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著作権分科会 法制問題小委員会(第6回)議事録・配付資料
1. |
日時
平成19年7月19日(木曜日)10時〜12時4分
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2. |
場所
三田共用会議所3階 大会議室
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3. |
出席者
(委員)
青山,市川,潮見,末吉,多賀谷,道垣内,土肥,中山,苗村,松田,村上,森田,の各委員
野村分科会長
(文化庁)
吉田長官官房審議官,山下著作権課長,ほか関係者
(ヒアリング出席者)
早川 |
(株式会社日本著作出版権管理システム代表取締役社長) |
野間 |
(有限責任中間法人学術著作権協会常務理事事務局長) |
南 |
(日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長) |
井上 |
(障害者放送協議会著作権委員会委員長) |
高岡 |
(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長) |
佐藤 |
(日本図書館協会障害者サービス委員会委員長) |
梅 |
(社団法人日本美術家連盟事務局長) |
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4. |
議事次第
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5. |
配付資料一覧
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6. |
議事内容
【中山主査】 それでは時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第6回を開催いたします。本日は御多忙中、御出席賜りまして、ありがとうございます。
議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参酌いたしますと、特段非公開にするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々には御入場していただいているところでございますけれども、このような処置でよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【中山主査】 ありがとうございます。
それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々は、そのまま傍聴をしていただくということにしたいと思います。
それから、事務局において人事異動があるということでございますので、御紹介お願いいたします。
【黒沼著作権調査官】 御紹介いたします。文化庁長官官房の著作権課長でございますが、文部科学省初等中等教育局の教科書課長から山下和茂が着任しております。
【山下著作権課長】 どうぞよろしくお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】 なお、前任の甲野正道でございますけれども、文部科学省の大臣官房に異動しております。以上でございます。
【中山主査】 それでは議事に入ります。
まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】 それでは、1枚紙の議事次第の下半分に配付資料一覧がございますので、そちらを御覧になりながら、御確認いただきたいと思います。
本日、資料8点と、参考資料1点をお配りして思います。資料1から3までが薬事関係の資料でございます。資料4−1から4−3までが、障害者福祉関係の資料でございます。資料5から資料7がインターネットオークション関係の資料でございまして、資料6は、6−1と6−2がございます。最後に、1枚紙で、資料8として当面の審議日程を配っております。なお、参考資料でございますけれども、こちらは本日関係者からのヒアリングということで、項目ごとに関係者においでいただいているわけでございますけれども、事務局として、意見発表に当たりまして御留意願いたいポイントということで、事前に各団体にお示しをしたものでございます。各発表者の御発表とあわせて御覧いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【中山主査】 それでは、初めに、議事の段取りについて確認をしておきたいと思います。
本日検討をしていただきたい議事は、権利制限の見直しについてでございます。前回、権利制限をめぐる課題に関する審議等の進捗状況につきまして、事務局から説明を頂いた後、意見交換を行いました。それを踏まえまして、今回は、権利制限の課題のうち、薬事関係の権利制限、障害者福祉関係の権利制限、それから3番目にネットオークションに関する権利制限、それぞれの課題における関係者にお越しいただきまして、資料を御提出していただいておりますので、課題を取り巻く現状等について、先ほど事務局から説明のあった論点に沿いまして、御報告を頂戴した後に、質疑応答に移りたいと思います。
では初めに、薬事行政に関わる権利制限につきまして、御説明を頂戴したいと思います。
日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム、南典夫座長、有限責任中間法人学術著作権協会、野間豊常務理事、それから株式会社日本著作出版権管理システム、早川義英代表取締役社長にお越しをいただいております。時間にも制約がございますので、恐れ入りますけれども、おのおの5分程度で簡潔に説明をお願いしたいと思います。
それでは、日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム、南座長からお願いをいたします。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 日本製薬団体連合会の文献複写問題検討ワーキングチームの座長をしております南と申します。本日は、資料に基づいて簡単に御説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。着席させていただいてよろしいですか。
【中山主査】 どうぞ、お座りになって下さい。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 資料1を御覧いただきたいと思います。時間の関係上、資料1の前から3ページぐらいの前段は、憲法と薬事法の関係で、憲法で定められておる国民の最低限の健康な生活を保障するために、薬事法でいろいろな関係者に規制を課しているということと、この関連で、我々にあくまで薬事法に定められた提供側としての義務、医師・医療関係者には情報を活用し、関係者と密接な連携を取りながら活用するという義務が定められている。同時に、その収集のために、製薬企業等に対しましては、医療関係者にその情報を提供する義務が定められている。こういうところに基づいて、今回の権利制限を要望する次第であるという説明でございます。
3ページ目には、参考として、今回御検討頂きますところに関連する薬事法第77条の3の条文を載せております。
この他に関連するものにつきましては、おかげさまをもちまして、今年の7月1日から、薬事法関連で一部権利制限が施行されたところでございます。厚く御礼を申し上げたいと思います。
それでは、資料の4ページ目から、本日の御説明の主体でございます。
まず、この委員会で御審議いただくに当たり、前回この部分が継続審議になった背景として、非常にこの部分について分かりにくい、まだ十分な御理解が得られてないということがありましたので、それを受けまして、また文化庁さんのほうの依頼もありまして、実は去年調査をいたしました。どのような文献提供がどのぐらいあるのだろうというところの調査をいたしましたのが、後ろから2枚目の別紙1です。18社900名のMRに御協力を頂きまして、文献を用いて製薬企業から医療関係者に情報提供を行った場合、どういう目的で提供したのか、それからどういう趣旨で提供したのか、という分類をしてみました。
ABCDの4つに一応分類しております。この中のDは、企業の自主的提供として、積極的に多くの先生方に同一文献を配る場合で、これがやはり過半数、56パーセントを占めております。この部分につきましては、当然企業が責任を持って、しかも同一文献を多く使用するということもありますので、今回の権利制限の対象としてお願いをしているところではございません。ここに関しましては、権利処理を適正に行うもの、主としてほとんど別刷りというものを用いて行われているものです。
上のABCが、それぞれ背景は違いますが、今回権利制限をお願いしたい部分でございます。これは、約44パーセントぐらいですが、各MRが御訪問していろいろな説明をいたします。もちろん文献以外に、製薬会社は、製品情報概要というパンフレットを用いまして、この何倍もの情報提供を行うわけですけれども、それに加えて、いろいろな先生方からの、こういう文献を提供して欲しいという求めに応じて、その求めに合った一部だけ提供するものがこれぐらいの部分であって、情報提供自体としては、この何倍もまたあるということを最初に御確認いただければと思います。
4ページに戻りますが、今回求めている範囲ということで、2番です。情報提供の主体は、あくまで薬事法第77条の3に設けられております医薬品製造販売業者等ということで、対象は医療関係者で、一般の方に対する提供は今回範疇に入れておりません。それから、提供方法に関しましては、今回患者さん個々の治療に必要な情報ということで、迅速性を非常に有するということですので、紙媒体以外にも、ファクス送信や、いわゆる電子化媒体でのEメール送信という部分まで含めていただくことが必要かと考えております。
目的の限定は、先ほど説明させていただきましたように、あくまで個々の患者さんの治療等の必要性に応じて、医療関係者から個別に要求されるもの、その提供の要望をされた先生にのみ、原則的に一部だけ提供するものという範囲と考えていただければいいかと思います。この部分については、営利的行為というよりは、薬事法に定められている、憲法で保障された患者さんの健康に関係するものとして、非常に公共的な意味が強いのではないかと考えておるところであります。しかも、申し上げましたように、同一著作物をたくさん複写するようなことではなく、個々の著作権者の権利への影響というのは非常に少ないのではないかということから、権利制限の対象として必要な条件を満たすものではないかと考えております。この辺は5ページのところでございます。
一方、先ほど申しましたように、文献での提供だけを取っても過半数を占めておりますDの部分、企業が自主的に配付する部分、それからパンフレットの部分につきましては、当然権利制限を要求するものではございませんということです。
なぜ必要かということになりますと、最後のページの別紙2のグラフを見て頂きたいのですが、これは今年度調査を行いました外部提供目的の複写物に関するパーセンテージの調査です。国内・国外著作物全体で見ますと、今日来ていただいておりますJAACC学術著作権協会さんに委託されている国内著作物が9パーセント、JCLS日本著作出版権管理システムに委託されているものが25パーセント、それからCCCが30パーセントということで、35.7パーセントがまだどこにも委託されていない。逆に言えば、現行の著作権法では、個々の権利者を探し当てて、事前に許諾を取らないと複写ができないというものです。これを国内著作物に限って見たのが下のグラフでして、国内著作物に限りますと、約半数近くがそういう状態になっておるというのが日本の現状であるということなのです。こういうものに関しましては、事前に許諾を得るということが、本当に実質上不可能になっております。そういうところからも、ぜひとも権利制限をお願いしたいということと、6ページ目、最後になりますが、現在委託されているものも多くあるわけで、これについては処理ができるよう、今進んでおるわけですが、一部まだ最終的に契約に達していないところもあります。そういうように、もう5年も経ってなかなか交渉が成立していなかったという、一部実質上処理が不可能な許諾条件を設定されていたり、一部の著作物については一切複写してはいけないということを表明されているものもあるという現状でございます。複写許諾価格及び手続方法については、いわゆる著作権利者及び管理団体の専決事項であるために、このままでありますと、いつどうなるかわからないというものがあって、残念ながらそういう場合には、製薬企業として、著作権法を守ろうとすると、現在のアメリカなどのようにレファレンスのみを提供せざるを得なくなる。そうしますと、まだ欧米のように、文献を医療現場の先生方や薬剤師様が自分で入手するという環境が整っていない中で、非常に大変なことに陥る可能性があるということから、皆様の適正な御審議をお願いしたいということでございます。以上でございます。
