確認されている。この重要放射性核種の評価は、JPDRの運転年数及び熱出力をモデルとして行われているが、JPDRに用いられている一般的な炉内構造物材料であるステンレス、コンクリートの放射化生成物に加え、試験研究用原子炉施設に特徴的な炉内構造物材料であるアルミニウムの放射化生成物についても評価が行われており、炉内構造物材料にアルミニウムを用いている他の軽水炉型試験研究用原子炉施設(例えば、JRR−3、JRR−4、JMTR)に対しても適用できるものとなっている。また、日本原子力研究所のJRR−2及び核燃料サイクル開発機構の高速炉「常陽」については、新たな重要放射性核種としてそれぞれBa-133、C-14が追加されている。さらに、原子炉施設設置者が放射性物質として扱う必要のない物の量を独自に評価した結果、評価が行われた10施設全てについて、重要放射性核種はすでに原子力安全委員会によって示された原子炉施設に対する重要放射性核種に含まれる核種となっている(参考7)。
 原子力安全委員会では、臨界実験装置等の原子炉においても、主要構成材料は安全委員会報告書で評価・検討された原子炉施設の炉心と同様の材料が使用されていることから、「放射性物質の起源が主に中性子に起因した放射化であるため放射性核種の種類、その組成等が比較的均一であることから、同じ評価を利用できる」としており、原子力安全委員会において評価された重要放射性核種及びその基準値は、多くの試験研究用原子炉施設に対し、その適用が可能であるものと考えられる。
 本検討会では、確認のために、我が国の試験研究用原子炉施設について炉心等の材料について調査を行った。その結果、
1  燃料としてウラン(一部、ウランとプルトニウムの混合酸化物燃料)が用いられており、燃料の破損によって放出される放射性核種は、原子炉で生成される核分裂生成物やアクチニドの崩壊系列核種と同じであると考えられること
2  燃料集合体構成材及び炉内構造物材料のうち、アルミニウム、ステンレス等の材質について、評価対象となる放射化生成物は、安全委員会報告書で評価・検討された原子炉施設で生成する放射性核種と同じであると考えられること、
3  しゃへい材にコンクリート等が使用されているが、その放射化生成物は、安全委員会報告書で評価・検討された原子炉施設で生成する放射性核種と同じと考えられること
から、我が国の試験研究用原子炉施設については、基本的には、クリアランスを判断するための重要放射性核種は安全委員会報告書で評価・検討された原子炉施設のものに包含される核種になると考えられる。ただし、試験研究用原子炉施設では、当該報告書の施設と比べ、積算出力が大きく異なる施設が存在する等、放射化生成物の量や放射性核種の存在比が異なる可能性も考えられることから、重要放射性核種については、今後クリアランス制度を適用する試験研究用原子炉施設ごとに個別に確認することが望ましい(参考7)。
 また、核燃料使用施設のうち、ホットラボの廃止措置に伴い発生する廃棄物に対するクリアランスレベルについても、既に原子力安全委員会の報告書「核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)におけるクリアランスレベルについて」(以下、「使用施設報告書」という。)に示されている。なお、ホットラボ以外の核燃料使用施設については、原子力安全委員会によって評価対象核種として選定された58核種(参考8(PDF:25KB))を基に、使用履歴、施設区分等による記録等から、個別の施設ごとに重要放射性核種の適用性を確認する必要があると考えられる。なお、核燃料使用施設で取り扱う核種が評価対象核種に含まれることは、使用施設報告書における記述「「照射後試験施設」で取り扱う照射済試料は、核燃料物質、核分裂生成物等を含有するものであり、「試験研究施設」で取り扱う放射性核種を包含している」を基に考察を行ったものである。実際の核燃料使用施設の廃止措置において評価される重要放射性核種がこれまで核燃料使用施設に対して評価されていたものと異なる場合については、今後、重要放射性核種に対する考え方について検討を進める必要がある。検討に当たっては、重要放射性核種がこれまで原子力安全委員会によって評価されてきたこと、原子力安全委員会は、その基礎となる評価対象核種のクリアランスレベルについて海外の動向等を踏まえ、常に最新の知見を導入しつつその値の見直しを行っていることを踏まえた上で行うことが求められる。

