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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 調査研究協力者会議等 > 原子力安全規制等懇談会 > 試験研究用原子炉施設等の安全規制のあり方について(案) > 2−2


 検討に当たっての前提
 原子力の開発利用に伴い発生する放射性廃棄物の処理処分については、発生者である原子炉設置者等が、公衆の健康や環境に配慮し、適切かつ確実に行う社会的責任がある。この社会的責任を履行するため、原子炉設置者等は、クリアランスの判断を厳密に行い、クリアランスレベル以下と判断したものに放射性廃棄物が混入しないよう厳格な管理を行うことが求められる。
 一方、国は、放射性廃棄物の処理処分に係る制度等を整備し、これに関連する技術基準等を明確化するとともに、原子炉設置者等が行う放射性廃棄物の処理処分に係る業務の検査等に対し、適切な関与を行う責任がある。

−1 クリアランスレベル

 原子力安全委員会では、「クリアランスレベル」について、「「放射性物質として扱う必要がない物」を区分するレベル」をいい、「「放射性物質として扱う必要がない」ことを満足する要件は、当該物質に起因する線量が「自然界の放射線のレベル」と比較して十分小さく、また、人の健康に対するリスクが無視できること」としている。また、原子力安全委員会は、実際のクリアランスレベルを導出するための目安値として、年間 10マイクロシーベルト(自然界から受ける年間の被ばく線量の1/100以下)を用い、この線量を放射性核種の濃度に換算して得られた基準値をクリアランスレベルとして示している。(参考1(PDF:169KB)、参考2(PDF:51KB)、参考3(PDF:122KB)参照)

−2 クリアランスの対象

 今回の検討においては、試験研究用原子炉施設及び核燃料使用施設の廃止措置等(廃止措置及び施設の改造)に伴い汚染のおそれがある区域から発生する固体状物質(焼却処理を行うものは除く)をクリアランスの対象とする。
 ここで、固体状物質とは、例えば、金属(配管、タンク、ポンプ、熱交換器、弁、モーター、ダクト等の機器やその他の金属構造物)、コンクリート(建家構造物、解体コンクリート(一体的に含まれる鉄筋類を含む)、保温材等)を指す。

−3 クリアランスレベル検認と国の関与

(1) クリアランスレベル検認の流れ
 原子炉設置者等が、クリアランスレベルを用いて、「放射性物質として扱う必要がない物」であると判断したものについて、規制当局が適切な関与を行うことを「クリアランスレベル検認」という。試験研究用原子炉施設等の廃止措置は、設備機器や建家の解体撤去、解体物の搬出等、様々な作業が段階的に実施されることから、クリアランスレベル検認は、実際に想定される廃止措置の流れに沿って実施されることが重要である。廃棄物安全小委員会報告書において検討されたクリアランスレベル検認では、2段階の国の関与が示されており、第1段階は「事業者が策定する「対象物の測定・判断方法」の妥当性確認(認可)」、第2段階は、「認可を受けた方法に基づいて測定した記録の確認」となっている。クリアランスレベル検認に関する具体的な流れを参考4に示す。

(1−1) 原子炉設置者等による事前の評価と国による認可
 原子炉設置者等は、事前の評価によって、クリアランスレベル検認の対象物の汚染状況や物量を把握し、対象となる範囲の設定及び放射性核種の濃度の測定並びにクリアランスを判断するための条件設定を的確に行うための情報を収集する。また、事前の評価結果に基づき、具体的なクリアランスレベル検認の対象物を選定するとともに、当該対象物を発生場所、材質、汚染形態、解体工程等に応じた分類をする。また、必要に応じ除染やはつり等の前処理によりクリアランスレベル検認の対象物から放射性廃棄物を分離する。さらに、個別にクリアランスレベル検認の対象物の測定等に着手する前に、国の定める技術基準を基に、対象物の放射性核種の濃度を測定し、その濃度を判断する(以下、「測定・判断」という。」)ための方法等を設定する。国は、原子炉設置者等が定めたクリアランスレベル検認の対象物の測定・判断の方法について認可を行う。

