ここからサイトの主なメニューです
著作権分科会 法制問題小委員会(第2回)議事録

1. 日時
  平成18年4月5日(水曜日)9時30分〜12時3分

2. 場所
  経済産業省別館 10階1020会議室

3. 出席者
 
(委員)
  青山,市川,大渕,末吉,道垣内,土肥,苗村,中山,松田,村上,森田の各委員,野村分科会長
(文化庁)
  加茂川次長,辰野長官官房審議官,甲野著作権課長,秋葉国際課長ほか関係者
(ヒアリング出席者)
  出口(日本電信電話株式会社中期経営戦略推進室サービス戦略担当部長),青柳(日本電信電話株式会社アクセスサービスシステム研究所主幹研究員),菅原(社団法人日本音楽著作権協会常任理事),椎名(社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員),上野(社団法人音楽制作者連盟常務理事),生野(社団法人日本レコード協会専務理事),高杉(社団法人日本レコード協会事務局長),畑(社団法人日本レコード協会法務部課長),石井(日本放送協会マルチメディア局著作権センター担当部長),児野(日本放送協会総合企画室デジタル放送推進統括担当部長),森(社団法人日本民間放送連盟常勤顧問),池田(社団法人日本民間放送連盟知的所有権対策委員会IPR専門部会コンテンツ制度部会主査),石橋(社団法人日本ケーブルテレビ連盟理事長代行・専務理事),館岡(社団法人日本ケーブルテレビ連盟著作権委員会委員長),杉村(社団法人日本ケーブルテレビ連盟著作権委員会顧問),河村(社団法人日本ケーブルテレビ連盟元著作権委員会委員長)の各説明者

4. 議事次第
 
1   開会
2 議事
 
(1) IPマルチキャスト放送に関する説明日本電信電話株式会社
(2) 意見聴取
 
○著作権者 社団法人日本音楽著作権協会
○実演家 社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター
○レコード製作者 社団法人日本レコード協会
○放送事業者 日本放送協会/社団法人日本民間放送連盟
○CATV事業者 社団法人日本ケーブルテレビ連盟
3 閉会

5. 配付資料一覧
 
資料1   日本電信電話株式会社作成資料(PDF:281KB)
資料2 社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター作成資料(PDF:126KB)
資料3 社団法人日本レコード協会作成資料
資料4 日本放送協会作成資料
資料5 社団法人日本民間放送連盟作成資料
資料6 社団法人日本ケーブルテレビ連盟作成資料(PDF:129KB)
参考資料1 各団体への質問事項
参考資料2 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定

6. 議事内容
 

【中山主査】 時間でございますので、まだお見えになっていない委員もいらっしゃいますけれども、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第2回を開催いたします。本日は御多忙中、御出席賜りましてありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開についてお諮りしたいと思います。予定されている議事内容からいたしますと、非公開とする理由はないように思いますので、すでに傍聴者の方々には御入場いただいておりますけれども、それでよろしゅうございましょうか。

〔異議なしの声あり〕

【中山主査】 ありがとうございます。それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々にはそのまま傍聴していただくということにしたいと思います。
 事務局の方に異動がございましたので、紹介をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それでは、紹介させていただきます。4月1日付で文化庁長官官房国際課長に異動がございました。これまで日本学術会議事務局参事官でありました秋葉正嗣が着任をしております。

【秋葉国際課長】 秋葉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【甲野著作権課長】 なお、前任の池原充洋は4月1日付で文部科学省研究開発局参事官の方に異動でございます。以上でございます。

【中山主査】 それでは議事に入ります。まず、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 議事次第の1枚紙の下の方に、配付資料の一覧が書いてございますので、併せてご覧いただければと思います。本日は配付資料としましては6点ございます。
 資料1ですが、日本電信電話株式会社の作成資料でございます。なお、別添としまして、委員限りの資料を配付しておりますので、併せて御確認ください。資料2は日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センターによる資料であり、以下、資料3は日本レコード協会、資料4は日本放送協会、資料5は日本民間放送連盟、資料6は日本ケーブルテレビ連盟による資料でございます。
 なお、参考資料といたしまして、今回のヒアリングに先立ち、各団体への質問をしました事項と、参考資料2としまして、本小委員会の審議予定を付してございますので、御確認いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【中山主査】 よろしゅうございましょうか。それでは、今日の議事につきまして、まず確認をしておきたいと思います。
 最初にIPマルチキャスト放送の仕組み等につきまして、NTTから御説明をいただきまして、質疑応答を行います。
 次に著作権者、実演家、レコード製作者、放送事業者、CATV事業者のそれぞれから、IPマルチキャスト放送にかかる著作権法上の取扱い等について、意見聴取を行い、各団体の説明が終了するごとに質疑応答を行います。
 なお、IPマルチキャスト放送を実際に行っておられる電気通信役務利用放送事業者などの関係者につきましては、4月27日に意見聴取をするということになっております。
 残りの時間につきましては、ヒアリング全体を踏まえて自由討議を行いたいと思います。ヒアリングの際に時間の関係から御発言できなかった場合にも、その際に御意見、御質問などをお願いできればと思います。
 では、はじめにIPマルチキャスト放送の仕組みにつきまして、御説明をいただきたいと思います。本日は日本電信電話株式会社から、中期経営戦略推進室サービス戦略担当の出口部長、アクセスサービスシステム研究所の青柳主幹研究員にお越しいただいております。
 それでは、出口部長から説明をお願いいたします。