【中山主査】 ありがとうございました。
引き続きまして、学術著作権協会の野間常務理事からお願いいたします。
【野間 学術著作権協会常務理事】 学術著作権協会の野間でございます。よろしくお願いいたします。
では、私どもの基本的な姿勢を述べさせて頂きます。配付させていただきました資料に沿いまして、御説明させていただきます。
私どもは学術関係の著作権協会でございますので、私どもの基本姿勢といたしましては、ただいま御説明がありましたような医薬品等の適正使用に必要な情報に限らず、研究成果に基づく最新の情報は、それを有効活用できる分野への的確かつ速やかな提供が望ましいというのが基本姿勢でございます。この妨げにならないように対応すべく、私どもでは、科学技術情報流通システムの構築と運用が必要であろうと考えております。
しかし一方で、研究論文等の成果物に対する適正な著作権料の支払いというものは、科学技術振興にとりまして、非常に重要であると認識しております。私どもでは、国内学協会論文の広範な活用、国外諸国との著作権処理の円滑化等、著作権の集中処理に積極的に対応して、関係学協会の権利、利益の補償に寄与してまいっております。
私どもで包括しております著作物件数でございますけれども、そこに記載したとおりでございます。これに少し補足させて頂きますと、例えば国内でいきますと、私ども約900に近い学会と契約をして委託を受けておりますけれども、毎年提供しておる論文の数は、約5万点以上に上っているところであります。私どもの管理している国外著作物は、最近2年間で約1.75倍の増加を見ております。御要望のあります製薬企業の医薬品等情報の複写、医療関係者への配付・提供は、私どもの考えといたしましては、学術著作権協会と包括契約を締結していただくことによって、大きな部分につきまして、的確かつ迅速な提供が可能であると考えております。学術著作権協会の複写権受諾著作物の権利者、著作物タイトルは、学著協のホームページでの確認が簡便かつ速やかに可能であります。それから、複写使用料に関連しましても、国外のそれと比較しまして、高額な料金設定にはなっていないと考えております。
学術著作権協会といたしましては、利用者、権利者双方の立場に立脚いたしまして、著作権処理の円滑化、著作権の集中処理事業に積極的に対応しているところでありまして、情報流通は、権利制限の自由化と権利保障の両面の調整を必要とする問題であると考えます。この両面の適切な協調を実現することは、学術と実業の円滑な発展のために必須で、それには両者の間に立って適切な事業の振興を担う事業者が必要でありまして、学術著作権協会は、歴史的にもこの問題を開拓して、進展の実務を遂行してきたと考えております。今後とも、学術著作権協会としましては、利用者、権利者の双方の利益に立ちまして、この問題に対処をしていきたいと考えております。基本的には、ただいま申し上げましたような包括契約によって、対応が可能であると考えております。
なお、権利制限が広範な分野に及んだ場合には、やはり学会に対するある種のプレッシャーになりまして、現に起こりつつある、日本の学会への投稿を避け、海外の学会へ投稿していくという風潮に追い風になるようなことにもなりかねないと考えております。簡単でございますが、以上でございます。
【中山主査】 ありがとうございました。
引き続きまして、日本著作出版権管理システム、早川代表取締役社長から、説明をお願いいたします。
【早川 日本著作出版権管理システム代表取締役社長】 早川でございます。よろしくお願い申し上げます。
お手元の配付資料に沿って、簡単に御説明申し上げたいと思いますが、その前に、パワーポイントで作成したものの後に、英文等の資料がついております。これは、今回の検討項目は平成18年1月に取りまとめられた文化審議会著作権分科会報告書の薬事行政に係る権利制限の ということですが、2005年来の特許、薬事について、そうした審議が行われておりますけれども、2005年のときに薬事等に関して、薬事  全てに対して、外国の出版社の団体、または世界的な出版社等を統轄する団体からの意見書でございます。今般の に関しまして、ここに書かれていることが重要でございますので、改めて添付させていただきました。ぜひともこれはお読みいただきたいと思います。
それでは、このパワーポイントの資料に沿って御説明申し上げます。
まず、私どもの許諾の方式です。利用者との契約は、年間包括許諾方式、年間報告許諾方式、個別許諾方式、この3つの方式でもって行っております。いま学著協さんからの御説明にもありましたように、私どもも、委託されている著作物につきましては、全てホームページ上に公示をし、そこに使用の条件等も一切掲載しております。従いまして、委託著作物であれば、ホームページ上でいつでも確認ができるということ、それにともなって、この3つの方式で利用者の方が契約していただければ、特に年間包括許諾方式、年間報告許諾方式、いずれも契約があれば、その都度許諾申請をして許諾をもらうということはございません。1番目の年間包括許諾方式は、事前の契約によって従業員1人当たりの使用料単価というものを決めまして、従業員数あるいは複写利用者数というようなところで、年間の使用料を事前に決める方式でございます。この方式によれば、どの著作物をどれだけの量を複写しても一定の料金ということになります。
2番の年間報告許諾方式は、1カ月または3カ月ごとに、実際に複写をされた著作物のタイトル、部数、ページ数といったものを報告していただいて、事後に、その実績に応じて精算をするということでございまして、これについても、複写をする時点においては改めて許諾を求める必要はございません。
次のページに参ります。特定複写利用等、これが日本製薬団体連合会さんといろいろと長年の話し合いを続けてきて、ようやくある程度合意に達したところでございます。これは、薬事法第77条の3に基づく、複写利用に関して適用される特例ということになります。この方式の中には、年間特定医薬関係者情報提供目的暫定許諾方式と、年間医薬関係者情報提供目的暫定許諾方式の2つがございます。特に、先ほど日本製薬団体連合会さんが御説明になりました緊急性につきましては、私どもとのこの事前の契約があれば、この形でいつでも、どれだけでも複写ができるということでございます。ここで1つ、MR1人当たりという方式につきまして、少し付け加えさせて頂きます。
今ここに持ってまいりましたのは、一昨日の日本経済新聞の夕刊に出た連載のコラムでございますが、たまたまMR、医薬情報担当者というのがございます。タイトルを見ますと、「自社の薬効を医師に説く」というのがまず見出しになっております。その中で、MRというのはどういうものかというのが非常に簡潔に書かれていますので、ちょっと読み上げてみます。「数ある薬の中から自社製品を選んでもらえるよう、医療機関を回るのが医薬情報担当者(MR)の仕事だ。製薬企業の営業要員である」となっています。それから後半のほうには、「MRの呼称や情報提供活動が定着したのは、第三者機関による認定資格制度が導入された1990年後半。それ以前には宣伝・販売員という意味のプロパーと呼ばれ、特に80年代以前には過剰な接待が慣行化していた」と書かれています。要するにMRというのは営業マンです。企業の利益追求のために働くというのが大原則です。いわゆる薬事法第77条の3に基づく医療関係者への情報提供というのは、あくまでそういう部分がございますが、MRというのはもともと営業マンだと。企業の利益のために働く者であるということを改めて御理解頂きたいと思います。
次のページに参ります。許諾に関わるタイムラグ、これについては、いま御説明申し上げましたように、事前の契約があればいつでも複写ができます。したがって、許諾を取るのに時間がかかるということは一切ございません。
それから、次のページに参ります。製薬会社が行う複写の量、これはここに書いてありますように、従来から、年間において数百万件、数千万ページと言われております。この量というのは、要するにベルヌ条約をはじめとする知的財産権に関する各条約に規定されているスリー・ステップ・テスト、すなわち「特別の場合」「通常の利用を妨げない」「正当な利益を不当に害しない」、この3つの条件を全てクリアするということから考えてみますと、明らかに違反する複写量に相当すると考えております。先ほども申し上げたように、巻末の資料にこれに関わる各団体からの意見がございますので、御覧いただきたいと思います。
もう1つ、諸外国においては、医療関係者に情報提供をする場合、製薬会社の責任と経費をもって行われております。権利制限というような強制的な形での情報提供というものを義務付けている国はございません。先ほどの日本製薬団体連合会さんの説明のところでは義務と言われましたが、日本製薬団体連合会さんの薬事法第77条の3の資料にも、「努力をする」ということであって、決して義務ではないし、薬事法第77条の3には、これを無償としても構わないということも何も書いてございません。
次のページに参ります。情報提供の公益性と使用料ということですが、もし国民の健康ということだけを取り上げるのであるならば、製薬企業が製造している製品、すなわち薬剤は国民の健康と福祉のためですから、こういう極端な言い方をした場合に、製造に関わるコストや何かも全部ただなのかと。なぜ、自分のところで作った薬剤に関して、その後の副作用報告等または効能等について、第三者のものである著作物を提供するに当たって無償にしろと言われるのか、この辺は全く理解できません。逆に言えば、出版社がこのような著作物を出すということは、まず医療関係者への情報提供というのが第一の出版の目的にもなっていますので、この辺のことを考えれば、もし使用料を無償にしろというのであれば、または強制的に権利制限するのであるならば、この出版社の成り立ち、またはその出版目的というものに関して相当なマイナスをもたらすということでございます。副作用等の報告という情報は何かといいますと、一般工業製品で言えばいわゆるPL法に該当するものであって、仮にそういう瑕疵があるならば、その企業の責任と経費をもって全てやるものであって、他人の著作物というものでもってそれを補うというのは筋が通らないと考えております。
したがって、結論としては、製薬企業が医薬関係者に提供する情報を複写によって行うことは許諾が必要であり、その複写を権利制限することは、その趣旨と量から見て明らかに条約に違反する。それから、私どもは、先ほど申し上げたように、事前の基本契約があれば、いつでもどれだけでも複写ができるわけですから、あえてこれを権利制限の対象にするということは全く論外であって、許諾に時間がかかるというのは、当を得ていない主張であると思います。それと、先ほど申し上げたように、各国の状況からして権利制限の対象とは認められないのではないかと、これが私どもの結論でございます。
委託状況と使用料については、「参考」としてあと2ページございます。この点については、時間のこともございますので、御質問があれば改めてまた御説明したいと思います。以上でございます。
【中山主査】 ありがとうございました。
それでは、今までの御説明につきまして、質問あるいは御意見がございましたらお願いいたします。
はい、どうぞ苗村委員。
【苗村委員】 最初に、日本製薬団体連合会の南さんから御説明いただいた資料について、3点質問があります。いずれも数に関する質問なのですが、まず、別紙1で、ABCDの区別をしていただいて、大変わかりやすいですし、参考になるのですが、確認のためなのですけれども、パーセントで出されているもののもとは「延べ文献部数」と書いてありますが、先ほどのお話ですと、Dの場合には1つの論文なり資料を大量にコピーする、ABCの場合は原則1部だということで、書かれている構成率というのは、あくまでもコピーされた結果の部数ですね。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 提供した結果です。先ほど申し上げましたように、Dの部分については、原則コピーを使うことはプロモーションコードで禁止しております。いわゆる著作権処理された別刷りを購入して配付するというのが原則になっております。