(1−2) 原子炉設置者等によるクリアランスレベル検認の対象物の測定・判断と国による確認
 原子炉設置者等は、個別の対象物の性状等に応じた解体工程を選択し、その工程に従って国の認可を受けた測定・判断の方法に基づき放射性核種濃度を測定するとともに、クリアランスレベル以下であることを判断する。また、その測定・判断に関する記録を作成し保管する。国は、測定・判断に関する記録より、クリアランスレベル以下であることを確認する。原子炉設置者等は、クリアランスレベル以下であることが確認された物を実際に搬出するまでの間、適切に保管・管理する。
 これらクリアランスレベル検認の一連の流れは、厳格な品質保証の下に実施する。
 なお、廃棄物安全小委員会では、発電用原子炉施設のように、大量の物量が想定される原子炉の廃止措置を例に検討がなされているが、廃棄物安全小委員会で検討された結果については、「原子炉施設を例にクリアランスレベル検認に係る規制の枠組み、技術的基準などについて定めたものであり、これらは与えられるクリアランスレベルや原子力施設の種類にかかわらず基本的に適用可能なものである。また、ここに示した方法以外の方法を用いて検認する場合であっても十分な技術的根拠があれば、その方法は認められるものである。」としており、基本的に試験研究用原子炉施設等から発生する廃棄物のクリアランスにも適用し得るものであると考えられる。

(2) 試験研究用原子炉施設等でのクリアランスレベル検認における国による確認の基本的な考え方
 原子力安全委員会の検認報告書においては、「クリアランスレベル以下であることの検認は、原子炉設置者によるクリアランスレベル以下であることの判断に加えて、国が係る検認の確実性を担保する事が重要である。」とされている。
 これを踏まえ、試験研究用原子炉施設等でのクリアランスレベル検認においては、原子炉設置者等により、事前の評価、測定・判断、保管・管理等の各段階が確実に履行されること、また、その結果として対象物中の放射性核種の濃度が確実にクリアランスレベル以下であることが求められる。一方、クリアランスレベル検認における国の関与としては、発電用原子炉施設に対して検討されたものと同様に、原子炉設置者等が事前の評価を基に策定する対象物の測定・判断の方法の妥当性を確認(認可)するとともに、認可を受けた方法に基づいて原子炉設置者等が測定した対象物がクリアランスレベルを満たしていることについて確認を行うことが求められる。
 特に、対象物の測定・判断の方法については、国の定める技術基準を基に原子炉設置者等自らが策定するものであり、測定・判断の品質保証にもかかわる重要なものであること、試験研究用原子炉施設等では、施設毎に対象となる放射性核種やその組成比が異なる可能性を有し、当該方法の妥当性を確認することが放射線防護の観点からは重要であることから、実際の測定の前にその内容の妥当性について国の認可を受けることが必要であると考える。また、国の認可を受けた「対象物の測定・判断の方法」については、対象物の放射性核種の組成比に変更が生じうる場合等、前提条件に変更が生じるときには、改めて認可を受けることが妥当である。対象物の測定・判断の方法について記載する項目としては、評価対象とする放射性核種の選択や組成比の設定方法、対象物の特性に応じた測定条件の設定や測定方法、測定結果の評価方法、測定・判断が終了した対象物に関する記録やその一時保管の方法、品質保証計画の策定状況等が考えられる。
 原子炉設置者等が行った「対象物の測定・判断結果」については、認可を受けた測定・判断方法の下に行われたものであり、国が基本的には記録に基づいて確認を行うが、検認の客観性、信頼性を高める観点から、必要に応じて抜き取りによる測定を行うことも考慮すべきである。また、このような確認については、解体工事の進捗状況、測定後の対象物の保管容量・搬出の状況等に応じて適切に実施されることが望ましい。
 なお、クリアランスレベル検認に係る品質保証活動が適切に実施されていることの確認については、国は適切な機会を通じてこれを行うことが望ましい。
 試験研究用原子炉施設等及び発電用原子炉施設の設置、運転等に係る諸手続は、基本的には、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)に基づくものであり、施設の解体等に伴って発生する固体廃棄物の物量の大小の違いはあれ、クリアランスレベル検認のための制度の導入にあたっては、当該規制法の中で整合のとれたものとすることが重要である。
 なお、試験研究用原子炉施設等は使用の目的に応じ、様々な施設が存在するため、解体等に伴って発生する固体状廃棄物の検認にあたっては、測定・判断の方法に関し、最新の技術的知見を取り入れるとともに、適切かつ柔軟な対応を図ることが望まれる。

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