【出口日本電信電話株式会社中期経営戦略推進室サービス戦略担当部長】 おはようございます。NTTの出口と申します。どうぞよろしくお願いをいたします。
 本日は事務局からお話をいただきまして、私どもNTTが今回の取扱いについて御意見を申し上げるという以前に、基本的にはマルチキャストに関わる仕組みの説明を少し詳しくさせていただくということと、現行の放送の枠組みの中で、マルチキャストの技術を使った場合にはどういう位置づけで考えていけば良いのかというようなことについての解説を、私の方からさせていただきたいと思います。
 それでは1枚めくっていただきます。1枚目は、まずIPv6という方式をマルチキャストの場合には基本的には使うのですが、専用のセットトップボックス、これは専用のチューナーというふうに考えていただきたいのですが、テレビ向けに放送配信をする時には、この専用のセットトップボックスを使うということでございます。
 下の絵を少し御覧いただきたいのですが、まず左側の方に衛星がございます。現在、IPのマルチキャストを使って商用版でサービスをやっている場合は、スカイパーフェクTVさんのようなCSの放送をいったん電波で、衛星で来たものを左側の放送センターに当たるところで受けまして、ここでいわゆるIPの信号フォーマットに変えまして、実際にマルチキャストのネットワークの方に送り出すと、こういうイメージでございます。
 まずマルチキャストの取扱いにつきましては、基本的には川が流れていくように、ライブ系の放送というのは基本的にはずっと24時間、番組が作られてお空に上がって、それがずっと電波で垂れ流しをされる状態でございますので、基本的には放送センター側で受けまして、簡単にいうとマラソンのバトンを渡すように、そのまま基本的にはネットワーク側の方に送り出すというイメージで御覧いただければと思います。
 ここにはA、B、C、Dということで仮のチャンネルを書いてございますが、これを事業者側の放送センターから、v6の真ん中にあるマルチキャストの機能を持ったネットワークの最寄りのIP局内装置側に送り出しをするということでございます。
 基本的にはこちらの事業者の方がチャンネルを送り出すということなので、相応の通信の対応ができる帯域、これの確保が必要でございますので、一般の方がこういう役割を果たそうとしても、当然ながら一般の方はこういう形の接続はできませんし、当然相応の対価をいただかないと、こういう形でのネットワークの使い方はできないということでございますので、先ほど主査の方からもお話のあった役務利用放送事業者というのは、相応のお金を払ってまずこのv6のネットワークにつなげるようないわゆる支払いをしていただいているというふうに、御理解をいただければと思います。
 ポイントになりますマルチキャストのテクノロジーなのですが、これはIPの局内装置ということで黒い箱が今v6のネットワークの中にいくつか、3つほど書いてございますが、これがマルチキャスト機能のある、専門用語で言いますとルーターとかと言われております。電話の時代は交換機だったのですが、IPのブロードバンドの時代になりますと、こういう局内装置が専用でございます。この黒い局内装置がマルチキャストの機能を備えておりますので、一番左側にあるNTT収容ビルに、Aから例えばDまでのチャンネルを送ります。送りますと日本全国に、基本的にはBフレッツという光のサービスが使えるところには、全部電話局の中にこちらの右側の方にありますように、IP局内装置というものがそれぞれ電話局に置かれていると御理解いただきたいのですが、ほぼリアルタイムにA、B、C、Dのチャンネルというものが全部NTTの収容ビル、昔で言う電話局に同時に配信されるというふうに御理解ください。
 実際にはネットワークを介しますので、多少時間がかかります。ただ、こちらのネットワーク上の時間というのは、恐らく数百ミリセック、1秒至らないくらいの形の時間しかかからないというふうに御理解ください。
 すべてのチャンネルがまず最寄りの電話局に、常に行く川の流れのようにほぼ準リアルタイムな状態で流し込みをされているということでございます。最終的にユーザー宅、視聴者の方からこの仕組みを使って、テレビで例えばCNN等の番組を見ようとしますと、最寄りの電話局まで、収容ビルまでは全部のチャンネルが来ておりますので、最寄りの電話局に例えばCNNを選択しますということでの選局信号を送りまして、実際にはAというチャンネルを上のユーザーさんは御覧になっているということでございます。
 これをやるためには、ユーザー宅のお部屋の中に、また機械の名前が入っていて恐縮なのですが、GE(ギガイーサー)のONUと書いてあるのは、これは光の終端装置、モデムというと少し誤解があるのですが、光の回線をいったん電気的に終端する装置というふうに御理解ください。
 この後ろにIPのセットトップボックス、一番右側の下に簡単な絵を描かせていただいておりますが、これがIPでテレビを見るための専用チューナーということでございます。基本的にはこちらの専用チューナーというのは、テレビでこのマルチキャストで流れてきたものを見るための専用装置ということでございますので、汎用のパソコンのように、いろいろなソフトウェアがほかに立ち上がっているということは一切しません。
 それから、当然ながら今のセットトップボックスは、各事業者さんともになのですが、メモリーやハードディスクレコーダーを内蔵しておりませんので、こちらで蓄積をするようなことというのは、日本の場合には基本的にはございません。
 ということで、こちらのお客様のお宅の中でも、川の流れのように来るチャンネル情報というのをそのままテレビに流して見ると、こういうことでございます。
 それから左側の上にインターネットということで、もやもやとしたネットワークのイメージを書かせていただいておりますが、よく御質問を受けるのですが、テレビ向けのチャンネルの配信、マルチキャストの配信については、一般的に言われるインターネットとはまったく独立したネットワークでやっております。この絵で御説明申し上げると、一番上のユーザー宅から最寄りの電話局に選局信号が飛んでいるところで、実はNTT収容ビルから切り替えができるような形になっておりまして、インターネットにはまったく別のネットワークで接続をします。ここが一般的にはv4といわれる今までの標準的なインターネットの手順ででき上がっているネットワークということなのですが、これで御覧いただくように、マルチキャストのネットワークというのはv6のネットワークということで、論理的には完全に今までのインターネットの利用とは独立されている。そういう意味ではクローズトな映像配信のネットワークという形での対応をしている、という御理解をいただければと思います。
 少し技術的な補完的解説を次のページでさせていただきます。左側の映像ネットワークのところが、今申し上げたようなマルチキャストですべての収容ビルに同時にチャンネル情報を送るというふうに申し上げたのですが、実際に最寄りの電話局とユーザーのお宅との間でどういうやり取りがされているのかというのを、簡単に描いてみました。
 実際にはAというチャンネルを選択するということで、最寄りの電話局に、こちらの右側に一番上に描いてあるAのチャンネルの視聴欲求の信号を飛ばしますと、実際にはユーザー宅のセットトップボックスを介してAというチャンネルが見られるということになります。Aというチャンネルを見ている場合は、定期的に放送センター側の方からAというチャンネルを確かに見ていますかということの確認をします。確認の状態を問い合わせる信号を飛ばして、Aのチャンネルを見ている場合には、今度はテレビの側の方の端末から収容センター側に向かって、Aというチャンネルを見ていますよという形での視聴状況の確認を実際にはしているということでございます。
 実際にチャンネルを切り替える時には、いったんAというチャンネルを切りまして、例えばBというチャンネルを御覧いただく時には、改めてBというチャンネルを見ますという形の要求信号を最寄りの収容センターに飛ばして、Bというチャンネルを御覧いただくということでございます。
 これが、基本的にはマルチキャストを使って実際にユーザー宅で御覧いただく場合のやり方でございます。基本的には収容ビル、電話局から放送センターの間はいわゆるマルチキャストではございますが、今御説明を申し上げたように、収容センターからユーザー宅というのは、実は1対1の対応でチャンネルを御覧いただいていると、こういう形でございます。
 本来、収容センターからユーザー宅までの間のこういう信号のやり取りは、従来の放送の世界でいきますと、テレビの受信機の端末の基本機能というような形になるのだと思うのですが、ここが物理的には最寄りの電話局と実際にお住みになっている住宅との間でのやりとりということになっているというところが、多少技術が難しくなっている部分かというふうに、我々は考えております。
 御参考までに、少しIPを使ったほかのサービスも比較で御理解をいただきたいということで、次のページでございます。実はIPの技術を使いまして、実際にはビデオ・オン・デマンド(以下、「VOD」)という形ですでに例えば放送したものを改めて放送の2次流通というような形で、過去のアーカイブの映像を上げるというようなこともあるかと思いますが、そういう場合は基本的にセンター側の方に映像が蓄積をされております。
 一番この絵でいきますと左側にあるVODサーバーといわれるいろいろな放送番組、映画なんかをためておけるサーバーというものは、各事業者によって複数ある場合もありますが、基本的に今は日本に例えば1カ所、東京に1カ所あるというふうに御理解いただければ良いかと思います。
 実際に例えばハリウッドの映画を見る、あるいは放送局の過去の番組を見るということになりますと、こちらの右側のお客様宅を見ていただきたいのですが、チューナー自体は先ほども申し上げたマルチキャストのチューナーと同じ、専用のセットトップボックスを共用して使います。
 実際にVODで例えばハリウッドの映画を見ようということになりますと、これはマルチキャストと違いまして、v6ネットワークを串刺しでコンテンツがあるところまで直接取りに行きます。取りに行きまして、実際にはこの赤い色の矢印で書かせていただきましたが、例えばこの赤い色の矢印でハリウッドの映画というのをずっと御覧いただくような形でございます。
 実際にはマルチキャストとこういう方法と何が違うのかというお話があるかと思いますが、このVODで見ていただくとわかるのですが、例えば右側のお客様が1万人いると、ネットワークの上に必ずそのサーバーのところまで1万のパスが論理的には張られるということになりますので、非常にネットワーク全体にかかる負荷が重くなるということがございます。
 ということで、特に川の流れのように常にリアルタイムに流れるような放送のようなもの、それもかなりの確率で多くの皆様が見られるような場合には、ネットワークにかかる負荷も軽減するという工夫を通信事業者としてはさせていただきたいということがございまして、マルチキャストの部分で最寄りの電話局まで少なくともすべてのチャンネルは持っていっていると、こういうことで差異がございます。これを御理解いただければと思います。
 ちなみに今はVODやマルチキャストを使った場合には、商用版のサービスにおきましては基本的には標準テレビ、今のアナログの標準テレビ並みの画質での映像というものが、今は基本になっているということでございます。
 併せまして、一般的な、俗にインターネット放送と言われるもの、例えば最近、USENさんがやられているGyao等がとても話題になってございますが、パソコンで例えば放送番組を見ようとか、あるいはハリウッドの映画を見ようというような場合は、これと比べるとどういうことがなされるのかということなのですが、左側にインターネット放送事業者さんのいわゆるコンテンツをためておけるサーバーの絵を描きましたが、基本的にはオープンなインターネットの上で、インターネットの接続事業者さんの力を借りて、この動画サーバーをインターネット放送事業者さんは実際にはインターネットと接続をするような形になっております。
 実際には右側にあるユーザーは、弊社グループ以外の例えばNECだとBIGLOBEやニフティというようなものの、インターネットの接続事業者さんをそれぞれ選択されているということです。広義のインターネットの場合には、少なくともインターネットの上にコンテンツが上がっていれば、いろいろなユーザーさんが個々のISPがまったく違ってもコンテンツを見ることができるということは、現実できます。
 ただ、この絵でいろいろと描かせていただいているように、一般的なインターネット接続の場合には、そもそもインターネット接続事業者のネットワークというのは区々でございます。細いところ、太いところ、もういろいろありまして、それから実際にコンテンツを見ようという都度、どのルートで接続されるかというのは区々でございます。
 少し極端なことを申しますと、東京の動画サーバーにアクセスするのに、実はある利用者さんは自分のISPのネットワークを経由するといったん北海道まで実際にはネットワークは経由して、北海道経由で実は東京のサーバーを見るようなことも、インターネット放送の場合はあります。これがクローズドな場合の、先ほど申し上げたマルチキャストのv6ネットワークと一番違う点でございまして、ここは従来のインターネットでいろいろな情報がやり取りできるという便利な環境をうまく使って、ある程度映像のクオリティには制約があります。恐らく今、リッチな映像でも2メガくらいということですから、アナログの恐らくテレビの3分の1程度の容量で映像を流すというのが基本かと思います。
 基本的には1メガ以下という、もう少し映像の粗いものだというふうに我々は思っておりますが、そういうことでやるサービスということであれば、十分対応はできるということでございます。
 実際にこちらの汎用のPCを使ってみるということですので、例えばマイクロソフトさんのウィンドウズメディアあるいはリアル等々のビューアーというものをソフトウェア的に立ち上げて御覧になるということなのですが、何せ汎用のPCが基本的には見るための端末ということになりますと、PC自体にはメモリーがございますし、それからあまり不正利用のお話を先にしてしまうのは恐縮なのですが、例えば映像のキャプチャーをするようなソフトウェアを同じパソコンで同時に立ち上げるということが、これはできてしまいます。
 先ほど申し上げたように専用のセットトップボックス、専用のチューナーの場合には、まずメモリーがございません。それから、不正な映像の取り込みをやるようなキャプチャーに当たるソフトウェアをその箱の中で立ち上げるというのは基本的にできないということで御理解をいただければ、一般的なインターネット放送との差異ということは御理解いただけるのではないかと思います。
 1つ例示を書かせていただきましたが、役務利用放送事業者は今後また実際には意見を述べる機会があるということですが、例えば弊社のグループでございますと、今申し上げたVODのサービスとそれからマルチキャストでの多チャンネルサービスというものをセットで実際には提供していますが、仕組みということでいうと、マルチキャストとVODというのはまったく違うというふうに御理解をいただければ良いかと思います。
 ただ、見られるためのチューナーとリモコンというのは1つということでございますので、利用される方から御覧になると、例えばスカイパーフェクTVさんのチャンネルのうちの50チャンネルくらいを有料で見られるということと、それからハリウッド映画をVODで見られるということが、1つのテレビ画面で同時に実現できるということが、今商用版のサービスとしてできています。
 ただ残念なことに、今これはまだハイビジョンまでいっておりませんので、今回少しお話をいただく中で、改めて我々も地上デジタル放送を、こういうIPのマルチキャストを使った場合にどういう形での配信というのがイメージできるのかなということを検討しているということでございます。
 すみません、委員限りということにさせていただきましたが、別添の「地上デジタル放送の送信形態イメージ」という資料を御覧いただきたいと思います。
 多少我々なりの近未来的な前提条件が入ってございますので、あえて委員限りということにさせていただいております。
 では、この資料で簡単に説明をさせていただきます。実は地上デジタル放送というのは今、どういう形で各全国津々浦々に配信をされているかということを、まず簡単に説明申し上げます。
 左側に東京があります。在京放送キー局といわれるのは、これはNHK、それから主要民放ということで御理解ください。通常は東京の中では東京タワーへ放送そのものを持ち込みまして、東京タワーから電波で出るということでございます。ある家庭では直接自分のアンテナで御覧になっていることもあれば、CATVの事業者さんのネットワークを介して御覧になっているというのが、今の一般の放送でございます。
 実は東京から出る放送番組そのものは、今も県をまたいで配信をするのは光ファイバー、有線を使っております。これは意外と知られているようで、一部の方しか御存じないのですが、実は県間はテレビジョン中継サービスということで、NTTコミュニケーションズというところが放送事業者さんにサービスを提供させていただいているのですが、専用型のネットワークで各地域にある放送局、例えば岩手県だと盛岡にNHKや民放の放送局がございますが、いったんそこには有線で放送を全部配っております。実際には各地方の放送局さんは独自に作られた番組、あるいは地元のCMをここで挿入をされて、地方局ならではの編成をされまして、そこからまた電波で出すというのが基本でございます。実際には電波で出したものを直接アンテナで受信したり、あるいは地方のCATVさんで御覧になるということでございます。
 実際に今申し上げたようなことが現状の放送ということでございまして、トラックの絵などを描いて、少しわかりやすいようにということで我々工夫したのですが、実際には放送の電波だったり光ファイバーだったりするのですが、まずNHKや民放の放送番組というのは今、MPEG2のTSということで、やや専門用語になりますが、こういうフォーマット形式で、今申し上げた光ファイバーや電波に乗る形で送られるということです。
 ただ、実際に送るためのいろいろな信号方式、トラックの例でいきますと荷台の形が違うというふうに御理解をいただいたら良いと思うのですが、多少荷台の形が送る伝送方式によって変わりますが、中身はMPEG2のTSで情報自体は変わらないというふうに御理解いただければと思います。
 さて、それで今回、IPのマルチキャストの技術もずいぶん進んでおりますので、地上波デジタル放送の一番の目玉であるハイビジョンの規格で、例えばIPを使ってマルチキャストで放送配信をイメージしたらどういうことになるのかということを、少し解説をさせていただきます。
 一番右側の下に、黄色い部分で「新たなIP配信」というふうに書かせていただいております。我々は基本的には現業の放送事業者の放送の中におけるルールということをきちっと踏まえて、新しいテクノロジーというのを御利用いただくのが、一番放送事業者から御覧いただいても、権利関連に関わるいろいろな方から見ても混乱がないというふうにまず思っておりますので、基本的には県単位でやはり放送そのものを配信限定できるようにIPの技術を使っても考えるべきというふうに今は思っております。詳細は別な機会にというふうに思います。
 実際には地方の放送局から電波で出るものを、実際には地方単位、県単位に恐らく放送事業者、新しい役務利用放送事業者というのが出てくると我々は考えているのですが、こちらの放送センターでいったん受けまして、受けたところでIP化をして、先ほど冒頭申し上げたようなマルチキャストのv6のネットワークで県下にある収容ビル、NTTで言いますと昔でいう電話局でございます。これは町とか村単位に全部電話局がありますが、こちらに向かってお送りをするということでございます。
 送る場合のポイントは、確かに媒体は電波ではなくて光ファイバーでございます。トラックの荷台の形はIPのマルチキャストに関わる新しい技術ということでございますが、実際に中で送られる情報、MPEG2のTSの中には、実際には映像本編、それから音声ですね。それから今の地上デジタル放送ですと、データ放送とか電子番組情報等の付随情報も全部あるわけでございまして、こちらの形を基本的に一切変えずに、トラックの形は違うのですけれども、同じ情報を各御家庭に運ぶということをやれるのではないかというふうに考えてございます。
 これを専用のチューナーでテレビで御覧いただくというのが基本だというように思っておりまして、平成17年度につきましては、昨年度は総務省の実験という形で我々調査研究受託をしまして、実際にこういう方式でテレビそのものと変わらずにちゃんと送れるかどうかということについては、実際に放送事業部の関係者の方にも御覧をいただいて、御理解を賜ったということがこの3月期、我々のやったことでございます。また、この成果等については別の機会があれば、御説明を申し上げたいと思います。私からの説明は以上でございます。

【中山主査】 はい。ありがとうございました。今までの説明については、御質問があればお願いしたいと思いますけれども、本日の出口部長には、IPマルチキャスト放送の仕組み等についての御説明をお願いしたわけでございまして、質問は放送技術の内容について限定させていただきたいと思います。何か御質問がありましたら。

【松田委員】 松田でございます。大変分かりやすく説明していただきました。資料1の別添を見させていただいておりますが、地方単位の放送局から放送センターに入り、収容ビルから視聴者に流れていく。これが川のように流れていくわけですよね。その新しいIP配信システムを使うと、ユーザーの方はどういうメリットがあるのでしょうか。それから、社会的コストとかそういう意味では、どういうメリットがあるのでしょうか。

【出口日本電信電話株式会社中期経営戦略推進室サービス戦略担当部長】 具体的なコストの議論は、我々もまだ検討の途上にあるので、別な機会ということなのですが、御案内かと思いますが、日本の場合はFTTHということで一般のお宅にもどんどん光ファイバーでブロードバンドを見ようという方たちが今急速に増えておりまして、ADSLから光ファイバーへどんどん移ってきているということでございます。
 ユーザーの方から御覧になられると、これは世界的にすべてのサービスを1つの線なりファシリティ設備で、非常に簡単に効率的に便利にサービスを使いたいという潮流がございまして、一般的にはマスコミ等ではトリプルプレーというような言い方になっているかと思いますが、その場合の実はサービスメニューというのは電話を安くするということでIPの電話を使う。それから、当然ブロードバンドでインターネットをもっと早く見たいという、そういうインターネットサーフ。それから、アメリカなどでも非常に最近話題になっておりますが、もう1つがテレビの受信について。
 特にデジタルの地上波自体の基幹放送がデジタル化する時に、テレビを見られる選択肢として、例えばアンテナで自分で御覧になっている方は、地上波デジタル放送はUHFということですから、アンテナの調整などが当然必要です。テレビは当然買い換えなければいけないのですが、例えばアンテナの調整をするということで、1つ手間でございます。
 それから、CATVだと例えばオールインワンでお願いをして、デジタルの地上波放送も見られますというのを今非常に売りにされて、お客様をどんどん増やされているということだと思うのですが、例えばあるお客様はCATVのサービスということで問い合わせをすることがあるかもしれません。
 ただ、第3の手段として、改めて地上デジタル放送の普及を考える時に、光ファイバーで、たまたまブロードバンドやIP電話で使おうというような方が、物理的なファシリティとして光ファイバーを御利用いただいていれば、ここに基幹放送の地上デジタル放送がうまく乗せられることができれば、利用者の選択肢として、例えば都市部でも、例えば田舎でも、田舎だとなかなかブロードバンド化というのも正直厳しい部分はございますが、一部の自治体のように、自ら自治体がある程度予算措置をされる、あるいは中央の政府の補助金等で、先進的にブロードバンド化を進めようということになりますと、光ファイバーでブロードバンドの仕組みがあれば、IPで例えば放送が見られるようになれば、そういうところも、昔ですと裏山にみんなで共同のアンテナを立てまして、それなりに維持運営費をかけながら何とかテレビを見るように頑張っていたようなものも、非常にクリアな映像で簡単にテレビを見られる可能性ができる。ある意味、国民から見ると、利用の選択肢が広がるということでは非常にメリットが大きいかと思います。

【中山主査】 ありがとうございます。ほかに。はい、どうぞ。

【苗村委員】 資料の2ページ目、最初の解説の図を見ながらの質問なのですが、ここでNTT収容ビルの中にあるIP局内装置があります。これについて2つ、純粋に技術的な質問です。ビジネスとしてではなくてお答えいただきたいのですが、ここからユーザー宅に流れるパケットの大きさといいますか、ビット数は1秒の何分の1くらいなのかというのを聞きたい。もちろん幅はあって良いと思いますので、大体で結構です。
 それからもう1つはこの装置、ビジネスというよりは技術としては、例えばマンションの中で昔のPBXのような形で置くことも技術的には可能なのかどうか。以上2点、お願いします。

【青柳日本電信電話株式会社アクセスサービスシステム研究所主幹研究員】 まず、技術的な意味合いでということで、パケットの大きさというのですけれども、そういう意味ではいろいろな大きさは設定できます。まず、1ユーザーさんにどのくらい、何チャンネルテレビを見ていいのですか、それも何メガビットのテレビを見ていいのですかというところも基本になりまして、例えば想定として、例えば10メガのHDTV2チャンネルくらい送りますというと、マルチキャストのスイッチからは1ユーザー当たりに20メガくらいをずっと出さなければなりません。それを今度どういう形のパケットで送りますかというと、通常マルチキャストの場合はUDPという形のパケットになりまして、それは細かい話になりますと、下の方はマックのパケットですから、基本的には約1,500バイトになります。ですから、そうすると今度はUDPの大きさをいくつの大きさにしますかとか、映像系をトランスポートストリームという、ある大きさのパケットがあるのですが、それをUDPの中に何個入れますかというところを、ある意味では放送事業会社と端末を作るメーカー等の中での合意を得て、ある意味では決めていけば良いという自由度は持っております。
 それで、現状のこの絵でも収容ビルの中にそういうマルチキャストする装置を置いてございます。ただし、集合住宅とか、あるいは何か張り出したところでそういうスイッチを置いた方が良いという場合の形態もございますので、それはそれ相応にきちんとした設備として置くことができれば、そういう運用は可能だと思っています。

