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資料2

薬事行政に係る権利制限について

2007年7月19日

有限責任中間法人学術著作権協会
常務理事 野間 豊

有限責任中間法人学術著作権協会(以下学著協)は、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会において審議中の著作権制限規定の見直し「2.薬事行政に係る権利制限 3 医薬品等の製造販売者は、医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布、提供すること」について学著協における著作物複写許諾取扱の現状を踏まえ、意見を述べさせて頂きます。

1. 医薬品等の適正使用に必要な情報に限らず、研究成果の基づく最新の情報は、それを有効活用できる分野への的確、かつ速やかな提供が望ましい。
このことについて妨げとなることのないよう対応すべく、科学技術情報流通システムの構築と運用が必要であろう。
一方、研究論文等の成果物(研究論文等)に対する適正な著作権料の支払いは、科学技術振興にとって重要でもある。
学著協は、国内学協会論文の広範な活用、国外諸国との著作権処理の円滑化等著作権の集中処理に積極的に対処し、関係学協会の権利、利益の補償に寄与してきた。

2. 現に学著協は、主として自然科学を中心とした国外を含む 約3,700団体より複写権の委託を受けており、管理著作物は、国内3,222件、国外578,208件(2006年度末現在)に達している。
これは国内で常時必要とされている自然科学系著作物の多くの部分を網羅していると考える。

3. 要望のあった製薬企業の医薬品等情報の複写と医療関係者への頒布、提供は、学著協と包括契約を締結することにより、大きな部分については、的確かつ、迅速に提供が可能であると考える。
学著協の複写権受諾著作物権利者、著作物タイトルリストは、学著協ホームページでの確認が簡便かつ速やかに可能である。

4. 学著協管理国外著作物は、最近2ヵ年で1.75倍に増加した。
更に、国内外権利者・団体より委託の可能性について打診を受けており、受託権利者、受託著作物の増に向けて対応しているところである。
しかし、必要とされる全著作物の管理には至っていない。未管理著作物等の複写、調査、医療関係者への迅速な頒布、提供に当たっては、権利制限の対象となることも考えられる。

5. 複写使用料に関しては、国外のおけるそれと比較して、高額な料金設定とはなっていない。

6. 述べてきた条件下での権利制限は、権利者からの複写許諾に当たっての過剰な制限規定の設定を招くことに繋がりかねない。複写使用料についても国外著作物については、当該国と同程度、同条件への値上げを含む価格設定要求に繋がりかねない。
このことは、又、国内権利者にあっても国外との同条件設定主張への道を開くこととなるであろう。
学著協は、利用者、権利者双方の立場に立脚し、著作権処理の円滑化等著作権の集中処理事業に積極的に対処している。
情報流通は権利制限の自由化と権利保障との両面の調整を要する問題である。この両面の適切な協調を実現することは、学術と実業の円滑な発展のために必須で、それには、両者の間に立って適切な事業の振興を担う事業者が必要であり、学著協は歴史的にこの問題を開拓し、進展の実務を遂行してきた有識経験者である。

7. 薬事行政に係る権利制限が実施された場合、「研究論文などの成果物(研究論文等)に対する適正な著作権料の支払いは、科学技術振興にとって重要な要素でもある」との観点に立って、複写権使用料相当額の権利者への支払いが必要であろう。
そのシステムとしては、現に複写権の委託を受け、これを取り扱っている権利処理団体を通じて支払われるべきであろう。支払いシステムは、適正、公正かつ透明な基盤で設定されるべきであり、新たな支払いシステムの設定により手数料等中間経費の増加を招かない事が肝要であると考える。


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