第5節 多様な学習機会の充実

2.多様な学習機会の提供

(1)放送大学の充実・整備

1生涯学習の中核的機関

 放送大学は,テレビ・ラジオなどの放送メディアを効果的に活用して大学教育の機会を幅広く国民に提供することを目的として昭和58年に創設され,60年4月から学生の受入れを行っています。平成18年度第1学期においては全国で約10万人が学んでおり,これまでに約4万人の全科履修生が卒業しています。放送大学で学んだ国民は,社会人を中心に15歳から90歳代までと幅広く,その数は延べ約101万人に及んでおり,我が国の生涯学習の中核的機関として大きな役割を果たしています。
 放送大学には,国民の高度化・多様化する学習需要にこたえるために,教養学部が設置されています。ここでは,豊かな教養を培うとともに,実生活に即した専門的学習を深められるよう,約300の授業科目を開設し,既存の学問分野にとらわれない形で,「生活科学」,「産業・社会」,「人文・自然」の3コースが設けられています。
 また,平成13年4月に高度専門職業人養成などを目指した大学院文化科学研究科(「総合文化プログラム」,「政策経営プログラム」,「教育開発プログラム」,「臨床心理プログラム」)を開設し,14年4月から修士課程の学生の受入れを行っています。
 さらに,新たな試みとして,平成18年度から「科目群履修認証制度」を実施しています。これは,「健康福祉運動指導者」や「歴史系博物館活動」など,特定分野の授業科目群の単位修得者に「認証状」を交付し,当該分野の体系的な学習を行ったことを証明する独自の制度です。

2学習環境の充実・整備

 平成10年1月から,衛星放送を利用して放送エリアを全国に拡大したことで,日本全国どこでも,講義を受けることができるようになっています。さらに,放送授業番組の再視聴設備や図書室などを備え,面接授業を行う「学習センター」,「サテライトスペース」を全都道府県に合計57か所設置し,多様な学生の学習を支援しています。
 また,地上テレビ放送については,電波の利用効率の向上などのために平成23年7月24日までに現在のアナログ放送からデジタル放送に移行することとなっており,放送大学においても,18年12月から関東地域1都6県の約1,300万世帯(現在のアナログ放送地域とほぼ同地域)を対象に,地上デジタル放送を開始しました。これにより,ハイビジョン放送,多チャンネル放送(マルチ編成),データ放送,字幕放送,EPG(電子番組表)など,デジタル化のメリットを生かしたサービスの向上,制作番組の有効活用などが可能となり,生涯学習の中核的機関として,より一層の機能の充実を目指しています。

(2)専修学校教育の振興

 専修学校は,学校教育法において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し,又は教養の向上を図る」ことを目的とする学校であるとされ,実践的な職業教育,専門的な技術教育などを行う教育機関として,大きな役割を果たしています(平成18年5月現在,学校数3,441校,生徒数75万208人)。専修学校は,入学資格の違いにより,高等学校卒業程度を入学資格とする「専門課程」(専門学校),中学校卒業程度を入学資格とする「高等課程」(高等専修学校),入学資格を問わない「一般課程」の三つの課程に分かれています。
 文部科学省では,専修学校の振興策として,社会が求める即戦力となる人材の育成や専門課程の高度化開発など,社会的要請の高い課題に対応するための教育方法などの研究開発を専修学校に委託して実施しています。
 また,平成18年度からは新たに,ニートを支援しているNPO団体などと連携したニートの社会的自立を目指した職業教育や,定年を迎え退職する中高年や,子育てなどのために就業を中断した女性を対象としたキャリアアップのための教育の推進に取り組んでいます。

(3)社会通信教育

 文部科学省では,学校や公益法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っています。平成18年2月現在,文部科学省認定社会通信教育は,32団体124課程であり,17年における1年間の延べ受講者数は11万2,625人となっています。

(4)民間教育事業者,NPOとの連携等

 中央教育審議会生涯学習分科会「今後の生涯学習の振興方策について(審議経過の報告)」(平成16年3月29日)において,今後,国や地方公共団体,社会教育施設などにおいては,民間教育事業者,社会教育関係団体,NPO,地域住民等の関係機関・団体などとの関係について,一層の「協働」(お互いの特性を認識し,尊重し合いながら,対等な立場の下に,積極的に協力し合うこと)が必要である旨の提言がされています。
 また,平成10年の特定非営利活動促進法の施行などもきっかけとなって,近年は新たなNPOやボランティアが増加しており,地域によっては公民館などの講座の企画をしたり,講師となるなど,都道府県や市町村との連携も進展していますが,連携の進み方には地域差が見られます。
 文部科学省は,教育行政機関との連携を推進する「生涯学習分野におけるNPO推進事業」を平成16年度から実施しており,このようなNPOと連携した事業を実施するなどして,高度化,多様化する住民の学習ニーズに対応した施策を展開しています。

(5)子ども見学デーの実施

 文部科学省をはじめとした30の府省庁等が連携して,親子のふれあいを深め,子どもたちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会とするとともに,府省庁等の施策に対する理解を深めてもらうことを目的に,平成18年8月23日(水曜日),24日(木曜日)に省内見学や各省庁の特色を生かした体験プログラムなどを実施しました。参加者数は府省庁等全体で1万4,735人となっています。また,この取組の一環として全国の各機関でも同日開催又は夏休み期間中に各種イベントが開催されました。

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