【出口日本電信電話株式会社中期経営戦略推進室サービス戦略担当部長】 実際にそういうことで運用があり得るのかというお話は、これはまずないと御理解ください。当然ながらテレビも含めて、ピシッと映像が流れるように運用管理をするということでいきますと、やはり今の弊社の電話局くらいのセキュリティもちゃんと完備できないといけないということもございますでしょうし、実際には共用利用などである程度フィジブルな形で多分使えると思うのですが、お値段も決して安いものではないものですから、一般のマンションに置くような装置という感じではないかと思います。

【中山主査】 ほかに何か御質問ありましたら。よろしいでしょうか。それではどうもありがとうございました。
 続きまして、2つ目の議題として、意見聴取に移りたいと思います。本日は著作権者、実演家、レコード製作者、放送事業者、CATV事業者の方々にIPマルチキャスト放送にかかる説明をお願いしたいと思います。なお、御説明の方々には、事務局から参考資料の1の質問事項を事前に送付しておりますので、御参照願いたいと思います。
 まず初めに、著作権者の立場から御説明を伺いたいと思います。本日は社団法人日本音楽著作権協会の菅原常任理事にお越しいただいております。それでは、説明をお願いいたします。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 日本音楽著作権協会(JASRAC(ジャスラック))の菅原でございます。本日は発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。申し訳ございませんが、私のペーパーはございません。申し上げたいことは大きくは2点でございます。
 まず1点目といたしまして、これは今回の具体的な議論の前提としてということでございますけれども、著作権の制度というものから見た時に、ある面、単に著作物の利用がしやすいという観点から権利が切り下げられるというようなもし制度の変更があるとすれば、それには反対であるということでございます。
 それで、その利用のしやすさというところから申し上げますと、著作権者の場合にはすでに管理事業というものが行われております。また、著作隣接権者においても、今管理事業の開始に向けた取り組みがなされているということを聞いておりますけれども、管理事業法に基づく著作権等管理事業者には応諾義務というものがございます。そうしますと、そこの許諾システムにより簡便な利用というものは確保できるのではないか。それであれば、そのシステムに委ねるということもあるのではないか、という点が1点目でございます。
 そしてもう1つでございますけれども、今回の具体的なIPマルチキャストについて、これは報道等もされておりますけれども、国策として地上波デジタル放送の普及を前提とするというような対応であるとした時に、それが必要不可欠であるということがあったとすれば、その場合には必要最低限の範囲において対応すべきではないか、というふうに思います。
 具体的には放送、デジタル放送の区域内同時再送信というものに限定すべきではないかと思います。特にサーバーに蓄積したコンテンツをVODで配信するというような事業は含めるべきではない、というふうに考えます。
 仮に著作権法上、これを有線放送並みとする扱いとするというようなことが行われる場合、この場合にはやはり従前の制度に新しいものを合わせるということではなくて、現状、それからこれからの著作物等の利用の対応も踏まえて、有線放送を含めて全体について新たな対応というものを考えるべきではないか、というふうに思います。
 最後にやや実務的なところでございますけれども、すでに音楽の著作権につきましては、複数の著作権等管理事業者が事業を行っております。そういたしますと、1つの楽曲について、有線放送についてはA事業者が管理している、自動公衆送信についてはB事業者が管理しているという事例がもうすでにあるわけでございます。もし、法律上有線放送と同等というふうになった時に、例えば法律なりが施行された途端に著作権管理事業者が変わってしまいます。契約上、変わってしまうというようなことは考えられるわけでございます。
 そういたしますと、これは権利者にとっても、もともと自分の意思で選択をしていくところがございます。それから利用者にとっても、今まで許諾をとった人が1日をおいて違うところの許諾を取らなければいけないというような、実務的に大きな支障が生じるということが考えられます。このことを合わせて、これは実務的な面でございますけれども、ぜひ慎重な御議論をいただきたいというふうに思っております。以上でございます。

【中山主査】 はい、ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問がございましたらお願いいたします。はい、どうぞ、松田委員。

【松田委員】 先ほどの資料1の別添についてJASRAC(ジャスラック)の実務からお聞きしたいわけですが、この図で、A県で地方放送局が放送する段階におけるJASRAC(ジャスラック)と当該放送局との間では、もちろん権利処理ができるわけですよね。これは従前と同じです。それで地方放送局が県単位のIP配信をIP放送センターに、この間ではテレビ局とセンターとの間に何らかの取り決めがあるに決まっていると思いますが、そのところではJASRAC(ジャスラック)は別に関与せずに、直接IP放送センターにJASRAC(ジャスラック)の許諾の合意といいますか。ライセンスを出す。こういう形でよろしいですか。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 はい、御指摘のとおりでございます。 それぞれ公衆送信を行う者、放送の場合には放送局、その後のIPマルチキャストをすればIPマルチキャストで配信する者、その方に許諾を差し上げる。それぞれで許諾という形です。

【松田委員】 先ほど、管理団体が区々に分かれているので、そうすると放送センターの方もそれぞれ局によって区々に許諾を取らなければならないということになるわけですね。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 おっしゃるとおりでございます。

【松田委員】 それ以外のことをお聞きしたいのですが、例えばその他の映画等の送信の許諾というのは、これは地方局では出せないはずですけれども、こういう場合の権利処理はどうなるとお考えでしょうか。管理事業者の立場で考えていただいたら、どうなるのでしょうか。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 JASRAC(ジャスラック)が例えば音楽に限った許諾というふうに申し上げますと、それはコンテンツがどうであるからということは前提としてございません。したがいまして、映画であってもその楽曲部分、JASRAC(ジャスラック)に放送の管理を委託されている方であれば、その放送についてはJASRAC(ジャスラック)が許諾をするということでございます。
 ただ、今の御指摘の映画等の権利というのは、また別の権利の中でそれぞれ放送権の問題であるとか、契約上の問題も出てくるであろうと思います。音楽はそこには直接は影響されていないということになります。

【松田委員】 そうですね。分かりました。ありがとうございます。

【中山主査】 ほかに何か御質問ございましたら。はい、どうぞ、青山委員。

【青山委員】 3点目か4点目でいわれた新しいシステムを導入する場合に、従来あるシステムに合わせて対応するということではなくて、全体について対応すべきだというふうに言われたと思います。そのことと、その直前に言われた必要最小限の対応をすべきだということの関連といいますか、少しわからなかったのですが、そのところを素人にもわかるように御説明いただきたいと思います。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 これは1つにはこれからこの委員会での御議論ということがあると思いますけれども、現行著作権法上、放送と自動公衆送信と明確に定義が分かれているわけでございます。とすると、それは効果が同じであるから制度上同一にすべきということについては疑問があるということで、かといって国策等の中でどうしても必要不可欠な対応があるとすれば、それは必要最低限にすべきであろうという点が1点目でございます。
 それから、これは次にその措置になるかどうかは分かりませんが、もし仮に著作権法上、IPマルチキャストの中の一部とは思いますが、それと有線放送が同等に定義されるとすれば、それは現状の定義があるわけでございますけれども、これから先のそういった著作物の利用の態様というのはいろいろと展開していくことが考えられますから、そのことを踏まえて新しい制度というものを検討すべきではないか。今のままで良いのかどうか。それから、恐らくは展開していくところがあると思いますので、そういう点も考慮いただきたいということでございます。

【中山主査】 よろしいですか。ほかに何かございましたら。私から一言お伺いします。先ほどの利用しやすさという観点ですけれども、管理事業者には応諾義務があるからあまり問題がないという話ですけれども、いろいろな著作物についての権利者が必要ですけれども、先ほどのお話はこれは音楽に限ってということでしょうか。それとも一般的にというお話でしょうか。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 一般的にということになろうかと思います。現状、管理事業が行われております著作物で言いますと、音楽は行っております。それから文芸に関する著作権についても、管理事業は行われております。今、一番利用の多さの中で議論をされますのは、著作隣接権者の権利であろうというふうに思います。その意味では、隣接権者において今取り組みがなされていることを聞いているところでございます。

【中山主査】 もちろんいろいろな管理事業があるわけですけれども、それでだいたい十分ということでしょうか。そういう御趣旨でしょうか。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 これは、コンテンツの展開が今後どうなるかということによるかと思います。それで、こういう集中管理が必要な範囲というものが出てくれば、当然それは社会的な要請として管理事業が行われるのであろうというふうに思います。

【中山主査】 管理事業が、ほぼ完全に近い形で管理をしていれば良いけれども、漏れが多いというか、アウトサイダーが多数いますと、かえっていろいろ面倒なことが起きますけれども、そういう観点からは、現状で完全だと言えるのでしょうか。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 完全といいますと、どこまで管理すれば完全かというのはかなり難しいところであろうと思います。ただ、当然これは個人の権利者の御意思でございますので、それを、首根っこをつかむというと言葉は悪いですけれども、そういうわけにはいかないと思いますが、社会で流通しているコンテンツに関わるものの概ねが管理事業の仕組みに乗ることによって、それは利用者にとっても大変有効なことになると思いますので、そこでメインストリームといいますか、主要なものについてはそれでいけるのだろうというふうに思います。

【中山主査】 ほかに何か御質問がございましたら。はい、土肥委員、どうぞ。

【土肥委員】 1点お尋ねしたいのですけれども、先ほども質問が出ておりましたが、必要最低限の範囲というところなのですが、これは地方局でいうと、同時再送信で認可を受けた放送区域というのですか、地域ですか、その範囲内における行為、その条件が必要最低限という意味になるのでしょうか。それともさらにほかにその条件があるのかどうか、そこを教えていただければと思います。

【菅原日本音楽著作権協会常任理事】 現状で考えますと、最初に御指摘になりました地域、その送信地域が限定されているわけです。その地域の中での同時再送信というものが、必要最低限の範囲だろうというふうに考えます。