【苗村委員】 いずれにしましても、そのもとになった著作物の数の比率というのは大幅に変わるのだろうと思うのですが、提供した部数とおっしゃったのが著作物の数なのか、複製物の数なのかというのが質問の趣旨なのですが。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 例えば1文献を1万部したのであれば、それは1部、1つとして勘定した場合という意味でございましょうか。
【苗村委員】 どちらなのでしょうか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 その意味からいきますと、Dの部分につきましては、同一文献を何千、場合によっては何万というように1企業が配付する場合がございますので、ABCの部分につきましては重複がほとんどない、これだけの各種類の文献を使っておるということです。下の部分につきましては、18社にわたっておりますので、延べ文献数が2万弱になりますけれども、種類にしたら、多分この20分の1程度ではないかと思います。
【苗村委員】 わかりました。ということは、ここに書いてある数字は、あくまでも複製物の数であるということですね。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 ABCは複製物の数であるということです。
【苗村委員】 Dについては。
【南座長】 ABCもDも含めまして、全部、配付した文献の数、提供した文献の数ということです。
【苗村委員】 わかりました。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 同じ文献でも、コピーだけではありません。
【中山主査】 すみません、つまり別刷りも含んでいるという意味ですか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 別刷りも含んでいるということです。先ほど申し上げましたように、情報提供は通常パンフレットで行います。これが一番重要です。
【苗村委員】 そのことは十分わかっていて、質問の趣旨は、例えば別刷りであれ、あるいはコピー機での複写であれ、1ページ幾らという料金を取ったと仮定をしたときに、この56.3パーセントが概ねその料金に比例するものなのか、あるいはこの何倍かになるのかというのを知りたかったのです。仮に料金を取った場合ですね。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 ですから、この56.3パーセントにつきましては、もし全部複写でやったとしたら莫大な複写権料になります。現実では、ほとんど別刷りという形で購入をしておりますので。
【苗村委員】 いずれにしても状況はわかりました。
それから、あと2点ですが、いずれも数の話で、今のABCDとの関係で言いますと、次のページの別紙2ですが、このグラフはABCD全体を対象にされているのでしょうか、あるいはABCだけでしょうか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 基本的にABCのみです。MRが提供するために複写をしたものだけですので、Dは通常複写しませんので。
【苗村委員】 わかりました。3番目は、今の別紙2の中で、未委託の分なのですが、上のグラフで国内・海外を合わせたものについては、多分これは一番左上の30.6パーセントが未委託になるのですか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 すみません、30.6パーセントがCCCです。
【苗村委員】 しかし、これは普通にグラフを作ると。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 すみません、そのとおりです。30.6が未委託です。失礼いたしました。
【苗村委員】 それから下の、国内の場合は、それが45.7パーセントというのはわかりましたが、海外だけですと何パーセントになるでしょうか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 海外だけの未委託は数パーセントです。
【苗村委員】 数パーセント。はい、わかりました。ありがとうございました。
【中山主査】 他に御質問等ございませんでしょうか。
はい、どうぞ、道垣内委員。
【道垣内委員】 先ほどベルヌ条約違反ではないかというお話が出ましたけれども、日本製薬団体連合会のほうで調べられたところで、諸外国で同じような権利制限をしている国があるのかないのか、教えていただけばと思います。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 日本と外国と随分事情が違うところでございまして、実は海外で、これだけの量の製薬企業からの文献による情報提供が行われているということを聞いたことがございません。申し上げましたように、アメリカなどでは、きっちりと制限された条文はないのですが、医療関係者が複写を取られる場合にはフェアユースという概念で、基本的に著作権の権利制限と同じようなので、許諾なしで使えるようなことが行われておりますし、イギリスなどでも、そういう場合には要らないよということを宣言しておる管理団体があります。
もう1つは、インフラの違いと申しますか、基本的に米国とかヨーロッパでは、やはり医療関係者が自分で自分の必要な情報を収集するという習慣が前々からあるのと、インフラも、インターネット、それからいわゆるデジタルの著作物、そういうフリーアクセスのところへの論文投稿というものが非常に進んできております。日本でもこれは少し進みつつあります。ですから複写量全体は少なくなっておりますが、今までからの慣習として、日本ではお医者様、薬剤師様が必要な文献を取りたいというときに、一部の先生方は著作権法第31条の図書館等における複製によって恩恵を受けておられるわけですが、なかなかそういう恩恵がない方たちがほとんどでございます。実際に複製しようとすると、少し資料にも一部書いてございますが、先生方自身も、著作権法第31条の図書館等における複製が使えなければ、患者さんの治療に必要だと思っても、著作権者を探して許諾を得てというところで、例えば、それに対して1論文2,400円であるとか、1ページ140円、200円というような、10ページの論文にしたら2,000円という形で、許諾を得た上で、それを払って初めてコピーできるという形になっているのが日本の現状です。ですから、現状自体が随分欧米諸国と日本は違うというところで、我々も、できれば米国式のレファレンスのみの提供ができれば、これ以上ありがたいことはないと思っております。
【中山主査】 他に、何かございませんでしょうか。
はい、どうぞ、森田委員。
【森田委員】 先ほどの、別紙2の未委託の部分が30.6パーセントあるということですが、これは複写実態調査ということですので、未委託の部分でありながら複写をしているということだと思うのですけれども、この場合は、実際には複写ができているということなのでしょうか。その前の部分では、実際に複写することは「困難」だとありますので、両者の関係が少しよくわからなかったものですから、質問させて頂きたいと思います。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 申しわけございませんが、この未委託30.6パーセントの部分、国内で47.5パーセントの部分に関しましては、著作権法を破って、未許諾、未取得のままで複写をして提供をさせていただいております。我々、製薬企業としては、企業のコンプライアンスが今高く求められる中で、この辺が非常に困っているところなのです。ただ、製薬企業の使命といたしまして、著作権法と薬事法、両方の法律を守れないという状況の中で、やむを得ず製薬企業としての性質上、人の命に関わるという薬事法のほうを優先させていただいております。ですから、ここのところを、企業として、企業のコンプライアンスが守れるような形での法整備をぜひともお願いしたいというのが今回の権利制限の要求のもとでございます。
【中山主査】 他に、どうぞ、松田委員。
【松田委員】 学術著作権協会のほうは、対象が学会誌と考えればよろしいですね。一般図書については、出版管理センターというようにすみ分けすればよろしいでしょうか。
【野間 学術著作権協会常務理事】 お話のとおりでございまして、今話題になっておりますCCCを含む学会誌です。
【松田委員】 その場合、学会誌のほうは、もうかなり整理がされていると思うのですが、一般図書について、今のMRの需要に対する未許諾のままで出ている分もあるようでございますけれども、その全体像は、ここから出した数字だと、1年間数千万ページに及ぶと書いてあるのです。これをセンターの料金規定で、140円と、50円に減額する2種類があるようですが、一体それは、全体として、本来どれぐらいの許諾料の規模になるのですか。そして、どれだけ捕捉しているのですか。
【早川 日本著作出版権管理システム代表取締役社長】 今の松田先生の御質問ですが、年間数百万件、数千万ページというのは、本日資料を持ってきておりませんが、かつて日本書籍出版協会が調査したときの数字でございます。
それから、現在のJCLSの状況を申し上げますと、参考というところを見ていただきますと、この7月現在、私どもが委託を受けている出版社が155社ございます。正確に言いますと、この155社の中に、オランダに本拠がありますエルゼビアという出版社、これは特に医学系の文献に関しては世界シェアの20パーセント強を持っていると言われておりますが、このエルゼビアの雑誌を委託されております。この部分を入れまして155社あります。
そのうち、医書系の専門書を出している国内の出版社が87社ございます。この医書系出版物発行87社の内訳は、そこを見ていただきますと、大きく日本の出版界の団体で見まして、医書出版協会というものがございます。医書の学術書を出しているところのほとんどが加盟しております。ここが27社ございますが、そのうち26社から委託を受けています。それから、自然科学書協会という理工系を含む自然科学書の出版社で構成されている団体がございます。ここに加盟しているところが現在6社ございます。医書出版協会加盟社が自然科学書協会にも加盟しておりますので、その21社を外すと6社ということになります。それから、この2つの協会に加盟はしておりませんけれども、医書系の学術専門書を出している出版社が55社ということです。合わせて87社から、現在委託を受けております。
例えば、日本の出版年鑑等で見ますと、ちょっとこれは書籍になりますが、年間で100タイトル出しているところというのは、実は1,000社に満たないわけです。そういう中で、こういう学術専門書というものを出しているところから、現在87社の受託を受けておりますので、この医学系につきましては、ほぼ80パーセントぐらいが、間違いなく委託を受けているということが申し上げられると思います。
それから、先ほど申し上げましたエルゼビアについては、この下に、書籍39,182点の委託、雑誌2,689点(国内617点、海外2,072点)とありますが、この2,072というのがエルゼビア社が関係する雑誌のタイトルでございます。
もう1つ、料金のことが御質問にありましたが、最後のページにありますように、日本製薬団体連合会さんといろいろ話し合いをしてきた上で、一応合意に達している使用料というのが、特に医薬品製造販売業においては、年間包括許諾契約方式における一人当たりの1ページ当たり国内出版物が140円、海外のものについて200円というところです。それから、もう1つ言いますと、この年間報告許諾方式、あと個別もそうですが、これは権利委託者の指し値でも構わないという合意が一応形成されております。特に、薬事法第77条の3に関わる部分につきましては、ここに書きましたように、国内のものについてはページ50円、国外出版物が80円であります。この国外出版物につきましては、現在は、今申し上げたエルゼビアを含むCCCを今学著協さんが管理されておりますが、この学著協さんの使用料と全く変わりません。
それから、先ほどの未委託というところで少し付け加えさせて頂きたいのですが、あくまで私どもとしては推測の域を脱しませんが、未委託の出版物の多くが大学とか病院、または地方自治体等が発行されたものではなかろうかと推測します。したがって、この単価も分かりませんし、総額も分からないのでどの程度か分かりませんが、多分これらを合わせますと、数億円の使用料の額になるのではなかろうかと推測しています。以上でございます。