(2−2) 重要放射性核種の違いによるクリアランスレベル検認方法の相違点

 試験研究用原子炉施設におけるクリアランスレベル検認の対象物としては、金属については、配管、タンク、ポンプ、弁、ダクト等の機器、コンクリートについては、建家構造物等がそれぞれ考えられる。これらクリアランスレベル検認の対象物は、安全委員会報告書で評価・検討された原子炉施設で用いられているものと材質は基本的には同じものであると考えられる。また、前述のように、試験研究用原子炉施設から発生する廃棄物のクリアランスを判断するために用いられる重要放射性核種は、原子炉設置者の評価においては、いずれも安全委員会報告書で示された重要放射性核種に含まれる核種となっている。
 対象物中の重要放射性核種の濃度を測定する方法について、検認報告書及び廃棄物安全小委員会報告書では、軽水炉の例として、直接測定または試料採取測定、放射性核種組成比及び平均放射能濃度法を用いた方法が示されている。このうち直接測定については対象物あるいは容器に収納された対象物を外部からの放射線測定により測定する方法であるが、外部からの測定が容易で放射性核種組成の主要部分を占めるCo-60のような放射性核種については、この手法を用いることができる。一方、対象物の外部からの直接測定が困難な放射性核種を評価する方法に、対象物の放射性核種組成比を用いる方法あるいは平均放射能濃度法が考えられる。前者の放射性核種組成比を用いる方法は、検認の対象となる解体物や建家構造物においては、放射性核種組成が類似している場合が多いことから、外部からの測定が容易で対象物の放射性核種組成の主要部分を占めるような放射性核種(以下「測定主要放射性核種」という。)を測定し、予め設定した対象物中の測定主要放射性核種と他の放射性核種の存在割合(放射性核種組成比)により、その他の重要放射性核種の濃度を評価するものである。また、平均放射能濃度法は、測定主要放射性核種との相関関係が見られない放射性核種の濃度を評価する場合に用いる方法であり、あらかじめ代表サンプルを採取し、その平均濃度により評価する方法である。軽水炉の例では、二次的な汚染を対象とした場合の重要放射性核種の濃度を評価する方法として、放射性核種組成の主要部分を占めるCo-60を対象物の外部から測定するとともに、Co-60の濃度との相関関係が成立するMn-54,Sr-90,Cs-134,Cs-137,全α核種の濃度を放射性核種組成比で評価し、さらに、Co-60の濃度との相関関係はないものの、一定の範囲に収束していると考えられるH-3について、平均放射能濃度法で評価すること等が考えられる。
 試験研究用原子炉施設においてクリアランスを判断するための重要放射性核種は、現在の原子炉で用いられている燃料、炉内構造物材料等の範囲内では、基本的に原子力安全委員会が、原子炉施設を対象として示した重要放射性核種に包含されるものと考えられる。このため、測定主要放射性核種として、軽水炉と同様に、Co-60を用いることができる場合は、重要放射性核種濃度の測定(または評価)方法等について検認報告書に示された検認方法と同様の検認方法を用いることが可能であると考えられる。ただし、試験研究用原子炉施設においては、例えば、積算出力等の違いにより、Co-60そのものの測定が困難になることや、重要放射性核種が異なる可能性も想定されるため、クリアランスレベル検認については、個別の施設に応じ、今後原子炉設置者等において検討すべき課題があるものと考えられる。
 なお、核燃料使用施設については、安全委員会報告書で評価・検討された原子炉施設で用いられる重要放射性核種以外のものとして新たに重要放射性核種6核種が使用施設報告書において示されており、さらに施設によっては、重要放射性核種が異なる場合も想定されるため、対象物中の重要放射性核種の濃度測定等、クリアランスレベル検認を具体的に実施する方法について、今後原子炉設置者等において検討すべき課題があるものと考えられる。

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