【中山主査】 よろしいですか。ほかに何か御質問がございましたら。よろしいでしょうか。また、後でございましたら、質問してください。どうもありがとうございました。
 引き続きまして、実演家の立場から御説明を伺いたいと思います。本日は社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作権隣接権センターの椎名運営委員、社団法人音楽制作者連盟の上野常務理事にお越しをいただいております。
 それでは、説明をお願いいたします。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 芸団協、CPRAの椎名和夫と申します。本日はこういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 まずは私どもCPRAの事業概要について、御説明いたします。1ページ目を御覧ください。
 私どもCPRAでは、文化庁の指定を受けた指定団体として、商業用レコードの二次使用料、私的録音録画補償金、商業用レコードの貸与報酬等の請求権に関する指定団体業務を行っております。
 また、著作権等管理事業法に基づく管理事業者として、録音権使用料に関する一任型の管理事業を行っていますが、昨年来、放送番組の二次利用にかかる許諾権につきましても、同じく一任型の一括集中管理を行うべく、現在関係者等々の間で様々な協議を重ねているところでございます。
 また、私どもCPRAは社団法人日本音楽事業者協会、社団法人音楽制作者連盟、社団法人日本芸能実演家団体協議会の三者によって運営されておりまして、現在、音楽と映像を合わせて約6万人の実演家の権利委託を受けて、その処理を行っております。
 それでは、事前に事務局から頂戴しております質問事項に従いまして、御説明をしてまいりたいと思います。2ページ目を御覧ください。
 「IPマルチキャスト放送等のブロードバンドを用いた放送による著作物の利用について、貴団体の基本的な考え方はどうか」という御質問でございます。
 ブロードバンドを用いた放送が行われ、そこで様々な著作物が利用されていくということについては、ユーザーの利便性を増すことに加えて、新たな利用の拡大にもなることから、基本的に大歓迎でございます。
 また、放送と通信が連携することによって、新たな産業構造が生まれれば、実演家にとりましても新たな出演の機会が増えることにもなり、これも大歓迎でございます。
 さらに先ほども御説明しましたとおり、私どもCPRAにおきましても、ブロードバンド上でのコンテンツ流通の円滑化に資するため、昨年来、放送番組の二次利用に関する集中管理のシステムづくりを進めているところでございます。
 しかし、また一方で、インターネットは放送とは異なり、基本的に広域を対象とするメディアであって、それへの参入についても基本的には無制限でありますことから、そうしたメディア特性には十分留意する必要があると考えております。
 また、一口にブロードバンドを用いた放送と申しましても、いろいろな形が考えられます。例えば対象とする地域の違いということに加えまして、放送する番組が既成の放送番組なのか、あるいは自主的に制作された番組なのか。また、放送行為を行うに当たっての参入要件が定められているか、無制限であるかなど、こうした違いによって実演家の権利に及ぼす影響も様々に濃淡がありますことから、その点から申し上げますと、喜ばしい、喜ばしくないというふうなジャッジを一概にはできないというふうに考えております。
 誰もが等しくインターネットに発信することが可能となってきている現在、今は想定しないような放送類似行為が登場してくることも十分に配慮した上で、きめ細かく権利のあり方を検討していただく必要があるのではないかと思っています。
 例えば、あまた登場するであろう個人によるブログ放送局などに対して、もし実演家が事前許諾を要しない報酬請求権しか持っていないのだとすれば、その影響に対して対応することができないばかりでなく、その実態を捕捉して報酬を徴収するなどということは事実上不可能だと思います。
 次にめくっていただきまして、2番の「IPマルチキャスト放送について、著作権法の扱いを有線放送並みにするべきとの意見があるがどうですか」という質問です。
 現在、IPマルチキャストという技術を利用して、インターネット経由で、インターネットではないという御説明だったのですが、IPv6以外のところはインターネットだと思うので、一応ここではインターネット経由で放送番組を流すという言い方をします。
 これは見かけ上、有線放送と変わらないから著作権法上も有線放送として扱えばよいではないかという議論がございます。しかしながら、すでに御承知のとおり、現在の著作権法では有線放送、つまりCATVで地上波を同時再送信する場合については、区域内の限定的な難視聴対策の範囲であって、実演家の権利を害さない規模であるとの判断から、実演家の権利が働かないという権利制限規定が定められております。著作権法92条2項がそれに当たります。そのため、著作権法上、有線放送並みにするということは、この部分の現行の通信の扱いですと許諾権であるものが、一切権利が働かなくなるという権利の切り下げが起きてしまうことになります。
 この権利制限規定につきましては、昭和45年、この権利制限が規定された当時と比べると、現在の都市型ケーブルテレビには様々な付加価値が加わっており、もはや単なる難視聴対策とは言い難く、権利が制限されていることの妥当性には大きな疑問が生じているところでございます。
 そのような経緯の中で、実演家は著作権法上の権利は持たないながらも、補償金という形で対価を受領しているような実態がございまして、この権利制限の見直しについては、公衆への伝達権とともに実演家の積年の課題となってございます。IPマルチキャスト放送が云々という以前の問題として、この際実態に合わせて撤廃するなどの見直しをしていただく必要があると考えています。
 さらに、IPマルチキャストによる放送というものを見てまいりますと、今回地上波デジタル放送の補完路としての採用が検討されたIPマルチキャスト放送の前提条件の中で、補完措置の定義としては、1番の条件不利地域における活用など、地上波中継局による伝送を地理的に補完するための措置という部分に加えまして、2番の視聴方法に関する選択肢を拡大することにより、視聴者の受信環境の一層の充実を図るという観点から、地上波中継局による伝送を補完するための措置という部分が追加されております。このことは、今回採用が検討されておりますIPマルチキャスト放送について、単なる難視聴対策の補完路としてよりも、その技術的な特性に着目して、むしろ積極的な活用を行っていくことを明示しているものであり、この点ですでに区域内の限定的な難視聴対策とは明らかに異なっていると思います。
 CATVはもともと地域メディアとして出発しておりますが、それに対してIPマルチキャスト放送は広域な範囲をカバーし得るメディアであって、例えば東京の放送局を全国で見ることができるというふうなキャパシティも内包しております。
 次のページにいっていただきまして、もしIPマルチキャスト放送による同時再送信が有線放送として規定されるような場合には、IPマルチキャスト放送のもつキャパシティがこの権利制限が定められた当時に有線放送として想定された範囲をはるかに超えておりますことから、先ほど来申し上げておりますとおり、有線放送による同時再送信にかかる実演家の権利制限について、この際撤廃するなど抜本的な見直しをしていただく必要があると思います。
 また、先ほども触れましたが、今後インターネット上でどのような態様の放送行為が考えられるのかということについて、つぶさに検証を行っていく中でこうした権利の問題が議論されていくべきと考えておりますが、その観点からも現時点で同時再送信以外のIPマルチキャスト放送や、それ以外のインターネット放送につきましては、有線放送と定義するべきではなく、現在想定していないような放送行為に対する対応の意味合いも含めまして、現状の許諾権を維持させていただく必要があると思っております。
 また、実演家の権利を制限するためには、実演家の利益を不当に害さないことは国際ルール上も義務づけられておりますが、この点にも十分な配慮が必要だと思います。
 次にまいります。「IPマルチキャスト放送による同時再送信については、契約の円滑化で対応できるという考え方もあるが、どうか」という御質問ですが、2011年の地上波アナログ放送の完全停波に向けて、IPマルチキャスト放送がその補完路として注目されているのは承知しておりますし、CPRAといたしましても、先ほども、菅原さんの話にも出ておりましたが、放送番組のネット利用を含むBS、CS、CATV等への番組販売など、従来は許諾権として非一任型の処理をしてまいりました部分を含めまして、一任型の集中管理の体制を取りつつあります。この部分は放送番組のネット上での円滑な利用に十分資するものであって、わざわざ法律を改正して有線放送と解釈するような必要はないというのが、私ども実演家の基本的な立場です。
 また一方で、こうした一任型の権利処理をよしとせずに、そうしたシステムには含まれずに自主的に権利を行使することを望む一部主演級の俳優やアーティストの方々が存在することも事実ですが、この部分については、そもそも放送局の放送番組づくりの今のビジネスモデルが一次利用としての放送のための番組づくりになっており、マルチユースを前提としたビジネスモデルにはなっていないために、そこから十分な対価が得られないなどの理由でトラブルが生じているものと理解をしております。
 また、きちんとしたビジネスモデルが定まっていない段階で、自らが受け取る対価について裁量権を留保したいと考える方々がおられることはごく当然のことでありまして、この部分が実演家のエゴであるがごとく非難されるいわれはないというふうに思っています。
 放送番組の活用が進まない利用について、安易に著作権があることを問題にするのははなはだ疑問でありまして、短絡的に権利を弱めることをいたしましても活用は進まないと断言できると思います。放送事業全般にわたってマルチユースを前提とする新たな契約システムが構築されていく中でこそ活用が進むとともに、こういう一任型になじまない人たちもある程度集約されていくのではないかというふうに考えています。
 あと最後に、少々これは先生方に対して生意気な内容になってしまいますが…、放送コンテンツの利用の円滑化ということに限らず、昨今の議論というのは、こんなに便利な技術が開発されているのに、現行の制度がいかに時代遅れであるかというようなものばかりが大勢を占めております。
 わが国の経済を国策的に今、IT企業が牽引していることも事実でありまして、IT産業振興のためにはコンテンツ利用の円滑化が非常に重要であるということも理解できるのですが、一方で中身のコンテンツが滅びてしまえば、それも達成できないのではないかというふうに心配しています。
 知的財産に関する問題に限らず、この数年来行われている様々な議論は、ややもすればこんなにすごい技術であるとか、あるいは経済性、効率、市場原理といった方向に偏って展開されるような傾向がありまして、同時にそのコンテンツ自体は、即ち文化というのも、少しおこがましいのですが、そういうものに対する配慮がどんどん希薄になっているようにも感じます。その一部については懸念の段階を通り越して、すでに現実のものになっているようにも思います。
 コンテンツの円滑な利用を促進することは重要であることは議論を待ちませんが、そのために権利の切り下げで対応しようとするような例は、少なくとも先進国の中では一国もないと思います。
 この際、法制問題小委員会におかれましては、我々の暮らしを豊かにする文明における欲望の充足という観点に加えまして、我々の心を豊かにする文化の育成保護の観点とのバランスの中で御検討いただきたいと思います。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。最後の説明について、何か御質問がございましたらお願いいたします。はい、どうぞ、村上委員。

【村上委員】 情報ということでぜひ教えてもらいたいと思うのですが、2ページの放送番組の二次利用に関する集中管理システム整備の状況は、現時点でどのくらい進んでいるのかというのをお聞きしたいということと、その関連で、昨日の報道で放送日から3年を超えた放送番組については許可を与えるようなスキームができ上がったという記事を読んだような気がいたしますが、、それがどういうふうになっているのか、それができ上がったのかということをお聞きしたいと思います。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 まず、我々が取扱っています権利というのは、放送番組の中のCD利用、いわゆる音楽の部分と映像の部分に分かれます。
 まず、CDの部分に関しましては、今レコード協会さんと横並びで、委任を受けまして、現在利用者の方々との使用料率の交渉に入っているところでございます。まさに高い安いをやっている最中でございます。これが決まりますと、使用料規定を届け出まして、1カ月置くのですかね、何かそういう作業を経た後に関連事業登録をするということになっております。
 映像の部分につきましても同様でございまして、先ほど申し上げました従来非一任型でやっていた番販等の処理と、ネット利用も含めまして、一任型の集中管理に係る使用料率の交渉に入っているところでございます。この映像の方が若干早めにスタートするかなというところでございます。
 先ほども申し上げましたのですが、これはあくまでも委任をする方々についてのみ処理をするということでございまして、残念ながら映像に関しましては日本音楽事業者協会さんが自主的に管理をなさっている部分がありますので、その部分は含まれないスタートということになります。そこの部分は音楽事業者協会さんが非一任型で管理をされるというふうに承知をしております。
 それから一方で、放送後3年経過番組を流通させるためにということで、総務省のバックアップを受けた協議会がこのほど終了したところでございますが、基本的にこの中で語られたことというのは、3年経過した番組の中で使用している音楽がわからないことが多いということで、フィンガープリント技術というものを応用しまして、使用楽曲を特定して権利処理をするということの実証実験をやったものでございまして、そのためのフィンガープリント技術を運用していく事業体等々について今後協議会が検討を重ねていくということでございますが、権利処理という意味におきましては、現在CPRAで集中管理を進めているわけですから、その中に包括されるものというふうに理解をしております。

【中山主査】 よろしいでしょうか。ほかに御質問がございましたら、どうそ。

【松田委員】 私が新聞などから得ている情報が、もしかしたら私の受け止め方が間違っているかもしれませんが、IPマルチキャスト放送を現実のものにするためには、実演家の皆さん方の権利とレコード製作者の隣接権と権利者、この2つが今条文の引用がありましたが、著作権92条等においてと同等の有線放送の扱いになれば、事がスムーズに進むというような報道がなされていると思っておりまして、私はそういう報道を読んでいるわけです。それは本当なのかということなのですよね。ほかにもたくさん権利処理しなければいけないものがあるのに、何でこの2つだけ矢面に立たされているのか、このことをお聞かせ願いたい。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 やはり先ほども触れました一任型になじみたくない方々がいらっしゃるということが非常にクローズアップされていまして、そこはその経団連合意に参加しなかったとか何とかということで話がグルグルになって、そこは狙い撃ちしやすいところなので盛んにバッシングをされているというふうに理解をしています。
 基本的な問題としては、先ほどの説明の中で申し上げましたとおり、例えば著作物のリセールのプライスが低すぎるとか、そういうことでプロダクション等にもお金があまりいかないというところが実態でございまして、そこのところで、まず、とば口のところでトラブっているというふうに考えますので、権利を切り下げたとしても、同時再送信の部分には流れるかもしれませんが、そこで失うものと得るもののバランスでいったら、必ずしもよどみなく流れるような状況は絶対来ないと思います。
 やはり放送番組の出演を依頼して出演をして、その番組が二次利用されるところの間でのビジネスモデルといいますか。そこのところがもう少しすべての人が合意するような形にならないことには、円滑な利用というのは進まないのではないかなと。一番わかりやすいところで実演家が俎上に上っているのですが、僕はそれはアンフェアな言い方だと思います。

【中山主査】 よろしいですか。ほかにございましたら。私から1つ。先ほど菅原さんにお伺いしたのと同じなのですけれども、CPRAは実演家のどのくらいを組織しているか。人数が多いのはわかるのですけれども、放送局から主演級に限ってこれに入っていないというような話をよく聞くものですから、実際問題どのくらい組織率というか、あるいは実効性が上がっているかという点についてお伺いしたいのですけれども。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 先ほども数字を少し挙げたのですが、音楽と映像を合わせまして約6万人。映像の部分では一部非一任型で自己管理をなさっている部分があるということですが、CPRAというのは基本的な前提条件として委任をするかしないかであり、委任をしない人の権利は扱えないわけですから。ただ、委任をしやすくすることはCPRAの仕事として考えられるであろう。一任型の応諾義務の伴うスキームでも、やっぱり預けていいなと思えるようになればどんどん人が増えてくると思いますね。
 やっぱり先ほども申し上げたとおり、放送番組にかかるビジネス問題が変わっていく中で、そういったことも自然となじんでいくのではないかと思います。委任者を増やすのは目下のところ非常に重要な仕事になっております。

【中山主査】 利用しやすさという観点からだけ見ますと、これは全員が預けてあれば極めてスムーズに利用できるのですけれども、将来的な見込みとしてはどうでしょうか。超大物といいますか、主役級も皆入ってきて一任型になるような見込みはあるのでしょうか。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 トップの部分、ある一定のトップの部分は永遠には含まれないと思います。それはビジネスですから、やっぱりそういう部分は残っていくと思うのですが、できるだけ一任型で安心して預けられるというスキームを提供するのが、我々の仕事だと思っているし、展望という意味でいえば一生懸命頑張ろうと思っているところです。

【中山主査】 ほかに何か御質問ございましたら。よろしいでしょうか。それではどうもありがとうございました。また後で質問がありましたら、よろしくお願いします。
 続きまして、レコード製作者の立場から、御説明を伺いたいと思います。本日は社団法人日本レコード協会の生野専務理事、高杉事務局長、畑法務部課長にお越しをいただいております。それでは、御説明をお願いいたします。