【中山主査】 他にございますか。
【野間 学術著作権協会常務理事】 学術著作権協会でございます。補足でございますが、今、早川社長からお話がありました国外出版物の料金についてですが、学術著作権協会と同じ200円というお話でございますが。
【早川 日本著作出版権管理システム代表取締役社長】 薬事法に基づくものはページ80円です。
【野間 学術著作権協会常務理事】 ページ80円、それならば結構でございます。失礼しました。
【中山主査】 松田委員、何か補足がありましたら。
【松田委員】 数千万ページで、そして全部捕捉すると数億円ぐらいになるはずだというところが、140円と50円で単純に掛けてみましても、100円単位だとしても数十億円単位になるはずなのですね。その関係がわかりません。
【早川 日本著作出版権管理システム代表取締役社長】 申しわけありません。現在、私どもなり学術著作権協会さん、または日本複写権センターというところで管理されているものだけで、本来は数十億円規模になるはずでございます。今申し上げた数億円というのは、先ほど申し上げたように、多くは大学で書かれたものとか、私立の病院や市立病院、町立病院等もあると思いますが、そういう病院単位のところで研究発表のような形で出されたものであるとか、または地方自治体におきまして、何かのプロジェクトなり調査なりというところでまとめられたようなもの、こういうものを指して御説明をしたつもりでございます。
【中山主査】 村上委員、どうぞ。
【村上委員】 1点だけ確認させてもらいたいので、薬事法第77条の対象を見ると、医薬品の他に医療機器というものも載っているので、今議論している話の対象範囲になる情報ですけれども、医薬品の適正使用にかかる情報だけの話なのか、最近非常に高度な医療機器が随分利用されているので、それに関するいろいろな情報というのも、ここで議論している対象に入るのか入らないのか、それだけ伺います。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 本来、我々日本製薬団体連合会としては、もちろん医薬品に関するという形でもよろしいのですが、実際上、先生がおっしゃるように高度管理医療機器が増えてきております。医療という目的からすれば、3ページの参考のところにありますが、薬事法第77条の3に、いわゆる情報提供の努力義務ではありますが、提供側として位置付けられている医薬品もしくは医療機器の製造販売業者、卸売一般販売業の許可を受けた者、それから医療機器の販売業もしくは賃貸業者、もろもろ書いてございますが、この提供側として規定されたもの全てにとして考えていただくほうが合理的であり、製薬団体だけという意味はないと思います。
【中山主査】 他に何かございましたら。はい、どうぞ、潮見委員。
【潮見委員】 1点だけ、南さんに確認させて頂きたいのですけれども、医療機関あるいは医療関係者からの要望による提供というのがございますけれども、実際MRの方が要望を受けたときは、それをそのまま受け取って、例えばコピーをしたり、複写物等を提供をしたりとかいうようなことをされるわけですか。何かチェック体制等はあるわけですか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 チェック体制といいますと。
【潮見委員】 要するに医療機関が言われたこと、医者が言ったことを丸飲みして、このコピーが欲しい、あるいはこの文献が欲しいと言われたら、それを提供するようなことになっているのかということです。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 そういうことに関しましては、いわゆる利益供与があってはいけないということが業界団体のプロモーションコードというもので規制されておりまして、基本的には、もし要求があったとしても、医師が個人で本来収集すべきものは提供してはいけないことになっております。ですから、提供できるのは基本的に自社の製品及びその対象疾患に関連する文献のみを提供できるというようになっております。
【潮見委員】 その部分が遵守されているということですね。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 そうです。
【潮見委員】 別紙1のところに、「背景等確認不能、分類不能」とございますけれども、これはどう理解したらよろしいのでしょうか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 現実上、そういうプロモーションコードがありますけれども、基本的に背景まで、調査というか一々お聞きすることは非常に困難です。この場合、この2週間に限りまして、900人のMRさんには趣旨を各社の担当者から徹底していただきまして、できるだけどういう背景の中で要求されたのかを確認して下さいということをお願いしました。実質上、現実には、毎回こういうことを意識するのは無理でございます。
【潮見委員】 背景確認ができなくても、その場合には、コピー等を提供されるということですか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 文献のタイトルなり内容なりで、自社の製品に関連する情報であるかどうかというのは自ずからわかりますので、それで判断をいたします。
【潮見委員】 そうでありましたら、今のようなのは、この分類でいったら「提供の背景」の上のほうのマスの中に入りませんか。「患者治療に際し、又は、患者への対応を急ぐ場合に文献の提供を要求される場合」あるいは「医薬品の適正使用のために必要な情報で……」ということですよね。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 そうです。
【潮見委員】 そうしたら、この分類はおかしくありませんか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 どこの部分でしょうか。
【潮見委員】 つまり、今言われた分類不能とか確認不能というものについて、その部分が結局自社製品に関する利用供与にかかるものであるとするならば、それは、背景等確認不能とか分類不能という枠組みではなくて、「提供の背景」の上の2つの「患者治療に際し……」と「医薬品の適正使用のために必要な情報で……」のほうに分類されるものではございませんか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 残念ながら、このときに何らかの理由により、いわゆる患者さんの存在、使用中なのか使用前なのか、使用後なのかということを確認できなかったというところで、本来C−9の部分につきましては、A、Bに含まれるべきものと、Cに含まれるもの全部が入っておるという可能性があるので、やむを得ずCのほうのところに入れたわけで、本来ABC3つともの、どこにあるかわからないというものです。
【潮見委員】 すみません、もう1点だけ、医療関係者からの要望等については、別に口頭でも構わないというか、それも入っているわけですね。口頭で行われた要望か、それとも全て文書、書面、何かそういうものですか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 書面とかそういうものは通常ございません。ただ、通常口頭では非常に難しいので、何らかのメモなりで。それからこの前に、実は検索を依頼される場合もありますので、それから先生方が何らかの形で検索をされた結果等とか、それから先生方が、もとのものとして情報を入手されておって、いわゆる引用文献という形になったら、その引用情報の記載箇所のコピー等を渡されるという場合も多々ございますし、現在ですと、メール等での依頼ということもあり得ます。
【中山主査】 では、市川委員、どうぞ。
【市川委員】 先ほどの森田委員の質問の続きなのですが、未許諾でコピーをしているという話がありましたね。その場合の事後処理はどうされているのでしょうか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 事後処理と申しましても、今現在処理できているのは、残念ながら学術著作権協会さん、JAACCさんの部分のみでございまして、最後のグラフのCCCの分、及びJAACC国内という部分のみが、これは包括契約になっておりますので、実質上年間契約という形で処理しております。その他のものにつきましては、JCLSさんとは現在交渉中で、ほぼ進んでおるわけですが、その他未委託のものに関しましては、実質上事後処理は何もなされておりません。
【市川委員】 その文献なりに書いてある連絡先に連絡を取って、事後的に支払わせていただきたいというような形はやっていないということなのですか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 現実上できておりません。
【市川委員】 それで訴えられて、高額な請求をされて困ったとか、そういうことがあるのかないのか。
【南 日本製薬団体連合会文献複写問題検討ワーキングチーム座長】 全くございません。というのは、Dの目的で、別刷り等がなくてやむを得ずコピーをさせていただきたいという場合、それからパンフレットに一部引用させていただきたいというような場合で、個々の著作者に連絡を取る場合が結構ございます。特に、コピーをするために許諾を頂きたいという目的を申し上げますと、まずお断りいただくことはありません。ほとんど無償でオーケーでございます。学術的に使われる場合は、どうぞどうぞと、逆にきれいなのがありますからあげましょうかというような、特に我々、ABCで求められる情報というのは、やはり要求される先生方のお仲間の先生方が、自分の体験を他の患者さんの治療に役立ててもらうという目的を持っていろいろなところに投稿されて公表された、いわゆる原著論文がほとんどでございます。ですから、今回は書いておりませんが、本来の著作者は著作料目的ではなく、本来情報を広めるために投稿されておりますので、いわゆる複写許諾をまず断られることはありません。ただ、現時点では投稿規定によりまして、投稿すると同時に権利が出版社に移っておるのがほとんどでございます。その意味におきまして、学術著作権協会さんのほうの学会誌に関しましては、JCLSさんの複写に比べて非常に安く、国内著作物に関しましては1ページ10円という設定で、そういう著作者の本来の意思が反映されているのではないかと考えております。
【中山主査】 他に何か。
【早川 日本著作出版権管理システム代表取締役社長】 今の件で、よろしいですか。
【中山主査】 はい、どうぞ。
【早川 日本著作出版権管理システム代表取締役社長】 今、学術著作権協会系のものの単価が10円、20円という話が南さんのほうからございましたが、まず学術著作権協会の雑誌、紀要というものと、商業出版社が当該医療関係者に対して情報提供をすることを業として出している商業出版とは、自ずから単価そのものが全然違います。要するに、出版社が出しているものは、売って何ぼなのですね。ところが学術著作権協会の学術雑誌等におきましては、まず論文を発表することが先決であって、実は、中には単価、要するに頒布価格すらも入っていない。学会費を納めたことによって、自動的に学会員には送付されるというような雑誌も相当数あるわけでございます。そういういわゆる非商業的なものと、出版社が出している商業的なものを、同一のレベルで単価はこれだけ違うのだというのは全く意味をなさないということだけは申し上げておきたいと思います。
【中山主査】 他に、何かございませんでしょうか。時間も大分経過しておりますので、今日のところはこのくらいでよろしいでしょうか。
それでは、どうもありがとうございました。
引き続きまして、障害者福祉関係の権利制限についての御説明を伺いたいと思います。障害者放送協議会著作権委員会、井上芳郎委員長、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、高岡正理事長、それから日本図書館協会障害者サービス委員会、佐藤聖一委員長にお越しいただいております。
時間の制約もございますので、大変恐縮でございますけれども、おのおの5分程度で説明を頂戴できればと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
【井上 障害者放送協議会著作権委員会委員長】 おはようございます。今紹介いただきました井上でございます。資料4−1を御覧下さい。
