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重要放射性核種の違いによるクリアランスレベル検認方法の相違点
試験研究用原子炉施設におけるクリアランスレベル検認の対象物としては、金属については、配管、タンク、ポンプ、弁、ダクト等の機器、コンクリートについては、建家構造物等がそれぞれ考えられる。これらクリアランスレベル検認の対象物は、安全委員会報告書で評価・検討された原子炉施設で用いられているものと材質は基本的には同じものであると考えられる。また、前述のように、試験研究用原子炉施設から発生する廃棄物のクリアランスを判断するために用いられる重要放射性核種は、原子炉設置者の評価においては、いずれも安全委員会報告書で示された重要放射性核種に含まれる核種となっている。
対象物中の重要放射性核種の濃度を測定する方法について、検認報告書及び廃棄物安全小委員会報告書では、軽水炉の例として、直接測定または試料採取測定、放射性核種組成比及び平均放射能濃度法を用いた方法が示されている。このうち直接測定については対象物あるいは容器に収納された対象物を外部からの放射線測定により測定する方法であるが、外部からの測定が容易で放射性核種組成の主要部分を占めるCo-60のような放射性核種については、この手法を用いることができる。一方、対象物の外部からの直接測定が困難な放射性核種を評価する方法に、対象物の放射性核種組成比を用いる方法あるいは平均放射能濃度法が考えられる。前者の放射性核種組成比を用いる方法は、検認の対象となる解体物や建家構造物においては、放射性核種組成が類似している場合が多いことから、外部からの測定が容易で対象物の放射性核種組成の主要部分を占めるような放射性核種(以下「測定主要放射性核種」という。)を測定し、予め設定した対象物中の測定主要放射性核種と他の放射性核種の存在割合(放射性核種組成比)により、その他の重要放射性核種の濃度を評価するものである。また、平均放射能濃度法は、測定主要放射性核種との相関関係が見られない放射性核種の濃度を評価する場合に用いる方法であり、あらかじめ代表サンプルを採取し、その平均濃度により評価する方法である。軽水炉の例では、二次的な汚染を対象とした場合の重要放射性核種の濃度を評価する方法として、放射性核種組成の主要部分を占めるCo-60を対象物の外部から測定するとともに、Co-60の濃度との相関関係が成立するMn-54,Sr-90,Cs-134,Cs-137,全α核種の濃度を放射性核種組成比で評価し、さらに、Co-60の濃度との相関関係はないものの、一定の範囲に収束していると考えられるH-3について、平均放射能濃度法で評価すること等が考えられる。
試験研究用原子炉施設においてクリアランスを判断するための重要放射性核種は、現在の原子炉で用いられている燃料、炉内構造物材料等の範囲内では、基本的に原子力安全委員会が、原子炉施設を対象として示した重要放射性核種に包含されるものと考えられる。このため、測定主要放射性核種として、軽水炉と同様に、Co-60を用いることができる場合は、重要放射性核種濃度の測定(または評価)方法等について検認報告書に示された検認方法と同様の検認方法を用いることが可能であると考えられる。ただし、試験研究用原子炉施設においては、例えば、積算出力等の違いにより、Co-60そのものの測定が困難になることや、重要放射性核種が異なる可能性も想定されるため、クリアランスレベル検認については、個別の施設に応じ、今後原子炉設置者等において検討すべき課題があるものと考えられる。
なお、核燃料使用施設については、安全委員会報告書で評価・検討された原子炉施設で用いられる重要放射性核種以外のものとして新たに重要放射性核種6核種が使用施設報告書において示されており、さらに施設によっては、重要放射性核種が異なる場合も想定されるため、対象物中の重要放射性核種の濃度測定等、クリアランスレベル検認を具体的に実施する方法について、今後原子炉設置者等において検討すべき課題があるものと考えられる。 |