【生野日本レコード協会専務理事】 日本レコード協会の生野でございます。表題の件、内容的には先ほどのCPRAの椎名さんのお話と重なるところが多いかと思いますが、御説明させていただきます。
 まず、1.の「IPマルチキャスト放送等のブロードバンドを用いた放送型送信によるレコードの利用に関する日本レコード協会の考え方」でございます。
 1番目の○にありますとおり、ブロードバンドにおける放送型送信のコンテンツの流通促進に関しましては、視聴者のコンテンツアクセス機会の多様化という非常に大きなメリットがあると同時に、権利者にとってもこれがビジネスチャンスにつながる、ビジネスチャンスが広がるということで、これを積極的に促進すべきと考えております。
 コンテンツの流通促進に当たりましては、これを権利の切り下げによって実現するのではなくて、集中管理などの契約の円滑化によって実現すべきであると、そう考えます。以上が日本レコード協会の基本的な考え方でございます。
 日本レコード協会は以上を実現するために、現在レコード製作者の送信可能化権の集中管理事業の開始を目指して着々と準備を進めておりまして、放送事業者等と使用料規定の協議を今続けているところでございます。先ほどIPマルチキャスト放送の同時再送信という話が出ておりましたが、それも集中管理の対象と考えております。
 2.の「IPマルチキャスト放送について、著作権法上の扱いを有線放送並みにすべきという意見について」でございますが、現在レコード製作者に賦与されております送信可能化権を有線放送並みにする、要は権利者の権利を弱めることによって、コンテンツの流通促進を実現すべきという考え方には、反対いたします。そのような考え方は、クリエーター大国の実現を目指す我が国の知的財産戦略に逆行する考え方であると思うからであります。
 2011年の地デジ完全実施に向けて、IPマルチキャスト放送による同時再送信が難視聴対策に必要ということであれば、全面的に協力したいと考えておりますが、繰り返しになりますが、これは決して権利の切り下げによって実現を図るべきではないと考えるわけです。
 次のページにいきます。当委員会において、いろいろこれから御議論されるに当たりまして、ぜひお願いしたいことがございます。
 IPマルチキャスト放送に関する法制度の見直しに当たりましては、立法当時有線放送という地域メディアの特性に合わせて創設された制度、レコード製作者の権利が制限されているわけですが、そういった制度を広域メディアの特性を有しているIPマルチキャスト放送に適用した場合、権利者にどのような影響が生じるのかという、これをしっかりと検証していただきたいと考えます。
 仮にIPマルチキャスト放送を法律上有線放送並みにした場合、権利者に与える影響として12のケースが考えられると思います。
 まず、1の「自主制作番組の場合」とございますが、レコード会社が現在実施しております音楽配信ビジネス、そういったビジネスと競合するような番組が多数出現した場合、これをやめてくださいということができないということがございます。
  2の「放送の同時再送信の場合」ということで、この図で示しておりますが、仮に電波法の規制を受けない小さな出力の無線放送局を使って放送を行って、これをIPマルチキャスト事業者が受けて送信を行った場合、先ほどの1と同様の問題が生じると考えます。
  3の「その他の問題」といたしまして、今回の議論をIPマルチキャスト放送に限定しないで、通信ネットワークを用いた放送型送信全般を有線放送とした場合、そんなことはないと思いますけれども、IPマルチキャスト放送事業者だけでなく、個人でも先ほどの12というような送信行為ができるようになる。これについては先ほど椎名さんの方から御説明がありましたが、レコード製作者に与えられた報酬請求権の行使さえも極めて困難、全国の個人をそれぞれ追いかけて、使用料を請求するということは実質的には困難と考えますので、我々レコード製作者あるいは実演家に与える被害は非常に大きくなると考えます。
 2つ目のポツで、我が国の著作権法では有線放送事業者にも一時的固定が認められているとありますが、ベルヌ条約等の国際条約では放送事業者だけにしか認められていないわけでございます。有線放送の範囲が現在のままであれば、これはベルヌ条約第9条第2項のスリーステップテストに適合するとしても、それをどんどん拡大するといったことになれば、国際条約に抵触する可能性があるのではないかと考えます。
 3.「のIPマルチキャスト放送による同時再送信について、契約の円滑化で対応できるという考え方について」。これにつきましては、日本レコード協会は対応できると考えております。現在、来月中までに集中管理事業を開始したいということで、放送事業者等関係者との協議を進めている最中でございます。
 4.の「まとめ」で書いておりますが、レコード会社は現在、各々が音楽配信ビジネスに取り組んでいるわけでございます。ただし、放送番組のネット利用といったケースにつきましては、なかなか各社個別では対応できないということで、日本レコード協会が集中管理事業を行って、コンテンツの流通促進と現行法における権利の保護を両立させたい、そういうふうに考えているわけでございます。
 ところが、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取り扱いを有線放送とした場合、コンテンツの流通と権利保護のバランスが損なわれることによって、レコード産業の受ける被害を回避できなくなることが考えられるわけでございます。ぜひ慎重な御検討をよろしくお願いしたいと思います。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問がありましたらお願いいたします。はい、どうぞ。

【松田委員】 先ほどの、実演家に対して同じような質問をしたいのですけれども、先ほどの報道等との関係で、実演家とレコード製作者、この権利が働くことによって、IPマルチキャストの事業が推進できないという一部の報道があります。
 これに対して、先ほどの実演家団体の方は一任型、それもかなりの部分を補足できるかという問題は若干あるけれども、レコード協会はそういうことはないわけですよね。それが、どうしてレコード協会も矢面に立っているのでしょうか。その理由をわかれば教えてください。

【生野日本レコード協会専務理事】 矢面に立たされているのですけれども、なぜ矢面に立たされているのか理解できないので、逆にそういったことを主張されている方にお聞きしたいところです。現在、日本レコード協会の会員社で日本のレコードの売り上げの9割以上を占めております。今回の管理事業を立ち上げるに当たって、日本レコード協会の会員社のみならず、日本のインディーズで今、団体が2つございますが、そちらにもお声がけして、管理事業を一緒にスタートさせたい、御協力いただきたいというお話をして、前向きなお答えもいただいているところであります。
 よって、レコード製作者がネックになって、なかなかこれがうまくいかないというのは、我々からすると非常に不本意な考え方でありまして、逆に理解できないというふうに思います。

【中山主査】 ほかに何か御質問がありましたら。1つ、2ページ目の問題点で12の自主制作番組と放送の同時再送信、これは従来でもある問題ですよね。拡大しては困るということなのでしょうか。

【生野日本レコード協会専務理事】 そうですね。現在も実際放送されている番組の中でこれに近い、特に1に近い放送局が数局あるのは認識しております。ただ、今回IPマルチキャスト放送の扱いが有線放送並みになると、簡易に非常に多くのチャンネルで可能になるという、今まで以上に広がるという懸念でございます。

【中山主査】 それはIPマルチキャスト放送だけではなくて、インターネット放送全般にそうした場合という話でしょうか。そうではなくて、現在のIPマルチキャスト放送に限ってみてもそういう懸念があるということでしょうか。

【生野日本レコード協会専務理事】 ここではIPマルチキャスト放送が有線放送並みになったら云々という質問の答えですので限定しておりますが、拡げた場合でも同様な考え方でございます。

【中山主査】 ほかに何か御質問がありましたら。はい、どうぞ。

【苗村委員】 今の直前の質問について追加質問なのですが、今日の最初にNTTの方から御説明があった時に、IPマルチキャスト放送という言葉で電気通信役務利用放送のことをいわれたのだと思うのですが、その場合には放送センターとNTTの中にある装置の間は非常に高速な設備、あるいはコストのかかる装置を使うのでかなり高い料金をいただくのだという話があったと思いますが、その関連で、ここではこのIPマルチキャスト放送、ここで書かれていることは、そういったものが今後どんどん安く実現できるようになって、個人なり小さな企業でもどんどんできるという想定で書いておられるのか、やはり電気通信役務利用放送であっても1のような問題があると言っておられるのか、そこを補足していただけますか。

【生野日本レコード協会専務理事】 現在、4事業者があると聞いておるのですが、IPマルチキャスト放送自体がやはり非常にコストがかかる事業だと思いますし、個人が簡単にできるとは思っておりません。その事業者さんにおいてどういう送信行為が可能となるのかという観点でこれは書かせていただいたもので、もっと拡げた部分は、先ほど申しましたとおり、インターネット全般の話としてさせていただいております。

【中山主査】 よろしいですか。ほかに何かございましたら。よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。
 引き続きまして、放送事業者の立場から御説明を伺いたいと思います。本日は日本放送協会から、マルチメディア局著作権センター担当の石井部長、デジタル放送推進統括担当の児野部長、社団法人日本民間放送連盟から森常勤顧問、同連盟内のIPR専門部会コンテンツ制度部会の池田主査にお越しをいただいております。
 それでは、まず石井部長から御説明をお願いいたします。

【石井日本放送協会マルチメディア局著作権センター担当部長】 どうも発表の機会を設けていただいて、ありがとうございます。私どもの資料としましては、A4、1枚に簡単に項目だけをまとめたものを用意させていただいております。それに基づきまして、簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、質問の1項目として、ブロードバンドを用いた放送についての考え方がございます。それについて簡単に御説明いたしますと、現在NHKは放送法上の制約から、主として放送の補完の範囲内でインターネットの利用を行っております。
 したがいまして、インターネットを用いた放送や有料のいわゆるB to C、直接視聴者に届けるという事業は行っておりません。
 一方、ブロードバンド事業者へのコンテンツ提供、B to Bとでも申しますか、それは視聴者のニーズに応えるためにも積極的にVODの事業者に対して行っています。ただし、VOD形式でない、いわゆるインターネット放送への直接の提供は現在のところ行っておりません。
 将来どのようなサービスの可能性があるかということにつきましては、NHKを取り巻く制度環境の整備を見ながら検討することになると思いますけれども、著作権法の関係ではどのような著作権制度になろうとも、法制度、あるいはそれに基づく管理事業者さんですとか権利者団体さんとの契約を遵守してサービスを行っていくということには、今後とも変わりがないということでございます。
 2番目として、IPマルチキャスト放送について著作権法上の扱いを有線放送並みにすべきかどうかという御質問がございます。これについては次のことに配慮する必要があると思われます。
 まず、1番目として、難視聴地域における放送の同時再送信が円滑に行えることでございます。この難視聴地域における同時再送信というのはビジネスでとらえる放送の二次利用というよりも、そこで受ける視聴者にとっては、どちらかというと一次利用、放送に近いものではないかというふうに思われます。
 NHKの場合、放送をあまねく日本全国に届ける義務もあります。しかし、どうしても難視聴区域が生じてしまう恐れもありますので、それを解消するためにIPマルチキャストなどネットによる同時再送信が1つの有力な手段だと思われています。
 もちろん、データ放送などを含めまして、品質、内容に変更を加えないでそのまま再送信をするということ、それから、放送区域外では再送信しないこと。これが前提条件となるわけですけれども、このようなことをクリアした上で、再送信に対して著作権が障害となって一部番組の同時再送信が行えないということは、これは避けなければならないことだと思います。
 放送には脚本、音楽、実演、CDなど、管理事業者あるいは集中管理が整備されているものもあります。そのほかにも美術作品ですとか、CGとか映画、スポーツ、そういうところに入っていない一般の出演者の方々、そういういろいろな要素が含まれているということも考慮される必要があろうと思います。あるいは先ほども出ましたけれども、委任という問題も出てくるかと思います。
 もう1つは、実際にそういうものを視聴するに際しまして、アンテナとかケーブルとか受信機とかチューナーとか、そういう機器とか設備というものは仕方ないとして、それ以上の過度の負担を視聴者に強いるということは、いってみれば難視聴区域とそれ以外の区域で格差を生むということにもなりかねませんので、それも避けなければならないことではないかなというふうに思っております。
 2番目として、電気通信役務利用放送との整合性の問題でございます。この場合でもIPマルチキャストという技術的な文脈で語られることが多いのですけれども、むしろ、今放送法制度上にあります電気通信役務利用放送かどうかという分類が重要ではないかと思います。そうしませんと、IPマルチキャストだけれども有線電気通信役務利用放送に該当しないとでもいいますか、今、CPRAさんとかレコード協会さんからも御指摘がありましたけれども、そういうような事業者が出た場合に野放し状態になってしまうということも考えられなくはありません。日本として、制度上整合性のとれた形で秩序を形成していくということが大事ではないかと思います。
 3番目としては国際的なハーモナイゼーションです。これは同時再送信の問題と、ややそれに限らないという面もございますけれども、コンテンツの流通において海外展開を拡大しなさいということも知財戦略でいわれております。また、放送番組には外国の著作権者も多く含まれております。そういうことを考えますと、日本の著作権制度が日本ローカルルールになってしまっては、そういう国際化の流れに乗れないのではないかなというふうにも思われます。
 以上3点、御指摘させていただきましたけれども、これは私どもとしても、文化というものをきちんと大事にしたい、私どもが発信する文化というものがきちんと視聴者に届けられたいという思いがございます。以上で発表を終わらせていただきます。

【中山主査】 引き続きまして、森顧問からお願いいたします。

【森日本民間放送連盟常勤顧問】 民放連の森でございます。民間放送事業者を代表して、御質問にお答えをさせていただきます。資料は5番でございます。
 御質問は2つございました。第1の質問、IPマルチキャスト放送のブロードバンドを用いた放送による著作物等の利用についての当連盟の基本的な考え方如何ということであります。
 ブロードバンドを用いたコンテンツ流通を活性化させるためには、まず権利者の十分な理解を求めるとともに、流通の源泉であるコンテンツ制作に適切な資金が還流する仕組みが必要であります。急速に流通のみを促進させようとして、制作者や権利者の権利を軽視すると、制作能力をかえって弱めてしまう恐れがあることを、まず認識すべきです。
 ブロードバンドによるコンテンツ配信サービスは、大まかにいって、1コンテンツを利用者のアクセスにより提供するVOD型、2サービス主体が調達したコンテンツを編成して送信する自主編成IPマルチキャスト、3放送事業者の同意を得て、放送番組を同時再送信する再送信IPマルチキャストの3種類に分けられると考えられます。
 このうち、1のVOD型及び2の自主編成のIPマルチキャストについては、現行の法制度の下でサービスの提供が開始されており、その健全な発展を遂げるべく、放送事業者を含む関係者の取り組みが続いております。配信されるコンテンツには多くの著作権者・著作隣接権者が関わるため、それぞれの分野での権利の集中管理体制、利用しやすい料率設定などが重要であり、その検討に当たっては透明性の確保が求められます。
 一方、3の再送信IPマルチキャスト放送は、関係各界の協力の下、地上デジタル放送の補完措置として、今後の実用化を目指した検討が行われております。
 地上デジタル放送は制度上、平成23年(2011年)7月24日までの完全移行が定められており、放送事業者はその実現に向け、放送波によるカバーを大前提として鋭意努力しております。昨年12月に公表されましたデジタル放送推進のための行動計画におきましても、各放送事業者は残り5年という限られた期間にもかかわらず、長年をかけて整備してきたアナログ放送エリアの90パーセント以上をカバーすることを明らかにしており、さらに95パーセント以上との見通しも示されております。
 このような電波によるカバーは、今月から開始されたワンセグサービスを含め、非常災害時の情報伝達の確保という観点からも重要です。しかしながら、電波によるカバーが困難な条件不利地域が一部残るため、すべての視聴者が公共性・公益性の高い放送番組を享受できるよう、補完措置としてのIPマルチキャスト、CSなど、あらゆる手段の検討が必要となっております。
 2つ目の質問です。IPマルチキャスト放送について、著作権法上の扱いを有線放送並みにすべきとの意見があるが、これについてどのように考えるかという点であります。
 IPマルチキャスト放送全般について有線放送並みに扱うとの意見がありますが、各権利者の権利は尊重されるべきであり、知財立国を標榜するかたわらで、権利の引き下げにつながる法改正を行うことについては、極めて慎重でなければなりません。コンテンツ流通の促進は、現行著作権法を前提とした運用・契約ルールの適用によって実現可能と思われます。
 ただし、地上デジタル放送という公共性・公益性の高いサービスの補完措置としての再送信については、放送事業者の免許エリア内という地域限定性、適切な著作権保護技術、ハイビジョン等伝送内容の同一性の確保が図られることなどの技術的条件や運用条件が満たされることを前提として、例外的に有線放送並みとすることに賛成するとともに、その具体的手法については本委員会で幅広く検討いただきたいと考えております。以上でございます。

【中山主査】 はい、ありがとうございます。ただいまの説明につきまして、何か御質問がありましたらお願いいたします。はい、どうぞ。

【松田委員】 先ほどNTTさんにお聞きしたのですけれども、ユーザーにとってIPマルチキャスト、これも同時再送信のビジネスが形成されたらどういう便利な点があるのですかということだったのですが、それについては一番のメリットは決して再送信だけでなくて、トリプルプレー1本の線でできるという利便性がありますということ、これが大きいように聞きました。
 NHKや民放連はこのサービスができることと、それから今まさに5年後におけるデジタル地上波のこの完成ができることのサービスとの関係で、どちらがユーザーにとって利便性があるのか。この意見については今示されていませんが、いかがなものなのでしょうか。光にした方が我々は便利なのでしょうか。それとも地上波を見た方が利便なのでしょうか。その点、いかがでしょうか。