表紙をめくりまして、1枚目、2枚目でございますが、これは、いわば総論的なお話でございます。これにつきましては5月16日の、別の小委員会の席でもお話ししましたので多くは繰り返しませんが、以下の4点だけお話ししたいと思います。
まず、我が国の著作権法ですが、障害者に限って言いますと、国際的に見ても後れを取ってしまっているのではないか。配慮すべき障害者の範囲が狭かったり、いろいろと配慮に関する制限が多い。それから2番目に、つい先日も新潟県で地震がございましたが、そのような災害時・緊急時の情報保障を行う場合に著作権法が支障となっているということ。もう1つは、この4月から本格始動しました特別支援教育ですが、この場面でもいろいろ著作権法が制約となっていることが多い。それから4番目としまして、国連の障害者権利条約でございますが、批准に向け国内でも準備が進んでおるようですが、この批准との関係でございます。
次に各論ということになります。資料4−1の3枚目ですが、視覚・聴覚以外の障害に関することです。繰り返しになりますが、我が国の著作権法では、視覚・聴覚以外の障害を想定しておりません。しかし実際には、例えば、ディスレクシア、これは附属資料のNPO法人EDGE作成の冊子がございますが、詳しくはそれを御覧になって頂きたいのですが、正常な視力があるにもかかわらず、非常に複雑な原因で読みが困難であるという方たちのことでございます。このディスレクシアに絞ってお話しいたしますと、実は、これは学習障害(LD)に包含されるもので、発達障害者支援法で言う発達障害という大きなくくりの中に入ってまいります。先ほども申しましたが、4月から特別支援教育が本格始動しました。具体的な教育場面での話になりますが、教科書というものが非常に大きなウエートを占めているわけです。ところが、この読みの障害のあるディスレクシアのお子さんにとっては、実は読めない教科書を使っているということになるのです。視覚障害あるいは弱視のお子さんに対しては、点字あるいは拡大教科書等、著作権法上の規定もあり使えるわけですが、ディスレクシアはこのような配慮の範囲外になっているということでございます。
附属資料として、関西のある地域での実情について、関係の方にお断りして、固有名詞を伏せてお出ししております。これは実際に、学校の現場で読み障害をお持ちのお子さん、その親御さん、あるいは支援の方たちが、録音された教科書を使いたいということで働きかけたけれど、なかなか使えない状況であるということを資料にしたものでございます。後で御覧下さい。
日本の実情はこのような状況ですが、諸外国、米国の例ですが、先般の5月16日のヒアリングでも少しお話ししましたが、NIMAS(National Instructional Materials Accessibility Standard)と呼ばれるシステムがあります。これは障害をお持ちの児童・生徒のために教科書等のデジタルデータが統一されたフォーマットで、主にDAISY(Digital Accessible Information System)等が規格の一つになっていますが、これをサーバー上に置き、学校内である一定の資格を持った者がダウンロードし、個々の児童・生徒の障害実態に応じて加工して使える、ということだそうです。実にうらやましい限りなのですけれども、このDAISYについても附属資料の中にございます。詳しく説明する時間がございませんので、そちらを御覧おき下さい。この5月には、与党の「美しい日本における特別支援教育」という報告書でも、「DAISYなどを活用するために今後著作権法改正を視野に入れて検討すべし」という提言がされております。
緊急災害時の問題、それから教育の問題、いずれにしましても、待ったなしの解決を急ぐべき課題だと思います。ぜひ御検討をお願いしたいと思います。私からは以上でございます。
【高岡 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長】 社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の理事長を務めています高岡と申します。
聴覚障害者は日々、生活のあらゆる場でコミュニケーションの困難があります。本日も、私の意見陳述に際しても、委員長のお言葉を、隣におります要約筆記者に文字で書いていただかないと理解できないという障害を持っております。後ろに、随行者の当会副理事長の川井もおりますけれども、川井も2人の要約筆記者が付いて、皆様のお話を書いて通訳をしているわけです。
私たちの要望するところは、毎日放送される著作物を、聴覚の障害を持つ者が利用できるようにしていただきたいということです。また、社会で普通にレンタルあるいは販売されているDVD、ビデオなどについても、字幕あるいは手話で理解できるようにして欲しいということです。これは、本来放送事業者の社会的な責務であり、放送法第3条でも字幕放送、解説放送については努力義務と規定されているところです。しかし手話については、放送法に規定がありません。ですから努力義務でもなく、全くの任意になっているため、放送される時間数は極めて少ないものがあります。お手元の資料4−1の5枚目から、聴覚障害者に関する課題で、私のペーパーがありますけれども、そこに示すように、字幕放送はNHK総合、東京でいう1チャンネルでは43パーセントに字幕が付いています。民放キー局5局で平均32パーセントです。ところが手話は、NHK教育が2.4パーセント、民放は0.1パーセントしか手話がありません。NHK1チャンネルは、手話放送を実施していないという状況なのです。そういった状況を解決するために、私たちは、ボランティアあるいは各地の聴覚障害者情報提供施設が、許諾を得て、番組に字幕、手話を入れたものを貸し出したり、あるいは著作権法に触れない方法で字幕と手話を配信したものを見ている状況があります。
7月16日朝10時13分頃に、新潟で中越地震が起きました。すぐさまNHKは臨時ニュースを放送しましたけれども、字幕とか手話が全くないままです。字幕放送が始まったのはNHKの夜7時のニュースからで、その後11時に字幕放送が行われましたけれども、その間は字幕、手話ともなかった。ところが、私たち聴覚障害者団体が協力して運営するCS障害者放送統一機構は、CS通信を使って、字幕と手話を付けた配信を16日の11時45分から18時まで、断続的に4回、3時間50分にわたって配信しました。しかし、これは専用の受信機を持っている者しか受信できず、一般の聴覚障害者あるいは高齢で耳が遠い方には見ることができないものでした。
現在の放送方式が、アナログからデジタル放送に移り変わろうとしていますけれども、障害者の放送に関するアクセスの課題を整理するために、総務省が昨年から今年の3月まで、デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送の在り方に関する研究会を開きました。その中で種々議論されたわけですけれども、手話放送の拡充については技術的な困難があるとして、次の課題にされています。しかしながら、実際に実績のある事業者は、手話あるいは字幕を付けて配信することができます。しかし、それは手話と字幕だけを配信するのであって、現在の映像あるいは音声を含んだ番組に字幕・手話を付けて再利用、あるいは再送信するということができないでいます。今回の新潟中越地震のような緊急災害時はもちろんのこと、日常生活の中で、私たちが日々の放送、あるいは視覚的コンテンツが見られるようにしていただきたいと思います。
具体的な要望事項は2つございます。1つは、現行の放送に字幕、手話、解説音声を付けて公衆送信をすることを求めています。字幕、手話、解説音声を付けるだけで、それ以外は元のままです。現在はケーブルテレビがわずかな対価と引きかえに、そのまま放送することを条件に再利用、再送信することが認められています。2つ目の要望は、対象を聴覚に障害がある者一般にしていただきたいということです。身体障害者福祉法による聴覚障害者は約30万人です。ところが、日本で高齢者は2,300万人います。70歳を超えると、2人に1人は難聴になると言われていますので、30万人という数字は聴力損失が非常に高いレベルの、ごくわずかな方々しか対象にされません。また、補聴器業界では、難聴者は1,500万人と見積もって、補聴器会社、販売会社の社長などがその数字を紹介しています。こういった2つの要望について、国際的な背景あるいは技術の発展に鑑みて、ぜひ御理解を頂きたいと思います。
【佐藤 日本図書館協会障害者サービス委員会委員長】 日本図書館協会障害者サービス委員会の佐藤聖一と申します。よろしくお願いします。
私は、埼玉県立久喜図書館というところで司書の仕事をしている視覚障害者の職員です。今日は、視覚障害者のお話が1つと、図書館のお話を1つさせていただきたいと思います。
まず、著作権法第30条の私的使用の複製に関する件なのですけれども、著作権法第30条は個人的に複製することができるわけですけれども、視覚障害者の場合には、例えば第三者の方に読んでいただく等のことをしていただかないと、実際に自分で使える形で残しておくことができないわけです。例えば、一番有効なところが録音による方法であろうと思うのですけれども、録音等による方法が、自分で実際読むことができないために、それを保存して自分のものにしておく、手元に置くことができないという問題があります。ではこういうことをやっているところがあるのかという御質問がありましたが、視覚障害者に対して録音等のサービスを行っているところの1つが、いわゆる点字図書館、視覚障害者情報提供施設において、プライベートサービスという形で行われています。これは当然、利用者が持ってこられた原本の図書を、点字図書館がプライベートサービスという形で録音物として複製して、その人が持ってきたテープ等に複製して出す。それから、実際地域のボランティアグループ等で、このような個人のニーズによる等の複製を行っている事例があると聞いています。ただ、点字図書館等で行っているこのようなサービスが、現行法のままでは少し法律的問題があると一応理解しておりまして、ぜひこれをできるようにして欲しいというのが1つ目です。
では、こういうことをやっている業者とかはあるのかと言われてしまうと、私の知っている範囲では、実は2、3社しかありません。しかも有料で、もちろんかなり高いお金で、その人用に録音図書を作るという形になってしまうのです。そうすると、普通の晴眼者の方々は自分でコピーをしたり手で書いたり、いろいろな方法で個人使用の複製という形で残しておけるものが、かなりの高価を出さないとできないという現状になっているわけです。
そこで、こういうサービスをできる場所として、例えば近くの知人でも、誰でもやっていいのだという考え方も1つあるのですけれども、施設等を限定しなければいけない、きちんとしたところがやるべきだという御意見もあると思うのです。そうであれば、例えば点字図書館、視覚障害者情報提供施設の他に、公共図書館であったり、社会福祉協議会等の、要するにきちんとした窓口であるところのボランティアグループであったり、障害者福祉施設等、公的にしっかりした窓口のところで、そういう製作能力があるところにおいて、個人使用の複製のためのサービスというのでしょうか、そういうものをぜひできるようにして欲しいというのが1つ目の、視覚障害者としての話です。
それから2点目、日本図書館協会から、図書館のお話をさせていただきます。
資料4−1の一番最後に、図書館側の課題ということで、今日の骨子が書いてありますが、まず1番、公共図書館の障害者サービスの目的ですけれども、公共図書館では、全ての人に、全ての図書館の本を利用して欲しいと考えているわけです。この全ての人というのが、いわゆる障害者とかいろいろな方々が含まれるわけですけれども、そういう方々が図書館の本をとにかく利用できるようにすることが図書館の障害者サービスの意味です。
2番として、その手段として、資料をその人が使える形に変換する。結局、視覚障害者の人であれば、そのまま本を渡しても読めませんし、聴覚障害の方にビデオをそのまま渡しても音が聞こえないという問題があるわけです。そこで、その人が使えるような形に資料を変換して製作、著作権でいうところの複製ということになるのでしょうけれども、それで提供しようという方式を採っています。その1つの、非常に有効なツールが録音資料というもので、今まではカセットテープの時代でしたが、今急速にカセットテープから音声のDAISYというものに変わってきています。今日私どもの図書館のDAISY図書を持ってきましたけれども、こういう専用の郵送箱に入って、中は要するにCD図書です。そういう形で図書館の書庫に置かれているのです。今急速にカセットからDAISYへ移りつつあるのですけれども、これが視覚障害者等に非常に有効な資料であると考えています。ご覧の資料の中にありますが、その他にもいろいろなものを公共図書館は作っているということが書いてありましたけれども、もちろん点字とか拡大文字資料であったり、さわる絵本であったり、リライトであったり、先ほどのDVD等への字幕挿入とか、実はいろいろな形で、その方が使える形にして提供したい。それを作りたいというのが公共図書館の願いなのです。
