第3節 国民一人一人の多様な学習活動の機会の拡大に向けて

 文部科学省においては,社会構造の変化や技術の進歩の中で,専門的な知識と同時に多様な知識を備えるような個人としての資質・能力の向上や,個人の特性に応じた的確な学習機会の充実のため,ITを活用した学習を振興しています。また,高等教育機関などにおけるeラーニングをはじめとするITを活用した教育の普及・促進などにより,社会人を含めた学生への継続的な教育機会の提供を図っています。

1.豊かな生涯学習社会の構築

 文部科学省では,国民一人一人がいつでもどこでも学習に取り組む機会を得,その成果が適切に評価されるような環境づくりを目指しています。その実現に向けては,ITの活用に大きな期待が寄せられています。平成17年3月に,有識者などから構成される調査研究会によりまとめられた「ポスト2005における文部科学省のIT戦略の在り方に関する調査研究報告書」においては,新たなIT活用の視点として,「相互に支え合う共同体に参加する生涯学習の実現」が提言されました。また,「IT新改革戦略」及び「重点計画―2006」においても,重要視されています。今後は,これらを踏まえ,ITを活用した学習機会の提供や地域の学習資源の活用などを振興していきます。

(1)「エル・ネット」の活用による多様な教育・学習機会の提供

 文部科学省の「エル・ネット(教育情報衛星通信ネットワーク)」(参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/elnet/index.htm(※教育情報通信ネットワーク(エル・ネット)の運用についてへリンク))は,衛星通信を利用し,教育,科学技術・学術,文化,スポーツに関する情報を,全国の社会教育施設や教育センターなど約2,000か所(平成18年7月末現在)の受信局に直接発信するシステムです。
 文部科学省からは,教育施策について説明を行う所管事項説明会や,各種会議の模様などを全国へ発信しています。また,教員や社会教育主事などの指導者を対象とした研修・講習会もエル・ネットを活用して実施されています。さらに,一流のスポーツ選手や科学者たちと全国の子どもたちが画面を通じて直接話したり,ものづくり教室などを全国の受信局で一緒に体験できる番組「子ども放送局」のほか,家庭教育や科学技術などに関する講演会なども幅広く放映しています。そのほか,都道府県などの教育センターなどに整備されている送受信機能を有するVSAT局(送受信局)からも,地域における特色のある取組の紹介や研究発表会などが放映されています。

(2)地域情報の発信と学びのコミュニティの形成

 文部科学省では,地域における教育情報の発信を支援するため,平成17年度から地域の特色あるコンテンツの収集や社会的要請に対応したコンテンツの制作などを行う「地域における教育情報発信・活用促進事業」を実施しています。収集・制作された地域の特色のある講座や地域課題解決のためのコンテンツは,VSAT局から全国へ配信され,学習講座や多くの学びの場に活用されています。また,インターネットにおいても配信され,自宅学習などを含めた学習機会の拡大を支援しています。

(3)放送大学の充実・整備

 昨今の地上放送のデジタル化の流れを踏まえ,放送大学においても平成18年12月から地上デジタルテレビ放送を開始し,ハイビジョン放送やデータ放送などの機能を生かした授業番組の制作などに取り組んでいます(参照:第2部第1章第5節2(1))。

(4)メディアを活用した学習機会の提供

 文部科学省では,平成16年度から,教育上の社会的問題に対応し,新たな教育的価値を創造するために,地域とのかかわりや職業意識など,現代的課題に対応した生涯学習テレビ番組「いきいき! 夢キラリ」を制作・放送しています(民放33局のネットワーク,参照:http://www.minkyo.or.jp/(※財団法人 民間放送教育協会ホームページへリンク))。また,教育上価値が高く,学校教育又は社会教育に広く利用されることが適当と認められる映画その他の映像作品及び紙芝居を審査し,その普及・促進に努めています。

(5)eラーニングによる人材育成支援(草の根eラーニング・システムの整備)

 平成17年度からは,関係省が連携・協力して「eラーニングによる人材育成支援モデル事業」を実施しています(5モデル地域に事業を委託)。この事業では,フリーターや若年人材などが,いつでも,どこでも,だれでも手軽に学び直しや,職業能力の向上ができるeラーニングを活用した学習支援システムの構築を目指し,地域の特色を生かした職業能力向上コンテンツの作成などを行っています。

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