【児野日本放送協会総合企画室デジタル放送推進統括担当部長】 どちらが便利かということは、ユーザーの方がお決めになる問題かと思うのですけれども、我々今、どちらの方に関心があるかといえば、やはりNHKはあまねく2011年までに達成することは義務ですから、その観点からいうと、トリプルプレーが仮になくても放送のサービスは届けることができるという方にメリットを感じています。

【森日本民間放送連盟常勤顧問】 IPマルチキャスト放送を条件不利地域までに仮に引いていただけるというようなことがあれば、経済性はともかくとして、例えば地方自治体の強力な支援でそのようなことが仮に行われることがあるとすれば、それは我々としても選択肢の1つとして、メリットとして感ぜざるを得ないという立場でございます。
 それ以外のインターネット、光ファイバーがいずれは各家庭にまで全部引かれるという時代が来るだろうと思われますが、その時代にIPマルチキャストがいかなるものとして現実に利用者に受け取られることになるだろうかということについては、正直に言って、今私どもは確かな確信を持っておりません。とにかく、やはりマルチキャストも非常に早いスピードで技術開発が行われておりますし、今では想像もできないような利用の仕方も当然出てくる可能性もありますので、そういったことを現に見通して、この技術を放送事業者もどんどん積極的に受け入れろといわれれば、確かにそういう面はありますが、現時点でそこまでIPマルチキャストが放送波をしのぐ1つの配信手段として考えろといわれても、まだ半信半疑というか、まだ十分な確信を持っていないというのが正直なところでございます。

【中山主査】 ほかに何か御意見は。どうぞ、村上委員。

【村上委員】 非常に基本的な質問なのでNHKさん、民放連さんにお聞きしたいのですけれども、放送番組というコンテンツの流通、もしくは二次使用の問題である。それで現行著作権法を前提とした契約ルールの適用によっても実現可能と思われると、こう書かれているわけなのですが、そうすると放送会社が放送番組の制作委託をして番組を作る時に、いずれにせよ著作権者から利用許諾は取らなければならない。その場合に、二次使用についても二次使用しても良いという形の契約を最初に、主演級の俳優も含めて、そういう契約を結んで解決することはまったくできないということなのでしょうか。
 言い換えると、ある意味で放送番組についての著作権については放送会社の責任をもって一元管理するというような、契約でそういうシステムを作り上げるということは、これは不可能なのか可能なのかという、非常に基礎的な質問になります。 (池田日本民間放送連盟知的所有権対策委員会IPR専門部会コンテンツ制度部会主査) 今の御質問でございますが、現在の有線テレビジョン放送事業者さんへの同意、隣接権許諾におきましても、放送番組に含まれております著作権、それから隣接権という許諾については、それぞれの事業者さんが個別にとっていただくということになっておりますので、5団体と契約を結んでいらっしゃるというふうに伺っておりますので、そちらの方でやっていただくということで、放送事業者そのものがここで言います有線放送もしくはIPマルチキャストにおける送信について許諾を個別に得るということはないのではないかと思っております。
 また、二次利用の際におきます、先ほど実演家の団体さんの方からございましたけれども、放送事業者の作る番組と制作会社が作られます放送番組におきましては、実演家さんの権利が異なっておりますので、少なくとも放送事業者か制作する番組における実演家さんの権利につきましては、二次利用においても追加報酬等が生ずるというふうに理解しております。

【石井日本放送協会マルチメディア局著作権センター担当部長委員】 基本的には今池田さんが言われたとおりなのですけれども、一応こちらとしても、例えば有線放送における同時再送信ですとか、一定範囲での二次使用を、個別に番組の権利者の方と放送局との間で契約を結んで許諾を得るということをやっております。ただいろいろな事情がありまして、それがすべてというわけにはまいっておりません。

【森日本民間放送連盟常勤顧問】 私も正確には存じないのですが、皆様当然のこととして放送番組を制作する時から、事前にいかなる二次使用もできるような権利を取った上で番組を制作すべきではないか、あるいはできるのではないかというふうにお考えになるのだろうと思います。映画の世界ではそれが行われているやに聞いておりますが、歴史的な経緯がありまして、放送番組は現時点では必ずしもそういう体制がとられておりません。
 その1つの理由としましては、これは現実問題なのですが、放送番組については視聴者が見た上でないと、そのコンテンツと言いましょうか、番組に対する評価というものはなかなか定まらない。番組を作る前に、それがどのくらいの価値のあるものかということを事前に予測して、それを権利者との間に事前に話をまとめておくというのは現実に困難な部分があるのだそうでありまして、あるものはできるものも当然あろうかと思いますが、そういった処理については、一律に事前に二次利用の処理も含めてすべて事前の了解をとるということをいたしますと、どうしても最大それが価値が認められたという一番高止まりした権利交渉をした上でないと制作に入れないと、こういう現実問題が出てくるようであります。
 したがいまして、各社とも番組制作前にそういう話を持つ努力はすると思うのでありますが、どの程度完璧にその努力をすることによって進められるかというのは、まだアンノウンファクターもあるというのが実態ではなかろうかと思います。

【村上委員】 放送番組の中で、本当に二次使用をして、さらに放映されるというのは非常に少ない比率のものしかないであろうということは、それはわかるような気がするのです。
 ただ、だからといって不可能ではなくて、ある意味で定型的な契約様式みたいなのを工夫すれば、ビジネスモデルとしては必ずしも不可能ではないのではないかという、一般論としてそういう気がするという意見であります。

【市川委員】 今の点、椎名さんの立場から少し御意見を聞かせていただきたいなと思ったのですけれども。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 今の点というのは、例えば出演時にいろいろな権利を包括してしまう。それはその対価と契約のフォームと、そういうこと次第でしょうね。俳優さんなりアーティストなりがそれで合意できるのであれば、そういう形も十分あると思いますね。
 番組が当たるか当たらないかわからないという流動性というのは、映画も変わらないような気がするのですけれども。だから、必ずしも否定的に思うということもないし、先ほど契約システムが成熟すべきだといったのは、そういう意味も含みます。

【中山主査】 よろしいですか。では、石井さん。

【石井日本放送協会マルチメディア局著作権センター担当部長】 村上委員の御指摘に戻りますけれども、恐らく契約システムで、今椎名さんのお話にありましたように、かなりの部分カバーしていくということは、これは可能ではないかと思います。
 ただ、特に同時再送信問題に限っていえば、ではそこから漏れたものは、万一漏れたとして、同時再送信しなくて良いのかという問題になると、そこはそうとも言い切れないのではないかなと思います。
 放送番組の性格といたしまして、多種多様なコンテンツですね、つまり、中にはネットに出るのは絶対嫌だとおっしゃる方もいるかもしれませんけれども、そういう方も含めて、いろいろな内容の放送を視聴者の皆さんに送り届けたい、そういう思いもあるわけでございます。

【苗村委員】 今の最後の御発言に関連して、少しややしつこく質問させていただきます。NHKさんと民放連さん、両方に伺いたいのですが、資料5が大変わかりやすいので、資料5をベースに質問します。
 資料5でいろいろ書かれていますが、地上デジタルの同時再送信に限ってみますと、1ポツのところでは90パーセントなり95パーセントまでは問題ないけれども、残ったところがある。そういうところをIPマルチキャストなりCSなど、あらゆる手段で対処する必要がある、補完措置が必要だと書いておられて、その後、2ポツの最後に、これについては例外的に有線放送並みとすることに賛成するという表現をとっておられますね。今、NHKさんからもだいたい同じような趣旨の御発言があったと理解しているのですが、端的にいって、現行著作権法をこの点について改正すべきだといっておられるのか、もしほかにすべきだという方がおられたら自分たちも賛成するよといっておられるのか、そこが知りたいのです。先ほど反対の方は非常に明確にいわれたのですが、賛成するというだけで、積極的にしてほしいと言っておられるかどうかを聞きたいのですが。

【石井日本放送協会マルチメディア局著作権センター担当部長】 正直申しまして、どうしたら同時再送信が円滑に行えるかというところを考えておりまして、有線放送並みにするということも1つの法改正の方向、1つのやり方かと思います。ただ、それだけか、ほかにもいろいろなやり方があるのかもしれないというところは、まだ私どもも詳細に詰めておりませんので、ぜひそういうところを皆さん、先生方に御議論いただきたいなと、そういうふうに思っております。

【中山主査】 民放連の方はいかがでしょうか。 (池田日本民間放送連盟知的所有権対策委員会IPR専門部会コンテンツ制度部会主査) 有線放送並みということでございますけれども、放送事業者は送信可能化権と有線放送権、それぞれ持っておりますので、権利者さんの側の御理解が十分に得られるという前提があれば、法改正なのか、解釈なのか、もしくは現状の法律のままでもできるではないかと先ほどございましたので、その辺のことも踏まえて、放送事業者としてはどちらであっても、地上波デジタル放送のIPマルチキャストによる同時再送信を有線放送と同じ扱いにすることは可能ではないかと思っております。

【松田委員】 お手元に資料がなくて申し訳ないのですが、委員の方には資料1、別添のところですが、地方局の放送とIP配信とが同時に行われるわけですが、これはコンテンツにつきましては地方局からIP配信センターの放送センターの方に一応許諾なのだろうと思いますが、提供することになる。コンテンツは放送局からIPへ。だけど電気通信役務利用放送事業者の方が、放送局とは違う、既存の放送局とは違うコンテンツを自ら作って、さらに放送局の方に提供するという逆のビジネスはないのですか。
 というのは、2つのメディアができたら、コンテンツについても競争をしてもらって、良いものを作ってもらうと、視聴者にはいいのだろうと思うわけですが、いつも何か一方的に放送局がコンテンツを提供してIPが流す。こういうルートしかないようですが、それについてはどういうふうな動きがあるのですか。まったくないのですか。

【森日本民間放送連盟常勤顧問】 放送事業者は自分で番組を調達して、それを編集して放送する権利を持っておりますから、どこから番組を調達するかは、それは放送事業者が考える話です。ただ、IP事業者が作ったコンテンツが直接スルーパスで放送に出るということは多分ないというふうに見ておりました。
 それからもう1つ、IP事業者は基本的な話として、今後の御議論になろうかと思うのですが、よくいわれるように、フリーな立場で何でもコンテンツを流すことができる、いわゆる通信事業者的立場の事業者なのか、それともやはり放送のコンテンツ規制を受ける番組を流す事業者という位置づけで我々は見なければいけないものなのだろうか、そういう議論もこれから行われた後、IP事業者が作ったコンテンツというものの社会的な扱い方は決まってくるのではないかなというふうに思います。

【松田委員】 それでは今議論になっているのは、新聞等を見ましても、とにかく放送局からIP放送事業者の方に流すことしか議論になっていないと思います。これはもう今の既存の放送局のコンテンツの作成能力、それからコンテンツが多量にある。それから、将来できるIP放送センターの方は、その能力、スタッフがない。この関係でこういう図式になっているのでしょうか。それ以外に何か要因があるのですか。
 例えばニュースソースはどうですか。放送の中で重要なのは、私はニュースもあると思うのですが、これがやはり放送局が持っていて、これからIP放送センターができたとしても、それは十分にできない、対応がとれない、そういうところも原因としてあるのですか。

【児野日本放送協会総合企画室デジタル放送推進統括担当部長】 IP放送センターができた場合に、まず地上デジタル放送の同時再送信という観点というと、今同時再送信の条件整備を議論しているところなのですけれども、基本的には電波で出す放送と同一内容、同一編成でもってとそのまま出すというふうに考えていますので、IPのところだけその編成とは別にIPの放送センターが独自のコンテンツを、我々とその編成の中に混ぜ合わせて編成するということは想定していません。
 ただ、IP放送センターが独自にいろいろなところから調達、あるいは自分で制作したものを流すということは、同じインフラを利用してやるということは想定しています。
 先生がおっしゃるように、IPのところに限らず、例えばニュースであるとか、ほかのプロダクションで制作した番組を我々の編集権の下で、放送としてそれを採用して番組として出していくということについては、これまでもやっていますし、それはIPの話だけではなくて、電波で出す放送そのものがそういう形で作られているということでありますから、世の中でそういったコンテンツを制作する能力がどんどん増してくれば、必ずしも自前の番組だけではなくて、そういったものから良いものを選んで、我々の編集権の下で放送していくということは十分あり得るというふうに思います。

【中山主査】 ほかに御質問がございましたら。よろしいでしょうか。もし御質問がありましたら、また後でお願いいたします。ありがとうございました。
 それでは引き続きまして、ケーブルテレビ事業者の立場から御説明を伺いたいと思います。本日は社団法人日本ケーブルテレビ連盟の石橋専務理事、また同連盟内の著作権委員会の館岡委員長、杉村顧問、河村元委員長にお越しいただいております。
 それでは、御説明をお願いいたします。

【石橋日本ケーブルテレビ連盟理事長代行・専務理事】 石橋でございます。本日はこういう機会をいただきまして、ありがとうございます。
 事前にいただいておりました質問、2点につきまして、私どもの見解、意見をお手元の資料にまとめさせていただいております。この説明につきましては、私の隣にいます館岡の方からやらせていただきます。よろしくお願いします。