では、3番で、録音資料は視覚障害者情報提供施設が作っているではないかということなのですけれども、実は、視覚障害者情報提供施設と公共図書館は、お互いが協力してこれらの資料、例えばDAISYや録音資料を作って提供しているというのが実際の姿なのです。ではどのぐらい作っているのだということになると、非常に大ざっぱに言って、視覚障害者情報提供施設7に対して、公共図書館が3程度の量を作っています。年間製作量で言うと、公共図書館が5、6千タイトル、視覚障害者情報提供施設が1万2千程度と考えていただければと思います。図書の年間出版量は7〜8万と言われておりますので、この量は全出版物の約1割ではないか、5千と1万2千を足すと1万7千ですので、約2割ということになります。ところが、これらの録音図書は、異なる施設で同じものが作られていたり、または複本を持っていたりするものが先ほどの1万2千に入っているので、非常に大ざっぱに申し上げて、複本を2倍、同じものがあると考えるとその半分です。したがって、約1割程度の新規の録音図書が全国で作られているのです。これでは1割ですので、視覚障害者の情報提供にとって非常に不足しているというのが実情です。公共図書館と視覚障害者情報提供施設は、お互いが資料のやりとりなどをしながら、協力しながら障害者の情報提供をしているというのが実態なのです。しかも公共図書館は、リクエストによる製作が原則ですので、リクエストされたものの中でどこも持っていないものを作るという暗黙の決まりがあります。そうなると、どうしてもいろいろなジャンルのものを公共図書館は作ることになります。俗に言う売れ筋とか読まれ筋のものでなくても、どこかが持っていなければ作るというのがありまして、例えば国立国会図書館や都立中央図書館のような大きな図書館では、専門書だけを作るというようなルールを持っているところもあります。ですので、公共図書館の製作は非常に重要だと考えています。
それでは、4番で、録音資料を公共図書館が作ってしまうと、一般の人に貸してしまうのではないかという懸念なのですけれども、これは全くあり得ないということです。その理由は、1つ目として、まず特別な登録ということで、公共図書館では、このサービス、例えばDAISY図書を利用する人たちには特別な障害者用の登録をしていただいています。ほとんどが郵送貸し出しによるところのサービスであるから、その登録が必要なのです。しかも、例えば障害者手帳の有無であったり、それに見合う障害であることを確認して登録してもらっている。視覚障害者の場合は障害者手帳を持っている方が多いのですけれども、そのようになっていますので、一般の人が実際に登録していることはあり得ない。それから、今お見せしたようなDAISY図書は、例えば箱が書庫に別置されていて、それが普通です。仮に書架にあるようなものであっても、これは障害者用の資料ですよということがきちんと書かれていますので、一般の方がこれを借りようとしても根本的に無理なのです。そうなっておりますので、公共図書館がこれを製作すると誰もが借りてしまうのではないかということは、まずあり得ないということです。
もう1点なのですけれども、録音図書というのは目で読むよりも非常に不便なんです。正直言って、目で見える人は目で見たほうがずっといいです。ですので、録音図書を誰もが使ってしまうのではないかというのは少し違う。これしか使えないから使っているというのが実際のところです。
あと、許諾の問題が質問に出されておりましたので、許諾について少しお話ししますけれども、まず許諾には限界があります。それは、まず外国人著者の場合には許諾はほとんど取れませんので、外国語の訳本が製作できない状態になっています。それから、許諾には、手紙を出してから大体1週間から1カ月の期間を要するのですけれども、例えば週刊誌等の場合、1カ月後の許諾ではもう全然お話にならないので、時間がかかると資料的に提供に意味のないものが出てくる。それから(3)に、文化人名録、著作権台帳ですけれども、2001年をもって発行が終わっています。だから、今私たちは、著作権者の住所を探すのに非常に苦労しているわけですけれども、(4)にあるように、例えば原本に住所があればそれを使うし、原本の著者の職場が書いてあれば職場にお願いしています。あと、どうしてもだめなら出版社に、「これこれこういうわけで、教えて下さい」ということでお話をするのですけれども、当然出版社等には私たちに教えてくれる義務はないわけですね。要するに、本当に著者がわからない、仮にわかっても著者から返事が来ない。それから、明らかに本人の意思でだめだという方もほんの少しいるわけです。大事なことは、許諾が得られないと提供ができなくなって、障害者が利用できないという問題に直結していってしまう、そこのところが課題なのです。
最後の6番で、利用対象者の拡大ということで、今までは視覚障害者だけが録音資料の利用者でしたけれども、視覚障害者ではない人たち、例えば手の不自由な人や寝たきりの方、学習障害の方とか知的障害の方とか、録音資料なら利用できるのだという方々がたくさんいることが最近分かってきているわけです。そのような方々に、ぜひ録音資料が利用できるようにして欲しい。そのために利用者の拡大ということになるわけですけれども、幸い、私ども日本図書館協会と日本文芸家協会さんで、録音図書の障害者用音訳資料利用ガイドラインというのを作成して、その中に、こういう利用者だったらいいのではないか、こういう対象者ならいいのではないかということで、細かい規定があります。今、その規定のとおりに運用していて何の問題も起きていません。このようなある程度明確なものも出てきていますので、そういう形での拡大をぜひお願いしたいというのが1つ。
では、みんなこれでいいではないかということですけれども、実は、日本文藝家協会さんのほうに、数千人の全会員の方に事前に許諾依頼状を出していただいていて、それででき上がっているシステムです。この方式では、結局全ての著作権者にこの文書を出すということはできませんので、要するに1つの試みとしてうまくいっているということが重要なのではないかと考えています。
いろいろ早く申し上げてすみません。どうぞよろしくお願いします。
【中山主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見あるいは御質問がございましたら、どうぞ、市川委員。
【市川委員】 すみません、今聞いていて、外国人著者の許諾の点が少し分かりにくかったのですが、これは日本語の翻訳があるときに、日本語の翻訳から点字や録音とかをするときに、日本の訳者の許諾は得られるけれども、外国の原著作者の許諾が得られないという意味なのでしょうか。
【佐藤 日本図書館協会障害者サービス委員会委員長】 そのとおりです。両者の許諾を取るべきと考えておりますので、原著作者の許諾が取れないということです。
【市川委員】 わかりました。ありがとうございます。
【中山主査】 他に何かございませんでしょうか。よろしいでしょうか。それでは貴重な御意見をありがとうございました。
引き続きまして、ネットオークションに関する権利制限について御説明を頂戴したいと思います。
本日は、社団法人日本美術家連盟事務局長の梅憲男様にお越しをいただいております。恐れ入りますけれども、メーンテーブルのほうにお願いをいたします。
まず、本課題に関しましては、インターネットオークションをめぐる状況について、またインターネットオークション事業者であるヤフー株式会社から、インターネットオークションの現状等に関する資料を作成、提出をしていただきましたので、まず事務局から、それについての説明をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】 それでは、資料5から資料6−2までに基づきまして、御説明させて頂きます。
まず資料5の冒頭で、前回の復習のような形になりますけれども、簡単に問題の所在をまとめさせて頂いております。税金滞納者の差し押さえ財産を公売する際に、インターネットオークションを用いて公売をやっているという事例が新聞で報道されておりまして、その画像の掲載が著作権侵害に当たるのではないかというような指摘もあって、こういった著作権法上の位置付けが課題になっているという記事でございました。事務局でも、そもそもインターネットオークションがどのような仕組みでやっているのかよく分からなかったもので、関連の業者を代表して、ヤフー株式会社から資料をいただきました。それが資料6−1と6−2になりますので、そちらのほうを、まず御覧頂ければと思います。
どういう仕組みかと申しますと、資料6−2が分かりやすいかと思いますので、まず3ページをお開き頂きまして、ネットオークションという言い方をしておりますけれども、いわゆる「オークション」とは違うようでございます。いわゆる「オークション」というものは、売り手と買い手、それぞれの間に売り手の代理、買い手の代理が入りまして、売買をここで成立させてしまうというのが本来の定義らしいのですけれども、インターネットオークションというのは、そうではないということでございます。具体的には、次の4ページになりますけれども、商品の提供を希望する人が、その商品に関する写真をインターネットに掲載して、それを見た人が購入価格を提示して入札してという形になりまして、やりとりをしているのは実際には商品の提供者と購入希望者ということになりますので、特にオークション事業者というものが間に入って売買を成立させているものではないということでございます。ヤフー株式会社によりますと、個人広告の掲載サービスであるという一言でまとめられるということだそうです。
今の仕組みは、次の5ページに図示をしておりますけれども、出品をしたいという方が で商品情報を掲載する。そのサーバーをヤフーが提供しているということではございますけれども、出品者の情報を掲載するのはあくまで出品者です。それに対しまして、利用者のほうが で見て回り、 で購入の申し込みをする。そのうちの最高価格のものを出品者に情報提供をするということでございますけれども、その後のやりとりにつきましては、もうサーバーを経由せずに出品者と利用者との直接のやりとりになりまして、サイト運営者は無関係ということだそうでございます。この仕組みは、さらに次のページになりますけれども、一般のショッピングサイトと基本的な原理は同じということで、あくまで出品者と利用者の直接のやりとりということでございます。
9ページが新聞記事等で問題が指摘されましたインターネットを用いた公売でございますけれども、こちらについても、基本的な仕組みとしましては、インターネットオークションの一般の仕組みと全く一緒で、国税徴収法に即して公売保証金を設定するとか、そういった独自の部分はございますけれども、その他の基本的な仕組みはそのまま一緒ということだそうでございます。違いは出品者が税務当局になっていることだけだとお考え頂ければいいかと思います。
資料6−1で、若干補足をいたしますと、先ほどの仕組みはヤフー株式会社さんのサイトでございますけれども、1ページ目の下の4行ぐらいになりますが、ビジネスモデルとして現在成り立っているインターネットオークションサイトは、ほとんどがこの形態だそうでございまして、いわゆる従来の意味での「オークション」の形で、間に立って売買を成立させるというサイトは、今ほとんどないのではないかということでございます。
2ページ(2)のところで、実際にどのぐらいの数の商品が出品されているのかということでございますが、ヤフーオークションで各日の平均を取れば、恐らく1,400万ぐらいの商品、その他幾つかの事業者で記載したくらいの商品が日々掲載されているようです。取扱い商品も非常に幅広いものでございまして、サイトによっては生物はだめとか条件を付けているところはあるようでございますけれども、基本的には出品者次第で、多種多様なものが載り得るというようなことでございます。
次の3ページの2段落目になりますが、出品物の画像の掲載についてというところでございますけれども、画像は出品者自らがアップロードするということでございまして、インターネットオークション事業者がこれに関与することはないということだそうです。ですので、コピー禁止などの手段をかけるのは技術的には難しく、出品者次第ということでございます。ただ、それぞれのオークションサイトによって、画像をどれぐらいの規模で載せられるのかといった制限を設けているようでございまして、ヤフーの場合ですと、縦横600ピクセルというような形で制限があるということでございます。
以上のような仕組みが、インターネットオークション一般でございます。結局は、画像の掲載主体は各出品者ということでございますので、多種多様な出品者がおりまして、本日のヒアリングも出品者側の方にはお越しを頂けていないわけでございますけれども、主なものということで、国税の場合につきまして、我々のほうで簡単に担当者から聞き取りをしたものが資料5になります。そちらに戻って頂ければと思いますけれども、重複するところは省略いたしまして、1枚目の下のほうで、実際にどのように写真を載せているのかということでございますが、国税庁の場合ですと、国税滞納処分に入るときには、公売日の一定期間前に公示をしまして、その際にオークションサイトに写真を載せるということでございまして、入札の10日前までに公告をしなければいけないということらしいので、最低10日間はネット上に写真が載っているという状況になるそうでございます。
その次のページの上から2つ目の でございますけれども、公売財産となった絵画作品の中には作者不明のものが多くて、限られた期間内に著作権者の許諾を得るのが困難なものもあるというようなことでございます。実際に著作権法の改正要望があるかどうかといったところまでは、はっきりとした意向は聞き取れておりませんけれども、その1つ上の括弧書きにあるように、引用の規定の解釈によってできるのではないかという説、そういったところもお考えになっているようだという感触は受けております。国税についての状況はこんな形だと伺っております。以上でございます。
【中山主査】 引き続きまして、日本美術家連盟の梅事務局長から御説明をお願いいたします。時間の制約もございますので、すみませんが5分程度で、よろしくお願いいたします。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 初めまして。日本美術家連盟事務局長の梅と申します。本日は、よろしくお願いいたします。時間も押しているということですので、私からは、短く意見を述べさせて頂きます。
お手元に資料7ということでお配りしてあると思います。ここに、私どもの見解をまとめてありますので、これを私がお読みして、意見の提出ということにさせていただきたいと思います。
お手元の資料7を御覧いただけますでしょうか。ネットオークションにおける画像の掲載についての意見書ということで、社団法人日本美術家連盟の見解を発表いたします。
まず1番目、ネットオークションという新しい流通の形態において、販売の対象となる美術著作物の画像掲載の著作権の処理については、原則として利用の都度、個々の権利者から許諾を取るべきだと考えております。
1)としまして、権利制限により上記の画像利用を認めるべきだという議論がありますが、実際に権利処理の作業を行った結果、問題が生じているため、権利制限との話が出ているのでしょうか。オークションサイトの主催者、出品者が画像掲載の許諾を得るための手続を行い、現実にどのような問題が生じているのでしょうか。紙媒体ではありますが、展覧会カタログ等については、個々の権利処理がなされています。当連盟も許諾取得のプロセスで、一定の協力を行うこともあります。きちんと処理を行っている使用者がいる中、他方で最初から権利制限を声高に叫ぶのは甚だ疑問であります。現実の各オークション主催者や出品者による権利処理の実態、この結果生じた問題の実態について、調査研究する以前に権利制限の議論を行うのは拙速だと考えております。
まず、これを引用でという議論もありますが、「2)著作権法第32条「引用」について」で、ネットオークションでの画像使用について、著作権法第32条「引用」の解釈によりこれを認めるとの見解がありますが、これはあまりにも飛躍していると考えます。従前、「引用」とは批評、研究を目的として主たる著作物に従たる著作物を引く際に、権利が制限されるものですが、ネットオークションにおける画像利用とは商品の販売のための商品の提示です。本来対面でも販売可能なものをネットで販売するには、画像があったほうが顧客にとって便利であるため画像を使用するものです。そもそも商品紹介が著作物とは言えない以上、「引用」が成立するとは考えられません。このネットオークションでの画像使用を「引用」と解釈できるなら、インターネットのみならず他の媒体でも、かなり多くの著作物の利用が引用と解釈できるはずです。この条項はこういった広範な利用を対象としたものとは到底言えません。また、商品販売が本来この「引用」の条項が予定する批評、研究といった公共の利益の優先を目的として権利制限を行う利用形態に含まれるとも考えられません。ネットオークションが新しく魅力的な流通形態であることを否定するつもりはありませんが、これを優先するあまり「引用」条項を拡大解釈することは無理があると考えます。
先ほども問題にありました行政が行うネットオークションですが、次のペーパーを御覧いただけますでしょうか。
上記のとおり、ネットオークションにおける画像使用について、従前どおり個々の利用の際に権利処理するべきだとの基本認識は変わりません。ここで一部に、ネットオークション中、行政が行うネットオークションについて、これが滞納された租税の回収を目的とするもので、つまり公共の利益を目的とするにもかかわらず、著作権が回収の妨げになっているとの論があります。仮に、一歩譲って、租税の回収の障害になっていることが真実であり、それゆえ公共の利益の確保を優先し、権利制限により行政によるネットオークションにおける競売対象美術品の画像掲載を認める場合でも、権利制限は最小限とすべきであり、補償金等何らかの対価を著作権者に支払うべきです。行政は公共の利益の確保を目的として様々な事業を行い、この際様々な費用が生じますが、公共の利益の確保をもって免除されるわけでありません。著作権のみは無料でというのはおかしな話ではないでしょうか。公共の利益を優先する著作権制限及び補償金支払いの先例として、行政を対象としたものではありませんが、著作権法第33条「教科用図書への掲載」があります。教科書会社は、教科書に美術品の画像を掲載し、その対価として毎年補償金を著作権者に支払っております。私どもは、長年にわたり教科書各社の補償金支払いに協力をしてまいりましたが、この仕組みは概ね適正に運用されてまいりました。この制度、運用など、このたびの議論の参考になるのではないかと考えております。なお、行政によるネットオークションのサイトに掲示する各美術品の画像について、データの転用を防ぐため、何らかの措置を講じる等、権利者の利益が不当に害されることのないよう配慮することが望ましいことは言うまでもありません。以上でございます。
【中山主査】 ありがとうございました。それでは、今までの説明につきまして、何か御意見、御質問がありましたら、どうぞ、市川委員。
【市川委員】 美術家連盟の方にお伺いしたいのですが、例えば画商の方が自分のところで扱っているものをカタログに作るとか、そういうような実例はあるのでしょうか。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 今いろいろな画廊が、例えば自分のところでデータ化して、インターネットで発信して作品を売る手だてにしていますが、商品紹介として何か小さいものは作っていることはあります。また、画廊の企画展等の場合もカタログを作っています。
【市川委員】 では、例えば、今ホームページがはやっていますので、そういう形でもいいのですが、そこに載せるときの大きさがどれくらいであるとか、それに対してお金を頂戴しているのか、この点いかがなのですか。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 私どもは著作権の処理をしていますけれども、例えば、美術館が自分の館内のサーバーに蓄積して、館内の利用者に見せるという場合がありますね。そういう場合は、きちんと著作権の処理をしています。民間の画商とか、大小いろいろありますけれども、そういうレベルでどういう実態があるのか、これから少し調査研究しなければいけないと思っています。
【市川委員】 現時点で言うと、公的なところはしっかり事前に接触してくるけれども、そうでないところは、そういうことがないという理解でよろしいですか。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 そうです。
【市川委員】 わかりました。それから、国税の関係で少しお伺いしたいのですけれども、国税のときに、載せるときに大きさをどうするとか、画素数はこれくらいにするとか、ぼかしを入れるとか、何か内規で決まっているのかどうか、この点いかがですか。
【黒沼著作権調査官】 我々が拝見しところでは、特にコピー禁止とかの技術がかかっているようには見えませんでしたけれども、詳しい技術までは伺えてはおりません。ただ、基本的には、ヤフーのインターネットオークションサイトの一般の技術様式にのっとってやっていらっしゃると思います。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 少しよろしいですか。
【中山主査】 はい、どうぞ。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 今私がお話ししましたのは、ネットオークションにおける図案掲載の権利制限ということなのですが、通常のオークション、カタログ掲載のオークションもあります。その場合、ネットオークションとの整合性はどうなるかという問題が出てくると思います。オークションという意味では同じなのですね。ですから、権利制限の区分をする場合、ネットという媒体のみに限定するのか。もし限定するとしたら、どういう理由でネットに限定するのかというようないろいろな問題があると思います。
それと、先ほど私がこの中で申し上げましたけれども、権利制限規定はあくまで公共の利益の実現のために利用される利用形態にのみ著作権を制限するものだと思いますので、一般のネットオークション、一般の商行為というものを目的として権利制限は行われてはいないのではないでしょうか。逆に、商行為の促進あるいは産業振興が、たとえば公共の利益にかなうものであって、よって権利制限を行うべきだという議論があったとしても、ではどのような条件を満たせば産業振興を名目にして、私権である著作権の制限を行い得るのか。その辺も、もしそういうことがあれば基準は明確にすべきだということはあると思います。
【中山主査】 他に何か。道垣内委員。
【道垣内委員】 これも著作権課にお伺いすることになるかもしれませんが、権利制限の問題なのか、そもそも複製に当たるのかということです。600ピクセルという数字が、技術的にはよく分からないのですけれども、小さい画像ならば判別できるけれども、大きくしたのではとても同一のものとは思えないほど画像が粗くなってしまうということなのかどうという点です。このような数字が出てきている背景に、例えばアメリカ等の国で実際に争われた事例があるのか否か、どの程度粗ければ複製権侵害とまでは言えないというような基準があるのかないのか、その辺を教えていただければと思います。
【黒沼著作権調査官】 大変勉強不足で、私も600というものがどれぐらいのものかよく分かっておらないのですけれども、また、どういう経緯で600になったのかということも聞いていないんですが、特に日本国内で、画像について紛争になっているということは聞かないというような話は伺っています。
【中山主査】 よろしいですか。では、多賀谷委員。
【多賀谷委員】 これは質問ではなくて、道垣内委員と同じように、インターネットオークションの話なのですけれども、先ほどの御説明でインターネットオークションの仕組みとしては、インターネットのショッピングモールと同じようなものだとおっしゃっていましたけれども、厳密に言うと若干違いまして、オークション業者は電気通信事業者、プロバイダーであるとともに、古物営業法上の古物競りあっせん業者なわけです。古物営業事業者には複数の概念がありまして、多分いわゆる古物営業というのは、物理的空間で言えば質屋さんなわけですが、質屋さんだと、購入した物品が盗品であるかどうかをチェックする必要があるのですけれども、あっせん事業者はそこまではチェックする必要はないものの、一応いわゆる単なるモールとは違って、多分、ある程度の警察的な観点からチェックがかかってくる仕組みにはなっていると思います。