【館岡日本ケーブルテレビ連盟著作権委員会委員長】 それでは、御質問を中心として御説明申し上げたいと思います。今、皆さんからお話がございましたとおり、インフラ、放送と通信、放送ともに伝送路の問題、それから通信の方法の問題とコンテンツの中身の問題と分けてお考えいただければ良いのではないか、というふうに今は考えております。
 ですので御質問の1つ、1番目、「IPマルチキャスト放送等の通信設備を用いた放送について、著作権法上の扱いを有線放送並みにすべきとの意見があるが、これについてどのように考えるか」という御質問でございますが、我々はIPマルチキャスト放送の中身が、放送法制上に放送と認められているIPマルチキャスト放送については、我々と同様、著作権法上、有線放送並みの取扱いであってもおかしくはないというふうに考えております。
 しかしながら、VOD並びにそれからいろいろな著作権者の皆さんがおっしゃっていたようなもの、いわゆる放送にあたらないものについては、現行のとおりおやりになるべきではないかな、というふうに考えております。
 なお、このような取り扱いになって既存の我々有線放送事業者に新たな法律上の義務とか、そういうものを課してきたり、経済的負担が発生するということがなくても十分できるのではないかなというふうに、今考えております。
 また、IPマルチキャスト放送による地上波放送の再送信を有線放送並みの取り扱いでという場合には、民放さんもNHKさんもおっしゃっているとおり、きちんとした性格つけをすべきであろうというふうに考えておりまして、それは皆さんからお話があったように、同時性、同一性、地域限定など、我々ケーブルテレビに課せられていると同等の再送信要件が必要。それが担保されなければ認めないということは、きっちりやるべきだろうと考えています。
 御存じのとおり、NTTさんを中心としたIPマルチキャスト放送はコストがかかるとおっしゃっていますけれども、現実には全国的にやるものと地域でやっている我々ケーブルテレビでは、まったくコストが違う。我々は大変コストをかけてここまで来ているわけですから、それと同等に緩い条件でやられたらたまったものではないということを、よく踏まえた上で御検討いただければというふうに考えております。
 つづきまして2番目、「ケーブルテレビについては、従来は地域密着型の零細メディアが中心であったけれども、現在ではトリプルプレーとか、広域で事業を展開するものがあるので、実演家の権利云々」という御質問でございますけれども、これについては、我々は放送を同時に再送信する場合の実演家の権利の制限など見直すべきであるという御意見については、見直すべきではないのではないかというふうに考えております。
 著作権法は御存じのとおり、実演家の権利のみを拡大して有線放送事業者に新たな法律上の義務が発生したり、それに基づく経済的負担が発生することには反対でありまして、バランスが相当崩れてくるのではないかというふうに考えております。同時再送信について、権利関係の全体の整合性が重視されることが必要であると考えております。
 なお、御質問の文章からは、「ケーブルテレビが零細であったという理由により、放送の再送信について実演家の権利制限を設けた」というふうに読み取れますけれども、そのようには認識しておりません。
 誤解のないよう申し上げますが、御質問でも御指摘のように、ケーブルテレビの事業展開はトリプルプレーなど変化してまいりましたけれども、地上放送の同時再送信の部分についてはまったく従来と変わってはおりません。
 即ち、事業の広域化といえども、実際にはそれぞれの地域にケーブルテレビ事業者はほぼ独立した法人として存在いたまして、それぞれの地域に施設を設置することについて、許可を得た上で事業を行っております。また、全国に存在する地域難視聴の解消、及び都市部の事業展開におきましても都市難視聴の解消という公共的な役割も担っております。
 加えて申し上げますと、地上波デジタル放送の同時再送信につきましては、再送信料をいただかないような形のOFDMパススルー方式を今までの我々ケーブルテレビ会社の放送方式、64カム転換方式に加えて、OFDMパススルー方式をも放送しておりまして、これも実施しております。これについては専用のセットトップボックスが必要ございません。テレビに地上デジタルチューナーがついていれば見られるという形でございまして、難視聴は原因者からは御費用はいただきましたので、受信者からは今費用をいただいてないという形でサービスをしておりますので、この辺も十分御認識いただければというふうに考えております。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。では、説明につきまして、何か御質問がございましたら、お願いいたします。
 要するに、今の有線放送と同じ規制をかけてくれるならば認めても良いという、こういう御趣旨ですね。

【館岡日本ケーブルテレビ連盟著作権委員会委員長】 そうでございます。ただ、放送法上の放送事業者として流すものだったら、有線放送、我々と同じような形で認めても良いのではないかというふうに考えております。

【中山主査】 どうぞ、松田委員。

【松田委員】 先ほどのNTTさんの説明でも、地方局と地方のIP放送センターが、だいたい図によると1対1の関係に立って、そのコンテンツを流すということになっているようで、地域別になるのですよね。ところが、地域といっても県単位ないしは県をやや越えるくらいの単位の大きな地域だと私は思います。
 ところが、ケーブルテレビ連盟の各会社が行っている地域設定はもっと狭いのではないかなと私は思っているのですけれども、その地域性の関係はどういうふうに考えてらっしゃるのでしょうか。
 特にIPマルチキャストの場合には、実は技術的にいうと、地域別なんかやる必要はまったく私はないと思うのです。技術的な要請から言うならば。それにもかかわらず地域性を担保してやろうというふうに考えているのは、それはビジネスモデルとして当然あっても良いのだろうと思うのですが、しかしケーブルテレビとIPマルチとは地域といっても全然違う。この点をどういうふうに考えるか。何故地域性を守れと言っているのでしょうか。

【館岡日本ケーブルテレビ連盟著作権委員会委員長】 我々が言っていますのは放送法業上の地域性ということでございまして、放送法が大幅改正になれば、それは別問題でございましょう。我々が言っています地域性というのは、もともとケーブルテレビの認可の問題もございますので、放送法も全部変わってくれば大きく変わるのではないでしょうか。それは恐らく今回の目的ではないと思いますので、それは。

【石橋日本ケーブルテレビ連盟理事長代行・専務理事】 先生おっしゃるとおり、ケーブルテレビは非常に小さい地域性です。これは過去、地域要件というものがございまして、だいたい1行政単位、即ち1市とか、1市に地域のメディアとしてケーブルを育てようというような、そういうことでスタートしています。現在は、もうすべてそういう規制は撤廃されておりますので、広域でできるようになっておりますが、歴史上そういうふうになっておりますので、現実はそういうふうになっております。
 ただ、放送との関連で言いますと、一方放送は我々同時再送信という場合は、圏域内の放送を圏域内で流すというのが原則になっておりますので、それは一応我々としても原則は尊重してやっているというのが現状です。

【中山主査】 有線というのは放送では県単位になっているという、そういうことですよね。

【石橋日本ケーブルテレビ連盟理事長代行・専務理事】 ケーブル事業者が何社か県単位である、県内にありますから、そのケーブル事業者は県内の放送は同じ放送を流しているということになります。

【中山主査】 そちらの方の問題は今、別のところで大議論されているところでございますので。ほかに何か。はい、どうぞ。

【苗村委員】 書いておられることについての確認のための質問ですが、質問1の回答で4つの段落がありますが、最後の段落は多分もうまったく誤解のない話で、先ほど来ありますように、デジタル放送の補完的な役割。これについては、ここでいう地域限定がまさに非常に限定されたという意味だと思うのですが、前の方でIPマルチキャスト放送等というのを「放送法制上、放送と認められているIPマルチキャスト放送」という言葉を使っておられますが、これは電気通信役務利用放送のことを指しておられるのか、それ以外の意味でしょうか。

【館岡日本ケーブルテレビ連盟著作権委員会委員長】 電気放送役務利用放送法でございます。

【石橋日本ケーブルテレビ連盟理事長代行・専務理事】 さらに、現在まだやっておりませんが、ケーブルテレビでIPマルチキャストということも併存するという可能性は将来的にございます。ですから、そういう意味で電気通信役務利用放送法ということだけに限定せずにこういうふうに書いたということで、現実、近い将来を含めまして、それは有線役務ということに限って御理解いただければと結構かと思います。

【中山主査】 ほかに何か御質問ございましたら。よろしゅうございましょうか。
 質問がないようですので、以上で本日の意見聴取を終わりたいと思います。お忙しいところ、それぞれの団体のお立場で御説明をいただきまして、誠にありがとうございました。
 それでは残りの時間を使いまして、今伺いました関係団体の意見を踏まえまして、自由討議を行いたいと思いますけれども、各委員から改めて各団体への質問というものもあるかと思いますので、できましたら最後までこの場で御同席いただければ幸いでございます。
 それでは残りの時間を議論にあてたいと思いますけれども、何か御意見、あるいは御質問がございましたら、お願いいたします。

【松田委員】 NTTさんの最初の質問の時に、技術に限定してということがありましたものですから、それに限定しましたが、少しだけビジネスはどのようになるかという可能性のことをお聞きしたいのですけれども、御説明はまさに同時再送信のビジネスモデルとして説明を受けているわけですけれども、しかし先ほどのトリプルプレーということになりますと、放送センターがサーバーを置いて、そこに蓄積をしたVODのビジネスと、それからさらにインターネットでISPネットワークが持っているコンテンツをv6で流すというビジネスとも、こういうものも1つの窓口で家庭の中に入ってくる。そういうサービスが光ファイバーには可能になるということになりますと、そういうモデルがIP放送センター、IPv6にも将来可能なのか、ないしはそういう方向になるのか。
 もしそうなるのであれば、見ている側というのは再送信ばかり見ているわけではないわけですよね。沢山のチャンネルの中のある一部分を同時再送信として見ているかもしれないわけですね。そういう認識でよろしいでしょうか。

【出口日本電信電話株式会社中期経営戦略推進室サービス戦略担当部長】 本来は体系だった意見というのはまた別な機会にでもさせていただければと思いますが、今の委員の御質問にお答えする形でお答えをさせていただきます。
 基本的には弊社に限って申し上げますと、私どもNTTは放送事業主体そのものにはなれないということがまず大きい前提条件としてございます。ここは放送関係者、権利関連の方にも誤解のないような形で御理解をいただきたいのですが。
 ということは、何を申し上げたいかというと、放送事業主体というふうに立たれる、今の法律でいきますと電気通信役務利用放送事業者さんが、いくつかの実はコンテンツを流すというウィンドウを、メディアを手にされるということでございます。
 ただ、この議論を技術的に論じると非常に可能性が無限大のような形でお話がつながっていきますが、実はやはり我々いろいろプラクティスというにはずいぶん高い勉強料になっていますが、いくつか先行的な取り組みをやはりさせていただく中で、改めていわゆる日本の国内におけるコンテンツのクオリティとか、一般の国民がどの番組をやはり大勢御覧になりたいのかということでいきますと、現行のやはり地上放送ということでの力、魅力というのは非常にやはり高いということがございます。
 まず、地上放送のデジタル化ということで、ハイビジョンということで非常に映像の情報量が大きくなってございますので、現行の通信のネットワークというのは技術的にはどんどんどんどん高度化していきますので、技術的には制約がある時点ではありますが、将来的にあるのかというとそれはいろいろな可能性がありますが、やはりネットワークとしていろいろな設備を使う時に何を優先して、優先的に通信のいわゆる設備の持っている能力をあてるのかという議論が出てくるかと思います。
 そういう意味では、地上デジタル放送の再送信ということが、今関係者の方の御了解をいただいて著作権の取扱いも含めましてできるようになれば、恐らく基幹放送にまず優先的に通信のいろいろなリソースを割り振る形になるかと思います。
 逆に残ったいろいろな通信のリソースを使って、一般的にはインターネットにある、先ほど申し上げたPCで視聴するようなものは、まだまだインターネットの事業者自体がv4の世界でずっと商売をされています。ワールドワイドにv6に簡単に移管するかというところも、通信の世界で非常に議論がありますので、恐らくインターネットの上にあるコンテンツを視聴するということは、やはりウィンドウとしては少し別だと思います。
 ただ、御案内のように、そちらはGyaoさんを中心にいろいろなまた無料放送型というのでしょうか、広告モデルを持ち込んだ新しいコンテンツライブラリーの充実というものもございますので、そこは利用する側から見ると、一般の基幹放送でハイビジョンで非常にきれいに見られるもの以外に、ニッチというと少し言い過ぎですが、瑣末なコンテンツを御覧になられるという可能性もどんどん広がります。
 それから、マルチキャストの場合によっては機能を一部使うこともあるかもしれません。それからVODのようなコンテンツライブラリー充実ということを、実は恐らく間に立たれる放送事業者さんは商売でございますので、NTTにそれなりの通信利用料金、ネットワークの設備利用料を払っていただけなければいけないということを念頭に置きますと、やはり基幹放送の地上デジタル放送を単純に再送信するだけでは、それに伴う対価というものは基本的には発生しない。設備の利用料金相当くらいのことしか恐らくは利用者の方から請求できないということでいきますと、技術的にはいろいろなお金のとれるアトラクティブなサービスをより一層充実することが必要でございましょうし、放送本編をベースにした今サーバー型放送のような議論がテレビ局の方からも出ていると思うのですが、新しい双方向性を利用した、さらなるいろいろなサービス、それからメタデータを活用してテレビ本編に付随して同じ出演者が出ているコンテンツ、過去の番組を見るようなことも含めて、有料化のモデルの多分検討がこの後非常に重要にはなるかと思っています。

【中山主査】 よろしいでしょうか。

【松田委員】 はい、よくわかりました。

【中山主査】 ほかに何か御意見はございますか。

【村上委員】 どうも意見でも質問でもなくて恐縮なのですけれども、今の話を聞いていますと、やはり著作権だけの問題ではなくて、放送法制の在り方みたいなものが絡んでいるし、確かにほかの場所で放送法制の見直しの議論が進行しているということも聞いていますので、その辺りの議論の在り方とか、その辺の議論を紹介してもらう機会というのは1度作ってもらえればと思います。ほかの省庁の話なので、そう簡単ではないのかもしれませんけれども、それが希望であります。