【中山主査】 森田委員、どうぞ。
【森田委員】 美術家連盟さんにお伺いしたいのですけれども、先ほどの市川委員の御質問に関連して、実際にオークションで許諾を求めてきた場合にどうなるか、例えば一定の許諾料の支払いを要求するとか、そのあたりの実務というのが現実にあるかどうかということと、それから先ほどの販売目的で画像を利用する場合、例えば、オークション以外の販売目的で画廊がカタログを作るとか、あるいはホームページで画像を載せて販売しているというような場合、つまりオークションと類比するようなタイプの販売目的での画像の利用について、実際の実務あるいはその場合の処理の内容について、現在はそれがあるのかないのか、あるとすれば、それがどういう内容なのかについて少しお伺いしたいと思ったのですが。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 実際にオークション会社から許諾を求めるケースはほとんどないと言っていいと思います。あと画廊についても、実態がどの程度のものを作っているか分かりませんけれども、許諾を求めるというケースはないと思います。ただ公的な美術館などとは契約を結んでいますから、実際に適正に処理されているのですが、画商や画廊の場合、著作権の問題はだいたい作家との間で了解が成立しています。
【森田委員】 仮の話になってしまいますけれども、今後そういうところから販売目的で必要だということになって許諾を求めてきた場合には、やはり無償でというわけではなくて、料金規定などを定めて許諾料を取ることにするということなのでしょうか。その場合には、先ほどの画像とか写し方によっても異なる、例えば写真を撮ってこういう商品がありますよと示すことも可能なわけですね。したがって、どういった写し方をすると料金がかかるのかとか、そういった細かな定めをする必要が出てくるかと思うのですけれども、そのあたりについては何か御検討されていますでしょうか。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 それはこれからの検討だと思うのですが、我々が考えているのは、個々の著作権処理に手間と費用がかかるため何らかの対応が必要だとしても、やはり権利制限による解決ではなくて、集中処理の仕組みを整えるべきではないか、例えば包括許諾契約によって何らかの解決が図れないかと。それは我々の今後の検討課題でもありますけれども、やはり集中処理の仕組みを考える、整えるということが大事なのかと考えています。
【森田委員】 これは事務局にお伺いすべきことなのかもしれませんけれども、例えばCDのジャケット写真とか本の表紙とかについては、いろいろなオークションだけではなくて、一般の書店等で販売する場合にも広く使われていますけれども、あれはどういう処理になっていると理解したらよいのか。私はこの点についてあまり実務を知りませんので、そのような場合には何らかの権利処理がされていて、画像を載せることについて何か支払っているのか。また同様に、画像をよくブログなどに引用している人がたくさんいますね。ああいうのはどういう扱いになっているのかという、そのあたりの実態ですが、これも同じような問題だと思うのですけれども、ああいうのは全て権利処理されていて、今回美術品の問題だけが取り上げられているのは、この場合だけが権利処理されないで使われているから問題になったのか、それともこの種のものはすべて権利処理が必要だとは一般に考えられていなくて、ただそこに実態と著作権法との間にギャップが生じているという認識なのかどうか。画像の掲載がそもそも複製に当たるかという点も含めて、そのあたりの前提が必ずしもよく分からないものですから、もし分かればお聞きしたいと思ったのですが。
【黒沼著作権調査官】 私のほうでも十分頭の整理ができていなくて、ただ、文言どおりに読めば、もちろん画像をそのまま写しているのは複製に当たるのではないかというような御議論も当然あるでしょうし、それが著作物本来の価値を利用しているのかいないのかといった御議論も中にはあるのかと思いますし、いろいろ御議論があるところだと思いますので、むしろ御意見を頂戴できればとは思っております。現実の処理としては、恐らく敏感な方はもちろん処理をされてアップロードされていらっしゃるでしょうし、そうでない場合は、権利者の側からこれは違法画像ではないかというような警告を受けて、プロバイダーの側で削除するといったやりとりがされているのではないかと思っております。
【中山主査】 日本の著作権は、制限のところで限定列記主義を取っておりますので、アメリカのフェアユースに当たるものを全部洗い出してみると、随分怪しげなものがたくさんあるわけでして、それを全部取り出して制限規定として動けるかどうかというのは非常に難しい問題なのですけれども、とりあえずはオークションが今問題になっているものですから、ここではオークションを議論して欲しいと思います。私から少しよろしいですか。
著作権を離れて、普通、物を売る場合にその物を見せるというのは商売で常識ですね。オークションも売るために見せる、それが技術の発展によってインターネットになってしまったので、公衆送信権、複製権が問題になっているわけですけれども、例えば、画商は売るために画廊で展示しているわけで、不特定多数の人が入って見ている。あれは形式的には展示権の侵害になることもありうると思うのですけれども、美術家連盟としては、あれで展示権料を取ろうということは多分ないと思うのです。これはインターネットになったから取りたいのだという話でしょうか。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 展示権のことも、前にも要望はしたことがあるのですが、原作者にも展示権があるし、所有者にも展示権があります。例えば、画廊が有名な作家の作品を所蔵しているとします。そうすると、誰々、誰々、誰の3人展というようにやるわけです。そうすると御遺族は、あたかも御遺族の意思でその展覧会を開いたような誤解を招くわけです。ですから、そういう形はやめて欲しいと、何々個展とか、何々2人展とか、そういう形でやっているところは結構あるのですが、なかなか原作者と所有者にも展示権があるということで、その辺は一応、今我々の1つの課題にはなっているところなのですが。
【中山主査】 個展に限らず、絵を売る場合は、画商に行けば掛けてあるわけです。あれはみんな展示権侵害としてお金を取ろうという御意思はないわけですね。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 そこまでは、なかなか。
【中山主査】 それはやはりインターネットになったから、売るためであってもお金が欲しいという御主張ですか。
【松田委員】 すみません、今の場合は、著作権法第45条で所有者から同意を得ていれば。
【中山主査】 勿論同意を得ていれば別です。
【松田委員】 遺族から預かっているかどうか。大抵の場合は著作権法第45条で、店の中だけなら大丈夫なのではないですか。
【中山主査】 もちろん、先ほど言ったように例外があるのですけれども、分からないなといういろいろな場合があるわけですね。ですから理論的にはあり得る。
【松田委員】 所有者も分かりませんと、あり得ますね。
【中山主査】 今のは少し理論的な話として提示しただけで、別にそこから金を取って欲しいとかそういう意図は全くないのですけれども、ただインターネットの場合の特色として御主張されているのかどうかという点をお伺いしたかったのです。
【松田委員】 今言った著作権法第45条は、実はこの範囲内であれば経済的なデメリットは著作者にないだろうと考えるところから著作権法第45条が生まれているんだろうと私は思うのですが、オークションのときに画像を出すことは、実際的に著作権者にどのような経済的なダメージがあるのでしょうか。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 美術ですと作家の個展なり、あるいは画廊やデパートでの発表価格がありますが、オークションに作品が出ることによって、たまにあるのは、私の市場価格はこれだけなのにオークションではこんなに安く出ていると。要するに画廊やデパートでの発表価格と大きな差が出てくる。美術家の場合は、1品製作で、それを売って対価を得るのが1つの生活の基盤です。それがネットオークションによって、画廊やデパートとかの発表形態が基本的ですけれども、そこで発表している価格とはずれてきている。作家にとってはそれが生活を脅かしかねない問題なのかと。
【松田委員】 それがもし問題であるならば、画像を使うかどうかではなくて、オークション自体に対して何らかの対応を取っていく他ないのではないでしょうか。著作権法第45条とパラレルに考えるならば、売る場合に展示することも、少なくとも室内では大丈夫なわけですが、それはお客さんがそこに来るからでして、技術の発展に基づいて、いろいろな人がインターネットを介して情報を入手できるシステムの中でオークションをやることができた。そうすると、それと大体パラレルに、無数に出るといえば確かにそのとおりですけれども、何か経済的なダメージが明確にあるかどうかということは、やはり重要なことではないかと思いますけれども。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 今私が申し上げたことは、全ての作家にということではなく、当てはまる人もいるし当てはまらない人もいる。だからデメリットと言えばそういうことなのかと。ただ、このネットオークションが流通の1つの大事なあれでもあるということは認識しております。
少し先ほどの補足で、森田委員から御質問いただいた件ですが、美術館あるいは画廊がありますけれども、例えば表紙に作品を使うとか、きちんとした形のものは申請は来ますけれども、各画廊で、自分のところでデータで取り込んでお客に流して注文を取るというような場合に、商品を紹介するという意味のカタログを作るケースはあります。そういうときはどうなのか、その辺はまだ実態をつかんでいませんので、調査をしていきたいと思いますので、誤解のないようにお願いいたします。
【中山主査】 著作権法第45条は、著作権者の利益を害することが少ないというよりは、むしろ著作権法第45条、46条合わせて所有権者と著作権者との調和を取るための規定で、所有権者としては売るときには見せたいということは多分当然あるわけで、それがインターネットになると困るというのは二重価格になるからだというお話ですけれども、二重価格の防止を著作権法で扱うのはなかなか難しいですし。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 それは難しい。一部の作家から困るという電話が来るということはあるので、それは全てということでなくて、デメリットの一例ということで申し上げました。
【中山主査】 それは別に美術品でなくても、カメラであっても機械であっても、何でも二重価格になってしまったら困るというメーカーはあるわけですけれども。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 それは価格破壊全てですから、美術品だけ除いて別よというわけには、もちろんいかないとは思います。
【中山主査】 他に御質問ございませんでしょうか。今日のところはこのくらいでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
【梅 日本美術家連盟事務局長】 どうもありがとうございました。
【中山主査】 では、本日の会議はここまでにしたいと思います。次回の小委員会につきましては、権利制限の各課題につきまして、本日の議論を踏まえて論点の整理をしていきたいと思います。
最後に、事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。
【黒沼著作権調査官】 本日は、お忙しい中大変ありがとうございました。
次回の法制問題小委員会は8月7日(火曜日)14時から、場所は本日と同じ三田共用会議所の大会議室を予定しております。よろしくお願いいたします。
【中山主査】 それでは、本日は、これで文化審議会著作権分科会の第6回法制問題小委員会を終了させていただきます。長時間ありがとうございました。
(※次回、第7回の日程につきましては、その後、委員の出欠確認をしたところ、開催に必要とされる委員定足数を満たさなかったため変更になりました。) |
(文化庁著作権課)
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