【中山主査】 その点は甲野課長、いかがでしょうか。

【甲野著作権課長】 よくそこは検討させていただきまして、ここでの議論が有意義な方に流れるように配慮したいと思います。

【中山主査】 よろしいですか。ほかに何かございましたら。

【松田委員】 今日大変に勉強させてもらったし、だいぶ整理ができたように思います。ありがとうございました。ここで委員が議論をしなければならない問題というのは、まさにIPマルチキャストが有線放送並みの改正を必要かどうか、ないしは解釈でもそれが可能かどうかというような、こういう議論をしなきゃならないわけでありますけれども、そのまさに問題は、レコード製作者と実演家にある意味では向けられているわけですよね。その部分なのです。
 ところが、全体のビジネスや技術のことを考えますと、それだけで解決できる問題なのか、ないしはその問題はそういう大きい問題なのかどうか。その2つの問題がIPマルチキャストが成り立たないくらい大きな問題なのかというように、少なくとも提起されておりますので、いかにも何か新しいビジネスの足を引っ張っているかのように報道されていますけれども、実はそうでないということをここで皆さん方お気づきになったと、私は思います。
 委員に配られている資料1添付をもう1度御覧願いたいと思いますが、地方局と地方のIP放送センターの間は、放送番組をIPマルチキャストで流しますよということについては当然許諾が必要なわけで、ここに権利処理が、大きな権利処理が1つあるわけであります。
 それからIPマルチキャストで流す場合に、確かにこれが有線放送であれば、92条等によりまして実演家団体とレコード製作者にはフリーで流せることになるわけであります。しかし、それができたからといって、すぐそれでIPマルチ放送がどんどんできるというわけではないということをお気づきになったはずだと思います。
 それは何かというと、それよりももっともっと大きい権利であります音楽の権利や映画の権利や、その他諸々の権利は実はどこが処理しなければいけないかというと、放送局が処理するのではなくて、放送センターが処理しなければいけないということの結論が出ているはずです。それはもう出ているはずです。
 ということは、もっともっと沢山処理しなければいけないところのものについて、あるにもかかわらず、レコード製作者と実演家に少なくとも世論的には矢が向けられているわけであります。
 理屈が通って、それを有線放送並みにして良いのだというのであれば、私も一向にそれは理屈が通るなら、それはそれで良いと私も思っています。しかし、問題は解決しないということを、私は御指摘しておきたいというふうに思います。
 それから将来のIPマルチキャストは、実をいうと、私はそれだけではないと思います。コンテンツを放送局からもらうのであれば、それは当然、放送センターは過去の放送としてサーバーにためるのではないでしょうか。ためてもらわないと困るのではないでしょうか。
 というのは、連続ドラマを見たい時に、同時再送信だけしか見られなかったら見られないのではないですか。過去のニュースを見たい時に、センターにアクセスすれば、これはNTTの資料の4ページですが、アクセスできるということになれば、こんな便利な社会はないのではないですか。そういう便利な社会をユーザー側で作ってくれるためには、同時再送信ではなくて異時送信をしなきゃならないはずです。そうした時に、センターにサーバーを置くはずです。サーバーを置けば、実演家とレコード製作者は複製権はあるわけですから、隣接権で。その処理をしなくてはならないはずではないですか。そうすると、再送信と異時送信でそんなに違いがあって良いのだろうかというふうに、私はまず疑問を持っております。
 何かこの2つの問題がデジタル化した光ファイバービジネスの大きな足を引っ張っているかのように、ないしはもっと著作権全体がその足を引っ張っているかのようにいわれている。これについての認識は、視聴者も含めて改めてもらいたいと私は思っております。以上です。

【中山主査】 それについては、現在の有線放送も基本的には同じではないですか。

【松田委員】 そうです。有線放送もまったく同じです。

【中山主査】 そうすると、有線放送も改めろという意見になるわけですか。

【松田委員】 有線放送は今、権利処理しているはずです。

【中山主査】 いやいや、同時再送信とか、現在のIPマルチキャストに比べると、有利な立場にあるわけですね。今の議論はIPマルチキャスト放送を有線放送並みにするかどうかという話ですけれども、松田委員の話だと有線放送もやはり同じような問題を抱えているので、そもそも今の有線放送の優遇措置がおかしいようにも聞こえたのですけれども、そうでもないのですか。

【松田委員】 個人的には、今日はその議論になっていませんけれども、なぜ92条の有線放送を実演家からないしはレコード製作者から削ったかというのは、まさに経済的にそんなダメージがないからであって、それから難視聴地域というのがあったはずです、立法の経過では。それは文化庁出してくださるということになっているというわけです。
 ところが、社会状況は確かに変わりました。地域的なケーブル放送ですね。これがかなりビジネスとして確立されてきて、その問題が齟齬を来たしているのはそのとおりだと思います。
 では、どちらに合わせるべきかではないでしょうか、我々が議論すべきは。立法の最初に戻って考えるのか、今の社会状況が変わったから、ではIPマルチキャストもそれで良いのかということを議論すべきだということになろうかと思います。私、それについては今日結論をまだ出すだけの材料がありませんので、意見は控えさせていただきたいと思っております。

【中山主査】 何かほかに御意見ございますか。はい、どうぞ、土肥委員。

【土肥委員】 先ほど来から各委員のお話しになっているところについて付言させていただければ、要は放送そのものの実態、つまりそこの話が本委員会の検討対象になっていないわけで、いわゆる本体の部分がどうなるか、ビジネスモデルによっても変わりましょうし、あるいは様々な環境によっても変わってくるのだろうと思うのですけれども、その部分をいわば適当かどうかわかりませんが、尻尾が著作権法というところでその元を決めてしまうということは、多分できないのだろうと思います。
 ただ、状況が変わったとしても、いわゆる同時再送信の部分、先ほど来出ているところの地域限定の同時再送信の部分、これは従来も、これから現在問題として指摘されているところも変わらないわけでありますので、そこについて議論は当然できる、ここで。それからいわゆるトリプルプレーですか。その2つのプレーについてどうするかという議論は、これは本体がどうするか。そこを見た上でないとできないというふうに思っています。
 ですから、トリプルプレーのうちの1つのところのステージについては、これはここでその議論をする。つまり、そういう我々今、どのフェーズでその議論をしていくのかということが、まず最初に決められて、そこをたどっていって全体の議論につなげていくべきではないかなというふうに思います。これは個人的な意見でございます。

【中山主査】 その点、甲野課長、いかがですか。

【甲野著作権課長】 トリプルプレーという場合には電話など、それからインターネットのプロバイダーとしてのサービス、それから映画、テレビ等々ということかと思いますけれども、通信の部分は直接は著作権法には関係ない世界だと思います。それから、プロバイダーとしてインターネットから情報を得るというところは、また別途議論する場があるのではないかと思います。
 したがいまして、ここでの議論というのは最後の部分で、いったいどこのところを本当に有線放送にすべきかどうか。そういうことかと思いますので、そこのところに絞ってここでは議論していただければありがたいと思っています。

【中山主査】 そういうことでよろしいでしょうか。ほかに何か。
 では1つ、私が椎名さんにお伺いしたいのですけれども、著作権に比べると隣接権というのは非常に複雑で、複雑という意味は実演家と放送事業者とレコード製作者の権利関係が極めて錯綜していますので、著作権とは違うつくりになっていると思うのですね。
 つまり、考え方としてはなるべく大もとで処理をして、あとは契約でうまくやっていこうという。もちろん、例外はいくつもあるのですけれども、なるべく大もとでと。ということになりますと、この問題も実演家の最初の大もとで権利が処理して、十分そこで対価が回収できていれば、あまり問題はないと思うのですね。ところが、現状はそれはできないということなのでしょうか。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 はっきり言ってしまって、対価が十分ではないのだと思います。そのことに不満があるから、そのことが成立しないということがあるのではないですかね。

【中山主査】 そういたしますと、法制というより、むしろ最初の段階での交渉力がないとか、対価が十分でないという、そこが一番問題なのでしょうか。それとも、今問題になっているマルチキャスト放送についての権利がどうのこうのという、そちらの方が問題なのでしょうか。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 いや、それは先ほども質問がありましたけれども、そういう方法もあるということですよね。元栓で出演時に全部済ませてしまうという方法もあるでしょうし。ただ、先ほども出た話ですけれども、放送番組が化けたらどうするのとかというようなことを、微に入り細に入り契約に書き込んだりしてやるやり方もあるのでしょうけれども、現状はやっぱり集中管理という方法論でやっていく中で、集中管理事業者は努力をしていくというのが筋だと思いますので、そこら辺の話はやっぱり先ほど出て来ています放送全体のビジネスの考え方だと思いますし、そこまで、問題点として指摘はしましたけれども、どういう方法が良いとかということを申し上げる立場にはないと思います。

【中山主査】 例えばアメリカなんかですと、これは映画ですけれども、レーガン元大統領が率いてアクターの組合が大争議を起こして権利を勝ち取るというようなことがありましたけれども、実演家も交渉力を強めて十分そこで対価を取れば問題はないということになるわけですか。それとも現在とてもその力がないということなのでしょうか。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 ストライキをやってもいいのですけれども。ということよりも、主演級の方々とか、集中管理を望まない方々についても、問題点を整理して、この部分は任せてくださいというような説得をする作業ってずっと積み重ねてきているわけです。そういうふうな形で問題点を整理する作業は事実やってきていますので、そこのところにはすごく自信もあるし、これからそれが伸びていくことも自分の実感としてわかっているので、そういうスタンスであるということです。ストライキってどうやってやるのかわからないので。

【中山主査】 ストライキはアメリカの話で、確か半年くらい映画ができなくなったという事件もありますけれども、それはそれとして、私が質問したかったのは、やはり非常に多くの権利者が関与していると、その中のごく少数でもいやだというと、もう流れなくなってしまうという現象が一方ではあるわけですね。一方では、他方で今言いましたように、冒頭で十分対価を得れば、それはそれで問題は解決する。どういうシステムが最も対価を十分得られて、かつスムーズにコンテンツが流れるか、利用されるかという、その問題なのですけれども。どうぞ、村上委員。

【村上委員】 私も主査の御指摘どおりかという気がします。それで、まずは最初放送番組を作るのに、当然個別契約だけでは済まない話なので、一括許諾団体から、当然集中管理団体からまとめて許諾を受けることが必要な個別著作権もありますし、それから個別に主演の俳優から契約で対価を決めればいい。その対価を決めるというのは、別に価格まで決めるわけではないので、さらに使われた場合に二次使用料の50パーセントはそこに払うとか何とかという、そういう形で対価というのは契約で決められるはずなので、そこを工夫すれば、全面的な解決になるとかではないけれども、かなりの処理できる余地はあるのではないかという気がいたしております。

【中山主査】 どうぞ、椎名さん。

【椎名日本芸能実演家団体協議会実演家隣接権センター運営委員】 繰り返して強調してしまうのですが、やはり隣接権ということで、実演家全体に後回しにされるという意識がすごく強くて、後回しにされていると思ったら、矢面に立ってバッシングされていたというのが実感のところでございまして。
 集中管理のノウハウという意味で言えば、CPRAというのはもともと音楽の委任から始まっているんですね。音楽の指定団体である。そこで包括的な音楽の業務の処理ができるのですが、では映像のニーズがあるということで映像のことを始める。冗談じゃないという人もいる中で、1つ1つ説明をして、この部分はいいのではないかとか、この部分はどうだとかいうことをやってきていますので、ボーッと10年過ごしているわけではないので、そこはぜひわかっていただきたいなと思います。

【中山主査】 ほかに御意見ございましたら。はい、どうぞ。

【松田委員】 発言が多くなって申し訳ございません。また委員におかれては資料1の別紙添付を見てもらいたいのですが、音楽にしてもレコードにしても、それから映画にしても、その他の権利にしても、IP放送センターの方で権利処理をしなければならないのですよね。その時に、どういうデータが必要かなのですけれども、その時には各放送ごとに、放送番組ごとにでしょうか。これらの諸権利が、それからもちろん放送局としては映画製作者に委託をしたものではなくて、自社製作のものなのか、それとも委託したものなのか、委託したものについてはどういう利用ができるのか。もちろんIPも含めてですが、というような条件を実は千差万別なのです。放送の制作番組の委託契約等は千差万別なのです。あるコーナーだけ作らせるということもあるのです。
 そういう1番組ごとのデータを、私はやはり放送局が整理すべきなのではないかなというふうに思っています。そして、それを統一されたフォーマットに入れて、そしてそれを併せて提供することによって、権利処理がスムーズに行く。例えば実演家についてCPRAだけが交渉に行くというのではなくて、そのフォーマットを見れば、どういうところにはもう許諾がとれているのか。許諾がとれていない範囲内はどこなのか。そして、できれば許諾なく対価の配分は決まっている。こういうようなフォーマットを作り上げられれば、どんどん流れるように私はなると思います。
 特に同時再送信でありますと、許諾をとる暇なんかないわけですから、そういうものを作り上げないと、テレビ局ももっともっと二次的利用ができないと思います。これはIPマルチキャストだけではありません。あらゆる分野でそうだと思います。VODでもそうなるはずであります。
 ですから、これからの権利処理というのは、それぞれの権利者団体が一任型でほぼ統括してできるという、そういうものだけではなくて、データをどこで管理するのかということを含めないと、こういうビジネスは私は成り立たないのではないかなというふうに思っております。

【苗村委員】 今、松田先生からお話があったことについて、私、基本的に賛成なのですが、あえて違う趣旨で申し上げます。今回このテーマが緊急課題としてこの小委員会に与えられて、しかも6月上旬までに報告書を作らなければならないということで考えますと、本質的な議論そのものをしている時間がないのではないかという気がします。
 多分、次回、2回目のヒアリングが終わった後で、どういう方向で議論するかを相談することになると思うのですが、実は私、次回欠席をさせていただく予定なので、今日のうちに進め方について考えたことを申し上げます。
 今日、いろいろな立場の方からのお話を伺いながら、最初にJASRAC(ジャスラック)の菅原常任理事がお話になった中で、必要最低限の範囲というキーワードがありました。それから後でいろいろな方からも、多分同じ趣旨のことを別の表現で同一同時地域限定というような言葉とかありましたので、そういう地上放送のデジタル化に伴い、ある種の難視聴地域対策のための最低限の対策というものを切り出して、それについてどうすべきかというテーマが1つ。
 もう1つは、電気通信役務利用放送、これは地域限定ではないのだと思うのですが、そういう事業者がすでにいる。当然ビデオ・オン・デマンドではなくて、通常の放送と同じように番組を流す。当然中身に関する自主規制もある。この場合の問題を第2番目として、その他を3番目として、少し分けて議論しないと大変だなと思います。つながってくることは間違いないのですが、何かその議論を分ける適切なキーワードなり、是非分類学をしていただきたいなと思いました。以上です。

【中山主査】 それはいかがでしょうか。

【甲野著作権課長】 どこの分をまず手を着けて緊急にやらなければならないか等は、ここで十分議論していただいて決めていただかなければならない事柄かと思いますので、次回論点整理ということでさせていただきますけれども、そこの辺をどういうふうに考えたら良いのか。ほかにもいろいろな論点がございますけれども、それを踏まえた形で資料などを作成しまして、先生方に御議論いただければというふうに考えております。

【中山主査】 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。なかなかこれは奥の深い問題で議論はあろうかと思いますけれども、今日のところはこのくらいにしてよろしゅうございますか。
 はい、それでは今日の議論はこれくらいしたいと思います。次回の小委員会につきましては、本日の関係者からの御説明及び自由討議を踏まえまして、事務局で論点を整理していただいて、論点ごとに御議論をしていただくことにしております。
 最後に事務局から連絡がありましたら、お願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 本日は長時間どうもありがとうございました。第3回目となります次回の法制問題小委員会の日程でございますが、正式には近日中にホームページに掲載する予定でございますが、4月27日朝の9時半から13時まで、場所は本日と同じ経済産業省別館1020会議室を予定してございますので、よろしくお願いいたします。

【中山主査】 はい。本日はこれで文化審議会著作権分科会の第2回法制問題小委員会を終わりにいたします。どうも長時間ありがとうございました。


(文化庁長官官房著作権課)

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